ブリッジレポート
(3189) 株式会社ANAP

スタンダード

ブリッジレポート:(3189)ANAP 2022年8月期決算

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家髙 利康 社長

株式会社ANAP(3189)

 

企業情報

市場

東証スタンダード市場

業種

小売業(商業)

代表取締役社長

家髙 利康

所在地

東京都港区南青山4-20-19

決算月

8月末日

HP

https://www.anap.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

353円

4,974,800株

1,756百万円

-149.0%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

-

4.5円

78.4倍

21.58円

16.4倍

*株価は11/2終値。各数値は22年8月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年8月(実)

6,261

88

91

62

14.39

6.00

2020年8月(実)

5,659

-329

-284

-371

-85.47

3.00

2021年8月(実)

5,078

-644

-633

-791

-175.57

0.00

2022年8月(実)

5,059

-424

-447

-525

-114.74

0.00

2023年8月(予)

5,600

44

31

20

4.50

0.00

*予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

株式会社ANAPの2022年8月期決算概要、今後の取り組み等をお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年8月期決算概要
3.2023年8月期業績予想
4.Re-Born-Plan(事業再生計画)プロジェクト
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 2022年8月期の売上高は前期比0.4%減の50億59百万円。主力の店舗販売事業は新規出店や来店客数の回復などから増収となるも、もう一方の主力であるインターネット販売事業では、競合の増加とファッション・アパレル需要の変容などが影響し減収。営業利益は4億24百万円の損失で前期よりも約2億円改善。役員報酬の削減、希望退職制度の実施、業務委託契約の見直し、物流倉庫の一部返還、本社・店舗の賃料見直し等、前期から継続して行ってきた収益体質への転換に向けた費用削減の取組みにより販管費が同8.7%減少した。当期純利益は5億25百万円の損失(前期は7億91百万円の損失)。前期計上した特別損失に計上した事業構造改善費用85百万円がなくなった一方、当期は投資有価証券評価損53百万円を計上した。

     

  • 2023年8月期の売上高は前期比10.7%増の56億円、営業利益は44百万円と、4期ぶりの黒字転換の予想。コロナ禍の後遺症を払拭し、withコロナ、afterコロナ時代の会社のあるべき姿への改革を帰結させるため、まずは利益が確保できる体質を作るための施策を重点的に推進する。コスト削減施策の継続に加え、各種財務施策を実施することで経営面の安定化を図る。事業面においては、Re-Born-Plan(事業再生計画)プロジェクトに基づく事業の抜本的改革に着手する。計画初年度となる2023年8月期は、商品・ブランドを見直し、収益力のある事業構造への改革に取り組み、キャッシュフロー最大化を可能とする経営・事業基盤の強化に注力する。トップラインの成長を創るための施策も積極的に推進する。

     

  • 3期連続で損失を計上した同社は、Re-Born-Plan(事業再生計画)プロジェクトを推進し、事業の抜本的改革を推進する。インターネット販売事業の再構築に向けライブコマース事業を行う合弁会社を設立したほか、店舗に関しては前期を上回る新規出店に加え、改装を実施する。中長期の視点でメタバース関連事業の強化を図る。

     

  • 資本性劣後ローン3億円を調達したが、債務超過の懸念を払拭するためには本格的な資本増強が必要と考え、また事業再生にも注力するため、2022年10月、2件の資本業務提携を締結した。資本増強は2件で合計約7億円。使途内訳は、「メタバース関連事業 1億円」「商品戦略強化 2億円」「店舗関連 1.5億円」「運転資金 2.5億円」としている。

     

  • 下方修正後の予想も下回る引き続厳しい決算ではあったが、損失幅は縮小した。今期は小幅ながら黒字転換の予想であり、コロナ禍のリスク依然残るものの、計画通りの回復が達成できるのか注目したい。2件のアライアンスの進捗、成果にも期待したい。

     

     

1.会社概要

10代~20代の若年層女性を主要顧客層とし、「ANAP」ブランドを中心としたカジュアルファッションを提供。常にお客様目線を大切にし、おしゃれを楽しみたい女性のニーズに応えるため、欲しいものが手頃な価格でいつでも手に入る、ファッションを「オンタイム」で楽しめる「現在(いま)」を提案することを企業理念として掲げている。「ブランド認知度の高さ」、「オンラインショッピングサイトの販売力」も大きな強み。「SS(春夏)ブランドからの脱却」、「フルシーズン型ブランドへの進化」を目指している。
また子会社 株式会社ANAPラボのAI技術を用いた事業にも取り組んでいる。

 

【1-1 沿革】

1992年、中島 篤三氏が「株式会社エイ・エヌアートプランニング」を設立し、小売業をベースとしたマーケット・イン型企業として店舗を展開。個性的でリーズナブルな普段使いの衣料品を展開する「ANAP」は、ファッションに敏感な10代~20代の女性から高い支持を得る。
一方、当初より同社専務取締役であった現代表取締役社長の家髙 利康氏が運営する「株式会社ヤタカ・インコーポレーテッド」は、製造・卸によるプロダクト・アウト型企業として自社ブランドを展開していたが、フランチャイズとして「ANAP」ブランドの販売にも参画し、フランチャイズ11店舗を出店。両社は緊密な協力関係を構築していった。
両氏ともにファッション業界を取り巻く時代の変化を感じる中、お互いの強みを融合させることにより強力なシナジー効果を追求することができ、それが今まで以上に顧客目線を重視した経営に繋がると判断し、2006年8月、両社は合併。翌2007年、社名を現在の「株式会社ANAP」に変更した。

 

