ブリッジレポート
(2593) 株式会社伊藤園

プライム

ブリッジレポート:(2593)伊藤園 2024年4月期決算

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株式会社 伊藤園

(普通株2593、優先株25935)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

食料品(製造業)

代表者

本庄 大介

所在地

東京都渋谷区本町3-47-10

決算月

4月

HP

https://www.itoen.co.jp/

 

株式情報

<普通株式>

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,364円

89,212,380株

300,110百万円

8.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

44.00円

1.3%

140.70円

23.9倍

1,516.16円

2.2倍

*株価は6/20終値。各数値は2024年4月期決算短信より。EPS、BPSとも連結。

 

<優先株式>

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,866円

34,246,962株

63,904百万円

8.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

56.00円

3.0%

152.70円

12.2倍

1,522.16円

1.2倍

*株価は6/20終値。各数値は2024年4月期決算短信より。EPS、BPSとも連結。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2021年4月(実)

446,281

16,675

17,029

7,011

55.10

40.00

2022年4月(実)

400,769

18,794

19,971

12,928

103.92

40.00

2023年4月(実)

431,674

19,588

20,341

12,888

103.82

40.00

2024年4月(実)

453,899

25,023

26,681

15,650

126.42

42.00

2025年4月(予)

466,600

26,500

26,700

17,200

140.70

44.00

*予想は会社予想。単位:百万円、円。2022年4月期から「収益認識基準」を適用。EPS、DPSは普通株式の値。

 

(株)伊藤園の2024年4月期決算概要、2025年4月期業績予想等について、ご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.新・中期経営計画
3.2024年4月期決算概要
4.2025年4月期業績予想
5.マーケティング・事業戦略
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2024年4月期の売上高は前期比5.1%増の4,538億円。伊藤園(単独)は同4.5%増。タリーズコーヒージャパンが同13.7%増と大きく伸長した。営業利益は同27.7%増の250億円。原材料・資材高の影響はあったものの価格改定効果、収益改善の取組みにより、売上総利益は同6.9%増加し、広告費など販管費の増加を吸収した。売上高総利益率、営業利益率は前年に比べ、それぞれ0.6%、1.0%改善した。会社別では、伊藤園(単体)、タリーズコーヒージャパン、チチヤスなど国内各社が2桁の増益。原材料等の高騰の影響はあったものの、国内外における行動制限等の解除に伴う人流の増加やインバウンド回復等による需要の回復が当初の見込みを上回ったこと、および製品構成の変化による収益性の改善、生産・物流等の効率化が順調に進捗したため、売上・利益ともに期初予想を上回った。

     

  • 2025年4月期の売上高は前期比2.8%増の4,666億円、営業利益は同5.9%増の265億円の予想。引き続き原料・資材高騰の影響はあるものの、各種収益改善策を実施し増益を目指す。配当は、普通株式、優先株式、それぞれ44円/株(前期比2円増配)、56円/株(同2円増配)の予定。予想配当性向は普通株式31.3%、優先株式36.7%。

     

  • 2025年4月期を初年度、2029年4月期を最終年度とする5年間の新・中期経営計画を発表した。2040年頃の長期的な将来像を想定したうえでの、5年間の中期経営計画であり、「世界のティーカンパニーに向けてグローバル化を加速する」「経営環境変化に柔軟に対応し、国内において収益性重視の事業体制へ変革する」ことを目指す。

     

  • 「『お~いお茶』のグローバル化」「国内既存事業の盤石化」「新たな事業の創出」「経営基盤の強化」「サステナビリティ経営の推進」の5つの重点戦略を推進。2029年4月期営業利益率8%以上、ROE10%以上を目標としている。

     

  • 前回レポートでは、「厳しい事業環境ではあるが、下期にどれだけ売上・利益を積み上げていけるのか、注目したい」と記載したが、インバウンド回復等による需要の回復が順調だったことに加え、製品構成の変化による収益性の改善、生産・物流等の効率化が寄与し、どちらも下期予想を上回って着地した。今2025年4月期は、増収率、増益率ともに1桁の予想ではあるが、大谷翔平選手を起用したグローバル広告がどの様に寄与してくるのか、大いに注目したい。また、新・中期経営計画の各種施策の進捗も、逐次ウォッチしていきたい。

     

     

1.会社概要

緑茶などの茶系飲料、コーヒー飲料、野菜飲料等の飲料(ドリンク)や茶葉(リーフ)の製造・販売を中心に、子会社を通してタリーズコーヒー等の飲食店経営及びフランチャイズ(FC)展開やサプリメントの製造・販売等も手掛ける。国内では、「お~いお茶」等の緑茶飲料市場で36%(2023年)のトップ・シェアを有する。この他にも、ノンカフェイン茶系飲料No.1の「健康ミネラルむぎ茶」、野菜100%飲料No.1の「1日分の野菜」、及びボトル缶ブラックコーヒーNo.1の「TULLY'S COFFEE」といった人気ブランドを有し、いずれも年間販売数量が1,000万ケースを超える(「お~いお茶」は国内外合わせて約9,000万ケース)。
タリーズコーヒージャパン(株)やチチヤス(株)等の連結子会社32社、持分法適用関連会社2社等とグループを形成。「世界のティーカンパニー」を目指し、ニューヨークを中心に米国、中国、オーストラリア、東南アジア地域で、「お~いお茶」ブランドの確立と新しい緑茶市場の開拓に取り組んでいる。

 

【1-1 経営理念「お客様第一主義」】

 

“すべてのお客様を大切にすることが経営の基本である”とする「お客様第一主義」を経営理念としている。

 

お客様とは、同社とかかわる、消費者、株主、販売先、仕入先、金融機関、更には地域社会等のステークホルダー。ステークホルダー全てをお客様と位置付け、それぞれの意見や要望に真摯に向き合い、常にお客様の立場に立った対応を図ることを経営の根幹としている。

 

 

この経営理念の下、以下のミッション、ビジョンを掲げている。

ミッション

健康創造企業

お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会を実現する

*心身の健康

 

*社会の健康

 

*地球環境の健康

ビジョン

世界のティーカンパニー

茶スペシャリストとして世界の茶文化とつながり、おいしさと価値を広く伝える。

 

*グローバル

世界中で飲まれている茶を進化させ、世界中の人々の心身ともに健やかな生活を支える。

 

*価値創造

茶で培った知見を活かし、健康と持続可能な社会に貢献する価値を創出する。

 

*ユニーク

農業から資源循環まで、伝統と先端技術を融合させる独自性のある唯一無二の企業に。

 

【1-2 創業以来変わらない五つの製品開発コンセプト】

 

【1-3 事業概要】

事業は、飲料(ドリンク)や茶葉(リーフ)の製造販売を行うリーフ・ドリンク関連事業、タリーズコーヒージャパン(株)によるスペシャルティコーヒーの飲食店経営とFC展開の飲食関連事業、及びMason Distributors, Inc.(米国フロリダ州)が手掛けるサプリメントの製造・販売等のその他の事業に分かれる。

 

 

同社を代表する年間販売数量1,000万ケース超のブランド

 

(同社資料より)

 

【1-4 世界のティーカンパニー】

伊藤園グループは、世界のティーカンパニーをビジョンに掲げている。「グローバル」「価値創造」「ユニーク」を3つの柱におき、茶のスペシャリストとして世界の茶文化とつながり、おいしさと価値を広く伝えていく。そして、健康創造企業としてお客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現を目指している。

 

