ブリッジレポート
(7046) TDSE株式会社

グロース

ブリッジレポート:(7046)TDSE 2024年3月期第2四半期決算

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東垣 直樹 社長

TDSE株式会社(7046)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

サービス業

代表者

東垣 直樹

所在地

東京都新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー27階

決算月

3月

HP

https://www.tdse.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,935円

2,200,000株

4,257百万円

9.4%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

10.00円

0.5%

94.30円

20.5倍

903.78円

2.1倍

*株価は12/12終値。発行済株式数(自己株式含む)、DPS、EPSは24年3月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2020年3月(実)

1,377

126

127

90

44.08

10.00

2021年3月(実)

1,323

50

68

190

93.11

20.00

2022年3月(実)

1,723

217

219

148

72.19

10.00

2023年3月(実)

2,415

265

267

168

81.76

10.00

2024年3月(予)

2,589

281

281

195

94.30

10.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。21年3月期のDPSには記念配当 5.00円、特別配当10.00円を含む。

 

TDSE株式会社の2024年3月期第2四半期決算概要、中期経営計画「MISSION 2025」などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画「MISSION 2025」
3.2024年3月期第2四半期決算概要
4.2024年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 24年3月期第2四半期の売上高は前年同期比14.5%増の12億46百万円。両事業とも2桁の増収。営業利益は同6.7%減の1億15百万円。売上増に伴い売上総利益も同9.2%増加したが、成長に向けた積極的な人材採用やプロダクト開発に向けた投資により減益となった。四半期純利益は同40.4%増の80百万円(前年同期は特別損失に特別功労金40百万円を計上)。

     

  • コンサルティング事業は前年同期比13.1%増収。既存顧客の深耕や新規開拓を進めた。TDSEネットワークを活かして、新規顧客開拓が前年同期比4割増と大きく伸長した。プロダクト事業は前年同期比26.4%増収。既存客売上はほぼ前年並みながらも、大手金融機関より新規開発案件を受注し、新規顧客売上は前年同期の2.6倍となった。

     

  • 業績予想に変更は無い。24年3月期の売上高は前期比7.2%増の25億89百万円、営業利益は同5.7%増の2億81百万円と、ともに連続して過去最高更新を予想。中期経営計画「MISSION 2025」の初年度となる今期は、組織強化を目的とした人的資本への投資とプロダクト開発投資で戦略投資額は前期比約1.5億円の増加を計画しているため、利益成長は1ケタ台の計画。配当は前期同様10.00円/株の予定。予想配当性向は10.6%。

     

  • 中期経営計画「MISSION 2025」の目標達成に向けて、コンサルティング事業においては、引き続きリーディング人材育成の仕組み構築に注力するほか、社内KPIの策定と可視化、管理を進め、案件獲得に向けた仕組みの強化を図る。プロダクト事業においては、ソーシャルメディアマーケティング事業において分析ツールのラインナップ強化を、 カンバセーショナルAIソリューション事業において自社製品の開発強化を図る。

     

  • 上半期の最高売上高を更新し前年同期比で増収であったが、前下期比では減収であったが、前期第3四半期、第4四半期に大型案件を受注したためということだ。

     

  • 東垣社長によれば、「中長期の視点でプロダクトサービスを第2の柱に育成していくことを主目的とする中期経営計画は順調に進展している。必要な投資をしっかりと実施しながら、目標に対しては可能な限り前倒しで着実に実績を挙げていく。」とのことだ。リーダー人材育成プログラムや新製品リリースなどの施策の進捗に注目していきたい。

     

1.会社概要

国内最高峰のデータサイエンティスト集団。AI技術を核に、メンバーそれぞれが持つ業界トップクラスの経験・実績と高度な専門スキルにより、クライアント企業の変革をサポートしている。
安定成長事業の「AIノウハウを軸としたコンサルティング事業」と、高成長事業の「AI製品等によるプロダクト事業」の2つの事業で成り立っている。

 

【1-1沿革】

2013年、企業経営にAIやデータ活用が求められる時代の到来を予見し、ビッグデータ事業を展開するために株式会社テクノスジャパン(東証プライム、3666)がテクノスデータサイエンス・エンジニアリング株式会社(現 TDSE株式会社)を設立。同年には早稲田大学とビッグデータ活用研究に関する産学連携を開始した。
2014年9月、米国NetBase Solutions, Inc.と業務提携し、グローバル規模のソーシャルデータ分析サービスを開始するため、NetBase社AI製品「Netbase」(現Quid Monitor)の取扱いを開始した。
2015年1月に統計アルゴリズムを活用した同社独自のAI製品「scorobo」の販売を開始。
会社設立直後は、AIやデータ活用に関する世間の認知・理解も低かったため顧客企業側の反応も鈍かったが、徐々に海外を中心に多くの事例が情報として伝わるようになると、同社サービスに対する関心が急速に高まり引き合いも増加、売上・利益は順調に拡大していく。同時に同社サービスが高く評価され、2017年9月には株式会社エヌ・ティ・ティ・データ、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社が資本参加し、業務提携契約を締結した。
2018年11月にCognigy GmbH社と業務連携し、Cognigy社の対話型AIプラットフォーム「Cognigy」のグローバル販売契約を締結。
同年12月、東証マザーズに上場した。
2021年12月、TDSE株式会社に商号変更。
2022年4月、市場再編に伴い東証グロース市場に移行した。

 

【1-2 理念】

国内最高峰のデータサイエンティスト集団として、以下のようなビジョン・ミッション・バリューを掲げており、社員一人ひとりがその実現に向けて、 主体的に考え、行動する組織 に変革することを目指している。

(同社資料より)

 

【1-3 市場環境】

◎AIビジネス市場
AIビジネス市場も加速度的に拡大している。2027年にかけ、CAGR9.3%で成長し、同年の市場規模は約2兆円に達する見込みである。
同社の主力領域である「分析サービス」は、市場規模が小さいものの、高度な技術を要するため、引き続き自社の強みを発揮できる領域として注力する。一方、「コンサルティング」「アプリケーション」「プラットフォーム」など市場規模が大きく、成長力の高い領域は、事業拡大に向け一段と注力する考えだ。

(同社資料より)

 

◎ビジネス領域
同社の主力領域である金融・流通・情報通信・エンターテイメント業界でのノウハウを企業資産として確立している。
特定の産業にこだわることは無く、各業界でのAI活用度や動向を調査のうえ、時代変化とともに新たに注目される領域への展開も視野に入れている。

