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(4043) 株式会社トクヤマ

プライム

ブリッジレポート:(4043)トクヤマ 2024年3月期決算

ブリッジレポートPDF

 

 

 

横田 浩 

代表取締役社長執行役員

株式会社トクヤマ(4043)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

化学(製造業)

代表取締役社長執行役員

横田 浩

所在地

東京都千代田区外神田1-7-5 フロントプレイス秋葉原

決算月

3月

HP

https://www.tokuyama.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,911.5円

72,088,327株

209,885百万円

7.4%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

100.00円

3.4%

347.48円

8.4倍

3,464.47円

0.8倍

*株価は6/24終値。各数値は24年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2021年3月(実)

302,407

30,921

30,796

24,534

351.11

70.00

2022年3月(実)

293,830

24,539

25,855

28,000

389.09

70.00

2023年3月(実)

351,790

14.336

14,783

9,364

130.15

70.00

2024年3月(実)

341,990

25,637

26,292

17,751

246.72

80.00

2025年3月(予)

352,000

33,000

31,000

25,000

347.48

100.00

*単位:円、百万円。予想は会社側予想。2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を
適用。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。

 

 

トクヤマの2024年3月期決算概要、横田社長へのインタビューなどをお伝えします。

 

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2024年3月期決算概要
3.2025年3月期業績見通し
4.中期経営計画2025の進捗
5.横田社長に聞く
6.今後の注目点
<:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 24年3月期の売上高は前期比2.8%減の3,419億円。セメントの国内販売価格修正が寄与したほか、ヘルスケア関連製品の販売が堅調だったものの、半導体市場の低迷により、半導体関連製品の販売が低調に推移した。株式会社エクセルシャノンを第2四半期より連結の範囲から除外したことも影響した。営業利益は同78.8%増の256億円。半導体市場の低迷により半導体関連製品の販売が低調に推移したものの、ナフサ価格や石炭価格の下落、セメントや化学品の国内販売価格の修正が寄与し、物流費など販管費も減少した。

     

  • 25年3月期の売上高は前期比2.9%増の3,520億円、営業利益は同28.7%増の330億円の予想。半導体市場は2023年度に比較し一定の回復局面を想定している。品目のサプライチェーンにおいて、回復するタイミングは異なると予想するが着実に拡販を進める考えだ。為替の前提は140円/USD(24/3期実績は145円/USD)、国産ナフサは65,000円/kl(同69,100円/kl)を見込む。株主還元方針として、25年3月期以降、DOE3%を目標とし、配当性向30%以上を目指すことを掲げている。25年3月期の配当は中間・期末とも50.00円/株、年間合計100.00円/株の予定(前期比20.00円/株増配)。予想配当性向は28.8%。DOEは2.9%の予想。

     

  • 横田浩社長に中期経営計画の進捗、株主・投資家へのメッセージ伺った。「収益性改善のためには中期経営計画 2025 をより着実に遂行し目標を達成することが必須です。加えて、株主還元を充実させ、株主様との対話を積極的に推進し、株主をはじめとするステークホルダーの期待に応えることで、PBR1倍を超える経営体質の早期実現につなげたいと考えておりますので、是非ご期待ください」とのことだ。

     

  • 中期経営計画の進捗に関しては、足元、電子先端材料が低調だが、今期から回復基調に入り、全事業分野ほぼ計画通りに推移しているとのことだ。

     

  • 売上高に関しては、「成長事業が積極投資を梃に成長を牽引し、2025年度連結売上高4,000億円、成長事業の連結売上高比率50%以上を通過点とし、更なる高みを目指す」、営業利益に関しては「原燃料高の影響により23年3月期まで減益も、24年3月期から増益の流れを受け、2025年度連結営業利益450億円目標達成へ」という計画達成の確度はかなり高まってきたと、同社では考えている。資本コストを上回る収益性の実現とその結果としてのPBR1倍超えを期待したい。

     

1.会社概要

ソーダ灰、苛性ソーダなど幅広い用途に用いられる必要不可欠な基礎化学製品、多結晶シリコンを始めとする半導体関連製品、国内第4位の生産量のセメントのほか、歯科器材やプラスチックレンズ関連材料、医薬品原薬・中間体などのファインケミカル製品を展開する総合化学メーカー。1918年創業。多様な特有技術から生み出される先端製品、高度に統合・集積された徳山製造所の競争力などが大きな強み。

 

【1-1 沿革】

1918年にガラスの原料であるソーダ灰(炭酸ナトリウム)の国産化を目指し、創業者 岩井勝次郎により「日本曹達工業株式会社」として設立された。現在でもソーダ灰製造を継続する唯一の国産メーカーである。
1938年にはソーダ灰事業の副産物を生かした湿式法によるセメント製造を開始した。
第二次大戦後、無機関連事業を伸張させた後、高度経済成長時代に入ると、塩化ビニルやポリプロピレンなど石油化学関連事業を拡大させた。
2度のオイルショックを経た後は、電子材料・ファインケミカルなど高付加価値分野へ進出。1984年には、現在では世界トップスリーに入る多結晶シリコン事業に進出した。また、1985年には電子部品の放熱材料として用いられる窒化アルミニウム粉末を独自開発の製法である還元窒化法により製造を開始した。
以降も、プラスチックレンズ関連材料や歯科器材など生活・医療分野、環境・エネルギー分野などへ事業フィールドを拡大させてきた。

 

ただ、2009年にマレーシアに設立した連結子会社「トクヤママレーシア」における多結晶シリコン事業が市況下落により大幅に収益が悪化。これにより15年3月期、16年3月期に多額の減損損失を計上し無配に転じた。
こうした状況に対し、2016年5月には「財務基盤の再建」に向けた種類株式の発行による資金調達を実施。
同時に、「あらたなる創業」に向けたビジョンの下、5年間の中期経営計画「再生の礎」を策定・発表し、組織風土の変革、事業戦略の再構築などの重要課題に取り組んでいる。18年3月期には4期ぶりの配当を実施した。
2022年4月、市場再編に伴い、東証プライム市場に移行した。

 

【1-2 経営理念など】

同社を取り巻く事業環境の変化を踏まえ、2022年3月期を初年度とする「中期経営計画2025」策定にあたり存在意義を再定義し、スローガン「もっと未来の人のために」を掲げ、新たにMission、Vision、Valuesを定めた。

 

Mission

経営理念

 

存在意義

化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する

Vision

経営方針

ありたい姿

*マーケティングと研究開発から始める価値創造型企業

*独自の強みを磨き、活かし、新領域に挑み続ける企業

*社員と家族が健康で自分の仕事と会社に誇りを持てる企業

*世界中の地域・社会の人々との繋がりを大切にする企業

Values

行動指針

価値観

*顧客満足が利益の源泉

*目線はより広くより高く

*前任を超える人材たれ

*誠実、根気、遊び心。そして勇気

 

【1-3 事業内容】

「中期経営計画2025」において、成長事業を「電子」「健康」「環境」と定義したことに伴い、「化成品」「セメント」「電子材先端材料」「ライフサイエンス」「環境事業」及び「その他」の6セグメントとしている。

 

 

◎化成品
<概要・主要製品>
ソーダ灰、苛性ソーダ、塩化カルシウムなど、幅広い用途に用いられ、各産業において必要不可欠な基礎化学製品を取り扱っている。
また、苛性ソーダの製造工程で発生する塩素と水素は多結晶シリコンの製造工程で使用されるなど、効率的な事業運営が行われている。
「顧客に選ばれ続けるトクヤマを実現する」という部門目標のもと、顧客企業個々のニーズに見合った安定的かつタイムリーな製品・サービスの提供に努めている。

 

事業

特長

主要製品

ソ-ダ・塩カル

国内需要の伸び悩みや輸入品の増加による競争激化から、事業環境は厳しく、国内のソーダ灰メーカーは現在同社1社。国内メーカーとしての存在意義と責任は今まで以上に大きく、創業以来培ってきた技術と、長年にわたり築き上げてきた顧客との信頼関係を軸に、競争力を維持・強化し国内市場で確固たる地位を築いくことを目指している。

