ブリッジレポート
(8130) 株式会社サンゲツ

プライム

ブリッジレポート:(8130)サンゲツ 2023年3月期決算

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安田 正介 社長

株式会社サンゲツ(8130)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場・名証プレミア市場

業種

卸売業(商業)

代表取締役社長執行役員

安田 正介

所在地

愛知県名古屋市西区幅下1-4-1

決算月

3月

HP

https://www.sangetsu.co.jp/

 

株式情報

株価

期末発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,479円

59,200,000株

146,757百万円

15.3%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

130.00円

5.2%

178.93円

13.9倍

1,631.57円

1.5倍

*株価は6/22終値。各数値は23年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2020年3月(実)

161,265

9,268

9,844

1,432

23.56

57.50

2021年3月(実)

145,316

6,701

7,042

4,780

78.97

58.00

2022年3月(実)

149,481

7,959

8,203

276

4.66

70.00

2023年3月(実)

176,022

20,280

20,690

14,005

238.71

105.00

2024年3月(予)

183,000

15,000

15,400

10,500

178.93

130.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益(以下、同様)。
*2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用。

 

 

株式会社サンゲツの2023年3月期決算概要、中期経営計画(2023-2025)【BX 2025】概要、安田社長へのインタビューなどをご紹介致します。

目次

 

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年3月期決算概要
3.2024年3月期業績予想
4.中期経営計画(2023-2025)【BX 2025】
5.安田社長へのインタビュー
6. 今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 23年3月期の売上高は前期比17.8%増の1,760億円、営業利益は同154.8%増の202億円。2021年9月の第1次値上げ、22年4月の第2次値上げに次いで22年10月に実施した第3次値上げにより、インテリア事業の収益性が大幅に改善。海外セグメントの損失幅も縮小した。2度目の上方修正となった23年2月公表の業績予想を上回り、売上・利益とも過去最高を更新した。

     

  • 24年3月期の売上高は前期比4.0%増の1,830億円、営業利益は同26.0%減の150億円の予想。数量の回復、海外事業の改善による増収を予想する一方、仕入価格や物流費の増加、人件費増などのコスト増で減益を予想している。現時点ではコスト上昇に対応した価格転嫁は前提としていない。配当は前期比25.00円/株増配の130.00円/株の予想。10期連続増配で予想配当性向は72.7%。

     

  • 中期経営計画(2020-2022) 【D.C. 2022】の最終年度となった23年3月期は、長期ビジョン【DESIGN 2030】で設定した売上高・利益の収益目標を大きく上回った。この3年間は、新型コロナウイルス感染症により、同社も影響を受けたが、自社グループの事業基盤や収益力は大きく拡大・強化されたと捉えている。一方、今後の経済環境は依然として不透明であり、こうした状況をふまえ、同社グループでは、改めて長期ビジョン【DESIGN 2030】を見直すとともに、長期的な成長に向けた新中期経営計画【BX 2025】を策定した。

     

  • 【DESIGN 2030】では、スペースクリエーション企業像の明確化と、さらにその先の事業の考察を行うと同時に、30年3月期の定量目標をこれまでの「売上高2,250億円、営業利益185億円」から「売上高2,500億円、営業利益270億円」に引き上げた。

     

  • 【BX 2025】は、現在の課題認識の下、「更なる成長のための戦略であるソリューション力の強化」に向け、次の飛躍に備える3年間と位置づけている。重点施策は「1.人的資本の拡大・高度化・活躍支援」「2. デジタル資本の蓄積・分析・活用」「3. ソリューション提供力の強化」「4. エクステリア事業と海外事業」「5. 社会価値の向上」の5つ。中でも人的資本強化が最も重要な課題と考えている。

     

  • 安田 正介社長に、23年3月期決算及び【D.C. 2022】の振り返り、【BX 2025】の主要ポイント、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「【BX 2025】のテーマを「次の飛躍に備える3年間」といたしました。最重要課題である「人的資本強化」を着実に進めて、2030年3月期「売上高2,500億円、営業利益270億円」達成に向け各種施策に取り組んで参ります。是非これからも中長期の視点で応援していただきますようお願い申し上げます」とのことだ。

     

  • ほぼ満点ともいえる前中計【D.C. 2022】の結果であった。会社側は、この3年間を人的資本強化を中心とした投資フェーズと位置付けており、今期24年3月期の増収率は1桁で、2桁の営業減益予想としているが、株価は比較的堅調で引き続き投資家の期待を集めているようだ。2030年を見据えた各種施策の取り組み動向と合わせ、今期予想に対する業績の進捗も注目していきたい。

     

     

     

     

1.会社概要

壁紙、床材、カーテンなどインテリア商品の専門商社最大手。商社ではあるがデザインや機能など製品の企画・開発から手掛け、一部商品を除きファブレス。安定した業績を生み出すビジネスモデル、主要商品の高いシェア等が強み。
2023年3月末現在、グループ企業に、沖縄地区でのインテリア商材の販売を担う「株式会社サンゲツ沖縄」、カーテン専門の販売会社「株式会社サンゲツヴォーヌ」、エクステリア商品の専門卸「株式会社サングリーン」、中国・香港での事業展開の拠点「Goodrich Global Limited」、米国の非住宅向けを中心とした壁装材製造販売会社「Koroseal Interior Products Holdings,Inc.」、東南アジアにおけるインテリア商材販売会社である「Goodrich Global Holdings Pte., Ltd.」、施工能力の強化を通じて更なる受注獲得を目指す「フェアトーン株式会社」、国内最大手のビニル壁紙製造メーカーである「クレアネイト株式会社」、九州エリアの有力配送会社である「有限会社クロス企画(2023年4月に株式会社化)」の9社を有する。

 

【1-1沿革】

1849年(嘉永2年)、表具(布や紙などを張って仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖など)を商う「山月堂」創業。1953年、創業家により株式会社山月堂商店として株式会社化。1970年代後半以降、東京、大阪、福岡をはじめ全国で事業展開。1980年、名古屋証券取引所市場第2部に上場。1996年、東京証券取引所市場第1部上場。海外にも進出し、トータルインテリアを供給するブランドメーカーとしての地位を確立する。
2014年4月、安田正介氏が初めて創業家以外から代表取締役社長に就任。第1期(創業)、第2期(株式会社化)に次ぐ、第3期(第3の創業)として位置づけ、新たなステージに臨む。
2022年4月、市場再編に伴い、東証プライム市場・名証プレミア市場に移行した。

 

【1-2 企業理念】

同社では、2020年に策定した「Sangetsu Group 長期ビジョン 【DESIGN 2030】」において、目指す姿を「スペースクリエーション企業」としてきたが、「4.中期経営計画(2023-2025)【BX 2025】」で触れるように、前期までの実績及び今後の同社を取り巻く環境などを踏まえ、長期ビジョン【DESIGN 2030】を見直すとともに、長期的な成長に向けた新中期経営計画【BX 2025】を策定した。
これに伴い、現在、グループ社員を中心としたタスクフォースにより企業理念の見直しを行っている。

 

【1-3市場環境】

◎概観
同社の主力商品である壁紙や床材の出荷状況は国内建設市場の動向に影響される。人口減少や家族構成の変化による新設住宅着工戸数の減少やデフレ経済における販売の低下で国内インテリア市場は下のグラフの様に、縮小傾向にある。

 

(同社資料より)

 

 

一方、下のグラフは、同社売上高、国内インテリア市場、新設住宅着工戸数(国土交通省発表)の推移を比較したもの。同社の売上高及び国内インテリア市場の動向は、新設住宅着工戸数にほぼリンクしてきたが、リーマンショック後の動きを見ると、市場全体及び新設住宅着工件数は低水準で推移しているのに対し、同社売上高は2020年3月までは過去最高を連続して更新。21年3月期は新型コロナウイルスの影響もあり11期ぶりの減収となったが、2022年3月期は再度増収に転じ、23年3月期は過去最高を更新した。

 

 

これは、M&Aに加え、民間住宅以外に非住宅市場の開拓に注力してきたことによるものである。


 

国土交通省発表の「令和3年度 建設投資見通し」によれば、民間住宅建築投資、民間非住宅建築投資ともにリーマンショック後は回復途上にあったが、民間住宅建築投資は2017年度以降頭打ち、2000年レベルを上回っていた民間非住宅建築投資も新型コロナウイルスの影響もあり、横這いで推移している。
事務所及び店舗(新設)の床面積合計は、減少傾向にあったが、2021年度は事務所、店舗ともに前年度を上回った。

 

また、一般財団法人 建設経済研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2023年4月12日発表)によれば、名目民間非住宅建築投資の対前年度伸び率は、2019年度まで堅調に増加した後、2020年度(見込み)9.7%減とコロナ禍で大きく減少するも、2021年度(見込み)3.0%増、2022年度(見通し)11.3%増、2023年度(見通し)4.7%増と回復に転じる見通しである。

 

着工床面積
*事務所
2021年度は34.6%増とコロナ禍の影響を受けた前年度から大幅に回復するも、2022年度はその反動で20.5%減と大幅減少の見通し。23年度は3.7%増と堅調な予想。「建設資材価格高騰の影響等の懸念材料がある一方、投資家の投資姿勢は旺盛であり、首都圏の大型再開発案件を中心とした投資が続いていることから、当面は堅調に推移するとみられる」とのことである。

 

*店舗
19年度20.5%減、20年度2.0%減とマイナスが続き、2021年度は 3.4%増と回復したが、2022年度(見通し)0.6%増、2023年度(見通し)0.0%と前年並みが続く見通し。「販売コストの上昇による投資への足踏みはあるものの、卸売・小売業等の建設投資動向は拡大傾向が続いており、業績好調な小売業の継続投資を下支えに安定して推移するとみられる」と述べている。

 

民間建築補修(改装・改修)
同じく「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2023年4月12日発表)では、「2022年度は前年度を下回る水準になると予測する。2023年度においては、コロナ禍で投資が慎重になっていた民間非住宅分野だけでなく、新しい生活様式に合わせた空間利用のニーズが継続すると予想されるため、住宅分野においても底堅い動きがあるものと考え、増加すると予測する。」と述べており、リフォーム・リニューアル需要も堅調に推移するものとも思われる。

 

