ブリッジレポート:(2483)翻訳センター 2023年3月期第2四半期決算
二宮 俊一郎 社長 | 株式会社翻訳センター(2483) |
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企業情報
市場 | 東証スタンダード市場 |
業種 | サービス業 |
代表取締役社長 | 二宮 俊一郎 |
所在地 | 大阪府大阪市中央区久太郎町4-1-3 |
決算月 | 3月末日 |
HP |
株式情報
株価 | 発行済株式数 | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
1,513円 | 3,369,000株 | 5,097百万円 | 11.9% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
45.00円 | 3.0% | 194.92円 | 7.8倍 | 1,528.32円 | 1.0倍 |
*株価は12/5終値。発行株式数、DPS、EPSは23年3月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | DPS |
2019年3月(実) | 12,008 | 900 | 905 | 630 | 187.39 | 35.00 |
2020年3月(実) | 11,550 | 813 | 822 | 304 | 91.82 | 42.00 |
2021年3月(実) | 9,910 | 418 | 465 | 117 | 35.39 | 20.00 |
2022年3月(実) | 10,337 | 811 | 841 | 573 | 172.14 | 40.00 |
2023年3月(予) | 11,100 | 960 | 960 | 650 | 194.92 | 45.00 |
*単位:百万円、円。2018年4月1日付で1:2の株式分割を実施。EPS、DPSは遡及して調整。当期純利益は親会社株主に帰属する
当期純利益。以下同様。
翻訳センターの2023年3月期第2四半期決算概要等をご紹介致します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2023年3月期第2四半期決算概要
3.2023年3月期業績予想
4.第五次中期経営計画の概要・進捗
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>
今回のポイント
- 23年3月期第2四半期の売上高は前年同期比5.4%増の52億38百万円。主力の翻訳事業が堅調、通訳事業も回復基調にある。営業利益は同20.5%増の3億89百万円。増収に伴い粗利が同5.1%増加。販管費は同2.6%増にとどまった。業績予想に対しては、売上高は若干の未達、利益は予想を上回った。
- コアビジネスである翻訳事業の需要は堅調に推移し、通訳事業の需要もオンライン通訳サービスの定着により回復傾向にあることから、上期実績と今後の見通しを踏まえ、業績予想を修正した(売上高は修正なし)。売上高は前期比7.3%増の111億円、営業利益は同18.3%増の9億60百万円の予想。コンベンション事業以外は増収を見込んでいる。売上高営業利益率は前期比0.8%上昇し8.6%を見込む。配当予想に変更は無い。前期比5円増配の45.00円/株を予定。予想配当性向は23.1%。
- 2023年3月期から2025年3月期までの3ヵ年における第五次中期経営計画の重点施策の一つ、「ドキュメント別言語資産活用モデルの確立」では、臨床試験関連文書に特化した製薬業界向けAI翻訳「製薬カスタムモデル」に続く、新たな文書特化型機械翻訳モデルの作成に取り組み、言語資産の活用を推し進めていく。22年11月にはプロネクサス(7893、東証プライム)と有価証券報告書英文開示サービスの共同開発を進めることで合意した。
- コロナ禍に苦しんできた同社だが、ようやく明るさが増してきたようだ。主力の翻訳事業が堅調なことに加え、赤字が続いてきた通訳事業も第2四半期(7‐9月)には黒字に転換した。通期業績予想を上方修正し、今下期の売上高・営業利益はほぼコロナ禍前の水準に回復する見込みである。もとより下期ウェイトの高い同社だが、第3四半期、第4四半期にどれだけ売上・利益を積み上げていくのか注目していきたい。
1.会社概要
翻訳業界の国内最大手。特許、医薬、工業・ローカライゼーション、金融・法務分野において、産業翻訳と呼ばれる技術文書やビジネス文書の翻訳を行う。語学力、専門性、文章力に優れた約2,700名の登録翻訳者を有する。高い品質と専門性、対応言語約80言語という幅広さが特徴。通訳も含めた言語サービスにおける事業領域の拡大を図る。機械翻訳を利用した新たなビジネスモデルの構築にも着手。
【1-1 沿革】