また珪酸ソーダカレットは、原料であるソーダ灰や苛性ソーダから一貫して自社生産する競争力と生産能力の高さを武器に国内トップシェアを誇っている。

ソーダ灰、塩化カルシウム、珪酸ソーダ、重曹

クロルアルカリ・塩ビ

苛性ソーダ生産能力は年間49万トンで国内第3位。また、併産される塩素を利用して多様な製品を生産しており、同社の競争力を下支えしている。これらの製品群は多岐にわたるため、特定の分野の消費動向から受ける影響が少ないのも特長。

塩化ビニル樹脂(塩ビ)はその40%が石油由来で、残りの60%は塩由来。石油への依存度という面からは、塩ビは省資源性の高いプラスチックである。さらに塩ビ製の複層ガラスサッシは住宅の保温効果に優れ、冷暖房のエネルギーを節約することによる地球温暖化ガスの排出削減にも有効である。

苛性ソーダ、塩化ビニルモノマー、塩化ビニル樹脂、酸化プロピレン、メチレンクロライド

 

主要製品

用途

ソーダ灰

ガラス原料、グラスウール原料、石けん・洗剤原料、かん水、水処理助剤 他

塩化カルシウム

凍結防止剤、防塵、除湿剤、廃液処理、食品添加物

苛性ソーダ

製紙原料(パルプ)となる木材チップの溶解、アルミニウム原料のボーキサイト(鉱石)の溶解、調味料、石けん、廃水処理剤、中和剤

塩ビ

パイプ、電線被覆、フィルムなどの原料

壁紙、床材、手袋などの原料

 

(同社提供)

 

<基本方針と施策>
顧客ニーズに沿った、高品質及びコスト競争力に優れた基礎化学素材及びサービスを提供することにより、顧客の事業発展に貢献するとともに、中核事業として安定的かつ、継続的な収益向上に貢献する。

 

事業

主要施策

ソ-ダ・塩カル

*国内単一メーカーとして、安定供給・品質を維持

*融雪向け粒状塩化カルシウムの増産

クロルアルカリ・塩ビ

*苛性ソーダ・塩素の更なる原価低減を目指した自家発電と電解の競争力強化

*塩化ビニルモノマーの輸出拡大とプラントフル稼働の維持

*塩素誘導品(塩ビ、酸化プロピレン、クロロメタン他)の収益力強化

 

◎セメント
<概要・主要製品>
1938年、徳山製造所内の副産物の有効活用という観点でスタートした。徳山製造所南陽工場で製造するセメントやセメント系固化材など関連製品は、生コンクリートやコンクリート二次製品として、住宅・ビル・ライフラインを支える構造物、港・橋・道路など社会資本となり人々の暮らしを支えている。
社内だけでなく、社外からも廃プラスチックや家庭ゴミを燃やした後の灰など多くの廃棄物を受け入れ、セメントを製造する工程で原料や熱エネルギーとして利用しており、資源循環型社会の形成に貢献している。

 

事業

特長

主要製品

セメント

徳山製造所南陽工場は、単一工場としては国内最大規模。

セメント事業は国内第4位で、東京・大阪・広島・高松・福岡を主な拠点として、地域に根ざした営業活動を展開している。また東京・大阪・広島・福岡の4地区にセメント試験室を設置。セメントおよびセメント系固化材の使用に際し、施工前の配合試験、施工後の管理試験を実施し、きめ細かいユーザーサポートを提供している。

 

またセメント系やモルタル系の各種建材製品をトクヤマエムテックが製造販売するほか、同社独自の漆喰をシート化する技術により、建築内装材「漆喰ルマージュ」や、古典的なフレスコ画の技法に漆喰による立体造形技術を組み合わせた最新フレスコ技法「Fresco Graph」などを展開し、セメント・建材分野で培った技術で新たな事業機会を追求している。

ポルトランドセメント、高炉セメント、セメント系固化材

資源

低含水・高含水汚泥設備や鋭角廃棄物処理施設など様々な再資源化設備で、廃プラスチック類、汚泥、ガラスくずを始め多様な廃棄物を受け入れている。

廃棄物処理

 

<基本方針と施策>
事業環境の変化に柔軟に対応し、最適な製造・販売・物流体制を整備・構築する。廃棄物処理収益の最大化、原価低減による競争力強化を図る。

 

事業

主要施策

セメント

*生産効率及び原単位改善と廃棄物受入増を軸とした原価低減

*トクヤマエムテックによるインフラの補修・補強事業の拡充

資源

*原料系の最適化と可燃系廃棄物の活用促進及び燃料化プラント事業の最適化

 

2013年6月に買収したトクヤマニューカレドニアは、クリンカ(セメントの製造過程でできる塊状の物質で、粉砕してセメントを作る。)の輸出先としてセメント部門の収益改善に寄与している。

 

中長期では人口減に伴う国内需要の縮小が不可避であるため、セメントの適正な生産体制を構築する検討を進めていた。
直近の国内のセメント需要の急激な減少、製造設備維持に必要な固定費の上昇、および外部への影響等を総合的に考慮した結果、キルン2系列の生産体制が最適であると判断し、キルン1系列を停止した。なお、この停止に伴う国内向けセメント販売への影響はないとのことである。

 

安定した輸出先の確保による販売数量の増大、セメント工場の稼働率向上、廃棄物受け入れ拡大を目指し、トクヤマニューカレドニアに続く海外粉砕工場の展開を検討・推進していく。

(同社資料より)

 

◎電子先端材料
<概要・主要製品>
半導体に使われる高純度多結晶シリコンは、世界有数のシェアを有する。またその副生物から製造する乾式シリカはシリコーンゴムやCMPスラリー、複写機トナーなどに使用されている。放熱性に優れた窒化アルミニウムは、半導体製造装置のほか、インバーター、LEDなどの省エネルギー分野で、電子工業用高純度薬品は半導体、液晶パネルの製造などで使用されている。

 

事業

特長

主要製品

シリコン

徳山製造所において年産8,500トンの多結晶シリコン生産能力を有し、国内一位。

半導体用多結晶シリコン

シリカ

独自の技術により開発されたレオロシールは高度に精製した原料ガスを酸水素炎中で高温加水分解させ、反応から包装まで全てクローズドシステムで一貫した管理のもとに製造されている。そのため、高純度、高分散性、高比表面積という特徴を有しており、多くの用途で使われている。日本国内だけでなく中国にも生産拠点を持ち、事業の最適化を図りながら、安定・継続的な供給に努め、世界市場を視野に入れて更なる事業拡大を目指している。

乾式シリカ

放熱材

窒化アルミニウム粉末から、顆粒、粉末を焼結したセラミックスなど、用途にあわせた製品を展開している。独自開発の製法・還元窒化法は、不純物の極めて少ない良質な製品を生み出し、その製造能力は世界最大の年産840トンを誇る。窒化アルミニウム粉末では、世界シェア70%以上を獲得している。

窒化アルミニウム

ICケミカル

アジアの成長市場に向け、より高純度な製品を供給すべく、製造・販売拠点を各地に展開している。

電子工業用高純度薬品、フォトレジスト用現像液

 

主要製品

用途

多結晶シリコン

半導体ウエハ

乾式シリカ

CMPスラリー、各種エラストマー、各種シーラント、液状樹脂製品、粉体製品

窒化アルミニウム

電子部品の放熱材料、半導体製造装置の部材

電子工業用高純度薬品

ウエハ、電子デバイス等の精密洗浄及び乾燥

 

 

(多結晶シリコン)

 

(窒化アルミニウムセラミックス)

 

(同社提供)

 

<基本方針と施策>
顧客から選ばれ続ける製品の供給と開発品の提案により事業と収益の拡大を図る。

 

事業

主要施策

多結晶シリコン

*最先端品を始めとし顧客要求品質を的確に把握し、品質世界一・コスト極小化を実現

乾式シリカ

*CMP、シリコーン向けに続く高機能品の拡充

*中国子会社徳山化工におけるコストダウンと高付加価値化

ICケミカル

*先端半導体向け製品の品質追求、拡販

放熱材

*窒化アルミ粉末生産能力増強

*窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムフィラーの事業化

 

同社が製造している世界シェア20%の多結晶シリコンや放熱材用窒化アルミニウムなど半導体製造プロセスに不可欠な様々な半導体関連製品は、同社が長年かけて開発・蓄積してきた様々な特有の要素技術の組み合わせから創出された先端材料であり、どれも世界的に極めて高い競争力を有している。

 

(同社資料より)

 