(同社資料より)

 

【1-4 事業内容】

安定成長事業の「AIノウハウを軸としたコンサルティング事業」と、高成長事業の「AI製品等によるプロダクト事業」の2つの事業で成り立っている。
報告セグメントは、ビッグデータ・AIソリューション事業の単一セグメント。

 

 

 

(右図は同社資料より)

 

(1)各事業の概要
①コンサルティング事業
コンサルティング事業本部が、データ経営を目指す企業向けにAIを中心とした統合型ソリューションサービスを提供している。
企業のデジタルトランスフォーメーションを共に推進していくため、顧客企業が進める事業戦略に沿う形でデータ活用のテーマ抽出→データ分析→AIシステム実装に加え、教育まで一気通貫したコンサルティングサービスを提供している。

(同社資料より)

 

DX/AIアセスメント

DX推進に向けて、顧客が目指す姿と現状の課題を整理し、それら課題の中からデータ分析で解消できる課題の特定と分析テーマの設定を支援する。

さらに洗い出された複数の分析テーマについて、同社の知見を活かしながら期待できる効果と実行難易度によって優先度付けを行う。

DXコンサルティングサービス

DX/AIアセスメントや分析支援と連動しながら、ビジネス価値創出に向けてロードマップを描き、実行フェーズへ移行する支援を行う。

同社のデータサイエンスとエンジニアリングの知見を元に、データ分析およびデータ活用に関連するシステム基盤や運用体制なども考慮した全体像を描くことを支援する。

分析設計/分析

分析テーマに対して、具体的な分析やAIの設計をデータサイエンティストが策定し、実際に分析やAIの構築を実施する。

顧客のデータ活用人材の育成の一環として、具体的な分析テーマをもとに顧客に対するOJTを実施するケースもある。

システム構築/実装

データサイエンティストが構築したAIや分析プロセスについて、エンジニアがシステムへの実装、基幹システムとの連携などを支援する。

ロードマップに基づく分析基盤の構築や基盤上のデータ整備なども実施する。

保守/チューニング

実装したAIやシステムの保守・チューニングを行う。

教育

DXの全社推進やデータ活用人材の内製化の要望に対応するため、同社のノウハウを活かした実践的な研修コンテンツ、育成コンテンツを提供している。

 

②プロダクト事業
プロダクト事業本部が、同社独自AI製品「QAジェネレーター」や他社AI製品などの製品販売、または業務特有のAIモジュール(※)を顧客企業向けに提供し、使用料及び運用保守料を受領するサービスを推進している。収益基盤を築き上げるサービスとして注力している。

 

主要製品は、SNS解析ツールの「Quid Monitor」(旧NetBase)、業務システムと連携し人との対話(自然言語)よりルーティン化された業務を自動化する仕組みを提供する対話型AIプラットフォーム製品「Cognigy」など。また、生成AI分野の競争力強化にむけて、独自生成AI製品である「TDSE QAジェネレーター」のSaas化を進めるなど、ラインナップ強化に力を注いでいる。
また、画像AI「TDSE Eye 」は企業との検証を進めているが、マーケット動向や企業ニーズの必要性を精査し、需要が高いと考えられる場合は機能改良も検討する。

 

※AIモジュール
異常検知や物体認識などのAIモデル(未学習モデルも含む)であり、業務システムやアプリケーション等に組み込む、AIシステムの根幹をなすもの。

 

◎自社製品

画像AI「TDSE Eye 」

 

画像AIを用いた最先端の異常検知サービス。非専門家でも最先端の技術を利用できる画像解析プラットフォーム第一弾として2022年11月にリリースした。

 

(主な特徴)

*正常画像のみで利用可能

異常画像が豊富にない/蓄積しづらい業務でも活用可能。

 

*少量のデータでも利用可能

データが少量しかない企業や業務への適用が可能。

 

*エッジデバイスへの対応

ネットワーク環境が弱い、応答時間がシビアといった業務への対応が可能。

 

*価格優位性

コンサルティング事業とのマーケティング・営業シナジーや開発体制の完全内製化による価格優位性を発揮。

生成AI「TDSE QAジェネレーター」

 

オントロジーと生成AI技術等を活用した同社独自開発の生成AIサービス。2023年11月にはSaaS版をリリースし、顧客の利便性を高めるとともに安定収益化を進めている。

 

(主な特徴)

*膨大なQAの自動生成

規程、基準書やマニュアルなどのドキュメントからAIが膨大な組合せのQ(質問)とA(回答)を自動生成する。

 

*NLP(※)の精度向上

他社含め多くのチャットボット製品で利用されているNLPの精度向上が可能。

 

*精度の高さ

対話型AIと組み合わせることにより、より複雑な問い合わせ業務にも精度高く対応が可能。

 

*高い安全性

セキュアな環境で個別に企業独自のQAを作成するため、学習データが外部へ流用される心配が不要。

同社ではこれまでディープラーニング技術など機械学習等を活用した同社独自のAI製品「scorobo」を利用し、送電線異常検知に関する「scorobo for 送電線AI異常検知」を複数の電力会社に提供するなど、顧客サービスに合わせて AI製品化してきた。
今後は「Scorobo」シリーズは収束し、「TDSE」を冠したプロダクト名称で展開する。

 

◎ 他社AI製品等を活用したサービス
先進技術を搭載した製品を活用している。

ソーシャルメディアリスニングサービス

「Quid Monitor」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SNSアカウント分析ツール

「Quid Compete」

 

米国シリコンバレー発のQUID社(旧NetBase QUID社)が提供するAI製品。

 

Quid Monitorは、各ソーシャルメディアベンダーとオフィシャル契約を締結し、X(旧Twitter)・Facebook・InstagramなどSNS上にあるテキスト・画像を収集・分析する高性能なソーシャルリスニングスツールで、世界トップクラスの実績と性能を保有している。

 

(主な特徴)

*海外で高く支持されているブランドで、コカ・コーラ、ニューヨークタイムズ、ウォルマートなど多くのグローバル企業が利用している。

*豊富な対応メディア。

*膨大なSNSデータをオフィシャル契約で提供。

*50ヶ国以上の言語対応。

*リアルタイムで多種多様の分析が可能。

*標準装備のAPIで他システムとの連携が容易。

 

