ブリッジレポート
(6465) ホシザキ株式会社

プライム

ブリッジレポート:(6465)ホシザキ 2023年12月期第1四半期決算

ブリッジレポートPDF

 

小林 靖浩社長

ホシザキ株式会社(6465)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場、名証プレミア市場

業種

機械(製造業)

代表取締役社長

小林 靖浩

所在地

愛知県豊明市栄町南館3-16

決算月

12月末日

HP

https://www.hoshizaki.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

5,360円

144,864,000株

776,471百万円

8.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(倍)

70.00円

1.3%

160.84円

33.3倍

2,045.92円

2.6倍

*株価は5/16終値。発行済株式数、DPS、EPS、BPSは2023年12月期第1四半期決算短信より。ROEは前期実績。予想は会社側今期予想。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年12月

290,136

32,664

34,224

24,437

168.72

110.00

2020年12月

238,314

18,447

17,420

11,442

79.00

110.00

2021年12月

274,419

24,931

31,165

21,679

149.67

110.00

2022年12月

321,338

27,915

37,763

24,345

168.06

-

2023年12月(予)

350,000

34,000

35,100

23,300

160.84

70.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。2022年7月1日を効力発生日として、1:2の株式分割を実施。EPSは株式分割を考慮。2022年12月期の配当は、株式分割の実施により中間配当と期末配当の合計を単純合計出来ないため表示していない。なお、株式分割前ベースでの年間配当金は1株当たり140円00銭となり、実質的に30円00銭の増配となる。

 

ホシザキ株式会社の2023年12月期第1四半期決算概要等をお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年12月期第1四半期決算概要
3.2023年12月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2023年12月期第1四半期は前年同期比で大幅な増収増益。売上高は前年同期比24.8%増の905億円。国内・海外とも増収。国内では昨年の部材調達難は解消。海外も需要を着実に取り込んだ。営業利益は同73.8%増の118億円。引き続き材料費や人件費上昇等の影響を受けたが、増収や価格改定効果により増益。

     

  • 業績予想に変更は無い。2023年12月期の売上高は前期比8.9%増の3,500億円の予想。国内は同4.7%増収、海外は同14.8%増収と予想。営業利益は同21.8%増の340億円の予想。更なる材料費高騰や人件費の上昇はあるものの、国内外ともに値上げの浸透や業務の効率化及び生産性の向上、徹底したコストダウン活動を実施する。配当は、前期と同じく70.00円/株を予定している。予想配当性向は43.5%。

     

  • 2023年12月期第1四半期の国内の売上高・営業利益は、前年同期はもとより、コロナ禍前、2019年12月期第1四半期をも上回り、順調な回復を見せている。ただ、顧客である飲食店の売上高は全ての業態で前年同月の売上を上回って推移しているものの、2019年比では依然としてファーストフード以外の業態でマイナスとなっており、特にパブ/居酒屋は2019年比6割の水準で低迷している。

     

  • そうした中での国内の伸長は、飲食外市場における拡販・新規開拓によるところも大きく、売上高に占める飲食店以外の構成比は前年同期の61.0%から63.2%へと上昇した。これは、昨年の部材調達難の影響が大きかったプレハブ冷蔵庫やスチームコンベクションオーブンの販売正常化や補助金活用が寄与しているほか、2023年の年初にスタートした新営業体制による飲食外市場の積極的な攻略効果があらわれはじめているということだ。

     

  • 事業の性質から、第2および第3四半期(4‐9月)の売上高・営業利益が大きくなる傾向がある同社だが、今第1四半期の売上高・営業利益は前第3四半期とほぼ同水準であり、今第3四半期は社内計画を上回る可能性もあるだろう。飲食店の人手不足や二次会の減少が言われるなど、顧客の状況には不透明感が残るが、飲食外市場も含めた国内営業の動向が注目される。

     

