ブリッジレポート:(3538)ウイルプラスホールディングス 2024年6月期第2四半期決算
成瀬 隆章社長 | 株式会社ウイルプラスホールディングス(3538) |
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企業情報
市場 | 東証スタンダード市場 |
業種 | 小売業(商業) |
代表取締役社長 | 成瀬 隆章 |
所在地 | 東京都港区芝5-13-15 芝三田森ビル8階 |
決算月 | 6月 |
HP | https://www.willplus.co.jp/ |
株式情報
株価 | 発行済株式数(期末) | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
1,137円 | 10,327,580株 | 11,742百万円 | 14.0% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
43.51円 | 3.8% | 174.04円 | 6.5倍 | 1,005.48円 | 1.1倍 |
*株価は3/29終値。発行済株式数、DPS、EPSは24年6月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | DPS |
20年6月(実) | 35,068 | 1,160 | 1,196 | 802 | 85.32 | 14.00 |
21年6月(実) | 40,776 | 2,290 | 2,301 | 1,533 | 161.47 | 28.26 |
22年6月(実) | 39,696 | 2,366 | 2,377 | 1,550 | 162.84 | 34.90 |
23年6月(実) | 44,115 | 1,867 | 1,943 | 1,302 | 135.45 | 41.17 |
24年6月(予) | 48,821 | 2,312 | 2,303 | 1,692 | 174.04 | 43.51 |
*単位:百万円、円。予想は会社側予想。
株式会社ウイルプラスホールディングスの24年6月期第2四半期決算概要などをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.中長期戦略
3.成長戦略
4.2024年6月期第2四半期決算概要
5.2024年6月期業績予想
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- JEEP、BMW、MINI、VOLVOなど11ブランドを取り扱う輸入車正規ディーラー5社を連結子会社とする持株会社。「M&A」を通じて、「新規エリア」、「新規ブランド」の獲得を目指し、事業拡大に積極的に取り組む。同時に「事業の最大化」を進めながら、「店舗のグリーン化」を実施し、「GHG排出量削減の最大化」を追求し続けることをコミットする事で「気候変動問題解決」を「機会」と捉えている。
- 24年6月期第2四半期の売上高は前年同期比10.7%増の228億81百万円。新車販売、中古車販売、ストック型ビジネスとも増収。営業利益は同37.2%減の6億10百万円。増収ではあったが、新車販売においては新車価格上昇で消費者の姿勢は慎重となっている。また、新車供給の回復に伴うデモカーを中心とした減価償却費増、人員数増、人的資本経営推進費用による人件費増などでコスト増を吸収できなかった。四半期ベースでは、売上高は第1四半期、第2四半期ほぼ同水準ながらも、新車及び中古車の粗利率回復により、第2四半期の営業利益は前年同期比では27%の減益も、前期比(第1四半期比)では39%の増益となった。
- 業績予想に変更は無い。売上高は前期比10.7%増の488億21百万円、営業利益は同23.8%増の23億12百万円の予想。売上高は前期に続き過去最高を更新する見込み。新車販売については、価格高止まり、販売低調の状況に対し、ブランドメーカーも価格政策を検討するものとみられ、販売台数回復が期待される。ストック型ビジネスである車輌整備・保険代理店事業は、各顧客との繋がりをさらに強化し、より盤石な収益基盤構築を目指す。販管費については、業容の拡大に伴い人件費、販売関連費用、店舗維持関連費用等が増加すると見込んでいる。また、各社員がその能力を充分に発揮できるよう待遇面での改善やDXの推進による単純作業の軽減、リスキリングのための研修受講等の人的資本への投資を続けていく予定である。
- 上期実績の通期予想に対する進捗率は、売上高46.9%、営業利益26.4%。売上高はほぼ例年並みであるが、営業利益は大きく下回っている。下期の新車販売台数回復で、どこまで売上・利益を積み上げていくことができるかに注目したい。
- 加えて、新車販売価格高止まりにより国内輸入車市場は低調で、同社も影響を受けているが、同業他社、特に経営基盤の脆弱な中小ディーラーはより厳しい局面にある。この3年間止まっていたM&A戦略を大きく加速させることができるかに期待したい。
1.会社概要
JEEP、BMW、MINI、VOLVOなど11ブランドを取り扱う輸入車正規ディーラー5社を連結子会社とする持株会社。顧客満足度の向上に注力し、マルチブランド戦略、ドミナント戦略、M&A戦略による成長を追求している。M&Aにおける事業再生能力には大きなアドバンテージを有する。EV化の進展を始めとした自動車を取り巻く大きな環境変化を好機ととらえ、更なる成長を目指す。
【1-1沿革】
1997年1月、福岡県北九州市で代表取締役社長成瀬隆章氏の実父が輸入車販売会社「株式会社さんふらわあシージェイ」を設立。同社は西日本地区で最初のCHRYSLERの正規ディーラーであった。
2004年10月、成瀬社長が同社株式を全株取得し、ウイルプラスグループとしての事業活動を開始した。
