ブリッジレポート:(6250)やまびこ 2022年12月期第3四半期決算
久保 浩 社長 | 株式会社やまびこ(6250) |
|
企業情報
市場 | 東証プライム市場 |
業種 | 機械(製造業) |
代表取締役社長 | 久保 浩 |
所在地 | 東京都青梅市末広町1-7-2 |
決算月 | 12月末日 |
HP |
株式情報
株価 | 発行済株式数 | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
1,134円 | 44,108,428株 | 50,018百万円 | 11.7% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
52.00円 | 4.6% | 192.36円 | 5.9倍 | 1,969.72円 | 0.6倍 |
*株価12/7終値。発行済株式数、DPS、EPS、BPSは22年12月期決算第3四半期短信より。ROEは前期実績。
業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | DPS |
2018年12月 | 118,049 | 6,290 | 5,957 | 4,188 | 101.39 | 40.00 |
2019年12月 | 120,922 | 6,203 | 5,917 | 4,164 | 100.46 | 35.00 |
2020年12月 | 131,972 | 9,643 | 9,402 | 6,635 | 159.90 | 40.00 |
2021年12月 | 142,328 | 9,330 | 9,913 | 7,500 | 180.58 | 45.00 |
2022年12月(予) | 150,000 | 9,100 | 10,300 | 8,000 | 192.36 | 52.00 |
*単位:百万円、円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。18年12月期のDPS40円には、設立10周年記念配当5円を含む。2022年12月期の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用。
株式会社やまびこの2022年12月期第3四半期決算概要等についてご紹介致します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2022年12月期第3四半期決算概要
3.2022年12月期業績予想
4.カーボンニュートラルと同社の開発戦略
5.今後の注目点
<参考1:中期経営計画2022の概要・重点施策>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 2022年12月期第3四半期の売上高は前年同期比8.2%増の1,216億円。国内は同7.5%減。昨年の補助金需要の反動と一部仕入商品の供給不足が継続したことにより農業用管理機械販売の減少が続いている。一般産業用機械の回復も遅れている。海外は同16.0%増。小型屋外作業機械は北米での価格改定や円安を背景とした増収効果に加え、欧州の販売が好調に推移した。北米の大型農業用管理機械と一般産業用機械も好調だった。
- 営業利益は同3.7%減の94億円。原材料価格の更なる高騰に対して国内の価格改定が一部遅れた。また、北米市場においてプロ向け小型屋外作業機械販売が伸長した一方で、ホームオーナー向け販売の減少に伴い総原価が増加した(粗利率は同1.2%の低下)。円安に伴う利益増もあったが減益となった。
- 業績予想を再度修正した。22年12月期の売上高は前期比5.4%増の1,500億円の予想。国内が農業用管理機械および一般産業用機械を中心に低迷しているものの、海外小型屋外作業機のプロユーザー向け販売が好調に推移していることに加え、前回の業績予想公表時から更に進行した円安ドル高が売上高を押し上げたことから増収を見込んでいる。
- 営業利益は同2.5%減の91億円の予想。原材料価格の更なる高騰に対し国内の価格改定が一部遅れていることに加え、北米小型屋外作業機におけるホームオーナー向け販売台数の減少に伴い総原価が悪化していることから減益を見込む。配当予想に修正は無い。前期比7円/株増配の52円/株の予定。予想配当性向は27.0%。
- 今期予想について、円安ドル高による押し上げ効果により、売上高を上方修正し、期初予想と同じく1,500億円としたが、営業利益は増益予想から減益予想に転じた。売上高総利益率が期初予想の29.5%から低下し、27.4%と前期の27.7%を下回る見込みだ。価格改定の浸透等により、第4四半期にどの程度改善に向かうのかを注目したい。
1.会社概要
小型屋外作業機械(刈払機、チェンソーなど)、農業用管理機械(防除機、畦草刈機など)、一般産業用機械(発電機、溶接機など)の3事業における各種製品の開発・製造・販売をグローバルに展開。海外売上比率は約60%。小型屋外作業機械では国内首位、米州上位と高いシェアを有する。独自の生産技術、豊富なラインアップ、充実したテクニカルサポート体制等が強み。
【1-1 沿革】
同社は、国内で農業機械、グローバルで小型屋外作業機械を扱っていた株式会社共立(東・名・阪一部上場)と、グローバルで小型屋外作業機械及び一般産業用機械を扱っていた新ダイワ工業株式会社(東証2部上場)の2社が2008年12月に設立した共同持株会社「株式会社やまびこ」が、2009年10月に両社を吸収合併して事業会社化した会社である。
株式会社共立は、1947年、東京で創立された株式会社共立農機を前身とし、農業機械事業において「国産初のスピードスプレーヤ(農薬散布機)」、小型屋外作業機械事業において「国内初の背負動力刈払機」、「世界初の手持ち式パワーブロワ」を開発するなど、両事業におけるリーディング企業であった。また、創業時より小型屋外作業機械のエンジン自社開発に注力し、合併前の2008年のエンジン累計生産台数は4,000万台に上っていた。
一方、新ダイワ工業株式会社は1952年、広島で創業した浅本精機製作所が前身。小型屋外作業機械事業において「国産初の電動チェンソー」を開発したほか、一般産業用機械事業においてエンジン発電機、エンジン溶接機などを製造販売。また、世界初の混合燃料使用の4サイクルエンジンを開発するなど、高い技術開発力を特長としていた。
1990年代後半に入り温室効果ガスを要因とする地球温暖化問題への関心が高まるとともに、欧米、特にアメリカでエンジンの排出ガス規制が強化され、新基準をクリアするための研究開発費が増大。これに対応できない中堅・小型企業を対象として小型屋外作業機械市場において2000年代に入りグローバル規模での業界再編が急速に進行した。加えて、新興国企業による安値攻勢や顧客ニーズの多様化などにより、事業環境は一段と不透明なものとなっていた。
そうした中、激化する競争を勝ち抜くためには一段と企業体力を強化する必要があるとの判断から、両社は将来的な経営統合を前提として2007年5月に業務・資本提携契約を締結。
開発、生産、物流、販売、管理を始めとした全ての事業における効率化と拡充を目指して2008年12月共同持株会社、株式会社やまびこを設立し、2009年10月、株式会社やまびこが両社を吸収合併し事業会社化した。