1.会社概要

飲食店、病院老健、学校・保育園、スーパー、コンビニエンスストア、オフィス等を顧客とし、製氷機、冷蔵庫を始めとしたフードサービス機器の研究開発・製造・販売及び保守サービスを行っている。
製氷機、冷蔵庫、食器洗浄機、生ビールディスペンサ等の主力製品では国内トップシェア。製氷機に関してはグローバル市場でもトップシェアである(同社推計)。独自の製品開発力、高品質、強力な営業力、迅速できめ細かなサービス&サポート体制等が強みであり、同業他社に対する大きな優位性となっている。
海外売上高比率は42.0%(2022年12月期)。ホシザキを含む連結グループ会社は、国内19社、米州17社、欧州・アジア等20社の合計56社。工場は国内9、米州7、欧州・アジア11とグローバルでの生産体制を構築している。国内営業体制は、北海道から沖縄までの15販売会社及び433営業所(サービスセンター含む)によって日本全国をカバーしている。また海外では米州、ヨーロッパ、アジア・オセアニアに販売会社を配置し、全世界を幅広くカバーできる体制を整備している。(グループ会社数、拠点数等は2023年3月末時点)

 

(同社資料より)

 

【1-1 経営理念】

存在意義(パーパス)

お客様のみならず、社会に貢献できる「進化する企業」であることを目指します

経営姿勢

「良い製品は良い環境から」

遵法はもとより社会と社員から信頼される会社づくり

透明性のある経営 議論のできる経営の実践

事業活動と環境との調和 働きやすい職場環境の実現

ホシザキ・イズム

夢を持とう

「すべてのことは夢から始まる 夢は必ず叶うもの」

儲かる会社には儲かる文化あり

「人と同じことをしない 儲かって当たり前」

変化は進歩である

「今の延長線上は破滅への道」

金で金を稼がない

「我々はメーカーである 本業で稼ぐ」

無駄を尊ぶ

「無駄と思えることでも、後になって必ず役に立つもの」

 

【1-2 事業内容】

製品群別売上高構成は、製氷機18.6%、冷蔵庫28.7%、食器洗浄機6.5%、ディスペンサ7.4%、その他製品9.4%、保守・修理17.6%、他社仕入商品11.8%となっている。(2022年12月期)

 

(同社資料より)

 

【1-3 特徴・強み】

(1)独自の技術に基づく製品開発&高い品質基準
独自技術に基づいた製品企画から製品化までの一貫した研究体制を持つことにより、最終顧客の多様なニーズに迅速に対応している。また、新製品開発、既存製品の改良、シリーズ展開及び原価低減活動に加え、販売及び保守サービス活動から得られる情報や市場品質情報を製品開発に活用する体制を確立している。また、独自の品質基準を設定し、業務用という厳しい使用環境に耐えられる構造設計を行っており、過酷な条件で繰り返し行われるテストに合格した部品や技術のみが採用されている。

 

(2)きめ細かいサービス&サポート体制
同社では国内を15販売会社及び433営業所(サービスセンター含む)でカバーし、約2,600名のサービススタッフによる地域密着型のきめ細かいサービス&サポート体制をとっており、ユーザーから故障やトラブルの問い合わせがあった際は、短時間で駆けつける「即日対応」を掲げて、スピーディーな対応を行っている。(営業所数は2023年3月末時点。人員数は2022年12月末時点)

 

(3)営業力の強さと強固な顧客基盤
日本全国を約3,200名の営業スタッフがカバーする直販体制による営業力の強さも同社の大きな特徴である。高い直販比率のため顧客との密着度は高く、現在の強固な顧客基盤の構築に繋がっている。また、サービススタッフとの緊密な連携により、顧客の状況に即応した提案を行う事が出来る機動性の高さも顧客から評価されている。(2022年12月末時点)

 

2.2023年12月期第1四半期決算概要

【2-1 連結業績】

 

22/12期1Q

構成比

23/12期1Q

構成比

前年同期比

売上高

72,561

100.0%

90,574

100.0%

+24.8%

売上総利益

26,056

35.9%

33,405

36.9%

+28.2%

販管費

19,253

26.5%

21,581

23.8%

+12.1%

営業利益

6,802

9.4%

11,824

13.1%

+73.8%

経常利益

11,481

15.8%

12,730

14.1%

+10.9%

四半期純利益

7,906

10.9%

8,731

9.6%

+10.4%

*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。以下、同様。

 

