ブリッジレポート
(3131) シンデン・ハイテックス株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(3131)シンデン・ハイテックス 2024年3月期上期決算

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鈴木 淳

代表取締役社長

シンデン・ハイテックス株式会社(3131)

 

 

企業情報

市場

東証スタンダード市場

業種

卸売業(商業)

代表取締役社長

鈴木 淳

所在地

東京都中央区入船3-7-2 KDX銀座イーストビル

決算月

3月

HP

https://www.shinden.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,386円

1,985,587株

4,737百万円

13.5%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

60.00円

2.5%

192.56円

12.4倍

3,359.36円

0.7倍

*株価は11/28終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。DPS, EPS, BPSは直近四半期末実績。ROEは前期実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

46,102

626

299

209

102.09

45.00

2020年3月(実)

44,277

496

291

185

92.88

45.00

2021年3月(実)

49,084

819

702

497

246.18

75.00

2022年3月(実)

43,458

1,501

1,062

748

367.77

110.00

2023年3月(実)

41,924

2,242

1,302

897

448.80

135.00

2024年3月(予)

44,500

1,200

570

380

192.56

60.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

シンデン・ハイテックスの2024年3月期上期決算の概要と2024年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2024年3月期上期決算概要
3.2024年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 24/3期上期は前年同期比11.5%減収、83.5%営業減益。従来の屋台骨である半導体製品分野及びディスプレイ分野の減少を、システム製品分野及びバッテリ&電力機器分野がリカバリーし、前年同期に対し販売構成比率に変化が見られた。利益面では、前中期経営期間における「収益構造改革」の重要分野であり、比較的利益率の高いシステム製品分野が増加した。しかし、為替の円安効果が前年同期に対して弱くなり、売上総利益率が低下した。さらに、特殊要因(貸倒引当金の計上)によって販管費が大幅に増加したため、大幅な営業減益となった。なお、特殊要因を除いた計算上の営業利益はほぼ会社が想定した通りの推移となっている。

     

  • 24/3期は前期比6.1%増収、46.5%営業減益を計画する。8月に期初予想から修正を行った。販管費において貸倒引当金繰入額として引当処理したことが主因。売上高は、従来の屋台骨である半導体製品分野及びディスプレイ分野を、前中期経営期間の「収益構造改革」において強化してきた、システム製品分野でリカバリーする構図となり、特殊要因を除いた場合、ほぼ当初の想定どおりと見通している。売上総利益は、半導体製品分野及びディスプレイ分野の不調を、比較的利益率の高いシステム製品分野でリカバリーする構図となり当初の想定どおりと見込む。販管費は上期に貸倒引当金繰入額として引当処理したことが主な要因となり大幅に増加する見込み。なお、今回の貸倒引当金繰入額への計上は、一時的要因であり、中期的な経営計画へ与える影響はない。配当は、60円/株の期末配当を予想。8月に期初予想150/株から減額修正した。

     

  • 今上期は一時的な貸倒引当金の計上により大幅な減益となったものの、この要因を除くと概ね会社の想定した通りの推移となっている模様。半導体製品やディスプレイが汎用品ボリュームビジネスの減少を主因に2桁減収となる中で、システム製品が大幅増収。同製品は前中期経営期間に掲げた重要分野であり、その成果が数字を伴って現れた。現中期経営期間が進行する中で非常に心強いことといえるだろう。業績修正した1Q決算発表後にそれまで堅調に推移していた株価は急落し、現在も低空飛行。PBRは1倍を大きく割り込んでいる。ただし、25/3期は大幅増益が期待できるだけではなく、配当性向30%を目途としていることから大幅増配予想となりそうだ。中期経営期間では、より株価を意識した経営方針も打ち出している。下期に入りそろそろ来期の動向も見極めたい時期に差し掛かることから、割安修正の時期も近付きつつあるのではないだろうか。

     