成瀬社長はじめとしたスタッフ数名の小規模なディーラーながらCHRYSLER車の販売で全国的にも優秀な成績を上げ高い評価を受けたことで、2005年には東京都大田区にあったCHRYSLER直営店を譲受して東京へ進出。2006年には福岡県久留米市にも店舗を開設。東京、福岡でのドミナント戦略を開始した。
経営資源の最適配置や迅速な経営意思決定によってディーラー買収を機動的に実行することを目指し、2007年10月、株式会社ウイルプラスホールディングスを設立。
持株会社体制の下、積極的に業容を拡大し、2016年3月に東証JASDAQに上場し、2017年9月、東証2部への市場変更を経て、2018年2月、東証1部に指定となった。2022年4月、市場再編に伴い、東証プライム市場へ移行。23年10月、スタンダード市場に移行した。
【1-2 経営理念】
以下のような存在意義、コア・バリューを掲げている。
我々の存在意義(MISSION STATEMENT) 我々は輸入車のある生活を提案し、より多くの皆様と豊かさ・楽しさ・喜びを分かち合い、関わるすべての人々を温かい笑顔に変えていく挑戦を続ける。 |
コア・バリュー ・車を愛し、仲間を愛し、誇りを持って働く。 ・常に挑戦し、自らの限界を打ち破る。 ・チームプレーで大きな結果を出す。 ・必ず期限までに目標にたどり着く。 ・最後まで諦めない、できるまでやる。 ・豊かさ、楽しさ、喜びを提供する。 ・誠実さと感謝の気持ちを忘れない。 |
【1-3 同社を取り巻く市場環境】
同社を理解するうえで重要なポイントとなる事業環境は以下のとおりである。
同社の成長ドライバーであるM&A戦略に関する事業環境については「2.中長期戦略」を参照。
◎輸入車のシェアアップが続く国内乗用車市場、輸入車の国内保有台数は堅調な伸び
少子高齢化の進行、自動車の性能向上による保有期間の長期化、消費スタイルや嗜好の変化(=いわゆる若年層の「車離れ」)などにより国内新車登録台数は減少傾向にある。
(同社資料より)
そうした中、輸入車(外国メーカー)の新車登録台数は2020年以降、コロナ禍の影響で減少し、回復が遅れているものの、リーマンショック後、増加している。国内乗用車市場の回復に反して、輸入車市場の回復は鈍く、2023年の輸入車登録台数シェアは低下したが、長期的には、輸入車登録台数シェアは上昇傾向にある。
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(同社資料より)
輸入車メーカーは、環境課題への対応に積極的で、同社取り扱いブランドの過半数は、2030年を目途に完全電動化を目指す計画を発表している。
日本国内における乗用車に占めるEVシェアは1.6%にとどまるが、日本で販売されている普通乗用車のEVは、輸入車が国産車を上回っている。日本においてはEV=輸入車との認識が高まりつつある。
また、販売ネットワークの整備や拡充など日本における積極的な投資もシェアアップに繋がっている。
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(同社資料より)
◎同業他社比較
コード | 社名 | 売上高 | 増収率 | 営業利益 | 増益率 | 営業利益率 | ROE | 時価総額 | PER | PBR |
3184 | ICDAHLD | 31,000 | +1.7 | 1,383 | +0.8 | 4.5 | 11.2 | 5,943 | 6.5 | 0.7 |
3538 | ウイルプラスHLD | 48,821 | +10.7 | 2,312 | +23.8 | 4.7 | 14.0 | 10,379 | 5.8 | 1.0 |
7593 | VTHLD | 300,000 | +12.6 | 13,000 | +1.1 | 4.3 | 12.4 | 62,197 | 7.7 | 0.9 |
8291 | 日産東京販売HLD | 150,000 | +9.0 | 7,800 | +21.9 | 5.2 | 6.8 | 35,116 | 5.0 | 0.7 |
9856 | ケーユーHLD | 142,000 | -7.4 | 8,200 | -15.3 | 5.8 | 12.1 | 51,803 | 6.7 | 0.7 |
*単位:百万円、%、倍。売上高、営業利益は今期会社側予想。ROEは前期実績。時価総額は直近の四半期末株式数×2024年3月8日終値。PER(予)、PBR(実)は2024年3月8日終値ベース。
2桁の増収増益予想。M&Aにおける事業再生能力の高さや配当性向を30%まで引き上げ、利益成長を上回る配当成長を目指す積極的な株主還元方針についての市場の評価が進めばvaluationの水準も異なったものとなるであろう。
【1-4 事業内容】
◎概況
持株会社である(株)ウイルプラスホールディングスの下、連結子会社5社において輸入車の新車及び中古車の販売、車輌整備、損害保険の代理店業務などを展開している。取扱ブランド数は11ブランド。取扱うブランドごとにインポーター(日本国内で輸入車を取り扱う業者)と正規ディーラー契約を締結している。
(同社資料より)
◎品目(業務内容)
売上高の品目として、新車、中古車、業販、車輌整備、その他を開示している。
(同社資料より)
品目 | 内容 |
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新車 | 各社が正規ディーラーとして、各インポーターから仕入れたブランドの全ての新車を販売している。 | |
中古車 | 各ブランドの高年式低走行の認定中古車を中心に販売している。商品の仕入は、新車販売時の下取、買取、オートオークションにより行っている。 | |
業販 | 下取した他社ブランドの中古車をオートオークションで販売している。また、他社ディーラーからの依頼を受け、当社グループ内で保有している新車・中古車を販売することがある。 | |
車輌整備 | 販売した車輌を中心に整備、修理や車検を主なサービスとしている。一部店舗を除き、ショールームと併設する形でサービス工場を設置している。 | |