 

2桁の増収増益
売上高は前年同期比24.8%増の905億円。国内売上高は同16.9%増の517億円。昨年の部材調達難は解消。飲食市場への拡販及び飲食外市場への拡販と新規顧客の開拓に注力し増収となった。海外売上高は同37.3%増の388億円。製品供給が回復し需要を着実に取り込んだ。昨年M&Aを実施した企業も業績に寄与した。
営業利益は前年同期比73.8%増の118億円。国内は同67.2%の増益、海外は同91.3%の増益。引き続き材料費や人件費上昇等の影響を受けたが、増収や価格改定効果により増益。
経常利益は前年同期比10.9%増の127億円。営業外損益における外貨預金等による為替差益は2億円で、前年同期の43億円からは大きく縮小した。

 

(四半期推移)

 

21/12期

22/12期

23/12期

 

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

売上高

68,556

68,087

71,362

66,414

72,561

77,684

88,792

82,301

90,574

-

-

-

増収率

-5.5%

+40.4%

+14.3%

+21.2%

+5.8%

+14.1%

+24.4%

+23.9%

+24.8%

-

-

-

営業利益

7,722

6,467

6,862

3,880

6,802

6,461

10,030

4,622

11,824

-

-

-

増益率

-19.2%

+557.2%

+10.3%

+130.8%

-11.9%

-0.1%

+46.2%

+19.1%

+73.8%

-

-

-

*単位:百万円。増収率、増益率は対前年同期比。

 

四半期ベースでは、売上高・営業利益とも過去最高を記録した。

 

【2-2 セグメント別動向】

 

22/12期1Q

構成比

23/12期1Q

構成比

前年同期比

売上高

 

 

 

 

 

日本

44,302

61.1%

51,772

57.2%

+16.9%

米州

16,349

22.5%

21,648

23.9%

+32.4%

欧州・アジア

11,909

16.4%

17,153

18.9%

+44.0%

海外合計

28,258

38.9%

38,801

42.8%

+37.3%

合計

72,561

100.0%

90,574

100.0%

+24.8%

営業利益

 

 

 

 

 

日本

4,722

10.7%

7,894

15.2%

+67.2%

米州

1,044

6.4%

1,971

9.1%

+88.8%

欧州・アジア

1,259

10.6%

2,434

14.2%

+93.3%

海外合計

2,303

8.1%

4,405

11.4%

+91.3%

調整額

-223

-

-476

-

-

合計

6,802

9.4%

11,824

13.1%

+73.8%

*単位:百万円。売上高は、「外部顧客への売上高」を示す。営業利益の構成比は売上高営業利益率。

 

 

 

<国内>
売上高は前年同期比16.9%増の517億円。営業利益は同67.2%増の78億円。

 

(同社の状況)

部材調達難は解消した中で、飲食市場への拡販及び流通販売業や加工販売業等の飲食外市場への拡販と新規顧客の開拓に注力した。

深掘りを進める飲食市場、積極的な開拓を進める飲食外市場に向け、冷蔵庫、製氷機、食器洗浄機等主力製品を中心とした拡販を行った。

経済の回復基調に伴うフードサービス業界の設備投資需要へ迅速に対応するとともに、顧客が直面する深刻な人手不足や、エネルギーコストの急激な上昇等の課題解決に貢献できる付加価値の提供に、製品、サービスの両面で注力した。

 

(国内の市場環境)

日本フードサービス協会の外食産業市場動向調査によると、大手飲食チェーンの全店店舗数は2020年以降減少が継続している。コロナ禍前の2019年比では8%程度の減少となっている。

全店売上高は、前年同月を上回って回復傾向にある。2019年比でも2022年10月以降はプラスとなっている。

全ての業態で前年同月の売上高を上回って推移しているものの、2019年比ではファーストフード以外の業態でマイナスが続いている。特に夜間店であるパブ/居酒屋は2019年比60%程度で低迷している。