以上のように、足元は新型コロナウイルスの影響の反動もあり、非住宅市場はやや持ち直しの兆しがある。
また、非住宅市場においては、リニューアル需要は堅調に推移しているため、サンゲツでは市場開拓部およびコントラクト営業部を中心に需要取り込みを図っている。加えて海外事業の育成にも取り組み、他社にはない強みを強化、更なる成長を追求している。

 

◎同業他社
インテリア、内装材を扱う主な同業他社としては以下の8社が挙げられる。

コード

企業名

売上高

増収率

営業利益

営業増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

ROE

3501

住江織物

94,000

+15.0%

1,100

+893.9%

1.2%

16,685

68.8

0.5

1.0%

4206

アイカ工業

250,000

+3.3%

21,500

+4.6%

8.6%

208,787

15.0

1.4

6.9%

4215

タキロンシーアイ

154,000

+5.7%

7,800

+34.7%

5.1%

51,508

10.3

0.6

2.7%

4224

ロンシール工業

21,100

+7.9%

600

+5.5%

2.8%

6,137

13.6

0.3

2.5%

5956

トーソー

21,800

+2.4%

550

-23.6%

2.5%

5,260

13.4

0.3

2.7%

7971

東リ

99,500

+4.5%

3,600

+1.9%

3.6%

20,516

7.0

0.5

6.5%

7989

立川ブラインド工業

42,800

+3.6%

4,070

+6.5%

9.5%

26,369

8.9

0.6

5.8%

8130

サンゲツ

183,000

+4.0%

15,000

-26.0%

8.2%

142,376

13.4

1.5

15.3%

9827

リリカラ

35,700

+7.4%

870

-46.4%

2.4%

7,419

16.4

0.9

13.3%

*単位:百万円、倍。業績は今期会社予想。時価総額、PER、PBRは2023年6月9日終値ベース。ROEは前期実績。

 

【1-4 事業内容】

壁紙、床材、カーテン、椅子生地などインテリア商品の企画開発及び販売が中心事業。一部商品を除きファブレスであるが、単なる商社ではなく、扱う商品はすべて自社で企画・デザイン・開発を行っている。子会社を通じてエクステリア事業も展開している。米国、シンガポール、中国/香港の子会社3社により海外事業も展開している。
事業セグメントは、インテリアセグメント、エクステリアセグメント、海外セグメント、スペースクリエーションセグメントの4セグメント。なお、24年3月期より、「国内インテリア」「国内エクステリア」「海外」の3セグメントに変更となる。

 


(同社資料より)

 

①「インテリアセグメント」
◎主な取扱商品

壁紙

同社の主力商品。住宅から非住宅分野まで幅広く利用される壁装材。近年では汚れ防止や消臭、キズが付きにくいなどの性能を持つ機能性壁紙も人気。抗ウイルス壁紙などもラインアップ。また、部屋の一面あるいは一部だけ色やデザインの異なる壁紙を使う「アクセントクロス」は住空間の魅力を高め、一般住宅、賃貸住宅でも採用が進んでいる。

クッションフロア

住宅用と店舗用のタイプがあり、アパートやマンションなどでも多く利用されているシート系床材。木目・石目など豊富なデザインとクッション性が特長の幅広い用途を持つアイテム。

長尺塩ビシート

 

医療・福祉施設や商業スペース、教育施設などに多く利用されるシート系床材。安全、衛生面に配慮した機能のほか、ワックスがけ不要などの優れたメンテナンス性による管理維持コストの削減、環境負荷の低減にも繋がる性能を持つアイテムなどがある。

フロアタイル

商業施設や教育施設、また戸建やアパート、マンションにも利用される幅広い用途をもつ、タイル状の塩ビ床材。ウッドやストーンなどモチーフとなる素材を高い印刷技術と精緻なエンボス加工で表現した意匠性の高さも特長。

カーペット

 

住宅から商業施設、ホテル、旅館まで幅広い用途で利用される繊維系床材。多彩なデザインと高い機能性を備える。物件に応じたオリジナルデザインの提案も行う。

カーペットタイル

主に、オフィス、ホテル、商業施設、教育施設などに使用される50センチ角のタイル状カーペット。貼り替えも手軽な上、メンテナンス性にも優れている。

カーテン

同社が取扱うのはすべてオーダーカーテン。好みや部屋の条件に合ったデザイン、サイズで窓まわりを装飾できるのが特長。デザイン性豊かな厚手のカーテンのほか、外から室内が見えにくいミラー調レースや遮熱などの機能性アイテムも人気。

 

商品数は約12,000点と他に類を見ない多彩なラインアップを誇っている。
主力の壁紙で商品数は約4,300点。2~3年毎に見本帳の更新を行っているが(カーテンは3年毎)、旧い商品を見本帳から外し、新しい商品に入れ替える所謂「改廃率」は壁紙で30~40%程度。廃止されたデザインの商品は破棄しなければならないため無駄が発生してしまうが、見本帳の鮮度もユーザー満足度を高める重要な要素であり、同社の体力や長年に亘るノウハウの蓄積により効率と鮮度のバランスを取っている。

 

◎営業体制
名古屋の本社の他、全国に9カ所の支社、50カ所の支店・営業所・事務所を持ち、重要な営業拠点として8カ所のショールームを有している。
 

(同社資料より)

 

最終的に商品を納入し、売上を立て、代金が入金されるのは上図右の川下の内装仕上げ段階で、主な相手先は代理店を通じた内装工事業者やインテリアショップ、建材店となるが、その前工程での商品PRも重要だ。
住宅やビルが竣工するまでには、発注者(施主)、設計事務所、デザイン事務所、ゼネコン、サブコン、ハウスメーカーなど、数多くのプレーヤーが関わっており、インテリアをデザインや機能から最終的に選択する意思決定は川上から始まっているケースも多数ある。
そのため、同社では見本帳、ショールームなど様々な機会を通じて商品のPRを行っている。もちろん「待ち」のみでなく、市場開拓部およびコントラクト営業部(全国的に法人顧客をカバー)をはじめとした全国の営業員約710名が、各担当先に足を運び情報提供・収集、提案を行っている。主として代理店を経由した販売スタイルをとっているが(一部では直接販売)、顧客数は中部地域だけで約6,000社。代理店を通しているので正確な数字は把握できていないが、全国の顧客数は数万社にのぼる。

 

◎物流体制・配送体制
物流効率化を目指し、ロジスティクス体制の整備を進めており、より広範囲なエリアの在庫バックアップと地域の在庫拠点を兼ねる「旗艦ロジスティクスセンター」を2カ所、所在地域の在庫拠点である「地域ロジスティクスセンター」を6カ所、より地域に密着した「サテライトセンター」を2カ所保有している。
東・名・阪・福はほぼ全商品が常に在庫されており、出荷点数は一日6万点に上るが、欠品率は1日平均で約0.9%となっている。周辺の物流センターから即座にカバーする事で、納期待ちを依頼する事はほぼない。内装の工期に合わせた「Just in Time」を全国物流ネットワークによって実現している。仕入先は約270社と広範囲に亘っている。

 

また、配送については、物流コストが増加するのに対応し、自社配送体制の拡充を進めている。
東北において地域配送体制を整備したのに続き、他地域でも地域配送体制を構築すると同時に、重量物の配送も大都市圏を中心に整備していく。2022年9月30日付で、九州全域における配送事業を行う「有限会社クロス企画(2023年4月に株式会社化)」を買収。九州地区での小口配送業務の強化を図る。

 

 

②「エクステリアセグメント」
2005年に子会社化した株式会社サングリーンが門扉、フェンス、テラスなどのエクステリア商品を国内で販売・施工している。新中期経営計画では、首都圏を中心とした景観ビジネスにも注力する。

 

③「海外セグメント」
北米・Koroseal Interior Products Holdings, Inc.、東南アジア ・Goodrich Global Holdings Pte. Ltd.、中国/香港・Goodrich Global Limitedを中心に、事業を展開している。

 

④「スペースクリエーションセグメント」
サンゲツのスペースクリエーション事業部および子会社であるフェアトーン株式会社で構成される。
サンゲツのデザイン力およびフェアトーンの内装仕上げに関する施工能力をベースに、新たに、スペースデザイン力・発想力・構想力・提案力・コンサル力などのソフトパワー、木工・照明・電気なども対象とした総合的な施工力を付加、施工管理力を強化し、顧客にとって最適な空間を創造・提供する。

 

【1-5 資本政策・株主還元】

新中期経営計画【 BX 2025 】では、資本政策の方針として「2026年3月末の自己資本を 950~1,050 億円 とする(2023年3月末 自己資本957億円)」「株主還元は配当を主体とし、1株当たり年間配当金は130円を下限に、安定的な増配を目指す」「市場の状況により自己株式の取得も検討する」としている。

 

(同社資料より)

 

【1-6 ROE分析】

 

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

21/3期

22/3期

23/3期

ROE (%)

4.6

3.7

5.6

6.0

4.2

3.5

1.5

5.1

0.3

15.3

 売上高当期純利益率(%)

4.14

3.33

4.77

4.84

2.89

2.23

0.89

3.29

0.19

7.96

 総資産回転率(回)

0.93

0.91

0.95

0.88

0.91

0.94

0.96

0.90

1.01

1.13

 レバレッジ(倍)

1.20

1.21

1.24

1.41

1.60

1.67

1.74

1.73

1.69

1.70

*売上高当期純利益率=親会社株主に帰属する当期純利益÷当期売上高
総資産回転率=当期売上高÷(前期末総資産+当期末総資産の平均値)
レバレッジ=(前期末総資産+当期末総資産の平均値)÷(前期末自己資本+当期末自己資本の平均値)

 

価格改定実施に伴い売上高当期純利益率が大きく改善し、ROEは日本企業が一般的に目指すべきと言われている8%を大きく超えた。

 

 

【1-7 特徴と強み】

「商品企画・製造・調達」「空間デザイン提案・商品提案」「内装施工・総合施工」「在庫・出荷・配送」の4つからなるバリューチェーン全体を連続性のある複合的な機能でカバーする製販一体のビジネスモデルは、他社には真似のできないサンゲツグループならではの特徴・強みであり、強力な競争優位性の源泉である。
各機能の概要、特徴は以下のとおりである。

 

(同社 統合報告書「SANGETSU REPORT 2022」より)

 

