ブリッジレポート
(1447) SAAFホールディングス株式会社

グロース

ブリッジレポート:(1447)ITbookホールディングス 2024年3月期第2四半期決算

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前 俊守 社長

ITbookホールディングス株式会社(1447)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

建設業

代表取締役社長

前 俊守

所在地

東京都江東区豊洲三丁目2番24号 豊洲フォレシア9F

決算月

3月

HP

https://www.itbook-hd.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

257円

24,152,701株

6,207百万円

6.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

-

20.70円

12.4倍

108.75円

2.4倍

*株価は12/25終値。発行済株式数、DPS、EPSは2024年3月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

20年3月(実)

21,224

155

140

83

4.20

0.00

21年3月(実)

22,634

-252

-208

-843

-41.88

0.00

22年3月(実)

26,346

238

157

-766

-35.59

0.00

23年3月(実)

30,528

739

708

162

6.93

0.00

24年3月(予)

34,400

1,000

900

500

20.70

0.00

*単位:百万円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

 

 

ITbookホールディングス株式会社の会社概要、業績動向、前 俊守社長へのインタビューなどをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画
3.2024年3月期第2四半期決算概要
4.2024年3月期業績予想
5.前 俊守社長へのインタビュー
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • ICT技術・DXにより社会インフラの付加価値向上、および社会貢献を実現する社会問題解決型企業。地盤調査改良事業を中心に、コア事業であるコンサルティング事業、システム開発事業、人材事業の拡大・収益性向上に取り組むとともに、次の収益の柱とすべく、育成事業にもリソースを投入している。中期経営計画では、2025年3月期「売上高420億円、営業利益17.5億円、経常利益16億円、当期純利益10億円」を計画している。

     

  • 2024年3月期の売上高は前期比12.7%増の344億円、営業利益は同35.2%増の10億円と増収増益を予想している。

     

  • 2023年3月期から2025年3月期の中期経営計画を推進中。同社グループの変革期と認識しており、「選択」と「集中」を事業再編、財務体質強化で実行し、持続的企業価値向上を実現する考えだ。2025年3月期「売上高420億円、営業利益17.5億円、経常利益16億円、当期純利益10億円」を計画しており、売上重視から利益重視経営への転換により、営業利益のCAGRは+94.5%と、売上高の+16.8%を大きく上回り、営業利益率は4%台まで上昇する見通しだ。

     

  • 前 俊守社長に、同社の競争優位性、中期経営計画のポイント、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「経営統合によりセグメント、子会社も多く、投資家の皆様の目には、「わかりにくい企業」と映っているかもしれませんが、事業の幅が広いがゆえに、シナジー効果を生み出すことのできるチャンスを多数有しています。また、成長のための投資も着実に実行してまいりますが、配当も可能な限り早期に実施したいと考えています。「社会問題解決型企業」として付加価値の高いサービスを社会に提供し、豊かな社会の創造に貢献するとともに、企業価値を向上させ株主・投資家の皆様のご期待にお応えしてまいりますので、是非中長期の視点で当社を応援していただきたいと思います」とのことだ。

     

  • 同社では経営統合を機に、新たなグループ経営理念、グループフィロソフィーを掲げた。これらの考え方を全社員に浸透させるため、HRコミュニケーション部が中心となり、1時間ほどの前 俊守社長のメッセージビデオを全社員が視聴している。また、社員一人一人に自分事として理解してもらうために、社員同士でフィロソフィーについてのディスカッションを行うことも含めた研修を実施することも計画しているそうだ。

     

  • 社員のベクトルを一致させて事業間シナジーを発揮し、中期経営計画の計画数値を達成することができるかに注目していきたい。

1.会社概要

ICT技術・DXにより社会インフラの付加価値向上、および社会貢献を実現する社会問題解決型企業。地盤調査改良事業を中心に、コア事業であるコンサルティング事業、システム開発事業、人材事業の拡大・収益性向上に取り組むとともに、次の収益の柱とすべく、育成事業にもリソースを投入している。中期経営計画では、2025年3月期「売上高420億円、営業利益17.5億円、経常利益16億円、当期純利益10億円」を計画している。

 

【1-1沿革】

前 俊守氏(現ITbookホールディングス株式会社 代表取締役社長)は、大学卒業後、建設機械のレンタルなどを手掛ける株式会社ワキタに入社。住宅・ビルなどを建設するにあたり地盤の状態を調査し、場合によっては地盤の改良を行うほか、建設に適した地盤であることを保証する地盤保証も行う「建築地盤事業」に従事する。
そうした中、建築地盤業界の不透明性に疑問を抱いた前 俊守氏は、透明性を高め顧客から信頼されることは、事業の拡大および社会課題の解決につながると考え、1997年6月に地盤調査・地盤改良・地盤保証を行う株式会社サムシングを設立し、代表取締役社長に就任した。
株式会社ワキタ時代のネットワークなどもあり、顧客開拓は順調に進み、2006年8月には大阪証券取引所「ヘラクレス」(旧 東証JASDAQ市場)に上場。当時、住宅地盤改良を主力とする唯一の上場企業となる。
2008年にはGPSを用いた住宅地盤第三者認証システム「GeoWeb System」を開発し、業界の透明性向上に大きく貢献する。
その後も順調に業容を拡大させ、2016年12月にはサムシンググループの連結売上高は100億円を突破した。
2018年10月には、東証マザーズ上場のITbook株式会社の事業承継を目的として、ITbook株式会社とサムシングホールディングス株式会社の株式移転によりITbookホールディングス株式会社を設立し、東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場し、代表取締役社長に就任した。
2021年6月、新経営体制による経営方針の転換と今後の成長戦略を示すべく、新中期経営計画を策定・発表。
2023年3月期の連結売上高は300億円を突破し、過去最高を更新した。

 

 

【1-2 経営理念】

2018年の新経営体制の構築を機に、「社会問題解決型企業」を新たな目標に掲げ、以下のような経営理念の下、IoT、AI、ビッグデータ、クラウドコンピューティング等の新技術を効率的、効果的に活用した付加価値の高いサービスを社会に提供し、豊かな社会の創造に貢献することを経営方針としている。

 

グループ経営理念

ICT技術・DXにより社会インフラの効率的、効果的付加価値の向上及び、社会貢献を目指す

グループフィロソフィー

1.お客様第一主義で社会に貢献する

2.夢・高い目標に挑戦する

3.全社員の物心両面の幸福を追求する

 