(出典:日本フードサービス協会)

 

<海外>
(米州)
売上高は前年同期比32.4%増の216億円、営業利益は同88.8%増の19億円。
昨年より一部製品の部材調達難が発生していたものの徐々に回復し、堅調な需要に対して、製氷機、ディスペンサ等の拡販に努めた。円安による為替換算の影響もあり大幅な増収増益となった。

 

(欧州・アジア)
売上高は前年同期比44.0%増の171億円、営業利益は同93.3%増の24億円。
欧州では製氷機等の主力製品の拡販に努めた。昨年買収したイタリアの製氷機メーカー「ブレマ」も寄与した。
インドにおいては冷蔵庫等の販売が好調に推移。円安による為替換算の影響もあり大幅な増収増益となった。
外貨ベースでも各地域2桁の増収。

 

【2-3 製品群別売上動向】

製品群別では、製氷機、冷蔵庫を中心に全ての製品群が増収。

 

【2-4 財政状態】

◎主要BS

 

22年12月末

23年3月末

増加額

 

22年12月末

23年3月末

増加額

流動資産

328,240

332,593

+4,353

流動負債

102,987

103,330

+343

現預金

226,065

220,170

-5,895

仕入債務

32,714

34,926

+2,212

売上債権

45,783

53,541

+7,758

固定負債

26,612

26,819

+207

たな卸資産

51,825

54,117

+2,292

負債

129,600

130,150

+550

固定資産

93,986

97,503

+3,517

純資産

292,627

299,946

+7,319

有形固定資産

47,900

48,628

+728

利益剰余金

252,508

255,446

+2,938

無形固定資産

17,846

18,118

+272

為替換算調整勘定

15,923

19,985

+4,062

投資その他の資産

28,239

30,756

+2,517

負債純資産合計

422,227

430,097

+7,870

資産合計

422,227

430,097

+7,870

 

 

 

 

*単位:百万円

 

 

売上債権、投資その他の資産等の増加で資産合計は前期末比78億円増の4,300億円となった。
仕入債務の増加等で負債合計は同5億円増加し、1,301億円。利益剰余金の増加、為替換算調整勘定の増加等で純資産は同73億円増の2,999億円。この結果、自己資本比率は同0.4pt上昇し68.9%となった。

 

3.2023年12月期業績予想

【3-1 連結業績予想】

 

22/12期 実績

構成比

23/12期 予想

構成比

前期比

売上高

321,338

100.0%

350,000

100.0%

+8.9%

売上総利益

111,819

34.8%

126,000

36.0%

+12.7%

販管費

83,903

26.1%

92,000

26.3%

+9.7%

営業利益

27,915

8.7%

34,000

9.7%

+21.8%

経常利益

37,763

11.8%

35,100

10.0%

-7.1%

当期純利益

24,345

7.6%

23,300

6.7%

-4.3%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

業績予想に変更無し。増収増益を予想
業績予想に変更は無い。売上高は前期比8.9%増の3,500億円の予想。
国内は、新型コロナウイルスの感染は継続しているものの、政府による行動規制の発出の可能性は低く、インバウンドの段階的な回復も見込まれる。前年に生じた製品供給制約からの回復と、飲食市場の深掘りや飲食外市場の開拓等により、前期比4.7%の増収を見込む。
海外は、各国のインフレに対する政策による経済成長の鈍化や米国を中心とした部材調達難等のリスク要因が継続するものの、需要継続や新規連結会社の貢献により同14.8%増収と予想。

 

営業利益は前期比21.8%増の340億円の予想。
更なる材料費高騰やインフレに対する人件費の上昇はあるものの、国内外ともに値上げの浸透や業務の効率化及び生産性の向上、徹底したコストダウン活動を実施する。

 

配当については、2022年に開示した株主還元方針に従い、総還元性向40%以上を目安に実施していく。
2023年は、前期と同じく70.00円/株を予定している。予想配当性向は43.5%。

 

【3-2 今期の取り組み】 

※前回レポート(2022年12月期通期)を再掲

 