1.会社概要

半導体製品、ディスプレイ、システム製品、バッテリ&電力機器等の独立系エレクトロニクス商社。主に海外メーカの製品を仕入れ、国内電子機器メーカや産業機器メーカに販売しており、23/3期における売上の約81%を半導体製品分野及びディスプレイ分野が占め、システム製品分野、バッテリ&電力機器分野が約18%。中国(香港)、タイの連結子会社2社とグループを形成し、それぞれの地域に展開する日系企業向けビジネスを手掛けている。海外連結子会社の売上構成比が約9%を占める。

 

【経営理念 : 「当たり前のことを当たり前にする会社」】

・世界中より時代を先取りできる製品を発掘し、お客様に供給することで「社会の発展に貢献」する
・業界において、ナンバー・ワンを目指す
・トータルソリューションとして、お客様のニーズを的確に捉え、スピーディに対応し、「お客様の満足できる企業」を目指す
・社員が「夢を持って働ける企業」を目指す

【CSR・環境への取り組み】

同社は地球環境に優しい企業活動を経営課題の一つと位置づけており、環境保全と資源保護に配慮した活動による社会貢献と環境汚染の予防を推進している。具体的には、SDGsも念頭に、環境配慮型電池及びその周辺装置(半導体を含む)の拡販、システムでの低消費電力化に向けた高性能半導体の拡販に取り組んでいる。
この他、顧客のグリーン調達基準を遵守するため、化学物質管理システム(CMS)を構築・運用している他、社員が能力を発揮し、仕事と生活の調和を図り、働きやすい雇用環境の整備を行うため、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定し推進している。2003年7月にISO 14001認証を、2004年3月にISO 9001認証を、それぞれ取得している。

 

1-1 取扱商品と仕入先・販売先

ディスプレイは主に韓国、中国及び台湾のディスプレイメーカから液晶モジュール等を仕入れ、そして、半導体製品はDRAMやフラッシュ等のメモリ及びメモリモジュールを主に韓国、中国及び台湾メーカから仕入れ、それらの商品を車載用機器、事務用機器、産業用機器等のセットメーカに販売している。ASSP(特定用途向け汎用IC)やASIC(特定用途向けカスタムIC)については、米国や韓国のメーカから仕入れており、CPU(中央演算処理装置)やGPU(リアルタイム画像処理に特化した演算装置)については米国メーカから仕入れた商品をパソコン用途以外の顧客に販売している。この他では、ファウンドリも手掛けている。ファウンドリとは、顧客から半導体の設計データを受け取り、韓国・米国半導体メーカに製造依頼し、完成品を依頼元に販売するビジネスである。システム製品では、国内・韓国メーカの検査用の装置等の電子機器、そして、EMSを取り扱っている。EMSとは、製品の開発・生産を受託するサービスである。バッテリ&電力機器は、主に韓国メーカからリチウムイオンや鉛バッテリ、電力機器等を仕入れ、民生品メーカや太陽光発電所向けに販売している。

 

商品分野・製品と市場・応用製品等

分野

製品

市場・応用製品等

半導体製品

メモリ、メモリモジュール、SSD、ASSP/ASIC、CPU/ GPU、LED、

ファウンドリ、パワー半導体等

カーナビゲーション等車載用、複合機等事務機器、

産業用機器、モバイル機器、その他民生用機器、

サーバ、スマートフォン、アミューズメント、液晶ドライバ

ディスプレイ

液晶モジュール、有機EL、タッチパネル、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ等

カーナビゲーション等の車載用、PC・タブレット、

スマートフォン、産業用機器、医療用機器、商業用施設等

システム製品

検査等装置、通信モジュール、Board、EMS、サーバ機器、

各種システム製品・機器

産業用機器、民生用機器、車載用機器、通信用機器、

事務用機器、スマートフォン、量子コンピュータ、

アミューズメント、研究・教育機関等

バッテリ&

電力機器

電池関連商品(リチウムイオン電池等)、

電源モジュール

電力機器(配電盤、開閉器等)