「ANAP」をメインブランドとしながら、コンセプトの異なる多種多彩なサブブランドを展開して、幅広い顧客ニーズをとらえると共に、原宿、渋谷など首都圏を起点としつつ、イオンモールなど大型ショッピングモールへの出店も進めて全国へ店舗を展開。
2002年1月には独自の自社ブランド販売サイト「ANAPオンラインショップ」を開設するなど、業界の中でもインターネット販売にいち早く着手し、2013年9月には、(株)スタートトゥデイ(現㈱ZOZO)(東証1部、3092)が運営するアパレル専門ネット通販「ZOZOTOWN」への出店も開始。2013年11月、東京証券取引所JASDAQ市場に上場した。2017年9月には子会社(株)ATLAB(現(株)ANAPラボ)を設立し、AIの利用を中核としたEC総合コンサルティング事業を開始したほか、アパレル事業の厳しい事業環境を踏まえ、ビジネスモデルの変革にも取り組んでいる。
2022年4月、市場再編に伴い東証スタンダード市場に移行した。

 

【1-2 企業理念など】

「仕事は楽しく」「現場主義」を基本理念に掲げ、ファッションが大好きな社員が、商品を着こなし、自分たちの思いのままのファッションを表現できる、また、風通しのよい環境を作りながら、顧客にも「楽しいショッピング」をしてもらえるSHOP作りを事業の基本としている。

 

【1-3 市場環境】

国内人口減少、少子化等の背景とする市場の縮小、原材料や物流費の高騰等を背景とする生産コストの上昇、生産過多による過剰在庫の問題が起きるなど、構造不況の兆候が見られる。
店舗販売においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴うインバウンド需要の減少、外出自粛による店舗来客数の減少、衣料品需要の低下、時短営業等の要請などの影響が出ている。ネット販売においても、新規参入による競争激化や閉鎖的な生活環境を強いられたことよるファッション・アパレル需要の変容など、厳しい経営環境が続いている。

 

【1-4 事業内容】

メインブランド「ANAP」を中心に、リーズナブルにおしゃれを楽しみたいという、多様なニーズをとらえるため、幅広い年齢層から支持されている全国ブランド、定番もの、流行もの、個性的アイテムまでコンセプトの異なるサブブランドを数多く展開している。豊富なアイテム数とリーズナブルな価格設定が特長となっている。
近年は新しい年齢層のANAP KIDSやANAP GiRLに注力しながら、小物類についてもブランドとして扱っている。2021年8月末現在、ANAPを始めとした9の主要ブランドを展開。これを店舗、インターネット、卸売の3形態で販売している。
セグメントは、「インターネット販売事業」「店舗販売事業」「卸売販売事業」「ライセンス事業」「メタバース関連事業」「その他」の6つ。
子会社株式会社ANAPラボでは、AI技術の利用を中核としたEC総合コンサルティング事業、再生医療ビジネス、メタバース関連事業も手掛けている。

 

(1)インターネット販売事業
「2022年8月期 売上高 1,945百万円(売上構成比 38.5%)、セグメント損失 140百万円」
業界に先駆けて2002年1月より「ANAPオンラインショップ」としてANAPブランドのショッピングサイトの運営を開始した。
常時豊富な自社商品を品揃えしつつ、ANAPカラーを全面に押し出したPOPなデザインのサイトで、ターゲットとする年代層向けに、ファッション雑誌を見ているかのような感覚や、ウィンドウショッピングを楽しんでいるかのような感覚になれることを意識して、掲載商品をコーディネートし、顧客が自ら着用した姿をイメージしやすくするといったサイト作りに力を入れている。

 

 

 

 

(同社提供)

 

同サイトはシステムに詳しい家髙社長自らが深く関わり自社開発したシステムによって構築されたサイトである点が大きな特徴となっている。
受注管理、売上管理、在庫管理、購入分析などを自社で一元的に管理している他、自社開発であるため、新たな機能の追加や従来機能の改善が容易であるというメリットがある。例えば、オンラインショップ担当スタッフが発案した顧客に楽しんでもらうためのアイディアや、顧客からのリクエスト等を即座にサイト上に反映して表現することができる。同社の商品戦略を機動的に実現する重要な仕組みとなっている。

 

同サイトにアクセスしてみると、例えば、「期間限定の均一セール」、「会員限定の送料無料キャンペーン」といったイベントが行われていることが分かるが、その内容は随時、極論すればアクセスの度に異なっており、その動的コンテンツのためにユーザーにとって魅力的なWebsiteとなっている。
こうした仕組みも自社開発したシステムによる自動プログラミングで実行されているため、極めて効率的にキャンペーンを展開することが出来るようになっている。
また、消費者のユーザビリティーを常に考慮し、使用デバイスとしてもPC、携帯を経ていち早くスマートフォン、タブレットへの対応も進めてきた。スマートフォンではデータ量の大きい画像への対応が必須だが、クラウドの利用などでこの課題をクリアしている。

 

さらに自社サイトのみでなく様々なサイトに多くのアイテムを出品する必要があるとの考えから、 (株)ZOZOが運営するアパレル専門ネット通販「ZOZOTOWN」、ネット通販大手「Amazon」、クルーズ株式会社が運営するファストファッションサイト「SHOPLIST.com by CROOZ」など他社サイトでの商品販売にも力を入れている。
また長年にわたり蓄積してきた豊富なデータを活かし、AI(人工知能)を利用した革新的なウェブサイトの開発・運営による更なる事業成長を目指している。

 

(2)店舗販売事業
「2022年8月期 売上高 2,950百万円(売上構成比 58.3%)、セグメント損失 55百万円」

 

「ANAP」とそのサブブランド等からなるANAPブランドの主要な販売チャネルとして原宿等に位置する路面の旗艦店舗、各地のファッションビルおよび郊外に位置する大型ショッピングモールへの出店など、全国に39店舗を展開している(2022年8月末現在)。
「顧客にANAPブランドの魅力を実感してもらうためのチャネル」「市場動向、流行、顧客ニーズを掴むためのアンテナ」「インターネット販売への導線」としての重要性から、条件を精査した上で新規出店を進めている。

 

 

 

「ANAP ファボーレ富山店」

 