(1)商品企画・製造・調達
建設における最終段階の工程であるインテリア・エクステリアは、空間を彩る商品として、高いデザイン性とともに、品切れのない迅速な安定供給体制が求められる。
同社グループでは、市場起点の顧客ニーズに応じた商品開発のみならず、従来の発想に縛られない新しい商品を市場に供給するべく、商品デザイン人材の拡充や外部・海外デザイナーとの取り組みも交えながら、商品デザイン力の向上に努めている。
毎年、主要見本帳30冊のうち約1/3を更改に向け開発し、約12,000 点のオリジナル商品を販売している。
この多種多様な商品群を安定的に供給するために、インテリア事業で約270 社、エクステリア事業で約150 社と取り引きを行っており、2021年3月には日本最大の壁紙生産量を誇るクレアネイト株式会社をグループ会社化し、製販一貫体制による事業の強化・効率化を図っている。
主要商品である量産壁紙製造の内製化と合わせて、各仕入先とのアライアンスの強化・連携をさらに強め、サステイナブルな安定供給体制の構築に取り組んでいる。

 

<主要リソース等>

商品デザイン人材 約70名

サプライヤー インテリア事業:約270社、エクステリア事業:約150社

国内最大の壁紙製造設備(クレアネイト株式会社)

最新鋭の壁紙製造設備(Koroseal社)

見本帳リサイクルセンター

 

(2)空間デザイン提案・商品提案
ライフスタイルの多様化、働き方の柔軟性など、コトの経済的価値の拡大が進む中、空間創造におけるデザインの必要性は年々高まっている 。
同社グループでは、内装インテリア事業において培ったコーディネート提案力をもとに、エクステリアとの融合、さらには家具や照明などシーンを彩るさまざまな商品を含めた総合的な空間提案能力を事業に活かしている。
それぞれの顧客のニーズに沿った、的確で質の高いソリューションを提供すべく、空間デザイン人材の拡充とともに、能力開発も積極的に進めている。
空間デザイン提案は付加価値の源泉であり、人々の暮らしの快適性の追求とともに、その重要性も高まることが予想されるため、今後もデザイン経営のもと、グループ全体でのデザイン力の強化・拡大を進めていく。

 

<主要リソース等>

レジデンシャルデザイン人材(住宅市場を中心に提案) 30名

コントラクトデザイン人材(非住宅市場を中心に提案) 40名

スペースクリエーションデザイン人材(非住宅市場を中心に設計・施工のトータル提案) 11名

国内インテリア営業 4社、40事業所、710名

国内エクステリア営業 15事業所、90名

海外営業 7ヵ国、210名

 

(3)内装施工・総合施工
施工はデザインを具現化する手段として非常に重要な機能だが、建設業界における人手不足は業界全体の重要課題である。
施工には、元請け工事、一次・二次下請け工事がある。同社では従来より二次下請け施工(内装業者の施工応援業務)を行ってきたが、2014年に発表した中期経営計画「Next Stage Plan G」の重点施策として、施工力強化を改めて明示し、現在はスペースクリエーション事業とフェアトーン株式会社を核として、グループ各社で二次施工のみならず、一次・元請け工事を含む総合内装施工機能の強化と、その領域拡大を進めている。
空間創造に必須となる施工力がサステイナブルな機能となるよう、今後も体制強化を図っていく。

 

(同社 統合報告書「SANGETSU REPORT 2022」より)

 

<主要リソース等>

一級・二級建築士 30名

インテリア施工技能工 1,250名

エクステリア施工技能工 290名

施工管理技士 90名

 

(4)在庫・出荷・配送
インテリア事業においては1日6万点の商品出荷と4万点のサンプル出荷を行っており、この確実な出荷体制、および日本全国各地への配送体制は、内装工事の工期変動への柔軟な対応や内装デザイン・仕様のスムーズな検討を可能にしている。
同社では、各エリアの在庫拠点となる地域ロジスティクスセンター(LC)を6カ所、巨大なスペースで各地域LCの在庫バックアップ機能を持ち、所在エリアの在庫拠点も兼ねる旗艦LCを2カ所、有している。さらに、よりきめ細かな配送網を構築するためのサテライトセンターの設置を各地で進めている。
また、ノウハウの蓄積による持続性強化の考えから、出荷業務や配送業務を社員で行うべく、専門職掌を設けてロジスティクス業務に特化した人材の採用・育成を進めている。2021年1月に新設・統合した関西LCでは、昨今問題となっている人手不足や高齢化を見据え、徹底した自動化・省人化を実現した 。
安定した在庫とタイムリーな出荷体制、きめ細かな配送体制は、事業体制の維持・強化に必須であり、今後も積極的に各種施策を展開していく。

 

<主要リソース等>

専門職掌および業務委託先 800名

旗艦/地域LC  8拠点、23.6万㎡

国内トラック 500台/日

 

(同社 統合報告書「SANGETSU REPORT 2022」より)

 

2.2023年3月期決算概要

(1)業績概要

 

22/3期

構成比

23/3期

構成比

前期比

修正予想比

売上高

149,481

100.0%

176,022

100.0%

+17.8%

+1.2%

売上総利益

39,962

26.7%

56,374

32.0%

+41.1%

+0.7%

販管費

32,002

21.4%

36,094

20.5%

+12.8%

+0.3%

営業利益

7,959

5.3%

20,280

11.5%

+154.8%

+1.4%

経常利益

8,203

5.5%

20,690

11.8%

+152.2%

+0.9%

当期純利益

276

0.2%

14,005

8.0%

-

+3.7%

*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。修正予想比は、23年2月公表の修正業績予想に対する比率。

 

2桁増収、大幅増益で売上・利益とも過去最高を更新
売上高は前期比17.8%増の1,760億円、営業利益は同154.8%増の202億円。2021年9月の第1次値上げ、22年4月の第2次値上げに次いで22年10月に実施した第3次値上げにより、インテリア事業の収益性が大幅に改善。海外セグメントの損失幅も縮小した。
2度目の上方修正となった23年2月公表の業績予想を上回り、売上・利益とも過去最高を更新した。


 

 

(2)セグメント別動向

 

22/3期

23/3期

前期比

売上高

 

 

 

インテリアセグメント

123,042

141,949

+15.4%

壁装材事業

62,337

73,503

+17.9%

床材事業

44,881

52,154

+16.2%

ファブリック事業

8,612

9,514

+10.5%

その他

7,210

6,776

-6.0%

エクステリアセグメント

5,823

6,293

+8.1%

海外セグメント

15,930

21,670

+36.0%

スペースクリエーションセグメント

6,579

7,746

+17.8%

調整額

-1,893

-1,638

-

合計

149,481

176,022

+17.8%

営業利益

 

 

 

インテリアセグメント

9,097

20,504

+125.4%

エクステリアセグメント

541

450

-16.8%

海外セグメント

-1,821

-1,065

-

スペースクリエーションセグメント

139

391

+179.9%

調整額

2

0

-

合計

7,959

20,280

+154.8%

*単位:百万円。ファブリック事業は、カーテンと椅子生地を合わせたもの。

 

➀インテリアセグメント
増収増益。
壁装事業、床材事業、ファブリック事業の各事業において22年4月1日及び10月1日受注分より実施した取引価格改定の浸透により、売上高・営業利益ともに伸長した。
壁紙、塩ビシート床材など同社の主要商品は価格改定により数量が減少し、シェアも低下したが、収益との見合いでは健全な範囲内でのシェア低下であり、今後商品力やサービス力による再度のシェア上昇を目指していく考えだ。

 

<壁装材>
増収。
新設住宅着工床面積の減少により市場全体が弱含みで推移する中、住宅向け量産壁紙「SP」が引き続き堅調を維持した。22年11月に発刊した非住宅施設向け不燃認定壁紙見本帳「FAITH」が非住宅のみならず住宅での採用が進み、発刊直後から売上が伸長した。ガラスフィルム見本帳「クレアス」や粘着剤付化粧フィルム見本帳「リアテック」において、営業部門間での連携が奏功し、好調に推移した。

 

<床材>
増収。
都市圏における商業・飲食需要や底堅い住宅リニューアル市場を背景として、住宅・非住宅で幅広く使用できるビニル床タイル見本帳「フロアタイル」の売上が堅調に推移した。低環境負荷商品を収録したカーペットタイル見本帳「NT700」が、環境配慮に向けた市場のニーズを捉え、オフィスを中心に採用が進んだほか、ホテル需要の回復基調を追い風として、
「DT」や「カーペット」の売上も伸長した。23年1月には施設用床材見本帳「Sフロア」を発刊し、低価格帯の戦略商品を拡充した。

 

<ファブリック>
増収。
カーテン市場全体に縮小傾向が見られ、厳しい環境となったものの、住宅市場において、カーテン見本帳「ストリングス」が売上をけん引したほか、23年2月には住宅向けカーテン見本帳「AC」を発刊し、市場浸透に向けた販促活動を行った。新見本帳「AC」においては、上代価格の改定を行い、収益性の改善に努めた。BtoC事業を担う株式会社サンゲツヴォーヌにおいては、EC事業やビルダー向け販売事業を通じた積極的な営業活動を進めた。

 

<その他>
施工代や接着剤を含むその他の売上を含んでいる。

 

➁エクステリアセグメント
増収減益。
住宅部門では、新設住宅着工戸数の伸び悩みにより厳しい状況となる中、株式会社サングリーンの創立50周年を記念した販促施策や、リフォームに重点を置いた営業活動等が奏功し、売上が伸長した。非住宅部門は、年度末の需要期を迎え好調に推移し、大型フェンスや外周フェンス等が数多く完工し、スペースクリエーション分野においても進展が見られた。成長戦略に基づく人員の拡充や専門人材の登用を進めたため、増収も、人材拡充施策等により販管費が増加し減益。

 

③海外セグメント
増収、損失縮小。
海外セグメントでは2022年1月から12月までの各社実績を23年3月期の業績に算入している。

 

<北米市場>
市場環境は経済活動の回復を背景として復調傾向となったものの、足元では金利の上昇による建設市場の弱含みといった影響が見られた。こうした環境下、デザイン開発を強化している自社製造壁紙が市場の評価を得て好調に推移した。一部商品からの撤退を行った壁面保護材料事業においては収益の改善が見られ、海外の大型医療物件への納品も売上に貢献した。在庫調整のための製造量減少による生産効率の低下や、業績連動賞与の増加に伴う販管費の増加等が収益の減少要因となった。

 

