ブリッジレポート
(4493) 株式会社サイバーセキュリティクラウド

グロース

ブリッジレポート:(4493)サイバーセキュリティクラウド 2023年12月期決算

ブリッジレポートPDF

 

小池 敏弘 社長 兼 CEO

株式会社サイバーセキュリティクラウド(4493)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

情報・通信

代表者

小池 敏弘

所在地

東京都品川区上大崎3-1-1 JR東急目黒ビル13階

決算月

12月

HP

https://www.cscloud.co.jp

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,777円

9,450,644株

26,244百万円

23.8%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00

-

47.72円

58.2倍

190.13円

14.6倍

*株価は3/19終値。各数値は2023年12月期決算短信および同社リリースより。EPSはレンジ予想の下限。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2020年12月

1,194

188

172

134

14.60

0.00

2021年12月

1,817

297

297

169

18.17

0.00

2022年12月

2,275

385

395

306

32.61

0.00

2023年12月

3,060

549

559

427

45.28

0.00

2024年12月(予)

3,800~4,000

650~750

650~750

450~520

47.72~55.06

0.00

*予想は会社予想。単位:百万円、円。2020年12月期〜2021年12月期は連結決算、2022年12月期は非連結決算。2023年12月期から連結決算。
*株式分割 2020年7月 1:4(EPSは遡及修正後)。

 

 

(株)サイバーセキュリティクラウドの2023年12月期決算概要などをご報告します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年12月期決算概要
3.2024年12月期業績予想
4.2025年に向けた成長戦略
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 23/12期連結は、22/12期単体との比較で、前期比34.5%増収、同42.5%営業増益となった。3Q時点で修正された会社計画(売上高3,025百万円、営業利益520百万円)を過達しての着地となった。各プロダクトの売上が堅調に推移。通期でのストック収益割合は96%(前期実績95%)。売上高営業利益率が前期比1.0ポイント上昇の18.0%となった。24/12期以降の成長戦略を見据え、4QにマーケティングコストやR&D投資の積み増しを行ったが、それを吸収したうえで収益性を向上させた。同社は常々増収増益を維持したうえで将来に向けた投資を積極的に行っていくとの考えを示しているが、有言実行での実績となっている。

     

  • 24/12期の売上高は前期比24.2~30.7%増の3,800~4,000百万円、営業利益は同18.2~36.4%増の650~750百万円の予想。25/12期財務目標(売上高50億円、営業利益10億円)を見据え、増収増益は維持しつつも、各プロダクトの成長を25/12期以降に加速させるための機動的な投資を行っていく計画になっている。

     

  • 国内において既存プロダクトをしっかりと成長させつつ、新プロダクトによる横展開が着実に実行されている。加えて、AWS Marketplaceを通じたグローバル展開にも注力するなど、非連続成長の実現可能性が高まっているとの印象を受けている。23/12期4Qにはグローバルにおける大型のマーケティング投資を行ったことが、今期以降のリード獲得、顧客基盤の構築に繋がっていくことに期待したい。同分野においては、AWS日本法人のセキュリティ事業統括を担っていた桐山隼人氏が同社にCSO兼CISOとして就任しており、そのマネジメント能力にも着目していくべきだろう。

     

  • 同社は24/12期を25/12期財務目標を確実に達成するための投資期として考えている。今期の重要施策がしっかりと実現していけば、25/12期目標の達成に留まらず、その先の成長持続を期待できるようにもなっていくだろう。その意味で24/12期は非常に重要な期となる。

     

  • 同社は、通期決算発表当日にサマライズした決算コメントを社長メッセージとして発信するなど、IRに対するスタンスも常にバージョンアップしている。このような地道な動きが、株価を適正なバリュエーションへ導いていくことにも繋がっていく。今後も能動的な発信に期待したい。

     

1.会社概要

経営理念である「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」のもと、ハッカーによるWebサイトへのサイバー攻撃を防ぐWebセキュリティ事業を手掛けている。具体的には、Webアプリケーションに対するハッカーからのサイバー攻撃を検知・遮断・可視化するクラウド型セキュリティサービス「攻撃遮断くん」、パブリッククラウドサービス(Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud)の提供するWAF(Web Application Firewall)のルール自動運用サービス「WafCharm」、セキュリティ専門のベンダーが独自に作成するAWS WAFのセキュリティルールセット「AWS WAF Managed Rules」、脆弱性管理基盤の管理ツール「SIDfm」、などを提供している。23年12月期からは、クラウド環境のセキュリティを包括的に管理・運用する「CloudFastener」の提供を開始している。

