ブリッジレポート
(8931) 和田興産株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(8931)和田興産 2024年2月期決算

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和田 剛直 会長

 

溝本 俊哉 社長

和田興産株式会社(8931)

 

 

企業情報

市場

東証スタンダード市場

業種

不動産業

会長

和田剛直

社長

溝本俊哉

所在地

兵庫県神戸市中央区栄町通4-2-13

決算月

2月

HP

https://www.wadakohsan.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,451円

11,099,752株

16,105百万円

8.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

65.00円

4.5%

243.25円

6.0倍

2,762.11円

0.53倍

*株価は4/26終値。発行済株式数は24年2月末の発行済株式数から自己株式を控除。
各数値は24年2月期決算短信より。

 

非連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2021年2月(実)

39,806

2,737

1,918

1,267

114.22

35.00

2022年2月(実)

41,785

3,883

3,162

2,337

210.55

40.00

2023年2月(実)

42,712

4,387

3,607

2,382

214.61

50.00

2024年2月(実)

38,825

4,528

3,820

2,638

237.73

60.00

2025年2月(予)

39,000

4,700

3,800

2,700

243.25

65.00

* 予想は会社予想。単位:百万円。

 

和田興産(株)の2024年2月期決算の概要と2025年2月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画(24/2期~26/2期)
3.2024年2月期決算概要
4.2025年2月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:ESG活動>
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 24/2期は前期比9.1%の減収、同3.2%の営業増益。主力の分譲マンションの売上高は前期並みの引渡戸数も、戸当たり販売価格の低下により減収増益となった。戸建て住宅およびその他不動産販売は引渡が増加し、大幅な増収増益となった。また、不動産賃貸事業においても、高稼働率維持により売上高が増加したことに加え、前期に大規模修繕を前倒しで実施した反動により大幅な増益となった。配当は、創業125年の記念配当2円を含む前期から10円増加の1株当たり60円となる。

     

  • 25/2期の会社計画は、前期比0.4%の増収、同3.8%の営業増益の見通し。売上高は横ばいも高利益率を維持し、営業利益は増益を見込む。主力の分譲マンション販売事業は、引渡戸数が減少も販売単価の上昇により売上高が前期並みとなる見込みである。戸建て住宅販売事業とその他不動産販売事業は、売上高が前期比で増加する見込みである。戸建て住宅販売事業は、前期を上回る54戸の引渡が予定され、その他不動産販売事業は、販売用収益物件の好調な売却を見込む。一方、不動産賃貸事業は、販売用収益物件の売却等の要因を踏まえ、前期比で減収を予想している。通期の配当予想は1株当たり年65円で、前期と比べ1株当たり5円の増配(記念配当2円を除くと7円の増配)を計画。予想配当性向は26.7%となる見込みである。

     

  • 同社は中期経営計画の達成に向けて、新たな取組みを強化している。分譲マンション事業では、新たに大阪府堺市での供給を開始した他、同社初となる兵庫県加古川市でも用地仕入を行った。戸建て事業では、購入者の安心に繋がるアフターサポートの充実を目指し、リフォーム事業を開始した。その他、金融機関店舗の跡地での共同事業、蓄電池事業への投資、老人ホームの開発など、新規事業への取組みを加速させている。これら新規事業がいつ頃から同社の成長に貢献するのか注目される。

     

1.会社概要

明治32年(1899年)創業の老舗不動産会社。兵庫県神戸市・明石市・阪神間を主要地盤に、マンションや戸建て住宅の分譲、不動産賃貸及び土地有効活用等、地域密着型の不動産事業を展開。同社は用地仕入と企画に特化し、設計・建築・販売業務を他社に委託している。ブランド名「ワコーレ」を冠する分譲マンションは30戸~50戸程度の中規模マンションが中心だが、近年、大型マンション開発にも取組んでいる。また、上記事業エリアに近接する大阪府内、姫路市へのエリア拡大も進めている。加えて、マンションギャラリーの常設化により、価格競争力と利益率の向上を実現している。
神戸市内供給棟数 26年連続第1位、近畿圏供給棟数 第3位(いずれも2023年)。2024年2月末現在の累積供給実績は552棟21,362戸(着工ベース)。
1899年1月、神戸市で不動産賃貸業を創業。1966年12月に和田興産(有)として法人化され、1979年9月に和田興産(株)に改組し、1991年3月より自社ブランドである「ワコーレ」分譲マンション事業を本格的に開始した。

 

【企業理念-共生(ともいき) : 自分の生き方が他の人の幸せにつながる-】
人と人とのつながりを大切に、共に支え合い、自分の生き方が他の人の幸せにつながることを歓びとする「共生(ともいき)」の理念。同社はこの想いのもと、プロダクトコンセプトとして「PREMIUM UNIQUE (プレミアムユニーク)」を掲げ、住まう方にとってのオンリーワン(かけがえのない)の住まいづくりを目指している。同社は、いつまでも変わらぬ愛着と、住まいとしての価値を誇れる、住まう方にとっての「プレミアムユニーク」を神戸発・神戸ブランドとして発信していきたいと願っている。

 

(1)事業セグメント

「ワコーレ」ブランドで展開する(1)分譲マンション販売、「ワコーレノイエ」ブランドで展開する(2)戸建て住宅販売(販売は両事業共に外部委託)、収益物件や宅地等の開発・販売を手掛ける(3)その他不動産販売、賃貸マンション(ブランド名「ワコーレヴィータ」他)、店舗、駐車場等の賃貸を行う(4)不動産賃貸収入、及び解約手付金収入、仲介手数料収入、保険代理店手数料等の報告セグメントに含まれない(5)「その他」に区分される。

 

分譲マンション販売事業(24/2期の売上構成比77.1%)
分譲マンション販売事業は、売上の8割程度を占める同社の主力事業である。日本有数の住宅地である神戸・明石地区(兵庫県神戸市、明石市周辺)、阪神地区(兵庫県芦屋市、西宮市、尼崎市、伊丹市、宝塚市)を主要エリアとし、大手マンションデベロッパーと競合の少ない30戸~50戸程度の中規模マンションを中心に「ワコーレ」ブランドで展開している。建築コスト増への対策や仕入力強化により、最近では100戸を超える大型物件も年間1~2棟手掛けている。人気の高いエリアにフォーカスし、同一地域で異なるタイプのマンションを供給することで、消費者の多様なニーズの取り込みと高い販売効率を実現する販売戦略、常設マンションギャラリーで販売することで販促費を抑制する戦略等、独自の地域密着戦略で効率的な事業モデルを確立している事が強み。また、近年では市街地の駅近物件を増加するとともに、神戸・阪神間に隣接する大阪府北摂地域や大阪市内、兵庫県姫路市へのエリア拡大で新たな可能性を追求している。