<東南アジア市場>
新型コロナウイルス感染症による移動制限の撤廃等により、各国の経済活動は総じて回復基調となった。これにより、停滞していた建設工事も再開し、2020年に100%現地法人としたタイやベトナムでの売上が大きく伸長するなど、各拠点で堅調に推移した。新たな営業支援・顧客管理システムの導入や、国をまたいだグローバルスペック営業の強化といった各地域の連携強化を図った。

 

<中国・香港市場>
各地での厳格なロックダウン及び観光客の制限の影響が継続し、物件の竣工延期が発生するなど、依然として厳しい状況となった。そうした中、収益性を意識した営業体制の見直しや北米のグループ会社であるKoroseal社の新商品発表会をオンラインで開催するなど、コロナ終息後を見据えた施策を着実に実行した。

 

④スペースクリエーションセグメント
増収増益。
主に施工部門を担うフェアトーン株式会社においては、首都圏を中心とするオフィスリニューアル需要を背景として、売上が堅調に推移した。サンゲツの営業部門との連携による人材の拡充が奏功し、新規顧客の開拓が進んだ。

 

(3)財務状態
◎主要BS

 

22/3月末

23/3月末

増減

 

22/3月末

23/3月末

増減

流動資産

87,525

104,843

+17,318

流動負債

40,758

56,565

+15,807

現預金

18,347

24,817

+6,470

仕入債務

27,791

30,856

+3,065

売上債権

50,175

56,209

+6,034

短期借入金

2,077

9,041

+6,964

有価証券

300

300

0

固定負債

18,857

12,063

-6,794

棚卸資産

17,722

20,925

+3,203

長期借入金

8,018

1,413

-6,605

固定資産

60,417

59,610

-807

負債合計

59,616

68,629

+9,013

有形固定資産

35,285

36,825

+1,540

純資産

88,326

95,825

+7,499

無形固定資産

4,058

3,512

-546

利益剰余金

54,537

64,138

+9,601

投資その他の資産

21,073

19,273

-1,800

自己株式

-907

-849

+58

資産合計

147,943

164,454

+16,511

負債純資産合計

147,943

164,454

+16,511

 

 

 

 

自己資本比率

59.4%

58.2%

-1.2pt

*単位:百万円。売上債権は、受取手形、売掛金及び契約資産、電子記録債権の合計。仕入債務は、支払手形及び買掛金、契約負債、電子記録債務の合計。借入金にはリース債務を含む。

 

現預金、売上債権及び棚卸資産の増加等により、資産合計は前期末に比べ165億円増加。
仕入債務の増加等で負債合計は同90億円増加。
利益剰余金の増加等で純資産は同74億円増加。これらの結果、自己資本比率は前期末から1.2ポイント低下し58.2%となった。長短借入金残高は同3億円増加し104億円となった。

 

(4)トピックス
◎サステナビリティの取り組み
①環境
持続可能な社会の実現に向けた商品開発を進め、リサイクル資源を利用した壁紙「MEGUReWALL(メグリウォール)」やカーペットタイル「NT700 Fiber Eco」、カーテン「&ECO」など、壁・床・ファブリックと全てのエレメントにわたり低環境負荷商品を拡充した。「sangetsu 見本帳リサイクルセンター」でのリサイクル処理量の拡大に努めたほか、社員が主体となった環境保護活動への参加も積極的に実施した。
GHG削減に向けた取り組みにおいては、Scope1・Scope2の削減に向けた施策と共に、同社グループのGHG排出量において大きな割合を占めるScope3の削減を目指し、仕入先に直接赴き、環境の取り組みや改善について確認やアドバイス等を行った。

 

②社会参画
継続的に実施している児童養護施設への内装改装支援は、新型コロナウイルス感染症防止対策を行いつつ活動を展開し、22年度の実績は55件、2014年からの累計では187件となった。ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みでは、女性管理職比率と障がい者雇用率の向上に努め、多様な人材が幅広い組織で活躍できるように職場環境の改善を行った。開発途上国の子ども達を支援するNPOへの協力や産学連携のプロジェクトへの参画、LGBTQへの理解を深めるセミナーの開催など、幅広い活動に取り組んだ。

 

③人材価値向上
人事制度改革により管理職にジョブ型を導入することで、職務と報酬の公平性を重視し、社員がより幅広いキャリアを描き、挑戦できる組織の構築に向けた体制整備を行った。社員の健康診断に対する保健指導や生活習慣の改善といった、健康経営方針に基づく長期的な取り組みが評価され、「健康経営優良法人2023」に認定されました。同認定は前年に続き4年連続、通算で5度目。

 

④開示
サステナビリティ情報に関する積極的な情報開示が評価され、2023年1月にサステナビリティサイトが、一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会が実施する「サステナビリティサイト・アワード2023」においてシルバー(優秀賞)を受賞した。

 

3.2024年3月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

売上高

176,022

100.0%

183,000

100.0%

+4.0%

売上総利益

56,374

32.0%

53,500

29.2%

-5.1%

販管費

36,094

20.5%

38,500

21.0%

+6.7%

営業利益

20,280

11.5%

15,000

8.2%

-26.0%

経常利益

20,690

11.8%

15,400

8.4%

-25.6%

当期純利益

14,005

8.0%

10,500

5.7%

-25.0%

*単位: 百万円。

 

増収減益予想
売上高は前期比4.0%増の1,830億円、営業利益は同26.0%減の150億円の予想。
住宅部門は新築/リフォームともに弱含みで推移するが、非住宅部門では、新築の21年度着工分が寄与する。リニューアルは引き続き増加基調を見込む。
こうした環境下、数量の回復、海外事業の改善による増収を予想する一方、仕入価格や物流費の増加、賃金アップやキャリア採用、教育・研修費増加による人件費増などのコスト増で減益を予想している。
現時点ではコスト上昇に対応した価格転嫁は前提としていない。
配当は前期比25.00円/株増配の130.00円/株の予想。10期連続増配で予想配当性向は72.7%。

 

 

【3-2 セグメント別動向】

24年3月期より報告セグメントを「国内インテリア」「国内エクステリア」「海外」の3区分に変更する。

 

 

23/3期

24/3期(予)

前期比

売上高

 

 

 

国内インテリア

147,987

153,500

+3.7%

国内エクステリア

6,293

6,700

+6.5%

海外

21,758

22,800

+4.8%

調整額

-17

-

-

合計

176,022

183,000

+4.0%

営業利益

 

 

 

国内インテリア

21,096

14,600

-30.8%

国内エクステリア

450

400

-11.2%

海外

-1,263

0

-

調整額

-2

-

-

合計

20,280

15,000

-26.0%

*単位: 百万円。
2023年3月期の実績は変更後のセグメント区分に組み替えた参考値。

4.中期経営計画(2023-2025)【BX 2025】

23年5月12日、2020 年 5 月に発表した 2030 年を見据えた Sangetsu Group長期ビジョン【DESIGN 2030】を見直すとともに、2025年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画(2023-2025)【BX 2025】を策定した。

 

【4-1 長期ビジョンの見直しおよび新中期経営計画策定の背景】

同社グループは、2020年5月に長期ビジョン【DESIGN 2030】とともに、2020年度から2022年度までの中期経営計画(2020-2022)【D.C. 2022】を発表し、4つの基本方針に基づく個別施策を着実に実行してきた。
その結果、長期ビジョン【DESIGN 2030】で設定した売上高・利益の収益目標を大きく上回ることができた。この3年間は、新型コロナウイルス感染症により、市場は大きく落ち込み、米国 Koroseal社が大規模な減損損失を計上するなど、同社も影響を受けたが、自社グループの事業基盤や収益力は大きく拡大・強化されたと捉えている。
一方、世界経済は新型コロナウイルス感染症の影響から脱したとはいえ、格差の拡大、地政学的不安定性の増大、地球温暖化への対応の緊急性の高まり、金融情勢の不安定化等の不確実性、不透明性がますます高まっている。

 

こうした状況をふまえ、同社グループでは、改めて長期ビジョン【DESIGN 2030】を見直すとともに、長期的な成長に向けた新中期経営計画【BX 2025】を策定した。
なお、現在同社グループではグループ社員を中心としたタスクフォースにより企業理念の見直しを行っている。

 

【4-2 前中期経営計画(2020-2022) 【D.C. 2022】の振り返り】

(1)成果:実施施策と成果

1.基幹事業の質的成長による収益の拡大

・低環境負荷商品の発売、低価格帯商品の拡充等商品ポートフォリオの増強

・クレアネイト社買収、新工場建設決定等の戦略的調達体制構築

・地域密着型営業体制の強化と全国展開型顧客フォロー体制整備による取引獲得能力向上

・大規模在庫拠点である旗艦ロジスティクスセンターの設置と地域サテライト型ロジスティクスセンターの展開、全国配送網の整備

・カーテンの to C販売の拡大

2.基幹事業のリソースに基づく次世代事業の収益化

・インテリア、エクステリア両面での空間デザイン力、施工管理力の強化

・東北地区有力施工事業者である株式会社壁装の買収を含めた施工能力拡大

・東南アジア・中国/香港での事業体制再編

3.経営・事業基盤の強化

・管理職への職務給制度(ジョブ型人事制度)の導入

4.3次にわたる価格改定による収益の向上

-

 

(2)成果:定量実績
①財務指標

 

23/3期

参考:過去最高

【D.C. 2022】目標

【DESIGN 2030】目標

売上高

1,760.2

1,612(2019年度)

1,620

2,250※

EBITDA

246.8

140(1996年度)

-

-

営業利益

202.8

125(1996年度)

120

185

当期純利益

140.0

65(2016年度)

85

-

*単位:億円
【DESIGN 2030】の見直し前の売上高目標は、収益認識に関する会計基準適用無し

 

2014年度にスタートした新体制の下、2度の中期経営計画「Next stage Plan G」「PLG2019」で実施してきた投資が「D.C. 2022」で効果を創出し、事業基盤・サービス機能の強化に基づく収益性向上を達成した。
営業利益は長期目標である【DESIGN .2030】の185億円を上回った。

 

 

 

 

 

23/3期

【D.C. 2022】目標

ROIC

16.5%

9.0%

ROE

15.3%

9.0%

CCC

77.1日

65日

 

仕入債務回転期間、棚卸資産回転期間の長期化により、CCCが目標未達であった以外は全ての目標をクリアした。

 

②非財務指標
地球環境、人的資本、社会資本の目標達成状況は以下のとおり。
スコープ1及び2におけるGHG排出削減目標は達成した。

(同社資料より)