2022年4月、市場再編に伴い、東証プライム市場に移行。
社名「やまびこ」は、山の神「山彦」を由来としており、「人と自然と未来をつなぐ」を経営理念とし、自然と環境の育成・整備への貢献を掲げる同社の姿勢を表している。
【1-2 経営理念など】
やまびこグループの理念は「エッセンス」、「存在意義」、「行動指針」という3つの要素で構成されている。
「エッセンス」は、「存在意義」と「行動指針」を凝縮した、やまびこグループとして目指すべき企業の姿・企業活動の本質を表現したもの。
「存在意義」は、やまびこグループが社会の中で担うべき役割と責任を宣言し、約束するもの。
「行動指針」は、やまびこグループの社員一人ひとりが業務に臨むべき姿勢をまとめたもの。
(同社HPより)
<エッセンス>
◇ 人と自然と未来をつなぐ |
<存在意義>
◇ 世界最高の製品とサービスを提供し続けること ◇ 自然と環境の明日を担う人と企業に貢献すること ◇ 業界のリーダーとして顧客を創造し業界の成長を牽引すること ◇ やまびこにつながる全ての人々を幸せにすること |
<行動指針>
◇ 変化を見定め布石を打つ ◇ 理論とともに三現主義を実践する ◇ 現状を打破する革新的発想をもつ ◇ グローバル企業の気概を携え行動する ◇ 感謝を心に刻み誠意を尽くす |
これに加えて、行動指針を補完し、具体的な対応方法を示した14項目からなる行動指針細目を制定し、企業理念に則った事業活動が行われるように努めている。
【1-3 市場環境】
小型屋外作業機械市場についての明確な統計は存在していないが、米国を始めとする北米市場が最大市場とされ、ついで欧州地域が続いており、日本は100万台という統計がある。
同社の収益動向に影響を与える関連指標としては、海外市場においては「住宅着工件数」、「穀物価格」、「原油価格」等、国内市場においては「米価」等が挙げられる。
小型屋外作業機械でグローバルに展開するメーカーとしては、欧州(ドイツ・スウェーデン)に2社存在すると会社側では認識している。
【1-4 事業内容】
1.セグメント
小型屋外作業機械事業、農業用管理機械事業、一般産業用機械事業の3事業を展開。報告セグメントもこの3セグメント。
(決算短信より当社作成)
『小型屋外作業機械事業』
「手で持つ」または「背負って」使用する小型エンジンを搭載した山林・緑地管理用などの機械の製造・販売を行っている。
主要製品は、チェンソー、刈払機、パワーブロワ、ヘッジトリマーなど。
2014年11月に、業務用ロボット芝刈機を開発、製造、販売するベルギーのベンチャー企業「ベルロボティクス社」を買収した。(2017年1月、欧州における販売強化を目的としてベルロボティクス社は「やまびこヨーロッパ」へ商号変更。)
長年をかけて蓄積してきたノウハウや顧客ニーズにきめ細かく対応する高い開発力をベースに、高性能・高耐久・高品質エンジンを産み出し続けている。
<チェンソー>
| <刈払機>
|
<パワーブロワ>
|
|
(ガソリンエンジンの仕組み)
小型屋外作業機械のチェンソーや刈払機などの動力には主に2ストロークガソリンエンジンが用いられている。
後述するように、同社のエンジン開発能力の高さは最も重要な特長・強みの1つとなっている。
ガソリンエンジンの仕組みおよびエンジンの種類による特長を知っておくことは同社事業を理解する上でも有用なので以下簡単に解説する。
ガソリンエンジンとは、基本的に以下の4つのステップを経てガソリンが燃焼する力でピストンを押し下げて動力を発生させるもの。
ステップ | 概要 |
1.吸気 | 燃料と空気が混ざった混合気をシリンダーに吸い込む。 |
2.圧縮 | シリンダー内の混合気がピストンの上昇に伴い圧縮される。 |
3.膨張 | もっとも混合気が圧縮された時に火花を飛ばして混合気を燃焼させる。燃焼による膨張の力でピストンは下に押される。 |
4.排気 | 燃焼済みのガスが外へ排出される。 |
ピストンの往復運動は、クランクシャフトと呼ばれる部品によって回転運動に変換され、自動車の車軸やチェンソーの回転軸を回転させる。
この4つのステップ「1周期」をピストンの往復運動何回で完結するかによって、ガソリンエンジンは2ストローク・エンジンと4ストローク・エンジンの2つに概ね大別される。
「2ストローク・エンジン」
2つのストロークで1周期を完結させる。すなわち、「ピストン1往復、クランクシャフト1回転」ごとに動力を1回発生させる。
1回目のストローク(ピストンの上昇):混合気の「吸入」と「圧縮」を行う。
2回目のストローク(ピストンの下降):混合気の「膨張」によりピストンが下降し、その後半で「排気」を行う。
|
|
「4ストローク・エンジン」
4つのストロークで1周期を完結させる。「ピストン2往復、クランクシャフト2回転」ごとに動力を1回発生させる。
1回目のストローク(ピストンの下降):混合気の「吸入」を行う。
2回目のストローク(ピストンの上昇):混合気の「圧縮」を行う。
3回目のストローク(ピストンの下降):「膨張」によりピストンが急速に押し下げられる。
4回目のストローク(ピストンの上昇):燃焼済のガスが「排気」される。
|
|
4ストローク・エンジンは、吸気と排気をコントロールしやすいといったメリットがある反面、吸・排気バルブをシリンダーヘッド部に設置するため、シリンダーの胴体に設置されるポートから吸・排気を行う2ストロークに比べ構造が複雑になる。また、そのため重量も重くなる。
これに対し、2ストローク・エンジンは、混合気の吹き抜けやピストン運動を円滑にするために用いられるエンジンオイルが燃料と一緒に燃焼する割合が4ストローク・エンジンに比べると多いため、排気ガス中に有害物質が多くなるといった面があるものの、構造がシンプルで部品数も少ないため小型・軽量化が可能で、同じ理由からオーバーホールも容易といったメリットがあり、小型屋外作業機械には2ストローク・エンジンが最適である。
『農業用管理機械事業』
国内向けに農薬散布のための機械である防除機械、北米向け農作物収穫機械などの製造・販売を行っている。
主要製品は、防除機(スピードスプレーヤ、乗用管理機、動力噴霧機)、畦草刈機、大豆収穫機など。
共立が長年にわたって蓄積してきた送風技術、噴霧技術、ポンプ技術、機器の軽量化や小型化等が同事業における技術的な強みである。
<乗用管理機>
| <スピードスプレーヤ>
|
<畦草刈機>
|
|
『一般産業用機械事業』
建設・土木・鉄工用機械の製造・販売を行っている。
主要製品は発電機、溶接機、投光機、切断機、高圧洗浄機など。
新ダイワ工業が創業時から蓄積してきたAC(交流)モータ開発技術を進化、発展させた発電体設計技術や、電子制御技術、防音技術などが同事業における技術的な強みである。
<発電機>
| <溶接機>
|
(アクセサリーや部品)
各種機械用のアクセサリーやアフターサービス用部品の製造・販売も行っている。高収益性が特長。
<メンテナンスキット>
| <刈払機用ナイロンコード>
| <燃料・オイル>
|
2.ブランド