半導体製造分野では半導体の大容量化・小型化に伴う半導体の微細化・3次元化が急速に進んでいる。
同社の「半導体用高純度多結晶シリコン」、「電子工業用高純度IPA」は、歩留まり悪化を引き起こす不純物、残渣物を極限まで低減させた超高純度材料であり、微細化・3次元化を進める半導体メーカーから高い評価を得ている。

 

また、半導体の安定した動作に不可欠な放熱材料においても同社製品の評価は高い。
近年、車載用、産業機器、電鉄向けパワーデバイスの高出力化・小型化に伴い放熱材料の需要が急増しているが、同社では、窒化アルミニウム粉末、窒化アルミニウムセラミックス、窒化ケイ素、窒化ホウ素など、独自の還元窒化法などにより開発された不純物の極めて少ない高熱伝導率の放熱材料を供給している。

 

上の図の様に、原料から最終製品に至る半導体製造プロセスにおいて、「点」ではなく、多様な先端製品を「面」で供給することで、より大きな事業機会を創出し、需要を取り込んでいく考えだ。

 

◎ライフサイエンス
<概要・主要製品>
トクヤマ本体が手掛けるファインケミカル事業とNF事業および、グループ会社が開発・製造・販売する歯科材料、臨床検査システム等から成る。
ファインケミカル事業では、同社の強みである有機合成技術から生まれた、メガネ関連材料やジェネリック医薬品原薬・中間体を中心に事業展開をしており、NF事業では、水は通さず空気や湿気は通すという微多孔質フィルムを製造販売している。
海外グループ会社としては、中国はじめ新興国で急速に需要が伸びている紙おむつ用の通気性フィルムの製造販売を担っている上海徳山塑料などがある。

 

事業

主要製品

ファインケミカル

医薬品原薬・中間体(アミノ基保護材、縮合剤)、プラスチックレンズ関連材料(フォトクロミック材料、ハードコート剤)

(株)トクヤマデンタル

歯科医療器材の製造・輸出入・販売

(株)エイアンドティー

臨床検査試薬・機器システムの開発・製造・販売

NF

微多孔質フィルム

 

(歯科器材)

(同社提供)

 

<基本方針と施策>
顧客起点の開発・製造・販売体制の確立・強化により、国内外の市場で優位なポジションを獲得。事業の拡大を図り、人々の生活・健康(QOL)の改善に貢献する。

 

事業

主要施策

ファインケミカル

メガネ用調光材料のシェア拡大、用途開拓

歯科器材事業

審美充填材料を中心とした海外展開の加速と生産体制強化

医療診断システム事業

診断システムと診断薬の事業強化

NF

日本・中国での事業拡大

 

同セグメントでは、歯科材料、フォトクロミック材料(調光材料)の成長に力を入れている。

 

フォトクロミック材料とは、太陽光(紫外線)を照射すると無色からグレーやブラウンなどに発色し、照射を止めると再び無色の状態に戻る樹脂材料。
近年では、スポーツウェア・ドライブウェア用途に加え、有害紫外線への意識の高まり、高齢化にともなう緑内障など眼の疾患増加を背景に、フォトクロミック材料の使用が増大している。

 

同社製品は、「赤・青・黄の3原色発色による豊富なカラーバリエーション」、「速い発色および退色速度」、「夏場の高温下でも十分な発色性能」、「優れた耐久性」、「紫外線を99%以上カット」といった特長を持っている。
こうした特長を訴求し、製品仕様に関する顧客ニーズへの対応など細やかな顧客対応や製品ラインナップの拡充によりシェア拡大を図るとともに、視認性向上、紫外線遮蔽などの特長を活かした新規用途の開拓も進める。

 

 

 

(同社資料より)

 

◎環境事業
<概要・主要製品>
将来の一つの柱とするために、グループ内に点在していた環境関連事業を集約し、新たな事業展開を目指すセグメントとして2022年3月期より新設したセグメント。
廃石膏ボードリサイクル、イオン交換膜、CO2排出削減の技術開発及び事業化などに取り組んでいる。

 

事業

主要製品

(株)トクヤマ・チヨダジプサム

廃石膏ボードのリサイクル事業

(株)アストム

脱塩・濃縮用イオン交換膜及び電気透析装置の製造販売

 

◎その他
報告セグメントである「化成品」、「セメント」、「電子先端材料」、「ライフサイエンス」、「環境事業」に含まれない事業セグメントで、海外販売会社、運送業、不動産業などを含む。

 

【1-4 研究開発】

「中期経営計画2025」において、「マーケティングと研究開発から始まる価値創造型企業」をトクヤマの「ありたい姿」と定義した。
マーケティングを「モノづくり」の起点に置いた今回の中期経営計画は、新たな企業文化を育てるという強い意思表示であり、企業文化育成のために技術系人材の果たさなければならない役割は非常に大きなものであると考えている。
自社の特有技術をベースに独自技術を磨くことで、顧客のニーズに応えるべく、研究開発を推進してきたが、今後さらに新たな技術を育成・獲得することで研究開発力を進化させ、今以上に顧客の期待に応えていく。

 

加えて、同社では、地球温暖化防止への貢献として「2050年度 カーボンニュートラル達成」を掲げた。二酸化炭素の削減は、グローバルな課題あり、「次世代エネルギーの技術開発と事業化」「環境貢献製品の開発と実装」に対し、自社技術の深耕、産・学・官等の外部連携の強化、積極的な外部人材の登用等、様々な方法を通じて「2050年度 カーボンニュートラル達成」実現を目指していく。

 

研究開発拠点として日本国内には「つくば研究所」(茨城県つくば市)、「徳山研究所」(山口県周南市)を持ち、東西2拠点体制を敷いている。
「つくば研究所」では、中長期的な視点に立った先端技術開発、基盤技術としての分析解析技術開発、複合材料を特徴とする歯科材料分野、高付加価値製品をターゲットとした有機ファインケミカル分野の研究開発を行っている。

 

徳山製造所内に立地する「徳山研究所」は、徳山地区の研究・開発の拠点。
徳山地区の開発グループのみならず様々な研究・開発チームが集まることによって得られるシナジー効果や、ものづくりの現場である製造部にも近く情報交換が容易といったメリットも大きい。

 

また、国内の研究開発拠点に加えて台湾のグループ会社である德山台灣股份有限公司では、半導体の微細化・高集積化に伴い半導体メーカーから寄せられるケミカル・マテリアルの高純度化要求に対応すべく、新規製品創出に向けた情報収集・マーケティング拠点として運営するとともに、現地の半導体メーカー・研究機関などと共同開発を行う開発拠点としての役割を担っている。

【1-5 同業他社】

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

ROE

ROA

時価総額

PER

PBR

4005

住友化学

2,670,000

+9.1

70,000

-

2.6%

-29.2

-11.4

540,002

26.7

0.6

4042

東ソー

1,090,000

+8.4

100,000

+25.2

9.2%

7.5

7.7

674,868

11.2

0.8

4043

トクヤマ

352,000

+2.9

33,000

+28.7

9.4%

7.4

5.6

209,885

8.4

0.8

4063

信越化学

-

-

-

-

-

12.8

15.9

12,048,182

-

2.8

4118

カネカ

790,000

+3.6

38,000

+16.6

4.8%

5.3

3.5

281,622

11.0

0.6

4183

三井化学

1,850,000

+5.7

125,000

+29.9

6.8%

6.1

3.4

866,440

11.2

1.0

4205

日本ゼオン

397,000

+3.9

26,500

+29.3

6.7%

8.9

5.1

314,777

16.3

0.8

5711

三菱マテリアル

1,950,000

+26.6

41,000

+76.1

2.1%

4.8

2.7

389,406

8.6

0.6

*売上高、営業利益は今期予想、単位は百万円。ROE、ROAは前期実績、単位は%。時価総額、PER(予)・PBR(実)は6月24日終値ベース。単位は百万円、倍。信越化学は現時点では第1四半期の業績予想のみを開示。

 

PER、PBRとも低水準にとどまっている。ROEの向上など収益性の拡大や、一層の成長戦略の訴求が求められる。

 