2023年7月6日に取り扱いを開始したQuid Compete(旧 Rival IQ)は、企業サイトのURLを登録するだけで、競合他社の公式SNSアカウントからデータを自動収集・分析することが可能な製品。

 

(主な特徴)

*自社・競合他社サイトの URL を入力するだけで Twitter・Instagram・Facebook・YouTube・TikTok・LinkedIn 等の SNS 公式アカウントからデータを自動取得。

*公式 企業SNSアカウントから自動で SNS マーケティングに必要な指標(フォロワー数、投稿数、いいね、リプライ、リツイート、エンゲージメントなど)の比較分析が可能。

 

TDSEは、アジアパシフィックの国内正規販売パートナーとなっており、日本生命、日本航空、TOTO、読売テレビ、日経CNBC等累計100社を超える国内企業へ提供している。

 

販売にあたっては代理店販売網を強化しているが、顧客企業は適切な使い方のサポート・コンサルを求めていることから、自社販売も重視し、デジタルマーケティングにも注力している。

 

従来は、社が無償APIデータ提供を行い、SNS分析ツールのコモディティ化が進み、国内でも安価なサービスが増えたが、2022年のイーロン・マスク氏による買収に伴い、従来行ってきた無償使用が不可となり、有償化へ方針変換となった。

無償サービスを享受してきた安価な製品は淘汰される時代となったが、TDSEが取扱うQuid Monitorは使用契約を締結していることから、市場での優位性を確保できると考えている。

対話型AIプラットフォーム「COGNIGY」

 

 

ドイツ(デュッセルドルフ)発のCognigy社が提供する製品。

 

最先端のNLPとNLU(※)技術を強みとし、短期間で拡張性の高い対話型AIの設計/開発を可能とするプラットフォーム。

IBMやGoogleといった競合が存在するエンタープライズ型対話型AIの国際マーケットで、リーダークラスの称号を調査会社ガートナーが3年連続で認証している。

欧州自動車メーカー、銀行、航空会社など、グローバルで500社以上が導入しており、顧客は拡大中。

 

(主な特徴)

*OpenAI社のGPT及びTDSE独自の生成AIと連携し、自然言語処理の精度向上に必要な膨大なQAを自動生成。

*多言語対応のバーチャルエージェントは、機械翻訳と連携し100ヶ国語以上をサポート。日本語の会話フローのみで、複数言語展開が可能。

*ハンズオーバー機能を標準装備し、有人チャットへシームレスに展開。オペレーター向けに回答支援や、ルーティン業務(個人認証など)を自動化する機能を搭載し、業務負荷の軽減を実現。

*ビジネスユーザーが簡単に開発可能となるローコード仕様。GUIによるグラフィカルなエディターでAIエージェントを迅速かつ簡単に作成。

 

TDSEはアジアパシフィックの正規販売パートナー。国内実績はNTTデータ、熊本市、川崎重工、はせがわなど。

 

※NLP(Natural Language Processing)
自然言語処理。コンピューター・サイエンス、人工知能 (AI)、言語学、およびデータ・サイエンスなど、さまざまな分野の方法論を駆使して、コンピューターが人間の話し言葉と書き言葉の両方を理解できるようにすること。

 

※NLU(Natural Language Understanding)
自然言語理解。自然言語処理の一分野であり、テキストや音声の構文・意味解析を使用して文の意味を判別すること。

 

TDSEは、米国シリコンバレーや欧州・アジアを始めとして、国内外にあるベンチャー企業のリサーチを進めている。
調査対象企業が持つテクノロジー及びプロダクトが、TDSEの新たなソリューションサービスとして導入が相応しいと判断した場合は、ビジネス化を図ることとしている。海外ベンチャー企業調査についても、調査協力体制を構築している。

 

(2)顧客企業
①概要
2013年の設立以来、リクルートをはじめとするサービス業や金融業の顧客を中心としつつ、世界展開を進める大手アパレル、大手総合スーパーなど小売・流通業の顧客も含め200社強にサービスを提供している。
経営層やAI事業推進者とのビジョン交換・議論を頻繁に行うほか、システム構築も含めたデータ経営支援ビジネスを展開していることから、中長期にわたる強固な関係を構築することができている。

 

特にリクルートグループに関しては、「商品需要予測 」「広告宣伝費最適化」「Webサイト商品レコメンド」「UI・UX改善解析」「商品投資効果分析」「類似画像分析」など、各事業会社の多様なAI構築を手掛けており、23年3月期売上高の約26%をリクルートグループ向け売上高が占めている。

(同社資料より)

 

②導入実績
金融業界始め、多くの業界・業態でイノベーション実現に向けた支援実績を有している。

 

2021年3月期以降は、コロナ禍で対面販売が減少する一方でオンライン販売が急伸する中、「需要予測」「ダイナミックプライシング」「食品ロス削減」といったニーズが高まり、小売・流通企業の案件が増大している。コロナ収束後もこうした需要は引き続き拡大すると見ている。
今後は、顧客企業との継続した関係構築および拡大を図るとともに、業界ごとの市場の成長性や規模などを考慮しながら、コンサルティング事業は大企業を中心に展開していく。AI製品等のプロダクト事業は、大企業だけでなく、中堅企業もターゲットにした幅広い新規顧客の開拓を図る。

 

<データサイエンス活用事例>
上記のように多くの業界・業態でイノベーション実現に向けた支援実績を有している。
以下に、同社のデータサイエンス活用事例を紹介する。

 

◎商品需要予測による生産・在庫管理

業種

小売・流通

業務

時系列予測

課題

店舗在庫適正化

 

(現状)
商品ごとの日時(1週間先まで)の売上予測を行い、店舗の最適な在庫管理を行う必要性があった。
また、商品ごとの月次(3か月先まで)の売上予測を行い、製造における最適な生産計画を立てることも同様に課題であった。
さらに、店舗の在庫管理や製造における生産計画は属人性が高く、AIによるオートメーション化を行いたいと考えていた。

 

(アナリティクス・AIソリューション)
商品ごとの過去の売上やその他の外部データを用いていくつかのモデル(LightGBM、Prophet、CatBoost)を作成し、より精度の良いモデルで予測を行った。

 

(効果)
*売上に基づく日時、月次の需要予測が可能になった。​
*不要な在庫を減らし、過剰生産が抑制された。

 