【1-3 事業内容】

事業セグメントは、4つのコア事業(コンサルティング事業、システム開発事業、人材事業、地盤調査改良事業)と4つの育成事業(保証検査事業、建設テック事業、海外事業、その他)の計8セグメント。連結子会社30社、非連結子会社1社、関連会社1社でグループを構成している。
株式会社サムシングが手掛ける地盤調査改良事業を中心に、経営統合に伴い、コンサルティング事業、システム開発事業、人材事業の拡大・収益性向上に取り組んでいる。次の収益の柱とすべく、育成事業にもリソースを投入している。

 

(1)コア事業
①コンサルティング事業
官公庁や民間企業等に対して、業務および情報システムの総合的な整理・再構築を提案し、組織的な戦略目標の達成、および地方創成を支援している。

 

グループ会社

ITbook(株)、みらい(株)

 

顧客別提供ソリューション

行政

自治体DX推進支援、自治体業務システム標準化推進支援、オープンデータ推進支援、業務・システム最適化計画支援等

独立行政法人

情報セキュリティ強化支援、刷新可能性調査、最適化計画策定支援等

民間企業

システム分析サービス(Smart Tool) ITコンサルティング、経営戦略策定支援、新規事業企画支援、DX推進支援、BPR/BPO推進支援、人材育成支援等

 

これまで累計ベースで約250の官公庁、自治体、約300社の民間企業にソリューションやサービスを提供している。

 

◎特徴・強み

200を超える地方公共団体よりコンサルティング業務を受託している。自治体DX・業務システム標準化等の各種支援を実施しているほか、多様な分野での研修・人材育成、マーケティング支援、WEBサイト・SNS運用、企業誘致事業の運営、スポーツスクールの運営等、顧客課題に応じた多種多様な業務対応で豊富な実績を有する。

広島県において、県を含む県内自治体24団体のうち15団体と取引実績を有し、熊本県では熊本県および人口規模の大きい熊本市、天草市と継続的な取引を行っている。

ITを強みとした専門のコンサルタントにより、官民における様々な問題を、ITを駆使したコンサルティングで解決している。

レガシーシステムを独自技術の「 Smart Tool 」を活用し、可視化・分析することで課題解決をサポートしている。

プログラミング言語の「COBOL」から、DX化のベー スとなる「JAVA」への自動変換ツールを用いて、DX推進をサポートしている。

 

②システム開発事業
Webシステム開発、マーケットデータシステム開発、外国為替関連開発、生命保険関連システム開発や保守・運用および組み込み開発、および機器の販売を行っている。
IT、IpT等の新技術を通して新しい価値創造を提供し、地域、社会の「デジタルシフト」をリードしていく。
累計ベースの顧客数は約500社。

 

グループ会社

ITbookテクノロジー(株)、東京アプリケーションシステムズ(株)、フロント・アプリケーションズ(株)、(株)コスモエンジニアリング

 

◎特徴・強み

独自開発で主力となる建築土木・農業・環境・防災IOT、IOT機器、ITシステムを保有しており、収益性の高い事業モデルを確立している。

常駐するSEとニアショア拠点との連携、セキュアな開発環境の確保、高定着率のSE活用とニアショアによる低コスト化などにより、満足度の高い開発を実現している。

 

 

③人材事業
技術者派遣、製造、物流向け派遣、教育人材派遣等、顧客ニーズを的確に捉えた専門人材サービスを展開している。
商品コンセプトを、「New Values Service」と定義している。
累計ベースの顧客数は約1,500社。

 

グループ会社

NEXT(株)、(株)アイニード、(株)イスト

 

◎特徴・強み

エリア拡大・優秀人材採用による継続的な成長戦略を展開している。

技術者派遣においてプライムベンダー(システム開発の元請け企業)をターゲットとした営業体制を構築している。

金融業務等の専門知識を有する技術者により、FINTECHシステム開発やニッチな分野へのアプローチを可能としている。※人材事業のNEXT社の吸収合併により2023年10月1日からNEXTの事業となった。

教員不足を背景に、教育人材派遣が大きく伸長している。

 

④地盤調査改良事業
ハウスメーカーやビルダーを顧客とし、地盤調査・改良工事分野で業界トップクラスの実績を有する。戸建住宅を中心に、小型商業施設や中低層建築物の地盤調査・改良工事等を行っている。
全国規模の大手住宅メーカーやゼネコン、マンションデベロッパーから地場の建設会社まで、極めて幅広く強固な顧客基盤を有している。

 

グループ会社

(株)サムシング、(株)GIR、(株)アースプライム、(株)三愛ホーム、(株)東名、(株)サムシング四国(持分法適用関連会社)

 

◎特徴・強み

創業25年の実績をベースに、国内27拠点でサービスを展開している。直近では、年間35,000件以上の現場実績を有し、顧客から厚い信頼を得ている。

最新の機器導入と熟練の技術者による、多種多様な工法、透明性の高いシステムの活用で、無駄の無いビジネスモデルを確立している。

認定工法を含む16種類の工法から、各地域の地盤に最適な工法を選定し提供している。

 

地盤調査、設計検討、地盤改良工事、地盤保証まで、ビルダーの手間をかけず、ワンストップでのサービス提供が可能である。

地盤調査、地盤改良工事で採用する自社開発のGPS付き地盤調査「GeoWeb System」により、現場で記録したデータをそのまま報告書に反映し、透明性の高い報告が可能である。

 

* GPS付き地盤調査「GeoWeb System」について
「GeoWeb System」は、調査データをWeb上にアップロードし、パソコンからリアルタイムなアクセスを可能にすることで、これま で地盤調査のネックだったヒューマンエラーや不正行為を防止し、同時に業務の効率化を促進するソリューション。
すでに、利用件数は累計100万件を超え、業界屈指の普及率を誇っている。業界のみならず日本でも初めてのシステムである。

 

<特徴>

地盤調査データを可視化

地盤調査の実作業を、いつ、どこで、だれが、どの機械で行ったのか、調査データと現場写真を記録し、インターネットを通してデータ管理をすることで「可視化」する。

強力な暗号化・クラウド化により不正・改ざんを抑止

現場情報をリアルタイムで把握でき、さらに地盤調査データはすべて暗号化・クラウド化されるため不正・改ざんを未然に防ぐことができる。

現場とオフィスで地盤調査データを瞬時に共有でき、生産性が格段に向上

機能性に富んだ専用のWebアプリを介して自動地盤調査機が出力したデータを瞬時に現場とオフィスで共有が可能。調査業務やその後工程、報告書作成など事務処理の負担軽減が図られ、労働生産性が格段に向上する。

 

こうした「GeoWeb System」を含めた特徴・強みは、顧客からの高い評価につながっており、同事業の強力な競争優位性につながっている。

 

(2)育成事業
①保証検査事業
ハウスメーカーなどのビルダーに対して、地盤保証、住宅完成保証および、住宅検査関連業務を行っている。

グループ会社

(株)GIR、Something Re. Co., Ltd.