コーポレート・サステナビリティ
伊藤園グループは、「伊藤園グループ中長期環境目標」を策定し、対応を進めている。環境対応では「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言に賛同表明し、気候変動への対応を経営戦略の重要課題と位置づけている。今後も持続可能な社会の実現と、当社事業の持続性向上に向けた取組みを積極的に進めていく。

 

容器包装の取組み
「3R(リサイクル、リデュース、リプレイス&リユース)+Clean」を基本方針とし、2030年までに全ペットボトル製品をリサイクル素材等(生物由来素材を含む)に切り替えることを目指している。

 

伊藤園グループプラスチックに関する方針と実績

リサイクル(資源循環)

・2030年までに全ペットボトルに使用するリサイクル素材等*の割合を100%にすることを目指す。

・ペットボトル以外の用途においても、リサイクル素材の利用を推進する。

・行政機関、業界団体、取引先等と連携し、リサイクル率向上に向けた活動を推進する。

*生物由来素材を含む

リデュース(省資源化)

・さらなる容器包装の軽量化・使用量削減に向けて容器設計、生産方法の改良を行う。

・お~いお茶ペットボトル1本あたりに使用するプラスチック使用量を、2002年から約40%削減した(「お~いお茶」500ml、525mlペットボトルの場合)。

・「お~いお茶」ブランドで採用する2Lペットボトルは従来比約26%の軽量化を実現した。

リプレイス&リユース

・生物由来素材、生分解性素材の使用を推進する。ティーバッグのフィルターや紙パック製品のストローに採用している。

・飲食事業において、再利用可能な容器への代替も推進する。

・TULLY’S COFFEE 店舗ではHOT/COLD兼用の紙カップで提供を開始。CHICHI YASU LECT店

でもソフトクリームカップを紙容器に刷新した。

(同社資料を基に作成)

 

気候変動への対応
削減目標を設定して、CO2排出量の削減や茶葉に関する気候変動分析に取り組んでいる。

 

CO2の削減では、2022年4月に新たな数値目標を設定した。2030年度までに2018年度比で、Scope1(直接排出量)とScope2(エネルギー起源間接排出量)のCO2排出量を総量で50%削減、Scope3(その他間接排出量)については総量20%削減するとした。また2050年度までに、Scope1、Scope2、Scope3でカーボンニュートラルの目標を掲げている。これまで、飲料製造工場における環境配慮型充填システムの導入や、モーダルシフト、営業車両のエコドライブ推進、ヒートポンプ式自動販売機の積極導入などに取り組んできた。同社は飲料製造工場を自社で保有せず、外部に委託するファブレス方式を採用しているため、全国5ブロック約50の製造委託工場と連携し、2030年度の削減の目標達成に向けてこれまで以上に協働の取り組みを進めていく。また、「伊藤園グループプラスチックに関する方針」に基づき、2030年までに、ペットボトルに使用するリサイクル素材等の割合を100%にすることを目指している。リサイクル素材等を使用することにより、バージン樹脂より大幅なCO2排出量削減効果が期待でき、Scope3の目標達成に寄与する。

 

CO2排出量の削減目標

 

 

目標

2030年度

Scope1-2

総量50%削減

Scope3

総量20%削減

2050年度

Scope1-2

カーボンニュートラル

Scope3

*いずれも2018年度が基準年。原単位は売上百万円あたりの排出量。2030年度の総量20%削減目標は、足元の原料価格高騰などの影響を踏まえ、現時点での目標をパリ協定の「2℃より十分低い」目標に合わせて設定。

 

茶葉に関する気候変動分析では、独自の分析とシナリオ分析を継続的に行い、その結果を踏まえて、新たな産地開発や栽培管理手法、技術開発等に茶農家と協働して取り組んでいる。

 

伊藤園独自の持続可能な農業モデル

 

◎「茶産地育成事業」(1976年~)
国内茶園面積は近年減少傾向にあり、農業従事者数も減少傾向にあるとともに、農業従事者の平均年齢も高齢化が進んでいる。
こうした状況に対し、同社は高品質な茶葉の安定調達を目的に、個々の茶農家との契約栽培または産地の育成(新産地事業)を行う「茶産地育成事業」を1976年より展開しており、大規模茶園をはじめ、茶生産農家と連携して茶原料の持続的な調達に取り組んでいる。茶産地育成事業(新産地事業)に取り組む従事者の平均年齢は45歳、乗用型摘採機の導入も100%と、省力化や効率化の取り組みは他に例を見ない成果を生み出している。

 

地域活性化や持続的な農業経営など社会・事業者への価値が高い「新産地事業」は、2001年より宮崎県から始まり、2022年には埼玉県へと事業エリアが広がり、現在7県9地区に拡大している。
KPIである「国内展開面積」の目標を、2026年度2,650ha、2030年度2,800haとしている。

 

海外各国の品質基準への対応のため、積極的に減農薬や有機栽培へも取り組んでいる。KPIである「有機栽培生産量」の目標を、2026年度380t、2030年度500tとしている。
このため、持続可能な茶農業の実現に向けてDXを推進している。24年1月からは、ウォーターセル株式会社と共同開発した「農薬適否判定システム」の運用を開始。海外向けの緑茶原料が各国の農薬基準に適しているかを判定する。

 

同社では、「茶産地育成事業」は、経済的価値と社会的価値の双方を生み出す「お~いお茶」グローバルブランド化への力の源泉であると認識している。

 

◎持続可能な農業への取り組み
国と地方自治体、生産者、JAや協力企業と協力して、将来を見据えた農業の取組みにも注力している。
茶農業の技術開発や普及に向けたロードマップを策定し、ITの活用などによる各種技術の確立や複合経営の実施を通じて持続可能な農業の推進に貢献していく考えだ。
また、JAが推進する「ニッポンエールプロジェクト」においては、共同で製品開発を行っており、製品を通じて国内農業産地を応援。季節ごとに全国各地の果実を飲料にし、すべてのチャネルで販売している。

 

*循環型農業の確立
茶農業の技術開発を通じた循環型農業の確立にも取り組んでいる。
現在、茶殻に含まれる窒素成分を活かした循環型肥料による肥料コスト削減と環境負荷低減や、蒸気防除機の普及による化学農薬の低減・減農薬を目指した技術開発を進めている。
これらの技術を確立したのちは契約産地での検証を行い課題の抽出と解決やコストダウンを図り、契約産地での普及を図る。
原材料から製品まで「安心・安全・環境配慮」のブランドを確立し、海外への輸出拡大にもつなげていく。

 

(同社資料より)

 

茶系飲料などの製造過程で排出する茶殻を、日用品などにリサイクル(2001年~)
茶殻リサイクルシステムでは、含水のまま常温保存して輸送する技術、含水茶殻を使用した製品開発技術、及びCO2を吸収した茶葉(茶殻)の製品中への固定技術を活用し、茶殻(緑茶)の抗菌効果や消臭効果等の特性を活かした高付加価値製品を創出している。

 

健康創造企業としての取り組みとSDGs
同社は、「健康」に資する製品を中心に事業を展開しており、この取り組みを更に強めていく。具体的には、日本人が日常的に飲用する「お茶」のチカラで、健康で豊かに生きる暮らしをサポートし、1,200年続くお茶の歴史を新たに創造し、社会課題の解決に取組んでいる。
また、グループ経営理念である「お客様第一主義」に基づき、健康創造企業として持続的な成長を目指し、消費者課題、コミュニティ・社会、地球環境など7つの重要課題を設定。SDGsの目標に即した企業活動も行っていく。