2社の統合によって設立された同社だが、両社製品は長年にわたり日本およびグローバルで認知されているため、ブランド名はそのまま、KIORITZ 、Shindaiwa 、ECHO の3ブランドを展開している。
更なるブランド価値の向上を目指し、積極的なマーケティング投資、新しい販売ルートの開拓を進めている。
3.開発体制
各事業では以下のような重点課題を設定し、開発に取り組んでいる。
事業 | 開発の重点課題 |
小型屋外作業機械 | *グローバルレベルでのエンジン排出ガス規制対応 *北米での燃料透過規制対応 *ヨーロッパでの騒音および振動規制対応 *小型軽量化・低騒音・低燃費・耐久性向上 *安全性向上 |
農業用管理機械 | *ドリフト対策・適量散布・高性能化・操作性簡便化 |
一般産業用機械 | *小型軽量化・低騒音・高性能・高機能・低燃費 |
排出ガス規制は今後もさらに厳しくなることが予想されるため、最重点課題である。
この他、電子制御分野において制御技術の研究を進めている。
4.生産体制
国内3事業所(横須賀、盛岡、広島)と4社の生産関連子会社を、海外では、アメリカ、ベルギー、中国、ベトナムに合計10社の生産関連子会社を有している。
5.販売ルート&販売方法
世界90か国以上、約2万8千店舗に同社製品は供給されている。
全売上高の6割以上が海外売上となっている。
(決算短信より当社作成)
<国内市場>
2017年4月、管理体制の一元化・事業資産の一体運用を通じた経営資源の効率化、販売力強化と顧客サービス向上を目的に、主に地域別に分かれていた販売子会社7社を統合し、やまびこジャパン株式会社を設立した。
やまびこジャパンが販売代理店、全農(全国農業協同組合連合会)、ホームセンター、建設機械レンタル会社等に同社製品等を販売し、エンドユーザーである農林業家、建設・土木・鉄工業者、緑地管理業者などに供給される。
販売店や代理店と協力しながら展示会を各地で実施し、実演や試乗などを通じて販売に繋げているほか、販売店と同行してエンドユーザーを訪問。ユーザーのニーズを汲み取ったうえで製品開発に活かしている。
<北米市場>
子会社エコー・インコーポレイテッドグループがホームデポ(※)や代理店に販売し、エンドユーザーである緑地管理業者、ホームオーナー、農林業家、建設・土木業者などに供給される。
※ホームデポ(The Home Depot)
世界最大の住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売チェーン。1978年設立。2021年の売上高1,512億ドル(約18.0兆円)、純利益164億ドル(約2.0兆円)。米国、カナダ、メキシコに2,296の店舗を有する。NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場。(同社WEBSITEより抜粋)
ホームデポでは、GOOD、BETTER、BESTの区分で品質ごとに分類されており、高品質なBESTとして製品を供給しているのは同社のみである。これが、同社製品が北米市場で高く評価されている証左の一つとなっている。
中南米市場においては子会社エコー・インコーポレイテッドが各国代理店に販売し、その後販売店を通じてエンドユーザーに供給される。
欧州市場では子会社のやまびこヨーロッパが、中国市場では子会社の愛可機械が代理店に販売しており、アジア・その他地域では、やまびこが各国代理店に販売している。
海外の販売店では、ブランド別に製品を展示しており、エンドユーザーのニーズを聞きながら販売員が対面販売を行っている。
またホームセンターでは、各機種群別・価格別に製品が展示されており、エンドユーザーはニーズや予算、CM等で得たイメージを基に購入する。
【1-5 特長と強み】
①独自の生産技術力・一貫生産体制
同社最大の特長・強みは「独自の生産技術力・一貫生産体制」である。
中心事業である小型屋外作業機械に搭載される2ストローク・エンジンに関しては、開発、材料となるアルミの調達、鋳造、部品製造、加工、組立てまで全て自社で一貫して生産する体制をとっているが、世界的に見ても他に例がないという。なお、農業用管理機械事業と一般産業用機械事業の製品も動力源はエンジンであるが、主に外部調達をしている。
また、様々な課題を鉄めっき、放電加工などの自社独自技術で解決し、製品の品質向上や生産能力向上に結び付けている。
具体的には下記のような技術を確立している。
<具体例①:鉄めっき>
めっきとは金属などの材料の表面に金属の薄膜を被覆した表面処理のこと。エンジン製造においては、ピストンとの摩擦による摩耗防止のためシリンダー内部にめっきを施す必要がある。
従来は耐久性やコストからクロムめっきが一般的であったが、環境への悪影響、生産効率の低さといった問題点から、他の材料によるめっき加工が求められてきた。
同社では、環境負荷低減の観点などから1978年より「鉄めっき」に取り組んでいる。
当初日産能力は数百個であったが生産性向上、めっき精度の向上、環境負荷削減などを進めた結果、現在では仕上げ加工が不要で環境負荷を大幅に削減した鉄めっき技術を確立することができ、日産能力も数千個と大幅に拡大させることができた。現在保有する鉄めっき関連特許件数は5件。
<具体例②:放電加工>
前述の様に、2ストローク・エンジンは、部品数が少なく構造も4ストローク・エンジンに比べシンプルであるため、「手で持つ」、「背負う」小型屋外作業機械には最適であるが、混合ガスの一部が排気されるという側面があり、世界的に強化が進む排出ガス規制に対応するためには、混合ガスの流れをコントロールして効率よく燃焼させることが課題であった。
そのためには、シリンダー内面形状を変更(混合ガス通路とシリンダー内面の間に壁を設ける)する必要があり、生産方法の検討が必要となった。
ダイカスト鋳造(※)により「壁」を形成する事は可能だったが、その壁に混合ガスを燃焼室に導くための横穴を開ける必要があり、ダイカスト鋳造では横穴を開ける事は出来ず、また狭い箇所であるため切削加工も困難であった。
そこで同社では、ダイカスト鋳造の特長を活かしながら切削加工できない形状を加工するために「放電加工(※)」を採用することとした。
放電加工は複雑な形状も加工が可能である一方、加工時間が長く電極消耗が多いなどコスト面での課題があった。
同社は量産化に向け加工条件の研究、特殊電極形状の設計などに取り組み、加工時間の短縮、省人化、電極の低コスト化、能率向上など量産化に成功した。
放電加工関連特許保有件数は3件であり、他社には真似のできない同社独自技術を確立した。
(※)ダイカスト鋳造
金型鋳造法のひとつで、金型に溶融した金属を圧入することにより、高い寸法精度の鋳物を短時間に大量に生産する鋳造方式のことで、薄肉化、低コストを可能にする。
(※)放電加工
電極と非加工物との間に短い周期で繰り返される放電によって、非加工物表面の一部を除去する機械加工の方法。極めて硬い鋼鉄などに複雑な輪郭を切り出すことができる。
同社はこれらの技術を始めとした「高度なモノ作り力」によって、排出ガス規制対応以外にも、軽量化、高耐久性、更なるコスト削減など様々なニーズに対応し、「排出ガス規制対応・軽量化・高耐久性2ストローク・エンジン」の開発・量産に成功している。