江戸時代から薬の町として有名な大阪・道修町(どしょうまち)で、医薬専門の翻訳サービスを提供するために設立された(株)メディカル翻訳センターが前身。その後、特許などへ翻訳業務の範囲を広げる過程で東京、大阪、名古屋に設立した数社を整理・統合して1997年8月に(株)翻訳センターとなる。2006年株式上場後、海外へも進出。2022年4月、市場再編に伴い東証スタンダード市場に移行した。
【1-2社長プロフィール】
二宮 俊一郎社長は1969年7月21日生まれ。
1997年4月同社入社、2004年6月取締役就任。2018年6月代表取締社長役に就任。機械翻訳の進化で大きく変動する翻訳業界においてビジネスモデルの転換でさらなる成長を目指す同社を牽引する。
【1-3企業理念・経営方針】
<企業理念>
産業技術翻訳を通して、国内・外資企業の国際活動をサポートし、国際的な経済・文化交流に貢献する企業を目指す。 |
<経営ビジョン>
「すべての企業を世界につなぐ言葉のコンシェルジュ」
【1-4 市場環境】
翻訳ビジネスは大きく分けて、「産業翻訳」、「出版翻訳」、「映像翻訳」があるが、同社の中心的な事業は、企業や官公庁で発生する技術文書、ビジネス文書の翻訳のことを指す「産業翻訳」と言われる分野。
日常生活においては出版翻訳や映像翻訳を目にすることが多いが、約2,300億円(2020年度)といわれる日本の翻訳市場において、産業翻訳が占める割合は90%と圧倒的な大半を占めている。
一般社団法人日本翻訳連盟によると、国内には約2,000社の翻訳会社・事業者があるが、売上高78億円(翻訳セグメント、2022年3月期)の同社の以下は、10位で売上高数億円程度と、小規模事業者が大多数の業界となっている。
日本企業の活動のグローバル化が進むにつれて、翻訳ニーズは益々拡大するものと予想されていたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による企業の事業活動の停滞が起因となって一時的な翻訳ニーズ減少も予想される。同感染症の収束がみえない中、市場環境の先行きも不透明である。
海外に目を向けてみると、アメリカの調査会社コモンセンスアドバイザリー社発表による2020年の世界の語学サービス会社の売上高ランキングにおいて、同社は世界で16位、アジア太平洋地域では2位にランクインされた。
コモンセンスアドバイザリー社のレポートによると、世界の翻訳市場は日本市場の10倍以上にあたる巨大市場が形成されている。当然競争も激しい事は予想されるが、翻訳センターは事業拡大のため、新規領域への取組も開始しており、世界トップ10入りを目指している。
【1-5事業内容】
(1)概要
特許、医薬、工業・ローカライゼーション、金融・法務など、専門性の高い事業分野における産業翻訳を行っている。
産業翻訳の具体例としては、以下の様なものが挙げられる。
*デジタル機器等における複数言語で書かれている取扱説明書
*海外生産工場での機械の仕様書や現地従業員向けの作業マニュアル
*現地会社で使う規程などの人事労務資料
*日本国あるいは外国へ特許出願する際の特許明細書
*日本国あるいは外国で医薬品の承認申請を取得するための資料
*決算短信、株主総会招集通知などのディスクロージャー関連資料
*企業間で発生する契約書などの法務資料
顧客の9割が法人。
売上ベースで対応言語の80%が英語で、中国語5%、独・韓・西が数%と続くが、近年、東南アジア言語の翻訳依頼が増えている。現在、約80言語に対応している。
(2)ビジネスモデル
翻訳作業は、同社に登録している約2,700名(2022年3月期)の翻訳者が行う。質の高い翻訳者をどれだけ確保できるかが事業拡大の上で大きなポイントとなる。
そのために、登録の際トライアルを実施し、語学力と翻訳支援ツールや機械翻訳の活用を必須とした上で、技術知識など専門性や文章力、スピードも評価して一定以上の能力を有した翻訳者のみと契約している。合格率は約11%と狭き門となっている。
同社の売上原価のほぼ大半が登録翻訳者への支払報酬で、原則的に「対応言語 1ワードあるいは1文字」当たりの従量制となっている。同社が安定的に利益を生み出すためには以下の3点が最も重要であり、そのためにさまざまなシステムを導入している。
①翻訳者の選定
品質確保のためには、顧客から依頼された原稿の内容に適した翻訳者を言語、専門性、スピード、発注単価などを加味して選定しなければならない。
この選定でミスをすると、納品までの後工程に支障をきたし、収益低下につながる。
同社では基幹業務統合システムを使用し、常に適切な翻訳者選定が出来るような体制を構築している。案件の受注から納品、回収までを一括管理する同社カスタマイズの基幹業務システムで、販売管理だけでなく、登録者に関する専門分野、過去の実績、スケジュールなど、詳細なデータが蓄積されている。