 

◎7つのマテリアリティ
伊藤園グループが新たに策定した中長期経営計画に合わせ、外部環境の変化に対応するためマテリアリティの見直しを行った。その結果、「食生活と健康への貢献」「持続可能な農業への貢献」「環境」「地域社会・コミュニティとのつながりの深化」「持続可能なサプライチェーンへの貢献」「多様な人財と全員活躍の推進」「コーポレート・ガバナンス」の7つのマテリアリティを新たに特定した。新・中長期経営計画と相互に連動させながら、取組みを進めていく。

 

(同社資料より)

 

・食生活と健康への貢献
人生100年時代を見据えた研究開発、各世代の健康に資する製品・サービスを通じて、健康的で豊かな生活に貢献。
・持続可能な国内農業への貢献
茶産地育成事業を通じて、高付加価値原料の開発や環境配慮型農業の推進により、国内農業の活性化に貢献。
・環境
自然由来の製品を主として事業活動を営む企業として、人類共有の地球環境を守る課題に取組む。
・地域社会・コミュニティとのつながりの深化
様々なステークホルダーとの対話を通じ、地域社会の課題解決に貢献。
また、 お茶を介したコミュニケーションにより、心身ともに健康をサポートする。
・持続可能なサプライチェーンへの貢献
サプライヤーとの持続的なパートナーシップにより、社会・環境課題の解決と双方の持続的な収益の両立を実現する。
・多様な人財と全員活躍の推進
バリューチェーンにおける全ての人々の人権を尊重するとともに、全従業員が健康でいきいきと活躍する組織づくりに取組む。
・コーポレート・ガバナンス
サステナビリティ経営の推進と実践で、環境・社会課題への対応とリスク管理を強化し、企業価値を向上させる。

 

(同社資料を基に作成)

 

ROE経営の強化
ROEを特に重要な経営指標として位置付けており、同社取締役に対する変動報酬の評価項目にROE等を選定している。
2024年6月に公表した新・中長期経営計画においても、引き続きROE10%以上を目標としている。ROE向上に向けては「収益性の向上」と「資産効率の向上」を特に重要視している。

 

(同社資料より)

 

 

17/4期

18/4期

19/4期

20/4期

21/4期

22/4期

23/4期

24/4期

ROE(%)

10.5

9.0

9.9

5.2

4.7

8.2

7.8

8.9

 売上高当期純利益率(%)

2.88

2.54

2.87

1.61

1.57

3.23

2.99

3.45

 総資産回転率(回)

1.61

1.64

1.67

1.63

1.43

1.21

1.29

1.31

 レバレッジ(倍)

2.25

2.17

2.07

2.00

2.08

2.12

2.01

1.97

株式会社インベストメントブリッジが計算。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

収益性向上に加え、総資産回転率の更なる改善が進めば、一段のROE上昇が期待できよう。

 

2.新・中期経営計画

2024年6月、2025年4月期を初年度、2029年4月期を最終年度とする5年間の新・中期経営計画を発表した。

 

【2-1 前中期経営計画の振り返り】

事業の効率化や価格改定により売上伸長・収益性改善を実現するとともに、「お~いお茶」のグローバル化に向けて着実に前進することができた。

 

(同社資料より)

 

【2-2 新・中期経営計画概要】

(1)中期経営計画の見直し
2024年は同社創業60周年にあたる。前・中期経営計画遂行中ではあるが、2年間においては収益性改善や海外展開で一定の成果を残すことができた一方、原材料費の高騰など、想定以上に経営環境が大きく変化したため、さらなる成長と収益性向上を目指すために、新たな中期経営計画を策定することとした。

 

2040年頃の長期的な将来像を想定したうえでの、5年間の中期経営計画であり、「世界のティーカンパニーに向けてグローバル化を加速する」「経営環境変化に柔軟に対応し、収益性重視の事業体制へ変革する」ことを目指す。

 

主な変更点としては、「長期的な定量目標を設定」「『お~いお茶』のグローバル化のための施策を拡充」「国内既存事業の盤石化のための施策を拡充」した点である。

 

(2)新・中期経営計画の考え方
2040年頃の長期的な将来像を設定し、バックキャストで新たな中期経営計画を策定した。
第1~第3ステージを設定し、「ユニーク」「価値創造」「グローバル」の3つを取り組みの柱として長期ビジョン実現に向かう。

 

(同社資料より)

 

(3)2040年を見据えた経営環境の想定・対応方針
2040年頃を見据え、各事業や経営体制のリスクと機会を認識し、長期の対応方針を策定している。

 

(同社資料より)

 

(4)2040年の伊藤園グループの将来像
「世界100ヵ国以上の地域において茶を中心とした事業活動により、お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現に貢献」することを目指す姿としている。

 

グローバルなマーケティング・ブランド戦略を展開し、国内事業は収益性向上(営業利益率10%以上)、海外事業は事業拡大(販売国100ヵ国以上)を目指す。
「ユニークさの進化」においては、原料調達の優位性構築、生産におけるグローバルなブロック生産体制の構築、研究開発投資の大幅拡充を掲げている。
経営基盤については、グローバル本社の設立を始めとした高い生産性の機能別組織の構築、重点分野における人財の拡充を図る。

 

(5)ロードマップ
今回の中期経営計画では、2029年4月期、「お~いお茶」のグローバルブランド化により販売国60ヵ国以上、国内既存事業の盤石化により単独営業利益率8.5%以上を目指すほか、「ROE10%以上」「総還元性向40%以上」などを目標としている。

(同社資料より)

【2-3 重点戦略】

5つの重点戦略を推進する。
「①『お~いお茶』のグローバル化」「②国内既存事業の盤石化」「③新たな事業の創出」「④経営基盤の強化」により、2029年4月期営業利益率8%以上を達成する。
「⑤サステナビリティ経営の推進」により、7つのマテリアリティについてKPIを達成する。

 

(1)お~いお茶のグローバル化
「お~いお茶」のコア・バリューである、「いれたてのような香り・素材本来の美味しさをいつでもどこでも楽しめる」を世界中に伝えるべく、統一したグローバル広告を世界へ発信するとともに、グローバル共通のブランドデザインと品質で商品を提供し、日本の伝統と革新的技術が融合した「お~いお茶」を世界中へ広めるべく、グローバルマーケティングを展開する。
一方、エリアに応じた広告販促により、各国の文化と融合し、日常生活に浸透させることを目的にローカルマーケティングを実施し、相乗効果を図る。北米ではトータルマーケティングの拡充、日本では「茶事業」そのもののブランド化、アジア・豪州・欧州ではSNSを利用した飲用体験の拡散を図る。

 

マーケティングと並行して、生産・販売もグローバル体制を構築する。
生産においては、新製法による現地生産を加速するほか、ブロック生産・ブロック品質管理体制を構築する。
販売においては、茶市場の成長エリアを中心とした販売国の拡大、エリア拡大の拠点となる現地法人の設立を進める。

 

(2)国内既存事業の盤石化
「サプライチェーン」「製品・マーケティング」「営業体制」において、環境変化に合わせ市場・顧客・地域に最適化した事業体制への再構築に取り組む。

 

(同社資料より)

 

(3)新たな事業の創出
茶・健康を軸に自社EC、原料卸事業を拡張するとともに、シナジーが期待できる企業との資本提携・M&Aを推進し、事業領域を拡大する。
アライアンスに関しては、5年間で300億円の投資を計画している。

 

(同社資料より)

 

