ブリッジレポート
(3131) シンデン・ハイテックス株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(3131)シンデン・ハイテックス 2023年3月期上期決算

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鈴木 淳 社長

シンデン・ハイテックス株式会社(3131)

 

 

企業情報

市場

東証スタンダード市場

業種

卸売業(商業)

代表者

鈴木 淳

所在地

東京都中央区入船3-7-2 KDX銀座イーストビル

決算月

3月

HP

https://www.shinden.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,160円

2,010,270株

4,342百万円

12.3%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

127.00円

5.9%

428.70円

5.0倍

3,240.66円

0.7倍

*株価は11/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。BPSは直近四半期末実績。ROEは前期実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

46,102

626

299

209

102.09

45.00

2020年3月(実)

44,277

496

291

185

92.88

45.00

2021年3月(実)

49,084

819

702

497

246.18

75.00

2022年3月(実)

43,458

1,501

1,062

748

367.77

110.00

2023年3月(予)

44,400

2,150

1,260

865

428.70

127.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

シンデン・ハイテックスの2023年3月期上期決算の概要と2023年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年3月期上期決算概要
3.2023年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 23./3期上期は前年同期比2.4%増収、59.3%営業増益。直接取引になった液晶モジュールビジネスの剥落はあったものの、円安に推移したことや半導体製品分野において需要の取込みに注力してリカバリーした。利益面では、半導体製品分野の増収効果とディスプレイ分野の利益率の改善が奏功し、売上総利益が34.9%増の23.3億円。販管費の増加を吸収して大幅増益となった。営業外では為替差損が拡大したことにより、28.9%経常減益となった。その結果、売上高及び営業利益は当初の想定を大幅に上回り、経常利益及び親会社株主帰属利益については、想定並みの推移となった。

     

  • 23/3期は前期比2.2%増収、43.2%営業増益、18.6%経常増益を計画する。売上高は下方修正、各段階利益は上方修正となった。半導体製品分野及びディスプレイ分野における、円安の効果と、システム製品分野・バッテリ&電力機器分野の一部部品の供給制約が緩み、顧客の生産が復調する見通し。半導体製品分野が、ほかの分野の不調をリカバリーし、売上高は増加する見通し。営業利益は、比較的利益率の高いシステム製品分野が復調することと、円安効果により、売上総利益の増加することにより大幅に増加する見込み。経常利益以下の利益は、ドル金利の上昇による支払利息の増加要因、営業外損益における為替差損益の発生は見込んでいない。下期想定レートの1ドル=144 円より円安であれば、為替差損の計上、円高に転じると為替利益の計上が見込まれる。配当は修正なく、依然、為替相場が不透明なため、127円/株の期末配当と予想を据え置いている。

     

  • 23/3期上期は微増収、大幅営業増益となった。1Q(4-6月)は11.4%減収、23.8%営業増益、経常損失0.6億円(前年同期は3.5億円の利益)というスタートでやや不安な立ち上がりだったが、スロースタートは期初に想定していたことであった。2Q(7-9月)は16.3%増収、91.6%営業増益、62.8%経常増益と躍進し安心感をもたらしたといえる。通期予想を修正したが、下期は円安効果に加え、システム製品分野とバッテリ&電力機器分野の部品供給難が、徐々に改善する見通し。一方で、半導体製品やディスプレイの需給ひっ迫の状況が緩み価格が下落基調。在庫水準も高めに推移しており、半導体市況は厳しさを増しており暗雲も漂う状況にある。こうした中、株価についてはPER、PBRとも極めて低位にある上、配当利回りは高い。下期の市場環境は陰りが見える中ではあるが、収益構造改革は着実に進んでおり、営業努力を続けながらも利益重視の取り組みを評価したい。改めて、株価は極めて割安に放置されている印象を持った。

     

1.会社概要

半導体製品、ディスプレイ、システム製品、バッテリ&電力機器等の独立系エレクトロニクス商社。主に海外メーカの製品を仕入れ、国内電子機器メーカや産業機器メーカに販売しており、22/3期における売上の約77%を半導体製品及びディスプレイが占め、システム製品、バッテリ等が約23%。中国(香港)、タイの連結子会社2社とグループを形成し、それぞれの地域に展開する日系企業向けビジネスを手掛けている。海外連結子会社の売上比率が約7%を占める。