プロジェクトマネージャと呼ばれる社内の担当者が、このシステムに蓄積された登録者の専門分野、過去の実績、スケジュールなどのデータを用いて適切な翻訳者を選定する。これによりプロジェクトマネージャの属人的な経験などに頼らずに適切な翻訳者の選定を行う事が出来る。
②翻訳のスピードアップおよび品質チェック
顧客に納品する前に必要な校正作業は社内の校正スタッフ、ネイティブスタッフなど、専門スタッフが行っている。また、翻訳作業をより確実かつスピーディーに行えるよう、同社では機械翻訳や各種翻訳支援ツールを活用している。
③今後の方向性
機械翻訳の精度が急速に向上する中、従来の翻訳アウトソーシングにとどまらず、ソリューションビジネスへの転換を進めて行く。詳細は、「4.第五次中期経営計画の概要・進捗」を参照。
(3)事業セグメント
翻訳事業が売上の大半を占めるが、「すべての企業を世界につなぐ言葉のコンシェルジュ」として、翻訳者派遣、通訳、コンベンションなど幅広いフィールドで事業を展開している。
報告セグメントは、「翻訳事業」「派遣事業」「通訳事業」「コンベンション事業」の4つ。「その他」は外国出願支援事業等を含む。
「翻訳事業」
翻訳の対象により、特許分野、医薬分野、工業・ローカライゼーション分野、金融・法務分野で構成されている。
➀特許分野
主に、特許事務所および各種メーカーの知的財産関連部署を顧客とした、電気、電子、機械、自動車、半導体、情報通信、化学、医薬、バイオ分野における、外国出願ならびに日本出願などに伴う特許出願明細書や特許公報の翻訳を行っている。
②医薬分野
主に、製薬会社を顧客とした新薬等医薬品開発段階での試験実施計画書、試験報告書、医薬品の市販後の副作用症例報告、学術論文、および、医薬品・医療機器類の導入や導出に伴う厚生労働省、米国FDA(食品医薬品局)などへの申請関連資料などの翻訳を行う。また、医療機器メーカーを顧客としたマニュアルの翻訳や化学品、農薬関連の翻訳、臨床試験関連文書(CSR、CTD等)の作成業務も行っている。
③工業・ローカライゼーション分野
主に、自動車、電気機器、機械、半導体、情報通信関連の輸出・輸入メーカーを顧客とした、技術仕様書、規格書、取扱説明書、品質管理関連資料の翻訳、デジタルコンテンツ類の翻訳を行う。また機械翻訳や翻訳支援ツールをはじめとする各種ツールの販売・導入・運用支援業務も行っている。
④金融・法務分野
主に、銀行、証券会社、保険会社など金融機関、法律事務所を顧客とした、市場分析レポート、企業業績・財務分析関連資料、運用報告関連資料、人事関連資料、マーケティング関連資料、契約書、定款・約款などの翻訳、また、企業の管理系部署などを顧客とした、株主総会招集通知やアニュアルレポート、有価証券報告書などのディスクロージャー関連資料の翻訳、会社案内、法律関連文書、人事規程などの翻訳も行っている。
「派遣事業」
(株)アイ・エス・エスにおいて、機密保持上、社外に持ち出せない文書類などの翻訳業務を顧客企業内で行う翻訳者派遣や企業内で通訳業務に従事する通訳者の派遣を行っている。
「通訳事業」
(株)アイ・エス・エスにおいて、企業内で行われる会議や中小規模の国際会議、商談、工場見学などの際の通訳を請負っている。
「コンベンション事業」
(株)アイ・エス・エスにおいて、国際会議・国内会議(学会・研究会)やセミナー・シンポジウム、各種展示会の企画・運営を行っている。
「その他」
子会社の(株)アイ・エス・エスが運営する「アイ・エス・エス・インスティテュート」にて通訳者・翻訳者養成を目的とした語学教育業務や法人向け語学研修を、株式会社FIPAS(旧 (株)外国出願支援サービス)にて外国出願用の特許明細書の作成から出願手続きの支援業務を行っている。また2019年6月に(株)メディア総合研究所から同社に移管した各種データ(音声・画像・対話・コーパス)の収集・分析・活用支援業務も含まれる。
【1-6 特徴と強み】
翻訳業界最大手である同社は、以下のような強みや特徴を有している。
◎専門性
特許、医薬、工業・ローカライゼーション、金融・法務の4分野において高い専門性を有している。
本業である翻訳に加えて、外国特許出願に際しての出願書類の作成やメディカルライティング(新薬申請資料の作成)を手掛けるなど、その業界に関する高い専門性と翻訳に付随した付加価値サービスを展開している。
近年さまざまな翻訳支援ツールや機械翻訳サービスが提供されるようになってきているが、同社でも専門性を維持しつつファイル管理や用語統一などを効率化する有効なツールとして積極的に導入を進めている。
◎総合力