【1-6 資本コストと株価を意識した経営の実現について】

(1)現状評価
2021年度まで、ROEは10%以上で推移していたものの、2022年度に原燃料高騰による大幅なコスト増からいったん落ち込み、2023年度には7.4%まで回復したが、売上高当期純利益率の回復が十分ではなくROEは以前の水準には達していない。
他方でPERは 2023年度は11.0 倍となった。PBRについては 2022年度に若干改善したが、2023年度においても1倍には至っていない。この要因は主としてROEの回復の遅れや将来における収益性拡大の道筋が十分に示し切れていないことによるものと同社では分析している。

 

(2)方針・目標
同社は、「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」という経営理念(存在意義)を定め、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努めている。
中期経営計画2025においては、ROEを経営指標の一つに置き株主資本の効率化に取り組んできたが、これをさらにすすめたうえで中期経営計画 2025 をより着実に遂行し目標を達成することが、企業価値向上のために重要であると考えている。
企業価値向上の実現のためには株主をはじめとするステークホルダーとの信頼と協働も不可欠であると考えており、そのためには、株主還元を充実させ、株主との対話を積極的に推進し、中期経営計画の着実な遂行とともに株主をはじめとするステークホルダーの期待に応えることを通じてPBR1倍を超えられる経営体質の早期実現につなげたいと考えている。

 

(3)具体的な取り組み
①株主還元の充実化
同社は、株主に対する利益還元を経営上の重要な施策の一つとして位置付けている。継続的な安定配当を基本としつつ、健全な財務体質の維持と、将来に向けた株主価値向上並びに経営環境の変化に対応するために必要な内部留保を確保したうえで、利益還元を継続的に行うことを基本方針としている。
こうした方針の下、2025年3月期より配当金は、業績の動向、中長期事業計画、資本コスト等を総合的に勘案して、単年度の業績の影響を受けにくいDOE3%を目標として、配当性向 30%以上を目指していく。

 

②ROICを積極的に活用した成長事業への重点投資と既存事業の見直し
同社では、ROICがWACCを2年連続で下回る事業については、毎年事業継続の可否について評価を実施するなど、資本コストを意識した経営を推進している。今後は、事業部門ごとの目標ROICを設定し、成長事業における一層の収益拡大を図るとともに、既存事業の見直しについても機敏に対応していく。

 

③政策保有株式の縮減
現在保有する上場株式(20 銘柄)については、資産効率の向上を図るため継続的な縮減を目指す。2024年度は、10銘柄程度の縮減を目指して取り組みを進め、売却により創出されたキャッシュは成長事業および研究開発に活用していく。

 

④株主との対話
中長期的な企業価値向上の実現には、株主・投資家との継続的な信頼関係の構築が重要と考えている。同社では、経営者自らが各種説明会(IR・SR)に積極的に参加して株主・投資家との対話を実施している。今後も、フェアディスクロージャ―の精神に基づき、重層的な情報発信を通じて、ステークホルダーとの関係を深化させていく。

 

2.2024年3月期決算概要

(1)連結業績概要

 

23/3期

構成比

24/3期

構成比

前期比

期初予想比

修正予想比

売上高

351,790

100.0%

341,990

100.0%

-2.8%

-10.0%

-0.9%

売上総利益

90,781

25.8%

99,519

29.1%

+9.6%

-

-

販管費

76,444

21.7%

73,882

21.6%

-3.4%

-

-

営業利益

14,336

4.1%

25,637

7.5%

+78.8%

-14.5%

-1.4%

経常利益

14,783

4.2%

26,292

7.7%

+77.9%

-12.4%

+1.1%

当期純利益

9,364

2.7%

17,751

5.2%

+89.6%

-19.3%

-1.4%

*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。22/3期より収益認識会計基準等を適用。修正予想比は24年1月公表の業績予想に対する比率。

 

減収増益
売上高は前期比2.8%減の3,419億円。セメントの国内販売価格修正が寄与したほか、ヘルスケア関連製品の販売が堅調だったものの、半導体市場の低迷により半導体関連製品の販売が低調に推移した。株式会社エクセルシャノンを第2四半期より連結の範囲から除外したことも影響した。
営業利益は同78.8%増の256億円。半導体市場の低迷により半導体関連製品の販売が低調に推移したものの、ナフサ価格や石炭価格の下落、セメントや化学品の国内販売価格の修正が寄与し、物流費など販管費も減少した。

(2)セグメント別動向

 

23/3期

構成比

24/3期

構成比

前期比

売上高

 

 

 

 

 

化成品

116,263

33.0%

115,594

33.8%

-0.6%

セメント

58,511

16.6%

67,187

19.6%

+14.8%

電子先端材料

91,589

26.0%

77,969

22.8%

-14.9%

ライフサイエンス

37,567

10.7%

41,424

12.1%

+10.3%

環境事業

13,842

3.9%

7,392

2.2%

-46.6%

その他

47,331

13.5%

43,653

12.8%

-7.8%

調整

-13,314

-

-11,231

-

-

合計

351,790

100.0%

341,990

100.0%

-2.8%

営業利益

 

 

 

 

 

化成品

6,887

5.9%

11,530

10.0%

+67.4%

セメント

-3,718

-

6,710

10.0%

-

電子先端材料

7,011

7.7%

3,341

4.3%

-52.3%

ライフサイエンス

7,377

19.6%

8,476

20.5%

+14.9%

環境事業

46

0.3%

-102

-

-

その他

2,036

4.3%

1,476

3.4%

-27.5%

調整

-5,303

-

-5,795

-

-

合計

14,336

4.1%

25,637

7.5%

+78.8%

*単位:百万円。営業利益の構成比は売上高利益率。

 

*化成品
減収増益

苛性ソーダ

販売数量は減少したものの、国内の販売価格修正を進め増益

塩化ビニルモノマー

塩化ビニル樹脂

塩化ビニルモノマーの海外市況が下落したことや塩化ビニル樹脂の販売数量の減少等で減益

ソーダ灰/塩化カルシウム

販売数量は減少したものの、販売価格修正を進め増益

 

*セメント
増収、黒字転換

セメント

国内出荷は前期比で微減となったものの、販売価格是正を進めたことにより、損益が改善

 

*電子先端材料
減収減益

半導体向け多結晶シリコン

半導体市場の低迷により販売数量が減少し、減益

ICケミカル

台湾子会社の稼働率向上やコスト削減等により収益が改善

乾式シリカ

半導体市場や中国景気の低迷により販売数量が減少し、減益

放熱材

パワーデバイス用途の販売が堅調だったこと等により、増益

 

*ライフサイエンス
増収増益

歯科器材

国内外の販売が堅調だったことで増益

医療診断システム

臨床検査情報システム、検体検査自動化システム、及び電解質分析装置の販売が増加し、増益

 

*環境事業
減収、損失計上

イオン交換膜

出荷が減少したことで減益

廃石膏ボードリサイクル

廃石膏ボード収集量の減少等により、減益

 

樹脂サッシの製造・加工・販売を行う株式会社エクセルシャノンの株式の一部を譲渡したことに伴い、第2四半期より、同社を連結の範囲から除外した。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

23年3月末

24年3月末

増減

 

23年3月末

24年3月末

増減

流動資産

253,689

217,776

-35,913

流動負債

88,244

103,935

+15,691

現預金

68,080

48,684

-19,396

仕入債務

49,822

48,093

-1,729

売上債権

92,060

87,129

-4,931

固定負債

148,495

93,475

-55,020

たな卸資産

81,323

71,888

-9,435

負債合計

236,739

197,411

-39,328

固定資産

224,653

239,583

+14,930

純資産

241,602

259,948

+18,346

有形固定資産

155,336

168,755

+13,419

株主資本

217,880

229,944

+12,064

無形固定資産

3,465

3,463

-2

利益剰余金

184,852

197,418

+12,566

投資その他の資産

65,850

67,365

+1,515

負債純資産合計

478,342

457,360

-20,982

資産合計

478,342

457,360

-20,982

有利子負債残高

142,446

105,782

-36,664

*単位:百万円。有利子負債にはリース債務を含む。

 

現預金、たな卸資産の減少などで、資産合計は前期末比209億円減少し4,573億円となった。
有利子負債の減少などで、負債合計は同393億円減少の1,974億円。
利益剰余金の増加で、純資産は同183億円増加の2,599億円。
この結果、自己資本比率は前期末から6.5ポイント上昇し54.5%となった。
DEレシオは前期末から0.20低下し0.42倍。

 

◎キャッシュ・フロー

 