その他 | 損害保険会社の代理店として自賠責保険や任意保険等の販売を行っている。インポーターからの新車販売等に係るインセンティブ収入も含まれる。 |
新車販売が事業の柱ではあるが、中古車販売にも注力していることに加え、車輌整備、自動車保険販売など自動車購入後に顧客が必要とするサービスを提供して顧客との関係性を強化することを重視している。
車輌整備に関しては販売後、メンテナンスパッケージを提供することで整備入庫を確実に確保している。保険販売に関しては、保険商品についてのきめ細かい情報提供などが評価され業界平均を上回る加入率・高い継続率を実現している。
このように、「販売台数増=フロー型収益の拡大」が、「車輌整備件数増、保険加入件数増」というストック型収益の拡大に結び付いている。
◎店舗数
2023年12月末の店舗数は、福岡19店舗、東京・神奈川16店舗、山口2店舗、宮城1店舗、福島1店舗の計39店舗。
【1-5 特長・強み・競争優位性】
(1)M&Aにおける高い事業再生能力
「時間を買う」という観点から現在多くの企業が成長戦略の柱として掲げるM&A戦略であるが、M&Aを成功させるには、「優良な案件の発掘」、「適切な価格での実行」が重要であることは論を待たないが、より重要なのが想定した通りのシナジー効果を生み出すためのM&A後のプロセス「PMI(Post Merger Integration)」であると言われている。
M&Aを行っても、統合阻害要因等に対する事前検証の不足や企業文化の違いをマネジメントできず失敗に終わるケースは枚挙に暇がない。
そうした中、投資家が注目すべきは同社の「事業再生能力」であろう。
2007年10月のウイルプラスホールディングス設立以降、現在まで11件のM&Aを実施してきたが、全ての案件で黒字化を達成している。
(同社資料より)
「顧客満足度向上の追求」を始めとした理念の共有、「チャレンジを最大限に尊重する」といった評価軸の明確化がM&A成功の要諦で、これを実行すれば会社を確実に大きく変えることができると同社では考えており、自社の事業再生能力には大きな自信を持っている。
(2)輸入車の正規ディーラーをメインとする唯一の上場企業
輸入車の正規ディーラーであっても、中古車販売がメインである企業が多い中、同社は新車販売をメインとしている唯一の上場企業である。
国内乗用車市場(軽自動車を除く)における輸入車シェアは長期的には増加傾向にあると同社は考えており、M&A戦略によりシェアの拡大を進めることで、収益の一段の拡大を追求する考えだ。
(3)ストック型ビジネスによる安定収益構造
ストック型ビジネスと位置づけている車輌整備と保険販売による安定収益構造も同社の大きな特徴・強みである。
自動車の国内保有台数が大きく増加することは期待しづらいが、経済状況の変化・環境意識の高まりなどから自動車の平均使用年数は増加傾向にあり、必然的にメンテナンスの重要性が増している。
加えて「CASE」の進展により、整備作業は一段と複雑化し、輸入車の整備業務は正規ディーラーに集約されていくと予想されている。
こうしたことから、同社では車輌整備事業の収益機会は今後ますます拡大すると考えており、メンテナンスパッケージや新車延長保証を付加することで整備入庫率の向上を図り、同事業の基盤強化を図る。
また、毎期堅調に拡大している保険手数料収入に関しても、スタッフの保険に関する知識のブラッシュアップを継続して顧客満足度の更なる向上を目指しており、保険販売と車輌整備のストック型ビジネスの安定成長基盤の一段の強化に取り組んでいく。
(同社資料より)
2.中長期戦略
社会的課題解決に向けた企業の社会的な存在意義や企業価値向上への取り組みが強く問われている今日、同社では、基本となる成長戦略(マルチブランド戦略・ドミナント戦略・M&A戦略)をベースに、中長期戦略を実行中だ。
【2-1 ウイルプラスグループ方針】
「社会的価値向上」と「企業価値向上」の両立、すなわち、社会課題の解決と企業の成長の同時実現を目指す。
社会的価値向上に向け、「持続可能な社会実現への貢献」「社会的価値の創造」に取り組む。
具体的には、店舗のグリーン化、店舗エリアの脱炭素化を進め、社会に必要とされる企業を目指す。
企業価値向上に向けては、「持続的成長」「中期的な企業価値向上」を目指す。
具体的には、後述するように、M&Aを主軸とする成長戦略を推進し、売上・利益の最大化を目指すとともに、後継者問題の解決、資産(資源)の再利用(リユース)と収益性改善、人材(人的資本)の再教育と活性化など、中小企業の多い自動車販売業界における事業再生を通じた課題解決にも取り組む。
「気候変動問題解決」を「機会」と捉え、「M&A」を通じて、「新規エリア」、「新規ブランド」の獲得を目指し、事業拡大に積極的に取り組み、社会価値向上と企業価値向上を通じて「時価総額の最大化」を図る。
【2-2 目標】
サプライチェーンを含めた気候変動問題へのコミットメントが求められる中、ブランドメーカーは、正規ディーラーの店舗オペレーションにおけるGHG排出量の正確な把握と、削減目標の設定、そのための具体的な取り組み(デモカーのEV比率、再生可能エネルギー導入率、廃棄物のリサイクル率等)を求めてきている。
そうした中、気候変動問題解決のリーディングカンパニーを目指す同社は、以下のようなGHG排出削減目標を掲げている。
2030年度 Scope1+Scope2のGHG排出量を2022年度比較で、50%削減する(年率6.3%の削減)。
具体的には、「社用車(試乗車含む)の低炭素自動車比率 2030年度 80%以上」「再生可能エネルギー導入率目標 2025年度 全店舗導入」を掲げている。
【2-3 同社グループの取り組み】
「社会的価値向上」と「企業価値向上」の同時実現に向けた取り組みは以下のとおりである。
(1)社会的価値向上
①店舗グリーン化による脱炭素社会実現への貢献