 

24/2期プロジェクト事例


(同社2024/2期決算説明資料より)

 

戸建て住宅販売事業(24/2期の売上構成比5.2%)
2007年より「ワコーレノイエ」ブランドで、神戸市・阪神間を中心に北摂地域や近年子育て世帯に人気の高い明石市へも展開し、10戸程度の中小規模の宅地造成開発を行っている。分譲マンション事業で培った用地仕入れのネットワークを活用するとともに、開発物件の出口の多様化を図るため木造戸建て住宅事業を展開し、デザイン面の配慮や環境や災害などへの備えも含めた付加価値重視による開発を進めている。数多く寄せられる多様な用地情報の中には、立地、面積、地形等の面で戸建分譲に適した案件も多い。また、分譲マンションの事業期間が2年弱であるのに対して当事業は1年程度と短いため資金効率も高く、分譲マンション竣工の谷間を埋める事ができる。街並み造りを基本とする開発コンセプト、分譲マンション事業で培ったデザイン性や設計・企画力等でパワービルダーとの差別化を図っている。

 

戸建て住宅販売の事例

(同社2024/2期決算説明資料より)

 

その他不動産販売事業(24/2期の売上構成比9.4%)
鉄骨アパートや木造アパート等の企画開発に加え、マンション用地や戸建て用地の素地売りなどを含め開発用地等の出口戦略における選択肢の確保に寄与している。物件情報を有効活用する機能を担う他、資産の入替えに伴う賃貸物件(棚卸資産)の売却収益も当セグメントに計上される。近年は販売用小型収益物件(鉄骨・木造アパート)の販売が好調に推移している。

 

その他不動産販売の事例

(同社2024/2期決算説明資料より)

 

不動産賃貸事業(24/2期の売上構成比8.2%)
賃貸事業は、レジデンスが中心で、その他店舗・事務所等、駐車場、トランクルーム等も保有している。安定的なキャッシュ・フローが得られるビジネスとして創業時より継続する事業であり、市況に左右されがちな分譲マンション事業のウエイトが高い同社にあって、収益の安定化に寄与している。これらの賃貸物件の仕入れは、既存物件の取得が中心で、長期保有を前提に固定資産へ計上し賃貸収入を得ている他、用地を取得した後に新築する場合もある。その一方で、その他不動産販売事業における鉄骨等のアパートについては販売用としてたな卸資産へ計上するものの、売却期間までに得られる賃貸収入は不動産賃貸収入セグメントに計上され、近年の当該事業の売上高の増加に寄与している。また、将来的に分譲開発案件へ転換するケースも視野に入れている。稼働率は95%以上の高水準を維持している(駐車場を除く)。2024年2月末現在の資産構成は、レジデンス74.6%、店舗・事務所等18.6%、駐車場0.5%、トランクルーム他6.3%となっている。

 

不動産賃貸事業の事例


(同社2024/2期決算説明資料より)

 

報告セグメントには含まれないその他の事業セグメントがあり、解約手付金収入、保険代理店手数料収入及び仲介手数料等がある(24/2期売上構成比0.1%)。

 

(2)和田興産の強み

日本有数の住宅地が事業エリア
日本有数の住宅地である神戸、明石、阪神間を主要な事業エリアとする事で旺盛な住宅需要を取り込むと共に情報力で比較優位を確立しており、地域に根差したコミュニティづくりでも定評がある。


(同社2024/2期決算説明資料より)

 

関西における「ワコーレ」ブランドの浸透
関西において「ワコーレ」ブランドは浸透しており、そのブランド力は大手マンションデベロッパーに引けを取らない。日本経済新聞社大阪本社が実施した第26回(2023年) マンションブランドアンケートにおいて、「個性がある」ブランド部門で7位と「親しみがある」ブランド部門で3位にランクされた。


(同社2024/2期決算説明資料より)

 

徹底したリスク管理により財務の健全性を維持
リスク管理を徹底する事で財務の健全性を維持しており、金融機関との取引もバランスがよく、かつ、安定している。この結果、多くの企業が淘汰されてきた不動産業界にあって、創業から120年以上の社歴の中で赤字計上はリーマン・ショックの影響を受けた10/2期のみ。安定的な配当も継続している。

 

大手との差別化に成功・事業エリア拡大による成長余地
近畿圏では、リーマン・ショック後の不動産不況で中堅・中小のマンション事業者の淘汰が進み、大手不動産会社や鉄道系不動産会社等に絞られてきたが、これらの不動産会社は大型物件や沿線開発を得意とするため、30戸~50戸程度の中規模マンションを中心に展開する同社とは用地取得等で競合するケースが少ない。ただ、同社は更なる業容拡大に向け、既存エリアにおいて大型物件の開発に取り組むと共に、既存事業エリアと近接する兵庫県姫路市や大阪府内へ事業エリアを拡大中である。新築分譲マンションブランド「ワコーレ」の累積供給実績は、552棟、21,362戸(着工ベース:2024年2月末時点)。近畿圏供給棟数は第3位(2023年)、神戸市内供給棟数は26年連続第1位、神戸市内供給戸数は第1位(2023年)の実績を誇る。


(同社2024/2期決算説明資料より)

 

マンションギャラリーの常設化
同社は、1つの常設マンションギャラリーで複数物件を販売することからコスト面で優位に働く。また、同時販売を行うため顧客に対して幅広い選択肢の提供が可能となっている。

 

(同社2024/2期決算説明資料より)

 

2.中期経営計画(24/2期~26/2期)

同社は、今後3年間の中期経営計画を発表した。不動産業を取り巻く環境がより一層変化のスピードを速める中、重要課題が山積している。こうした環境下、同社では、より一層企業の成長を促し、持続可能な企業を目指すためには、新たな組織風土を構築することが必要不可欠であると考えている。これらの基本となる考え方について、行動指針という形で新たに明確化を図った。

 

【行動指針 (Wada-Way)】

自主自律

主体的に物事を捉え、自らが責任感を持って行動する

唯一無二

一人ひとりの個性を活かし、価値ある独創で地域を彩る

迅速果断

スピード感を持った事業への取組み

相互信頼

チームワークとコミュニケーション(建設的な議論)

 

【全社基本方針】

テーマ VISION

将来を展望し、「地域に根ざした総合不動産業」への道筋を創る

目標

◆直近3ヵ年の実績合計の利益水準を上回る

◆収益構造の転換を進め、事業セグメントの最適化を図る

重点戦略

◆新たなこと(地域、事業、分野等)へ積極的に挑戦しつつ、事業の柱づくりを進める

◆内向き志向から外向き志向への転換。人材戦略、アライアンスの有効活用

◆社会的課題の解決に向けたソリューション機能の充実と育成(ESG、SDGsの目線)