 

1-1 同社が提供するサービスラインアップ

(同社資料より)

 

◎クラウド型WAF「攻撃遮断くん」
「攻撃遮断くん」は、Webアプリケーションに対するサイバー攻撃を検知・遮断・可視化する、クラウド型のセキュリティサービス。製品の開発から、運用・販売・サポートまで、同社が一貫して手掛けることで、Webサイトへの多種・大量のサイバー攻撃のデータと運用ノウハウを蓄積できていることが強み(2万サイト以上から得たデータ)。それらを「攻撃遮断くん」の開発・カスタマイズやシグネチャ(攻撃の特徴的なパターン)の更新に反映させることでWebサイトをセキュアな環境に保つことを実現している。また「攻撃遮断くん」は、リアルタイムでサイバー攻撃を可視化し、攻撃元IPや攻撃種別(どこの国から、どのような攻撃がなされているか)等を管理画面で把握することができる。目には見えないサイバー攻撃を可視化することで、より適切な状況把握と情報共有が可能になる。
「攻撃遮断くん」はAIの活用が進んでいることも特徴的。具体的には、AIを活用することで従来のシグネチャでは発見することができなかった攻撃や、顧客のサービスに影響がある誤検知を発見できるようになっている。同社は一般的な攻撃情報だけでなく、ユーザーの正規のアクセスや攻撃として誤検知されたアクセスをニューラルネットワーク(AIの機械学習のための技術・ネットワーク)に学習させ、日々のアクセスデータや検知データをAIで評価することでシグネチャ精度を日々向上させている。

 

◎AWSなどプラットフォームのWAFルール自動運用サービス「WafCharm」
2017年12月に提供を開始した「WafCharm」は、「攻撃遮断くん」で蓄積したWebアプリケーションに対する攻撃パターンをAIに学習させることで、世界のクラウド市場で最大のシェアを持つAWS(Amazon Web Services)に搭載されたAWS WAFの自動運用を可能にした。導入と運用の手軽さだけでなく、AWSとの連携によるAWS WAFの新機能リリースに対応した迅速な新機能の開発も評価されている。
AWS WAFを導入することでWebアプリケーションのセキュリティを高めることができるが、サイト運営者が自らルールを設定して運用する必要があり、使いこなすためには多くの知識と時間が必要となる。しかし「WafCharm」を利用することで、AWS WAFの持つ複数のルールから、AIがWebサイトに最適なルールを設定し、運用してくれる。加えて、新たな脆弱性への対応も自動でアップデートされるため、常にセキュアな状態でWebサイトの運用が可能になっている。また、ルール毎の検知数・攻撃種別・攻撃元国・攻撃元IPアドレスをまとめたレポート機能や、検知した内容をリアルタイムでメール通知するメール通知機能も用意されている。
2020年11月からはMicrosoftのプラットフォーム「Azure」への適用も開始。また、2021年11月よりGoogleのプラットフォーム「Google Cloud」への適用を開始し、世界3大プラットフォームに対応している。更に、2022年11月より「WafCharm for AWS Marketplace」をリリースし、世界200ヵ国以上での販売を開始した。23年12月末のユーザー数は1,230ユーザー。

 

◎AWS WAFのManaged Rules
AWS WAFでは、Managed Rulesというセキュリティ専門のベンダーが独自に作成する厳選されたセキュリティルールが用意されており、特定の脅威を軽減させるために必要なセキュリティルールがパッケージになっている。セキュリティの対象が特定の脅威に限定されるものの、導入・運用は容易に行うことができる。「WafCharm」で培ったAWS WAFにおけるルール設定ノウハウをもとにパッケージ化したサービスであり、AWS WAFのユーザーは、AWS Marketplaceから簡単にManaged Rulesを利用することができる。
世界で7社目となるAWS WAFマネージドルールセラーに認定された同社の米国子会社が2019年2月末にAWS MarketplaceでManaged Rulesの提供を開始した。