(4)その他
①経営基盤の強化
伊藤園グループのガバナンス体制の強化、シナジー創出の強化を図る。
人的資本経営、DX、リスクマネジメントを積極的に推進する。

 

②サステナビリティ経営の推進
事業戦略と結合したマテリアリティへの対応による、100年企業に向けた持続的な成長と価値創造実現のため、KPI達成に注力する。

 

【2-4 数値目標】

以下のような目標を掲げている。
(1)財務指標

 

2024年4月期

2029年4月期

2041年4月期

連結売上高

4,538億円

年平均伸長率2%以上

(海外8%以上※)

年平均伸長率3%以上

営業利益率

5.5%

8%以上

10%以上

ROE

8.9%

10%以上

-

総還元性向

52.7%

40%以上

-

海外お~いお茶売上

前期比 +12%

年平均伸長率24%以上

年平均伸長率10%以上

※為替の影響を除く

 

(2)キャッシュ・フロー
5年間累計(2025年4月期~2029年4月期)

営業CF

1,600億円以上

<主要項目>

成長投資:研究開発、マーケティング、人財、DX、環境

サプライチェーンへの投資:ファブレス生産における工場設備

投資CF

設備投資 550億円

事業投資 300億円(海外200億円、国内100億円)

財務CF

株主還元 450億円以上(総還元性向40%以上)

有利子負債返済 250億円

 

 

3.2024年4月期決算概要

【3-1 国内飲料市場の動向】

 

2019年

2020年

2021年

2022年

2023年

2024年

見通し

前年比

19年比

茶系飲料

9,665

8,770

8,900

9,200

9,660

9,860

+2.1%

+2.0%

緑茶飲料

4,450

4,180

4,260

4,350

4,580

4,660

+1.7%

+4.7%

その他茶系飲料

5,215

4,590

4,640

4,850

5,080

5,200

+2.4%

-0.3%

コーヒー飲料

9,150

8,050

8,050

8,090

8,490

8,600

+1.3%

-6.0%

炭酸飲料

7,330

7,350

7,470

7,540

7,690

7,840

+2.0%

+7.0%

ミネラルウォーター

2,840

2,560

2,610

2,920

3,250

3,420

+5.2%

+20.4%

果実飲料

2,800

2,240

2,210

2,300

2,550

2,650

+3.9%

-5.4%

スポーツドリンク

2,265

1,930

1,850

2,070

2,150

2,200

+2.3%

-2.9%

野菜飲料

1,540

1,570

1,520

1,410

1,410

1,430

+1.4%

-7.1%

機能性・その他

2,000

1,780

1,780

2,100

2,270

2,300

+1.3%

+15.0%

国内飲料市場

37,590

34,250

34,390

35,630

37,470

38,300

+2.2%

+1.9%

*単位:億円。同社資料を基に作成。

 

2024年の国内飲料市場の規模は、前年比2.2%伸長の見通し。コロナ禍前の2019年水準を上回り、本格的な回復傾向にある。前年比では、全カテゴリーが好調な一方、2019年比ではコーヒー飲料、野菜飲料等は低調が続いている。
同社が無糖茶飲料「缶入りウーロン茶」を発売した1980年には、国内飲料における無糖飲料比率は1%であったが、2023年には56%まで上昇。2024年4月期における同社の無糖飲料比率は75%以上で、消費者の健康志向の更なる高まりとともに、無糖飲料の比率は今後も上昇すると同社では考えている。

 

(同社資料を基に作成)

 

【3-2 連結業績】

 

23/4期 

構成比

24/4期 

構成比

前期比

予想比

売上高

431,674

100.0%

453,899

100.0%

+5.1%

+0.9%

売上総利益

165,585

38.4%

177,067

39.0%

+6.9%

+1.9%

販管費

145,996

33.8%

152,044

33.5%

+4.1%

+1.0%

営業利益

19,588

4.5%

25,023

5.5%

+27.7%

+7.9%

経常利益

20,341

4.7%

26,681

5.9%

+31.2%

+10.3%

当期純利益

12,888

3.0%

15,650

3.4%

+21.4%

+6.5%

*単位:百万円、当期純利益は、親会社株主に帰属する当期純利益。予想比は23年11月公表の業績予想に対する比率。

 

(同社資料より)

 

増収増益、売上・利益とも予想を上回る
売上高は前期比5.1%増の4,538億円。伊藤園(単独)は同4.5%増。タリーズコーヒージャパンが同13.7%増と大きく伸長した。
営業利益は同27.7%増の250億円。原材料・資材高の影響はあったものの価格改定効果、収益改善の取組みにより、売上総利益は同6.9%増加し、広告費など販管費の増加を吸収した。売上高総利益率、営業利益率は前年に比べ、それぞれ0.6%、1.0%改善した。会社別では、伊藤園(単体)、タリーズコーヒージャパン、チチヤスなど国内各社が2桁の増益。
原材料等の高騰の影響はあったものの、国内外における行動制限等の解除に伴う人流の増加やインバウンド回復等による需要の回復が当初の見込みを上回ったこと、および製品構成の変化による収益性の改善、生産・物流等の効率化が順調に進捗したため、売上・利益ともに期初予想を上回った。

 

会社別売上高・利益

 

23/4期 

対売上比

24/4期

対売上比

前期比

予想比

伊藤園(単独)

315,025

73.0%

329,069

72.5%

+4.5%

+0.8%

タリーズコーヒー

35,495

8.2%

40,352

8.9%

+13.7%

+1.9%

チチヤス

11,947

2.8%

12,681

2.8%

+6.1%

-0.1%

その他国内

50,106

11.6%

51,101

11.3%

+2.0%

-0.2%

米国事業

45,361

10.5%

46,598

10.3%

+2.7%

-1.8%

その他海外

5,891

1.4%

6,595

1.5%

+12.0%

+0.8%

連結消去

-32,150

-7.5%

-32,498

-7.3%

-

-

連結売上高

431,674

100.0%

453,899

100.0%

+5.1%

+0.9%

伊藤園(単独)

16,785

5.3%

18,819

5.7%

+12.1%

+2.3%

タリーズコーヒー

2,429

6.8%

3,236

8.0%

+33.2%

+9.9%

チチヤス

670

5.6%

1,227

9.7%

+83.1%

+33.7%

その他国内

685

1.4%

675

1.3%

-1.5%

-23.5%

米国事業

-1,483

-

393

0.8%

-

-29.2%

その他海外

1,049

17.8%

1,397

21.2%

+33.2%

+7.4%

連結消去

-548

-

-725

-

-

-

連結営業利益

19,588

4.5%

25,023

5.5%

+27.7%

+7.9%

*単位:百万円。為替レート(米ドル期中平均):23/4期136.10円、24/4期146.27円。予想比は23年11月公表の業績予想に対する比率。

 

【3-3 財政状態及びキャッシュ・フロー】

◎財政状態

 

23年4月

24年4月

増減

 

23年4月

24年4月

増減

流動資産

234,393

243,749

+9,356

流動負債

89,226

96,665

+7,439

現預金

104,181

109,313

+5,132

仕入債務

29,958

31,616

+1,658

売上債権

60,195

62,430

+2,235

短期借入金

12,743

14,442

+1,699

たな卸資産

57,647

57,355

-292

固定負債

77,419

74,010

-3,409

固定資産

104,381

110,142

+5,761

長期借入金

58,210

57,306

-904

有形固定資産

72,005

74,036

+2,031

負債合計

166,646

170,675

+4,029

無形固定資産

8,270

7,110

-1,160

純資産

172,128

183,216

+11,088

投資その他の資産

24,105

28,995

+4,890

利益剰余金

138,827

149,154

+10,327

資産合計

338,774

353,892

+15,118

負債純資産合計

338,774

353,892

+15,118

*単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

現預金、投資その他の資産の増加等で資産合計は前期末比151億円増加し3,538億円。仕入債務、短期借入金の増加等で負債合計は同40億円増加の1,706億円。利益剰余金の増加などで純資産は同110億円増加し、1,832億円。
自己資本比率は前期末から0.9%上昇し51.3%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