 

③資本政策・株主還元
*自己資本
2020年3月末の自己資本932.4億円に対し、「900~950億円の範囲で維持する」ことを目標としていたが、2023年3月末は957.4億円と、若干の超過となった。

 

*資金配分
成長投資への資金配分計画を「200~260億円」としていたが、実績は158.6億円と50~100億円及ばなかった。

 

*株主還元
3年間の還元総額は169.2億円。総還元性向は約100%の方針に対し88.8%の実績。

 

(3)課題認識
前中期経営計画【 D.C. 2022 】を終えて、以下のような課題を認識している。

 

◎直接的な外部環境

高いシェアをもつ壁紙等、既存主力商品の日本市場の数量停滞

施工技能者の高齢化、施工力不足の顕在化

小口・重量物配送における物流 2024 年問題の現実化

原材料費、物流費、人件費の継続的上昇

汎用品価格帯でのリサイクルおよび低環境負荷商品への要請

 

◎内部課題

限定的な取扱商品

独自の商品デザイン力と裏付けとなるブランディング力

商品・物流・施工・販売・経営を統合管理するシステム構築

空間デザイン、施工管理、見積・調達、提案における専門力

地理的・規模的に限定されたエクステリア事業

海外事業会社の空間デザイン提案力、短納期供給力、施工支援力、商品デザイン力

事業転換の実行による販管費の拡大

社員意識変革、社員エンゲージメント、コンプライアンス、非正規社員の増加

教育研修を含む人的資本への低投資

 

 

【4-3 長期ビジョン【DESIGN 2030】の見直し】

長期ビジョン【DESIGN 2030】では“サンゲツグループはスペースクリエーション企業へ”を目標に掲げ、スペースクリエーション企業へ転換するためのアプローチを明示し、取り組むこととしている。
このベースとなる基本的な考え方、戦略に変更はないが、前中期経営計画期間中の施策面、収益面の進捗をふまえ、長期ビジョン達成へのアプローチの文言を一部変更し、スペースクリエーション企業像の明確化と、さらにその先の事業の考察を行うと同時に、2022年度決算において長期ビジョン【DESIGN 2030】の収益目標を達成したことから、新たな定量目標を設定した。

 

(1)“スペースクリエーション企業へのアプローチ”の変更
2020 年5月に発表した“スぺ―スクリエーション企業へのアプローチ”の文言を以下のとおりに変更する。

 

経営・事業の基盤

多様性のある専門人材

多様性のある人的資本

事業関連データの連携と活用

デジタル資本の連携と活用

主要機能

サービス売りへの完全転換

 

サービスを付加価値の源泉とする事業

ソリューション提供

 

空間デザイン、商品、物流・配送、施工等の機能を有機的にインテグレートしてソリューションとして提供する事業

 

 

(2)目指すスペースクリエーション企業像の明確化
長期ビジョン【DESIGN 2030】で目指しているスペースクリエーション企業像を以下のとおり明確化する。

 

「人的資本とデジタル資本を基盤としたデザイン力とクリエイティビティによる4機能を有機的にインテグレートしたソリューション力により、グローバルにスペースクリエーションに関する高い価値を提供する企業」

 

<4つの機能>

それぞれの市場に最適なコンセプトに基づく魅力的な空間デザイン提案機能

高度な企画・開発・調達力を持ち、広範囲な商品を提案するスペース材料提供機能

品切れなく広域に即時配送を可能とする在庫・配送・物流機能

さまざまな事業、人的関係、企業連携を通じての規模と総合性・機動性のある施工機能

 

(3)更なる成長のための戦略:ソリューション力の強化
スペースクリエーション企業のプラットフォーム強化に加え、更なる商品・分野・地域での成長戦略を展開する。
空間デザイン、材料提供、物流・配送、施工機能といったソリューション力の強化を図る。
具体的には、【DESIGN 2030】を見据えて【BX 2025】から、「主要商品・事業の収益維持・向上」「中型商品の強化」「新商品による新市場開拓」「エクステリア分野の強化」「海外事業の収益拡大」に取り組む。

 

(4)スペースクリエーション企業の先の展開:スペースオペレーション事業への展開
同社では、スペースクリエーション企業へと転換することによる収益基盤の拡大と、収益の安定性を確認する一方、さらなる大きな成長のためにはスペースクリエーション企業に留まらず、さらに事業を展開していく必要性も認識した。

 

スペースクリエーション企業として、人々によろこびとやすらぎをもたらす空間をデザインし、提案し、提供するためには、その空間での人々の過ごし方を考え、構想することが必要となる。すなわち、スペースクリエーションとはどのような空間を提供するのか、空間をどのように人々に使っていただくかを考えることであり、これは空間のオペレーションがいかに行われるかを考察することに繋がっていると考えている。

 

その意味において、スペースクリエーション事業の先には空間のオペレーション事業の可能性があると考えており、「空間軸」に「時間軸」を掛け合わせた、スペースオペレーション事業への展開の可能性を追求すべく、検討を進めていく考えだ。

 

(5)新たな定量目標

 

 

2030年3月期の目標達成に向け今期から【BX 2025】を推進するとともに、長期的な視点でスペースオペレーション事業への展開を目指す。

 

【4-4 中期経営計画【BX 2025】の概要】

(1)基本方針
【BX 2025】は、前述した「課題認識」の下、「更なる成長のための戦略であるソリューション力の強化」に向け、次の飛躍に備える3年間と位置づけている。

 

<基本方針>
スペースクリエーションの価値を高めるソリューション力を強化・拡充し、強固な収益力と成長力を持つスペースクリエーション企業へと転換。
主要商品・市場の事業拡張に加え、商品の拡充、エクステリア事業・海外事業の拡大を実行する。
また、更なる長期的成長を可能ならしめる事業を展開するべく、スペースオペレーション事業の可能性を検討する。

 

<新組織体制>
この基本方針を徹底させ、ソリューション力を強化・拡充するために、事業部門を従来の取扱商材別から、地域別に分けたビジネスユニット体制に変革した。

 

(2)施策
「1.人的資本の拡大・高度化・活躍支援」「2. デジタル資本の蓄積・分析・活用」「3. ソリューション提供力の強化」「4. エクステリア事業と海外事業」「5. 社会価値の向上」の5つを挙げている。

 

①人的資本の拡大・高度化・活躍支援
人的資本の強化が、最重要課題であると考えており、具体的には以下の取り組みを進める。

組織別人事担当者の配置

多様性のあるキャリア採用の大幅増と新卒採用拡大

専門性と事業構築力強化のための教育・研修拡充

処遇改善と働く環境整備

非正規社員比率の改善とダイバーシティの推進

 

・社員各人をきめ細かくフォローするために、全社の人事ではなく、各組織別の人事担当者を配置する。

 

・サンゲツ単体のキャリア採用は、空間デザイナー、施工エンジニア、情報システム関連、ロジスティクス、コーポレート部門など、3年間で60-80名の採用を計画している。今期は40名の採用を見込んでいる。

 

・サンゲツ単体では、5%のベースアップ、基本賞与、業績連動賞与などで23年度は22年度比14.6%の賃上げとなる見通しだ。平均年収も、22年度の6,790千円から7,750千円に上昇する。

 

・継続的に実施している社員アンケートの結果、やりがいが低下傾向にある一方、将来性があると考える社員の比率は上昇しており、チャレンジを重視する社風を感じる社員も増加している。
「やりがい」に関しては、社員の大半を占める営業社員に対する評価・報酬が従来は個人を対象としたものであったのに対し、組織対象に変更したためと見ているが、上記のような処遇改善により、足元では認識も変化しているということだ。

 

②デジタル資本の蓄積・分析・活用
具体的な施策は以下のとおり。

事業モデル転換に向けての基幹システムのリノベーション

空間デザイン提案を含むバリューチェーン変革のための情報・DATA活用推進

代理店との協業による商流・物流データ活用を通じての営業・物流の効率化、確実化

業務改善と現場業務のデジタル化推進

 

最重要課題が「代理店との協業による商流・物流データ活用を通じての営業・物流の効率化、確実化」である。
現在、同社の長いバリューチェーン内で、情報・DATAが分断されており、受注データと物流データの連携がない。そのため、発送した商品が現在どこにあるのかを把握することが難しい。
これを、DATAの連結を行うことで取引の確実化と物流の効率化を図る。加えて消費者に対しデジタルによる商品選定サポートを行うことで付加価値の提供も可能となる。

 

③ソリューション提供力の強化
具体的な施策は以下のとおり。

各々の市場に特化した空間デザイン、空間提案力の増強

取扱商品の拡大、高度化、ブランディング強化

商品調達体制の整備・強化

ロジスティクス体制の地理的・機能的な拡充、強化

大規模かつ機動力のある内装施工力と施工管理体制の整備

 

・サンゲツ単体では、空間設計・企画などスペースデザインを手掛ける専門人材を、2019年度の37名から2023年度には86名、2025年度には120名まで拡充する見込みだ。見積・調達・施工管理を行うエンジニアに関しては、2019年度0名を、2023年度5名、2025年度25名に増員することを目標としている。

 

・新たな取り扱い商品としてセラミックス商品、エクステリア商品の拡充を進めている。ウィリアム・モリスのデザインアーカイブに、現代のライフスタイルを調和させた、新たなコレクション「MORRIS CHRONICLES(モリス クロニクルズ)」の導入など、商品デザイン力・ブランディング力の強化にも取り組んでいる。

 

・商品力のみでなく機能強化で差別化を図っている同社は、遠方地区への当日配送網の拡大、重量物配送、階上げ・間配りまで行うサービス機能の提供など、ロジスティクスに関しても拡充・強化を図っている。
商品配送の現場を担うサービスクルーの拡大も進めている。22年度末の13名を23年度末には40名まで増強する計画だ。現在、札幌、東京23区、四国で実施しているが、23年度は宮城・福島・名古屋でもサービスを開始する予定で、25年度には全国での展開を計画している。

 

・内装施工力強化と施工管理体制整備に向け、建築施工管理技士(現在、1級建築施工管理技士13名、2級建築施工管理技士79名)および施工技能士(現在、1,250名)の増強を進め、サンゲツ・フェアトーンの連携を強化する。

 