通信用基地局、民生用機器、産業用機器、

太陽光発電所向け等の再生エネルギー関連製品

 

仕入先

 

主な仕入先

特徴

半導体製品

SK hynix(韓国)

DRAM・NAND型フラッシュメモリ、メモリモジュール、CIS等の半導体メーカ。

Giga Device(中国)

NORフラッシュ製品やNANDフラッシュからMCU製品まで幅広く提供する不揮発性メモリデバイスの大手ファブレスメーカ。

MagnaChip(ルクセンブルク)

通信、モノのインターネット(IoT)アプリケーション、アナログ及びミックスドシグナル半導体プラットフォームソリューションの設計等。

AMD(米国)

PCプロセッサー、組み込み用プロセッサー等の半導体メーカ。

Telechips(韓国)

車載及びコンシューマ市場向けアプリケーション・プロセッサー(SoC)の設計・開発。

Global Foundries(米国)

IBMマイクロエレクトロニクス事業を譲り受けた世界トップクラスのファウンドリ。

Skyworks(米国)

スマートフォン等ワイヤレス通信機能を搭載した製品を幅広くサポートするデバイスを開発する半導体メーカ。

ディスプレイ

BOE(中国)

北京に本社を置くディスプレイパネル大手。

O-Nation Corporation(台湾)

顧客の要望に沿ったLCDモジュールを開発・販売するメーカ。

Goworld(中国)

各種LCDモジュール・静電タッチパネルメーカ。

WAYTON(台湾)

液晶ディスプレイモジュール専門企業。

EDT(台湾)

液晶タッチパネルメーカ。

システム製品

EMS部品メーカ

電子機器受託生産を展開する企業。

Boardメーカ

特定の機能を実現するため、様々な電子部品を実装した回路基板を製造するメーカ。

Telit(イタリア)

M2M製品を専門に取り扱う世界的メーカ。

EM-TECH(韓国)

スピーカーやハプティクスモーター等の高性能なデバイスを製造。

Giga Computing (台湾)

ハイパフォーマンスコンピューティングの礎となるべく、末端のエッジから最上層のクラウドに至るまでのソリューションを提供。

KAYTUS(シンガポール)

一般サーバから高性能サーバまで幅広くラインナップを有するグローバルIT企業。

バッテリ&

電力機器

LG Energy Solution(韓国)

韓国最大の総合化学メーカLG Chem.より独立。Liバッテリの供給元。

パナソニック(日本)

同社の充電式電池を取扱う。

LS ERLECTRIC(韓国)

電力機器及び自動化機器のメーカ。

ベルニクス(日本)

高圧電源システム、DC-DCコンバータなどにおいてユニークな独創的製品を扱う。

PHIHONG(台湾)

スイッチング電源。特に標準電源の互換品に強みを持つメーカ。

 

2.2024年3月期上期決算概要

2-1 連結業績

 

23/3期 上期

構成比

24/3期 上期

構成比

前年同期比

売上高

22,771

100.0%

20,159

100.0%

-11.5%

売上総利益

2,332

10.2%

1,965

9.7%

-15.7%

販管費

1,079

4.7%

1,758

8.7%

+62.9%

営業利益

1,253

5.5%

206

1.0%

-83.5%

経常利益

497

2.2%

-178

-

-

親会社株主帰属利益

341

1.5%

-134

-

-

* 単位:百万円

 