 

【数値計画・KPI】
<数値計画>

 

21/2~23/2期合計

24/2~26/2期合計

売上高

1,243

1,224

営業利益

110

118

経常利益

87

94

当期純利益

60

64

*単位:億円。

 

<KPI>

カテゴリー

指標項目

数値目標

収益性・効率性

ROE(自己資本当期純利益率)

8%以上

健全性・安全性

D/Eレシオ(有利子負債資本倍率)

2倍以内

 

【セグメント別の事業展開】
◎分譲マンション事業-当社の強みを生かしつつ、足元の環境を踏まえて成長機会を創造

強み

地元地域に精通、圧倒的な存在感・ブランド力、常設マンションギャラリーを活用した販売力

外部環境

需給の安定化、世帯数の増加(世帯当たり人員の減少)、建築コスト増加

成長機会, 事業戦略

地域拡充、共同事業(JV)への取組み、再開発

引渡戸数目標

2,000戸目処(3期間合計)、保有ランドバンク 約2,600戸(2023年2月期末時点)

 

◎戸建て事業-ワコーレブランドを活用し、分譲マンション事業を補完

事業戦略

重点エリアの設定(神戸市以西の設定)、建築コスト上昇への対応、自由設計住宅の取組み

引渡戸数目標

前3期間の実績に対して1.5倍増。第一段階として年間50戸体制の確立

 

◎不動産賃貸事業-創業時から続く事業

強み

レジデンス系中心により収益の安定性を確保。中小型物件を中心にリスク分散、恒常的に95%超の高稼働率

成長機会, 事業戦略

既存築古物件の建替え・他事業への転用。借地物件の取組み、プロパティタイプの拡充

保有戸数目標

計画最終年度で約2,200戸の実現

 

◎販売用収益物件-ここ数年間における成長分野。インカム、キャピタルゲインで収益を安定確保

強み

これまで培った用地仕入・賃貸付けのネットワークを最大限活用。マンションに不向きな土地でも

開発可能

成長機会, 事業戦略

建築コストの上昇に鑑み最適用地を厳選。保有年数の最適化(売却時期の検討)

引渡戸数目標

販売戸数は600戸超(3期間合計)、保有戸数800戸前後 年間賃貸収入6億円

 

【重点戦略における進捗状況】
◎新たな取組みについて
◆分譲マンション事業では新たに大阪府堺市での供給を開始。同社初となる兵庫県加古川市でも用地仕入。
◆戸建て事業では2009年から開始した「ワコーレノイエ」が累計供給戸数700戸を突破。購入者の安心に繋がるアフター
サポートの充実を目指し、リフォーム事業を開始。
◆その他、新たな事業として、金融機関店舗の跡地での共同事業、蓄電池事業への投資、老人ホームの開発など、新規事業
への取組みが進展。

 

◎人的資本投資について
◆従業員エンゲージメント向上及び人材確保の観点から、2年連続でベースアップを実施。
◆外向き志向への転換を意図し、神戸市や首都圏の不動産会社への社員出向を実施。

 

◎サステナビリティ基本方針の策定
◆サステナビリティ経営をより積極的に推進し、持続的な企業価値向上に向けた対応として、新たにサステナビリティ基本方針
を策定。
◆基本方針に基づき、実現したい未来に向けて重点的に取り組む9つのマテリアリティ(重要課題)を特定。

 

【サステナビリティ経営への取組み】

サステナビリティ基本方針の策定およびマテリアリティの特定について

当社は、サステナビリティ経営をより積極的かつ能動的に推進していく姿勢を明確にするため、新たにサステナビリティ基本方針を策定し、特に注力すべき9つのマテリアリティ(重要課題)を特定いたしました。

サステナビリティ基本方針

当社は「共生(ともいき)」を企業理念とし、神戸を中心とした街に暮らす一人ひとりの豊かな人生に寄り添い、支え続けるために、地域に根差した住まいづくりや快適な街づくりを展開し、地域と社会の発展に寄与してまいりました。

この考え方に基づき、自らの中長期的な企業価値向上と持続可能な社会の実現を目指すべく、マテリアリティを特定し、積極的にサステナビリティ活動を推進してまいります。

マテリアリティ(重要課題)

マテリアリティとは、和田興産がサステナビリティ方針に基づき特定した実現したい未来に向けて重点的に取組む9つのテーマです。これらのテーマは「企業価値の創出を支える基盤」、「価値を生み出す資本」、「創出を目指す価値」の3つの機能を担い、解決を通じて企業理念「共生」の実現を目指します。

 

(同社2024/2期決算説明資料より)

 

 

【利益配当方針】
◆会社の継続性及び収益性を確保するため、既存事業及び新規事業への再投資を中心としつつ、株主還元策の拡充及びESG、SDGs等の観点も含めて利益の配分方針の明確化を図る。

項目

水準

概要

事業再投資

50%~70%

収益性、効率性及び市場動向の把握を通じ、成長性等も加味して既存事業への再投資を図る

配当性向

20%~30%

株主への適正な還元が求められるなか、30%の配当性向を目指す

 

サステナブル関連

10%~20%

新たな事業領域への投資も含めて環境面への対応、人的資本への投資も本項目を投資原資とする

 

 

3.2024年2月期決算概要

(1)非連結業績

 

23/2期

構成比

24/2期

構成比

前期比

会社予想

1/9修正計画

予想比

売上高

42,712

100.0%

38,825

100.0%

-9.1%

39,000

-0.4%

売上総利益

8,387

19.6%

8,489

21.9%

+1.2%

-

-

販管費

3,999

9.4%

3,960

10.2%

-1.0%

-

-

営業利益

4,387

10.3%

4,528

11.7%

+3.2%

4,500

+0.6%

経常利益

3,607

8.4%

3,820

9.8%

+5.9%

3,700

+3.3%

当期純利益

2,382

5.6%

2,638

6.8%

+10.8%

2,500

+5.6%

* 数値には株式会社インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります(以下同じ)。
* 単位:百万円。

 

* 株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
* 費用項目の▲は費用の増加を示す。

 