 

【経営理念 : 「当たり前のことを当たり前にする会社」】

・世界中より時代を先取りできる製品を発掘し、お客様に供給することで「社会の発展に貢献」する
・業界において、ナンバー・ワンを目指す
・トータルソリューションとして、お客様のニーズを的確に捉え、スピーディに対応し、「お客様の満足できる企業」を目指す
・社員が「夢を持って働ける企業」を目指す

【CSR・環境への取り組み】

同社は地球環境に優しい企業活動を経営課題の一つと位置づけており、環境保全と資源保護に配慮した活動による社会貢献と環境汚染の予防を推進している。具体的には、SDGsも念頭に、環境配慮型電池及びその周辺装置(半導体を含む)の拡販、システムでの低消費電力化に向けた高性能半導体の拡販に取り組んでいる。
この他、顧客のグリーン調達基準を遵守するため、化学物質管理システム(CMS)を構築・運用している他、社員が能力を発揮し、仕事と生活の調和を図り、働きやすい雇用環境の整備を行うため、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定し推進している。2003年7月にISO 14001認証を、2004年3月にISO 9001認証を、それぞれ取得している。

 

1-1 取扱商品と仕入先・販売先

ディスプレイは主に韓国、中国及び台湾のディスプレイメーカから液晶モジュール等を仕入れ、そして、半導体製品はDRAMやフラッシュ等のメモリ及びメモリモジュールを主に韓国、中国及び台湾メーカから仕入れ、それらの商品を車載用機器、事務用機器、産業用機器等のセットメーカに販売している。ASSP(特定用途向け汎用IC)やASIC(特定用途向けカスタムIC)については、米国や韓国のメーカから仕入れており、CPU(中央演算処理装置)やGPU(リアルタイム画像処理に特化した演算装置)については米国メーカから仕入れた商品をパソコン用途以外の顧客に販売している。この他では、ファウンドリも手掛けている。ファウンドリとは、顧客から半導体の設計データを受け取り、韓国・米国半導体メーカに製造依頼し、完成品を依頼元に販売するビジネスである。システム製品では、国内・韓国メーカの検査用の装置等の電子機器、そして、EMSを取り扱っている。EMSとは、製品の開発・生産を受託するサービスである。バッテリ&電力機器は、主に韓国メーカからリチウムイオンや鉛バッテリ、電力機器等を仕入れ、民生品メーカや太陽光発電所向けに販売している。

 

商品分野・製品と位置づけ

分野

位置付け

製品

市場・応用製品等

半導体製品

 

中核分野

メモリ、メモリモジュール、SSD、ASSP/ASIC、CPU/ GPU、LED、ファウンドリ、パワー半導体等

カーナビゲーション等車載用、複合機等事務機器、産業用機器、モバイル機器、その他民生用機器、サーバ、スマートフォン、アミューズメント、液晶ドライバ

ディスプレイ

 

再構築分野

液晶モジュール、有機EL、タッチパネル、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ等

カーナビゲーション等の車載用、PC・タブレット、スマートフォン、産業用機器、医療用機器、商業用施設等

システム製品

 

重要分野

検査等装置、通信モジュール、Board、EMS、サーバ機器、各種システム製品・機器

産業用機器、民生用機器、車載用機器、通信用機器、 事務用機器、スマートフォン、サーバ、アミューズメント、研究・教育機関等

バッテリ&

電力機器

 

重要分野

電池関連商品(リチウムイオン電池等)、

電力機器(配電盤、開閉器等)

通信用基地局、民生用機器、

太陽光発電所向け等の再生エネルギー関連製品

その他

 

材料、その他

上記に当てはまらない商材及び新たな取組みの商材を総合した分野

 

仕入先

 

主な仕入先

特徴

半導体製品

SK hynix(韓国)

DRAM・NAND型フラッシュメモリ、メモリモジュール、CIS等の半導体メーカ。

Giga Device(中国)

NORフラッシュ製品やNANDフラッシュからMCU製品まで幅広く提供する不揮発性メモリデバイスの大手ファブレスメーカ。

MagnaChip(ルクセンブルク)