23/4期

24/4期

増減

営業キャッシュ・フロー(A)

23,773

25,482

+1,709

投資キャッシュ・フロー(B)

-8,638

-10,737

-2,099

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

15,135

14,745

-390

財務キャッシュ・フロー

-9,130

-12,213

-3,083

現金及び現金同等物期末残高

100,899

105,397

+4,498

*単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

税金等調整前当期純利益の増加などで営業CFのプラス幅は拡大。有形及び無形固定資産の取得による支出の増加で投資CFのマイナス幅は拡大。キャッシュ・ポジションは上昇した。

4.2025年4月期業績予想

【4-1 連結業績】

 

24/4期 

構成比

25/4期(予) 

構成比

前期比

売上高

453,899

100.0%

466,600

100.0%

+2.8%

売上総利益

177,067

39.0%

186,150

39.9%

+5.1%

販管費

152,044

33.5%

159,650

34.2%

+5.0%

営業利益

25,023

5.5%

26,500

5.7%

+5.9%

経常利益

26,681

5.9%

26,700

5.7%

+0.1%

当期純利益

15,650

3.4%

17,200

3.7%

+9.9%

*単位:百万円

 

増収増益を予想
売上高は前期比2.8%増の4,666億円、営業利益は同5.9%増の265億円の予想。
引き続き原料・資材高騰の影響はあるものの、各種収益改善策を実施し増益を目指す。
配当は、普通株式、優先株式、それぞれ44円/株(前期比2円増配)、56円/株(同2円増配)の予定。予想配当性向は普通株式31.3%、優先株式36.7%。

 

(同社資料より)

 

販管費の内訳

 

24/4期

対売上比

25/4期(予)

対売上比

前期比

広告宣伝費

11,454

2.5%

12,820

2.7%

+11.9%

運送費

14,168

3.1%

15,292

3.3%

+7.9%

減価償却費

6,156

1.4%

6,837

1.5%

+11.1%

合計

152,044

33.5%

159,650

34.2%

+5.0%

*単位:百万円

 

原料・資材等の高騰を吸収するため、コロナ禍前から取り組んでいる物流効率の改善に引き続き積極的に取り組んで行く考えだ。

 

会社別売上高・利益

 

24/4期 

対売上比

25/4期(予) 

対売上比

前期比

伊藤園(単独)

329,069

72.5%

336,470

72.1%

+2.2%

タリーズコーヒー

40,352

8.9%

43,200

9.3%

+7.1%

チチヤス

12,681

2.8%

12,656

2.7%

-0.2%

その他国内

51,101

11.3%

58,324

12.5%

+14.1%

米国事業

46,598

10.3%

44,318

9.5%

-4.9%

その他海外

6,595

1.5%

6,693

1.4%

+1.5%

連結消去

-32,498

-7.3%

-35,062

-7.5%

-

連結売上高

453,899

100.0%

466,600

100.0%

+2.8%

伊藤園(単独)

18,819

5.7%

19,600

5.8%

+4.1%

タリーズコーヒー

3,236

8.0%

3,380

7.8%

+4.4%

チチヤス

1,227

9.7%

1,180

9.3%

-3.9%

その他国内

675

1.3%

534

0.9%

-20.9%

米国事業

393

0.8%

984

2.2%

+149.9%

その他海外

1,397

21.2%

1,359

20.3%

-2.7%

連結消去

-725

-

-537

-

-

連結営業利益

25,023

5.5%

26,500

5.7%

+5.9%

*単位:百万円。為替レート(米ドル期中平均):24/4期146.27円、25/4期140.00円。

 

5.マーケティング・事業戦略

【5-1 緑茶飲料】

2023年の緑茶飲料市場は前年比5.3%伸長し、4,580億円と過去最高を更新。2024年も更に拡大する見込みだ。
2023年の同社の販売金額シェアは2022年より1ポイント上昇の36%となった。
同社では、消費者の飲用シーンに合わせたラインアップ強化を進めている。「お~いお茶」は世界ベースの販売目標を1億ケースとしている。

 

(同社資料より)

 

リーフ製品を通じた茶文化の継承
家庭用リーフ市場は縮小傾向にあるが、同社のシェアはインスタント(顆粒)製品が好調なこともあり、拡大が続いている。
日本の伝統文化である「お茶」を継承し、お茶に親しんでもらう機会を創出するために、茶業関係者と農林水産省と協働で、「茶育」を実施している。同プロジェクトでは、学校教育の場での「茶育」を推進するため、茶育に取組む茶業関係者と学校関係者をマッチングし、小中学校へ急須を寄付するほか、寄付先で「食育活動」を実施している。
また、お茶の未来を共創する拠点となる複合型博物館である「お茶の文化創造博物館」 「お~いお茶ミュージアム」を開設した。

 

お~いお茶の海外動向
「お~いお茶」飲料の販売数量は増加傾向にあり、2024年は前年比24%増となる見通し。
世界各国・地域の各販売エリアのニーズに合わせた製品を提供しており、北米の飲料製品は前年比13.2%増、シンガポールのティーバッグ製品は同17.9%増などと好調だ。
また、ベトナムでは、飲料製品が前年比31.7%増、ティーバッグ製品が同61.3%増と販売が好調である。欧州市場・アセアン市場における伊藤園グループの存在感と「お~いお茶」ブランドの認知度を高めるため、2024年4月にドイツとベトナムで海外子会社を設立した。

 

「お~いお茶」は、世界40の国や地域で販売しており、グローバルブランド化の加速を図っている。
「お~いお茶」のコア・バリューである「いれたてのような香り・素材本来の美味しさをいつでもどこでも楽しめる」を世界中へ拡大・浸透させるべく、2024年4月に米国MLBで活躍する大谷翔平選手とのグローバル契約を締結した。キャンペーン開催のほか、国内外85カ所以上の巨大屋外広告を設置する計画だ。また、「お~いお茶」の魅力を伝統文化とともに届けるため、歌舞伎役者市川團十郎氏のTV-CMを公開し、世界10ヵ国で英語版配信する予定である。

 

【5-2 むぎ茶・ノンカフェイン飲料】

ノンカフェイン飲料として「健康ミネラルむぎ茶」の販売が引き続き堅調である。
健康志向による無糖・ノンカフェイン飲料の需要が拡大しており、黒豆茶製品、はと麦茶製品など、日本古来のノンカフェイン健康茶を新たなカテゴリーとして育成するほか、南アフリカでしか採れない希少な植物を使用したルイボスティー製品も好評だ。

 