前期比9.1%の減収、同3.2%の営業増益
売上高は前期比9.1%減の388億25百万円、営業利益は同3.2%増の45億28百万円となった。主力の分譲マンションは、前期並みの引渡戸数も、戸当たり販売価格の低下により減収減益となった。戸建て住宅およびその他不動産販売は、引渡が増加し大幅な増収増益となった。不動産賃貸事業においても、高稼働率維持により増収となり、前期に大規模修繕を前倒しで実施した反動により大幅な増益となった。
売上総利益率は前期比2.3ポイント上昇の21.9%と収益性の向上が図られた。売上高販管費率が前期比で0.8ポイント上昇したものの、売上高営業利益率も11.7%と同1.4ポイントの上昇となった。その他、営業外費用で資金調達費用が減少したことなどにより、経常利益は前期比5.9%増と営業利益の増加率を上回った。また、法人税、住民税及び事業税が増加したものの、前期に計上した固定資産除却損と関係会社株式評価損が今期は計上がなかったことにより、当期純利益は前期比で10.8%の増加となった。
配当は、創業125年の記念配当2円を含む前期から10円増配の1株当たり60円となる。

 

1月9日の修正予想との差異要因
24/2期は、1月9日の修正予想に対し、売上高で0.4%下回り、営業利益で0.6%、経常利益で3.3%上回った。分譲マンション販売は、利益率が高く好調も、1棟を翌期に持ち越したため売上高が計画を下回った。一方、その他不動産販売は、販売用収益物件の売却が好調に推移し、計画を上回った。また、不動産賃貸収入も引き続き高稼働率を維持しており、計画を上回った。

 

営業利益の変動要因

23/2期 営業利益

4,387

分譲マンションの利益減少

-532

戸建て住宅の利益増加

+147

その他不動産販売の増収による利益増加

+175

賃貸収入増加

+162

賃貸物件の原価減少

+197

その他手数料収入等の減少

-48

販管費の減少

+39

24/2期 営業利益

4,528

* 単位:百万円

 

(2)セグメント別動向

 

23/2期 

構成比/

利益率

24/2期 

構成比/

利益率

前期比

分譲マンション販売

37,394

87.5%

29,927

77.1%

-20.0%

戸建て住宅販売

1,103

2.6%

2,017

5.2%

+82.9%

その他不動産販売

1,099

2.6%

3,657

9.4%

+232.6%

不動産賃貸収入

3,022

7.1%

3,185

8.2%

+5.4%

その他

92

0.2%

38

0.1%

-58.2%

売上高

42,712

100.0%

38,825

100.0%

-9.1%

分譲マンション販売

4,503

12.0%

4,170

13.9%

-7.4%

戸建て住宅販売

2

0.2%

152

7.6%

+6041.1%

その他不動産販売

57

5.2%

130

3.6%

+128.0%

不動産賃貸収入

715

23.7%

1,117

35.1%

+56.1%

その他

83

90.3%

35

91.5%

-57.6%

調整額

-974

-

-1,077

-

-

営業利益

4,387

10.3%

4,528

11.7%

+3.2%

* 単位:百万円。営業利益の構成比は売上高利益率。

 

* 株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

◎分譲マンション販売
売上高299億27百万円(前期比20.0%減)、セグメント利益41億70百万円(同7.4%減)。開発基盤となる用地価格や建築コストが上昇しているものの、住宅ローン金利の低水準や住まいに利便性を求める傾向が強まっていることから、分譲マンション市場は比較的堅調に推移した。こうした環境下、ワコーレシティ立花等14棟が当事業年度に竣工したことなどにより、686戸(前期比5戸増)の引渡を行った。戸当たり平均価格は44百万円(前期比11百万円低下)となった。売上総利益率は前期比2.9ポイント上昇の21.6%と、より一層の収益性の向上が図られた。

 

その他のKPIは、発売戸数473戸(前期比199戸減)。契約戸数584戸(同60戸減)、契約済未引渡戸数690戸(同102戸減)。
仕入戸数は854戸(同110戸減)となった。24年2月末時点の仕入済未発売プロジェクト数は42棟・1,777戸。地域別の内訳は、神戸市20棟・915戸、阪神間9棟・262戸、明石市~姫路市7棟・391戸、大阪府6棟・209戸。

 

【事業のKPI】

 

23/2期

前期比

24/2期

前期比

引渡戸数(戸)

681

+15

686

+5

戸当たり平均価格(百万円)

55

+9

44

-11

発売戸数(戸)

672

-48

473

-199

契約戸数(戸)

644

-129

584

-60

契約済未引渡戸数(戸)

792

-37

690

-102

仕入戸数(戸)

964

+315

854

-110

 

◎戸建て住宅販売
売上高20億17百万円(前期比82.9%増)、セグメント利益1億52百万円(前期2百万円)。新規発売物件を中心に契約獲得に向けた販売活動に注力した。引渡戸数は48戸(前期19戸)、期中契約高は44戸・17億61万円(同28戸・14億37百万円)、契約済未引渡戸数は7戸・2億45百万円(同11戸・5億1百万円)。売上総利益率は、前期比0.8ポイント上昇の15.2%となった。

 

◎その他不動産販売
売上高36億57百万円(前期比232.6%増)、セグメント利益は1億30百万円(同128.0%増)。賃貸マンション・宅地等230戸(前期69戸)を販売した。販売用収益物件の売却が好調で、仕入・開発にも注力した。プロジェクトの内訳は、開発関連4件・12億56百万円(前期:3件・1億59百万円)、販売用収益物件16件・24億円(同:2件・9億29百万円)、その他0件・0円(同:1件・10百万円)。販売用収益物件については、木造収益物件7件・87戸、鉄骨収益物件9件・121戸を販売した。また、開発中物件は、期末時点で68件・1,004戸(前期末:72件・1,076戸)となった。
期中契約高は220戸・34億75百万円(前期29戸・3億79百万円)、契約済未引渡戸数は20戸・7億41百万円(前期30戸・9億23百万円)。売上総利益率は、前期比5.4ポイント低下の9.2%となった。

 

【その他不動産販売の内訳】

 

23/2期

24/2期

 

プロジェクト数

売上高

プロジェクト数

売上高

前期比

その他不動産販売

6件

1,099

20件

3,657

+232.8%

 開発関連

3件

159

4件

1,256

+686.3%

 収益物件

2件

929

16件

2,400

+158.4%

 その他

1件

10

0件

0

-

* 単位:百万円

 

◎不動産賃貸収入
売上高31億85百万円(前期比5.4%増)、セグメント利益は11億17百万円(同56.1%増)。同社が主力とする住居系は比較的安定した賃料水準を維持しており、入居率向上と滞納率の改善に努めると同時に、最適な賃貸不動産のポートフォリオ構築のため、新規物件の取得など賃貸収入の安定的な確保を目指した。保有戸数は、販売用の収益物件を除いて住居系で期末時点1,894戸となった。稼働率は住居、店舗・事務所等で従来通り95%以上を維持し、安定収益の確保に寄与している。売上総利益率は、前期比9.6ポイント上昇の42.3%となった。前期に大規模修繕を前倒しで実施した反動により大幅に収益性が向上した。