 

②建設テック事業
GPS付き地盤調査「GeoWeb System」等のレンタル・販売および電子認証サービスを行っている。

グループ会社

ジオサイン(株)

 

③海外事業
東南アジア(現時点では主としてベトナム)において、地盤調査、地盤改良、土木工事、住宅建築請負のほか、農業に注力しているベトナム・ドンタップ省とはITを活用した農業IoT、農業DX推進にむけた協定を締結している。
ベトナムでの事業基盤を構築した後、他の東南アジア各国への進出も検討していく。

 

グループ会社

SOMETHING HOLDINGS ASIA PTE.LTD. 、SOMETHING VIETNAM CO., LTD. 、JAPANEL HOME (CAMBODIA) CO., LTD.

 

④その他
M&Aアドバイザリー事業、ドローンを活用したデータ解析事業等を行っている。

グループ会社

(株)kiipl & nap、M&Aマックス(株)、クリードパフォーマンス(株)、ITloan(株)、信栄保険サービス(株)

 

【1-4 特長・強み・競争優位性】

(1)川上から川下まで一気通貫で自社サービスを提供
コンサルティング事業により川上から入って案件を受託し、これを具体的なサービスやソリューションとして形にして提供することで事業を拡大させている。

 

(事例)
ITbookホールディングス株式会社と広島県三原市との連携協定により「ため池」の破堤要因の分析や予兆に関する実証実験を実施した。
みらい株式会社のコンサルティングを広島県三原市が評価し、具体的なソリューションとして、株式会社サムシングの得意とするボーリング調査やITbook テクノロジー株式会社が保有するテクノロジーを活用して、調査やデータ収集を実施。これらのデータを分析した結果、どの程度の水位上昇まで「ため池」の堤体が耐えられるか等を推測できることが判明し、水位上昇時に適切な避難勧告や事前対策を実施することが可能であることが判明した。
「社会問題解決企業」として、コンサルティングにとどまることなく、実証までのソリューションをワンストップで提供できるのは同社グループの強力な競争優位性である。

 

(2)現場を熟知したDX推進力
現在、DX推進は、日本全体の喫緊の課題であるが、DXを担当する受託開発会社の多くが、現場を知らないことから、どこをどのようにDX化すれば効率改善につながるかを理解しておらず、DXが進まないケースも多い。
同社グループは、株式会社サムシングを中心として現場を熟知しており、現場の課題を、内部のテクノロジーを用いて解決することにより、低コストで生産性を向上させることができる。加えて、そのテクノロジー、ソリューションを外販することで事業の拡大につなげることも可能である。

 

2.中期経営計画

2023年3月期から2025年3月期はITbookホールディングスグループの変革期と認識しており、「選択」と「集中」を事業再編、財務体質強化で実行し、持続的企業価値向上を実現する考えだ。

(同社資料より)

 

【2-1 グループ経営戦略】

(1)コア事業への投資
4つのコア事業を中心に、シナジー効果を追求し、持続的企業価値向上を図る。次のコア事業候補として4つの育成事業を展開する。

 

(2)財務務基盤安定化と利益を拡大させるグループ体制の構築
事業の「選択と集中」を経営課題として掲げ、2022年4月以降、財務基盤増強・利益拡大を実行している。

 

*赤字子会社の統廃合・閉鎖&「売上重視」から「利益重視」の経営へ
これまで、M&Aや数多くの新規子会社を設立してきたが、個社別には、売上・利益とも結果が出ず赤字が拡大し、連結ベースの収益性や連結財務基盤に悪影響を及ぼしていたため、個社別に投資経済性と事業成長可能性を精査した上で、2022年3月期において、子会社8社の統廃合や売却、閉鎖の処理を進めた。2023年3月期においても、子会社6社の譲渡、統廃合、閉鎖を実施し、基本的に収益性に問題のある会社を一掃した。
今後も、「売上重視」から「利益重視」の経営への転換の下、各個社の投資経済性、事業成長可能性、グループ他事業との相乗効果を精査し続ける体制を構築し、グループ財務基盤安定化、収益性向上、利益拡大を図る。

 

*新株式の発行
中期経営計画の達成に向けた新たな収益獲得・拡大はもとより、財務基盤の安定化を図り、中長期的に同社グループの企業価値を向上させるために、新株式を発行した(2022年8月31日払込完了)。

 

*シンジケートローンの組成
2022年3月期に、機動的かつ安定的な資金調達と金融費用の圧縮を行い、資金繰りの安定性確保を目的として、60億円のシンジケートローンを組成した。シンジケートローンの組成により、グループの資金調達を一元化し、比較的低金利でのグループ運転資金を調達することが出来た。 2023年3月期にはCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)の導入を行い、同社でグループ資金を一元管理することで、安定的な資金調達、借入金利の低減、グループ全体の資金の流れの効率化と資金の偏在を調整し、財務基盤の安定化に向けた財務的機動力の向上にも取り組んでいく。

 

(3)グループ企業に対する管理強化
事業規模が拡大する中で、グループ連携や協業、業務インフラの整備、技術支援、人材配置等を含むグループ企業に対する管理強化は引き続き不可欠である。このため、豊洲本社への一部グループ会社の更なる集約や、定期的なグループ管理本部会議による情報共有、管理部門の統一・グループ経営会議による各事業、各個社の業績管理、内部監査部門強化による内部統制・ガバナンスの強化等によりグループ管理体制をより一層進化させていく。

 

(4)新規事業の創出と新技術の研究・開発
DXが本格化するなど社会情勢が大きく変化していく中で、既存事業のみならず、競争優位性を担保する独自の新規事業の確立が必要である。
既存事業とシナジー効果が高い事業および事業規模拡大に必要となる事業等、広い視野・柔軟性を意識し新規事業の確立に取り組んでいく。また、市場ニーズに適時・的確に応えることができる技術力の研鑽と革新的な新規事業の確立に不可欠な新技術の研究・開発に努める。

 

コア事業に対しては積極的に投資を行うとともに、コア事業とのシナジーが見込まれる新規事業の確立や新技術の研究・開発を検討する。

 

地盤調査改良事業においては、株式会社サムシングの技術本部が中心となって国内外での技術・ノウハウの共有、新工法の研究開発に取り組んでいる。市場ニーズの多様化、技術の高度化、競争激化等の環境下で差別化を図るためには、さらなる活動強化が必要である。今後も人員の増強、研究開発活動の推進により、一層の高品質化・高度化・サービスの高付加価値化を図る。

 

システム開発事業においては、ITbookテクノロジー株式会社が中心となり、AIやIoTで続々と登場する新たな技術を活用し高度化を図ることで、利用者の利便性の向上、顧客への提案力向上を実現する。引き続き、得意分野である建築土木・農業・環境・防災IoT、IoT機器を中心に研究・開発を推進する。