【5-3 野菜・果汁製品】

厳しい状況が続く野菜・果汁製品であるが、健康志向の高まりを見据え、強化を進める。
「1日分の野菜」ブランドにおいては、ライフスタイルの変化に合わせ新容器でラインアップを強化するほか、TV-CMで野菜の栄養を補うことができる価値を訴求する。
新提案として、普段の食事にかけるだけで野菜不足を補える簡便・汎用性に優れた野菜パウダー「ささっと1秒 マシマシ野菜」の販売を開始した。
「全国から届けられる日本産のたべものに、そしてニッポンに、ここからエールをおくろう」というコンセプトのもとJA全農と伊藤園を含むメーカーや販売先が協力して産地を応援する活動「ニッポンエールプロジェクト」において、野菜・果汁製品を展開したところ、ドリンク製品の販売金額が前年比68.5%増と大きく伸長した。

 

【5-4 タリーズブランド】

タリーズコーヒーブランドは、「BARISTA’S BLACK」や「BARISTA’S BLACK キリマンジャロ」などを牽引役に、年間累計販売数量は過去最高を記録した。価格改定を実施したが、数量・金額とも前年を上回って推移している。
同社では好調の要因を「消費者がコロナ禍でレギュラーコーヒーのおいしさに気付いた」「外出先でも手軽においしいコーヒー飲料を求める傾向が強まっている」「ショップクオリティを追求した飲料製品が評価されている」ことなどであると分析している。
今後も、原料と品質にこだわった製品展開を進めていく。

 

(同社資料より)

 

【5-5 タリーズコーヒージャパン】

売上高、店舗数とも順調に拡大している。2024年4月末の店舗数は前期末比25店舗増の791店舗。タリーズコーヒー、コンパクトタイプのタリーズコーヒーセレクト、紅茶も扱う「&TEAショップ」、ドライブスルーの4業態を軸とした店舗展開を進めている。

 

(同社資料より)

 

高品質で安定的な原料確保のための取組みも行っている。
「貴重な品種から生み出されるおいしいコーヒーを後世に残したい」という思いから、各国の産地に深く入り込んでのコーヒー豆栽培にも関与し、ペルーではセンフロカフェ農協と「接ぎ木プロジェクト」を共同実施している。プロジェクトのテスト生産で初収穫したものを、2024年5月に一部店舗において数量限定で販売した。

 

伊藤園とのシナジー創出にも注力している。
家庭でも店舗でも楽しめる、バリスタコンテストシグニチャードリンクのコンセプト製品を伊藤園とタリーズの連動で販売を開始した。

 

【5-6 緑茶の研究開発】

伊藤園中央研究所では、お茶の価値を科学の目でとらえ、蓄積された基盤技術を用い、多様な関係者とのアライアンスにより技術やアイディアを結実し、「人生100年時代を豊かに生きる」ための生活改善提案に向けた研究開発を行っている。
2024年3月には、最先端の科学を伝える著名な国際的学術誌「Nature」に「緑茶は認知機能と睡眠に良い影響を及ぼすのか?」をテーマとした研究記事広告を掲載した。
このほか、”お茶”を通した健康課題の解決を提案し、人生100年時代に貢献するとともに、健康に関する知恵を発信する「伊藤園ウェルネスフォーラム」を開催している。
2024年3月に開催した第9回の同フォーラムでは、”究極の健康課題”ともいわれるイートロス(食べることのできない状態が続くこと)と、その予防について、専門家とともに対策をWEB発信した。

 

【5-7 垂直統合型ビジネスモデルの進化】

同社では健康創造企業として7つのマテリアリティを特定している。
お茶で培った茶畑からの垂直統合型ビジネスモデルとマテリアリティを連携、進化させることで成長力の源泉の強化を図る。
具体的には、「お茶から大麦やコーヒー豆など他カテゴリーへの水平展開」「多様なパートナーシップの構築による事業強化」「グループシナジーの発揮」等である。

 

(同社資料より)

6.今後の注目点

前回レポートでは、「厳しい事業環境ではあるが、下期にどれだけ売上・利益を積み上げていけるのか、注目したい」と記載したが、インバウンド回復等による需要の回復が順調だったことに加え、製品構成の変化による収益性の改善、生産・物流等の効率化が寄与し、どちらも下期予想を上回って着地した。今2025年4月期は、増収率、増益率ともに1桁の予想ではあるが、大谷翔平選手を起用したグローバル広告がどの様に寄与してくるのか、大いに注目したい。
また、新・中期経営計画の各種施策の進捗も、逐次ウォッチしていきたい。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

13名、うち社外4名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2023年12月4日)
基本的な考え方
当社は、グループ経営理念「お客様第一主義」の下、持続的な成長と企業価値を高めるため、国・地域社会、消費者、株主、販売先、仕入先、金融機関、従業員等のステークホルダーと積極的に協調して、企業の社会的責任を果たすことを経営の根幹とし、コーポレート・ガバナンスを支える基本的な考え方とします。
当社は、世界中のお客様の健康に貢献する「健康創造企業」として、「世界のティーカンパニー」という長期ビジョンの実現に向けて、より一層のコーポレート・ガバナンス体制の強化・充実に取り組みます。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則実施しない原則とその理由>
【補充原則2-4(1) 中核人材の登用等における多様性の確保】
<中核人材の登用等における多様性の確保についての自主的かつ測定可能な「目標」>
(1)女性の管理職登用
当社では、実力主義の考えのもと、性別の区別なく、役員・管理職の登用を行っています。また、多様性の確保の観点から、女性の活躍推進を経営の重要な課題と認識し、2026年度までに女性の管理職比率10%(2022年度3.3%)を目指します。また、その実現に向けての取組みとして、次期管理職候補となる指導的役割を担う女性社員の割合も15%(2022年度7.2%)を目標に取り組みます。その他にも、女性社員の採用強化、定着率向上、家庭と仕事の両立支援強化等を通して、管理職の育成に取り組んでいます。

 

(2)中途採用者の管理職登用
当社の従業員全体に占める中途採用者の割合は23.2%であり、管理職に占める中途採用者の割合は16.9%になります。様々な経験・知識を有する人材を、その実力に応じて管理職として登用・育成することで、多様な人材がより活躍できる環境を整備しています。中途採用者については、今後も公平・公正な登用を継続し、中途採用者の管理職比率については中途採用者割合と同等以上を目標として進めていきます。

 

(3)外国人の管理職登用  
管理職登用において、国籍にかかわらず各国・各グループ会社においてそれぞれの実力に応じて登用されています。グループ全体の従業員に占める外国人の割合は9.12%(740人)です。当社における外国人従業員は現在15人であり、多様なバックグラウンドを有した社員が活躍しています。現在は「世界のティーカンパニー」を目指す企業として、実力主義の考えに基づきグループ全体での登用を推進している段階であり、外国人の管理職登用に向けた目標については設定していません。
今後の事業展開に応じて、外国人の管理職登用における目標を検討していきます。

 

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示】
当社は、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針を示すものとして、取締役会の決議に基づき、「株式会社伊藤園 コーポレートガバナンス・ガイドライン」(以下「当社ガイドライン」)を定め、当社コーポレートサイトにおいて開示していますので併せてご参照ください。
https://www.itoen.co.jp/company/governance/

 

【原則1-4 政策保有株式】
当社は、原則として政策保有株式を保有しない方針です。ただし、取引関係の維持・強化など、当社グループの中長期的な企業価値向上に資すると認められる場合に限り、政策保有を行います。また、政策保有株式について、毎年、取締役会にて個別銘柄ごとに保有目的が適切か、投下資本に対するリタ-ンが資本コストを上回っているか等を検証し、保有意義の確認を行います。経済合理性と保有意義が希薄化してきた銘柄については、相手先企業と対話の上、売却及び縮減を進めます。
当社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、各議案の内容を精査し、当社及び保有先の企業価値の向上に資するものか否かを総合的に判断した上で適切に行います。
当社は、当社の株式を政策保有株式として保有している会社(以下「政策保有株主」)から売却等の意向が示された場合には、売却等を妨げません。また、政策保有株主との間の取引については、その経済合理性を十分に検証し、当社や株主共同の利益を害するような取引は行いません。
(当社ガイドライン第3章4.政策保有株式に関する方針)
 2023年10月の取締役会にて、全保有銘柄につき、保有状況を検証しております。