◎ダイナミックプライシング

業種

小売・流通

業務

価格適正化

課題

価格適正化

 

(現状)
スーパーなどの小売店では商品の売れ残りを防ぐために、商品の値下げなどを行うが、価格を下げすぎると利益が減り、値下げ幅を小さくしすぎると購買に至らず、さらに廃棄商品が増えてしまうという課題を抱えている。
このケースでは、これまで値下げの判断やタイミングは担当者の経験に依存していたが、利益を最大化する売値や値下げ価格をデータに基づき決定するためにダイナミックプライシングの導入を検討していた。

 

(アナリティクス・AIソリューション)
①各時点での需要予測と②動的計画法を用いたダイナミックプライシングを実施した。
*購買データと商品の在庫状況から機械学習を用いて各時刻の売上を予測
*販売期間を等分し各時刻での利益の総和を最大化する価格列を算出

 

(効果)
*ダイナミックプライシングのアルゴリズムにより、適切な値下げ幅を算出することで利益を最大化することに成功した。
*担当者の属人性に依存しない値下げが可能になった。

 

(3)ビジネスモデル
データ利活用やDX推進を中心とした顧客課題解決型のコンサルティング事業と、そこから得たノウハウを元にしたAI製品やサービスの提供を通じたプロダクト事業の両軸で「安定かつ収益性の高いビジネスの実現」を目指している。

 

 

【1-5 特長・強み・競争優位性】

同社の主な競争優位性は以下のとおり。

 

(1)国内最高峰のデータサイエンティスト集団
役職員161名のうち(2023年10月時点)、130名、約8割がデータサイエンティストとエンジニアで構成されている。更に、データサイエンティスト職の9割が理系修士以上、その内5割が後期課程進学者または博士学位取得者である。
出身校の上位10校は、東京大学大学院、京都大学大学院、早稲田大学大学院等の有名大学。
素粒子・宇宙物理・航空工学など専門的に科学教育を受け、先進国の研究所で解析技術・知識を得た多彩なデータサイエンティストが多数おり、国内最高峰のデータサイエンティスト集団と自負している。

(同社資料より)

 

こうした優秀な技術者の採用・育成と組織活性化に向けた環境作りにも注力している。

 

技術要員の採用および育成を強化するため、コンサルティング事業本部直下に『人財強化専門組織』を設置し、組織強化に取り組んでいる。
教育に関しては、創業時より人材強化に繋がる教育ノウハウが豊富に蓄積されており、人材育成に関する仕組や教育風土に優位性を有している。研修の振返りをしっかり行うことで改善に活かし、先端技術・強化領域も取り込むことで教育コンテンツのレベルアップを図っている。研修に対する理解向上を狙いとして、専門講師を採用し、同社の方針・狙いに沿った研修を実行している。
スキル向上と業績成果に応じた解像度の高い人事評価/報酬制度を策定、運用しているほか、社員ロイヤリティを定期的に測定し、各階層とのコミュニケーションを大事にしながら、向上を図っている。

 

このように、個のプロフェッショナリズムとチームでの成長が実現できる環境の整備に努めている。

 

(2)ビジネス課題ファーストな技術力と実績
多様なデータからアルゴリズムや分析手法の最適解を見つけ出して技術力及びノウハウを蓄積。企業の課題解決に結びつけている。

 

創業以来、様々な業界・業種におけるコンサルティングにより経験してきたプロジェクト実績、AI技術、ノウハウはライブラリー「scorobox」に蓄積している。これらを同社の知的財産として活用することで、コンサルティングサービスにおいてはコンサルティングの高度化・効率化を図っているほか、AIモジュール適用によって自社製品や自社サービスへの適応を進めている。
300を超えるライブラリーを活用することで経験の浅い技術社員の早期育成にも寄与している。

(同社資料より)

 

2.中期経営計画「MISSION 2025」

【1-3市場環境】で触れたように、DX市場、AIビジネス市場ともに今後も急成長が見込まれる。
そうしたフォローの風を受け、各事業の経営指標及び目標、戦略・施策を含む中期経営計画「MISSION 2025」を策定・公表した。

 

【2-1 中期経営計画「MISSION 2025」概要】

(1)位置づけ・テーマ
同社では「データに基づいて、意思決定を高度化する」というミッションの下、プロダクト事業を第二の事業の柱として確立させ、
6年後の2029年3月期に「プロダクト事業の売上高10億円以上を目指す」という中長期目標を打ち出している。
2023 年 4 月から2026 年 3 月の 3 ヶ年を対象とする『MISSION2025』は、2029年3月期を見据えたその第1フェーズであり、「コンサルティング事業の持続的な成長を達成し、並行してプロダクト事業を全社挙げて強化する」ことをテーマとしている。

 

(2)方向性
上記テーマの下、各事業の方向性は以下のとおり。

コンサルティング事業

創業以来10年間、大手企業を中心に個社の事業課題に対して、データ/AI活用テーマの抽出~データ分析/AIモデル開発~システム実装、教育まで一気通貫でサービスを提供しており、今後も、更に人的資本を強化し、持続的な成長を目指す。

プロダクト事業

コンサルティング事業において、大手企業で多くのニーズと実績がある複数のテーマから、多くの企業で展開可能なテーマを抽出し、サービスラインナップを強化する。

 

なお、コンサルティング事業は、大規模案件を獲得するという同社戦略の狙いもあり、資金力のある売上高1,000億円以上の大企業約1,300社を対象とする。プロダクト事業は、大企業に加え、中堅企業も対象とできる製品サービスをそろえており、導入企業数が拡大することで安定的な売上成長が図れるビジネスモデルである。

 

(3)強化策
同中期経営計画の目標達成に向け、組織改編を実行した。

コンサルティング本部

製品ラインナップ強化に向け「自社プロダクト開発組織」を新設した。人員は8名でスタート。画像AI「TDSE Eye 」、生成AI「TDSE QAジェネレーター」等自社製品ラインナップ強化を進める。

 

売上拡大にむけた採用強化と人材育成に引き続き注力する。

プロダクト本部

「ソーシャルメディアマーケティンググループ」を新設した。人員は3名からスタート。Quid Monitorを用いた分析サービスから、広告/運用領域へと、事業領域を拡大する。

 

「カンバセーショナルAIソリューショングループ」を新設した。人員は4名からスタート。生成AI「TDSE QAジェネレーター」の機能充実を推進するほか、対話型AI「Cognigy」の販売力を強化する。