 

(5)人材の確保について
コンサルティング事業およびシステム開発事業において、ITコンサルティングやプロジェクトマネジメントのノウハウを有する優秀な人材の確保が重要である。地盤調査改良事業では、品質を一定以上に保つため、原則として正社員による現場作業を中心に行っている。一方で機械化を促進し作業の生産性向上に注力しているが、業容の拡大のためには、作業人員を一定数確保することが不可欠であるため、ITbookホールディングス株式会社のHRコミュニケーション部が中心となり、継続的な新卒採用、有能な人材の中途採用活動強化およびグループ人事制度の共有・最適化等を図っている。社内人事評価システムやグループ全社横断的な教育体制および社外研修の充実などにより、優秀な人材の育成・確保および従業員のモチベーション・満足度の向上による「働きがい」のある組織づくりを目指している。

 

【2-2 各事業における経営戦略】

(1)コンサルティング事業
◎経営環境
「クラウドコンピューティング」の急速な普及の下、2016年1月からスタートした「マイナンバー制度」は国としてのDX化推進加速の追い風も受け、2023年6月にはマイナンバー法が改正された。

 

◎取り組み
「クラウドコンピューティング」については、総務省から、「地方自治体のクラウド化のための実証実験のPMO」を受託し、北海道、京都府、佐賀県等6道府県、78市町村で実施した。
「マイナンバー制度」については、内閣官房、総務省をはじめとする約50の自治体より、マイナンバー関連のコンサルティング業務を受託した。

 

今後は、政府の「Cloud First」、「Digital First」推進に加え、社会では新型コロナウイルスとの共存に伴うIT投資が更に増加すると考えられ、マイナンバーカードは、健康保険証としての利用、医療機関、調剤薬局での利活用、マイナポイントおよびキャッシュレス化の推進、銀行等の機関間情報連携、情報セキュリティの見直しなど様々なものに結び付いていくと想定される。
さらに、民間企業においては、保有するレガシーシステムがDX推進の足かせとなっているケースが多くみられる。

 

このような環境下、受注機会は更に増加すると見込んでおり、引き続き内閣官房・総務省・地方自治体・民間企業に継続的にコンタクトし、分析・活用を行うことでDX推進のサポートを行う独自技術サービス「Smart Tool」、プログラミング言語の「COBOL」から、DX化のベースとなるオープンシステムでスタンダードとされている「JAVA」への自動変換ツールを積極販売する。

 

(2)システム開発事業
◎経営環境
IT業界は、IoT対象製品の加速度的拡大、生成AIの普及、ブロックチェーン技術の応用加速など、新たな技術革新が進展している。

 

◎取り組み
こうした動向と、IT関連のコンサルティングおよびシステム開発事業とのシナジー効果は大きいと考えられ、引き続き、ニアショア開発や金融関連分野および、IoT関連のソリューションを提供する組込システム分野への事業拡大を図る。
また、国や地方における多種多様な課題解決のため、さまざまな角度からのシステム開発を進め、コンサルティング事業とも連携し、AI、およびIoT関連製品、技術等の積極的な利活用を推進していく。

 

(3)人材事業
◎経営環境
コロナ禍の回復傾向の影響もあり、有効求人倍率は、上昇している。

 

◎取り組み
技術者派遣業、製造業および流通業向け人材派遣業、教員派遣業などの専門性に特化した派遣業は、ニーズの高いものであると考えており、更なる売上拡大を図る。

 

(4)地盤調査改良事業
◎経営環境
2023年3月期の年間の国内新設住宅着工戸数は、新型コロナウイルスの変異株拡大や世界的なインフレ状況での資材高騰等は続くものの、経済需給バランスの回復開始や昨年対比での工事延期物件の減少などにより、前期比0.6%の減少にとどまった。

 

◎取り組み
更なる市場シェアを獲得し中長期的な事業成長に向けて、新工法の開発による差別化や店舗および、中低層建築物等の地盤改良の受注獲得を進める。 さらに、昨今の地球温暖化現象に伴う異常気象の増加により需要拡大をしている防災関連市場においても受注の拡大を見込み、保有技術を活かして復興関連事業へ注力している。
地盤調査改良事業は、一定の安定した需要が見込めるため、公共工事の受注を主たる業務としていた建設会社が新規参入してくる可能性がある。また、既存の地盤改良業者がシェア拡大・維持のために低価格戦略を採ってくることも考えられる。これに対し、同社ではITなどの活用を促進し、他社にはない独自のサービスを開発し、技術面だけでない競合他社との差別化を図っていく。

 

(5)保証検査事業
◎経営環境
地盤調査改良市場とほぼ同様の経営環境下にある。

 

◎取り組み
新規の認定店の増加および既存の認定店の技術力の向上を図り、顧客満足度の獲得に注力する。また、検査事業においては、リフォーム市場が拡大しつつあり、検査事業関連のサービスを拡充させる。
現有の顧客基盤を活用して新たな収益商品の開発・導入・販売により顧客との接点を高め、建物に関する安心相談窓口の地位を確立する。

 

(6)建設テック事業
◎経営環境
2015年度に発生したマンションの杭データ改ざん問題以来、地盤データの信頼性に対する注目度は高まっている。

 

◎取り組み
GPS付き地盤調査「GeoWeb System」は、地盤データに第三者として電子認証を行うサービスであり、地盤データの不正・改ざんを防止することができるため、業界におけるニーズが高まっている。
近年市場が拡大している中古住宅市場の品質検査分野におけるシステムの開発・販売を行うなど、受注の更なる獲得を目指す。

 

(7)海外事業
◎経営環境
経済発展が目覚ましい東南アジア各国では、インフラ工事の機会が拡大しているほか、人口増加の下で、食糧増産の必要性も高まっている。

 

◎取り組み
長期的な企業成長の確保という観点から、2011年、ベトナム社会主義共和国に駐在員事務所を設立した。2013年には現地法人「SOMETHING VIETNAM CO.,LTD.」を設立し、2016年にカンボジアに現地法人「JAPAN ELHOME(CAMBODIA)CO.,LTD.)を設立し、展開を進めている。
2018年よりベトナムで地盤調査改良事業を中心に事業活動を行っており、黒字化を継続している。
ベトナムでは、日本国内で培った地盤調査・改良の技術力を活かし、現地社員へ技術指導・教育を実施しながらメコン川の堤防補強等のインフラ工事を進めることにより、地域に貢献する企業を目指している。 2023年3月期には、ベトナムのメコンデルタ地域のインフラ整備(護岸・道路・橋梁)、再生エネルギー発電事業の太陽光発電・風力発電の地盤調査および、下水道工事に関わる仮設工事を受注した。
ベトナムでは、農業関連事業も展開している。
引き続き、東南アジア圏で技術を展開し、引き続き安定した収益確保に努めると共に、更なる事業拡大を進めていく。