④エクステリア事業と海外事業
具体的な施策は以下のとおり。

エクステリア事業の地理的・規模的拡大、高度化

海外事業におけるスペ―スクリエーション事業への転換のための商品・空間デザイン力強化、短納期供給体制構築、施工支援力強化、市場に応じたきめ細かな営業体制構築

 

・エクステリア事業は中部地区においては35%のシェアを有するものの、関東地区、全国でのシェアはそれぞれ2.0%、6.5%と低水準。そこで、インテリア事業とエクステリア事業の協業を強化する。インテリア事業の基盤を活用し、エクステリア事業の営業活動を活発化させるほか、インテリアとエクステリアの空間デザインの連携による提案力強化や施工体制の整備を図る。エクステリアデザイナーを22年度の5名から、25年度には30名へ増強する。

 

・海外事業では、特に北米事業の強化を目指す。北米の壁紙市場は日本市場と比較して数量はおおよそ30分の1と小さいが、単価は日本の10倍以上。商品力に加えサンゲツが得意とする機能の向上も図ることで現在約17%にとどまる北米でのシェアを拡大させ効率的な収益拡大を図る。

 

⑤社会価値の向上
環境、社会について以下のような施策を推進する。

 

<環境>

連結および単体GHG(Scope1&2)排出量削減

GHG(Scope3)排出量の把握と削減方策の明確化

低環境負荷商品の開発強化

見本帳リサイクルセンターの拡大含めリサイクルの推進

 

・GHG(Scope1&2)排出量削減目標は、「26年3月期連結28%削減(21年度比)、単体60%削減(18年度比)」「30年3月期連結55%削減(21年度比)、単体カーボンニュートラル実現」を掲げている。
グループ非製造会社においてはカーボンニュートラルの実現を目指すとともに、壁紙製造会社であるクレアネイトの広島新工場においては、メイン燃料を従来の重油から液化天然ガス(LNG)にするなど、環境負荷の低減に向けた取り組みを進める。

 

<社会>

ダイバーシティ、エクイティ & インクルージョン推進

児童養護施設の住環境改善活動の推進

支援が必要な子ども達、開発途上国、難民への継続的支援

 

・サンゲツ単体の女性管理職比率は現在の20.1%を26年度期初には25.0%へ、障がい者雇用比率は現在の3.9%を25年度には4.0%まで引き上げる計画。

 

(3)資本政策
①株主還元方針

2026年3月末の自己資本を950〜1,050 億円 とする(2023年3月末 957億円)

株主還元は配当を主体とし、1株当たり年間配当金は130円を下限に、安定的な増配を目指す。

市場の状況により自己株式の取得も検討する

 

24年3月期は10年連続の増配を予定している。

 

②資金配分計画
資金創出・調達は、23年3月末保有現金同等物270億円、3年間の営業CF470-510億円、3年間の借入金増減は▲80-60億円。

 

これを原資に、成長投資に200-250億円、株主還元に250-350億円を計画している。
主な設備投資は、クレアネイト広島工場80億円、物流投資18億円。
26年3月末の保有現金同等物は200-250億円を見込んでいる。

 

 

(4)定量目標(KPI)
①経済的価値
◎主要指標

 

23/3期

26/3期

連結売上高

1,760.2

1,950.0

連結営業利益

202.8

205.0

連結当期純利益

140.0

145.0

ROE

15.3%

14.0%

ROIC

16.5%

14.0%

CCC

77.1日

65日

単位:億円

 

◎セグメント別目標

 

23/3期

26/3期

売上高

1,760.2

1,950.0

国内インテリア

1,479.8

1,590.0

国内エクステリア

62.9

100.0

海外

217.5

260.0

営業利益

202.8

205.0

国内インテリア

210.9

187.0

国内エクステリア

4.5

10.0

海外

-12.6

8.0

単位:億円

 

②社会的価値
◎地球環境
<事業活動(Scope1&2)における環境負荷の低減>

GHG排出量

連結 28 %削減 (2021年度比)

単体 60 %削減 (2018年度比)

使用エネルギー量

単体6.0%削減(2018年度比)

リサイクル率(有効利用率)

単体90.0%以上

 

◎人的資本
<社員の健康と能力開発、風土改革>

非喫煙率

85%以上

人的資本投資額

3年間合計7億円

キャリア採用者数

3年間合計60-80名

やりがい指数

77%以上

*いずれも単体。「やりがい指数」は、社員意識調査における「仕事のやりがい肯定率」。

 

<ダイバーシティ&インクルージョンの推進>

女性管理職比率

25.0%以上(2026年4月時点)

障がい者雇用率

4.0%以上(2026年3月末時点)

男性育休取得率

2週間以上100%

*いずれも単体。

 

③社会資本
<コミュニティへの参画>

児童養護施設改修活動費

連結50件/年間

マッチングギフト

連結18,000S-mile(※)

外部団体への寄付を含めた社会貢献活動

連結

年間経常利益の0.3〜0.5%を目途とし、寄付は特定の団体に継続的に実施する。

 

※S-mile
社会貢献活動の促進を目的とした「サンゲツグループマッチングギフトプログラム」。社員の社会貢献活動をカウントし、活動内容に対しスマイルポイント(S-mile)を付与する。そのポイントを金額換算し、同社から支援先のNPOなどの団体へ寄附する仕組み。
基準となる活動は、会社が主体となって実施する「サンゲツグループボランティアクラブ」での活動に加え、社外での福祉施設支援・被災者支援・国際交流・地域活動・青少年教育・NPO支援等の個人活動を対象とし、全国の社員が地域によらず積極的に参加できるよう活動の支援を行っている。

 

 

5.安田社長へのインタビュー

安田 正介社長に、23年3月期決算及び前中期経営計画【D.C. 2022】の振り返り、新中期経営計画【BX 2025】の主要ポイント、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

Q:「中期経営計画【D.C. 2022】の最終年度となった23年3月期は非常に手ごたえのある決算となったようですね。この結果について社長からコメントをお願いいたします。」

 

【D.C. 2022】で掲げた目標は、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を除いて、経営成績、財務指標とも全てクリアすることができました。おっしゃる通り、大変満足のいく決算であったと考えています。
3度にわたる価格改定の効果が大きかったことは確かですが、単に「当社が高いシェアを有する壁紙を中心に値上げできたから」ということではなく、商品力、空間提案力、きめ細かい配送力など以前から磨き上げてきた機能、サービスなど当社の総合力をお客様にご評価いただいた結果であり、2014年から取り組んできた収益基盤強化が結実したものと認識しています。値上げによって商品によってはシェアを落としたものもありますが、そのダウン幅は健全な範囲であり、今後機能、サービスを更に強化することで、シェアを再度回復することは十分可能と考えています。

 

一方で、売上・利益は過去最高を更新する好決算でありましたので、以降もステークホルダーの皆様の期待にお応えするという意味で、今後の成長戦略を今まで以上に明確に描く必要があると認識しています。

 

 

Q:「そうしたお考えの下、長期ビジョン【DESIGN 2030】の見直しを行いました。まず初めに、スペースクリエーション企業像の明確化、スペースクリエーション企業からさらにその先を目指したスペースオペレーションという考え方についてお聞かせください」

 

スペースクリエーション企業を、「人的資本とデジタル資本を基盤としたデザイン力とクリエイティビティによる4機能を有機的にインテグレートしたソリューション力により、グローバルにスペースクリエーションに関する高い価値を提供する企業」と定義し、空間デザイン提案機能、スペース材料提供機能、在庫・配送・物流機能、施工機能を一段と強化します。

 

また、スペースクリエーション企業は人々によろこびとやすらぎをもたらす空間をデザインし、提案・提供するのですが、その提案・提供した価値ある快適な空間を、その後も利用いただくことで、持続的な価値の提供に繋げ、空間のサブスクリプションといったような、ビジネスにできるのではないかとも考えています。
少し時間がかかるかと思いますが、「空間軸」によるスペースクリエーション事業のさらにその先の、「時間軸」による空間のオペレーション事業「スペースオペレーション事業」の可能性を追求すべく、検討を進めてまいります。

 

 

Q:「ありがとうございます。続いて中期経営計画【D.C. 2022】の振り返り、課題認識、必要な取り組みについてご説明ください」

 

◎【D.C. 2022】の実施施策と成果
この3年間はコロナの影響も受けましたが、クレアネイト社買収による量産壁紙生産体制の強化、旗艦ロジスティクスセンターの完成と全国配送網の整備など、やるべき施策は着実に実行することができました。
商品についても企画・開発を積極的に展開した結果、相当に差別化の図れる製品群を作り上げることができました。
インテリア・エクステリア双方において優秀な人材の採用により空間デザイン力、施工管理力の強化も進み、お客様における認知や理解も進みました。
損失状態が続く海外事業ですが、東南アジア及び中国に集中していくための事業体制再編が完了しました。
加えて、今後の最も重要な施策の一つである人的資本強化に向け、当社では2022年4月1日よりジョブ型人事制度を導入し、大幅な組織変更を2023年7月1日に実施することとしています。

 

◎現在の課題認識
日本市場は高いシェアをもつ壁紙等、既存主力商品の数量停滞が避けられません。加えて、高齢化に伴う人手不足・施工力不足、物流における働き方改革の推進に伴う2024年問題の現実化、各種コストの継続的な上昇、通常価格帯でのリサイクル商品および低環境負荷商品へのニーズなど、外部環境において様々な課題が横たわっています。

 

ただ、日本市場の数的停滞以外の課題は、大きなチャンスでもあります。
当社の機能を今まで以上に深堀りし、体制を構築することによって、当社の事業基盤を一段と強化することができると考えています。
例えば、物流に関して言えば、地域におけるきめ細かな配送体制を全国で構築中なのですが、個別配送を強化した地域では、明確に発注量が増加しています。
つまり、商品力や空間提案力に優れ、デリバリーも行い、必要があれば施工応援もできるのであれば、商品価格が少々高くても、お客様には当社を選択していただけるものと思います。

 

一方、当社の内部的な課題も洗い出しました。
一部商品への依存度是正のために、取扱商品の拡大や既存商品の収益性の改善が必要です。
また空間デザイン力をさらに一段と強化しなければなりません。
空間デザイン提案は、非常に大きなニーズがあります。例えば当社の営業社員がお客様のところに見本帳を持っていく。ただ単に見本帳だけを持っていくだけでは、「後で見ておきます」といったように、お客様とのコミュニケーションが後回しになってしまうケースも多いのですが、空間デザイナーを同行させると、いろいろなお話しができ、当然商品提案にも繋がっていきます。
構造設計はできるが、内部の意匠設計まで手が回らないお客様も多く、当社への期待を強く感じています。