 

 

【賃貸収入の内訳(24/2期)】

 

収入額

構成比

前期比

住居

2,339

73.4%

+5.2%

店舗・事務所等

686

21.6%

+3.1%

駐車場

97

3.1%

+15.6%

トランクルーム他

61

1.9%

+25.6%

合計

3,185

100.0%

+5.4%

* 単位:百万円

 

【稼働率の推移】

 

22/2期期末

23/2期上期末

23/2期期末

24/2期上期末

24/2期期末

住居

96.7%

95.7%

97.9%

96.6%

97.8%

店舗・事務所等

95.4%

95.8%

98.3%

99.1%

97.4%

駐車場

61.3%

77.7%

86.9%

87.8%

89.8%

 

セグメント別売上総利益

 

23/2期

売上総利益率

24/2期

売上総利益率

売上総利益

前期比

売上総利益率

前期比

分譲マンション販売

6,997

18.7%

6,465

21.6%

-7.6%

+2.9P

戸建て住宅販売

158

14.4%

305

15.2%

+93.0%

+0.8P

その他不動産販売

161

14.6%

336

9.2%

+108.7%

-5.5P

不動産賃貸収入

987

32.7%

1,346

42.3%

+36.4%

+9.6P

その他

84

91.3%

37

97.4%

-56.0%

+6.1P

売上総利益合計

8,387

19.6%

8,489

21.9%

+1.2%

+2.2P

* 単位:百万円

 

(3)期中契約高と契約済引渡残高の推移(24/2期)

 

24/2期は、期中契約高が前期比7.0%増、契約済未引渡残高が前期末比3.7%減となった。期中契約高は戸建て住宅販売とその他不動産販売の増加が寄与した。また、期末の契約済未引渡残高は減少したものの、分譲マンション販売を中心に過去と比較して高水準の契約済未引渡残高を維持している。

 

(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

要約BS

 

23年2月末

24年2月末

 

23年2月末

24年2月末

現預金

11,756

17,345

仕入債務

7,026

8,647

販売用不動産

9,779

9,610

短期有利子負債

17,018

17,780

仕掛販売用不動産

34,446

44,283

前受金

3,490

6,287

流動資産

57,744

72,380

長期有利子負債

27,503

34,809

有形固定資産

26,378

26,699

負債

57,564

70,569

無形固定資産

625

668

純資産

28,579

30,658

投資その他

1,395

1,480

負債・純資産合計

86,144

101,228

固定資産

28,399

28,847

有利子負債

44,521

52,589

* 単位:百万円
* 有利子負債=社債+借入金(リース債務を含まず)

* 株式会社インベストメントブリッジが会社資料を基に作成。

 

24/2期期末の総資産は前期末との比較で150億84百万円増の1,012億28百万円。資産サイドは、次期以降の事業用地取得や建築進捗等による仕掛販売用不動産と現預金などが主な増加要因となった。負債・純資産サイドは、プロジェクト資金調達にかかる長期借入金(1年内返済予定分含む)や前受金などが主な増加要因となった。有利子負債の内訳は、大手銀行34.5%(前期末37.4%)、地方銀行36.4%(同35.8%)、信用金庫29.0%(同26.8%)。また、24/2期期末の自己資本比率は30.3%と前期末比で2.9ポイント低下した。
尚、販売用不動産96億10百万円の内訳は、分譲マンション6億59百万円、戸建て住宅2億81百万円、収益物件を中心とするその他86億71百万円。仕掛販売用不動産442億83百万円の内訳は、分譲マンション407億95百万円、戸建て住宅15億11百万円、収益物件を中心とするその他19億76百万円。

 

キャッシュ・フロー(CF)

23/2期

24/2期

前期比

営業キャッシュ・フロー(A)

2,153

-1,176

-3,330

-

投資キャッシュ・フロー(B)

-1,066

-458

+607

-

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

1,087

-1,635

-2,722

-

財務キャッシュ・フロー

-6,636

7,466

+14,102

-

現金及び現金同等物当期末残高

9,139

14,970

+5,830

+63.8%

* 単位:百万円

 

 

* 株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

前受金が増加したものの棚卸資産が増加したことなどにより営業CFがマイナスに転じた。また、有形固定資産の取得による支出が減少したことなどにより投資CFのマイナスが縮小したものの、フリーCFはマイナスに転じた。一方、長期借入金が増加したことなどにより財務CFがプラスに転じた。以上により、期末のキャッシュポジションは前期比で63.8%増加した。

 

4.2024年2月期業績予想

(1)非連結業績予想

 

24/2期 実績

構成比

25/2期 予想

構成比

前期比

売上高

38,825

100.0%

39,000

100.0%

+0.4%

営業利益

4,528

11.7%

4,700

12.1%

+3.8%

経常利益

3,820

9.8%

3,800

9.7%

-0.5%

当期純利益

2,638

6.8%

2,700

6.9%

+2.3%

* 単位:百万円

 

前期比0.4%の増収、同3.8%の営業増益予想
売上高は前期比0.4%増の390億円を計画。国内外の経済は、世界的な原材料価格の高騰や内外金利格差などで依然として不透明な状況が継続している中、主力事業の分譲マンション販売事業では、2025年2月期に竣工予定のうち戸数ベースで8割強の販売契約を有しており、安定的な業績推移が見込まれる。分譲マンション販売事業は、引渡戸数が減少も販売単価の上昇により売上高は前期並みとなる見込みである。戸建て住宅販売事業とその他不動産販売事業は、売上高が前期比で増加する見込みである。戸建て住宅販売では前期を上回る54戸の引渡が予定され、その他不動産販売事業は販売用収益物件の好調な売却を見込む。一方、不動産賃貸事業は、販売用収益物件の売却等の要因を踏まえ、前期比で減収を予想している。
営業利益は前期比3.8%増の47億円の計画。売上高は横ばいも分譲マンションを中心に竣工予定物件の中に好採算のプロジェクトが含まれていることから高利益率を維持し、営業利益は若干の増益を見込む。売上高営業利益率は、前期比0.4ポイント上昇の12.1%の予定。
また、年間配当は1株当たり年65円で、前期と比べ1株当たり5円の増配(記念配当2円を除くと7円の増配)を予定。予想配当性向は26.7%となる見込みである。

 

 

(2)セグメント別見通し

 