 

 

【2-2 各事業の取り組み】

(1)コンサルティング事業
「提携パートナー企業のネットワーク実績と信頼によるTDSEネットワーク 」と「顧客の信頼を獲得する強み」をベースに、以下の主要施策に取り組む。

 

(主要施策)
①顧客信頼を獲得できる強みのさらなる向上
ミッション「データに基づいて意思決定高度化する」の実践として創業以来積み上げてきたビジネスにおけるデータ活用のノウハウを更に蓄積するとともに、「データの活きた深い理解の促進」「ビジネス目的に沿ったAIや分析デザイン力強化」「ビジネス成果創出に向けたコミュニケーションと行動の活発化」を進める。

 

②リーディング人材の育成体制作りと技術人材獲得
独自育成プログラムの拡充により早期のリーダー育成体制作りを図るとともに、技術人材の採用を強化する。
リーダー数拡大のためには母数増(採用増)も不可欠であるが、TDSEブランドも含め、一定のノウハウを構築している点は大きなアドバンテージとなっている。

 

③新たな技術ニーズへの対応
*先進のデータサイエンス技術
ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLMs ※)や反実仮想機械学習(CFML)などの高度なAI設計技術といった日進月歩の技術をキャッチアップし続け、最新ソリューションとして提供する。

 

*先進のAI実装・運用管理技術
AI実装エンジニアリング力やMLOps(※)

 

※LLMs:Large Language Models。大量のデータセットとディープラーニング技術を用いて構築された機械学習の自然言語処理モデル。

 

※MLOps:Machine Learning Operations。機械学習。機械学習モデルやAIモデルを一度作るだけではなく、継続的に本番運用していく仕組みや考え方。

 

(目標)

 

23年3月期実績

26年3月期目標

売上高

21.8億円

29.0億円以上

経営指標

 

 

技術人員

100名

141名

リーダー人員

31名

41名

※技術人員はコンサルティング事業部内の人員数
※売上高はコンサルティング事業部内の数値

 

以下のようなテーマの高度化や新規テーマの創出を図る。
*LLMs活用テーマ:社内文書検索、テキスト情報要約
*CFMLによるテーマの高度化:クーポン施策、ターゲティング
*AIの運用管理テーマ:MLOps

 

(2)プロダクト事業
前述のように組織改編により、プロダクト本部内に「ソーシャルメディアマーケティンググループ」「カンバセーショナルAIソリューショングループ」を新設した。
既存製品の拡大に加え、新領域のサービス開発・拡大も進め、中長期経営目標である、「中長期目標(FY2028迄)としてプロダクト事業の売上高10億円以上」の達成を目指す。
両サービスとも代理店網強化を進めるが対象業種拡大を念頭に開拓を進めていく。

 

 

①ソーシャルメディアマーケティング事業
(市場環境)
2000年代初頭から様々なSNSが登場し、スマートフォンの普及と共にソーシャルメディアマーケティング市場は拡大してきたが、2022年後半にイーロン・マスク氏のTwitter社(現X社)買収により、従来ほぼ無償提供されてきたAPIの有償化への切り替えが始まった。市場自体も1兆円を超える規模に拡大する中、安価なソーシャルリスニングツールの淘汰が予想される一方、各SNSベンダーとオフィシャル契約を締結しているQuid Monitorはそうした影響を受けることなく契約件数を増加させている。
(取り組み)
同社では、Quid Monitorの優位性を活かして、ソーシャルメディアリスニングによる可視化を実現化させるが、そこにとどまることなく、独自AI技術を活用した質を探求した広告運用に関する新領域のサービスも開発・拡大する。

(同社資料より)

 

新領域については、非構造データ分析のノウハウとQuid Monitorの機能を融合し、ソーシャルメディアデータ分析の高度化により、効果的な分析結果を提供できる仕組みを構築する。今期より企画開発を進める。
「提供サービス」
・レコメンデーション(AIによる対象候補を自動選出)
・トレンド予兆(特定カテゴリーのトレンドを予測)
・投稿文自動生成(生成AIによる投稿文・画像を自動作成)

 

こうした取り組みにより、収集データを拡大しつつ、「AIによる質の高度化」「効率化の向上」を図り、上記のようなクライアント企業のニーズを満たしていく考えだ。

 

②カンバセーショナルAIソリューション事業
(市場環境)
2022年後半にOpen AI社のChat GPTが公開され、生成AIや対話型AIへの注目が急激に上昇している。
2023年に入りChat GPTサービスが進む一方で、倫理的問題も挙げられ、AIの正しい使い方に焦点が高まっている。
加えて、GoogleやAmazonでもLLM技術を用いた生成AIサービスの提供が開始されたことから、競争の激化が予想される。
また、AIが利用され国内における主流サービスとなっているFAQ型チャットボットは応答精度がボトルネックとなっており、「自然言語解析の精度向上」「精度向上のための学習データの準備の負荷大」が解決すべき課題となっている。

 

(取り組み)
対話型AIプラットフォーム製品「Cognigy」の改良を進め引き続き売上拡大を図るとともに、生成AI「TDSE QAジェネレーター」ビジネスの拡大を目指す。

 

◎対話型AIプラットフォーム製品「Cognigy」
2019年の導入当初はFAQ型チャットボットのニーズが高かったが、他業務システム連携機能を用いた本来のトランザクション型のニーズが高まっている。
業務システムとの連携・拡張性の高いCogngyに、2023年4月にはOpen AI社のGPTを標準搭載した。同社独自の生成AIを組み合わせることで、既存のチャットボットの応答精度を大幅に高め、複雑化する企業ニーズに対応する。
加えて、LLMのセキュリティ及びハルシネーション(※)は重要な課題と認識しており、細心の留意事項や国際規制のあり方を洞察しながら、適切に対応した仕組みを組み入れたソリューションや製品の開発を進めていく。

 

対話型AIに関して、同社では以下の3種類に分類しており、 「Cognigy」を中心に、自社製品である生成AI「TDSE QAジェネレーター」も利用し、マーケット開拓を進めていく。

(同社資料より)

 

※ハルシネーション
AIが事実に基づかない情報を生成する現象。まるでAIが幻覚(ハルシネーション)を見ているかのように、もっともらしい嘘(事実とは異なる内容)を出力する。
(同社資料より)

 