前年同期比11.5%の減収、83.5%の営業減益
売上高は前年同期比11.5%減の201.5億円。従来の屋台骨であった半導体製品分野及びディスプレイ分野が減少した一方で、システム製品分野及びバッテリ&電力機器分野が増加し、前年同期に対し販売構成比率に変化が見られた。具体的には、システム製品分野の大幅な増加に対して、メモリ市況悪化の継続の影響を受けた半導体製品分野と、ディスプレイ市況の悪化・主要取引先の民事再生の影響を受けたディスプレイ分野の両分野における汎用品のボリュームビジネスの減少の影響が大きく、減収となった。
営業利益は前年同期比83.5%減の2.0億円。利益面では、前中期経営期間における「収益構造改革」の重要分野であり、比較的利益率の高いシステム製品分野が増加した。しかし、外貨販売比率が減少したことで、為替の円安効果が前年同期に対して弱くなり、売上総利益率が10.2%から9.7%に低下した。さらに、特殊要因(貸倒引当金の計上)によって販管費が前年同期比62.9%増の17.5億円へ大幅に増加したため、大幅な営業減益となった。また、財政面におけるドル建資産と同負債のバランスの差異が小さくなったため、営業外損益における為替差損が大幅に減少しているが、引続き為替差損を計上していることと、ドル金利高による支払利息の増加、そして営業利益の減少によって1.7億円の経常損失(前年同期は4.9億円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失は1.3億円(前年同期は3.4億円の利益)となった。なお、貸倒引当金の計上7億円を除いた計算上の営業利益は9.0億円、経常利益は5.2億円、ほぼ会社が想定した通りの推移となっている。

2-2 分野別動向

 

23/3期 上期

構成比

24/3期 上期

構成比

前年同期比

半導体製品

17,013

74.7%

12,803

63.5%

-24.7%

ディスプレイ

2,782

12.2%

2,003

10.0%

-28.0%

システム製品

2,269

10.0%

4,556

22.6%

+100.8%

バッテリ&電力機器

533

2.3%

712

3.5%

+33.5%

その他

172

0.8%

83

0.4%

-51.6%

連結売上高

22,771

100.0%

20,159

100.0%

-11.5%

* 単位:百万円

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

半導体製品分野の売上は前年同期比24.7%減の128.0億円。非メモリ商品は堅調に推移しているものの、メモリ市況の悪化継続により汎用品ボリュームビジネスが減少した。
ディスプレイ分野の売上は同28.0%減の20.0億円。主に個人消費に依存する製品向けのディスプレイ市況の悪化が継続した。また、主要顧客の民事再生によって汎用品ボリュームビジネスが減少した。
システム製品分野の売上は同100.8%増の45.5億円。前中期経営期間における収益構造改革の重要分野でもあり、大幅な増収となった。検査用等の装置向けが堅調だったことに加え、EMSビジネスが好調だった。サーバ機器ビジネスでは新規獲得もあった。
バッテリ&電力機器分野の売上は同33.5%増の7.1億円。主力の家庭用蓄電システム向けリチウムイオンバッテリビジネスが 増加した。

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

23年3月

23年9月

 

23年3月

23年9月

現預金

4,188

3,647

仕入債務

2,364

4,153

売上債権

6,554

7,403

短期有利子負債

5,496

6,842

棚卸資産

5,255

7,233

未払法人税等

268

186

流動資産

16,494

18,549

流動負債

9,054

11,844

有形固定資産

21

23

長期有利子負債

858

508

無形固定資産

2

9

固定負債

860

511

投資その他

338

452

純資産

6,942

6,680

固定資産

361

486

負債・純資産合計

16,856

19,036

* 単位:百万円

株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

総資産は190.3億円となり、前期末との比較(以下同)で21.7億円増加した。現預金が減少したものの、棚卸資産が増加したことによるもの。負債は123.5億円となり、24.4億円増加した。仕入債務や有利子負債が増加したことによるもの。純資産は66.8億となり、2.6億円減少した。主な要因は、利益剰余金の減少によるもの。
流動比率は、売上債権や短期借入金の増加等により前期末比25.6ポイント減少し、156.6%となった。自己資本比率は、仕入債務や有利子負債の増加等により、同6.1ポイント減少し35.0%となった。有利子負債対純資産比率は1.1倍となり、同0.2ポイント増加した。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

23/3期 上期

24/3期 上期

前年同期比

営業キャッシュ・フロー(A)

-1,282

-639

+642

-

投資キャッシュ・フロー(B)