これらの課題に対応できず市場から退出を余儀なくされた企業も世界的に多数ある中で、同社はトップクラスのメーカーとして更なる成長を続けている。
②各事業固有の研究・開発力
環境問題の対応力は高く、同社エンジンに対する米国EPA(Environmental Protection Agency、環境保護庁)によるエンジン認証数は世界でもトップクラスとなっている。
また、小型屋外作業機械に限らず、農業用管理機械、一般産業用機械においても固有の研究開発力を有している。
共立、新ダイワ工業それぞれが長い年月を経て培った技術力をベースに、更に磨きをかけている。
③豊富なラインアップ・販売ネットワークおよび国内サービスネットワークの拡大
様々な顧客ニーズに対応し、3事業それぞれにおいて豊富なラインアップを有している。
また、現在世界90カ国以上、約2万8千店舗に同社製品が供給されている。
2社の合併によって、ラインアップおよび販売ネットワークは更に拡充された。
多様化するユーザーの満足度向上を目指し、2013年から国内に“やまびこサービスショップ(YSS)”を立ち上げ、故障時に整備・修理などを行う他社にはないサービス体制を全都道府県で展開している。2020年3月現在の加入店舗数は342店。
④充実したテクニカルサポート体制
製品に対する信頼性を高め、代理店や販売店との関係をより強固なものとするためにテクニカルサポート体制の充実にも注力している。
国内外を合わせておよそ年間40回のサービススクール実施に加えて、海外の代理店向けに、修理技能やエンジンの仕組みなどについて理解を深めてもらうため、2018年から新たにオリジナル教材によるe-learningを始めた。
また、欧州の子会社では、ロードショー形式による代理店内のトレーナー育成や代理店のセールスマンを対象とした講習会を実施するなど、さらなるサービス力の強化に努めている。
⑤高い製品シェア
上記①から④の特長・強みを総合的に発揮してグローバルで高い競争力を実現しており、小型屋外作業機械事業では最大市場の北米で上位、日本においては30%以上のシェアを持つNo.1企業である。
【1-6 ROE分析】
| 13/3期 | 14/3期 | 15/3期 | 16/3期 | 17/3期 | 17/12期 | 18/12期 | 19/12期 | 20/12期 | 21/12期 |
ROE(%) | 8.7 | 14.5 | 12.4 | 10.4 | 5.1 | 9.9 | 7.9 | 7.6 | 11.4 | 11.7 |
マージン(%) | 2.72 | 4.48 | 4.67 | 4.15 | 2.12 | 4.79 | 3.55 | 3.44 | 5.03 | 5.27 |
ターンオーバー(回) | 1.13 | 1.28 | 1.18 | 1.21 | 1.20 | 1.05 | 1.18 | 1.18 | 1.23 | 1.24 |
レバレッジ(倍) | 2.85 | 2.52 | 2.26 | 2.08 | 2.00 | 1.98 | 1.91 | 1.84 | 1.81 | 1.79 |
*マージンは売上高当期純利益率。ターンオーバーは総資産回転率。
引き続きマージン改善によりROEは上昇した。
2.2022年12月期第3四半期決算概要
(1)連結業績概要
| 21/12期3Q | 対売上比 | 22/12期3Q | 対売上比 | 前年同期比 |
売上高 | 112,435 | 100.0% | 121,610 | 100.0% | +8.2% |
国内 | 37,498 | 33.4% | 34,682 | 28.5% | -7.5% |
海外 | 74,937 | 66.6% | 86,928 | 71.5% | +16.0% |
米州 | 63,030 | 56.1% | 72,113 | 59.3% | +14.4% |
その他海外 | 11,906 | 10.6% | 14,815 | 12.2% | +24.4% |
売上総利益 | 31,876 | 28.4% | 33,034 | 27.2% | +3.6% |
販管費 | 22,037 | 19.6% | 23,558 | 19.4% | +6.9% |
営業利益 | 9,838 | 8.7% | 9,475 | 7.8% | -3.7% |
経常利益 | 10,286 | 9.1% | 11,022 | 9.1% | +7.2% |
四半期純利益 | 7,726 | 6.9% | 8,198 | 6.7% | +6.1% |
*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
増収減益
売上高は前年同期比8.2%増の1,216億円。
国内は同7.5%減。昨年の補助金需要の反動と一部仕入商品の供給不足が継続したことにより農業用管理機械販売の減少が続いている。一般産業用機械の回復も遅れている。
海外は同16.0%増。小型屋外作業機械は北米での価格改定や円安を背景とした増収効果に加え、欧州の販売が好調に推移した。北米の大型農業用管理機械と一般産業用機械も好調であった。
営業利益は同3.7%減の94億円。原材料価格の更なる高騰に対して国内の価格改定が一部遅れた。また、北米市場においてプロ向け小型屋外作業機械販売が伸長した一方で、ホームオーナー向け販売の減少に伴い総原価が増加した(粗利率は同1.2%の低下)。円安に伴う利益増もあったが減益。
(2)セグメントおよび地域別動向
| 21/12期3Q | 対売上比 | 22/12期3Q | 対売上比 | 前年同期比 |
小型屋外作業機械 | 79,475 | 70.7% | 88,730 | 73.0% | +11.6% |
農業用管理機械 | 20,341 | 18.1% | 19,802 | 16.3% | -2.6% |
一般産業用機械 | 10,892 | 9.7% | 11,634 | 9.6% | +6.8% |
その他 | 1,726 | 1.5% | 1,443 | 1.2% | -16.4% |
売上高 | 112,435 | 100.0% | 121,610 | 100.0% | +8.2% |
小型屋外作業機械 | 13,332 | 16.8% | 13,539 | 15.3% | +1.6% |
農業用管理機械 | 610 | 3.0% | 861 | 4.3% | +41.3% |
一般産業用機械 | 449 | 4.1% | 931 | 8.0% | +107.1% |
その他 | 380 | 22.0% | 266 | 18.4% | -29.8% |
調整額 | -4,934 | - | -6,124 | - | - |
営業利益 | 9,838 | 8.7% | 9,475 | 7.8% | -3.7% |
*単位:百万円。利益の対売上比は売上高営業利益率。
◎小型屋外作業機械
| 22/12期3Q | 前年同期比 |
売上高 | 88,730 | +11.6% |
国内 | 12,157 | -0.2% |
海外 | 76,572 | +13.8% |
*単位:百万円
(国内)
昨年の補助金需要の反動による影響が残るものの、第3四半期(7‐9月)に刈払機やパワーブロワが伸長したことなどにより前年並みの水準。