 

【2-3 今後の見通し】

2025年3月期「売上高420億円、営業利益17.5億円、経常利益16億円、当期純利益10億円」を計画している。
売上重視から利益重視経営への転換により、営業利益のCAGRは+94.5%と、売上高の+16.8%を大きく上回り、営業利益率は4%台まで上昇する。

 

 

 

22/3期

23/3期

24/3期

(計画)

25/3期

(計画)

CAGR

売上高

 

 

 

 

 

コンサルティング事業

1,481

1,741

2,170

2,650

+21.4%

システム開発事業

3,298

3,436

4,360

5,150

+16.0%

人材事業

5,681

6,476

6,890

7,950

+11.9%

地盤調査改良事業

14,120

17,171

18,170

22,000

+15.9%

コア事業合計

24,580

28,824

31,590

37,750

+15.4%

保証検査事業

308

280

390

420

+10.9%

建設テック事業

475

480

800

1,500

+46.7%

海外事業

531

551

790

1,200

+31.2%

その他

248

388

860

1,140

+66.3%

育成事業合計

1,562

1,699

2,840

4,260

+39.7%

売上高合計

26,346

30,527

34,400

42,000

+16.8%

セグメント利益

 

 

 

 

 

コンサルティング事業

79

359

350

480

+82.5%

システム開発事業

-1

130

290

400

+75.4%

人材事業

116

287

270

380

+48.5%

地盤調査改良事業

829

653

690

840

+0.4%

コア事業合計

1,023

1,429

1,600

2,100

+27.1%

保証検査事業

77

3

40

50

-13.4%

建設テック事業

22

-5

180

380

+158.5%

海外事業

21

4

70

100

+68.2%

その他

-363

-183

30

60

-

育成事業合計

-243

-181

320

590

-

セグメント利益合計

238

739

1,000

1,750

+94.5%

*単位:百万円。計画値は、連結相殺後の数値を記載。CAGR(Compound Annual Growth Rate)は2022年3月期から2025年3月期までの年平均成長率で、インベストメントブリッジが計算。

 

3.2024年3月期第2四半期決算概要

【3-1業績概要】

 

23/3期2Q

構成比

24/3期2Q

構成比

前年同期比

売上高

14,331

100.0%

13,848

100.0%

-3.4%

売上総利益

3,405

23.8%

3,452

24.9%

+1.4%

販管費

3,714

25.9%

3,483

25.2%

-6.2%

営業利益

-308

-

-31

-

-

経常利益

-238

-

11

0.1%

-

四半期純利益

-536

-

-196

-

-

*単位:百万円

 

減収も損失は大幅に縮小
売上高は前年同期比3.4%減の138億48百万円。コアの4事業とも減収。
営業損失は31百万円(前年同期は3億8百万円の損失)。減収も、採算性を重視したため売上総利益は同1.4%増加し、粗利率も1.1ポイント改善。販管費が同6.2%減少したことから、損失は大幅に縮小した。

 

【3-2 セグメント別動向】

 

23/3期2Q

構成比

24/3期2Q

構成比

前年同期比

売上高

 

 

 

 

 

コンサルティング事業

216

1.5%

213

1.5%

-1.5%

システム開発事業

1,578

11.0%

1,439

10.4%

-8.8%

人材事業

3,213

22.4%

3,024

21.8%

-5.9%

地盤調査改良事業

8,515

59.4%

8,020

57.9%

-5.8%

保証検査事業

147

1.0%

152

1.1%

+3.3%

建設テック事業

239

1.7%

240

1.7%

+0.5%

海外事業

234

1.6%

487

3.5%

+108.1%

その他

186

1.3%

269

1.9%

+44.6%

売上高合計

14,331

100.0%

13,848

100.0%

-3.4%

セグメント利益

 

 

 

 

 

コンサルティング事業

-175

-

-259

-

-

システム開発事業

-52

-

28

2.0%

-

人材事業

165

5.1%

151

5.0%

-8.2%

地盤調査改良事業

237

2.8%

271

3.4%

+14.3%

保証検査事業

-11

-

23

15.6%

-

建設テック事業

-11

-

-10

-

-

海外事業

-9

-

9

1.9%

-

その他

-181

-

-0

-

-

調整

-268

-

-245

-

-

セグメント利益合計

-308

-

-31

-

-

*単位:百万円。売上高は外部顧客への売上高。利益の構成比は売上高利益率。調整は、セグメント間取引消去、のれん償却額、全社費用の合計。

 

①地盤調査改良事業
減収増益。
これまで主力であった「柱状改良工法」に加え、らせん状の節を持つ安定した品質の補強体を構築する「スクリューフリクションパイル工法」の販売促進に努めたほか、戸建住宅市場だけに頼らない顧客層拡大に注力し、小型商業施設や低層マンション等に対応した「コラムZ工法」、また、地盤改良工法の拡販商品と位置づけ、「SDGs」にも関連する自然砕石のみを使用した「エコジオ工法」の販売を進めた。
土質調査試験事業を営む株式会社アースプライムは、大手ゼネコンからの大型造成工事等による土質試験や、大手建設デベロッパーからのボーリング調査の受注拡大に取り組んだ。
鉄道関連の土木基礎専門工事を主力とする株式会社東名は、大手ゼネコンからの受注工事を中心に、狭小、低空間での施工条件下で大口径掘削が可能な「TBH工法」や「BH工法」の受注を図った。
不動産事業を営む株式会社三愛ホームは、埼玉県の川越市・東武東上線を中心に、地元企業の特性を活かした不動産売買を進めたが、販売は下期に集中することとなった。

 

②人材事業
減収減益。
技術者派遣業および、製造業・流通業・教員向け人材派遣において、人材確保および派遣先企業開拓に努めた。
教育人材派遣が好調な一方、NEXT株式会社における心斎橋および静岡オフィスの事業譲渡により売上高が減少。SESや製造向け派遣は減収となった。

 

③システム開発事業
減収黒字転換。
ニアショア開発事業を中心に、ソフトウェア開発、FinTechおよび、IoT機器分野等での製品の開発・販売に努めた。
ITbookテクノロジー株式会社において利益管理体制強化により赤字幅が縮小した。

 