23/3期

24/3期

増減

営業CF

-11,800

55,828

+67,628

投資CF

-33,757

-30,405

+3,352

フリーCF

-45,557

25,423

+70,980

財務CF

30,151

-46,508

-76,659

現金同等物残高

67,556

47,905

-19,651

*単位:百万円

 

税金等調整前当期純利益の増加、売上債権棚卸資産および営業CF、フリーCFはプラスに転じた。キャッシュポジションは低下した。

 

(4)トピックス

①セメントキルン1系列を停止へ
同社では国内のセメント需要の漸減等、外部環境の変化に応じた収益力強化のため、セメントの適正な生産体制を構築する検討を進めていた。
直近の国内のセメント需要の急激な減少、製造設備維持に必要な固定費の上昇、および外部への影響等を総合的に考慮した結果、キルン2系列の生産体制が最適であると判断し、キルン1系列を停止した。なお、この停止に伴う国内向けセメント販売への影響はないとのことである。

3.2025年3月期業績見通し

(1)通期業績予想

 

24/3期

構成比

25/3期(予)

構成比

前期比

売上高

341,990

100.0%

352,000

100.0%

+2.9%

営業利益

25,637

7.5%

33,000

9.4%

+28.7%

経常利益

26,292

7.7%

31,000

8.8%

+17.9%

当期純利益

17,751

5.2%

25,000

7.1%

+40.8%

*単位:百万円。予想は会社側発表。

 

増収増益を予想
売上高は前期比2.9%増の3,520億円、営業利益は同28.7%増の330億円の予想。
半導体市場は2023年度に比較し一定の回復局面を想定している。品目のサプライチェーンにおいて、回復するタイミングは異なると予想するが着実に拡販を進める考えだ。
為替の前提は140円/USD(24/3期実績は145円/USD)、国産ナフサは65,000円/kl(同69,100円/kl)を見込む。
株主還元方針として、2025年3月期以降、DOE3%を目標とし、配当性向30%以上を目指すことを掲げている。
25年3月期の配当は中間・期末とも50.00円/株、年間合計100.00円/株の予定(前期比20.00円/株増配)。予想配当性向は28.8%。DOEは2.9%の予想。

 

(2)セグメント別動向

 

24/3期

25/3期(予)

前期比

売上高

 

 

 

化成品

1,155

1,200

+3.9%

セメント

671

670

-0.1%

電子先端材料

779

865

+11.0%

ライフサイエンス

414

430

+3.9%

環境事業

73

60

-17.8%

営業利益

 

 

 

化成品

115

135

+17.4%

セメント

67

80

+19.4%

電子先端材料

33

70

+112.1%

ライフサイエンス

84

90

+7.1%

環境事業

-1

0

-

*単位:億円

 

増収率では化成品、電子先端材料、ライフサイエンスが、増益率では電子先端材料が全社平均を上回っている。
各セグメントについて以下のような状況を見込んでいる。

 

*化成品
増収増益
原燃料価格の動向や、主要製品の海外市況など、収益面で変動リスクの大きい状況が継続する。
新たな営業体制による販売力強化を推進するなど、事業環境の変動に対応した施策の実施により、収益確保に努める。

 

*セメント
売上前期並み、増益
都市部での再開発工事や工場建設等で民需は堅調であるものの、工期の長期化や施工者、物流業者等の人手不足により、出荷は前期並みの水準を予想している。
適正な販売価格を維持し、収益向上に努める。

 

*電子先端材料
増収増益
半導体市場は品目のサプライチェーンによって回復時期が異なるものの、中長期的に需要が拡大していくと予想している。

 

半導体向け多結晶シリコンは、品質を更に追求し、他社との差別化を図る。
ICケミカルは、台湾からの出荷増を目指すとともに、韓国の製造・販売拠点整備により、需要拡大に対応したグローバル供給体制の確立に注力する。
乾式シリカ・放熱材は、既存製品の拡販及び開発品の製品化を進める。

 

*ライフサイエンス
増収増益
プラスチックレンズ関連材料、歯科器材は、海外向けを中心に堅調な推移を見込む。引き続き顧客ニーズや市場の変化に対応した新製品開発と販売活動に注力し、収益の拡大を目指す。
医療診断システムは、主要製品の拡販に努め、収益の拡大を目指すとともに、診断試薬開発を推進する。

 

*環境事業
減収、赤字縮小
持続可能な社会の実現を目指し、イオン交換膜及び廃石膏ボードリサイクル等の既存事業の拡大を進めるとともに、GHG排出削減の技術開発及び事業化を加速し、事業ポートフォリオ転換への貢献を目指す。

 

(3)設備投資・減価償却

25/3期の設備投資は、成長事業、合理化・省エネ・CO2対策、成長インフラを中心に、24/3期の297億円を上回る323億円を計画している。
主な投資案件は、発電所のバイオマス混焼関連投資、DX関連投資、医療診断システムの製造能力増強等。

 

4.中期経営計画2025の進捗

「中期経営計画2025」では、「事業ポートフォリオの転換」「地球温暖化防止への貢献」「CSR経営の推進」の3つを重点課題としている。
策定時とは、物価上昇、資源価格の乱高下、為替の大きな変動など、事業環境は大きく変化している。
カーボンニュートラルに向けたCO2排出量削減への対応が急がれるとともに、少子高齢化の進行による労働人口の減少に備えた製造現場の改革も急務となっている。

 

各重点課題の進捗及び今後の取り組みは以下のとおりである。

 

(1)事業ポートフォリオの転換

成長事業を「電子」「健康」「環境」に再定義し、組織化(事業領域「電子」「健康」「環境」と事業部門を一致)し戦略推進スピードを加速する。成長事業の連結売上高比率50%以上を目指す。
伝統事業である化成品事業・セメント事業は、内需縮小を見込む中、効率化を進め、持続的なキャッシュを創出する。
技術面においては社外との連携強化に技術よる技術の差別化を促進し、付加価値を追求する。
また、DX推進などにより、全社規模で効率的なオペレーションを展開するほか、成長する海外市場における事業拡大を推進する。

 

①目指す事業ポートフォリオ
(2025年度目標)
*売上高
伝統事業は内需縮小の影響を受ける一方、成長事業が積極投資を梃に成長を牽引。成長事業の連結売上高比率50%以上は通過点とし、更なる高みを目指す。
2030年度は「電子」「健康」「環境」の3事業で売上高構成比60%以上を目指す。

 

*営業利益
原燃料高の影響により23年3月期まで減益も、24年3月期から増益の流れを受け最終年度目標達成へ。

 

 

(同社資料より)

 

②事業別戦略
◎電子先端材料
事業目標:グローバル化を推進し、半導体の微細化や積層化を支える高純度材料分野および放熱材料分野でトップシェアを獲得

 

重点施策

*海外市場へ積極展開

*新規用途展開・製品ラインナップ拡充

*高品位品の生産・分析技術の追求

これまでの進捗

*半導体用多結晶シリコンのマレーシアJV&ベトナム子会社設立決定

*高純度IPAの海外展開…FTAC社(台湾)は生産・出荷が本格化。STAC社(韓国)は 生産設備が完成、サンプル出荷を開始

*中国での表面処理シリカ能力増強完了

*放熱材関連製品のラインナップ拡充

今後の取り組み

*FTAC社の本格稼働による収益拡大、STAC社の早期営業運転開始

*シリカ・放熱材関連製品の用途展開と新規顧客開拓

 

「高純度IPAの海外展開」
現在、日本、韓国、台湾、中国、シンガポールに拠点を有している。
このうち、日本、韓国、台湾では原料から生産・販売までを、中国、シンガポールでは製造拠点から供給を受け・生産・販売を行っている。
旺盛な需要を背景に、2025年以降の更なる事業拡大に向け、各拠点で高品質対応、市場への参入、供給力の安定化・強化などに取り組んでいく。

 

◎ライフサイエンス
事業目標:特有技術で差別化可能な領域(眼・歯・診断)でのニッチトップ獲得

 

重点施策

*歯科器材海外市場シェアのさらなる向上のため、販売体制強化と生産能力の増強加速

*フォトクロミック海外市場の一層の拡大のため、新製品開発と販売活動を強化

*医療診断システム事業の強化

これまでの進捗

*歯科器材新製品(オムニクロマ)投入による欧米シェア拡大

*歯科器材の旺盛な需要に対応した製造能力増強

*医療診断システムでの電解質事業の拡大に伴う生産棟の建設着手

今後の取り組み

*歯科器材:製造能力のさらなる増強とスマートファクトリー化による収益拡大

*プラスチックレンズ関連材料および原薬・中間体の製品開発加速

*医療診断システム:電解質事業の生産能力向上と診断試薬開発の強化

 