◎生成AI製品「TDSE QAジェネレーター」
現在モジュール化したAIを活用し、QA自動生成サービスとしてデータサイエンティストによるソリューションを展開している。
対象は、製品マニュアル、コールセンター対応文書や記録、有価証券報告書、企業調査レポート、金融商品説明書・約款、研究論文など。
より多くの企業に展開するためのSaaS版を23年11月にリリースした。
今後、他社チャットボット製品でも活用できるようOEMライセンスとしての提供、各社LLMs向け次世代版の開発開始も予定している。

 

【2-3 達成目標】

KGI(重要目標達成指数)として「26年3月期 売上高33~37億円」を掲げている。利益指標としては売上高営業利益率10%以上の維持を目指している。プロダクト事業における新製品や新領域拡大の進捗、上記のSaaSプロダクト展開スピード等により、売上高上乗せ4億円を見込んでいる。

(同社資料より)

 

各事業の目標は以下のとおり。
目標達成に向けては、コンサルティング事業では「リーダー人財育成(育成体系化含む)、人財獲得、先進技術取組」が、プロダクト事業では「離反防止および新規獲得(デジタルマーケティングと代理店強化)、各プロダクトラインナップ強化」がカギとなる。

(同社資料より)

 

3.2024年3月期第2四半期決算概要

【3-1業績概要】

 

23/3期2Q

構成比

24/3期2Q

構成比

前年同期比

売上高

1,088

100.0%

1,246

100.0%

+14.5%

売上総利益

393

36.2%

429

34.5%

+9.2%

販管費

269

24.8%

314

25.2%

+16.5%

営業利益

124

11.4%

115

9.3%

-6.7%

経常利益

125

11.5%

117

9.4%

-6.0%

四半期純利益

57

5.3%

80

6.5%

+40.4%

*単位:百万円。

 

増収も成長投資により減益。売上高は上半期の過去最高を更新
売上高は前年同期比14.5%増の12億46百万円。両事業とも2桁の増収。コンサルティング事業は経営方針である「大規模×長期化(LTV最大化)」の下、既存顧客の深耕と新規顧客開拓が進展。プロダクト事業では、体制強化、販路拡大を進めた。
営業利益は同6.7%減の1億15百万円。売上増に伴い売上総利益も同9.2%増加したが、成長に向けた積極的な人材採用やプロダクト開発に向けた投資により減益となった。
四半期純利益は同40.4%増の80百万円(前年同期は特別損失に特別功労金40百万円を計上)。
売上高は上半期の過去最高を記録した。

(四半期推移)

*単位:百万円

 

【3-2 事業別動向】

(売上高動向)

 

23/3期2Q

24/3期2Q

前年同期比

コンサルティング事業

978

1,106

+13.1%

既存

933

1,043

+11.8%

新規

45

63

+40.0%

プロダクト事業

110

139

+26.4%

既存

96

102

+6.3%

新規

14

37

+164.3%

合計

1,088

1,245

+14.4%

既存

1,029

1,145

+11.3%

新規

59

100

+69.5%

*単位:百万円

 

(1)コンサルティング事業
①概況
前年同期比13.1%増収。
既存顧客の深耕や新規開拓を進めた。TDSEネットワークを活かして、新規顧客開拓が前年同期比4割増と大きく伸長した。

 

(新規案件事例1)
大手部品商社では既にAIの活用は様々取り組まれていたが、AIやAIを組み込んだアプリケーション開発の内製化を課題と感じていた。
これに対し、同社ではMachine Learning Operations(MLOps)を用いたAIを含む開発を内製化し定常的に活用していくための環境を顧客の状況に合わせて提供した。
年々需要が高まりつつあるMLOpsなどの技術領域で案件を獲得することができた。

 

(新規案件事例2)
大手広告代理店グループ会社では、異なるソースのデータを統合するにあたり、データの補完などの検証を必要としていた。
同社では、これまでの知見を元に機械学習(DL)や自然言語技術(NLP)を用いた複数のアプローチを提案し、案件を獲得した。

 

②計画に対する進捗及び取り組み状況
◎人材採用・育成
KPIとして、技術社員141名以上(2025年度目標)、リーダー育成数41名以上(2025度年目標)を掲げている。
前者については、23年10月現在123名。幅広く採用活動を展開し、学生、社会人の応募が増加している。採用選考基準も強化し、中計目標は早期達成を見込んでいる。
後者については、23年10月現在31名。さらなる需要へ対応するためには、リーダー人材の育成が重要と考えている。継続的なリーディング人材の育成に向け、個のキャリアマトリックス構築を含め、自己成長を助長するマインド向上につながる教育フレーム・プログラム構築、実施に取り組んでいる。

 

ロイヤリティ維持にむけては、社員満足度調査を継続的に実施し、PDCAを回して課題の抽出・対応に取り組んでおり、結果的に離職率の低下につながっている。

 

リーダー育成プログラムにおいては、技術はもちろんのこと、ビジネス創出力の育成に力点を置いている。
技術に関しては、社内で暗黙知的に蓄積されている豊富かつ高度なノウハウをコンテンツとして作り上げ、リーダー候補にレクチャーを行っている。
ビジネス上の能力育成については、社内のみでなく外部の人材にも協力してもらいながら、基本的なスキル育成に加え、ビジネスマインド醸成に向けた実践的な対話などにも取り組んでいる。
リーダー育成の対象者は、自律的な行動がとれるか等の上司の評価、本人の意思など総合的に勘案して選定している。

 

(同社資料より)

 

◎TDSEネットワークの強化および新規技術テーマの開拓等
*TDSEネットワークの強化
顧客担当者の転職やキャリアアップした元社員の紹介により、新たな顧客との関係構築を図る。
今後コンサルファームやSIerとの連携も強化し、パートナーネットワークを拡大する。連携先数拡大とともに、優良なパートナーの絞り込み・関係性の深化にも取り組んでいく。

 

*新規技術テーマの開拓
LLM(大規模言語モデル)については、社内の情報共有・検索での活用、自社製品の開発プロセスに活用、 OpenAI以外のLLMを含めたプロダクト事業部との連携など、社内での活用を推進するほか、顧客企業でのLLM活用に向けた支援のために開発プロセスにおける導入検証の支援に取り組んでいる。
また、23年11月にはLLM活用にむけたアセスメント・導入支援から運用サポートまで含めた「LLM 活用支援サービス」を開始した。