 

◎脆弱性情報提供サービス「SIDfm」事業と、Webセキュリティ診断
2020年12月に完全子会社化した株式会社ソフテック(2022年4月に吸収合併)が開発したサービス。「SIDfm」はサービスを開始して以来、20年以上に亘り数多くの顧客の脆弱性管理基盤の情報ベースとして活用されており、ソフテックの脆弱性専門アナリストが、日々現れる脆弱性の内容を調査してコンテンツを作成し、様々な手段を用いて顧客に情報を送り届けている。
また、顧客が判断に悩む脆弱性の影響調査においても「SIDfm」コンテンツを見ることにより的確な判断を行うことができるだけでなく、脆弱性情報は個々のIT資産の脆弱性の状態を管理するためのマッチングにも利用されている。ソフテックでは脆弱性に係るコンテンツの作成から脆弱性の管理ツールの提供までの包括的なソリューションを提供している。

 

◎AWS環境フルマネージドセキュリティサービス「CloudFastener」
「CloudFastener」はAWSの各種セキュリティサービスを包括的に管理し運用するフルマネージドセキュリティサービス。AWSのクラウド資産の洗い出し、セキュリティリスクの可視化、OSおよびソフトウェアの脆弱性や設定ミス、クラウド環境の脅威を収集・分析し、24時間365日AWS環境を常時保護・モニタリングし、対処すべきリスクをトリアージし、セキュリティアラートの処理、対処サポートを行う。更には組織がAWSのセキュリティ対策をどの程度実現できているかを定量的に測るためのフレームワークである「AWSセキュリティ成熟度モデル(AWS Security Maturity Model)」への対応を容易にしている。

 

1-2 ビジネスモデル

収益構造は、ストック収益である月額課金額(MRR:Monthly Recurring Revenue)と、初期導入費用などのスポット費用で構成される。売上高の95%がストック収益になっている。また、Webアプリケーションの脆弱性の情報収集と脆弱性への迅速な対応、シグネチャの設定、カスタマイズ等による顧客価値向上を実現することで高い継続率を実現しており、解約率は約1%と低位にとどまる。

 

(同社資料より)

 

1-3 導入企業と販売ルート

セキュリティ強化に対するニーズは強いことから、業種・規模・業態を問わず導入が進んでいる。とくにセキュリティ要件が厳しい金融・官公庁への導入が進んだことが、高い信頼の獲得に繋がっている。
AWS WAF Managed Rulesについては、AWS Marketplaceを通じた利用が伸長しており、23年12月末利用ユーザー3,593ユーザーのうち、51%が海外ユーザーとなっている。

 

(同社資料より)

 

サービスの拡販については、ITインフラ事業やMSP(ITシステムの保守・運用・監視等を行うサービスベンダー)等の販売パートナーを通じ、幅広いユーザーへのプロダクト提供を行っている。強固な顧客基盤を持つ大手販売パートナー数も順調に拡大しているが、今後も販売網を拡大するための販売パートナー獲得に注力していく計画になっている。加えて、多くのAWSユーザーを抱えるパートナーとの連携も強化している。

 

(同社資料より)

 

1-4 比較優位性

同社はWebセキュリティ領域に特化し、国産かつ手厚いサポートにこだわることを強みに、これまで顧客を獲得してきた。初期段階から開発・運用・サポート全てを国内且つインハウスで行う体制を構築し、国内での認知度を引き上げてきたことが顧客の獲得に繋がった。国内では先行して事業展開した優位性に加え、クラウドの特性を生かしたデータの蓄積に取り組み、顧客からのフィードバックをプロダクト開発に還元することで、クロスセルを可能にしていった。

 

売上高の95%(23年12月期)をストック収益が占めているうえ、チャーンレートも攻撃遮断くん1.12%、Waf Charm0.93%と低位安定するなど、売上拡大の蓋然性が高いビジネスモデルが構築されている。加えて、既存プロダクトの安定成長にマルチプロダクト化による成長が加わることで、全体の売上成長速度を高めている。開発等に対する投資も積極的に行っているが、限界利益効用による売上高営業利益率の逓増も実現している。