24/2期 実績

構成比

25/2期 予想

構成比

前期比

分譲マンション販売

29,927

77.1%

29,700

76.2%

-0.8%

戸建て住宅販売

2,017

5.2%

2,200

5.6%

+9.1%

その他不動産販売

3,657

9.4%

4,000

10.3%

+9.4%

不動産賃貸収入

3,185

8.2%

3,100

7.9%

-2.7%

その他

38

0.1%

0

0.0%

-

売上高

38,825

100.0%

39,000

100.0%

+0.4%

* 単位:百万円

 

◎分譲マンション販売
売上高は前期比0.8%減の297億円の計画。引渡戸数は減少するものの、戸当たり平均価格が前期比で上昇することにより、売上高は前期並みとなる見込みである。25/2期に竣工予定のうち戸数ベースで83.8%の販売契約を有していることもあり、計画の達成確度は高い。引渡戸数は、前期比8.2%減の630戸を計画している。また、発売戸数は、前期比39.5%増の660戸を計画しており、契約戸数は同7.9%増の630戸を計画している。仕入戸数は前期比26.2%減の630戸を計画。仕入れスタンスについては、市況などを勘案しつつ、引き続き採算性を重視した仕入を徹底していく方針を示している。
エリア拡大については、これまで同社地盤の神戸市、阪神間から西は明石市、姫路市、東は大阪府の北摂地域や大阪市内へ着実に展開地域を拡大してきた。この結果、明石市~姫路市で7棟391戸、大阪府で6棟209戸の未発売プロジェクトを有している。また、同社として初エリアとなる大阪府堺市において「ワコーレ北花田レジデンス(総戸数54戸)」を23年8月より発売開始。契約も順調に積み上がっており引渡しまで1年を残す中、6割超の契約を取得している。分譲マンションの展開地域は着実に広がっており、本プロジェクト以外にも大阪府堺市において団地再開発のプロジェクト案件も含めて2棟のプロジェクトも進めている。更に初進出エリアとなるJR加古川駅前でも総戸数60戸台のマンション用地を取得している。

 

【分譲マンション販売事業のKPI】

 

24/2期 実績

前期比

25/2期 予想

前期比

引渡戸数(戸)

686

+0.7%

630

-8.2%

戸当たり平均価格(百万円)

44

-11

47

+3

 

発売戸数(戸)

473

-29.6%

660

+39.5%

契約戸数(戸)

584

-9.3%

630

+7.9%

仕入戸数(戸)

854

-11.4%

630

-26.2%

 

◎戸建て住宅販売
売上高は前期比9.1%増の22億円の計画。引渡戸数54戸(前期48戸)。引き続き仕入用地の厳選に努める。ワコーレノイエ須磨妙法寺クラステラスは今年2月に供給を開始したところ全8区画が既に完売となった。

 

◎その他不動産販売
売上高は前期比9.4%増の40億円の計画。25/2期は、木造収益物件と鉄骨収益物件を合わせ15プロジェクト237戸の販売を計画している。販売面については、相続対策や資産運用のニーズを有する富裕層など高属性の顧客を対象としており、引き合いも強く賃貸収入の底上げも含めて収益向上に寄与する事業セグメントに成長している。今後も同社が強みとする地元の不動産流通業者とのネットワークを活用し実績を積み上げる方針である。

 

【開発中のプロジェクトと25/2期販売予定】

 

開発中のプロジェクト数

戸数

25/2期販売予定

戸数

木造収益物件

8棟

87戸

1棟

3戸

鉄骨収益物件

58棟

823戸

14棟

234戸

RC収益物件

2棟

94戸

-

-

合計

68棟

1,004戸

15棟

237戸

 

◎不動産賃貸収入
売上高は前期比2.7%減の31億円の計画。不動産賃貸事業は、高稼働率維持により安定収益を確保しているものの、販売用収益物件の売却等の要因を踏まえ、前期比で減収を予想している。95%超の稼働率維持による安定収益の確保を目指しつつ、新たに進めている空室のマンスリー契約や駐車場やトランクルームの賃貸付けも推進していく。

 

5.今後の注目点

同社の24/2期決算は、前期比9.1%の減収ながら、同3.2%の営業増益となった。売上面では、本業の分譲マンション販売において引渡戸数が前期並みとなったものの、戸当たり販売価格が低下したことが影響した。前期に高価格のマンションの分譲があり、戸当たり販売価格が大幅に上昇していた反動であり、また1棟を翌期に持ち越したこともあり、売上高の減少は致し方ないことと言えよう。こうした一方で、売上高総利益率が前期比で2.3ポイント上昇したことは驚きであった。これは、分譲マンションを中心に引渡物件の中に好採算のプロジェクトが含まれていたことが寄与したものである。また、前期に大規模修繕を前倒しで実施した反動により、不動産賃貸収入が大幅な増益となったことも寄与した。25/2期においても、前期同様に分譲マンションを中心に竣工予定物件の中に好採算のプロジェクトが含まれており、高い営業利益率が維持できる見込みである。建築コストや用地仕入コストなどの上昇が継続する中で、高利益率のマンション販売が維持できている点はマネジメントの素晴らしさであり、企業努力の成果と言えよう。一方で、分譲マンションを中心に好調な販売が続いているものの、建築コストや用地仕入コストなどの上昇も継続している。同社では、今後も建築コストや仕入れコストなどの上昇を販売価格へ転嫁する方針である。販売価格の上昇に加えて、金利上昇など外部環境の悪化を乗り越え、今後も好調な販売を継続することができるのか、また、高い収益性を維持・向上することができるのか注目される。
加えて、同社は中期経営計画の達成に向けて、新たな取組みを強化している。分譲マンション事業では新たに大阪府堺市での供給を開始した他、同社初となる兵庫県加古川市でも用地仕入を行った。戸建て事業では2009年から開始した「ワコーレノイエ」が累計供給戸数700戸を突破し、購入者の安心に繋がるアフターサポートの充実を目指し、リフォーム事業を開始した。その他、金融機関店舗の跡地での共同事業、蓄電池事業への投資、老人ホームの開発など、新規事業への取組みを加速させている。これら新規事業の取組みが今後どの様な成果をもたらすのか注目したい。

 

<参考:ESG活動>

同社はESG活動として、居住者の、安全、健康に配慮した住宅づくりに取り組むと共に、自然災害時の住宅補償や青少年育成支援を通した社会貢献にも力を入れている。また、ガバナンスの面では、健全かつ透明性が高く効率の良い経営体制の確立を最重要課題と考え、ガバナンス体制の整備と充実に取り組んでいる。

 

環境

ZEHマンションへの取組み

同社は企業理念「共生(ともいき)」のもと、2050年のカーボンニュートラルの達成に向けて、ZEHマンションの導入に積極的に取組んでいる。ZEHM Orientedでは建物の外皮断熱性能の向上と、高効率の省エネ設備等の導入により、住棟全体で年間の一次エネルギー消費