(海外)
主力の北米はホームオーナー向け販売が減少したものの、プロユーザー向け販売は堅調に推移した。欧州の販売が引き続き好調に推移し、価格改定や円安の追い風もあり増収。
◎農業用管理機械
| 22/12期3Q | 前年同期比 |
売上高 | 19,802 | -2.6% |
国内 | 13,230 | -12.7% |
海外 | 6,571 | +26.7% |
*単位:百万円
(国内)
昨年の補助金需要の反動減や一部仕入商品の供給不足が継続したことに加え、農薬や肥料の価格高騰により農家の購買意欲が低下したことなどが影響し減収。
(海外)
北米は引き続き穀物価格が高値安定する市場環境に支えられ、大型大豆収穫機やポテト収穫機などの販売が好調に推移したことにより増収。
◎一般産業用機械
| 22/12期3Q | 前年同期比 |
売上高 | 11,634 | +6.8% |
国内 | 7,852 | -6.9% |
海外 | 3,782 | +54.0% |
*単位:百万円
(国内)
新型コロナウイルスの影響により中止していた大規模展示会が再開されたものの、新型コロナウイルス以前の集客に戻るには至らず減収。
(海外)
資源開発等の需要回復傾向のもと、受注活動強化に努め増収。
◎その他
| 22/12期3Q | 前年同期比 |
売上高 | 1,443 | -16.4% |
*単位:百万円
昨年伸長した除雪機の販売が減少したことにより減収。
(3)財政状態
◎主要BS
| 21年12月末 | 22年9月末 | 増減 |
| 21年12月末 | 22年9月末 | 増減 |
流動資産 | 89,775 | 119,963 | +30,188 | 流動負債 | 40,459 | 63,440 | +22,981 |
現預金 | 12,167 | 15,636 | +3,469 | 仕入債務 | 26,246 | 23,975 | -2,271 |
売上債権 | 27,937 | 41,949 | +14,011 | 短期借入金 | 3,784 | 26,211 | +22,427 |
たな卸資産 | 46,346 | 59,525 | +13,179 | 固定負債 | 13,236 | 10,806 | -2,430 |
固定資産 | 32,799 | 36,245 | +3,446 | 長期借入金 | 11,000 | 8,300 | -2,700 |
有形固定資産 | 24,169 | 26,838 | +2,669 | 負債合計 | 53,695 | 74,246 | +20,551 |
無形固定資産 | 587 | 845 | +258 | 純資産 | 68,879 | 81,962 | +13,083 |
投資その他の資産 | 8,042 | 8,561 | +519 | 利益剰余金 | 50,966 | 56,204 | +5,238 |
資産合計 | 122,574 | 156,208 | +33,634 | 負債純資産合計 | 122,574 | 156,208 | +33,634 |
*単位:百万円。売上債権には電子記録債権を、仕入債務には電子記録債務を含む。
売上債権、たな卸資産の増加などで、資産合計は前期末比336億円増加の1,562億円となった。
短期借入金の増加などで負債は同205億円増加の742億円。
利益剰余金及び為替換算調整勘定の増加で、純資産は同130億円増加の819億円。
この結果、自己資本比率は前期末より3.7ポイント低下し52.5%となった。
(4)トピックス
①第12回農業Weekへ出展
2022年10月12日~14日に開催された日本最大級の農業・畜産の総合展「第12回農業Week」に出展した。
展示会では「やまびこが取り組むスマート製品のご提案」をコンセプトに、開発を進めているスマート製品や新しいサービスについて紹介。当日は多くのブース来場者から貴重な意見を聞くことができた。
(同社資料より)
②Equipment EXPO 2022へ出展
米国子会社エコーインクが全米最大規模の庭園管理機械見本市である「Equipment EXPO 2022」に出展した。今年で設立50周年を迎えたエコーインクは、これまでの50年を振り返ると共にこれから先の北米のOPE市場への貢献に向けた、豊富なラインアップを紹介した。
(同社資料より)
3.2022年12月期業績予想
3-1 業績予想
| 21/12期 | 構成比 | 22/12期(予) | 構成比 | 前期比 | 修正率 | 進捗率 |
売上高 | 142,328 | 100.0% | 150,000 | 100.0% | +5.4% | +1.4% | 81.1% |
売上総利益 | 39,447 | 27.7% | 41,100 | 27.4% | +4.2% | -2.6% | 80.4% |
販管費 | 30,117 | 21.2% | 32,000 | 21.3% | +6.3% | -1.5% | 73.6% |
営業利益 | 9,330 | 6.6% | 9,100 | 6.1% | -2.5% | -6.2% | 104.1% |
経常利益 | 9,913 | 7.0% | 10,300 | 6.9% | +3.9% | 0.0% | 107.0% |
当期純利益 | 7,500 | 5.3% | 8,000 | 5.3% | +6.7% | 0.0% | 102.5% |
*単位: 百万円。予想は会社側発表。修正率は22年8月発表の業績予想からの修正率。
*為替の前提
| 21/12期 | 22/12期予想 | 前回予想 |
1ドル | 110円 | 140円 | 130円 |
1ユーロ | 130円 | 140円 | 140円 |
*ドルは(株)やまびこのレート。
業績予想を修正、営業利益は減益予想へ
業績予想を再度修正した。売上高は前期比5.4%増の1,500億円の予想。
国内が農業用管理機械および一般産業用機械を中心に低迷しているものの、海外小型屋外作業機のプロユーザー向け販売が好調に推移していることに加え、前回の業績予想公表時から更に進行した円安ドル高が売上高を押し上げたことから増収を見込んでいる。
営業利益は同2.5%減の91億円を見込む。
原材料価格の更なる高騰に対し国内の価格改定が一部遅れていることに加え、北米小型屋外作業機におけるホームオーナー向け販売台数の減少に伴い総原価が悪化していることから減益を見込む。
配当予想に修正は無い。前期比7円/株増配の52円/株の予定。予想配当性向は27.0%。
3-2 基本方針とセグメント別重点施策
※前回レポート(22年10月12日掲載)を再掲
自社の存在意義を示す「エッセンス:人と自然と未来をつなぐ」を改めて認識するとともに、研究・開発力、良く働く作業機械の提供、一貫生産体制という、時代を超えても変わらない自社の強みによって、人々の暮らしを支える生活インフラ作りに必要不可欠な企業で在り続けることを目指している。
そうした理念の下、2022年12月期は以下のような基本方針、セグメントごとの重点施策を掲げている。
(1)基本方針
*売上の拡大と収益性の改善
*カーボンニュートラルに向けた取組みを促進
(2)セグメント別重点施策