(1)国内
ポイントと想定されるリスクは以下のとおり。

(同社資料より)

 

①生産状況
2022年上期においては発泡液や半導体等の部材の調達難影響により多くの製品で生産供給の制約があったものの、主力の製氷機、冷蔵庫を始め、通常生産に復帰している。

 

②補助金の積極活用による顧客支援と飲食外市場攻略強化
コロナ禍を受けて様々な補助金が支給されるようになった。
同社では以下のような顧客の補助金の受給・活用を支援する体制を整備している。
*社内イントラネットに補助金情報プラットフォームを立上げ、多岐にわたる各省庁・地方等の補助金を一括で情報管理。
*15販売会社でのノウハウ・事例共有ができる体制を構築。

 

こうした体制の下、販路拡大や業態転換に伴う補助金の活用等を提案し、顧客の売上拡大や経営安定に貢献しており、補助金関連売上高は過去2年で大きく伸長。特に飲食外市場の顧客の事業活動をサポートし、新規顧客開拓に繋がっている。飲食外の中でも、「基幹産業・加工販売・流通販売・病院老健」の重点4領域の比率が向上している。

 

③新販売体制による15社協業強化と飲食外市場の網羅的攻略
2023年1月5日、国内販売事業の利益成長最大化を目的として中間持株会社である「ホシザキ販売株式会社」を設立した。
従来ホシザキの国内営業部門が有していた「販売会社支援機能」「15社共通機能(購買、間接業務、教育、コールセンター等)」をホシザキ販売に移管するとともに、最適なリソース配置と機能強化によって、メーカー営業機能の再強化も目指す。加えて、ガバナンス、内部統制の強化もホシザキ販売設立の目的の一つである。

 

これに加え、販売会社の組織体制を変更し、全国を51の支店に分割する支店制度も導入した。飲食、飲食外別の旧組織体制を変更し、業種を問わず地域密着顧客は支店が直販で攻略。全国にまたがる大規模法人顧客は専門部隊である法人開発営業部が提案力を強化し営業を行う。

 

この新販売体制により、飲食市場の徹底的な深掘りと、飲食外市場のより積極的な攻略を目指す。

 

④国内初の自然冷媒冷蔵庫の投入と普及推進
2022年5月より、国内向けに地球環境への負荷が小さい自然冷媒を使用した業務用冷蔵庫の受注を開始した。
特定フロン・代替フロンに代えて自然冷媒の使用により従来製品と比較してGWP(地球温暖化係数)を大幅に削減することができる。同社は環境基準の厳しい海外で、国内に先駆けて2009年から業務用として世界初となる自然冷媒のプロパン(R290)を使用した製氷機の製造・販売をスタートしており、こうした実績が今回の製品開発に繋がった。

 

2023年5月下旬より、自然冷媒を採用した普及価格帯の業務用冷蔵庫・冷凍庫の販売を開始。2024年末までに全ての国内向け業務用冷凍冷蔵庫の冷媒をノンフロンである自然冷媒へ変更する。さらに、今後は国内向け全ての冷機器において環境に優しい自然冷媒への変更を促進する。
製品のライフサイクル全体で環境に配慮することで、顧客が同社製品を使用する過程での温室効果ガス排出量削減に貢献する。自然冷媒製品はフロン排出抑制法対象外となるため、導入先の負担軽減にも繋がる。

 

⑤コストダウンに向けた生産拠点最適化と開発サイクル短縮
同社では継続的に原価低減・コストダウンに向けた取り組みを進めているが、グループ会社製造体制の再構築を実施し、収益性を高めるとともに、ホシザキの製品開発リードタイムを短縮し、早期上市による売上への貢献を目指している。

 

メーカーのネスタ―では、生産設備の有効活用、集約による業務効率化を図るため、2024年1月を目途に、愛知県にあった本社工場および管理系・技術系機能を、島根県に集約する。島根県では総投資額約10億円で延べ床面積2,400㎡の新工場を建設するとともに、社員数を100名へ増員する。2024年2月の本格稼働開始を予定している。