 

歯科器材事業は、北米・欧州・日本・豪州といった安定市場では、製品ラインアップ強化、販売体制再構築による営業体制拡充、デジタル歯科分野における研究開発推進などによるシェア拡大を図る。まだ市場規模は小さいが成長が期待される東南アジア、中東、アフリカ、中南米に対しては、需要開拓に取り組む。

 

◎環境事業
事業目標:将来を担う新たな事業の柱として確立

 

重点施策

*環境規制強化による水処理膜の需要拡大への対応

*廃石膏ボードや太陽光発電パネル等の資源リサイクル事業の拡大

*開発した次世代エネルギー技術の事業化

これまでの進捗

*廃石膏ボードリサイクル事業:第3拠点として室蘭工場が操業開始

*エクセルシャノンの持分法適用会社化

*太陽光発電パネルのリサイクル処理技術は事業化検討フェーズへ

*水電解事業は実証設備を導入

今後の取り組み

*イオン交換膜:次世代膜の開発と供給体制の整備・強化

*太陽光発電パネルのリサイクル技術の実装とビジネスモデルの確立

*水電解事業:市場・顧客要望に応じられる技術力・競争力を磨く

 

◎化成品事業
事業目標:既存事業での安定的収益確保

 

重点施策

*収益最大化のための事業強化と効率化

*製造プロセス改善によるCO2排出量削減、廃棄物の低減

*DX推進によるサプライチェーンの改善

これまでの進捗

*原燃料高騰に対する販売価格修正を実現して安定収益を確保

*新第一塩ビの吸収合併により電解・塩ビチェーンの効率化を実施

*ソーダ灰製造プロセスの改善は実行フェーズへ進捗

今後の取り組み

*競争力トップクラスの電解槽実証に着手

*営業機能をトクヤマソーダ販売へ移管し、効率化と顧客接点を強化

*ソーダ灰製造プロセス改善の実機プラント検討と廃棄物の排出量削減

 

◎セメント
事業目標:エネルギー効率国内トップクラス

 

重点施策

*CO2排出量削減に向けた省エネ設備導入

*廃プラ等の熱エネルギー代替物受入れ増による石炭使用量削減

これまでの進捗

*販売価格是正と低品位炭利用等によるコスト低減で黒字化実現

*廃プラ利用拡大による石炭使用量削減を推進

*2024年度からキルン1系列を停止、キルン2系列の生産体制に移行

*クリンカクーラー設備導入による省エネ促進

今後の取り組み

*販売価格の最適化により安定収益を確保

*廃プラおよび液体燃料の受入量拡大に向けた取り組み継続

 

③設備投資計画
策定時は5年間で2,000億円の設備投資を計画していたが、現時点では1,600億円としている。
成長事業への重点投資、合理化・省エネ・CO2対策投資が過半を占める。
ここまでの主な投資実績は、台湾 高純度IPA JV(FTAC)、韓国 高純度IPA JV(STAC)、歯科器材生産能力増強、廃石膏ボードリサイクル事業 室蘭工場建設、先進技術事業化センター開設、発電所バイオマス混焼関連投資など。

 

④キャッシュ・フローの創出と配分
事業収益の増加、新規開発品によるキャッシュ創出、政策保有株の削減、投資案件の精査、たな卸資産の圧縮により5年間で2,000億円(策定時2,500億円)の営業キャッシュ・フローを創出する。22年3月期、23年3月期と営業CFが低迷したことから、投資案件については規律を持った投資を継続する。
キャッシュの使途は、設備投資1,600億円(策定時2,000億円)、M&Aや新規事業開発など戦略的投資に最大300億円(マレーシアのJV投資を含む)。
株主還元は、DOE3%、配当性向30%を予定しており、タイミングを見て自己株式の取得も検討する。

 

(2)地球温暖化防止への貢献

①GHG排出量(Scope1、2)の削減
2030年度2019年度比30%削減、2050年度カーボンニュートラル達成を中長期目標としている。
「バイオマス、アンモニア混焼」「地域エネルギー活用」「省エネ、プロセス改善、設備更新」「事業ポートフォリオ転換」といった燃料起源を中心に粛々と実行している。
このほか、原材料起源、廃棄物起源、など、起源ごとの削減目標を検討し、実現に向けた挑戦を続けている。

 

②GHG排出量(Scope3)の削減
サプライチェーン排出量全体のカーボンニュートラルを目指し、Scope3のカテゴリー(※)1、3、4について、2030年度までに2022年度比10%削減、2050年度カーボンニュートラルを目指す。

 

(※)Scope3(スコープ3)は、製品の原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るまでの過程において排出される温室効果ガスの量(サプライチェーン排出量)を指し、Scope1(自社での直接排出量)・Scope2(自社での間接排出量)以外の部分「その他の間接排出量」を指す。
Scope3(スコープ3)は、15のカテゴリーに分類され、カテゴリーごとの温室効果ガス排出量の算定方法(ガイドライン)が示されている。

 

カテゴリー1

購入した製品・サービス

材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達など

カテゴリー3

Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動

調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)

調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)

カテゴリー4

輸送、配送(上流)

調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)

 

(3)CSR経営の推進

CSR経営の中心は、10のマテリアリティ(CSRの重要課題)への対応である。
「人材育成」「多様性と働きがいの重視」に対し、経営戦略の実現に寄与しつつ、従業員の価値向上を実現する人材戦略を策定した。

 

(同社資料より)

5.横田社長に聞く

横田浩社長に中期経営計画の進捗、株主・投資家へのメッセージを伺った。

 

Q:「24年3月期決算及び25年3月期の業績予想についてコメントいただけますか?」
減収ではあったものの、大幅増益で、ほぼ修正予想通りの着地となりました。
半導体市場の低迷により、半導体関連製品の販売が低調でしたが、ヘルスケア関連製品の販売が引き続き好調で、セメントの国内販売価格の改定も寄与しました。
今後のセメント価格に関しては、原燃料価格が落ち着いたので原材料高を背景とした価格改定は難しいかと思いますが、24年物流問題は骨材の運搬が必要なセメント事業においては大きな影響を受けます。価格改定を行うのであれば、お客様には早めに状況をご説明して、ご理解いただく必要があると考えています。

 

25年3月期の売上高は前年比微増収ですが、利益は2桁増と予想しています。
低調であった半導体関連製品は、品目によって時期は異なりますが、年度後半に向けて回復していくものと見ています。
ライフサイエンスは今期も好調です。歯科材料については、使いやすさをお客様である歯科医師様から高くご評価いただいており、同製品の競争優位性となっています。

 

環境事業については、具体的に実稼働しているのは、イオン交換膜、廃石膏ボードの完全リサイクルの2つです。
子会社である株式会社アストムのイオン交換膜・電気透析装置技術は、海水濃縮による食塩の製造をはじめ、飲料水の製造、食品・医薬中間体の脱塩・精製、有価物の回収、廃液処理など、多様な分野で必要不可欠なイオン制御プロセスとして多くのお客様にご利用いただいており、今後も需要は拡大すると考えています。
廃石膏ボードの完全リサイクルについては23年秋に室蘭工場の稼働が始まり、今夏ごろから本格稼働する予定です。
もう少し長期的スパンで見ている太陽光パネルのガラスの完全リサイクルは、世界的に見ても当社技術の高さが際立っており、数回の量産試験を実施した結果、十分に実用化できる目途が立ちました。引き合いも多く、多くのお客様が北海道の工場見学においでです。
2019年に始まった再生可能エネルギーを固定価格で買い取る「余剰電力買取制度」を契機に多くの太陽光パネルが全国に設置され20年が経過した2030年以降に大量廃棄時代がやってきます。まだ多少時間がありますから、その間に技術を確立するとともに、低コストで運営できるプロセスを構築し、需要を確実に取り込んでいきたいと思います。

 