通信、モノのインターネット(IoT)アプリケーション、アナログ及びミックスドシグナル半導体プラットフォームソリューションの設計等。

AMD(米国)

PCプロセッサー、組み込み用プロセッサー等の半導体メーカ。

Telechips(韓国)

車載及びコンシューマ市場向けアプリケーション・プロセッサー(SoC)の設計・開発。

Global Foundries(米国)

IBMマイクロエレクトロニクス事業を譲受けた世界トップクラスのファウンドリ。

Skyworks(米国)

スマートフォン等ワイヤレス通信機能を搭載した製品を幅広くサポートするデバイスを開発する半導体メーカ。

ディスプレイ

BOE(中国)

北京に本社を置くディスプレイパネル大手。

O-Nation Corporation(台湾)

顧客の要望に沿ったLCDモジュールを開発・販売するメーカ。

Goworld(中国)

各種LCDモジュール・静電タッチパネルメーカ。

システム製品

EMS部品メーカ

電子機器受託生産を展開する企業。

Boardメーカ

特定の機能を実現するため、様々な電子部品を実装した回路基板を製造するメーカ。

Telit(イタリア)

M2M製品を専門に取り扱い世界的メーカ。

EM-TECH(韓国)

スピーカーやハプティクスモーター等の高性能なデバイスを製造。

GIGABYTE(台湾)

ハイパフォーマンスコンピューティングの礎となるべく、末端のエッジから最上層のクラウドに渡るまでのソリューションを提供。

バッテリ&

電力機器

LG Energy Solution(韓国)

韓国最大の総合化学メーカLG Chem.より独立。Liバッテリの供給元。

パナソニック(日本)

同社の充電式乾電池を取扱う。

LS ERLECTRIC(韓国)

電力機器及び自動化機器のメーカ。

 

2.2023年3月期上期決算概要

2-1 連結業績

 

22/3期 上期

構成比

23/3期 上期

構成比

前年同期比

売上高

22,232

100.0%

22,771

100.0%

+2.4%

売上総利益

1,729

7.8%

2,332

10.2%

+34.9%

販管費

942

4.2%

1,079

4.7%

+14.5%

営業利益

787

3.5%

1,253

5.5%

+59.3%

経常利益

699

3.1%

497

2.2%

-28.9%

親会社株主帰属利益

494

2.2%

341

1.5%

-31.0%

* 単位:百万円

 

前年同期比2.4%の増収、営業利益は同59.3%増で過去最高を更新
売上高は前年同期比2.4%増の227.7億円。ディスプレイ分野における直接取引になった液晶モジュールビジネスの剥落があった。しかし、為替相場が円安に推移したことや半導体製品分野において需要の取込みに注力してリカバリーした。
営業利益は前年同期比59.3%増の12.5億円。利益面では、半導体製品分野の増収効果とディスプレイ分野の利益率の改善が奏功し、売上総利益が前年同期比34.9%増の23.3億円、売上総利益率は前年同期7.8%から10.2%に向上、販管費の増加を吸収して大幅増益となった。一方、営業外では急激な円安進行によって為替差損が前年同期0.3億円から6.2億円に拡大したことにより、経常利益は前年同期比28.9%減の4.9億円、親会社株主帰属利益は同31.0%減の3.4億円となった。売上高及び営業利益に関しては当初の想定を大幅に上回る推移となった。一方、経常利益及び親会社株主帰属利益については、当初想定並みの推移となった。

 

2-2 分野別動向

 

22/3期 上期

構成比

23/3期 上期

構成比

前年同期比

半導体製品

9,997

45.0%

17,013

74.7%

+70.2%

ディスプレイ

6,833

30.7%

2,782

12.2%

-59.3%

システム製品

3,413

15.4%

2,269

10.0%

-33.5%

バッテリ&電子機器

1,779

8.0%

533

2.3%

-70.0%

その他

208

0.9%

172

0.8%

-17.2%

連結売上高

22,232

100.0%

22,771

100.0%

+2.4%

* 単位:百万円

 

 