2006年4月の株式上場時は翻訳事業のみの事業形態であったが、2012年9月に通訳業界で大きな実績をもつ(株)アイ・エス・エスを買収し、事業を拡大した。「すべての企業を世界につなぐ言葉のコンシェルジュ」という経営ビジョンのもと、コア事業である翻訳だけにとどまらず、通訳、人材サービス、コンベンション(国際会議企画・運営)、通訳者・翻訳者育成など、外国語ビジネスの総合サプライヤーとして体制を構築している。また、対応言語数が約80言語という幅広さ、前述の外国特許出願時におけるワンストップ・サービスなど、守備範囲の広さが大きな競争優位性に繋がっている。
【1-7 ROE分析】
| 15/3期 | 16/3期 | 17/3期 | 18/3期 | 19/3期 | 20/3期 | 21/3期 | 22/3期 |
ROE(%) | 10.4 | 14.4 | 13.4 | 15.2 | 15.2 | 6.8 | 2.5 | 11.9 |
売上高当期純利益率(%) | 3.08 | 4.69 | 4.35 | 5.34 | 5.25 | 2.64 | 1.19 | 5.54 |
総資産回転率(回) | 2.15 | 2.00 | 2.09 | 1.96 | 1.96 | 1.82 | 1.58 | 1.54 |
レバレッジ(倍) | 1.59 | 1.54 | 1.48 | 1.46 | 1.48 | 1.43 | 1.38 | 1.40 |
3期ぶりにROEは2桁を回復した。
2.2023年3月期第2四半期決算概要
(1)連結業績
| 22/3期2Q | 構成比 | 23/3期2Q | 構成比 | 前年同期比 | 予想比 |
売上高 | 4,968 | 100.0% | 5,238 | 100.0% | +5.4% | -2.1% |
売上総利益 | 2,354 | 47.3% | 2,474 | 47.2% | +5.1% | - |
販管費 | 2,032 | 40.9% | 2,085 | 39.8% | +2.6% | - |
営業利益 | 322 | 6.4% | 389 | 7.4% | +20.5% | +14.4% |
経常利益 | 331 | 6.6% | 390 | 7.4% | +17.9% | +13.3% |
四半期純利益 | 219 | 4.4% | 259 | 4.9% | +17.9% | +12.8% |
*単位:百万円。予想比は22年5月発表の業績予想に対する増減比率。
増収増益、利益は予想を上回る
売上高は前年同期比5.4%増の52億38百万円。コアビジネスである翻訳事業が堅調、通訳事業も回復基調にある。
営業利益は同20.5%増の3億89百万円。増収に伴い粗利が同5.1%増加。販管費は同2.6%増にとどまった。
業績予想に対しては、売上高は若干の未達、利益は予想を上回った。
(2)セグメント別動向
◎セグメント別売上高と利益
| 22/3期2Q | 構成比 | 23/3期2Q | 構成比 | 前年同期比 |
翻訳事業 | 3,727 | 75.0% | 3,983 | 76.0% | +6.8% |
特許 | 1,124 | 22.6% | 1,329 | 25.3% | +18.2% |
医薬 | 1,448 | 29.1% | 1,350 | 25.7% | -6.7% |
工業・ローカライゼーション | 871 | 17.5% | 1,002 | 19.1% | +15.0% |
金融・法務 | 284 | 5.7% | 300 | 5.7% | +5.9% |
派遣事業 | 610 | 12.3% | 556 | 10.6% | -8.7% |
通訳事業 | 325 | 6.5% | 421 | 8.0% | +29.6% |
コンベンション事業 | 95 | 1.9% | 86 | 1.6% | -9.2% |
その他 | 209 | 4.2% | 189 | 3.6% | -9.5% |
売上高合計 | 4,968 | 100.0% | 5,238 | 100.0% | +5.4% |
翻訳事業 | 311 | 8.4% | 404 | 10.2% | +29.8% |
派遣事業 | 46 | 7.6% | 25 | 4.6% | -45.3% |
通訳事業 | -10 | - | 3 | 0.8% | - |
コンベンション事業 | -14 | - | -16 | - | - |
その他 | -14 | - | -30 | - | - |
調整額 | 2 | - | 2 | - | - |
営業利益合計 | 322 | 6.5% | 389 | 7.4% | +20.5% |
*単位:百万円。営業利益の構成比は売上高に対する利益率。
➀翻訳事業
増収増益
需要の回復基調は継続しており、各分野は概ね堅調に推移した。
<特許>
増収
主要顧客である特許事務所や企業の知的財産関連部署からの受注が好調に推移したことに加え、情報通信関連企業からの売上も寄与した。
<医薬>
減収
顧客の試験スケジュールにより翻訳需要が一時的に減少したことに加えて、CRO(医薬品開発受託機関)からの受注減少、前期に受注した新型コロナウイルス感染症に関する案件の反動減があった。