 

直販と代理店活用のハイブリットで販売を行うことで、インバウンド・アウトバウンド双方のユーザーを囲い込むことに成功している。加えて、AWSのマーケットプレイスを活用した販売がグローバルでの成長も加速させている。

 

1-5 同社を取り巻く環境

企業のサーバー利用がオンプレミスからクラウドへのシフトが加速するなどインターネットへの依存度は高まり続けている。それに伴い、サイバー攻撃数は増加傾向にある。警察庁によれば、2022年の1日1IPアドレスあたりの攻撃検知件数は7,708件と、2018年から2.8倍に増加している。加えて、サイバー攻撃は複雑化・高度化しており、監視・防御の対象は広がる一方である。日本では2022年に個人情報の保護に関する法律等が一部改正され、個人情報流出時の報告義務化や法人に対する罰則が最大1億円に引き上げられただけでなく、経済産業省からも経営者や情報セキュリティ責任者に対するガイドラインが制定されており、より強固なセキュリティ対策が必須となってきている。
しかしながら、セキュリティ人材は慢性的に不足が続いている。そのため、セキュリティ人材が不足していても、サイバー攻撃を監視・防御する仕組みが必要になっている。
同社では、WAF、脆弱性管理、MSSに関する市場規模(2022年)が1,819億円と推計している。これが2028年には3,356億円(CAGR11%)まで拡大する見通しになっている。同社はこれまで海外プロダクトの多い国内セキュリティ市場で、日本企業としての強みを最大限生かして成長しており、今後もこの流れは継続していくことだろう。加えて、近年ではAWS Marketplaceを通じたグローバル展開も進んでいる。グローバルの市場規模(2022年)は6兆5,100億円(WAF8,100億円、脆弱性管理1兆9,000億円、MSS3兆8,000億円)と更に大きいことも覚えておくべきだろう。

 

2.2023年12月期決算概要

2-1 連結業績概要

 

22/12期単体

構成比

23/12期

連結

構成比

会社計画比

前期比

売上高

2,275

100.0%

3,060

100.0%

+1.2%

+34.5%

売上総利益

1,611

70.8%

2,135

69.8%

-

+32.5%

販管費

1,225

53.9%

1,585

51.8%

-

+29.4%

営業利益

385

17.0%

549

18.0%

+5.8%

+42.5%

経常利益

395

17.4%

559

18.3%

+4.7%

+41.5%

当期純利益

306

13.5%

427

14.0%

+15.2%

+39.4%

*単位:百万円
*22/12期は非連結決算、23/12期は連結決算(23年1月に米国法人を連結子会社化)。
*前期比は22/12期単体と23/12期連結を比較した数値を記載。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
費用項目の▲は費用の増加を示す。

 

3Q時点で修正した会社計画を過達
同社は、22年4月1日付で、完全子会社である(株)ソフテックを吸収合併(簡易合併・略式合併)したことに伴い、第2四半期以降非連結決算へ移行したが、23年1月には米国法人の連結子会社化に伴い連結決算へと移行している。そのため、本レポートでは22/12期単体と23/12期連結を比較して比較分析を行っている。

 

23/12期連結の売上高は前期比34.5%増の3,060百万円、営業利益は同42.5%増の549百万円となった。会社計画(売上高3,025百万円、営業利益520百万円)を過達しての着地となった。
各プロダクトの売上が堅調に推移。通期でのストック収益割合は96%(前期実績95%)。

(会社資料よりインベストメントブリッジ作成)

 

収益面では、売上高営業利益率が前期比1.0ポイント上昇の18.0%となった。24/12期以降の成長戦略を見据え、4QにAWS re:Invest2023への出展やCloudFastener開発に伴うR&D投資を行ったが、増収効果により収益性は向上した。23年12月末の従業員数は120名(前期末97名)。日本および米国でAWS出身の社員が入社するなど、組織力が着実に強化で来ていると同社は考えている。24年には初の新卒採用も入社してくる予定。

(会社資料よりインベストメントブリッジ作成)

 