 

(2)プロダクト事業
①概況
前年同期比26.4%増収。
既存客売上はほぼ前年並みながらも、大手金融機関より新規開発案件を受注し、新規顧客売上は前年同期の2.6倍となった。
部門別には、ソーシャルメディアマーケティング事業が前年同期比25%増の1億18百万円、カンバセーショナルAIソリューション事業が同45%増の21百万円。

 

新規顧客となった大手金融機関は既にチャットボットを使用していたが、回答の精度の低さが大きな課題となっていた。精度の低さから利用率が低下し、その分、コールセンターの負荷が増大していたが、人手不足からオペレーターの確保が容易ではないことに加え、24時間・365日の対応が困難であった。
そこで回答精度が高く、顧客の状況やニーズに柔軟に対応することが可能な拡張性の高い対話型AIの設計/開発を可能とするプラットフォームCognigyを採用することとなった。
ライセンスに加え、コンサルティングも行いながらプラットフォーム構築を行ったことで、受注規模も大きなものとなった。

 

②計画に対する進捗及び取り組み状況
◎ソーシャルメディアマーケティング事業
新規開拓件数目標15件以上に対し実績は14件、既存案件継続率目標80%以上に対し実績96%と、いずれも順調である。
SNSアカウント分析ツールQuid Compete(旧Rival IQ)の取扱いを新たに開始したほか、Quid Monitor(旧NetBase)がOpenAI社のChat GPTと連携した「AISearch」を開始し、LLMへも対応することとなった。
Netbaseから『Quid Monitor』へ、Rival IQから『Quid Compete』へと、QUIDブランドへ刷新された。

 

◎カンバセーショナルAIソリューション事業
新規開拓件数目標10件以上に対し実績は3件(攻略に際して、企業ヒアリングからアセスメントを経るプロセスにおいて、相応の時間を要するため、若干数となっている)、既存案件継続率目標90%以上に対し実績100%と、こちらも順調である。
CognigyがMicrosoft社やOpenAI社等のLLMに対応したバージョンの提供を開始した。
研究開発も順調に進捗している。23年11月に予定通り、QAジェネレーターのSaaS版をリリースした。今後、企業ニーズも諮りながら、本製品のLLM検討も取り組む。

 

両事業にわたり新規開拓が好調であった背景には、AI市場の成長力向上と当社製品の優位性がタイムリーにマッチしていることが大きな要因。他社からの切り替えも多く、安価だった製品を導入してきたものの暫し使用した結果、使い勝手が劣悪である、もしくはほとんど事業効率に結び付いていないなど、企業側のビジネス変革にむけたシナリオ構築が十分でなかった点など挙げられる。相応の予算をかけないと事業効率は進まないものという企業側の認識は今後も必要となるだろう。
勿論、同社のデジタルマーケティングでも、潜在顧客が目に止まるコンテンツ作りがリード数増加に結びついた要因の一つ。

 

③リスクと課題
SNSマーケティング市場は引き続き拡大傾向にあるため、需要を確実に取り込み大きな成長を目指していく。
特に、AI市場では同社の優秀なデータサイエンティストによる優れたサービス展開を実現する。
そうした中、一定のリスクも認識しており、的確に対応していく。

 

*ソーシャルメディアマーケティング事業
X社(旧Twitter)の方針変更に伴う、投稿データ提供条件(価格や機能)変更の可能性および円安によるQUID社製品の価格変動による影響をリスクとして認識している。

 

SNSマーケティング市場は拡大傾向にあり、サービス単価の変更が伴ったとしても大きな成長力には変化はないとみている。現在、SNSベンダーとオフィシャル契約を締結しているQUID社の優位性は変わらないと考えている。

 

*カンバセーショナルAIソリューション事業
LLMの出現により、カンバセーショナルAI市場における急速な技術革新が予想される。
また、LLMのセキュリティとハルシネーションのリスクが顕在化することも懸念される。

 

セキュリティとハルシネーションについては、企業がLLMの導入・使用に躊躇する一因となっており、引き合いや声掛けはあるものの、クロージングに至っていないケースも多い。日進月歩の技術進歩へのキャッチアップと合わせ、この課題解決は事業拡大に向けた重要なポイントであると会社側は考えている。
IT企業が展開を進める生成AIサービスと異なり、同社の優秀なデータサイエンティストによるLLMの技術的検証及び活用に際して、細心の留意事項や国際規制のあり方を洞察し、サービス展開を実現する考えだ。

 

④下半期展望と戦略
*ソーシャルメディアマーケティング事業
下半期も引続き円安が継続する可能性は高いものの、SNS分析に対する企業ニーズは高まりを見せており、QUIDブランドの競争力の強さに変化なし。上半期のトレンドは今後も継続し、売上は対前年比で120%を見込んでいる。
製品ラインナップ拡充に向けて下半期は引き続き、QUIDブランドの拡販に努めつつ、SNSマーケティング関連のプロダクト開拓を進め、ラインナップ拡充を進める。

 

*カンバセーショナルAIソリューション事業
上半期に開発した大型金融案件が下半期にローンチ予定である。LLMニーズの高まりにより、引き合いは増加傾向にあり、トランザクション型チャットボット案件の獲得を目指す。売上は対前年比で130%を見込む。
製品ラインナップ拡充に向け、23年11月にリリースしたQAジェネレターSaaS版について、LLMに対応したプロダクト開発を推進中である。
研究開発の効率化を高めるため、東南アジアにおけるオフショアによるラボ型開発を下半期に開始する予定で、企業との交渉も進めている状況である。

 

【3-3 財務状態とキャッシュ・フロー】

◎主要BS

 

23年3月末

23年9月末

増減

 

23年3月末

23年9月末

増減

流動資産

2,151

2,133

-17

流動負債

450

349

-100

現預金

1,775

1,689

-86

固定負債

20

20

0

売上債権

279

304

+25

負債合計

470

369

-100

固定資産

188

174

-14

純資産

1,869

1,937

+68

投資その他の資産

157

146

-10

利益剰余金合計

785

845

+59

資産合計

2,339

2,307

-31

負債純資産合計

2,339

2,307

-31

*単位:百万円

 

自己資本比率は前期末から4.1ポイント上昇し84.0%。

 

◎キャッシュ・フロー

 