<工業・ローカライゼーション>
増収
製造業の顧客を中心に堅調に推移したことに加え、情報通信関連企業から大型案件を獲得した。
<金融・法務>
増収
東証の市場再編に伴いIR関連文書の受注が増加した。
➁派遣事業
減収減益
語学スキルの高い人材を顧客企業に派遣する派遣事業においては、新規受注が堅調に推移したものの、派遣期間終了者の増加に伴い常用雇用者数が前年同期を下回った。
➂通訳事業
増収、黒字転換
主要顧客である医薬品関連会社や精密・通信機器メーカー等からの旺盛な受注、外資コンサルティング会社からの安定した受注に加え、複数の金融機関からの大型会議案件の獲得が寄与した。
④コンベンション事業
減収、損失は前年同期並み
第1四半期に開催した大型会議の売上を計上するも、大規模な国際会議やイベントの開催制限の長期化、サービスのデジタル化に伴う案件の規模縮小の影響が継続している。
⑤その他
減収、損失拡大
外国への特許出願に伴う明細書の作成や出願手続きを行う株式会社FIPASが低調に推移したことに加え、語学教育事業では通訳者・翻訳者養成スクール「アイ・エス・エス・インスティテュート」の受講者数が伸び悩んだ。
(3)財政状態とキャッシュ・フロー
◎財政状態
| 22年3月末 | 22年9月末 | 増減 |
| 22年3月末 | 22年9月末 | 増減 |
流動資産計 | 6,311 | 6,186 | -125 | 流動負債 | 1,891 | 1,637 | -253 |
現預金 | 3,899 | 3,885 | -13 | 仕入債務 | 812 | 795 | -16 |
売上債権 | 2,110 | 1,948 | -162 | 賞与引当金 | 287 | 297 | +9 |
固定資産計 | 861 | 898 | +36 | 固定負債 | 190 | 199 | +9 |
有形固定資産 | 40 | 36 | -4 | 退職給付に係る負債 | 187 | 196 | +9 |
無形固定資産 | 66 | 58 | -7 | 負債計 | 2,081 | 1,837 | -244 |
投資その他の資産 | 754 | 802 | +47 | 純資産計 | 5,090 | 5,247 | +156 |
資産合計 | 7,172 | 7,084 | -88 | 利益剰余金 | 4,094 | 4,215 | +120 |
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| 負債純資産合計 | 7,172 | 7,084 | -88 |
*単位:百万円
売上債権の減少などで資産合計は前期末比88百万円減少の70億84百万円。
負債合計は同2億44百万円減少の18億37百万円。純資産は同1億56百万円増加の52億47百万円となった。この結果自己資本比率は前期末の70.9%から3.1ポイント上昇し74.0%となった。
◎キャッシュ・フロー
| 22/3期2Q | 23/3期2Q | 増減 |
営業CF | 426 | 118 | -308 |
投資CF | -40 | -20 | +19 |
フリーCF | 386 | 97 | -289 |
財務CF | -66 | -133 | -66 |
現金および現金同物残高 | 3,317 | 3,693 | +376 |
*単位:百万円
営業CF、フリーCFのプラス幅は縮小。
キャッシュポジションは上昇した。
(4)トピックス
◎プロネクサスと有価証券報告書英文開示サービスを共同開発
22年11月、上場企業の情報開示を支援する株式会社プロネクサス(7893、東証プライム)と、今後、増加が予想される有価証券報告書の英文開示に対応するために新サービスの共同開発を進めることで合意した。
(背景)
日本の株式市場においては、約 3 割を占める海外投資家から決算短信にとどまらず有価証券報告書を含めたより充実した英文開示を求める声が強まっている。一方で、上場企業においては翻訳に要する期間や費用、開示担当者の業務負担など複数の要因が重なり、これに十分に応える水準の英文開示が進まないのが現状である。
そこで翻訳センターとプロネクサスは、双方の強みを組み合わせて、この課題に対応するためのサービスを共同で開発することとした。
(概要)
特に英文開示の要望が強まっている有価証券報告書に焦点をあてて、現状よりも早いタイミングで、英文開示できるサービスの実現を目指す。
翻訳センターが保持している翻訳にまつわる広範なナレッジや技術と、プロネクサスが蓄積してきた開示書類に関する知見や情報を組み合わせて、上場企業がより円滑に有価証券報告書の英文開示に対応できるサービスを共同で開発する。
また、開示書類に期待される品質基準を明確に定義することで、チェック作業等の負担軽減にも取り組む。
(今後の展望)