 

【補充原則2-4(1)中核人材の登用等における多様性の確保】
<中核人材の登用等における多様性の確保についての「考え方」>
当社は、企業にとって最も大切な財産は「人」であるという考え方に基づき、「伊藤園グループ人材方針」を定めています。この中で人材の登用については、従業員の性別、国籍、人種、年齢、障がいの有無、経験等の多様な視点や価値観が会社の持続的な成長の強みとなるとの認識に立ち、多様性の確保に取り組んでいます。
(当社ガイドライン第4章3.多様性の確保)

 

<多様性の確保に向けた「人材育成方針」及び「社内環境整備方針」、その状況>
(1)人材育成方針
当社は実力主義の考えのもと、チャンスは社員一人ひとりに平等であり、評価は公正に行うことを基本として、常に前向きに挑戦する人材の育成に力を入れています。多様な人材が、あるべき姿を求め、自ら考え、学び、率先して行動し、自らの夢を実現することこそが、企業の持続的な成長と発展を支え、企業価値を高めると信じ、社員の自己実現に向けたキャリア形成を支援しています。

 

①コンプライアンス教育
「伊藤園グループ行動規範」に基づき、全社員に対して性別、年齢、民族、人種、国籍、宗教、信条、社会的身分、門地、障がいの有無等による差別をせず、人権を尊重し、個人の適性能力により公正に取扱いがなされるよう教育しています。

 

②管理職教育
管理職に対しては、多様性の確保の重要性について理解を深める教育を実施するとともに、多様な人材が活躍できるよう整備された各種制度の目的と内容について教育をしています。

 

③女性活躍推進研修
女性社員が自己の能力を充分に発揮し、更なる活躍ができるようキャリア・ライフプランを再考・形成できる場を設けています。階層別の女性教育を実施することで女性社員のモチベーションや定着率向上、家庭と仕事の両立支援、管理職の育成などの強化に繋げています。

 

④海外人材育成教育
今後の海外事業を支える人材の育成を目的に、異文化の理解とコミュニケーションの促進を主眼とした教育を実施しています。具体的には、近い将来海外勤務を希望する社員を募り事前に教育を行うプレエントリー制度、その後実際に海外に渡航し研修を受ける海外研修生制度により、社員のキャリア支援を行うとともに異文化への理解の促進を図っています。

 

(2)社内環境整備方針
当社では、社員一人ひとりが常に前向きに挑戦し、互いに切磋琢磨しながら、組織力を活かし、環境の変化に迅速に対応できる、創造性と生産性の高い組織づくりを目指します。その中で、多様な人材が一人ひとりの状況に応じて柔軟に働き方を選択できるようにすることで、ワークライフバランスを推進し、誰もが働きやすい職場になるよう環境整備を行っています。

 

①伊藤園ファミリーサポート制度
社員とその家族のライフイベント(結婚・妊娠・出産・育児・介護・自己啓発等)における支援制度を「伊藤園ファミリーサポート制度」として整備し総合的な支援を行っています。
 
②職場環境改善推進委員会
職場環境の総合的な課題及び改善策を検討し、より良い職場環境をつくるため、職場環境改善推進委員会(原則年2回開催)を設置しています。委員会のもとには、各事業所の代表者による地区委員会が設置され、労働時間・職場の安全・衛生管理などの課題や今後の働き方の見直しについて意見交換をしています。2022年度は「健康」と「防災・労災対策」「労働時間管理」について情報を共有し、全国28エリアごとに職場で学ぶ機会をつくりました。

 

③障がい者支援
各職場で働く障がいを有する社員に対して、人事部門が定期的に訪問し、社員及びその家族との面談、公共の支援団体との連携を図ることで、障がいを有する社員がいきいきと長く働けるよう支援しています。

 

④Voice制度(社内提案制度)
職種にかかわらず全社員が新しい製品や販売促進の提案等ができる「Voice制度」を設けています。この制度を通じて、全社員が「STILL NOWの精神=今でもなお、お客様は何を不満に思っているか」を常に意識するとともに、優れた提案には社内表彰を行うことで社員のモチベーション向上にも寄与しています。
人材育成・社内環境整備の詳細は、当社コーポレートサイトをご参照ください。

 

https://www.itoen.co.jp/sustainability/human_resources/

 

【補充原則3-1(3) サステナビリティについての取組み等】
<サステナビリティについての取組み>
当社グループは、サステナビリティ経営の推進と実践により、社会・環境課題の解決と企業価値向上の両立(共有価値の創造:CSV)を目指しています。外部環境の変化に対応するため、「伊藤園グループサステナビリティ基本方針」に則り、サステナビリティ重要課題として特定した7つのマテリアリティ(「食生活と健康への貢献」「持続可能な国内農業への貢献」「環境」「地域社会・コミュニティとのつながりの深化」「持続可能なサプライチェーンへの貢献」「多様な人財と全員活躍の推進」「コーポレート・ガバナンス」)を経営戦略に据え、中長期経営計画と相互に連動させた取組みを推進しています。

 

サステナビリティ経営の推進と強化のため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会(年4回開催)を設置し、マテリアリティの特定及び見直しと取組みの推進、社会・環境課題に関する対策と方針などを検討しています。サステナビリティ推進委員会にて検討された重要事項は、執行役員会及び取締役会に報告・審議され、経営戦略に反映しています。

 

また、当社グループは気候変動に関わる諸課題の解決に向けて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しています。バリューチェーン全体を対象に、「1.5/2℃」と「4℃」の2つのシナリオを設定し、気候変動に伴うリスクと機会が事業活動に与える影響の評価と、対応策の検討を進めています。2022年度は、原料農作物について2021年度に実施した気温上昇による収量、価格への影響分析に加えて、調達産地の水リスクを追加で分析したほか、渇水・風水害のリスクについては、連結子会社の工場へ分析範囲を拡大し、影響を評価しました。詳細は統合レポートや当社ホームページ等に掲載しています。
統合レポート: https://www.itoen.co.jp/ir/library/report_backnumber/
TCFD提言に沿った情報開示: https://www.itoen.co.jp/sustainability/environment/tcfd/

 

<人的資本についての取組み>
当社では、最も大切な財産は「人」であるという考え方に基づき、常に前向きに挑戦できる人材の育成を目指しています。人材を「人財」として捉え、人的資源「コスト(=管理)」から人的資本「投資(=価値創造)」とすることで経営戦略と連動した取組みを実現していきます。

 

(1)社内研修制度「伊藤園大学・伊藤園大学院」
社員の成長を促進し、社員自らの夢を実現するための一つの支援として社内研修制度「伊藤園大学・伊藤園大学院」を毎年開設し、ビジネス・経営等に必要な専門知識を習得できる教育の機会を提供することで、積極的な自己啓発支援を行っています。

 

(2)「伊藤園ティーテイスター制度」
1994年から開始した「ティーテイスター(茶資格)制度」は、お茶に関する高い知識と技術を持つ社員に資格を与え、お茶に関する知識と技術の向上、社内外への茶文化の普及などを目指した伊藤園グループ独自の制度です(2017年3月より、厚生労働省認定の社内検定制度となりました)。 「世界のティーカンパニー」の実現に向けた社員の育成強化のひとつとして、国内外のグループ会社で取り組んでいます。