量を20%以上削減することを目指す。

ZEH-M Readyの評価を

取得したマンションを発売

同社では初となるZEH-M Readyの評価を取得したマンションを発売した。住まいの断熱性・省エネ性能を上げ、太陽光発電等でエネルギーを創出することにより消費エネルギー量の収支をゼロに近づけつつ、夏は涼しく冬は暖かく過ごすことが可能となる。今後も環境に配慮したマンションづくりに取組む。

Urban Innovation KOBE +P に協賛

神戸のまちをより美しく保つ「スマートごみ容器」の設置を開始

神戸市の最先端のテクノロジーを用いた実証実験で社会・行政課題の解決を目指す新事業「Urban Innovation KOBE +P」に協賛し、2022年10月より神戸市中央区の3か所にスマートごみ容器「SmaGO(スマゴ)」を設置している。

スマゴは、環境にやさしいソーラー発電で動くIoT機能付のスマートごみ容器で、投入されたごみを自動的に約1/5に圧縮する機能により、これまで1日2回行っていたごみ回収を1日1回に削減し、ごみ収集作業の効率化を図る。また本体には神戸らしいデザインを掲載し、

ごみ容器の認知度を高め、ぽい捨ての削減も図る。

 

 

社会

兵庫県が実施する住宅

再建共済制度「フェニックス共済」へ加入

兵庫県では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、自然災害で被害を受け、再建、補修等を行う際に給付金を支払う住宅再建共済制度「フェニックス共済」を平成17年9月から全国に先駆けて実施している。同社は、県下で販売する分譲マンション全てにフェニックス共済を採用し、引渡の年度末まで及び翌年度1年間は同社負担で当該制度に加入している。

令和6年能登半島地震災害義援金

同社は令和6年能登半島地震で被災された方々の救援や、被災地の復旧に役立てていただくための災害義援金として、金1,000万円を公益財団法人神戸新聞厚生事業団に寄付した。

保有する賃貸マンションにて、非常食セットの設置を開始

同社は保有する賃貸マンション1戸ごとへ「水で戻せるフリーズドライご飯」を含めた非常食セットの設置を2024年3月より順次開始した。1995年の阪神淡路大震災を経験した企業として、社内でも防災の意識を高く保つよう努めている。かねてより、主力事業である分譲マンション事業においては、水やはしご、簡易トイレなどを備えた防災備蓄倉庫を設置しているが、賃貸マンションに住まわれる方一人ひとりにも寄り添った災害対策で手助けしたいという想いから、保有する賃貸マンション(約1,800戸)にて、非常食セットを順次設置している。

「こどもの居場所応援自動販売機」の設置

同社はダイドードリンコ株式会社と協力し、経済状況や社会情勢の変化に伴うこどもたちの孤独や孤立を防ぐための支援となるよう、賃貸マンション「ワコーレアルテ中山手」に「こどもの居場所応援自動販売機」を設置した。本自動販売機は売上金の一部を「こども食堂」等を支援する神戸市社会福祉協議会に寄付し、こどもの居場所づくり事業推進のための活動費に充てられている。

「春高・春中ゴルフ」への

特別協賛

同社は全国高等学校・中学校ゴルフ選手権春季大会(春高・春中ゴルフ)への特別協賛を開始した。同大会はジュニアゴルファーの「聖地化」を目指す兵庫県三木市で開催されており、地元兵庫県の活性化とスポーツ振興及び応援を目的として特別協賛することとなった。今年度は2024年3月20日から3日間にわたって開催され、素晴らしいプレーが繰り広げられた。

青少年育成支援への取組み

少子高齢社会が進行する中、子供達が健全な社会生活を過ごせるよう、様々な育成支援を行っている。

◎中学生の社会科見学を実施

2024年2月5日にワコーレトアロードマンションサロンにて神戸市立西神中学校2年生の社会科見学を実施した。モデルルーム等を見学いただき、同社の事業や地元神戸の街づくりへの想いを学んでいただいた。

◎ヴィッセル神戸サッカースクールパートナー

こどもたちへのサッカー普及活動支援のため、ヴィッセル神戸が運営する「サッカースクール」へ協賛している。

◎神戸新聞社子育て支援プロジェクト「すきっぷ」

毎月12日「育児の日」に、神戸新聞社が主催する親子参加型の地域イベント「すきっぷサロン」に協賛している。

古民家再生プロジェクト

同社は分譲マンションを中心に新築の住宅開発を主業としている一方で、既存建物の再利用の重要性も認識している。地域密着企業として、保存すべきものを守りながら街の活性化を図るべく、2020年より古民家再生プロジェクトを開始。「ラドーレ」をブランド名に、今後も空き家問題及び人口流出を防ぐ一助になるよう尽力していく。

◎第1弾 「ラドーレ神河」 |サイクルカフェ併設の宿泊施設築50年以上の自転車販売店兼住宅を、一棟貸しのゲストハウス「ラドーレ神河」へと再生。2020年11月にオープンした。建物南側1階部分はカフェになっており、地元の顧客の利用が可能となっている。また2023年には中庭部分にサウナを設置しており、楽しみ方がさらに

広がった。

◎第2弾 「ラドーレ垂水ハーバービューレジデンス」

同社が保有していた築90年を超える賃貸戸建て住宅をフルリノベーション。昔ながらの丸いドアノブや、昭和型板ガラスと呼ばれる窓ガラスといった趣を残しながら、耐久性の向上やプライバシー面に配慮し、現代の暮らし方に寄り添った施工を行った。

企業版ふるさと納税

神河町より感謝状の贈呈

同社の「ラドーレ神河」が在る兵庫県神崎郡神河町に、企業版ふるさと納税制度を利用し1,000万円の寄附を行った。寄附金は、令和5、6年度に整備を予定している、(仮称)粟賀小学校跡地公園・図書コミュニティ施設整備事業の公園遊具整備に活用される。同社はこの整備事業に賛同し、「子育て環境の充実や新たな人の流れの創出など魅力あるまちづくりの一助

になれば」と考え、今回の寄附を実施した。これに伴い、神河町長の山名宗悟氏より感謝状が贈呈された。

 

ガバナンス・人的資本

役員退職慰労金制度の廃止、株式報酬制度の導入

同社は2024年4月12日開催の取締役会において、役員報酬制度の見直しを行い、役員退職慰労金制度を廃止すること及び同社の取締役(監査等委員である取締役及び社外取締役を除く)に対して信託を用いた株式報酬制度を導入することを決議し、同議案を2024年5月29日開催予定の第58回定時株主総会に付議する。本制度により取締役が株価変動による利益・リスクを株主の皆様と共有し、業績の向上と企業価値の増大に貢献する意識をより高めていく。