④コンサルティング事業
減収損失幅拡大。
マイナンバー制度やマイキープラットフォームへの対応等、過去から蓄積してきた顧客からの信頼・知見を活かし、中央官庁・独立行政法人・地方自治体等からのコンサルティング案件の受注拡大に努めた。
民間向けコンサルティングにおいては、企業が保有するレガシーシステムを分析・活用し、DⅩ推進を可能とする独自技術サービスの「Smart Tool」および、プログラミング言語の「COBOL」から、DX化のベースとなるオープンシステムでスタンダードとされている「JAVA」への自動変換ツールを幅広く提案した。
様々な社会課題の解決のため、あらゆる専門分野を有するメンバーが知見や経験を融合させて国内外の地域創生・再生に取り組むコンサルティング・ファーム&シンクタンクであるみらい株式会社では、行政機関や企業のパートナーとして様々な社会課題の抜本的な解決に向けて、戦略・企画の提案・受注に取り組んだ。事業拡大に伴い、販管費が増加した。

 

⑤保証検査事業
増収黒字転換。
保証部門の地盤総合保証「THE LAND」の販売促進に加え、住宅建築完成保証から派生する新築住宅建設請負工事と、賃貸住宅建物の品質検査および、それに付随した修繕工事の受注に努めた。

 

⑥建設テック事業
増収損失計上。
主力販売商品である「GeoWeb System」が、住宅建築にかかわる各種業務データの記録・管理の強化(不正・改ざん防止機能)や業務の自動化を図ることができるため、大手ハウスメーカーの基盤システムにも採用されており、本商品の販売に努めたほか、顧客の基盤システムとの連携による業務拡大や、カスタマイズの開発案件にも取り組んだ。
新規事業としては、建設、測量、エンタメ等の幅広い分野で活用できる3Dカメラ(4D Product)の日本市場の新規開発に取り組み販売促進に努めた。

 

⑦海外事業
増収黒字転換。
ベトナムのインフラ整備(護岸・道路・橋梁)、再生エネルギー発電事業の太陽光発電・風力発電の地盤調査および、下水道工事に関わる仮設工事等の受注に取り組んだ。
土木工事案件の受注の進捗は良好。

 

⑧その他事業
増収損失幅縮小。
不採算事業の整理実行により損失を大幅に縮小させることができた。

 

【3-3 財務状態とキャッシュフロー】

◎主要BS

 

23年3月末

23年9月末

増減

 

23年3月末

23年9月末

増減

流動資産

11,835

11,238

-596

流動負債

10,086

9,929

-157

現預金

3,794

3,929

+135

仕入債務

1,922

1,967

+44

売上債権

6,049

4,622

-1,426

短期借入金

5,464

5,186

-277

固定資産

4,935

4,824

-110

固定負債

3,707

3,443

-263

有形固定資産

2,497

2,443

-53

長期借入金

2,866

2,638

-227

無形固定資産

1,185

1,113

-71

負債合計

13,793

13,372

-421

投資その他の資産

1,252

1,267

+15

純資産

2,977

2,691

-286

資産合計

16,771

16,064

-707

利益剰余金

-2,109

-2,324

-214

 

 

 

 

負債純資産合計

16,771

16,064

-707

*単位:百万円

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

売上債権の減少等で資産合計は前期末比7億7百万円減少し160億64百万円。
長短借入金の減少等で負債合計は同4億21百万円減少の133億72百万円。
利益剰余金の減少で純資産は同2億86百万円減少の26億91百万円。
自己資本比率は前期末から0.9%低下し、14.7%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

23/3期2Q

24/3期2Q

増減

営業CF

659

860

+201

投資CF

-551

116

+668

フリーCF

108

977

+869

財務CF

607

-565

-1,173

現金同等物残高

5,998

3,711

-2,286

*単位:百万円

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

税金等調整前四半期純損失の縮小などで営業CFのプラス幅は前年同期に比べ拡大。
定期預金の払戻による収入の増加、有形固定資産の取得による支出の減少などで投資CFは同比でプラスに転じ、フリーCFのプラス幅は同比拡大した。
前年同期にあった株式の発行による収入がなく、財務CFは同比マイナスに転じた。
キャッシュポジションは前年同期末比で低下した。

 

【3-4 トピックス】

①地盤調査改良事業における建設DXを推進
23年1月、株式会社サムシングが、FCNT 株式会社と株式会社ティ・エム・エフ・アースが共同開発した遠隔臨場・遠隔支援向け「ウェアラブルカメラ」を地盤調査・改良作業の遠隔監視、作業記録に採用し、建設現場のDXを推進していくことで合意した。

 

(背景)
昨今、人手不足が進む中、建設市場おいて、現場の安全を確保し安定したサービスを提供するために、遠隔臨場・遠隔支援の導入による課題解決が求められている。特に、現場の安全を確保する上で、隣接する建物との距離や寸法、大雨の後に水没している箇所などがないかを確実に把握することは重要な事項となる。
地盤調査改良事業を営む株式会社サムシングにおいても、現場状況の確認は、作業員・施工管理が出向いて直接把握する必要があり、特に遠隔地の現場では移動時間が負担となっているほか、現場では、予期せぬトラブル発生時に現場状況を把握・検証する必要があるが、リアルタイムに把握することは非常に困難であった。

 

(遠隔臨場・遠隔支援向け「ウェアラブルカメラ」概要)
堅牢性に優れた FCNT株式会社 の法人向けスマートフォン『arrowsBZ02』と、株式会社ティ・エム・エフ・アース の遠隔臨場・遠隔支援ソフト『LINKEYES』で構成されている。通信帯域は「LINKEYES」の「超画像圧縮技術」により 250kbps に圧縮されるため、あらゆる環境で通信が途切れることなく、さらに部材の質感が分かるほどにクリアな画像と音声で目視と同等の遠隔臨場・遠隔支援を実現している。耐久性にも優れているので、天候や温度の変動が激しく、過酷な環境である建設現場においても安定した映像配信環境が提供される。遠隔においても、現場の状況を確実に把握・検証することができるため、未然の事故防止・安全確保が可能である。

 

(今後の展開)
株式会社サムシングにおいては、ウェアラブルカメラの活用により、移動時間の削減、リアルタイムでのトラブル発生時の把握や検証による改善策への活用による利益率向上を見込んでいる。ウェアラブルカメラを利用した実証を行っており、建設現場での様々な DX を推進する。
また、株式会社ティ・エム・エフ・アースとITbook テクノロジー株式会社との間で販売代理店契約を締結しており、市場浸透に向けた販売促進を行っていく。

 

②ため池破堤予兆防災 DX を推進
2023年1月、ITbookホールディングスと広島県三原市との連携協定により「ため池」の破堤要因の分析や予兆に関する実証実験を実施し、このため池に対しての破堤予兆を推測できることが判明した。

 