①小型屋外作業機
市場 | 市場環境 | 重点施策 |
北米 | ・コロナ需要が物価高や行動規制の緩和により在宅時間が減少し、ホームオーナーの需要が停滞 ・物流や原材料調達などサプライチェーンが混乱 ・カリフォルニア州の独自の排ガス規制強化 | ・高い需要が続くプロ向け製品「Xシリーズ」の拡販に注力する ・DC製品をフルラインで本格販売 ・前期に購入した米国倉庫を活用し、物流機能を強化、供給不足リスクに備える ・デジタルマーケティングによる販促 |
欧州 | ・巣籠需要は一服感も、プロユーザーの高い需要は継続 ・一般ユーザー含むDC製品の販売が、北欧を中心にエンジン製品を上回る | ・高付加価値なプロ向け「Xシリーズ」の拡販に注力 ・拡大するDC製品需要に対し今期から新たなDC製品ラインナップを展開 |
日本 | ・新型コロナによる巣籠需要は一服 ・ユーザーの高齢化、農業・林業従事者の減少 ・前年の補助金による需要増加の反動 | ・エンジン主力機種の拡販 ・高付加価値製品の販売を強化 ・DC製品の販売強化 |
②農業用管理機械
市場 | 市場環境 | 重点施策 |
日本 | ・農業従事者の減少、高齢化が進み農業の効率化、更なる安全性の確保が求められる ・農業の法人化が進む ・前年の補助金による需要増加の反動 ・中国都市封鎖による供給不足が発生 | ・安全・安心なものづくりの徹底 ・収益性の改善が急務 ⇒開発組織を再編し、農機改革室を設置 ⇒ラインナップの見直し ・新機種の開発に注力 ・スマート農業に対応した製品の販売を強化 |
③一般産業用機械
市場 | 市場環境 | 重点施策 |
日本 | ・引き続き営業活動が制限 ・万博需要 ・人流再開に伴うイベントの再開需要 ・度重なる災害の発生 | ・新製品開発に取り組む ⇒マルチ発電機 ⇒ハイブリッド溶接機 ・遠隔監視システムの販促 ・防災、減災、国土強靭化に対応した製品の拡販 |
海外 | 北米の建設工事向け需要の回復 | ・遠隔監視システムやハイブリッド溶接機等、高付加価値な製品の販売拡大に注力 ・遠隔監視システムの販促 |
4.カーボンニュートラルと同社の開発戦略
中長期的には、エンジン製品の需要は排出ガス規制の動向や技術革新の影響に左右されるも、プロユーザー向けの需要は根強く残る。一方で、DC製品化は加速し、エンジン・DC含めた市場規模は拡大傾向と見ている。
こうした市場環境に対し同社では以下のような開発戦略を構築・推進している。
(同社資料より)
(1)具体的な取り組み
①排出ガス規制へのイノベーション
EPA(United States Environmental Protection Agency、米国環境保護庁)が設定する排出ガス規制の基準値は、2001年から2005年の4年間で8割の大幅な削減をメーカーに要求した。しかし、これに対応できないメーカーが多数続出し、淘汰が進んだ。
EPAは基準値を今後も更に引き下げることが予想される。
このような厳しい環境の中でも同社は開発から資材調達、鋳造、金属加工、機械加工、組立まで世界的にも稀な小型エンジン製造の一貫生産体制と開発力・技術力によって規制に対応し続けている。EPA認証数は世界でトップクラスである。
②バッテリー製品のラインアップ
主力市場である米国において、2021年、子会社ECHO incにバッテリーR&Dセンターを設置した。このR&Dセンターを基盤に、グローバルDC製品の開発・製造を進め、グローバルプラットフォームを確立し、今年より本格稼働を開始する。
2022年から共通のバッテリーで使用可能な新たなバッテリー製品を北米・欧州・日本市場において展開を開始した。
異なる作業ニーズに応えるべく、高出力・中出力の2種類を用意した。
独自の制御技術によりバッテリーの熱、充電、放電を管理することで、効率的な出力が可能である。
高性能で耐久性に優れ、プロユーザーも満足できる「Xシリーズ」で2系統のバッテリー製品シリーズを市場別に展開している。
2021年、アメリカケンタッキー州で開催された全米最大規模の庭園管理機械見本市「GIE+EXPO」で発表したほか、22年7月に開催された米国代理店会議でも紹介され、代理店から高い評価を得た。
現在の一般的なバッテリー製品の主要領域は「低中出力で短い作業時間」である。
これに対して同社は「高中出力で長い作業時間」という豊富な仕事量が求められるユーザーや用途に対応した「良く働く作業機」を注力領域としている。
手持ち・背負い型の作業機分野で、排出ガス規制をはじめとするカーボンニュートラルに対応した小型屋外作業機械の開発・販売を推進し、来期以降ラインアップを順次拡大していく予定である。
(同社資料より)
ラインアップ拡充に向け積極的な技術開発を進めている。
2020年には電動製品対象の新規特許出願件数がエンジン製品対象の出願件数を上回った。
③アライアンスへの取り組み
以下のようなアライアンスを進めている。
アライアンス | 概要 |
eFuel Allianceへの加盟(2021年5月) | 環境対応の合成燃料の普及などを目指すeFuel Allianceに加盟し研究を開始した。 |
イーセップ(株)と共同研究開発契約を締結 | OPEエンジンに最適化なeFuelの開発を目指す。 |
MIRAI-LABO(株)と資本業務提携を締結 | 「ハイブリッド自律型エネルギーシステム」や「屋外作業機の電動化ならびに移動型バッテリー充電システム」の開発・事業化など、「低炭素・循環型社会の実現」に向けた協業体制を強化する。 |
*eFuel
CO₂(二酸化炭素)とH₂(水素)を合成して製造された燃料を合成燃料という。原料に大気中のCO₂を使用するため、燃料の燃焼によりCO₂が排出されたとしても大気中のCO₂量は増加しない。特に、原料となるH₂の製造過程においてもCO₂が排出されることがないよう、再生可能エネルギー由来電力により調達されたH₂を用いたものをeFuelという。
*eFuel Alliance
地球温暖化防止に貢献するカーボンニュートラル燃料(climate-neutral synthetic fuels)を確立・普及させ、世界中で使用されることを目標に掲げる団体。本部はドイツ。石油、自動車および自動車部品、機械・プラントエンジニアリング、航空・海運、化学、エネルギー等の様々な業界の企業、団体、個人が加盟している。
5.今後の注目点
通期予想を再度修正した。円安ドル高による押し上げ効果により、売上高を上方修正し、期初予想と同じく1,500億円としたが、営業利益は増益予想から減益予想に転じた。売上高総利益率が期初予想の29.5%から低下し、27.4%と前期の27.7%を下回る見込みだ。
価格改定の浸透等により、第4四半期にどの程度改善に向かうのかを注目したい。
<参考1:中期経営計画2022の概要・重点施策>
(1)中期経営計画2022の方針・重点施策
①基本方針
前中期経営計画の基本方針を継続する。
強い経営基盤を持ち、持続的に成長することで社会の発展に貢献し、やまびこにつながる全ての人々を幸せにします。 |
|
革新的な製品を生み出し、グローバルに製造・販売・サービスを展開することで企業価値を高めるとともに、やまびこにつながる人々の多様な価値観に対応します。 |