「ANAP ゆめタウン久留米店」

 

「ANAP アウトレットパーク木更津店」

(同社提供)

 

(3)卸売販売事業
「2022年8月期 売上高 100百万円(売上構成比 2.0%)、セグメント損失 22百万円」

 

全国のセレクトショップ向けに卸売販売を行っている。「ANAP」の各ブランドは他社バイヤーに対しセレクト商品を納品し、「AULI」のブランドについては展示会受注によって商品を納品している。

 

(4)ライセンス事業
「2022年8月期 売上高 36百万円(売上構成比 0.7%)、セグメント利益 32百万円

 

他社へのライセンス提供に伴いロイヤリティ収入を受領している。

 

(5)メタバース関連事業
「2022年8月期 売上高 12百万円(売上構成比 0.2%)、セグメント利益 11百万円

 

2022年8月期から事業を開始。メタバースに関する知見を他社に展開するコンサルティング業務を中心に収益化を進めている。

 

2.2022年8月期決算概要

(1)連結業績概要

 

21/8期

構成比

22/8期

構成比

前期比

期初予想

修正予想

売上高

5,078

100.0%

5,059

100.0%

-0.4%

6,428

5,700

売上総利益

2,836

55.9%

2,754

54.4%

-2.9%

-

-

販管費

3,480

68.5%

3,179

62.8%

-8.7%

-

-

営業利益

-644

-

-424

-

-

137

-144

経常利益

-633

-

-447

-

-

142

-146

当期純利益

-791

-

-525

-

-

126

-195

*単位:百万円。修正予想は2022年4月公表。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
費用項目の▲は費用の増加を示す。

 

減収、損失計上
売上高は前期比0.4%減の50億59百万円。主力の店舗販売事業は新規出店や来店客数の回復などから増収となるも、もう一方の主力であるインターネット販売事業では、競合の増加とファッション・アパレル需要の変容などが影響し減収。
営業利益は4億24百万円の損失で前期よりも約2億円改善。役員報酬の削減、希望退職制度の実施、業務委託契約の見直し、物流倉庫の一部返還、本社・店舗の賃料見直し等、前期から継続して行ってきた収益体質への転換に向けた費用削減の取組みにより販管費が同8.7%減少した。
当期純利益は5億25百万円の損失(前期は7億91百万円の損失)。前期計上した特別損失に計上した事業構造改善費用85百万円がなくなった一方、当期は投資有価証券評価損53百万円を計上した。

 


 

 

(2)セグメント別動向

 

21/8期

構成比

22/8期

構成比

対前期比

売上高

 

 

 

 

 

 インターネット販売事業

2,535

49.9%

1,945

38.5%

-23.2%

 店舗販売事業

2,396

47.2%

2,950

58.3%

+23.1%

 卸売販売事業

116

2.3%

100

2.0%

-13.8%

 ライセンス事業

29

0.6%

36

0.7%

+24.3%

 メタバース関連事業

-

0.0%

12

0.2%

-

 その他

0

0.0%

13

0.3%

+1,301.2%

合計

5,078

100.0%

5,059

100.0%

-0.4%

営業利益

 

 

 

 

 

 インターネット販売事業

-203

-

-140

-

-

 店舗販売事業

-168

-

-55

-

-

 卸売販売事業

-11

-

-22

-

-

 ライセンス事業

21

71.8%

32

87.9%

+52.2%

 メタバース関連事業

-

-

11

89.4%

-

 その他

-19

-

7

57.3%

-

 調整額

-263

-

-256

-

-

合計

-644

-

-424

-

-

*単位:百万円。営業利益の構成比は売上高営業利益率。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

◎インターネット販売事業
減収、損失幅は改善。
ファッションECサイトのサービス競争激化の影響もあり売上高が減少。そのような状況を打開するために、ECサイトのリニューアルによる顧客利便性の改善、著名なインフルエンサーを起用したライブコマースに注力している。
ライブコマースによる販売手法が集客のための広告効果も上げるなど、事業としての収益性を高める取り組みとして確かな効果を確認している。

 

◎店舗販売事業
増収、損失幅は改善。
出店3店舗、退店1店舗で期末の店舗数は39店舗。前期から出店による増収効果及び、まん延防止等重点措置解除により増収。

 

◎卸売販売事業
減収、損失幅は拡大。
既存の取引先に対する販売が減少した。

 

◎ライセンス事業
増収増益。
新規のライセンシーにおけるロイヤリティ収入が増加した。

 

◎メタバース関連事業
当期から事業を開始。同社が獲得した同事業に関する知見を他社に展開するコンサルティング業務を中心に収益化を進めている。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

21年8月末

22年8月末

増減

 

21年8月末

22年8月末

増減

流動資産

1,557

1,810

+252

流動負債

1,547

1,878

+331

 現預金

666

919

+253

 仕入債務

160

91

-69

 売上債権

221

212

-9

 短期借入金

1,050

1,591

+541

 たな卸資産

610

611

+0

固定負債

295

587

+292

固定資産

858

758

-99

負債合計

1,842

2,466

+623

 有形固定資産

325

286

-39

純資産

573

103

-469

 無形固定資産

45

54

+8

 利益剰余金

-372

-894

-522

 投資その他の資産

487

418

-68

負債純資産合計

2,416

2,569

+153

資産合計

2,416

2,569

+153

自己資本比率

23.7%

3.9%

-19.8%

*単位:百万円。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

 

現預金の増加などで資産合計は前期末比1億53百万円増加。短期借入金の増加等で負債合計は同6億23百万円増加。
利益剰余金のマイナスが拡大し、純資産は同5億22百万円減少。
この結果、自己資本比率は前期末より19.8%低下し3.9%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

21/8期

22/8期

増減

営業CF

-397

-580

-183

投資CF

-230

-43

+186

フリーCF

-627

-623

+3

財務CF

435

876

+441

現金同等物残高

666

919

+253

*単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

営業CFのマイナス幅は拡大。
短期借入金の増加により、財務CFのプラス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。