東証プライム上場企業を中心に英文開示の拡充が進んでいることから、同サービスは早期に立ち上げる必要があると考えている。また、継続的な改善と品質向上には、複数年度にわたる計画的な取り組みが必要となるため、先行サービス(パイロットプログラム)の募集を計画している。
両社で連携し、機械翻訳やデータ加工技術を活用した英文開示の高速サービスを立ち上げ、日本の上場企業が円滑に英文開示できる環境整備に貢献したいと考えている。
3.2023年3月期業績予想
(1)連結業績
| 22/3期 | 構成比 | 23/3期(予) | 構成比 | 前期比 | 修正率 | 進捗率 |
売上高 | 10,337 | 100.0% | 11,100 | 100.0% | +7.3% | 0.0% | 47.2% |
売上総利益 | 4,907 | 47.4% | 5,270 | 47.5% | +7.3% | -0.6% | 47.0% |
販管費 | 4,096 | 39.6% | 4,310 | 38.8% | +5.2% | -1.8% | 48.4% |
営業利益 | 811 | 7.8% | 960 | 8.6% | +18.3% | +5.4% | 40.5% |
経常利益 | 841 | 8.1% | 960 | 8.6% | +14.1% | +4.3% | 40.7% |
当期純利益 | 573 | 5.5% | 650 | 5.9% | +13.4% | +4.8% | 39.9% |
* 単位:百万円
業績予想を修正
コアビジネスである翻訳事業の需要は堅調に推移し、通訳事業の需要もオンライン通訳サービスの定着により回復傾向にあることから、上期実績と今後の見通しを踏まえ、業績予想を修正した(売上高は修正なし)。
売上高は前期比7.3%増の111億円、営業利益は同18.3%増の9億60百万円の予想。
コンベンション事業以外は増収を見込んでいる。売上高営業利益率は前期比0.8%上昇し8.6%。
配当予想に変更は無い。前期比5円増配の45.00円/株を予想。予想配当性向は23.1%。
(2)セグメント別動向
◎セグメント別売上高
| 22/3期 | 構成比 | 23/3期(予) | 構成比 | 前期比 | 進捗率 |
翻訳事業 | 7,828 | 75.7% | 8,500 | 76.6% | +8.6% | 46.9% |
特許 | 2,316 | 22.4% | 2,540 | 22.9% | +9.7% | 52.4% |
医薬 | 2,904 | 28.0% | 3,100 | 27.9% | +6.7% | 43.6% |
工業・ローカライゼーション | 2,028 | 19.6% | 2,220 | 20.0% | +9.5% | 45.2% |
金融・法務 | 580 | 5.6% | 640 | 5.8% | +10.3% | 47.0% |
派遣事業 | 1,212 | 11.7% | 1,270 | 11.4% | +4.8% | 43.8% |
通訳事業 | 655 | 6.3% | 720 | 6.5% | +9.9% | 58.6% |
コンベンション事業 | 220 | 2.1% | 180 | 1.6% | -18.5% | 47.8% |
その他 | 420 | 4.2% | 430 | 3.9% | +2.4% | 44.1% |
売上高合計 | 10,337 | 100.0% | 11,100 | 100.0% | +7.4% | 47.2% |
*単位:百万円
※以下、前回レポート(22年7月6日掲載)を再掲
◎翻訳事業
2022年5月に発表した新中期経営計画の基本方針・重点施策のもと、各種業界ごとに求められる専門性の確保に加え、新たにドキュメント別の専門性の追求も推し進め、顧客シェアのさらなる拡大を図る。
機械翻訳の普及に伴う市場変化やコロナ禍による顧客ニーズの変化を的確に捉えた新しいサービスを開発・提供できる体制づくりを推進し、顧客との長期的、安定的な関係の構築を目指す。
◎派遣事業
通訳者・翻訳者の確保を最優先に、新型コロナウイルス感染症の拡大影響に伴うテレワークの定着化を背景とした顧客企業の需要の変化を注視しながら、製薬企業、情報通信関連企業、金融関連企業での業績拡大を目指す。
◎通訳事業・コンベンション事業
オンライン通訳やオンライン会議運営支援などデジタルを活用したサービス提供を中心に引き続きコロナ禍で落ち込んだ収益力の回復に取り組み、外部環境の変化に対応した事業戦略を推進する。
4.第五次中期経営計画の概要・進捗
2023年3月期から2025年3月期までの3ヵ年における第五次中期経営計画の概要及び進捗は以下のとおり。
(1)基本方針
経営ビジョン「すべての企業を世界につなぐ 言葉のコンシェルジュ」は継続し、基本方針・重点施策の遂行により、顧客ニーズの多様化・高度化に対応した高付加価値企業となることを目指す。