(背景および取り組み)
昨今、異常気象による豪雨や地震、老朽化等によるため池の決壊が年々増加しており社会的な問題となっている。農林水産省が 2018 年に実施したため池緊急点検では、1,540 か所のため池が応急措置等の対策が必要とされている。
そうした中、同社は三原市で破堤した「道重池」で要因の調査やモニタリングの実証実験を実施してきた。株式会社サムシングが得意とするボーリング調査(標準貫入試験)やSWS試験(スクリューウエイト貫入試験)を駆使し、堤体や堤体下部の土質や強度および、堤体自身の耐久性について調査を実施した。また、モニタリングは、ITbook テクノロジー株式会社が保有する総合気象観測センサー『Sensu』と気象観測クラウドシステム『みまわり伝書鳩』を活用し、降雨によるため池の水位や堤体内水位の上昇、雨天後の流れ込みよる水位上昇からピークアウトの調査・データ収集を実施した。
これらのデータを分析した結果、どの程度の水位上昇まで堤体が耐えられるか等の推測ができることが判明し、水位上昇時に適切な避難勧告や事前対策を実施することが可能であることが判明した。
同社では、引き続き調査・データ収集を進め、ため池問題の解決を目指す考えだ。

 

③ベトナム・ドンタップ省主催の投資セミナーへ日系企業代表として参加
2023年12月、在ベトナム日本大使館の主催で国交樹立 50 周年記念イベントのひとつとしてホーチミン市で開催された、ドンタップ省投資セミナーへ日系企業代表として参加した。

 

(背景)
2023 年は日本とベトナム国交樹立 50 周年であり、外務省はその関係をさらに深化・拡大させると公表している。同社グループにおいても、ベトナムへの地盤調査改良事業の進出や、ドンタップ省の職業紹介センターと「国際交流協定」を締結するなど、協力関係を深めてきた。
また、同社グループは、同省との協力関係の強化を図り、同社グループが得意とする「農業」「建設」「人材」分野において同省にとって有益なものにすべく検討を進めている。
今回のドンタップ省投資セミナーは、ドンタップ省と日系企業や投資家との間の友好協力関係をさらに強化する目的として開催された。同社は日系企業代表として、現状の取り組みを報告。特にドンタップ省が推進している農業のDX化について、ITbook テクノロジー株式会社の技術である『温調みつばち』(※)を中心に報告した。
引き続きドンタップ省との協力関係を促進することで、技術力の向上と、同省の発展に協力する考えだ。

 

※温調みつばち
施設園芸向けの自動制御システムで、VPN通信網とクラウドサーバを利用してどこからでも気象データ閲覧や制御できる。各データをクラウドにて保存管理し、パソコン、スマートフォンで操作する。室温や日射の制御はもちろんのこと、CO2量の調整、溶液の供給制御なども可能である。

 

④AI を活用した地盤改良工事関連の特許を取得
2023年12月、株式会社サムシングが、画像処理 AI を利用したボーリング「コア」判定アプリケーション『MARCRAY』において、建設業界初となる AI を活用した技術・製品での技術審査証明を取得し、同技術に係る特許を取得した。

 

(『MARCRAY』概要)
セメントを用いる地盤改良の品質担保となるボーリング「コア」の品質を安定的に判定するため、株式会社サムシングの過去のデータを用いて独自に開発した、画像処理 AI による品質判定アプリケーション。
特許を取得した技術は、現場で取得し AI が解析したデータを自動でサーバーに保存される技術が含まれており、トレーサビリティ
(追跡可能性)を確保することで、品質やデータの確実性を担保するもの。
更なる品質の向上および工期短縮による効率化、ならびに建設業界の社会課題でもある人手不足による省人化等を解決するため、AI変更による精度向上やコストダウンを目的とした再開発を進めている。
また、『MARCRAY』は、AI が熟練技術者と同等の判断を行うため、若手技術者の技術力向上を目的とした教育ツールへの利活用が可能である。将来的には外販も視野に入れ、人手不足等の業界が抱える課題の解決を目指す。

 

4.2024年3月期業績予想

【4-1 業績予想】

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

30,528

100.0%

34,400

100.0%

+12.7%

40.3%

営業利益

739

2.4%

1,000

2.9%

+35.2%

-

経常利益

708

2.3%

900

2.6%

+27.0%

1.3%

当期純利益

162

0.5%

500

1.5%

+207.7%

-

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

増収増益を予想
売上高は前期比12.7%増の344億円、営業利益は同35.2%増の10億円の予想。
第2四半期実績の進捗率は売上・利益ともに低水準だが、コンサルティング事業、システム開発事業など、売上および検収が第4四半期に集中する傾向があるため。

 

5.前 俊守社長へのインタビュー

前 俊守社長に、同社の競争優位性、中期経営計画のポイント、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

Q:まず始めに、ITbookホールディングス株式会社の競争優位性についてお聞かせください。

 

大きく分けて二つあると考えています。

 

一つは、「川上から川下まで一気通貫で自社サービスを提供できる点」です。
コンサルティング事業により川上から入って案件を受託し、これを具体的なサービスやソリューションとして形にして提供することで事業を拡大させることができます。

 

例えば、ITbookホールディングス株式会社と広島県三原市との連携協定により「ため池」の破堤要因の分析や予兆に関する実証実験を実施したのですが、これも、まず、みらい株式会社のコンサルティングを広島県三原市がご評価くださり、具体的なソリューションとして、株式会社サムシングの得意とするボーリング調査やITbook テクノロジー株式会社が保有するテクノロジーを活用して、調査やデータ収集を行いました。これらのデータを分析した結果、どの程度の水位上昇まで「ため池」の堤体が耐えられるか等を推測できることが判明し、水位上昇時に適切な避難勧告や事前対策を実施することが可能であることが判明しました。
近年、異常気象による豪雨や地震、老朽化等によるため池の決壊が年々増加しており社会的な問題となっていますが、「社会問題解決企業」として、コンサルティングにとどまることなく、実証までのソリューションをワンストップで提供できるのは、当社グループの強力な競争優位性であると考えています。

 

もう一つは、「現場を知っている」ことです。

 

現在DX推進は、日本全体の喫緊の課題ですが、うまく進まないケースも目にします。
この原因の一つが、お客様のためにDXを担当する受託開発会社の多くが、現場を知らないことです。DXについての知識や方法論は知っていても、現場を知らないと、どこをどのようにDX化すれば効率改善につながるかを理解していることにはなりません。
これに対し当社グループは、株式会社サムシングを中心として現場を熟知していますので、現場の課題を、内部のテクノロジーを用いて解決することにより、低コストで生産性を向上させることができますし、今度はこのテクノロジー、ソリューションを外販することで事業の拡大につなげることもできます。

 

 

Q:続いて、中期経営計画による成長戦略のポイントをお話しください。

 