 

(5)トピックス

◎継続企業の前提に関する重要事象
同社は2020年8月期以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、また2022年8月期においては国際情勢の悪化に伴う経済の不安定化等により、3期連続で、営業損失・経常損失・当期純損失、営業活動によるキャッシュフローのマイナスを計上することとなった。
この状況において、同社は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象であるとの認識の下、早期是正に向け、以下の施策を実施する予定である。

 

*資金繰りについて
2022年8月末に株式会社商工組合中央金庫から3億円の資本性劣後ローンによる資金調達が実現し、期末時点で9億19百万円の現預金残高を確保した。加えて、取引銀行7行と当座貸越契約を締結し、未実行残高に十分な余裕がある状態であり、資金繰りには支障はないと考えている。

 

*自己資本の脆弱性について
期末の純資産残高が1億3百万円となり、今後の業績いかんによっては債務超過となる可能性もある中、早期の改善が急務と認識している。新たなファイナンスを含めた資本増強策(後述)を公表しており、本施策の実現により当面資本の問題はないと考えている。

 

*売上高減少や収益力の低下について
前期から取り組んできた費用削減の取組みを継続するとともに、「Re-Born-Plan」(事業再生計画)プロジェクトの速やかな実行、およびメタバース等の新規事業の収益化により、持続可能な事業への転換を図る。

 

以上により、同社では2022年8月期末における継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断している。

 

 

3.2023年8月期業績予想

(1)業績概要

 

22/8期

23/8期(予)

増減

売上高

5,059

5,600

+540

営業利益

-424

44

+468

経常利益

-447

31

+478

当期純利益

-525

20

+545

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

増収、黒字転換
売上高は前期比10.7%増の56億円、営業利益は44百万円と、4期ぶりの黒字転換の予想。
コロナ禍の後遺症を払拭し、withコロナ、afterコロナ時代の会社のあるべき姿への改革を帰結させるため、まずは利益が確保できる体質を作るための施策を重点的に推進する。
コスト削減施策の継続に加え、各種財務施策を実施することで経営面の安定化を図る。
事業面においては、Re-Born-Plan(事業再生計画)プロジェクトに基づく事業の抜本的改革に着手する。
計画初年度となる2023年8月期は、商品・ブランドを見直し、収益力のある事業構造への改革に取り組み、キャッシュフロー最大化を可能とする経営・事業基盤の強化に注力する。トップラインの成長を創るための施策も積極的に推進する。

 

4.Re-Born-Plan(事業再生計画)プロジェクト

3期連続で損失を計上した同社は、Re-Born-Plan(事業再生計画)プロジェクトを推進し、事業の抜本的改革を推進する。

 

(1)インターネット販売事業の再構築:ライブコマース事業を行う合弁会社を設立

2022年4月、株式会社東京通信及び東京通信の子会社である株式会社ティファレトとの間で締結していた合弁会社の設立に向けた基本合意書に基づき、アパレル商品を中心に取り扱うライブコマース事業を行う合弁会社「株式会社ピーカン」を設立した。

 

(合弁会社設立の背景)
カジュアルファッション業界はかねてより、国内人口減、少子化等を背景とした市場の縮小、原材料や物流費高騰等を背景とする生産コストの上昇、生産過多による過剰在庫の問題が起きるなど構造不況の兆候があった。その状況の中で2020年初頭より新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、外出自粛による来訪客数の減少、ファッション衣料品需要の低下、店舗においては休業や時短営業を余儀なくされる状況が継続し、非常に厳しい経営環境が継続している。
同社においても多大な影響を受け、店舗の来客数が落ち込む中、高いEC比率で下支えをしてきたが、足元ではファッションECの業界においても、参入企業が増加し競争が激化しており、苦戦が続いている。

 

そうした中、コロナ禍の打開策として同社はライブコマースでの販売に力を入れてきた。
ライブコマースの特徴としては、顧客との双方向のコミュニケーションが可能となり、特徴やストーリー性のある商品が販売しやすいという点があり、また購買者はスマホからの利用が圧倒的に多いため若年層が多く、同社事業との親和性は非常に高く、今後ライブ配信のノウハウを備えたアパレルスタッフの価値は高まると考えている。
同社はこれまでも、外部の著名なインフルエンサーも駆使しながら、ライブの集客力、販売力を向上させ、同時に同社のライブ配信スタッフの育成を強化、エンゲージメントの確保をはかってきた。

 

ライブコマースの市場規模は中国では15兆円超と言われ、日本でも近年、急速に広がりをみせているが、まだ軌道にのっていないのが現状であるが、ライブコマースの事業化に向けて、インフルエンサーとの強力なリレーションシップやマーケティングノウハウをもつ東京通信及びティファレトと兼ねてより議論を続けてきた。
その中で、東京通信グループのノウハウとANAPのアパレル業界でのサプライヤーとしての知見やECシステム構築ノウハウとを組み合わせることで、相互にシナジー効果を発揮することが可能になると判断し、合弁会社株式会社ピーカン(資本金20百万円。出資比率はティファレト70%、ANAP30%)を設立した。

 

(取り組み・事業展開)
ライバーとユーザーをサービスで「繋げる」という要素と、アパレル商品の購入体験をよりリアルに近い形でライブを通して「体験する」という2つの要素を実現していくための各種施策を推進する。

 

*ANAPの役割
・ピーカンで行うライブコマース事業のシステム開発及び保守
・ピーカンで行うライブコマース事業で取り扱う商品の提供及びサプライヤーの開拓

 

*ティファレトの役割
・ピーカンの財務・経理その他管理機能に係る業務
・ピーカンで行うライブコマース事業の営業活動及びプロモーション活動支援

 