2-2 主要指標の動向

(1)ARR
ARRは順調に積み上がり、23年12月のARRは3,285百万円(前年同月比30.9%増)に到達した。既存プロダクトの積み上げに加え、新規プロダクトのCloudFastenerも4Qから売上寄与してきた。

(会社資料よりインベストメントブリッジ作成)

 

(2)ユーザー数
ユーザー数は全プロダクトベースで前年同期末比13%増の6,302ユーザーとなった。WafCharmおよびManaged Rulesの伸長が全体を牽引した。

(会社資料よりインベストメントブリッジ作成)

 

(3)ARPU
Managed Rulesは4QのARPUが前年同期比62%増の11,341円に伸長した。ユーザー数の伸びだけでなく、ARPUもしっかりと上昇することで、二次元成長を実現させている。そのほかのプロダクトについても年度を通じて堅調に推移した。

(会社資料よりインベストメントブリッジ作成)

 

(4)解約率
4Qにおける攻撃遮断くんの解約率は1.12%、WafCharmの解約率は0.93%。ともにサイト閉鎖やアカウント統合などを理由にした解約が23/12期上期に増えていたが、徐々に落ち着きを取り戻している。引き続きカスタマーサクセスを強化し、顧客課題を把握することで解約率の低位安定に努める考え。

 

2-3 財政状態

◎主要BS

 

22/12末単体

23/12末連結

増減

 

22/12末

単体

23/12末

連結

増減

流動資産

1,621

2,146

+525

流動負債

663

866

+202

現預金

1,330

1,754

+424

短期有利子負債

95

92

-2

売上債権

210

279

+68

固定負債

184

91

-92

固定資産

536

634

+98

長期有利子負債

184

91

-92

有形固定資産

57

51

-5

負債

848

958

+110

無形固定資産

286

350

+63

純資産

1,309

1,822

+513

投資その他の資産

191

232

+40

利益剰余金

473

915

+441

資産合計

2,157

2,781

+623

負債・純資産合計

2,157

2,781

+623

*単位:百万円。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

◎キャッシュ・フロー(連結)

 

22/12期

23/12期

増減

営業CF

353

578

+224

投資CF

-114

-106

+8

フリーCF

239

472

+232

財務CF

40

-93

-133

現金同等物残高

1,330

1,754

+424

*単位:百万円。
*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

3.2024年12月期業績予想

3-1 連結業績

 

23/12期

構成比

24/12期(予)

構成比

前期比

売上高

3,060

100.0%

3,800~4,000

100.0~100.0%

+24.2~30.7%

営業利益

549

18.0%

650~750

17.1~18.8%

+18.2~36.4%

経常利益

559

18.3%

650~750

17.1~18.8%

+16.1~34.0%

当期純利益

427

14.0%

450~520

11.8~13.0%

+5.6~21.8%

*単位:百万円。

 

25/12期を見据えた会社計画を公表
各プロダクトの成長率および新プロダクトのグローバルでの成長を考慮し、レンジ方式での会社計画開示となった。24/12期の売上高は前期比24.2~30.7%増の3,800~4,000百万円、営業利益は同18.2~36.4%増の650~750百万円の予想。25/12期を見据え、増収増益は維持しつつも、各プロダクトの成長を加速させるための機動的な投資を行っていく期として24/12期を考えているとのことである。

 

4.2025年に向けた成長戦略

クラウド化、DX、5G、IoTの普及、浸透が加速するのに伴い、サイバーセキュリティ領域も急拡大することが見込まれ、同社にとっては極めて有利な事業環境が予想される。そうした追い風の下、同社は日本発のグローバルセキュリティメーカーとして世界中で信頼されるサービスを提供することを目指すスタンスに変わりはない。具体的には、2025年までに以下3点の実現を目標としている。
*導入社数10,000社を実現し「Webセキュリティ」分野における国内トップセキュリティ企業へ
*財務目標として、売上高50億円、営業利益10億円を目指す
*グローバル展開を加速させ、海外売上比率を10%に引き上げる

 