現在、2023年3月期から2025年3月期の3年間の中期経営計画を推進中です。
この3年は、ITbookホールディングスグループの変革期と認識しており、「選択」と「集中」による事業再編、財務体質強化に取り組み、持続的企業価値向上を実現いたします。

 

まず、グループ経営戦略としては、赤字子会社の統廃合や閉鎖、新株の発行とシンジケートローンの組成を実行したほか、「売上重視」から「利益重視」の経営への転換を進め、財務基盤増強・利益拡大に取り組んでいます。
また、4つのコア事業を中心に、シナジー効果を追求し、持続的企業価値向上を図ります。同時に、次のコア事業候補として4つの育成事業を展開していきます。

 

*コンサルティング事業
受注は着実に伸長しています。人手不足の状態ではあるのですが、案件は豊富なので案件を選ぶことができており、粗利率は上昇しています。
トップライン拡大に向け、人材の拡充に注力するほか、2025年3月期に向け、支店・サテライトオフィスの設置によるサービス提供エリアの拡大・強化を図ります。

 

*システム開発事業
ニアショアやラボ/SES事業は人材拡充も進んでおり、順調に成長しています。
新商品の開発および拡販については、前期、ITbookテクノロジー株式会社において会計処理の問題が発生したため、現在組織を再度作り直している状況です。

 

*人材事業
NEXT株式会社に関しては、収益性向上を第一義に、高単価案件の選別受注を進めており、効果が表れています。
株式会社イストの福岡拠点、株式会社アイニードの茨城拠点も順調に成長していますが、株式会社アイニードの単純作業は競争も激しいため、売上は伸びているのですが、収益性については改善が遅れています。
教育人材派遣やエンジニア派遣など、エッジの利いた派遣や紹介は非常に順調です。

 

*地盤調査改良事業
各社ともエリア拡大や自社班体制構築による体制強化に取り組んでおり、順調な進捗です。
株式会社アースプライムもまだ売上規模は小さいものの、確実に成長しています。

 

*海外事業
育成事業の中でも、特に高成長を期待しているのは海外事業です。
ベトナムにおける地盤調査、改良工事から事業機会が拡大していますが、ITbookテクノロジー株式会社の技術を用いて、ビニールハウスの温度管理など、農業の生産性をDXやIoTで向上させる取り組みも始まっています。
そのほか、外国人実習生の受け入れも行っています。提携する省も少しずつ広がっており、今後、ベトナムでの売上・利益は大きく成長するものと見込んでいます。

 

 

Q:成長実現に向けた課題は何でしょうか?

 

前期、職員の不正、不透明な会計処理といった問題が露呈し、株主を始めとしたステークホルダーの皆様には多大なご迷惑をおかけしたことを改めて、深くお詫び申し上げます。
こうした事態を受け、管理体制強化に向けて人材を拡充したことなどから、体制整備は順調に進んでいます。

 

成長戦略の上では、やはり各事業における優秀な人材の確保、人材育成が課題です。
そこで、HRコミュニケーション部を2022年に立ち上げ、グループ約2,000名のタレントマネジメントを開始しました。
今まで埋もれていた人材や才能を発掘し、グループの実力底上げを図ります。
採用に関してもHRコミュニケーション部中心に様々な手法を展開して、人材確保に取り組みます。

 

地盤調査改良事業においては、株式会社サムシングの教育制度がある程度完成しているので、未経験者でも1-2年で一人前に育成することができますが、現在、社内学校の創設を準備しています。
現在、高齢化に伴って現場監督や職人の不足が顕著です。そこで学校を立ち上げ、しっかりと技術、知識を習得してもらい、早く現場に出て経験を積んでもらおうと考えています。

 

 

Q:M&Aについての戦略はいかがでしょうか?

 

一つは、地盤調査改良事業における営業品目の拡大です。
2022年にグループ会社化した株式会社東名は、鉄道関連施工工事を得意領域とし、他にも土木造成工事や基礎杭工法等、当社グループが積極的には展開してこなかった技術を有しており、地盤関連サービスの拡充と事業規模および営業・技術面等の融合による事業機会の拡大を目的にM&Aいたしました。
このように、地盤調査や改良工事の同業他社はもちろんですが、それのみではなく、その「横の業界」に対するM&Aを常に検討しています。
例えば解体業界です。これからは再開発案件が中心になってきますので、解体、杭抜きなどを手掛けている企業のM&Aによる営業品目の拡大は収益源の多様化、事業機会の拡大につながります。

 

もう一つは、コンサルティング事業やシステム開発事業における人材確保に向け、M&Aによってスピーディーかつ確実に人材を増強することを考えています。

 

今後も積極的にM&Aに取り組んでまいります。

 

 

Q:ありがとうございます。では最後に、株主・投資家に対するメッセージをお願いします。

 

経営統合によりセグメント、子会社も多く、投資家の皆様の目には、「わかりにくい企業」と映っているかもしれませんが、最初に申し上げた広島県三原市の事例のように、事業の幅が広いがゆえに、シナジー効果を生み出すことのできるチャンスを多数有しています。今後もどんどん具体化してまいります。
また、成長のための投資も着実に実行してまいりますが、配当も可能な限り早期に実施したいと考えています。

 

「社会問題解決型企業」として付加価値の高いサービスを社会に提供し、豊かな社会の創造に貢献するとともに、企業価値を向上させ株主・投資家の皆様のご期待にお応えしてまいりますので、是非中長期の視点で当社を応援していただきたいと思います。

 

6.今後の注目点

同社では経営統合を機に、新たなグループ経営理念、グループフィロソフィーを掲げた。これらの考え方を全社員に浸透させるため、HRコミュニケーション部が中心となり、1時間ほどの前 俊守社長のメッセージビデオを全社員が視聴している。また、社員一人一人に自分事として理解してもらうために、社員同士でフィロソフィーについてのディスカッションを行うことも含めた研修を実施することも計画しているそうだ。
社員のベクトルを一致させて事業間シナジーを発揮し、中期経営計画の計画数値を達成することができるかに注目していきたい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

7名、うち社外取締役4名(うち独立役員4名)

監査役

3名、うち社外監査役2名(うち独立役員1名)

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2023年6月30日

 

<基本的な考え方>
当社グループは、透明性の高い健全な経営を実施し、企業倫理と適法性を重視し、経営上の迅速な意思決定、経営監視機能の整備、リスク管理の徹底、コンプライアンス(法令等遵守)体制の充実およびディスクロージャー(経営情報の開示)の充実をコーポレート・ガバナンス(企業統治)の基本方針として、株主の付託に応えることを経営陣のみならず全社員が重要課題として認識して、これを実践する体制の整備・施策を推進しております。

 

<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社はグロース上場企業として、コーポレート・ガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。

 

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