同社では上記の削減目標設定に加え、店舗エリアにおけるEV普及促進に対応した設備投資などを実施し、輸入車ディーラーとして、いち早く店舗のグリーン化を推進、自動車産業の脱炭素化に貢献している。
これまでの実績は以下の通り。
(同社資料より)
低炭素自動車比率は、前期末比で、新車販売においては上昇したものの、自社社用車については、営業エリア拡大に伴い台数が増加する中、低下した。
EV充電設備については、急速充電器を前期末比2台増加した。7ブランドについて急速充電器を設置済である。
23年度末までに22店舗が再生可能エネルギーに切り替えた。今期は新たに加わった「ボルボ・カー福岡東」「ボルボ・カー大分」の2店舗を既に切り替えたため、現在39店舗中24店舗が切り替え済である。
15店舗が未切り替えではあるが、グリーン電力証書購入により、2023年度には100%再生可能エネルギーを前倒しで達成している。
(同社資料より)
②その他の取り組み・対応
◎2年連続でCDP「気候変動」質問書にてBスコアを取得
世界中の機関投資家・購買企業の要請を受けて、企業の環境情報開示を促進する国際団体CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)が実施している気候変動質問書に、2022年に継ぎ、2023年も回答した結果、2年連続でBスコアを取得した。
CDP質問書は、ESG情報の「E」に関するグローバルスタンダードとして、組織の環境開示をA~Fで評価するもので、2023年時点では世界の時価総額の3分の2を超える約23,000社が、CDPを通して環境情報の開示を実施しており、世界中の機関投資家・購買企業が、意思決定に活用している。日本ではプライム上場企業1,000社以上を含む約2,000社が回答した。
Bスコアは世界全体の回答対象企業のうち、上位約24%に相当し、東証プライム上場の同社関連業界企業10社の中で、ネクステージ(東証プライム、3186)、ユー・エス・エス(東証プライム、4732)と並び、今回もトップとなった。スズキ、ローソン、カルビー、JR東海、オリックスなど日本を代表する企業群と同等の評価を得ている。
同社では、2026年までに世界上位約0.08%にあたる「AまたはA-」評価を取得することを目標としている。
(2)M&Aの推進による企業価値向上
新たなエリアへの進出、新たなブランドの獲得、既存ブランドのシェア拡大をスピーディーに遂行するための重要な施策がM&Aである。飽和状態にある国内自動車市場においては、顧客獲得、早期の投資回収、収益確保という観点からM&Aが最も適切かつ優先すべき戦略であると考えている。
【1-5 特長・強み・競争優位性】で触れた「M&Aにおける高い事業再生能力」を武器に、M&Aの実施とPMIの着実な実行により、売上・利益の拡大を図る。
◎足元でのM&A動向
2023年は、同社取扱いブランドのBMW、MINI、VOLVOで計13件の資本移動が発生し、運営会社(資本)数はのべ10社減少した。
同社も、2件のM&Aを実行し、「MINI久留米」「ボルボ・カー福岡東」「ボルボ・カー大分」の3店舗を譲受したが、同業他社も積極的にM&Aを展開しており、競争は激しい。
◎M&Aについての事業環境
同社の調査によれば、2023年末現在、日本全国で、輸入車ディーラー633社が事業を行っており、新車販売拠点は合計1,514拠点。1事業会社あたり平均2.4店舗を運営しており、全体の約9割が3店舗以下を運営する中小企業である。
ブランドごとで店舗展開に差が見られ、ブランドによっては資本の集約が進む傾向にある。
また、日本の中小企業に共通の課題である後継者難に悩んでいるディーラーも多数存在する。
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(同社資料より)
こうした輸入車ディーラーにとって、自動車の「CASE(※)」、そのうち、「Electric(電気自動車)」と「Connected(コネクテッド)」への対応は今後の重要な経営課題となっている。
※「CASE」はConnected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス/シェアリングのみを指す場合もある)、Electric(電気自動車)の頭文字を取ったもの。従来の「クルマ」の概念を大きく変え、それぞれの領域において、新たな需要・市場を創出している。
◎環境意識の高まりとEV化の進展
地球温暖化に対する危機意識の高まりを受け、温暖化ガス排出削減、脱炭素社会実現へ向けた取り組みが急速に進展している。
自動車の排出ガス削減はその最も大きなテーマの一つであり、各国は2050年のカーボンニュートラル実現に向けた規制を打ち出しており、自動車メーカーは生き残りをかけ、従来のガソリン車、ディーゼルエンジン車からEV(電気自動車)への転換を進めている。
特に、【1-3 同社を取り巻く市場環境】で触れたように、元より環境意識の高い欧州を拠点とするメーカーは極めて積極的にEV化に取り組んでいる。
一方で、日本メーカーもEVの目標販売台数や目標販売比率は打ち出しているものの、海外競合と比較すると拡大ペースは鈍く、国内EV販売における輸入車シェアは、今後も拡大が続く可能性が高い。
同時に、ブランドメーカーは自社のサプライチェーン全体の排出量の把握及び削減への取り組みにコミットする必要があるため、ディーラーに対し、現在の排出量の把握に加え、EVの仕入れ拡大、急速充電機の導入など気候変動問題への適切な設備投資や対応、排出削減目標の開示などを強く求めるようになっている。
しかし資金面、人材面などの制約から十分な対応が難しいディーラーも多く、こうした要求に適切に対応できるディーラーへの集約・再編がブランドメーカー主導によって更に進むのではないかという観測も浮上している。
◎Connected(コネクテッド)化、EV化に伴う車輌整備の複雑化