初の女性取締役が就任

社外取締役5名、構成比率は4割超となった。

同社はコーポレート・ガバナンスの強化及び企業価値の向上を図るため、2019年5月より監

査等委員会設置会社に移行している。また2023年5月より同社初の女性取締役1名が、監査等委員である社外取締役として選任されている。

社外取締役の選任理由

 

(同社2024/2期決算説明資料より)

働きやすい職場環境づくり

同社は従業員が働きやすい職場環境づくりのため、有休休暇、時間単位休暇をはじめとした各種福利厚生制度の充実に努めている。また、女性の就業環境改善のため産前産後休暇・育児休暇や時短勤務制度を制定している。さらに、従業員の健康維持のため、産業医を交えた衛生委員会を毎月開催すると共に、健康診断やメンタルヘルスチェックを実施しており、健康状態の把握に努めている。

 

正社員              男性63.9%、女性36.1%

入社から3年以内の定着率       88.2%

産休・育児休暇取得率        100.0%

産休・育児休暇後復帰率       100.0%

平均雇用年数の男女差         5ヶ月

入社5年以内の社員に占める女性比率   31.4%

(2024年2月末時点)

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

12名、うち社外5名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2023年5月29日)
基本的な考え方
当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方は、健全かつ透明性が高く効率の良い経営体制の確立を最重要課題と考え、その充実に取組んでおります。また、当社は小規模な組織でありますが、相互牽制や独立性にも配慮したシンプルで効率的な組織体系を構築しており、意思決定の迅速化と透明性の高い経営の実現を一層強固なものとするため、以下の5項目を重点にガバナンス体制の整備に努めております。

 

1.取締役会における実質的な議論に基づく監督機能の発揮
2.常務会による経営の意思決定のための重要事項の適時適切な審議
3.監査等委員会による実効性の高い監査の実施
4.内部監査室の設置、内部統制委員会の開催等による内部管理体制の整備
5.コンプライアンス体制の実現に向けた法律事務所等の外部機関との連携

 

<実施しない主な原則とその理由>
【原則4-2. 取締役会の役割・責務(2)】
当社の事業活動の根幹は不動産に対する投資と投資した不動産の再有効活用を目指した出口戦略であり、当社の経営耐力を踏まえた適切なリスクテイクを進めていくことが業績向上のキーポイントになっております。かかる認識のもと取締役会等においては当社を取り巻く環境の正確な理解に基づき、迅速かつ適切な意思決定を進めております。なお、経営陣の業務運営にかかる評価に対する報酬に関して、数値目標だけでは判断が困難であると認識していることから特別のインセンティブは設けておりませんが、今後の課題として検討を進めてまいります。
【補充原則4-8②】
独立社外取締役と経営陣の連携につきましては取締役会の事務局である総務部や常勤監査等委員である取締役を中心に連絡、調整を進めておりますが、今後、「筆頭独立社外取締役」のあり方や役割・機能の検討も行いつつ、より一層体制整備に努めてまいります。

 

【補充原則4-10①】
当社は企業価値の向上を図る観点からガバナンスの強化は不可欠であるとの認識のもと、監査等委員会設置会社に移行、独立社外取締役を5名(うち3名は監査等委員)とするなど、体制整備を進めてきております。今後の課題として、さらなるガバナンス強化に繋がり得る対応の一環として、指名委員会・報酬委員会などの導入も選択肢のひとつとして検討してまいります。

 

<開示している主な原則>
【補充原則2-4①】
当社では、外国人や中途採用者の管理職比率については特に定めておりません。これは、当社が持続的に成長するためには、外国人、中途採用者などの従来の発想にとらわれない視点や知見を重視しており、国籍、職歴に関係なく、個人の能力や実績を重視した人物本位の登用を実施しているためであります。なお、2023年4月時点での女性課長職は2名で、2024年3月末日までに女性で課長職以上の役職者を2名以上登用するという目標を達成しております。また、女性が永年働けるように産休制度の充実にも努めており、出産後の復帰率は100%となっております。さらに人材戦略を推進するため、新たに総務人事課の設置を行っております。

 

【原則3-1. 情報開示の充実】
(ⅰ)当社は企業理念及び中期経営計画を策定しております。詳細は当社ホームページをご参照ください。
企業理念:https://www.wadakohsan.co.jp/company/philosophy
中期経営計画:https://www.wadakohsan.co.jp/investors/library/fdisclosure
(ⅱ)コーポレートガバナンスの考え方につきましては有価証券報告書や上記「1.基本的な考え方」に記載しております。
(ⅲ)報酬決定に関しましては総額については株主総会で、各取締役の報酬は担当職務、役割等に応じて取締役会において
決定しております。
(ⅳ)取締役を含む経営幹部の選解任につきましては、各取締役の成果等に応じて取締役会にて株主総会への上程議案を
定めて株主総会の決議により決定しております。
(ⅴ)取締役の選任理由等につきましては、事業報告書に記載することで開示しております。

 

【補充原則3-1③】
<サステナビリティへの取組>
当社は自然災害への対応や、環境にも配慮した断熱性能が高く、エネルギー消費の抑制に繋がりうる良質な住まいを提供するといった事業活動を通じて、サステナビリティへの取組を進めています。また、持続可能な社会の実現に向けた環境保全活動、CSR活動等も実施しております。詳細は当社ホームページをご参照ください。

 

【原則5-1. 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は経営企画部をIR担当部署として年2回神戸と東京で決算説明会を開催するとともに、個人投資家向けの説明会を大阪で開催し、株主等との積極的なコミュニケーションを図っております。また出席できない方のために説明会の動画もHP上で公開しております。加えて株主等からの当社の理解を促進させるためWebサイトの充実にも努めております。

 

【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】
当社は資本コストを上回るリターンの持続的創出を目指しており、取締役会で現状を分析・評価しております。また、資本収益性に関する具体的目標につきましては中期経営計画にて開示しております。詳細は当社ホームページをご参照ください。
中期経営計画:https://www.wadakohsan.co.jp/investors/library/fdisclosure

 

本レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資活動を勧誘又は誘引を意図するものではなく、投資等についてのいかなる助言をも提供するものではありません。また、本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、当社は、本レポートに掲載されている情報又は見解の正確性、完全性又は妥当性について保証するものではなく、また、本レポート及び本レポートから得た情報を利用したことにより発生するいかなる費用又は損害等の一切についても責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は、当社に帰属します。なお、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申し上げます。

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