【基本方針】
ビジネス環境の変化やデジタル化の進展に対応しつつ、業界・ドキュメント別に最適化された言語資産の活用モデルを確立し、対象市場でのプレゼンスを高め、持続的な成長を実現する。
(2)重点施策
3つの重点施策を推進する。
①ドキュメント集約メカニズムの構築
*ドキュメント軸による新たな専門特化領域の育成
翻訳対象となるドキュメントを同社に集約することでコーパスや用語集といった言語資産の活用の幅を広げ、顧客の翻訳環境の改善を推進する。
ドキュメントを集約するため、これまで業界や技術分野に着目して専門特化してきたサービスを、顧客企業内で発生するドキュメント種類まで細分化し、ニーズや用途にあわせて最適化し、新たな専門特化領域を育成する。
例えば、同社の得意とする領域の一つである医薬分野においては、基礎研究・非臨床試験・臨床試験・製造販売承認申請・製造販売後調査と、各ステージで発生するあらゆる資料に対応し、資料間の相互の関連性に配慮した品質管理を行うことで医薬品開発資料の集約化を図る。
*顧客体験価値向上・案件集約の仕組みづくり
翻訳に関するソリューションに加え、原稿の作成や翻訳文を使用した多言語AIナレーションの作成など、翻訳の前後の工程を幅広く支援する。
顧客接点の拡大と利便性の高いサービスの提供で顧客ニーズに幅広く対応できる体制を整備し、顧客との関係を強化する。
②ドキュメント別言語資産活用モデルの確立
*ドキュメント別モデル作成による MT(機械翻訳)精度の向上
第四次中期経営計画期間では英語を中心に分野特化型機械翻訳の作成に注力してきたが、今後は機械翻訳の適用範囲を多言語に拡大するとともに、ドキュメント別・顧客別・プロジェクト別の機械翻訳モデル作成にも取り組み、さらなる機械翻訳の精度向上を目指す。
「製薬カスタムモデル」の進捗
同社では2019年より臨床試験関連文書に特化した製薬業界向けAI翻訳「製薬カスタムモデル」の共同開発を進めてきた。
精度の高い機械翻訳を利用したい製薬企業を対象に共同開発への参加を募り、参加企業がコーパスを持ち寄ることで、精度向上を図る同モデルは、導入後の新業務スキームにより、翻訳品質の安定、コスト削減、納期短縮を実現しており、2022年9月末の導入企業数は前年同期の14社から22社に拡大している。
顧客が上記メリットを享受すると同時に同社にも自動的にコーパスが蓄積していき、「WIN-WIN」の関係となるのが同モデルの特長。AI翻訳では対応が難しい案件を同社の人手翻訳サービスで補完することで翻訳案件が同社に集約する仕組みを構築し、顧客内シェアの拡大を図っている。今後は同モデルに続く、新たな文書特化型機械翻訳モデルの作成に取り組み、言語資産の活用を推し進めていく。
*プロセス改善による生産効率の向上
翻訳作業のデジタル化が加速する中、環境変化に合わせて、翻訳作業のみならず発注プロセス、ツール処理、校正作業など、制作工程全般の改善を図り、さらなる生産効率の向上を図る。
③働き方改革や事業変革を支える経営基盤の整備
*働き方改革などのニューノーマルに対応した労働・職場環境の実現
働き方改革など環境変化に対応した労働および職場環境の実現を目指す。
特に女性従業員の比率が高いため、女性が働きやすい環境づくりは重要な課題であると認識している。
*IT 人材・技術への積極的な投資と事業変革を支える経営基盤の整備
事業活動へのIT 技術の活用を推進すべく、デジタル人材の確保や IT 技術への投資を積極的に行い、事業変革を支える経営基盤の強化を図る。
(3)業績目標
重点施策の遂行によって、さらなる成長と収益性向上を追求し、コロナ禍前の水準超えを目指す。
5.今後の注目点
コロナ禍に苦しんできた同社だが、ようやく明るさが増してきたようだ。
主力の翻訳事業が堅調なことに加え、赤字が続いてきた通訳事業も第2四半期(7‐9月)には黒字に転換した。通期業績予想を上方修正し、今下期の売上高・営業利益はほぼコロナ禍前の水準に回復する見込みである。
もとより下期ウェイトの高い同社だが、第3四半期、第4四半期にどれだけ売上・利益を積み上げていくのか注目していきたい。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎組織形態、取締役の構成
組織形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役 | 6名、うち社外3名 |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2022年6月29日
<基本的な考え方>
当社および子会社ではコーポレートガバナンスの重要性を踏まえ、「コンプライアンス重視」を基本的な経営方針のひとつとして位置付けております。コンプライアンス体制を整備・確立するために、グループ企業行動規範を定め、コンプライアンス担当役員を長とした委員会を組織しております。これにより、社内のリスク管理体制の整備に努めるとともに、翻訳業界のリーディング・カンパニーに求められる社会的責任を果たしていきたいと考えております。