Connected(コネクテッド)とは、クルマに通信機を搭載し、常に外部との情報を交換することを指す。車輌へのSIMカード搭載によりクルマの状態や道路状況の把握、クルマ同士やクルマとインフラの情報交換、遠隔操作などが可能となる。
Connected(コネクテッド)化によりクルマはスマートフォンのようなデバイスとなり、利便性が急速に向上するが、一方で故障や車検などの際の整備作業も一段と複雑化する。
加えて前述のEV化も車輌整備に大きな影響を与える。EVの普及に伴い、高電圧バッテリーや発電機の故障が増え、車輌整備においては高電圧システムを取り扱う必要があり、安全性強化に向け、設備投資に加え、高電圧に関する特別教育なども不可欠である。このようにConnected(コネクテッド)化及びEV化によりハード・ソフト両面における投資が追加的に発生するため、輸入車の整備業務は投資余力が十分な正規ディーラーや大手資本に集約されていくものと見られる。
◎M&Aに対する同社の方針
EV化とコネクテッド化への対応が輸入車ディーラーにとって急務となる中、同社では、ブランドメーカーから選ばれる店舗作りを進め差別化を図るとともに、対応が困難なディーラーをM&Aすることで、新エリアや新ブランドを獲得して自社の成長・企業価値向上を図り、また店舗グリーン化を通じて社会課題の解決に貢献する考えだ。
加えて、店舗のグリーン化、当該エリアの脱炭素化にとどまらず、店舗などの資産・資源の再利用、人的資本の再教育、業務フローのDX化による生産性の向上など、既存の各種社会資本の活性化にも繋げていく。
輸入車ディーラーの後継者難という課題と共に、今後、気候変動問題への対応が一層重視される中、同社の重要戦略であるM&Aも加速することが予想される。
【2-4 中長期株主還元戦略】
上場来連続で増配を行ってきた同社は、以下のような方針を打ち出している。
☆ | 中長期的にROE15%以上を目標とする(23年6月期14.0%)。 |
☆ | 「適正資本の維持」及び「株主還元の更なる拡充」を同時に実現していくために、2026年度までに、配当性向を30%まで段階的に引き上げる。 |
☆ | 2027年度以降は、引き続き配当性向30%を配当方針としながら、配当の下限はDOE4.5%を目安に、安定的かつ継続的な利益還元の維持・向上に努める。 |
2023年6月期の配当は予想通り41.17円/株を維持し、配当性向を22年6月期の21.4%から30.4%まで引き上げ、3期連続で利益成長を上回る配当成長を達成した。
今期2024年6月期は、配当43.51円/株、配当性向25.0%と予想している。
株主資本コストを大きく上回るROEを実現し、配当性向を段階的に引き上げ、今後4年間は利益成長を上回る配当成長を目指しており、極めて積極的な利益成長方針と株主還元姿勢を打ち出している。
(ROE分析)
| 16/6期 | 17/6期 | 18/6期 | 19/6期 | 20/6期 | 21/6期 | 22/6期 | 23/6期 |
ROE (%) | 16.8 | 19.4 | 18.2 | 14.3 | 13.9 | 22.5 | 19.0 | 14.0 |
売上高当期純利益率(%) | 2.34 | 3.16 | 3.16 | 2.44 | 2.29 | 3.76 | 3.91 | 2.95 |
総資産回転率(回) | 2.84 | 2.73 | 2.49 | 2.30 | 2.24 | 2.43 | 2.23 | 2.09 |
レバレッジ(倍) | 2.54 | 2.25 | 2.31 | 2.54 | 2.71 | 2.46 | 2.18 | 2.28 |
ここ2年のROEは低下しているが、日本企業が一般的に目標にすべきといわれている8%を上回っている。
3.成長戦略
同社の成長を支えていくのが「マルチブランド戦略」、「ドミナント戦略」、「M&A戦略」の3戦略である。
(同社資料より)
【3-1 マルチブランド戦略:収益の拡大と販売サイクルの平準化】
特定のブランドに依存することなく複数のブランドを取り扱うことにより、ブランド間の新型モデル投入時期の差異による販売サイクルへの影響の平準化を図っている。
現在11ブランドを扱っているが、M&A戦略も合わせてブランド数の拡大も目指している。
(同社資料より)
【3-2 ドミナント戦略:同一商圏のシェア向上と利益の最大化】
人口100万人規模の都市とその周辺都市を特定地域と位置付けて集中的な出店を進め、同一商圏にて集客を図ることによる市場シェアの向上、店舗間の効率的な人員配置による生産性の向上、利益の最大化を図っている。
現在は輸入車(乗用車)の新車登録台数及び保有台数で国内上位の東京、神奈川、福岡が中心だが、M&A戦略によるエリアの拡大も目指している。
【3-3 M&A戦略:スピードアップ】
「新たなエリアへの進出」「新たなブランドの獲得(マルチブランド戦略)」「既存ブランドのシェア拡大」をスピーディーに遂行するための重要な施策がM&Aである。
M&Aによりまとまった店舗、商圏、新ブランドを獲得したのち、周辺に新店を出店して商圏を補完し更なる業容の拡大を進めている。
Mercedes-Benz、VW、Audiなど同社がターゲットとしているブランドは10以上あり、M&Aを通じた新ブランド獲得による成長余地は大きい。
案件の発掘は、同社から先方への直接アプローチ、先方から同社への直接の連絡のほか、インポーターからの紹介、金融機関やM&A仲介会社からの紹介など。
社内で今後の成長性やシナジーを中心に検討したのち、同社の投資回収基準に沿った案件のみデューデリジェンスを実施し、交渉を進めていく。
2007年10月のウイルプラスホールディングス設立以降、現在まで11件のM&Aを実施してきた。新規出店や移転・改装等の店舗投資のほか、ノウハウの移植などによって、すべての案件で黒字化を実現しており、同社のPMI能力の高さが注目される。
4.2024年6月期第2四半期決算概要
【4-1業績概要】
| 23/6期2Q | 構成比 | 24/6期2Q | 構成比 | 前年同期比 |