2022年9月にライブコマースサービス「PCAN Live」正式版をリリースし、同日初回配信を行った。
雑誌モデルで話題の大人気モデル『AN』が出演し、ANAPが今回の配信に合わせて用意した『AN』のコーディネート商品を数量限定で販売した。
SDGsの観点から、国内で新規供給される1.4 万トンに及ぶ衣類が新品の状態で事業所側により廃棄されている社会問題に着目した点も関心を高め、会社側としては大きな手ごたえを感じることができたとのことだ。

 

(2)店舗販売事業

2022年8月期は新たに3店舗を出店した。
イメージ色を「黒」に一新した店舗デザインは好評で、新店舗はいずれも好調に推移している。
今期も新規出店5店舗に加え、4-5店舗の改装を行う計画だ。

 

(3)メタバース関連事業

2021年12月にメタバース領域において、自社のファッションアイテムなどを仮想空間で利用可能な形にデジタル変換し、企業の参入を支援するメタバースファッションプラットフォーム「APPARELED Meta connect by ANAP=アパレリッド・メタ・コネクタ by ANAP」の提供を今後開始することを公表し、2022年8月期に新たにメタバース関連事業を立ち上げた。
「APPARELED Meta connect」 は、企業が保有する洋服や小物などファッションアイテムの採寸データとアイテム画像素材を、本プラットフォームに入力することで、メタバース空間に適したファッション素材に変換することができる。さまざまな仮想空間で利用可能となり、企業のメタバース事業参入を支援するプラットフォームサービスである。
プラットフォーム開発および企業への導入サポートは、100%子会社で、ファッション業界に特化したAIやVR/AR技術サービスを提供する株式会社 ANAP ラボが担当する。

 

このほか、「メタバース空間でのショップ展開(実販売に誘導)」「アバター向けのファッショアイテムの開発・販売」「NFTアート関連イベント開催(アーティストの囲い込み)」「他社向けのメタバース店舗展開のコンサル、開発・保守」などを展開していく。

 

2022年7月には、企業向けプライベートメタバース空間構築サービスにおいて、AI× BIG DATA による不動産イノベーション事業を展開する、GATES 株式会社から、プライベートメタバース空間構築の開発および長期運営を受注した。

 

(GATES 株式会社のプライベートメタバース空間概要)
GATES 株式会社のプライベートメタバース空間は、不動産賃貸物件の取り扱い店舗を独自のメタバース空間で展開するもの。GATES 株式会社が保有する幅広い不動産物件情報と利用者をつなぐ独自のメタバース空間として、2022年11月から一般公開を行う。PC やスマホから簡単に来場でき、メタバースの技術的優位性を活かし、平面的な物件情報だけでなく、映像や音声、リアルタイムなコミュニケーションを交えた、新しい顧客接点の場を演出する。

 

(受注の背景)
不動産物件の紹介と利用者をつなぐ新しい技術的な手段として、近年注目されているメタバースに着目し、物件情報を画像だけでなく映像や音声、リアルタイムな通信でコミュニケーションできることに加え、実店舗に訪れることなくオンライン上で利用者との接点を持つことができる点などをGATES 株式会社が評価。メタバース支店の開設に至った。
不動産賃貸物件のメタバース支店という役割に加え、オンライン上で複数の人数が集まることができる特色を活かし新卒採用向けの会社説明会など各種セミナー等に利用していく。

 

(今後の見通し・展開)
GATES 株式会社とのメタバースプロジェクトをより深化させ、専用のバーチャル空間内で企業が保有する情報資産や製品・サービスのシミュレーションをすることにより、大幅な経費削減や新たな顧客需要の創出が期待できるプライベートメタバース空間実現を推進する。消費者の情報タッチポイントが複雑化する Web3 時代の到来に備え、企業のメタバース分野での成功を支援していく。

 

収益貢献は少し先にはなるものの、成長性・将来性を見込んで、積極的にリソースを投入していく考えだ。

 

(4)資本増強・事業再生

2022年8月に株式会社商工組合中央金庫から資本性劣後ローン3億円を調達したが、債務超過の懸念を払拭するためには本格的な資本増強が必要と考え、また事業再生にも注力するため、2022年10月、2件の資本業務提携を締結した。
資本増強は2件で合計約7億円。使途内訳は、「メタバース関連事業 1億円」「商品戦略強化 2億円」「店舗関連 1.5億円」「運転資金 2.5億円」としている。

 

①株式会社ピアズ(東証グロース市場、7066)との資本業務提携
(ピアズ社概要)
2002年6月設立。店舗運営コンサルティングやオンライン接客サービス、個室型オフィス事業を展開。メタバース事業にも積極的に進出する意向を標榜している。

 

(資本業務提携締結の背景)
両社による協議の中で、メタバース関連事業での事業化について、共同研究・共同開発を通じて、同事業の先駆者となれると考えること、またANAPの EC システム構築ノウハウとピアズ社のオンライン接客ノウハウを組み合わせることでインターネット販売事業の新たな可能性をも創出できると考えることから、より密な事業展開をすべく資本業務提携を締結することとした。
ピアズ社の店舗運営やオンライン接客サービスなどはANAPの主業であるカジュアル衣料の販売に際しても、非常に親和性が高い事業とも考えている。

 

この資本業務提携により、東証グロースマーケットに上場し、社会的な信用力があり、また、大きな成長が期待されている企業であるピアズ社と将来に亘って友好的な関係を得られることとなる。
同時に、ANAPにとって必要な早期の資本増強及び資金調達を図るに際し、ANAPの直近の業績が安定的とは言えない状況で引受先が限られる中、ANAPとの協業により新たな事業の創造に期待を持つピアズ社を新株式及び新株予約権の割当先に選定した。
なお、2022 年 11 月開催予定のANAP第31期定時株主総会において、ピアズ社より取締役を1名受け入れる議案を付議する予定である。

 