 

課題の中で最も重要と考えているのが「人的資本の強化」です。
当社がさらに持続的に成長できるかどうかは人的資本を強化することができるか否かにかかっているといっても過言ではありません。

 

 

Q:「ではそうした課題認識の下で推進する中期経営計画(2023-2025)【 BX 2025 】における主要な施策についてコメントいただけますか」

 

4つの施策を掲げていますが、最も重要なのは、「人的資本の拡大・高度化・活躍支援」です。

 

*組織別人事別担当者の配置
7月1日から新しい人事制度の下、組織別人事担当者を配置します。
組織別に人事の担当者を配置することで、単体だけでなくグループ全体でも組織の構成員をきめ細かくフォロー、評価していくことで、社員一人一人の能力開発に繋げていきます。
制度を導入したからといってすぐに成果に結びつくものではないと思いますが、絶対不可欠な仕組みです。

 

*多様性のあるキャリア採用の大幅増と新卒採用拡大
スペースクリエーション企業としての強化・拡充に向け、空間デザイナーはもちろんですが、適切な提案のために不可欠な調達見積積算の専門職、施工力強化のための国家資格である内装管理技士の採用を強化しています。
他にも、大手企業で配送関連の実績を有する人材、IT関係の人材も採用を進めています。
空間デザイナーに関しては、当社が打ち出している「スペースクリエーション企業」というビジョンに共感して応募してくれる人材も増えています。
当社に関心を持って入社してくれた空間デザイナーを適切に評価し、マネージしていく仕組みも極めて重要ですから、そうした経験が豊富な方も招聘しています。
新卒採用については、一般的な手法のみではなく、リファラル採用も含め、様々な方法に取り組んでいます。

 

*専門性と事業構築力強化のための教育・研修拡充
空間デザイン力強化に関しては、社内でのOJTが中心となりますので、一流と言われる人材を採用し、その人を中心に様々な議論をしてもらうことが大切であると考えています。
一方で、当社生え抜きの人材だけでは、やはり視野が狭い、世界が狭い、他の業界を知らないといった点が大きな課題と考えていますので、外に出ていろいろな人と出会って、多様な世界に触れる機会を作っていきます。
加えて、変革しなければならない旧来の秩序感も残っていますので、多様性を強化するためにも積極的に外部からの人材採用を進めていきます。

 

*処遇改善と働く環境整備
ベースアップ、基本賞与、業績連動賞与により今年度は前年度比で約15%の賃上げとなります。
価格改定は対顧客という点で現場の営業社員には大変な負荷であったようですが、結果的には値上げは合理的なもので、当社の総合力をお客様が高く評価いただいたという点を彼らにも理解してもらえましたので、今後のモチベーション向上に繋がるものと考えています。

 

*非正規社員比率の改善とダイバーシティの推進
現在の非正規社員比率は約2割と、ここ数年で上昇しています。同一労働同一賃金を実現し、社員の働き甲斐を醸成するためにも、ショールームや配送部門などの現場を中心に雇用状況を制度上から改善していく必要があると認識しています。

 

 

Q:「他の施策についても簡単にコメントいただけますか」

 

「デジタル資本の蓄積・分析・活用」については、現在の状況では、当社の長いバリューチェーンの中で、最終的にお客様のところでどんな商品がどのように使われており、現場でどんなニーズが生まれているのかを把握できないという問題があります。サプライチェーンを統合したDATAの連結により、取引を確実にし、物流を効率化するとともに、現場への提案力を強化していきます。

 

「ソリューション提供力の強化」については、専門人材を始めとした人員の拡充、グループの連携強化等により、空間提案力、配送能力、施工力の強化を図ります。

 

「エクステリア事業と海外事業」については、まずエクステリア事業においてインテリア事業との協業強化のほか、エクステリア事業においてもエクステリアデザイナーを拡充し、全国シェアの拡大を図ります。
海外事業においては、米国市場でも商品力だけではなく、サプライリードタイムの改善、デザイン提案力の強化により、シェアの拡大、効率的な収益拡大を図ります。

 

「社会価値の向上」においては、GHG排出量削減についてScope1及び2において目標を確実に達成するとともに、Scope3での排出量の把握と削減方策の明確化を目指します。
人的資本強化のため、女性管理職比率及び障がい者雇用率の向上にも取り組みます。

 

 

Q:「ありがとうございます。では最後に株主・投資家へのメッセージをお願いいたします」

 

前中計【D.C. 2022】では、厳しい環境下ではありましたが、お陰様で株主の皆様にも喜んでいただける結果を残すことができました。
ただ、日本市場の量的縮小は避けられず、それを海外市場中心にカバーしていかなければなりませんし、今後の継続的なコスト上昇も見込まれます。
そうした環境下ですので、次の飛躍のために、まずは前中計で大きく前進できた基盤を強化することが最も重要であると考え、新中計【BX 2025】のテーマを「次の飛躍に備える3年間」といたしました。

 

【BX 2025】では、2026年3月期の目標を「売上高1,950億円、営業利益205億円」としており、利益に関しては23年3月期を若干上回る水準にとどまりますが、最重要課題である「人的資本強化」を着実に進めて、2030年3月期「売上高2,500億円、営業利益270億円」達成に向け各種施策に取り組んで参ります。
是非これからも中長期な視点で応援していただきますようお願い申し上げます。

 

 

6.今後の注目点

ほぼ満点ともいえる前中計【D.C. 2022】の結果であった。会社側は、新中計【BX 2025】のテーマを「次の飛躍に備える3年間」とし、人的資本強化を中心とした投資フェーズと位置付けており、今期24年3月期の増収率は1桁で、2桁の営業減益予想としているが、株価は比較的堅調で引き続き投資家の期待を集めているようだ。
2030年を見据えた各種施策の取り組み動向と合わせ、今期予想に対する業績の進捗も注目していきたい。

 

 

 

<参考1:長期ビジョン【DESIGN 2030】>

<Sangetsu Group 長期ビジョン【DESIGN 2030】>
(1)概要
安田社長が創業家以外初の経営トップに就任した2014年以降、経営体制、ガバナンス体制、仕事のやり方、社外とのかかわり方など、様々な変革に取り組み、同社は大きく変化・変容してきた。
しかし、事業そのものは、内装材料の販売という事業モデルから変化しておらず、この事業モデルそのものの変革が必要であると認識している。
そのためには、目指すビジョンを明確にし、未来の目標を明確に意識しながら、確実に諸施策を実行していく必要があると考え、2020年5月、「Sangetsu Group長期ビジョン【DESIGN 2030】」を設定した。

 

【DESIGN 2030】は2030年のありたい姿をデザインするという意味。
DESIGNのそれぞれのアルファベットが、目指すべき仕事の内容を表している。

 

(同社資料より)

 

(2)長期ビジョン【DESIGN 2030】の見直し
長期ビジョン【DESIGN 2030】では“サンゲツグループはスペースクリエーション企業へ”を目標に掲げ、スペースクリエーション企業へ転換するためのアプローチを明示し、取り組むこととしている。
このベースとなる基本的な考え方、戦略に変更はないが、前中期経営計画期間中の施策面、収益面の進捗をふまえ、長期ビジョン達成へのアプローチの文言を一部変更し、スペースクリエーション企業像の明確化と、さらにその先の事業の考察を行うと同時に、2022年度決算において長期ビジョン【DESIGN 2030】の収益目標を達成したことから、新たな定量目標を設定した。

 

①目指す姿:「スペースクリエーション企業」
現在有するモノや商品のデザイン力、営業力、物流力をベースに、新たにスペースや空間を構想・デザインし、提案する能力を獲得して、新たなスペースや空間を創造する企業を目指していく。
今回の見直しに際してはスペースクリエーション企業へと転換することによる収益基盤の拡大と、収益の安定性を確認する一方、さらなる大きな成長のためにはスペースクリエーション企業に留まらず、さらに事業を展開していく必要性も認識した。

 

②長期ビジョン達成に向けて
長期ビジョンの達成に向けては、経営の基本を「デザイン経営」とし、デザインによるブランド価値の向上と事業転換を目指す。また、経営・事業の基盤に、「多様性のある人的資本」と「デジタル資本の連携と活用」を位置付け、「現場力と多様性ある専門人材が活躍する組織」、「DATAによる事業の効率化と転換」を実現させる。
主要機能としては、空間デザイン、商品、物流・配送、施工等の機能を有機的にインテグレートしてソリューションとして提供する「ソリューション提供」を目指す。
また、事業のエリアは、日本、北米、東南アジア、中国を中心とした環太平洋地域とする。
こうしたアプローチにより、「スペースクリエーション企業」へ転換し、同時に社会的価値の実現にも取り組んでいく。

 

(同社資料より)

 

③デザイン経営
デザイン経営の考え方は以下の通り。

 

『サンゲツグループは、デザインによる提供価値の拡大・向上を実現し、事業を転換することを目指します。
商品・空間自体の美しさや機能、コーディネーションを追求するだけでなく、さまざまな空間での人々の過ごし方、生活・体験・行動を考え、人と空間とのかかわりを構想し、デザインし、提案します。

 

モノのデザイン、空間のデザインに加え、コトのデザインを考え、提案することにより、ブランド価値を向上し、従来のモノを売る会社から、空間を創造しコトを提案・実現する会社へ転換することを目指します。』

 

④実現を目指す社会的価値
実現を目指す社会的価値を「Inclusive(みんなで)、Sustainable(いつまでも)、Enjoyable(楽しさあふれる)社会の実現に貢献します」としており、Inclusive、Sustainable、EnjoyableのそれぞれにおいてSDGsの目標を掲げている。

 

平等で健康的なインクルーシブな社会の実現

 

サンゲツグループは、健康で快適な空間の創造を通じ、ジェンダーの多様性が尊重される、格差のない平等で健康的でインクルーシブな社会の実現に貢献します。

 

地球環境を守るサステイナブルな社会の実現

 

サンゲツグループは、サプライチェーン全体の環境負荷を低減し、長く使い続けられる空間の創造を通じ、ストック建築物の有効活用と共に、地球環境を守るサステイナブルな社会の実現に貢献します。

 

より豊かでエンジョイアブルな社会の実現

 