-2

-65

-62

-

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

-1,285

-704

+580

-

財務キャッシュ・フロー

-59

-149

-90

-

現金及び現金同等物期末残高

5,285

3,632

-1,652

-31.3%

* 単位:百万円

株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

3.2024年3月期業績予想

3-1 通期連結業績

 

23/3期 実績

構成比

24/3期 予想

構成比

前期比

期初予想

売上高

41,924

100.0%

44,500

100.0%

+6.1%

45,000

営業利益

2,242

5.3%

1,200

2.7%

-46.5%

1,900

経常利益

1,302

3.1%

570

1.3%

-56.2%

1,400

親会社株主帰属利益

897

2.1%

380

0.9%

-57.7%

980

* 単位:百万円

 

24/3期は6.1%増収、営業利益は46.5%減を見込む
24/3期は売上高が前期比6.1%増の445億円、営業利益は同46.5%減の12.0億円、経常利益は同56.2%減の5.7億円、親会社株主帰属利益は同57.7%減の3.8億円を計画する。
なお、上記の通り8月に期初予想から修正を行った。販管費において貸倒引当金繰入額として引当処理したことが主因。売上高は、前中期経営期間の「収益構造改革」において強化してきたシステム製品分野が、従来の屋台骨である半導体製品分野及びディスプレイ分野をリカバリーする構図となり、ほぼ期初の想定どおりと見通している。半導体製品分野及びディスプレイ分野ではメモリ及び液晶モジュールの需給ひっ迫の緩和による顧客の積み上がった在庫の調整が、当初の想定よりもさらに継続する見通し。加えて、ディスプレイ分野における主要取引先の民事再生手続開始の申立てによるビジネス終息によって、期初の想定より減少すると見込む。システム製品分野については、部品供給難の緩和による顧客の増産のため、検査等の装置向け及びEMSが堅調に推移し、高性能GPU搭載サーバ機器の新規ビジネス獲得を見通しており、期初の想定より増加すると見込む。バッテリ&電力機器分野では、電源モジュールビジネス等の新規ビジネス開拓に取組んでいるものの、当分野の主力ビジネスである家庭用ESS向けが、期初の想定に対しやや減少すると見込む。売上総利益は、半導体製品分野及びディスプレイ分野の不調を、比較的利益率の高いシステム製品分野でリカバリーする構図となり期初の想定どおりと見込む。販管費は上期に貸倒引当金繰入額として引当処理したことが主な要因となり大幅に増加する見込み。その結果、営業利益は大幅減の見通し。その他の販管費の合計は、ほぼ当初の想定どおりを見込む。営業外損益は、前年同期に対し、財政面におけるドル建資産と同負債のバランスの差異が小さくなったため、営業外損益における為替差損額が大幅に減少しているが、上期においても為替差損を計上しており、大幅な経常減益となる見通し。なお、現在のドル建資産と同負債のバランスの差異が、今後も同じ推移で進行すると仮定した場合、為替相場が円安に進行したときは為替差損額が増加し、円高に進行したときは圧縮される見通し。なお、今回の取引先の民事再生の申立てに伴う当該売掛債権の貸倒引当金繰入額への計上は、一時的要因であり、中期的な経営計画へ与える影響はない。
配当は、60円/株の期末配当を予想。8月に期初予想150円/株から減額修正した。

 

3-2 中期経営方針

経営目標(24/3期~26/3期)

次期中期経営期間における販売戦略は、推進中の「収益構造改革」の基本構造を踏襲しつつ、経営基盤戦略を充実させ、下記の中期経営目標の達成に向けて邁進する。

目標① 26/3期経常利益15億円

 

目標② ROE10%以上の継続

 

 

経営方針

全社一丸となり、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、グリーン・トランスフォーメーション(GX)市場の開拓を推進し、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)への寄与をもって社会へ貢献し、企業価値の向上を目指す。

(同社資料より)

 