②セグメント別目標・戦略
市場環境として、小型屋外作業機械においては、長時間・高負荷な作業環境への対応が求められるプロ向け市場では引き続き、エンジン製品の需要が見込まれると見ており、プロ向け市場への一段のシフトを進める。
農業用管理機械・一般産業用機械においては、国内の農業・建設業界では働き手不足と高齢化が進み、省人化、省力化が求められている。
◎小型屋外作業機械事業
重点目標としては、①エンジン製品の環境規制を先取りした取組み、②ロボット事業の収益化、③DCラインナップの充実を挙げている。
(北米)
プロ向け戦略を深化させ、持続的成長を図り、エンジン製品市場における存在感を示し、着実に上昇しているシェアの更なる引き上げを目指す。
重点施策としては、高性能なプロ向け製品群である「Xシリーズ」のラインナップを拡充するほか、引き続きデジタルマーケティングを強化する。ソーシャルメディアを使用したプロによる最新製品の評価拡散、ジェネレーション毎のマーケティング最適化、ユーザーの関心が高い野球(MLB)、サッカー(MLS)広告によるブランド力向上等に取り組む。
主要販売ルートであるホームデポにおいては、重点製品の販売に集中するとともに販売面積の拡大を図るほか、期間限定で効果的なプロモーションを継続する。
また、ロボット製品の米国市場開拓にも注力する。
(欧州)
市場に合わせた拡販とブランド認知度の向上を推進する。
重点施策としては、プロ向け製品群「Xシリーズ」の拡販、バッテリー製品のラインナップ拡充、排出ガス規制対応のラインナップ充実、ロボット製品の拡販と市場開拓、デジタルマーケティングによる認知度向上等に取り組む。
(日本)
重点施策としては、新型DC製品としてトップハンドルチェンソーを市場投入するほか、効果的なキャンペーンの継続、省力化・効率化製品(ロボット芝刈機の発売)の推進、ホームセンター販売の強化などに注力する。
◎農業用管理機械事業
具体的には、開発・生産・営業が一体となった生産コストの低減と収益性の改善、販売ルート拡大、効果的なキャンペーンの継続、スマート農業への対応等に取り組む。
◎一般産業用機械事業
(日本)
防災・減災、国土強靭化インフラ投資の流れを背景に需要を確実に取り込むために、効果的なキャンペーンの継続やレンタル会社向け販売強化に取り組む。
(海外)
北米では広域レンタル会社への開拓本格化、アジア・アフリカでは、新規販売網の構築に取り組む。
③重点施策
◎総原価低減と製品品質の向上
更なる原価低減のための生産効率の改善を継続する。
製造リードタイムの短縮と製品在庫の削減につながる新生産方式の確立、「絶対品質」を実現するための継続的な品質管理の改善を挙げている。
◎サービス力の強化
収益力向上につながるサービス力の強化に取り組む。
収益性の高いサービス部品やアクセサリーの充実と拡販、各製品のサービス資料の充実や研修体制の強化、トータル物流コスト削減と在庫圧縮等に注力する。
(2)設備投資・研究開発費・減価償却費
(同社資料より)
設備投資に関しては、初めの2年間で合計91億円の計画であったが、実績は73億円と未達であったため、最終2022年は33億円の計画を64億円に修正後、50億円に再度修正した。3年間では123億円の計画。ITシステム投資のほか、環境対策投資に注力する。
(3)数値目標
2022年12月期「売上高1,500億円、営業利益91億円」を目標としている。
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役設置会社 |
取締役 | 8名、うち社外4名 |
監査役 | 4名、うち社外2名 |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2022年7月1日
<基本的な考え方>
当社は、当社グループ全体の最適化戦略、監督機能および当社グループのグローバルな経営戦略や成長のための資源配分など、グループ全体の企業価値向上のための諸施策を積極的に推進してまいります。
そのために当社は、企業理念、行動規範に基づく健全な企業風土を構築し、当社グループのコンプライアンスおよびリスク管理を柱とするコーポレート・ガバナンス体制の充実・強化に取り組み、地域社会、株主の皆様、顧客および従業員など、全ての利害関係者から価値ある企業グループとして評価されるよう、健全で透明性の高いグループ経営を徹底してまいります。
当社の取締役会は社外取締役4名を含む8名の取締役で構成され、当社グループの経営方針、経営戦略およびグループ会社の経営指導・監督に関わる重要な意思決定を行います。取締役は取締役会において、他の取締役の職務を監視、監督するほか、自己の職務の執行状況について取締役会に定例的に報告します。また、取締役会の決定事項を的確かつ迅速に実践するため、経営戦略会議において十分な審議を行います。
当社は監査役制度を採用し、常勤監査役2名と社外監査役2名の計4名で監査役会を構成します。
監査役は別に定める監査役会規則および監査役監査基準に基づき、取締役会、経営戦略会議、執行役員会ならびに社内の重要会議に出席し、取締役の業務執行の監査を行うとともに、会計監査人・内部監査部門と連携しつつ、監査の実効性の確保を図ってまいります。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
2021年6月の改訂後のコードに基づき記載しております(2022年4月4日以降適用となるプライム市場向けの原則を含みます)。
原則 | 実施しない理由 |
【補充原則3-1-3.TCFDの枠組みに基づく開示】 | 当社は、気候変動対応を最重要の経営課題の一つと認識し、カーボンニュートラルへの取組みを進めております。また、カーボンニュートラル実現に向けた基本方針の策定に着手し、環境負荷の低い製品の開発やバッテリーを動力源とする製品の拡充に加え、eFuelなど合成燃料に関する研究を強化するなど、環境負荷の低減に取り組んでおります。 当社は、TCFDの枠組みに基づき、国内の GHG排出量目標および施策を取りまとめている段階であり、グループ全体の開示の質と量の充実を進めてまいります。 |
<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
原則 | 開示内容 |
【原則1-4政策保有株式】 | (1)政策保有に関する方針について 当社は、国内外の緑地管理、農作業、建築・土木、その他幅広いフィールドで事業を展開しております。そのため、各事業に関わる多くの企業との協力関係が必要であり、中長期的な企業価値向上に資すると判断した場合については、株式の政策保有を行い、保有の意義が希薄と判断した場合については、相手先企業との対話を行い、市場への影響等を総合的に考慮のうえ、売却・縮減していくことを方針としております。 当社は毎年、取締役会で銘柄毎の政策保有株式について協力関係の維持・強化等の政策保有の意義や経済合理性等を具体的に検証し、保有継続の可否および保有株式数を見直します。 なお、2015年のコード適用以降、検証の結果、 25銘柄から15銘柄に減少させております。 (2)政策保有に係る議決権の行使基準について 政策保有株式の議決権の行使については、企業業績のほか、適切なコーポレート・ガバナンス体制の強化や株主価値の向上に資するものか否か、また、当社への影響等の観点を踏まえ、総合的に賛否を判断し適切に行使します。また、提案の内容等について必要に応じて相手先企業との対話を行います。 |