Q:「中期経営計画の進捗についてお聞かせください」
足元、電子先端材料が低調ですが、今期から回復基調に入ってきますので、全事業分野ほぼ計画通りに推移しています。
売上高に関しては、「成長事業が積極投資を梃に成長を牽引し、2025年度連結売上高4,000億円、成長事業の連結売上高比率50%以上を通過点とし、更なる高みを目指す」、営業利益に関しては「原燃料高の影響により23年3月期まで減益も、24年3月期から増益の流れを受け、2025年度連結営業利益450億円目標達成へ」という計画達成の確度はかなり高まってきたと考えています。

 

Q:「いつも伺っている、組織風土改革や人的資本強化への取り組みはいかがでしょう」
2年ほど前から行ってきた年功序列にとらわれない30代半ばを対象とした若手抜擢はずいぶん定着してきました。
加えて、この4月からは管理職についてジョブ型雇用の人事制度を全面的に導入しました。
今までは、属人的にその社員を見て、役職を当てはめていくというやり方でしたが、ジョブ型ですので、それぞれの役職、ポストにはどういう能力が求められているかを明確にし、これに適切に当てはまっている人間をアサインするということになります。
したがって、アサインされたけれど、成果が今一つということになれば、当然ポジションを降りることになります。ある意味厳しくもあるけれど、分かりやすい制度です。
極端なことを言えば、入社して数年の若手社員でも、退職年限に近いベテラン社員でも、適正な能力があり、健康でモラルも高ければ良いわけで、役職者に関しては完全に年功型を廃し、実力主義を取り入れました。

 

一般社員に関しては、賃金制度の改定について議論しています。製造、生産、バックオフィス、営業、研究開発など、求められる仕事の内容が異なりますので、それぞれの職種に応じて、やり甲斐・やる気を引き出す仕組みを、拙速を避け、じっくり考えていこうと思っています。

 

国際人材の育成に関しては、台湾、韓国に工場を設立し、今後はマレーシアやベトナムにも建設していきますので、チャレンジしたいというやる気のある若手社員をどんどんアサインしていこうと考えています。
海外拠点が増えてきたことで、実践を通じて国際人材を育成する機会も拡大してきました。

 

DXについては、全体への一般的な教育は一通り行い、現在は各職場の中で、より高度な勉強を希望する人間を選抜し、引き上げていくという段階です。

 

DXとの関連では、この5月には、AI 活用の裾野拡大に寄与するデータ分析ツール「Tokuyama AutoML」を開発しました。
今回当社が開発したツールでは、時系列データなどの数値データから特定の項目を予測するといった、「機械学習モデル作成」の自動化が可能となります。このツールは、検討初期段階で必要なデータの「見える化」機能を始めとした機械学習プロセスに関わる一連の基本機能を有しています。これまで、大量のデータを扱う取り組みには、多大な作業時間を要し、特に「機械学習モデル作成」については高度な専門知識が必要であることが、全社でデータ活用を推進していく上で課題となっていました。このツールは、データ投入から簡単な設定のみで、これまで時間を要していたグラフ化や相関行列を自動作成する「見える化」から、トライアンドエラーでアルゴリズム選定やパラメータ調整を行っていた「機械学習モデル作成」までの一連作業を自動化することにより、これまでより作業時間を 70~80%削減することが可能です。また、データサイエンスの高度な専門知識がない従業員でも、データから示唆を得ることや、機械学習モデルを作成することが可能となります。このツールの利用拡大により、当社内でのAI 活用の裾野を広げ、様々な課題解決への取り組みを進めていく予定です。

 

Q:現在の社員のみなさんの意識はいかがでしょうか?
今年に入り包括的なエンゲージメントを実施したところ、極めて真面目に仕事に取り組んでいる社員が多く、他社平均と比較しても良好な水準である一方で、仕事にやりがいを感じているかという部分は少し弱いという結果が出ました。
職種・職場ごとでものバラツキも出ており、もう少し中身を精査し、いろいろな声を拾いながら、生産性の高い組織づくりに向けた対策を考えて行かなければならないと考えています。

 

Q:「ありがとうございます。それでは最後に株主や投資家へのメッセージをお願いいたします」
PBRは上昇傾向にあるものの、未だに1倍を割り込んでいます。
これは、収益性が資本コストを下回っているということですので、いかにして収益性を引き上げるかが、当社の課題であると認識しています。
解決のための施策としては、1つは生産性の向上、もう1つが事業ポートフォリオの転換です。
具体的には、やはり、成長事業の中の収益性の高い分野をいかにしてスピーディーに伸長させることができるかにかかってくると思っています。
そのためには、中期経営計画 2025 をより着実に遂行し目標を達成することが必須です。加えて、株主還元を充実させ、株主様との対話を積極的に推進し、株主様をはじめとするステークホルダーの期待に応えることで、PBR1倍を超える経営体質の早期実現につなげたいと考えておりますので、是非ご期待ください。

 

6.今後の注目点

中期経営計画の進捗に関しては、足元、電子先端材料が低調だが、今期から回復基調に入り、全事業分野ほぼ計画通りに推移しているとのことだ。
売上高に関しては、「成長事業が積極投資を梃に成長を牽引し、2025年度連結売上高4,000億円、連結売上高比率50%以上を通過点とし、更なる高みを目指す」、営業利益に関しては「原燃料高の影響により23年3月期まで減益も、24年3月期から増益の流れを受け、2025年度連結営業利益450億円目標達成へ」という計画達成の確度はかなり高まってきたと、同社では考えている。
資本コストを上回る収益性の実現とその結果としてのPBR1倍超えを期待したい。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

9名、うち社外4名(うち独立役員4名)

監査等委員

5名、うち社外4名(うち独立役員4名)

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2024年4月26日

 

<基本的な考え方>
当社は、社会全体の大きな変革の中で、直面する事業環境にあわせて、当社の存在意義を「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」と定義しています。持続可能な社会に貢献するために環境と調和して事業を継続させ、顧客と共に未来を創造することのできるトクヤマでありたいとの思いを込めています。これは、株主の皆様をはじめとして、顧客、取引先、従業員、地域社会等のステークホルダーの方々との信頼と協働によってこそ可能であり、それが持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に繋がると考えております。その実現のためには、コーポレートガバナンスは経営の重要な課題であり、常に充実を図っていく必要があると認識しています。以上が基本的な考え方です。
基本方針としては、コーポレートガバナンス・コード及び2024年4月に制定したコーポレートガバナンス・ポリシーを踏まえて、意思決定の迅速化と責任の明確化、取締役会の独立性整備と監督機能の強化、株主の皆様の権利・平等性の尊重、各種ステークホルダーとの適切な協働、適切な情報開示と透明性の確立及び株主の皆様との建設的な対話などに努めます。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則について、全てを実施しています。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>

原則

開示内容

原則1-4【政策保有株式】

当社は、経営戦略の一環として、取引の維持強化、資金調達、原材料の安定調達等事業活動の必要性に応じて、政策的に上場企業の株式を保有することがあります。

この政策保有上場株式については、効率的な企業経営を目指す観点から、可能な限り縮減します。

また、毎年取締役会において、リスクを織り込んだ資本コストと便益との比較により経済合理性を検証し、将来の見通しを踏まえて保有の適否を確認します。2023年度末現在において、保有する上場株式は20銘柄でした。2024年度は10銘柄程度の縮減を目指して取り組みを進めます。

当社は、当社と投資先企業双方の企業価値への寄与を基準に議決権を行使します。

補充原則2-4-1 【多様性の確保】

トクヤマのビジョンで掲げた4つの価値観の浸透を図るとともに、一人一人の個性と能力を十分に発揮できるよう人材育成と多様性(ダイバーシティ)の推進に積極的に取り組んでいます。

トクヤマのダイバーシティ推進活動は、会社の持続的な成長のために、社員がイキイキと活躍できる状態を目指しています。「知」(知識や知恵)の多様性を重視し、職場風土改革を通じて、生産性向上を志向しながら、働きやすさと働きがいを追求しています。2021年2月に公表した「中期経営計画2025」(以下、「中期経営計画2025」という)においてCSR経営の推進を重点課題の一つと位置づけ、CSR推進の観点から特に重要な課題として抽出・特定したマテリアリティの1項目として「多様性(ダイバーシティ)と働きがいの重視」を掲げ、マテリアリティの解決・達成に向け、経営資源を集中して取り組んでいます。