販売戦略

販売戦略の遂行と中期経営目標達成にあたり、「新規開拓活動」を引続き、次期中期経営期間の重点活動とする。
既存顧客の深掘 → 半導体製品分野をコア分野とし、ディスプレイ・システム製品・バッテリ&電力機器の各分野の需要をつかみ、相乗効果を発揮させる。
新規顧客の開拓 → 産業機器・社会環境関連市場の新規優良顧客の開拓を加速化させる。

(同社資料より)

 

経営基盤戦略

① 人的資本に関する戦略
「当社グループの最大の資本は人であり、役員及び従業員が最大限に力を発揮できる環境と共に社業の発展がある」との考えに立脚し、次の人的資本に関する戦略を掲げる。
SXに寄与する人材の育成・・・適材適所の人員配置を追求+実践を通じた育成の場を提供
■ 次世代の役員・管理職の育成・・・能力と志を有する従業員に対し、年齢・性別を問わず段階的に実践の場を提供
■ 従業員の年齢構成の最適化・・・中途採用を中心とした新規採用によって増員を図る
■ より働きがいのある職場づくり・・・公正な評価制度を追求
モチベーションアップのための各種制度設計や施策の継続的な検討・推進

 

② 経営管理機能の強化
■ 経営管理機能のDX化を推進・・・「法制度改正への対応」「効率的な働き方の実現」「戦略の実効性把握」

 

③ 資本戦略
■ 在庫運用の適正化を追求・・・ビジネス展開を見極める
■ 資金調達コストの低減・・・取引金融機関との良好な関係を維持
■ 株式価値の維持向上・・・会社情報の発信を充実+機動的かつ適時適切な資本政策の実施を検討

 

3-3 サステナビリティに関する考え方

同社では、「モットー」及び「企業行動憲章」を行動規範とし、「戦略リスク」と「オペレーションリスク」に分類したリスクマネジメントを行いつつ、環境保全に寄与する商品の拡販に注力する取組み、そして、ESGにかかる取組みを通じ、持続的成長・発展を図ることが、より良い地球環境や社会への貢献と考え、その実現を目指す。

目標

(同社資料より)

 

取組

中期販売戦略(24/3期~)
 市場・顧客戦略
重点市場:DX・GX関連市場
産業機器市場・社会/環境市場の新規優良顧客の開拓
 製品戦略
バッテリ&電力機器分野をSXの重点市場に位置づける
エネルギーマネジメント及びEV関連商材の発掘と拡販

事業リスクを以下の2種に区分し、リスクマネジメントを行う。
 戦略リスク
事業戦略の策定及び遂行により健全な範囲で事業成果を獲得するために「敢えて選択して取るリスク」
 オペレーションリスク
戦略遂行を支えるオペレーション上の事象による損失額及び事象発生可能性であり、事業遂行上、「一定以下に抑制すべきリスク」

 環境(Environment)
ISO14001認証規格の取組
化学物質管理(禁止化学物質・環境影響物質の管理)
 社会(Social)
人権の尊重(同社サプライチェーン内で紛争鉱物調査)
従業員の適正な処遇、労働環境の整備と育成
 ガバナンス(Governance)
コーポレートガバナンス・コードへの取組
コンプライアンス・災害等危機管理への取組

 

3-4 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて

分析指標

現状評価にあたり、下表は「収益構造改革」を着手する前年度である20/3期を起点としている。

指標

20/3期末

21/3期末

22/3期末

23/3期末

資本コスト

WACC(注1)

2.1%

2.0%

3.8%

7.3%

資本収益性

ROIC(注2)

2.6%

3.6%

6.6%

13.9%

(②- ①)

+0.5%

+1.6%

+2.8%

+6.6%

資本コストを上回る資本収益性を達成できているか

 

株式市場の評価

BPS

2,670.68円

2,832.93円

3,137.27円

3,548.68円

株価(期末時点)

811円

2,011円

2,030円

2,957円

PBR

0.3倍

0.7倍

0.6倍

0.8倍

株価で十分な市場評価を得られているか(PBR1倍)