4-1 23/12期までの重点施策と24/12期のアップデート

(1)パートナー支援強化
23/12期までは、ユーザー数を加速度的に拡大させるため、直販組織に蓄積されたノウハウを活用し、パートナーサクセスに注力するなど、パートナーによる販売網の強化に取り組んだ。加えて、グローバル展開を見据え、Ordinary Expertsとインプリメンテーションパートナーシップを締結した。サイバーセキュリティ分野においてはアイスタイルと戦略的パートナーシップを締結した。
24/12期は、大手顧客への価値提供強化をキーワードに、高品質・多機能なプロダクトの提供、大手顧客とのアライアンス強化、自社セールス組織の改革に重点的に取り組んでいく考え。

 

(2)WafCharmのグローバル展開
従量課金型のリリースに加え、AWS Marketplaceの仕様に合致するようにアップデートを行った。GDPRに対応するなど、欧州圏での展開を見据えた動きもみられた。4QにはAWSパートナーパスにおいて最上位ステージに昇格したほか、AWS re:Invest2023への出展も行った。
24/12期はAWS経済圏でのグローバル展開を一層強化していく考え。AWS認定プログラムの取得、世界各国での展示会(含、オンライン)への参加、AWS Marketplaceでの販売を軸にしたマーケティング機能の強化、などに努めるとのこと。

 

(3)サービスラインアップの増強
23/12期は、新たなAWS関連プロダクトとして「CloudFastener」がリリースされた。そのほか、「SIDfm」クラウドタイプ、「SIDfm VM for MSP」もリリースされた。
24/12期には、「CloudFastener」の高品質化に加え、OSSでの「sasanka」ローンチを皮切りにAPI保護の領域でサービス展開を加速していく考え。WAF・脆弱性関連領域のラインナップ拡充も検討している。

 

4-2 財務目標

(1)売上高50億円の達成
攻撃遮断くんとWafCharmの合計導入社数10,000社を実現し、「Webセキュリティ」分野における国内トップセキュリティ企業に向けて、2025年売上高50億円を目指す方向性に変わりない。海外売上比率は10%超がターゲット。WafCharmに加え、Managed RulesおよびCloudFastenerがその職責を担うことになる。

 

*売上高の推移

 

2021年

2022年

2023年

2025年目標

CAGR (21-25)

攻撃遮断くん

10.8

12.5

14.5

20

+16.1%

WafCharm

3.9

6.1

8.8

20

+49.5%

その他

3.3

4.6

7.1

10

+35.1%

全社

18.1

23.4

30.6

50

+29.1%

*CAGRは同社資料を基にインベストメントブリッジが計算

 

(2)2025年の営業利益を10億円へ
各重点施策実行のために、利益成長を継続させつつ、先行投資を実行していく計画。新サービスを中心に国内外で認知を拡大していくために、積極的なマーケティングを行っていく予定。開発及び営業人員の採用も引き続き積極的に行っていく考え。

 

5.今後の注目点

国内において既存プロダクトをしっかりと成長させつつ、新プロダクトによる横展開が着実に実行されている。加えて、AWS Marketplaceを通じたグローバル展開にも注力するなど、非連続成長の実現可能性が高まっている印象を受けている。23/12期4Qにはグローバルにおける大型のマーケティング投資を行っており、今期以降のリード獲得、顧客基盤の構築の進捗に注目していきたい。同分野においては、AWS日本法人のセキュリティ事業統括を担っていた桐山隼人氏が同社にCSO兼CISO
として就任したことから、そのマネジメント能力にも着目していきたい。
同社は24/12期を25/12期財務目標を確実に達成するための投資期として考えている。今期の重要施策がしっかりと実現していけば、25/12期目標の達成に留まらず、その先の成長持続を期待できるようにもなっていくだろう。その意味で24/12期は非常に重要な期となる。
同社は、通期決算発表当日にサマライズした決算コメントを社長メッセージとして発信するなど、IRに対するスタンスも常にバージョンアップしている。このような地道な動きが、株価を適正なバリュエーションへ導いていくことにも繋がっていく。今後も能動的な発信に期待したい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2023年3月31日)
基本的な考え方
当企業グループは、「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」という経営理念のもと、グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、その実現を効果的、効率的に図ることができるガバナンス体制を構築します。また、コンプライアンスの重要性をコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方として、株主の権利を重視し、また、社会的信頼に応え、持続的成長と発展を遂げていくことが重要であるとの認識に立ち、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。

 

 

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