(資本提携の内容)
2022年10月31日、ピアズ社を割当先として、新株式50万株及び新株予約権 14,000 個(140万株)を発行した。
また、ANAPの主要株主である家髙利康氏及び中島篤三氏は、所有する当社普通株式の一部(計25万株。家髙利康氏
が所有する96.5万株のうち10万株、中島篤三氏が所有する52.1万株のうち15万株)をピアズ社に市場外の相対取引により 2022年10月19日付で譲渡した。ピアズ社が所有することになるANAP株式に対する持株比率は14.64%となり、新株予約権が全て行使された場合には持株比率は32.46%となる。

 

(業務提携の内容)
両社協議のうえ具体化していく。現時点では以下のような内容で合意している。
*メタバース領域のおける事業の共同での研究・開発
*メタバース領域における事業化の検証
*他社のメタバース空間における事業のコンサルティング事業

 

②ジェミニストラテジーグループ株式会社との資本業務提携
(ジェミニ社概要)
2005年2月設立。様々な業界の企業に対して、経営戦略・事業戦略の立案や経営支援を主業とする企業コンサルティングに特化した企業で、アパレル業界においても、多くの経営支援、再生支援の実績を有している。

 

(資本業務提携締結の背景)
ANAPはジェミニ社との間でカジュアルファッションにおける商品戦略の検証や、諸システムの改善などを共同で研究・開発することで、早期に事業の改善を図り、業績回復に繋げることを期待している。
ジェミニ社によるこれらの経営支援がより強固・明確な形となって実現されるように、今回の資本業務提携を実施することとした。
2022年10月14日付でジェミニ社の代表取締役である山田正弘氏は、ANAPの執行役員営業本部長に就任している。

 

(資本提携の内容)
ANAPは、ジェミニ社との業務提携を円滑に推進するため、2022年10月31日、ジェミニ社を割当先として新株予約権1,000個(10万株)を発行した。この新株予約権が行使された場合に、ジェミニ社が所有することになるANAP株式の持株比率は 1.51%となる。

 

(業務提携の内容)
両社協議のうえ具体化していく。現時点では以下のような内容で合意している。
*カジュアルファッションにおける商品戦略の検証
*EC、ITシステム、物流等の業務改善に関する事項
*カジュアルファッション業界におけるマーケティング等の検証

 

5.今後の注目点

下方修正後の予想も下回る引き続厳しい決算ではあったが、損失幅は縮小した。今期は小幅ながら黒字転換の予想であり、コロナ禍のリスク依然残るものの、計画通りの回復が達成できるのか注目したい。
2件のアライアンスの進捗、成果にも期待したい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最新更新日:2021年11月29日

 

1.基本的な考え方
当社は、カジュアルファッションを扱うアパレル企業として継続的な成長、企業価値の拡大、経営の安定化を実現するため、コーポレート・ガバナンス体制をより強固にすることが重要な経営責務であると認識しております。また、株主の皆様をはじめ顧客、取引先、従業員、地域社会など、すべてのステークホルダーの利益を遵守しつつ、公正で透明性の高い経営、経営監視機能の強化、経営効率の向上、法令遵守の徹底に努めております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>

 

【補充原則1-2-4 招集通知の英訳】
当社の株主構成等を勘案したうえで、議決権電子行使プラットフォームの利用及び招集通知の英訳については行っておりません。今後の株主構成等の変化や議決権行使状況等を踏まえたうえで、検討してまいります。

 

【補充原則1-2-5 議決権の行使等】
株主総会における議決権は、基準日時点において株主名簿に記載又は記録されている株主が有しているため、信託銀行等の名義で株式を保有する機関投資家等の実質株主が株主総会へ出席し、議決権の行使や質問を行うことは認めておりません。

 

【補充原則2-3-1 サステナビリティを巡る課題への対応】
当社は、気候変動などの地球環境問題への配慮や、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との校正・適正な取引、自然災害への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスク管理と同時に収益機会にもつながるものと認識し、当社の主要な事業との関連を常に考慮しながら積極的に取り組んでまいります。

 

【補充原則2-4-1 女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保】
当社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用について、明確な方針や目標は定めておりませんが、アパレル小売業界の中でもレディースカジュアルを中心とした商材を扱うことから、店舗従業員だけでなく本社従業員も女性の比率が高い特徴があります。それに伴い店舗関連、営業、マーケティング等の職種において、多くの女性従業員を管理職に登用しております。また、当社の企業ステージは成長途上にあると認識しており、既に専門的な知識・スキルを備えた人材の中途採用を積極的に実施しており、管理職への登用実績もございます。
外国人の管理職への登用はまだないものの、今後も企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、人材の多様性を意識しながら、優秀な人材の管理職への登用を継続して実施してまいります。

 

【補充原則3-1-2 英語での情報開示】
当社は、現時点における当社の海外投資家等の比率が極めて低いことから、コスト等を勘案し、英語での情報開示・提供は積極的には行っておりませんが、今後の海外投資家等の比率を考慮し検討してまいります。

 

【補充原則3-1-3 サステナビリティに関する情報開示】
当社は、持続的な成長のためにサステナビリティおよび人的資本や知的財産への投資等への取り組みについて、当社の主要な事業の成長戦略と併せて検討をしております。その内容や進捗については、適宜、当社WEBサイトや開示資料等通じて情報開示してまいります。

 

【補充原則4-1-2 中期経営計画】
当社は、当社が属するアパレル小売業界は非常に変化の激しい業界であり、現状において具体的・固定的な中期経営計画を策定することは臨機応変な意思決定の妨げとなる恐れがあり、適切ではないと考えています。事業年度毎の分析をもとに中長期的な経営方針を策定し、その内容を決算説明会で株主を含むステークホルダーに公開しており、今後も同様の施策を継続してまいります。

 

【補充原則4-1-3 最高経営責任者等の後継者の計画】
当社は、最高経営責任者等の後継者の計画について重要事項と認識しておりますが、現段階で時間と資源をかける緊急性が高くないと判断し、取締役会での策定、監督は行っていません。今後、継続的に要否も含めて検討してまいります。