 

ホシザキの開発部門においては、プロセスの統廃合により開発期間の大幅な短縮(将来的に約50%短縮を目標)を図る。
この短縮により、設計の低減工数を製品コストダウンへつなげるとともに、トレンドに沿ったタイムリーな製品上市による売上機会の損失防止を目指す。
新プロセスで開発を完了させた「ティーサーバーATEシリーズ」では、工数1,000時間を削減し、開発期間を2カ月短縮することができた。

 

(2)海外
ポイントと想定されるリスクは以下のとおり。

 

(同社資料より)

 

①米州:堅調な需要の確実な充足と利益成長への執着
2022年の売上高は、コロナ禍前、2019年の水準を上回り、2023年も需要は堅調と見ている。
そうした中、成長に向けては「新規エリア、新規顧客、新規事業領域開拓」「販売チャネル、販売体制強化」「将来需要に応じた品揃え(新製品開発)強化」「需要に応じた生産能力の増強」に取り組む。

 

同時に利益率改善に向けて「戦略的な値上げ実施」「生産効率改善に向けたリーンオペレーションの確立」「OEM製品の活用によるコストダウン」「顧客ポートフォリオ最適化(より採算性の高い顧客へのシフト)」「販管費厳格管理と人員体制の最適化」を重点施策としている。

 

②欧州:生産拠点の最適化およびOztiの生産能力増強
2022年12月に、業務用冷蔵庫を製造していたデンマークのGRAM工場を閉鎖し、Ozti(トルコ)とWestern(インド)への生産移管を実施。この事業構造改革に伴い、27億円の特別損失を計上した。
今回の生産移管により、製品のコストダウンを実現し、欧州冷蔵庫市場のボリュームゾーンを開拓する考えだ。

 

2022年5月、Oztiではトルコ国内4か所目となるチョルル新工場が竣工した(工場投資額10億円、工場建屋面積22,000㎡)。
欧州に供給する製品を始め、Oztiの製品全般の生産能力を増強する。

 

③中国:ボリュームゾーン攻略と厨房一式事業強化
2022年12月、中国で厨房一式事業を展開する東邦御厨社(ロイヤルキッチン)を買収した。
東邦御厨社は中国の北京市に拠点を置く業務用厨房設計・施工会社で、高級ホテルや大手企業向け社員食堂内における厨房施工等を強みとし、市場からも高い評価を得ている。近年、既存顧客に加え、チェーン店レストラン、スーパーマーケットやコンビニエンスストアへの事業を拡大しており、さらなる収益力向上が期待できる。

 

これまでホシザキの中国事業は、製氷機及び業務用冷蔵庫の単品販売が中心であったが、今回の買収により、東邦御厨社の保有する厨房一式事業のノウハウ、成長分野におけるエンドユーザーとの直接取引の実績、ITを活用したアフターサービス体制を活用し、5ヵ年ビジョンで掲げた中国成長戦略を加速する。

 

製品ラインナップの強化においては、まず、冷蔵庫においてODM/OEMを活用した中価格帯製品(ICE MATEブランド)の品揃えの強化を図る。将来的には、新製品カテゴリとして食器洗浄機やショーケースを導入することにより、未開拓市場への本格参入を目指す。
このほか、ODM先とのサービス連携による体制の強化にも努める。

 

④インド:需要増・品揃え拡充に柔軟に対応する生産体制構築
高い売上成長と利益成長を実現し、業績が好調であったWesternでは、国内外の需要の高まりに対応し2022年11月に新たにタッドガム工場が操業を開始した。今期含めたさらなる成長に貢献すると考えている。

 

同工場ではディープフリーザーで約15%、業務用冷蔵庫で約30%の生産増強を行い、生産台数は約35万台/年。欧州・アジア・アフリカにおける需要増への対応が可能である。
加えて、IoT技術の導入による検査データの収集・管理、製造ラインの自動化・省人化推進による作業者の負荷軽減等により品質・生産性向上にも取り組んでいる。

 