売上高 | 20,661 | 100.0% | 22,881 | 100.0% | +10.7% |
売上総利益 | 4,173 | 20.2% | 4,341 | 19.0% | +4.0% |
販管費 | 3,199 | 15.5% | 3,730 | 16.3% | +16.6% |
営業利益 | 973 | 4.7% | 610 | 2.7% | -37.2% |
経常利益 | 977 | 4.7% | 671 | 2.9% | -31.3% |
四半期純利益 | 633 | 3.1% | 441 | 1.9% | -30.4% |
*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。
増収減益
売上高は前年同期比10.7%増の228億81百万円。
新車販売、中古車販売、ストック型ビジネスとも増収。
営業利益は同37.2%減の6億10百万円。
増収ではあったが、新車販売においては新車価格上昇で消費者の姿勢は慎重となっている。また、新車供給の回復に伴い、デモカーを中心とした減価償却費増、人員数増、人的資本経営推進費用による人件費増などでコスト増を吸収できなかった。
四半期ベースでは、売上高は第1四半期、第2四半期ほぼ同水準ながらも、新車及び中古車の粗利率回復により、第2四半期の営業利益は前年同期比では26.6%の減益も、前期比(第1四半期比)では38.8%の増益となった。
【4-2 市場環境】
国内乗用車市場(新車登録台数、普通・小型)は、第2四半期(10-12月)、前年同期比14.3%増と好調な一方、販売価格が高止まっている輸入車は、同4.8%減と低調に推移。
同社取り扱いブランドの国内新車登録台数も前年を下回っている。ユーザーは、「販売価格急騰、高止まり」に加え「新車供給増」により、様子見姿勢が続いている。
第1四半期に続き、第2四半期も同社取り扱いブランドの一部で、新車供給停滞などの一過性の事態が発生している。
【4-3 商品品目別動向】
| 23/6期2Q | 構成比 | 24/6期2Q | 構成比 | 前年同期比 |
新車 | 9,776 | 47.3% | 11,321 | 49.5% | +15.8% |
中古車 | 6,238 | 30.2% | 6,384 | 27.9% | +2.3% |
業販 | 1,658 | 8.0% | 1,818 | 7.9% | +9.6% |
車輌小計 | 17,674 | 85.5% | 19,524 | 85.3% | +10.5% |
車輌整備 | 2,729 | 13.2% | 3,060 | 13.4% | +12.2% |
その他 | 257 | 1.2% | 296 | 1.3% | +15.0% |
合計 | 20,661 | 100.0% | 22,881 | 100.0% | +10.7% |
*単位:百万円。
*新車販売
一部ブランドにおいては販売価格改定による受注活動への影響が見られたほか、モデル末期による消費者の買い控えや、出荷停止による販売機会の喪失などにより販売台数が前年同期を下回るブランドもあった。
その一方で、商品供給は概ね安定的に推移し、納車が堅調に進んだことや販売価格の上昇により増収となった。
ただ第2四半期(10-12月)の同社新車売上高は前年同期比3.7%増ではあるが、前四半期(第1四半期)比マイナスとなっている。
*中古車販売
上半期は取り扱いブランドで新車供給不足のブランドを中心に、新車販売時の下取りを強化する等の施策により商品確保に努めた結果、増収となった。
*ストック型ビジネス
車輌整備は、新車販売台数が伸び悩む中でも、店舗数の増加に加え継続取引の顧客が着実に増加し、上半期は前年同期比12.2%の増収。
保険代理店事業は、従来から新規契約の獲得を進めていたが、加えて顧客との繋がりをさらに強化し、契約継続を図った結果、新車販売台数が伸び悩む中でも上半期の保険手数料は前年同期比13.4%増加。保険総件数も同6.9%増と堅調である。
【4-4 財務状態とキャッシュ・フロー】
◎主要BS
| 23年6月末 | 23年12月末 | 増減 |
| 23年6月末 | 23年12月末 | 増減 |
流動資産 | 15,620 | 15,359 | -260 | 流動負債 | 9,533 | 10,254 | +721 |
現預金 | 4,290 | 3,987 | -302 | 仕入債務 | 3,829 | 3,317 | -512 |
たな卸資産 | 9,551 | 9,277 | -273 | 短期借入金 | 2,615 | 3,515 | +900 |
固定資産 | 8,024 | 8,913 | +889 | 固定負債 | 4,364 | 4,042 | -321 |
有形固定資産 | 7,038 | 7,971 | +932 | 長期借入金 | 3,818 | 3,418 | -399 |
建物及び構築物 | 3,757 | 4,615 | +857 | 負債合計 | 13,898 | 14,297 | +399 |
無形固定資産 | 97 | 64 | -33 | 純資産 | 9,746 | 9,975 | +229 |
投資その他の資産 | 887 | 877 | -9 | 利益剰余金 | 8,435 | 8,621 | +185 |
資産合計 | 23,644 | 24,273 | +628 | 負債純資産合計 | 23,644 | 24,273 | +628 |
*単位:百万円。
現預金が減少した一方、店舗取得などによる有形固定資産増で、資産合計は前期末比6億円増加し242億円。商品仕入れ減少による仕入債務の減少、短期借入金の増加などで負債合計は同3億円増加の142億円。
利益剰余金の増加などで純資産は同2億円増加し99億円。
自己資本比率は前期末から0.1ポイント低下し41.1%となった。
◎CF
| 23/6期2Q | 24/6期2Q | 増減 |