【補充原則 2-4-1.中核人材の登用等における多様性の確保】 | <多様性の確保> 当社は、性別・国籍・採用形態を問わず、能力を最大限に発揮できる各種の人材登用施策を実施しており、引き続き多様な人材の管理職への登用を推進してまいります。 女性活躍の観点については、重要な課題と位置づけ、女性活躍推進法に基づき2024年3月を期限とする行動計画を定め、次の3つの目標を掲げ取り組んでおります。 目標①「定期・中途採用者における女性の割合を20%以上とする。」 目標②「女性管理職数を2018年比、2倍以上とする。」 目標③「効率的な働き方を追求し、仕事と家庭を両立しやすい組織風土を醸成する。」 これらの進捗状況については、目標①は、2020年度採用者に占める女性の割会は22%となっております。目標②は、2020年度の女性管理職数は、2018年比33%増となっております。目標③では、ライン長向けにワークライフバランス研修を実施するとともに、従業員の仕事と子育ての両立を図るため、行動計画を策定・推進した結果、“くるみんマーク”を取得することができました。 外国人については、当社執行役員に海外子会社の社長が就任するなど、グローバル市場において事業を展開するため、外国人の管理職への登用をより一層推進してまいります。 また、中途採用者については、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用を積極的に行っており、過去3か年の採用者に占める中途採用者の割合は33%となっております。更に、管理職に占める中途採用者の割合は36%であり、引き続き中途採用による多様な人材の確保と、管理職の積極的な登用に取り組んでまいります。 <多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針> 当社は、多様な働き方と、その成果を評価する制度の構築、学習機会の提供と学ぶ組織風土の醸成に努め、人材開発に取り組んでおります。また、従業員にとって働きやすい環境とするため、時間単位有給休暇制度の導入、育児・介護等の事情を抱える従業員を支援する制度の導入に取り組むなど環境整備も積極的に図ってまいります。 |
【補充原則 3-1-3. サステナビリティの取組み等の開示】 | 1.サステナビリティへの取組みについて 当社は、農業・林業・緑地管理など世界中の自然と環境、それに関わる企業や人々の活動を支えるための製品を開発、提供し続けてきました。当社が企業理念に掲げる「人と自然と未来をつなぐ」事業活動そのものが、自然環境や社会環境の課題解決への貢献につながっていると考えております。 また、さまざまなお客様の課題に向き合い、世界最高のものづくりとサービスを追求し続けることで、社会・経済情勢に対応したサステナビリティ重視の製品開発を行ってまいります。 2.人的資本や知的財産への投資等について 当社は、人材を最も重要な経営資源であると考えております。教育システムの運用強化や、3年ごとに全社員を対象とした意識調査を実施し、従業員のエンゲージメントの向上に取り組むなど、人材開発への投資を積極的に行うことで、企業価値の向上につなげてまいります。 知的財産については、当社の安定的な成長を実現するための不可欠な経営資源と位置付けており、今後、大きな成長が期待できる重点分野として、電動製品関連技術、ロボット作業機、IoT技術等の権利取得を積極的に推進するとともに、取得した知的財産の定量的な価値評価手法の確立に取り組むなど、知的財産の効率的な運用・管理を行っております。 |
【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】 | 当社は、株主・投資家との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針として、以下の施策を実施しております。 (1)会社情報の公平かつ適時適正な情報開示により、当社への理解促進を図るとともに持続的な企業価値向上に資するよう、経営企画担当役員をはじめIR担当者が株主・投資家との積極的な対話に取り組んでおります。 (2)企画・経理本部経営企画部IR・広報課を中心に、総務部や経理部、営業部門などの対話を補助する社内の関連部門は、建設的な対話の実現に向け、開示資料の作成・審査や必要な情報の共有など、積極的に連携を取りながら業務を行っております。 (3)株主・投資家との個別面談以外の対話の手段として、定期的に機関投資家向け決算概要説明会や事業所見学会などを実施しており、株主に対しては、当社のトピックスや業績をまとめた冊子を配布しております。また、株主・投資家からの意見・要望などをもとに、当社ホームページの内容充実を図っており、今後はニュースリリースの拡充を図っていきたいと考えております。 (4)対話において把握した株主の意見などは、必要に応じて、会議体での報告やレポートの配付などにより、取締役および関係部門へフィードバックし、情報の共有化を図っております。 (5)当社は、インサイダー取引の未然防止を図るために「内部者取引管理規定」を制定し、新入社員研修や社内報でインサイダー取引の記事を掲載することなどにより、社内啓蒙を促進するなど、内部者取引に関する情報の管理徹底を図っております。 |
本レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資活動を勧誘又は誘引を意図するものではなく、投資等についてのいかなる助言をも提供するものではありません。また、本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、当社は、本レポートに掲載されている情報又は見解の正確性、完全性又は妥当性について保証するものではなく、また、本レポート及び本レポートから得た情報を利用したことにより発生するいかなる費用又は損害等の一切についても責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は、当社に帰属します。なお、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申し上げます。 Copyright(C) Investment Bridge Co., Ltd. All Rights Reserved. |
ブリッジレポート(やまびこ:6250)のバックナンバー及びブリッジサロン(IRセミナー)の内容は、 www.bridge-salon.jp/ でご覧になれます。
| 同社の適時開示情報の他、レポート発行時にメールでお知らせいたします。 |
| ブリッジレポートが掲載されているブリッジサロンに会員登録頂くと、株式投資に役立つ様々な便利機能をご利用いただけます。 |
| 投資家向けIRセミナー「ブリッジサロン」にお越しいただくと、様々な企業トップに出逢うことができます。 |