サンゲツグループは、公平・安全・安心・効率的で人権を尊重する働き方により、さまざまな文化・生活に応じた空間の創造を通じ、よりエンジョイアブルな社会の実現に貢献します。

 

 

 

3つ目のEnjoyable については、SDGsの基本的な理念「誰も取り残さない」を踏まえ、自社の事業を考慮し、一歩進んで、より豊かでエンジョイアブルな社会の実現を社会的価値の一つとして挙げることとした。

 

⑤数値目標
10年後の2030年3月期「売上高2,500億円、営業利益270億円」を目指す。

 

 

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

7名、うち社外4名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2023年6月22日

 

<基本的な考え方>
当社は、企業価値の向上を図るため全てのステークホルダーとの良好な関係を築き、持続的に発展していくことを目指しています。
その実現のため、経営の透明性、迅速性、効率性を基盤としたコーポレート・ガバナンスの強化が重要な経営課題であると認識しています。
当社は、社外取締役の経営参加による取締役会の監査・監督機能を強化することをねらいとして、監査等委員会設置会社へ移行しています。
このガバナンス体制のもと、更なる企業価値の向上に努めております。

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております。<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>

原則

開示内容

【原則1-4. いわゆる政策保有株式】

1.政策保有に関する方針、保有の適否に関する検証内容

事業戦略上、新たに関係を強化すべき企業、また、取引先として継続して関係を強化すべき企業などの観点から総合的に判断して中長期的に保有する政策保有株式を決めております。

保有株式については毎年、保有にかかるコストとリターンを確認し、中長期的にも保有意義がなくなったと判断した場合には株式の売却を行う方針であり、それに基づいた運用をしております。取締役会における検証の結果、保有継続を決定した銘柄については、有価証券報告書の「株式の保有状況」欄で開示します。

2.議決権行使の考え方

投資先企業の経営方針を尊重した上で、様々なチャンネルを通じた対話やコミュニケーションを行い、その企業の中長期的な企業価値の向上、株主還元姿勢、コーポレート・ガバナンスやCSRへの取組みなどを総合的に判断するとともに、議案の内容が当社の保有目的に適合するか、又、当該企業の価値向上につながるかを個別に精査した上で賛否の判断をしています。

【原則2-4 女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保】

補充原則2-4① 中核人材の登用等における多様性の確保

(1)多様性の確保についての考え方

サンゲツグループ人権方針、サンゲツグループダイバーシティ基本方針を掲げ、性別、年齢、国籍、人種、宗教、障がいの有無、性自認および性的指向などにかかわらず、従業員一人ひとりの個性を多様性として活かし、挑戦・革新し続ける風土の醸成や仕組みの充実を推進しています。

(2)多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標、及び多様性の確保の状況

・女性の管理職への登用

当社の正社員の女性社員比率は37.4%で、両立支援制度の拡充など性差問わず働き易い環境を整備してきたことにより年々増加しています。また、リーダー層(係長クラス)での女性比率は42.1%、管理職での女性比率は18.3%(2023年7月の組織再編時には20%を超える見込み)です。当社では2026年までに女性管理職比率を25%とする目標を掲げており、2017年度からの女性管理職比率の推移を当社ウェブサイトで開示しています。

https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/

女性活躍を支援するために、女性社員及び上司に対するキャリア形成支援と支援スキル向上研修、女性活躍支援健康セミナー等も実施しています。

・キャリア採用者の管理職への登用

経営人材、情報システム、デザイナー等の専門人材を確保するため、2016年よりキャリア採用者の採用を積極的に行っております。執行役員については10名のうち中途採用者は5名で、5割となります。当社では専門人材、プロ人材については社内での育成と共にキャリア採用を積極的に推進しており、毎年管理職として数名を採用し、また、非管理職として採用した人材についても他の正社員と同様に公正な管理職登用を行っています。キャリア採用者の定着を図り活躍を支援するために、入社後の研修等も実施しています。

・外国籍人材の管理職への登用

サンゲツ単体は主として国内市場をターゲットにしていますが、グループでの海外事業展開を始めた2015年より外国籍人材の採用を行っております。これらの人材は今後国籍の区分なく能力と業務パフォーマンスを基準に平等に管理職へ登用していきます。なお、グループの海外事業会社では、事業の中核を担う役員ポストのうち約6割が外国籍人材です。

(3)多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針、その状況

背景や感性、価値観などの違いによる新たな視点や発想を、豊かな創造性につなげる「ダイバーシティ・マネジメント」を経営の中核に据え、多様化する市場の要請を捉えながら、成長実現に向けた重要施策として取り組んでいます。ダイバーシティ&インクルージョン目標として、外国籍人材の積極採用、障がい者雇用の拡大、及び女性管理職登用支援を掲げています。この他にも、有給休暇取得率の向上、長時間労働の是正、及びLGBTQに関する取組み等を行っています。

補充原則3-1③

・サステナビリティについての取組み

長期ビジョン【DESIGN 2030】において、SDGsで示される17の目標の内、10を当社グループ目標内に入れています。また中期経営計画【BX 2025】において、基本方針の一つに社会価値に関する定量目標を掲げています。具体的な施策としては、①環境負荷の低減について具体的な数値目標の設定、②サプライチェーンにおける環境負荷の把握を促進(将来的には調達活動の判断基準の一つとする予定です)、③高耐久性のあるロングライフ商品の開発、低環境負荷商品の開発、④見本帳リサイクルがあります。④については、sangetsu 見本帳リサイクルセンターを2021年3月に開設、業務を開始しております。

・人的資本への投資

当社は、社員の多様性、人格、個性を尊重し、一人ひとりが経営の主人公として能力を最大限発揮できる人事制度の運営を目指しており、これらの制度については、当社ウェブサイトで開示しています。

https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/

人的資本への投資としては、社員の育成・能力開発、エンゲージメントの向上、働きやすい環境整備などがあげられますが、当社はこの全てに積極的に取り組んでいます。このうち育成・能力開発については、新たに導入した人事制度と連動させて高い専門性への教育投資やリスキリングなどへ、費用対効果を計りながら増額させていく予定です。当社ウェブサイトで開示していますので、ご参照ください。

https://www.sangetsu.co.jp/company/ir/

さらに、当社では健康経営方針『健康に働き、人生を送る「従業員が生き生きと働くために」』を掲げており、従業員が生き生きと働くために、安全・健康・快適で働きやすい職場環境の確保と、心身の健康づくりに向けた推進体制の充実を図り健康の保持・増進活動に取組んでおり、これらの活動についても、当社ウェブサイトで開示しています。

https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/

・知的財産への投資

長期ビジョン【DESIGN 2030】において、デザインによるブランド価値の向上と事業転換を目指し、「デザイン経営」を経営の基本としています。デザイン経営を実現するため、デザイン戦略担当部門を設置し、デザイン人材の採用拡大、育成を通じた商品・空間デザイン提案力強化、さらに知的財産権、特に商標及び意匠の創造及び保護を積極的に行うことで、ブランド価値の向上を図っております。その他、従業員の職務発明に対しては、職務発明取扱いに関する社内規定に従い適切な報奨金を支払い、知的財産の創造を促進しております。

・気候変動が事業活動に与える影響

2023年6月発刊の有価証券報告書に気候変動リスクを記載し、統合報告書44~47ページでは地球環境保全について、事業活動における環境負荷の状況をまとめており、事業活動やサプライチェーン全体での負荷低減の取組みを記載しています。

当社ウェブサイトでは、「気候変動に関する考え方、重要課題」について、グラフや表を多用して説明しています。

https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/

また、TCFDに賛同するとともに、TCFD開示項目4要素(戦略、ガバナンス、リスク管理、指標と目標)をウェブサイト内で概ね開示しています。リスク管理については、ウェブサイト内「気候変動によるリスクと機会」について表を用いて説明しています。

https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/

また、2022年度より、社長を委員長とするリスク管理委員会において、「気候変動リスク部会」を新たに設置して、より組織的なリスク管理体制での対応と監視を行い、リスクと機会の特定と対応についてレビューと再検討を進めています。

なお、シナリオ分析の策定・開示に向け構築を進めている段階です。今後、更なる質と量の充実を進めてまいります。

【原則5-1. 株主との建設的な対話に関する方針】

 

・IR活動に関しては社長自らが統括し、IR面談、決算説明会も対応しています。海外投資家にも直接説明するなど投資家との積極的な対応を行っています。また、定期的に全社外取締役を含む監査等委員と機関投資家のミーティングを実施しています。  

・株主との対話を合理的に推進し且つ機動的なIR活動を実践するために、総務部広報IR課を設置しています。

・国内・海外機関投資家、アナリストとの対話は要望に応じて社長執行役員、担当役員、総務部広報IR課が面談しています。

・IR活動は広報IR課を専門部局としますが、各事業本部、財務経理部、社長室経営企画課などの各部門が連携し、より実効性の高い情報提供に努めています。

・決算発表のほか、機関投資家向けには、決算説明会、経営戦略説明会、ロジセンター見学会等のイベントを開催、個人投資家向けには、証券取引所主催の個人投資家向けIRイベントへの参画のほか、株式情報誌への出稿やウェブサイトの拡充など積極的な情報開示を実施しています。

・2017年より当社品川ショールームにおいて株主向け会社説明会を実施し、主に関東地区の個人株主様への会社説明の機会を設けています。本説明会には取締役全員が出席し、社長執行役員が会社説明を行っています。(2020年度~2022年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため未実施)

・各イベント等で使用した説明用資料や対話の様子をウェブサイトで開示しており、必要に応じて英語版も開示しています。

・各年度において統合報告書を作成し、当社ウェブサイトで日本語版と英語版を開示しています。

https://www.sangetsu.co.jp/company/ir/library/report.html

・直接的な対話、ウェブサイト上の資料、決算説明会の動画、及び株主総会の動画の公開を通じて、株主に対し当社の経営戦略、事業環境、事業進捗、財務情報などに関して理解を深めて戴ける活動を実践しています。

・株主や投資家との対話を通じて得られたご意見は、広報IR課を通じて経営の改善に役立てています。また、四半期ごとに事業部門責任者へ共有し、情報開示の拡充および企業価値向上に向けた改善に繋げております。

・インサイダー情報の管理の取扱いについては、内部者取引等管理規定(インサイダー取引防止規定)に基づき、未公表の重要事実の管理を徹底し、適切に対応しています。

 

 

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