営業CF | -1,341 | 590 | +1,932 |
投資CF | -183 | -1,156 | -973 |
フリーCF | -1,524 | -565 | +959 |
財務CF | 310 | 260 | -49 |
現金・現金同等物 | 4,323 | 3,985 | -338 |
*単位:百万円。
棚卸資産増加額の減少などで営業CFはプラスに転じ、事業譲受による支出があったものの、フリーCFのマイナス幅は縮小した。
キャッシュポジションは低下した。
【4-5 トピックス】
(1)ボルボ・カーディーラー事業の一部を譲り受け
23年12月、ウイルプラス帝欧オート株式会社が、株式会社ネクステージ(東証プライム、3186)のボルボ・カーディーラー事業の一部を譲り受けた。11件目のM&Aとなる。
譲受は、「ボルボ・カー福岡東」「ボルボ・カー大分」を対象とし、これに係る一部有形固定資産及び従業員を承継した。
譲受事業の経営成績(売上高)は22年11月期で約26億円、価額は約10.7億円。
ウイルプラス帝欧オートは福岡県内、大分県内において、すべてのボルボ正規ディーラーを請け負うこととなり、福岡エリアにおける4ブランド(ジープ、ボルボ、MINI、BYD)での「ドミナント化」がさらに進むこととなった。
同社では更なる業容拡大及び収益基盤の強化を見込んでいる。
(2)店舗への太陽光パネルの設置
24年2月、MINI博多のサービス工場で、同社初となる太陽光パネルを導入した。
これまでも行ってきたグリーン電力の「使用」に加え、「生成」に取り組むことで、自社のCO2排出量削減だけでなく、日本の非化石電力の生成にも貢献する。
今後も、継続的に設置を検討していく。
5.2024年6月期業績予想
【5-1業績予想】
| 23/6期 | 構成比 | 24/6期(予) | 構成比 | 前期比 | 進捗率 |
売上高 | 44,115 | 100.0% | 48,821 | 100.0% | +10.7% | 46.9% |
営業利益 | 1,867 | 4.2% | 2,312 | 4.7% | +23.8% | 26.4% |
経常利益 | 1,943 | 4.4% | 2,303 | 4.7% | +18.5% | 29.2% |
当期純利益 | 1,302 | 3.0% | 1,692 | 3.5% | +29.9% | 26.1% |
*単位:百万円。予想は会社側予想。
業績予想に変更なし、2桁の増収増益で売上高は過去最高更新へ
業績予想に変更は無い。売上高は前期比10.7%増の488億21百万円、営業利益は同23.8%増の23億12百万円の予想。売上高は前期に続き過去最高を更新する見込み。
新車販売については、価格高止まり、販売低調の状況に対し、ブランドメーカーも価格政策を検討するものとみられ、販売台数回復が期待される。
ストック型ビジネスである車輌整備・保険代理店事業は、各顧客との繋がりをさらに強化し、より盤石な収益基盤構築を目指す。
販管費については、業容の拡大に伴い人件費、販売関連費用、店舗維持関連費用等が増加すると見込んでいる。また、各社員がその能力を充分に発揮できるよう待遇面での改善やDXの推進による単純作業の軽減、リスキリングのための研修受講等の人的資本への投資を続けていく予定である。
配当は前期比2.34円/株増加の43.51円/株を予定している。予想配当性向は25.0%。
【5-2 M&A戦略を取り巻く環境変化 ~コロナ禍の収束とM&Aの加速】
新型コロナウイルス感染症拡大が収束するのと軌を一にして、同社のM&A戦略に追い風が吹き始めたと同社では考えている。
(1)2020~2023年:M&A(事業売却)が発生しづらい事業環境
新型コロナウイルス感染症の発生及び拡大に伴い、安全な移動手段として、また海外旅行の代替として2020年から2021年にかけて自動車需要が急速に拡大した。
2022年に入ると、世界的な半導体不足や資材価格の上昇により新車の供給不足が顕在化し価格も高騰、新車不足は中古自動車需要を押し上げ、中古車価格も大きく上昇した。
こうした事業環境において自動車ディーラーの販売及び受注は好調となった。販売在庫は減少し、運転資金も縮小、受注残が急増するなど、決して営業力や資本力が強固でないディーラーであっても支障なく経営することが可能な環境であった。
一方でこうした状況は、事業売却を検討するディーラーが減少したことを意味し、同社のM&A戦略にとっては向かい風であったが、同社は業界平均を上回る成長及び営業利益率を実現し、次のフェーズにおけるM&A実行に向けて経営資源を集中していった。
(2)2023~2024年:新車供給の回復に伴いM&A加速化へ
2023年から2024年にかけ、環境変化が生じている。
2022年に大きく上昇した新車価格は高止まり状態に入る一方、半導体不足の解消とともに新車の供給が回復し、中古車価格は軟調となっている。
新車価格の高止まりは、社有車投資及び減価償却費の増加によるコスト増、来店客数の減少、販売在庫及び運転資金の増加による資金繰りの悪化を引き起こし、中小自動車ディーラーの経営を圧迫している。
こうした経営環境の変化に加え、それ以前から強まっていたガバナンス強化の必要性や環境課題対応に向けたコスト増などで、自動車ディーラーの収益性は悪化傾向にある。
今後は経営基盤の脆弱な中小ディーラーを中心としたM&A(事業売却)案件の増加が見込まれ、この3年間止まっていた同社M&A戦略は大きく加速するものと同社では考えている。
6.今後の注目点
上期実績の通期予想に対する進捗率は、売上高46.9%、営業利益26.4%。売上高はほぼ例年並みであるが、営業利益は大きく下回っている。下期の新車販売台数回復で、どこまで売上・利益を積み上げていくことができるかに注目したい。