また、従業員の多様な価値観や働き方にも応えるべく、2020年に複線型の人事制度を導入しました。それぞれの役割・コースに応じた教育制度を設けるとともに、公募型の研修を設けるなどして人材育成に取り組んでいます。女性の活躍については、女性管理職比率などの目標値を設定し、目標の達成に努めています。現在の女性管理職比率目標は、2030年度までに15%(単体・連結子会社)と設定し、2023年度末の同比率は8.2%(単体・連結子会社)となっております。外国人及び中途採用者の管理職登用に関する数値目標は設けていませんが、2020年に導入した人事制度の目的である「公正な評価と処遇」の精神に則って運用し、管理職に占める中途採用者の割合は2018年度6.8%から2023年度11.5%と増加しており、引き続き企業価値向上につながる多様な人材の採用と活躍ができる取り組みを推進します。

人材育成体系、女性の活躍推進目標等については、当社ウェブサイト

(https://www.tokuyama.co.jp/csr/employee.html)に掲載しています。

原則3-1-(i)【会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画】

当社は、世界的な環境意識の高まりやデジタル革命が急激に進む時代背景をとらえて「存在意義(Mission)」を定義しています。

そして、Missionを果たすために私たちが目指す「ありたい姿(Vision)」を掲げました。社員一人一人が4つの「価値観(Values)」を持ち、ありたい姿の実現に向けて、歩み続けます。

 

<トクヤマのビジョン>

 Mission 存在意義

 化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する。

 

 Vision ありたい姿

 ・マーケティングと研究開発から始める価値創造型企業

 ・独自の強みを磨き、活かし、新領域に挑み続ける企業

 ・社員と家族が健康で自分の仕事と会社に誇りを持てる企業

 ・世界中の地域・社会の人々との繋がりを大切にする企業

 

 Values 価値観

 ・顧客満足が利益の源泉

 ・目線はより広くより高く

 ・前任を超える人材たれ

 ・誠実、根気、遊び心。そして勇気

 

 経営方針及び中期経営計画については、インターネット上の当社ウェブサイト

(http://www.tokuyama.co.jp/)に掲載しています。

補充原則3-1-3 【サステナビリティの開示】

深刻化する気候変動や、社会におけるESG推進の潮流を受け、中期経営計画2025では、「事業ポートフォリオの転換」、「地球温暖化防止への貢献」、「CSR経営の推進」の3つを重点課題として挙げています。 「事業ポートフォリオの転換」は、これまでのエネルギー多消費型の事業から、省エネルギー型・社会課題解決型のサステナブルな事業への転換を目指しています。 「地球温暖化防止への貢献」は、「2050年度カーボンニュートラル」という高い目標を掲げ、その着実な達成を目指します。 「CSR経営の推進」では、CSRの重要課題「マテリアリティ」を中期経営計画2025における「ありたい姿」を実現するための具体的な行動目標と位置づけ、これらに真摯に取り組むことにより堅固な成長の土台を築きます。 具体的な取り組みとして、当社のサステナビリティへの取り組みの核となる「サステナビリティ基本原則」を2023年4月に制定しました。これを受け、「トクヤマグループ行動憲章」の改正をはじめ、さまざまな方針類を整備しました。2022年12月に制定した「トクヤマグループ人権方針」と併せ、当社のサステナビリティに対する取り組みを進めています。

 サステナビリティ基本原則  

https://www.tokuyama.co.jp/csr/activities.html

 トクヤマグループ行動憲章  

https://www.tokuyama.co.jp/csr/pdf/2023csrpdf_1.pdf

 トクヤマグループ人権方針  

https://www.tokuyama.co.jp/csr/pdf/human_rights_policy.pdf

 当社グループは、2019年度比で2030年度GHG排出量30%削減、2050年度カーボンニュートラル実現を目指して着実に推進しております。2021年2月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明しました。

  2022年度以降、TCFDが示す「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」のフレームワークに則って開示する情報を整理し、「トクヤマTCFDレポート

(https://www.tokuyama.co.jp/csr/global_warming.html)」として発行しています。さらに、2023年3月には国際的な認定機関であるSBT(science-based targets)イニシアチブに対するコミットメントを、2023年5月には経済産業省が主導する「GXリーグ」への参画を表明しました。

 

 

 

 当社グループは、マーケティングと研究開発から始める価値創造型企業を目指しています。この価値創造を支えるのは、当社グループに蓄積された様々な知的財産であり、これらの保護と活用、そして深化と新たな獲得に向けた研究開発への投資は、事業ポートフォリオ転換の実現に不可欠と認識しています。これらの詳細は、統合報告書「トクヤマレポート

(https://www.tokuyama.co.jp/ir/report/annual_rep.html)」に記載しています。また、当社グループの知的財産への考え方を明らかにするため、2023年4月に「トクヤマグループ知的財産の基本方針」(https://www.tokuyama.co.jp/csr/pdf/basic_intellectual_property_policy.pdf)を制定しました。

 加えて、当社グループは「人材育成」をマテリアリティに掲げ、企業競争力の源泉となる人材の育成・強化、ならびに次世代を担う人材の充実を目指した施策を行っています。2023年6月に改正した「トクヤマグループ人事ポリシー」(https://www.tokuyama.co.jp/csr/employee.html#Human_Resources_Policy)は社員に期待するあるべき姿、成長の方向性などを規定し、人事施策の軸として、また人事制度の改定や運用の際の基本原則としてこれを活用するとともに、グループ会社への浸透を進めています。この人事ポリシーのもと、経営環境の変化に対応していくために、新たな人材戦略を2024年4月の取締役会にて決議しました。この人材戦略には「経営戦略の実現に寄与しつつ、従業員の価値向上を実現する」というメッセージを込め、経営戦略の実現や当社の企業価値向上につながるストーリーを具体的に示し、働き方のニーズに応じた多様で生産性が高い人的資本を形成することを目的としています。「トクヤマレポート」において、この人材戦略を含む当社の人的資本に対する考え方について、詳しく説明しています。

原則5−1【株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、株主・投資家の皆様からの理解と信頼を得るため、会社の経営・財務情報のみならず社会に提供する製品・サービス、環境的・社会的側面などの非財務情報についても、適時・適切にかつわかりやすく開示するよう努めています。情報開示の基本姿勢、適時開示体制については、本報告書の「Ⅴ-2.その他コーポレートガバナンス体制等に関する事項(適時開示体制の概要)」をご覧ください。

株主・投資家の皆様との建設的な対話を促進する統括的な役割は、広報・IRグループ所管部門長が担います。

対話の企画、実施などについては、広報・IRグループが主体となり、経営企画グループ、経営管理グループ、財務・投融資グループ、CSR企画グループ、総務グループ、研究開発本部、事業部門など社内の各部署と密接に連携しています。

経営トップ自らが株主・投資家と対話を行うIR活動として、アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を年4回開催している他、証券会社主催のカンファレンスやスモールミーティングへの出席などを随時実施しています。またIR活動を担当する広報・IRグループは、国内外の機関投資家との個別面談や個人投資家向け会社説明会などを行っています。その他IR活動の詳細については、本報告書の「Ⅲ-2.IRに関する活動状況」をご覧ください。

株主・投資家の皆様との対話で得られたご意見等につきましては、経営トップと関係部署の責任者が出席するIR会議の中で確認・共有している他、経営会議での報告などを通じ社内の各部署へフィードバックして、経営戦略や事業戦略の策定や軌道修正に活かし、企業価値向上につなげています。

なお、インサイダー情報の管理については、社内規程を定め、秘密保持誓約等で情報管理を徹底しています。

【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】【英文開示有り】

当社は「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」という経営理念(存在意義)を定め、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努めています。そして、中期経営計画2025においてROEを経営指標の一つに置き、株主資本の効率化に取り組んできました。さらに、株主還元の充実、ROICに基づく経営及び政策保有株式の縮減を進めて、企業価値の一層の向上を図ります。詳細は以下のURLにて公開しています。

日本語版:https://www.tokuyama.co.jp/news/pdf/2024042604_Release.pdf

英語版:https://www.tokuyama.co.jp/eng/news/pdf/2024042604_Release_e.pdf

【株主との対話の実施状況等】

2023年度の株主との対話の実施状況については、以下のURLで表示される資料の「別紙」をご参照ください。

日本語版:https://www.tokuyama.co.jp/news/pdf/2024042604_Release.pdf

また、本報告書「Ⅲ-2.IRに関する活動状況」もご参照ください。

 

 

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

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