×

×

×

×

(注1):WACC(%)=加重平均負債コスト(%)+株主資本コスト(%)=資金調達にどのくらいコストをかけているかを示す指標。
なお、20/3期~22/3期末における株主資本コストの計算に使用した期待収益率及び企業のβ値は暫定値を使用。
(注2):ROIC(投下資本利益率)=NOPAT(税引後営業利益)÷投下資本(有利子負債+株主資本)

 

同社による現状評価

21/3期開始の中期経営期間(3か年)において、「収益構造改革」に着手している。同期間においては、新型コロナウイルス感染症やロシアのウクライナ侵攻により、金利や仕入れ価格の上昇の影響を受けつつも、資本効率の向上を追求した各種施策を実施してきた。その結果、「収益構造改革」を着手する前年度である20/3期に対し、21/3期からの3か年において、資本コストを上回る収益性の拡大ができた。よって、推進してきた「収益構造改革」に一定の効果があるものと評価。

20/3期~23/3期における全期間、PBRが1倍割れとなり、株式市場において十分な評価を得られなかった。しかしながら、PBRは1倍を割れているものの、「収益構造改革」による業績の改善や、会社説明会の動画配信などのIR を充実させる取組みを通じて、徐々に改善基調にあるものと評価。

3-2 中期経営方針に示した通り

4.今後の注目点

同社のビジネスを考えるうえでのポイントは、表面的な売上・利益よりも、先を見越して進めている水面下でのパイプラインの整備である。売上・利益は結果であり、その時々の為替やデバイスの市況にも左右されてしまうが、パイプラインが整備されていれば、目先の業績が振れても、中長期の成長に不安はない。今も数年先を見据えた営業努力が続いている。
今上期は一時的な貸倒引当金の計上により大幅な減益となったものの、この要因を除くと概ね会社の想定した通りの推移となっている模様。半導体製品やディスプレイが汎用品ボリュームビジネスの減少を主因に2桁減収となる中で、システム製品が大幅増収。同製品は前中期経営期間に掲げた重要分野であり、その成果が数字を伴って現れた。現中期経営期間が進行する中で非常に心強いことといえるだろう。
業績修正した1Q決算発表後にそれまで堅調に推移していた株価は急落し、現在も低空飛行。PBRは1倍を大きく割り込んでいる。ただし、25/3期は大幅増益が期待できるだけではなく、配当性向30%を目途としていることから大幅増配予想となりそうだ。中期経営期間では、より株価を意識した経営方針も打ち出している。下期に入りそろそろ来期の動向も見極めたい時期に差し掛かることから、割安修正の時期も近付きつつあるのではないだろうか。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

10名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2023年11月9日)
基本的な考え方
当社は、コーポレート・ガバナンスの強化・充実を経営上の重要な課題の一つとして位置付けております。
経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応し、グループ全体の持続的な企業価値の向上を図るとともに、企業理念を具現化し発展していくために、意思決定の迅速化及び責任の明確化、並びに内部統制システムの整備等により、経営体制を充実させ、経営の透明性向上とコンプライアンス遵守の徹底を図っていくことを当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方としております。さらに、株主をはじめとするステークホルダーに対する、企業としての社会的責任を果たすことを、経営の重要な責務として認識し、グループ内における監督機能、業務執行機能及び監査機能を明確化することにより、経営目標の達成に向けた経営監視機能の強化に努めております。

 

<実施しない原則とその理由>
【補充原則1-2④】
当社は、機関投資家が議決権行使をおこないやすい環境の整備や海外株主に向けた英文による情報提供が必要と認識していますが、現状は、自社の株主における機関投資家や海外投資家が少ないため、英訳は実施しておりません。今後の株主動向等を踏まえ、英文での情報提供の必要性が高まりましたら、実施及び必要な範囲を、あらためて検討してまいります。

 