23/3期2Q

24/3期2Q

増減

営業CF

-38

-56

-18

投資CF

-3

-9

-5

フリーCF

-42

-66

-24

財務CF

-20

-20

-0

現金同等物残高

1,550

1,689

+138

*単位:百万円

 

キャッシュポジションは上昇した。

 

【3-4 トピックス】

◎「LLM 活用支援サービス」の提供を開始
23年11月、LLM活用にむけた企業経営アセスメント・導入支援から運用サポートまで含めた「LLM 活用支援サービス」を開始した。

 

(サービス開始の背景)
昨今、大規模言語モデル(LLM)の技術革新が絶え間なく進み、国際レベルでの競争が激化している。2023 年初頭の生成 AI ブームの火付け役となった OpenAI 社による ChatGPT、競合として比較される Google社 Bard、Meta 社 Llama2 などビッグテックによる競争は今後も続くことが予想される。国内においても多数の ChatGPT 導入サービスや莫大な投資を伴う独自 LLM の開発が発表されており、生成 AI 市場は成長著しい分野として注目を集めている。

 

 

同社もこれらのテクノロジーの潮流に対応すべく、これまでも対話型 AI プラットフォーム「Cognigy」やSNS 分析ツール
「Quid Monitor」の GPT 対応などをいち早くリリースしてきた。社内においても情報共有・検索や自社製品の研究開発プロセスでの LLM 活用を進め、またコンサルティング案件として顧客企業の開発プロセスにおける LLM 導入支援の実績も出ており、これらの取り組みを通して LLM 導入に際してのリスク管理にむけた考え方や対策等のノウハウの蓄積を積極的に続けている。

 

これまで機械学習を顧客企業のマーケティングや技術開発、商品開発をはじめとする幅広い領域で活用し、様々な支援を通して、豊富な実績を蓄積してきた。一方で今後は LLM を用いることで、バックオフィス業務の自動化のさらなる強化や、従来とは異なるアプローチでの顧客サービスの改善が可能になることが期待され、急速に拡大する市場ニーズに対処するため、法人向けサービスとして「LLM 活用支援サービス」を提供することとした。

 

(サービスの概要・特長)
LLM 導入初期における進め方の整理から運用支援まで一貫したサービスを提供する。

1.

Microsoft 社の Azure OpenAI Service をはじめとするメジャーな LLM を活用した業務効率化テーマのアセスメントや簡易検証、そのアプリケーションの構築などを支援する。

2.

専門のデータサイエンティストやデータエンジニアの知見をもとに、日進月歩の LLM の進展を踏まえた最適な設計提案を提供する。基幹システムとの連携や他の機械学習タスクとの組み合わせを必要とするような LLM 単体では難しいテーマにも対応する。

(例)社内情報やドキュメントを元にした情報検索システム(RAG:Retrieval Augment Generation)の構築等もニーズに合わせた最適な構成で提供する。

3.

構築したシステムの運用や改善についてもサポートを行う。

 

同社では、同サービスに限らず、企業が持つ活用できていないデータから新しい価値を見つけ効率化や新しいビジネスに結び付けることで本質的なデータ経営を支援することが自社の役割と考えている。

(同社資料より)

 

4.2024年3月期業績予想

【4-1 業績予想】

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

2,415

100.0%

2,589

100.0%

+7.2%

48.1%

営業利益

265

11.0%

281

10.9%

+5.7%

41.2%

経常利益

267

11.1%

281

10.9%

+5.1%

41.8%

当期純利益

168

7.0%

195

7.5%

+15.5%

41.3%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

業績予想に変更なし。増収増益を予想、売上高・営業利益ともに連続して過去最高更新へ
業績予想に変更は無い。売上高は前期比7.2%増の25億89百万円、営業利益は同5.7%増の2億81百万円と、ともに連続して過去最高更新を予想。
中期経営計画「MISSION 2025」の初年度となる今期は、組織強化を目的とした人的資本への投資とプロダクト開発投資で戦略投資額は前期比約1.5億円の増加を計画しているため、利益成長は1ケタ台の計画。
配当は前期同様10.00円/株の予定。予想配当性向は10.6%。

 

【4-2 事業別取り組み】

(売上動向)

 

23/3期

24/3期(予)

前期比

進捗率

コンサルティング事業

2,185

2,309

+5.7%

47.9%

プロダクト事業

230

280

+21.7%

49.6%

合計

2,415

2,589

+7.2%

48.1%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

(1)コンサルティング事業
引き続きリーディング人材育成の仕組み構築に注力する。
社内KPIの策定と可視化、管理を進め、案件獲得に向けた仕組みの強化を図る。

 

(2)プロダクト事業
ソーシャルメディアマーケティング事業においては分析ツールのラインナップ強化を、 カンバセーショナルAIソリューション事業においては自社製品の開発強化を図る。

 

5.今後の注目点

上半期の最高売上高を更新し、前年同期比で増収であったが、前下期比では減収であった。前期第3四半期、第4四半期に大型案件を受注したためということだが、コンサルティング事業、プロダクト事業ともに新規顧客開拓が順調に進んでおり、下期は半期ベースでの過去最高売上・利益を更新するとともに、通期でも過去最高業績を前期に続いて連続して更新する計画だ。
東垣社長によれば、「中長期の視点でプロダクトサービスを第2の柱に育成していくことを主目的とする中期経営計画は順調に進展している。必要な投資をしっかりと実施しながら、目標に対しては可能な限り前倒しで着実に実績を上げていく」とのことだ。
リーダー人材育成プログラムや新製品リリースなどの施策の進捗とともに、第3四半期、第4四半期の数値に注目していきたい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

5名、うち社外取締役1名(うち独立役員1名)

監査役

3名、うち社外監査役2名(うち独立役員1名)

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2023年6月26日

 

<基本的な考え方>
当社は、「データに基づいて、意思決定を高度化する」というミッションのもと、「データを活用した可能性溢れた豊かな社会」の実現に向けて、更なる飛躍を目指し、株主、取引先、従業員等ステークスホルダーの信頼を得、継続的な企業価値の向上を実現するため、コーポレート・ガバナンスの充実が経営上の重要な課題であると位置づけ、コンプライアンス体制及びリスク管理体制の構築・強化を図り、取締役会を中心に「経営の効率化」及び「監督機能の強化」に主眼を置き、健全で透明性が高く、経営環境の変化に迅速に対応できる経営体制の構築に努めてまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。

 

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