加えて、新車販売価格高止まりにより国内輸入車市場は低調で、同社も影響を受けているが、同業他社、特に経営基盤の脆弱な中小ディーラーはより厳しい局面にある。この3年間止まっていたM&A戦略を大きく加速させることができるかに期待したい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役 | 8名、うち社外取締役4名(うち独立役員4名) |
監査等委員 | 4名、うち社外取締役4名(うち独立役員4名) |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2023年9月28日
<基本的な考え方>
当社におけるコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方は、企業価値の最大化を図るにあたり、社会のめまぐるしい変化に対応し、効率的かつ、法令等を遵守する健全な経営体制を構築することであります。そのために、各ステークホルダーと関係強化及び経営統治機能の更なる充実を図ることにより、透明性のある経営を確保するとともに、適正かつ迅速なディスクロージャーに努めてまいります。
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております。
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
■原則1-4 【政策保有株式】
(1)政策保有株式に関する方針
当社は政策保有株式を保有しておりません。取引先との資本提携、協業のために関係維持・強化が必要であり、中長期的な観点からビジネス上のメリットがリスクや資本コストに見合っていると判断した場合以外は、政策保有株式は保有しない方針であります。
(2)政策保有株式にかかる検証の内容及び政策保有株式にかかる議決権行使の基準
政策保有株式を保有することが適切であると判断した場合には、継続保有の合理性の検証方法並びに当該政策保有株式の議決権行使の具体的な基準を策定いたします。
■補充原則2-4①【中核人材の登用等における多様性の確保】
<多様性の確保についての考え方>
当社では、従業員一人ひとりがその能力を最大限に発揮できる環境を提供することを目指しており、性別・国籍・属性を問わず、個人の能力・適正・実績・意欲により人材を登用することを基本方針としております。
<多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標>
中核人材の多様性の確保について女性取締役及び管理職の割合、男性従業員の育休取得割合の目標を定め、多様性確保の指標としております。各項目の目標値及び実績は下表のとおりであります。
女性取締役の割合 2023年6月期実績10.0% 2025年6月期(目標)12.5% 2030年6月期(目標)30.0%
女性管理職の割合 2023年6月期実績 4.2% 2025年6月期(目標)7.0% 2030年6月期(目標)10.0%
男性育児休暇取得率 2023年6月期実績31.6% 2025年6月期(目標)40.0% 2030年6月期(目標)50.0%
※本報告書提出日現在は、女性取締役の割合は12.5%となっております。
なお、外国人の管理職への登用については在籍者数が少ないため具体的な数値目標は設定しておりませんが、更なる多様性確保のため目標値の設定の必要性を継続して検討してまいります。
また、当社グループは専門性・経験値の高い中途採用者の比率が高いため管理職における中途採用者の割合は93.75%(2023年6月末日時点)となっております。このため中途採用者の管理職割合については目標値は設定しておりません。
■補充原則3-1③・補充原則4-2②【サステナビリティを巡る課題】
当社は、企業活動を通じて持続可能な社会の実現・企業価値向上に向けて、当社グループ全体のサステナビリティへの取組と主体的なリスクマネジメント基盤を強化するとともに、成長戦略推進による業容拡大や自動車産業を取り巻くEV化等の技術革新への対応、DX化の推進を重点的に図るため、サステナビリティ基本方針を制定し、サステナビリティ委員会並びにリスクマネジメント・コンプライアンス委員会を設置しております。これらの委員会を基軸とした具体的な活動内容及び中長期的企業価値の向上に向けた人的資本への投資等につきましては、決算説明資料、有価証券報告書等で開示しております。
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01236/64ab2dc2/2bd7/4aa8/a1e2/476e214a2c86/140120230821544726.pdf
また、気候変動問題への取組につきましてはCDPを通じて開示しております。
■原則5-1【株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針】
当社は、株主や機関投資家との積極的かつ建設的な対話(面談)を通じ、経営方針や成長戦略を明確に説明し、理解を深めていただくことが、当社の中長期的な企業価値の向上に資すると考えております。
株主や機関投資家との対話は、経営戦略本部IR室を窓口とし、代表取締役、IR担当者が合理的な範囲で訪問、来社、電話等により行っております。個別面談以外にも、多くの投資家と直接対話できる機会を設けるべく、代表者自らが説明を行う投資家、アナリスト向け決算説明会や個人投資家向け説明会を開催し、当社、投資家双方の理解促進の場として活用しております。さらに、説明会の模様を動画配信若しくは資料をホームページに掲載するなどし、広く情報発信を行っております。
対話に際しては、未公表の重要情報につきまして漏洩等が発生しないよう、十分に留意のうえ、臨んでおります。
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。 Copyright(C) Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved. |