【補充原則2-4①】
当社は、管理職や中核人材の登用等において、性別・国籍・採用ルート等の属性による制限なく、役割に必要な能力・知識・経験等に基づいて、適任と判断した人物を登用しております。
現時点では、女性・外国人・中途採用者の管理職・中核人材への登用に対する測定可能な数値目標を定めるには至っておりませんが、今後も引き続き多様性の確保に努めるとともに、今後の企業規模の拡大や環境変化に応じて、適性のある人材を登用してまいります。

 

【補充原則3-1②】
当社は、海外投資家等に向けた英文による情報提供につき、実施の要否を検討の結果、自社の株主構成を踏まえた場合、海外投資家等の比率が僅少であり、現段階では英文による情報の開示・提供等の実施をしないという結論に至っております。引続き株主構成の変化を注視しつつ、英文での情報提供の必要性が高まりましたら、実施及び必要な範囲を、あらためて検討してまいります。

 

【補充原則4-1③】
当社は、最高経営責任者である社長の後継者の計画を現時点では明確に定めておりませんが、当社の企業理念・経営理念の実現及び会社の持続的な成長に向けて、経営に参画し研鑽を積むことによって、経験・能力・知見等の向上につながるものと考えております。経営状況や経営計画などに応じて、その局面に必要な経験・能力・知見等のほかリーダーシップや人格などを踏まえ、取締役会において協議し適切に決定してまいります。

 

【補充原則4-10①】
当社は、独立社外取締役を主要な構成員とする独立した指名委員会・報酬委員会を設置しておりませんが、取締役会等で、取締役や監査役、経営陣等と意見交換や提言をおこなっており、独立社外取締役としての責務を十分に果たしていると考えております。
指名や報酬などの特に重要な事項については、適宜、独立社外取締役から意見や助言を得ながら、取締役会で定めた方針に従い、決定してまいります。

 

【補充原則4-11③】
取締役会において、取締役は、相互に業務執行状況や経営課題進捗状況について意見交換等が行われているとともに、社外取締役及び監査役から意見表明や提言、助言がなされ、取締役会の実効性は保たれていると判断しております。
引き続き、効果的な議論がなされるよう努めてまいりますが、今後、取締役会の運営に関して見直しが必要と判断した場合には、その実効性についての分析・評価を行い、その結果についての開示も検討してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>
【原則1-4.政策保有株式】
当社は、現在、政策保有株式を保有しておりません。今後においても保有の必要性は高くないと認識しており、具体的な保有の計画もございません。
今後、政策保有株式を保有する必要性が生じた場合には、当社の企業価値向上に寄与するものであることを説明するとともに、政策保有に関する方針及び当該株式に係る議決権行使への適切な対応を確保するための具体的な基準を策定し、その基準に沿った対応をおこないます。
また、当社が政策保有株式を保有した場合には、その保有目的及び定量的な保有効果について取締役会において定期的な検証を実施するものといたします

 

【原則5-1.株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、株主や投資家との建設的な対話の体制整備のためのIR基本方針と具体的運用を定めた情報開示実施規程を取締役会において決議のうえ定めております。IRポリシーとしてIR基本方針を、当社ウェブサイトで公表しております。
・IRポリシーURL : https://www.shinden.co.jp/ir/managerial/ir_policy.html
IR管掌役員を選任し、経営企画室がIR担当部署として株主や投資家からの取材や問い合わせに対応しております。
また、年1回、社長自らが説明する機会を設け、その際のアンケートの集計結果等の株主や投資家との意見や要望を、経営層にフィードバックし、建設的な双方向の対話の促進に努めております。

 

【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】
当社は、中期的な経営戦略や経営計画を、ウェブサイトで公表しております。
・中期的な経営戦略や経営計画のURL : https://www.shinden.co.jp/ir/managerial/policy.html
また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応は、自社の資本コストの把握したうえでの収益計画等の基本的な方針のもと、収益力・資本効率や株価に関する戦略及び目標を策定し、2023年3月期決算説明資料において公表しております。

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