 

【原則4-2 取締役会の役割・責務】
当社は、経営陣による、業務遂行上の多様な提案活動は会社の活性化・会社の持続的な成長に不可欠なものと認識し、取締役会及び取締役への提案を随時受け付けております。また、提案については、社外取締役、監査役が独立した客観的な立場でそれぞれ適切に意見を述べるなど、多面的な検討を行っております。承認した議案が実行される際には、経営幹部の迅速・果断な意思決定を支援すべく、案件によっては定例会議等にて、それぞれの立場から支援方法を検討するなど、各部門間で連携を図りながら進めております。
他方、こうした環境の拠り所となる経営陣の報酬については、現時点でインセンティブ付けを行う施策は実施しておりませんが、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させたインセンティブ付けを今後の課題として検討してまいります。

 

【補充原則4-2-1 取締役の報酬制度】
当社は、現在中長期的な業績と連動する役員報酬制度は導入しておりませんが、業績連動報酬や自社株報酬などインセンティブの仕組みについて、今後必要に応じて検討いたします。

 

【補充原則4-2-2 サステナビリティを巡る取り組みについての基本的な方針】
当社は、中長期的な企業価値の向上を見据え、また持続可能な視点から、自社のサステナビリティを巡る取り組みについて、基本的な方針の策定をすべく現在検討中です。その進捗状況に加えて、人的資本や知的財産への投資等の状況についても、取締役会で定期的にフォローしてまいります。

 

【補充原則4-3-1 経営陣幹部の選任・解任】
当社は、経営陣幹部の選任・解任について、業績等の評価を踏まえ、公正かつ透明性を確保し、適切に実行すべきと認識しておりますが、明確な基準は設けておりません。現在は、取締役会において、経営陣幹部の業務執行の内容に基づいて決定しております。

 

【補充原則4-3-2 CEOの選任手続】
当社は、取締役会において代表取締役の選定の協議をしており、選定に当たっては、当社の経営理念や経営戦略等を考慮し、必要な能力、経験、識見、人格を検討し決定しておりますが、今後の課題として、客観性・適時性・透明性ある手続を検討してまいります。

 

【補充原則4-3-3 CEOの解任手続】
当社は、代表取締役の解任に関する具体的な基準を規定しておりませんが、取締役会による客観性・適時性・透明性ある手続を通じて、解任の可否を判断してまいります。

 

【補充原則4-10-1 任意の諮問委員会】
当社は、独立社外取締役を2名選任しております。独立社外取締役が取締役会の過半数に達してはおりませんが、独立社外取締役は、取締役会において積極的に意見を述べるとともに、必要に応じて助言が行われ、経営陣幹部・取締役の指名・報酬等を取締役会において決定しております。そのため、独立した指名委員会・報酬委員会を設置しておりませんが、ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含め、適切な意思決定が行われていると判断しております。

 

【補充原則4-11-1 取締役の選任に関する方針・手続き及びスキル・マトリックス】
取締役会の構成については、性別や国籍にとらわれることなく、全体として多様な専門性と知見を有したバランスのとれた構成とすることとし、また社外取締役は、経営陣から著しいコントロールを受ける又は経営陣に対して著しいコントロールを及ぼす懸念のない方で、取締役の業務執行を監督できる会社経営経験の豊富な見識がある方、又は専門分野を持ち当社の経営管理に貢献いただける方とすることとしております。当社の業容等から判断し、現在の取締役会の人員規模や構成が適正と考えておりますが、今後も、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の観点から、取締役会全体としての知識・経験・能力のバランスや多様性および規模が最適となるよう努めてまいります。スキル・マトリックスをはじめとした取締役の有するスキル等の組み合わせの開示については、今後検討してまいります。

 

【原則5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表】
当社は社内規定で定められた手順に従い経営戦略・経営計画を策定すると共に、適切な情報開示に努めております。今後は、株主・投資家が期待する資本コストを当社に相応しい推計方法により的確に把握した上で、経営戦略・経営計画の策定を行ってまいります。

 

【補充原則5-2-1 事業ポートフォリオの見直しの状況の開示】
当社は、現在経営戦略や経営計画の公表は行っておりませんが、公表する場合には、取締役会において決定された事業ポートフォリオに関する基本的な方針や事業ポートフォリオの見直しの状況について分かりやすく示すように努めます。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づくおもな開示>

 

【原則1-4 政策保有株式】
<株式の政策保有に関する方針>
政策保有株式は、対象先との長期的・安定的な関係の維持・強化、事業戦略上のメリットの享受などがはかられ、対象先および当社グループの企業価値の向上に資すると判断される場合に取得・保有します。また、当該株式の保有が適切でないと判断した場合には縮減する方向で検討いたします。

 

<検証の内容>
政策保有株式は、個別銘柄毎に、中長期的な経済合理性や将来の見通しを踏まえ、保有に伴うリスク・リターン、営業上の取引関係や業務提携等の事業戦略における保有意義等についての総合的な検証を担当部署が定期的に実施し、必要に応じ取締役会に諮ったうえで保有の可否を判断します。

 

<政策保有株式の議決権行使に関する方針>
議決権については、当該対象先の方針・戦略を勘案のうえ議案ごとに以下の点を確認、総合的に判断し適切に行使します。
①当該対象先の中長期的な企業価値を高め、持続的成長に資するか。
②当社グループの中長期的な経済的利益の増大に資するか。

 

【原則1-7 関連当事者間の取引】
当社は、取締役の競業取引及び利益相反取引について、取締役会での審議・決議・報告を要することとしております。また、「関連当事者の開示に関する会計基準」及び「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」に基づき、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性のある関連当事者に対して、年1回調査・特定し、当該関連当事者との取引の有無や当該取引の重要性を確認し、開示対象となる取引がある場合は開示を行っております。

 