4.今後の注目点

2023年12月期第1四半期の国内の売上高・営業利益は、前年同期はもとより、コロナ禍前、2019年12月期第1四半期をも上回り、順調な回復を見せている。ただ、顧客である飲食店の売上高は全ての業態で前年同月の売上を上回って推移しているものの、2019年比では依然としてファーストフード以外の業態でマイナスとなっており、特にパブ/居酒屋は2019年比6割の水準で低迷している。そうした中での国内の伸長は、飲食外市場への拡販・新規開拓によるところも大きく、売上高に占める飲食店以外の構成比は前年同期の61.0%から63.2%へと上昇した。これは、昨年の部材調達難の影響が大きかったプレハブ冷蔵庫やスチームコンベクションオーブンの販売正常化や補助金活用が寄与しているほか、2023年の年初にスタートした新営業体制による飲食外市場の積極的な攻略効果があらわれはじめているということだ。
事業の性質から、第2および第3四半期(4‐9月)の売上高・営業利益が大きくなる傾向がある同社だが、今第1四半期の売上高・営業利益は前第3四半期とほぼ同水準であり、今第3四半期は社内計画を上回る可能性もあるだろう。
飲食店の人手不足や二次会の減少が言われるなど、顧客の状況には不透明感が残るが、飲食外市場も含めた国内営業の動向が注目される。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

11名、うち社外4名(独立役員4名)

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2023年3月30日

 

<基本的な考え方>
当社は、経営の透明性、効率性の向上を図るため、株主をはじめとするステークホルダーの立場にたって企業収益、価値の最大化を図ることをコーポレート・ガバナンスの基本的な方針及びその目的としております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>

原則

実施しない理由

【原則1-4 政策保有株式】

当社は、政策保有株式を原則として保有いたしません。

保有する場合は、事業戦略、業務提携、取引関係の維持・強化等を保有目的とし、毎年、取締役会において、個別の株式について保有の適否を検証します。また、同株式に係る議決権行使は、当該議案が、当該企業の企業価値の向上、また、株主価値の向上につながるか否かを検討して議決権を行使いたします。

【原則2-4 女性の活躍推進を含む社内の多様性の確保】

補充原則2-4-1

(1)多様性の確保についての考え方

当社では、マテリアリティとして「社員の働きがいの向上」を掲げており、全ての社員が多様な価値観を共有し、互いに尊重しあい誇りを持って働く、活力あふれる職場風土への進化を目指しています。そのためには、経営管理職・専門職といった基幹人材の補完や人材の多様性確保の重要性を認識しており、性別・国籍・新卒・中途採用の別によらず、多様な人材の採用を継続的に実施しています。

 

(2)多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標、その状況

当社では、多様性確保の観点から「女性活躍推進」の活動を強化しており、その母数となる女性社員を増やすため、新卒における女性比率30%を目標とし毎年採用活動を行っています。また、女性管理職の目標値は「2025年度までに2020年度比の4倍にする」ことを公表し、人材の育成に取り組んでいます。なお、中途採用者の管理職登用は、特段の目標を定めておりませんが、従来の当社にはない新しい知見を取り入れ、組織力の強化及び多様性の確保を図るため実施しております。また、外国人採用者の管理職登用についても、同様に目標を定めておりませんが、事業のグローバル化への対応に必要な人材として実施しております。

 

(3)多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針

当社では、社員一人ひとりが個々の能力を最大限発揮する事で、意欲とやりがいを持って働く事ができる環境を整備し、性別・国籍・新卒・中途採用に区別なく必要な人材に適切な研修プログラムを提供する事を方針としており、多様な人材に対し様々な研修機会を設けています。また、近年では次世代経営者育成やグローバル人材の育成にも注力しています。

ホシザキの人材育成

https://www.hoshizaki.co.jp/esg/social/human-development.html

 

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>

原則

開示内容

【原則3-1 情報開示の充実】

当社では、株主の皆様をはじめとする利害関係者等に対する主体的な情報開示は、非常に重要な事項であると捉えています。

 