当社では、取締役会が経営方針等の最重要事項に関する意思決定機関および監督機関としての機能を担い、3名の社外取締役で構成される監査等委員会が経営の透明性の向上および監視機関としての機能を担っております。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
2021年6月改訂後のコードに基づき記載しております。
【補充原則3-1③】(サスティナビリティについての取組み)
当社は、中長期的な企業価値向上に向け、サスティナビリティに関する取組みや人的資本・知的財産への投資等は非常に重要であると認識しております。当社では、現在、サスティナビリティに関する取組みや人的資本や知的財産への投資等について開示できる状況にはありませんが、今後もこれらについて積極的に取り組むとともに、情報の開示に努めてまいります。
【補充原則4-2②】(サスティナビリティを巡る取組みについての基本的な方針の策定)
当社は、中長期的な企業価値向上に向け、サスティナビリティに関する取組みや人的資本・知的財産への投資等は非常に重要であると認識しております。当社では、現在、サスティナビリティに関する基本方針を策定しておりませんが、今後もこれらについて積極的に取り組むとともに、取締役会は経営資源の配分や戦略の実行に関しても実効的な監督を行うよう努めてまいります。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則1-4】(政策保有株式)
当社は、現時点では、政策保有株式として上場株式を保有しておりません。
【補充原則2-4①】(中核人材の登用等における多様性の確保)
当社は、誠実な企業活動を通じて様々な社会のニーズに対応してこそ企業価値の向上が実現されると考えております。昨今の不連続な社会状況下においては、これまで以上に迅速かつ柔軟な判断が求められるものであるところ、当社は、従来の固定観念に縛られない多様な価値観を有する人材による意見交換を通じてこそ、果断な意思決定が可能であり、ひいては企業価値の向上に資すると考えています。
当社では、これら価値観の多様性確保に向け、従来から、中途採用を中心に性別や国籍に捉われない採用活動を積極的に行うとともに、働きやすい職場環境の整備や、これからの当社の担い手となる管理職層の育成に努めています。
当社では、女性従業員の採用を従来から多く行っており、2022年3月31日現在、全従業員のうち女性の占める割合は約70%となっております。取締役における女性の登用はございませんが、幹部層・管理職層における比率は約40%を占めており、今後も積極的に登用していきます。また、中途採用者の採用活動も活発に行っており、2022年3月31日現在、当社管理職ポストにおける中途採用者の割合は90%を超えていることから、引き続き中途採用者および新卒者の管理職の登用を行っていきます。
なお、外国人の管理職採用につきましては、外国人の応募数が日本人と比して極めて少なく予測困難であることから、目標が設定できておりません。
当社では、従業員の技能向上を図る観点から、外部講師を招聘したキャリアアップ研修、マネジメント研修など教育体制の充実を図るとともに、多様な従業員にとって働きやすい職場を目指すべく、在宅勤務制度やフレックスタイム制を活用し、ワークライフバランスの充実に向けた働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組んでおります。
【原則5-1】(株主との建設的な対話に関する方針)
当社では、経営企画室をIR担当部門とし、取締役管理統括がIR活動に関連する部署を統括し、日常的な部署間の連携を図っています。IR担当部門は社内関係部門と連携して、必要な情報を収集し、株主・投資家との対話の充実を図っております。
IR担当部門は、株主・投資家からの問い合わせ窓口として電話取材や面談依頼を積極的に受け付けるとともに、決算説明会、個人投資家向け説明会、投資家との面談等を定期的に実施し、対話の充実に努めております。なお、決算説明会及び個人投資家向け説明会では、代表取締役社長が直接説明を行っております。対話により把握した株主・投資家の意見等は、適宜、取締役に報告し、今後の経営に活かすように努めております。
また、対話に際してのインサイダー情報の管理に関する方策として、決算発表前は株主・投資家との対話を控える「沈黙期間」を設定しております。また面談の際は、インサイダー情報に言及しないよう、情報管理に留意しております。
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