【原則2-6 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮】
当社は、企業年金制度を採用していないため、企業年金のアセットオーナーとしての機能を発揮する局面はございません。

 

【原則3-1 情報開示の充実】
(1)経営理念や経営戦略、経営計画
当社は、経営理念や経営の基本方針、経営戦略及び経営計画等をコーポレートサイト及び有価証券報告書「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」等において開示しております。
コーポレートサイト:
https://www.anap.co.jp/ir/management/
有価証券報告書:
https://www.anap.co.jp/ir/library/securities/
決算説明会資料:
https://www.anap.co.jp/ir/library/presentation/
(2)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
当社は、コーポレート・ガバナンスに関する基本方針等を本報告書「1.基本的な考え方」にて開示しております。
(3)取締役等の報酬を決定するにあたっての方針と手続き
当社は、取締役の報酬等の決定に関する方針について、本報告書「報酬の額又はその算定方法の決定方針の開示内容」及び有価証券報告書「役員の報酬等」において開示しております。
(4)取締役等の選解任に関する方針と手続き
当社は、経営陣幹部の選任に当たって、役割に応じた必要な能力、経験、識見、人格を検討し、取締役会決議で決定しております。また、取締役候補者については、取締役のそれぞれの役割に応じた必要な能力、経験、識見、人格を検討し、株主総会への取締役選任議案付議を取締役会決議で決定、株主総会に付議しております。
解任に関して明確な基準はありませんが、当初の選任理由と照らしてその機能を十分に発揮していないと判断される場合、経営陣幹部については取締役会決議で解任いたします。 また、取締役においては、株主総会への取締役解任議案付議を取締役会決議で決定し、株主総会に付議いたします。
(5)取締役等の選解任にあたって個々の説明
当社は、招集通知に取締役候補者について個別の選任理由を記載しております。また、解任を提案する場合は解任理由を記載いたします。
招集通知:
https://www.anap.co.jp/ir/information/holders.html

 

【補充原則4-1-1 経営陣に対する委任の範囲】
当社の取締役会の専決事項及び経営陣に対する委任の範囲等に関する考え方について、 取締役会は法令及び当社定款に定められた事項の他、当社の重要事項等を決定しており、取締役会の構成及び運営等の細目は取締役会規程で定めております。取締役会が取締役会自身として決議する主な事項は次のとおりです。
①株主総会に関する事項
②経営一般に関する重要事項
③株主及び社債に関する重要事項
④組織・人事に関する重要事項
⑤取締役に関する重要事項
⑥業務執行に関する重要事項
⑦その他の事項

その他の業務の執行やその決定については、取締役会で定めた業務組織基本規程、組織並びに業務分掌規程及び職務権限規程に基づき、代表取締役社長等の経営陣に委任しております。

 

【原則4-9 独立社外取締役の独立性判断基準及び資質】
当社は、会社法及び東京証券取引所が定める基準をもとに、取締役会で審議検討を行い独立社外取締役の候補者を選定しております。

 

【補充原則4-11-2 取締役・監査役が他の上場会社の役員の兼務】
当社は、社外取締役の他社の兼任状況について、株主総会招集通知「重要な兼職の状況」及び有価証券報告書「役員の状況」等を通じ、毎年開示を行っております。社外取締役2名のうち全員が、当社グループ以外の他の上場会社の取締役を兼任しております。業務執行取締役3名全員が当社グループ以外の他の上場会社の社外取締役を兼任しておらず、取締役の業務に専念できる体制となっております。

 

【補充原則4-11-3 取締役会の実効性の分析・評価】
(1)2020年度の分析・評価結果
分析の結果、取締役会の監督機能が概ね発揮され、高い実効性が確保できていると評価しました。一方で、今後も継続的に取り組むべき課題があることを認識しました。
(2)今後の対応
以下の各事項について、今後継続的に取り組むことで、取締役会の実効性をさらに高めていく事を確認しました。
・企業価値の向上に資する長期的な課題及び重要な課題への対応に関する継続的な検証・フォローアップ・実行に向けた後押しの強化
・取締役会の規模・構成の定期的な検証

 

【補充原則4-14-2 取締役・監査役に対するトレーニングの方針】
当社は、取締役・監査役(社外取締役・社外監査役を含む。以下同じ。)の就任に際して、会社の事業・財務・組織等に関する必要な知識を取得し、当社取締役・監査役に求められる役割と法的責任を含む責務を果たすため、会社法関連法令、コーポレート・ガバナンス、コーポレートファイナンス及びコンプライアンス等に関して十分に理解を深める機会を提供・斡旋、それに要する費用の支援を行います。また、必要に応じこれらを継続的に更新する機会を提供・斡旋、それに要する費用の支援を行います。

 

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、以下の方針に従い、株主との建設的な対話を行います。当社は対話を通じて株主に経営方針を分かりやすく説明し、理解を得るよう努めるとともに、対話を通じて得た意見等を取締役会・経営陣にフィードバックし、企業価値の向上に努めます。
<株主との対話に関する方針>
①株主との対話に関しては、IRを担当する執行役員が統括します。
②当社のIRを担当する部門は、開示資料の作成やステークホルダーへの適切な情報開示体制を整えるため、社内関係部署と適宜連携を図ります。
③株主に対しては、決算説明会および当社WEBサイトによる情報開示等の実施により、当社の経営戦略や事業環境に関する理解を得られるよう努めます。
④株主との対話について、IR担当執行役員は必要と判断した取締役、監査役、執行役員及び関連部門へ適時適切にフィードバックを行い、当社の中長期的な事業展開等に積極的に活用を図って行きます。
⑤当社は、株主との対話に際して、社内で定める内部者取引防止規程等に基づいて、インサイダー情報の取扱いに留意し、情報の管理等を適切に行います。当社は、決算情報の漏洩を防止し情報開示の公平性を確保するために、決算発表前の一定期間は、決算に関する情報開示や問合せに対する回答を行いません。

 

 

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