(1)「経営理念」は、当社ホームページ、会社が発行する案内制作物等に明示しています。

https://www.hoshizaki.co.jp/company/policy.html

また、当社の価値創造のための戦略については、「統合報告書」において開示しております。

https://www.hoshizaki.co.jp/ir/library/integrated_report.html

 

(2)「コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針」は、当社ホームページに明示しています。

https://www.hoshizaki.co.jp/esg/governance/governance/

 

(3)当社は、取締役の報酬については、独立社外取締役が委員長を務める任意の「指名・報酬委員会」への諮問・答申を経て決定することとしております。

なお、当社の取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続の詳細は、「第77期 有価証券報告書 第4【提出会社の状況】 4【コーポレートガバナンスの状況等】(4)【役員の報酬等】 ①役員の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針等」に記載しております。

          

(4)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査等委員候補者の指名を行うに当たっては、当社の経営陣幹部又は取締役・監査等委員として高い見識、高度な専門性を有する人物を候補者とし、社外取締役は高い見識、高度な専門性に加え、社内出身者と異なる職歴、経験を有する人物を候補者として、任意の指名・報酬委員会への諮問・答申を経て、取締役会において決定を行います。また、取締役会は、選任した経営陣幹部がその任を全うするに足る資質を適正に発揮しているか否かを常に監督し、不適任と判断した場合には、任意の指名・報酬委員会への諮問・答申を経て、適時適切に解任決議を行います。

 

(5)取締役候補者とした理由は、株主総会参考書類に記載しています。また、取締役の解任議案を株主総会に付議する場合には、株主総会参考書類に解任する理由を記載することといたします。

補充原則3-1-3

当社は、企業としての持続的成長の実現のため、事業を通して社会課題の解決に貢献し、長期的に経済価値のみならず社会・環境価値を向上させることを目指しており、当該活動の全体像につきましては、「統合報告書」を発行しホームペー

ジに公開しております。

https://www.hoshizaki.co.jp/ir/library/integrated_report.html

サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)は6項目を特定し、これらは有価証券報告書にも公開しております。

気候変動への取り組みとしては、2022年2月にTCFDによる提言に賛同の上、TCFDの枠組みに基づき、当社に影響のあるリスクと機会の分析を実施し、さらなる影響度の特定に必要な情報収集を進めております。特にカーボンニュートラルの取り組みでは、当社国内工場におけるCO2排出量を2030年に2014年比50%削減する目標を掲げ、積極的な活動を進めるとともに、海外拠点などへの取り組み範囲の拡大を目指しております。

人的資本や知的財産については、いずれも当社のビジネスの強みの源泉としてその活用、強化策について「統合報告書」に公開しております。特に人的資本に関しては「社員の働きがいの向上」をマテリアリティの1つとしており、活力あふれる社員が成長を実感し、持っている才能を最大限に発揮できる会社であり続けるための取り組みを実施しております。

サステナビリティに関する社内推進体制として社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置、事業部門やコンプライアンス・リスク管理委員会等と連携し課題解決を推進しております。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のためには、株主・投資家と積極的な対話を行い、その意見や要望を経営に反映させ、当社を成長させることが重要と認識しています。中長期的な企業価値向上の投資方針を有する主要な株主・投資家の皆様との対話については、以下の基本方針を定めています。

(1)株主・投資家との対話全般について、IR担当取締役が統括しています。

(2)IR担当取締役は経営企画部、人事部、総務部等のIR活動に関連する部署を統括し、日常的な部署間の連携を図っています。

(3)経営企画部にて、投資家からの電話取材やスモールミーティング等のIR取材を積極的に受け付けるとともに、決算説明会を半期に1回開催し、社長、IR担当取締役が説明を行っています。

(4)投資家からの電話取材やスモールミーティング等のIR取材等の結果は、IR担当取締役が必要に応じ、取締役会へフィードバックしています。

(5)投資家との対話の際は、決算説明会やスモールミーティングを問わず、当社の持続的成長、中長期における企業価値向上に関わるテーマを対話の軸とすることにより、インサイダー情報管理に留意しています。

 

 

 

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