 

(3)健康経営
社員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する「健康経営」の観点から、2021年5月に「伊藤園グループいきいき健康宣言」を策定しています。同宣言をもとに、社員の健康保持・増進の支援体制を強化し、社員自身の健康に関する意識向上を図る取組みを行っています。2023年3月には2年連続で「健康経営優良法人(大規模法人部門)2023 ホワイト500」の認定を受けました。
今後も、「健康創造企業」として持続的な成長を図るために、社員一人ひとりが健康でかつ安全に、いきいきと働ける職場環境を創出していきます。

 

(4)定年延長
当社は、これまで60歳の定年後も、最大5年間勤務できる再雇用制度を設けていましたが、社員が安心していきいきと働くことができる環境を整備するため、2022年5月から65歳を定年とする定年延長を実施しました。これまでに培った経験や知識、ノウハウをさまざまな職場で発揮できる環境を整え、70歳まで健康でいきいきと働ける仕組みづくりを推進していきます。

 

<知的財産についての取組み>
(1)当社の知財体制
当社は、知的財産方針に基づき、中長期経営計画に定める重要戦略を踏まえて、社会課題解決と企業価値向上に資する知財経営を推進します。社内に弁理士、弁護士を擁するとともに、外部の専門家も活用しながら、専門部署としての知的財産部を有しています。また、生産本部の研究開発部門にも知的財産部員が駐在し、研究開発部門の支援を積極的に行う体制を整えています。

 

知的財産部では各部門と連携し、研究開発戦略・ブランド戦略の支援を行っているほか、知財教育による支援も行っています。また、IPランドスケープの活動により研究開発戦略会議及び事業計画会議等にて提言を行っています。そうした活動内容及び知財に関するリスクマネジメント事案を、担当執行役員が取締役会に報告し、フィードバックを得ています。

 

2023年10月時点での当社の国内特許出願効率は65.6%であり(特許保有件数÷特許出願件数×100)、特許性を有する効率的な出願を目指しています。また、2023年4月期の研究開発費の売上高に対する比率は0.49%となっています。

 

(2)経営戦略への支援
伊藤園グループミッション「健康創造企業」
「健康創造企業」の実現に向けて、緑茶、抹茶の認知機能への影響をはじめとする、食品の機能性に関する研究開発を知的財産活動により支援することで、独自の健康価値の高い製品を提供し、お客様の健康な生活に貢献します。
  
長期ビジョン「世界のティーカンパニー」
「世界のティーカンパニー」の実現に向け、当社のコア事業であるお茶関連では、サプライチェーンを意識した茶畑から茶製品、茶殻リサイクルまでの知的財産権を確保しています。中でも、茶(国際特許分類:A23F3)の技術分野における当社国内の重要特許構成比(同一技術分類内の被引用数上位5%における当社特許の割合)は約16%であり、当社独自の技術や製品に係る知的財産権が競争優位性を高めるとともに、お客様の多様なニーズに合わせた製品の提供を実現しています。また、茶殻リサイクル、減農薬・有機栽培、サステナブルな容器包装など、知的財産権に基づく循環型ビジネスモデルを推進することで、事業を通じて環境・社会課題にも貢献しています。
海外事業強化の支援としては、各国における知的財産権の取得、リスク回避のため、各国の知的財産情報を収集しながら適切かつ効果的な権利取得を推進していきます。また昨期より海外事業における知財創出のための人材育成を進めており、2022年度は40人に知財教育を実施しています。

 

(3)人材の育成及びイノベーション促進への投資
当社は、かつて不可能といわれた無糖茶の飲料化を行うなど、様々なイノベーションを通じて成長してきました。イノベーションは当社にとっての成長の源泉です。知的財産部は、研究開発部門、マーケティング部門及び製造部門など知財創出に携わる部門に対して、知識やスキルを教育することにより、知財創出のための人材育成を進めています。なお2022年度は知財創出に携わる部門において225人に対して知財教育を実施し、2023年10月時点での知財創造を行った累計社内発明者数は146人となっています。
また、制度面では、「発明補償金制度」を有しており、2023年度における補償金の支払い対象は年間151件となりました。その運用により、従業員の知財創出を奨励し、事業発展への寄与に取組んでいます。

 

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、株主との建設的な対話を行います。対話を促進するための体制を整備し、積極的かつ機動的に行うとともに、株主の皆様からの意見等を適宜経営陣に、また取締役会にて定期的に報告をします。
(当社ガイドライン 第5章3.株主との建設的な対話)

 

【原則5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表】
<中長期経営計画>
当社は、健康創造企業として「世界のティーカンパニー」という長期ビジョンを掲げ、持続的な成長と企業価値向上に向けた「中長期経営計画(2023年4月期~2027年4月期)」を策定しています。
長期ビジョンの実現に向けては3つのステージを想定しています。第1ステージは、「お~いお茶」などの国内既存事業を盤石化すること、第2ステージは、「お~いお茶」をグローバルブランド化すること、第3ステージは、世界各地の茶文化とつながり新たな茶市場を創造することを目指しています。現在は、第2ステージに入り始めた段階と認識しています。
中長期経営計画においては、国内既存事業の盤石化、お~いお茶のグローバル化、新たな事業の創出、経営基盤の強化、サステナビリティ経営の推進を「5つの重点戦略」に据えています。
https://www.itoen.co.jp/ir/growth/

 

【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】【英文開示有り】
当社は、「収益性重視」、「利益・シェア向上のための持続的成長」、「ROEの向上」を成長に対する考え方としています。自社の資本コストを把握したうえで、収益力・資本効率等の向上を図るため、ファブレス経営(飲料製造の外部委託)や、最適な事業ポートフォリオの構築に取り組んでいます。経営指標として株主資本コストを上回るROE10%以上を中長期の目標とし、取締役の業績連動報酬の評価項目にも同指標を選定することで、企業価値の向上を推進していきます。
詳細については、統合レポート及びコーポレートガバナンス・ガイドラインをご参照ください。
 https://www.itoen.co.jp/ir/library/report_backnumber/
 https://www.itoen.co.jp/company/governance/

 

【株主との対話の実施状況等】
当社は、毎年6月と12月に、アナリストや機関投資家等に向けた決算説明会及び個別面談を実施しております。直近では、2023年4月期期末決算について6月1日に発表し、以下の通り対話を行いました。
(1)投資家等との対話の主な対応者 代表取締役社長・取締役管理本部長・広報部長・IR担当者等
(2)対話を行った投資家等の概要 国内外の機関投資家のアナリスト・ファンドマネージャー等、金融機関等
(3)対話の主なテーマや投資家等の関心事項 業績見通し(特に原料・資材料の動向、海外事業)、業界動向、緑茶事業、ESG対応等
(4)経営陣や取締役会に対するフィードバックの実施状況等 対話の状況については、適宜経営陣に、また取締役会にて定期的に報告しております。

 

本レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資活動を勧誘又は誘引を意図するものではなく、投資等についてのいかなる助言をも提供するものではありません。また、本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、当社は、本レポートに掲載されている情報又は見解の正確性、完全性又は妥当性について保証するものではなく、また、本レポート及び本レポートから得た情報を利用したことにより発生するいかなる費用又は損害等の一切についても責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は、当社に帰属します。なお、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申し上げます。

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