半導体製品分野の売上は前年同期比70.2%増の170.1億円。為替相場が円安に推移したことと、需要の取込みに注力した結果、大幅増収となった。ここ最近でメモリ市況のゆるみが見えるが、スマートフォン周辺機器向けの需要の大幅な増加が寄与。またSSD(Solid State Drive:半導体メモリをディスクドライブのように扱える補助記憶装置の一種)等のメモリ以外の半導体商材も増加した。また、遅れていたファウンドリビジネスの一部開発案件についても、2Q(7-9月)に進捗した。
ディスプレイ分野の売上は同59.3%減の27.8億円。今期より再構築分野として、高利益商材の販売に注力し利益率の改善に努めている。直接取引になった液晶モジュールビジネスの剥落により減収となった。LGディスプレイに代わるビジネスとして、主にPC向けや携帯電話向けビジネスを育成中。この他、既存の台湾メーカの液晶も拡販中。尚、売上高は大幅に減少しているが、利益面ではほぼ前年並みの推移となっている。
システム製品分野の売上は同33.5%減の22.6億円。異物検出装置は堅調に推移した。しかし、一部部品の供給不足継続の影響による顧客の生産調整のためEMSが減少して減収となった。
バッテリ&電子機器分野の売上は同70.0%減の5.3億円。顧客製品における開発遅延や、一部部品の供給不足継続の影響により、主に家庭用蓄電システム(ESS)の顧客の生産調整の影響を受けたため減収となった。

 

2-3 財政状態

財政状態

 

22年3月

22年9月

 

22年3月

22年9月

現預金

6,331

5,300

仕入債務

2,548

2,648

売上債権

8,490

11,529

短期有利子負債

10,413

12,407

棚卸資産

5,384

6,126

未払法人税等

184

171

流動資産

20,516

23,260

流動負債

13,471

15,838

有形固定資産

12

14

長期有利子負債

1,025

1,259

無形固定資産

4

2

固定負債

1,026

1,260

投資その他

355

344

純資産

6,390

6,524

固定資産

371

362

負債・純資産合計

20,888

23,622

* 単位:百万円

 

 

総資産は236.2億円となり、前期末との比較(以下同)で27.3億円増加した。現預金が減少したが、受取手形、売掛金及び契約資産や商品が増加した。負債は170.9億円となり、26億円増加した。有利子負債が増加したことによるもの。純資産は65.2億となり、1.3億円増加した。主な要因は、利益剰余金の増加によるもの。
流動比率は、短期借入金の増加等により5.4ポイント減少し、146.9%となった。自己資本比率は、有利子負債の増加等により、3.0ポイント減少し27.6%となった。有利子負債対純資産比率は2.1倍となり、0.3ポイント増加した。

 

3.2023年3月期業績予想

3-1 通期連結業績

 

22/3期 実績

構成比

23/3期 予想

構成比

前期比

期初予想

売上高

43,458

100.0%

44,400

100.0%

+2.2%

45,100

営業利益

1,501

3.5%

2,150

4.8%

+43.2%

1,570

経常利益

1,062

2.4%

1,260

2.8%

+18.6%

1,250

親会社株主帰属利益

748

1.7%

865

1.9%

+15.6%

860

* 単位:百万円

 

23/3期は2.2%増収、営業利益は43.2%増を見込む
23/3期は売上高が前期比2.2%増の444億円、営業利益は同43.2%増の21.5億円、経常利益は同18.6%増の12.6億円、親会社株主帰属利益は15.6%増の8.6億円を計画する。売上高は下方修正したものの、各利益は上方修正となった。
年度前半は、システム製品分野とバッテリ&電力機器分野において、一部の部品供給難を背景とした顧客の生産調整の影響を受けた。しかし、中核分野の半導体製品分野は、年度前半の前倒し需要を含む旺盛な需要を取込めたことが業績を牽引した。加えて、再構築分野であるディスプレイ分野は、メーカ構成の変化により利益面で寄与した。当初業績予想時からの急激な円安進行もあり、売上高及び営業利益において当初の想定を上回った。下期は、足元ではメモリをはじめとした半導体製品の需給ひっ迫の状況が緩み、価格が下落基調にあることと、各種部品の需給ひっ迫が解消しつつある中で顧客の在庫水準が高めに推移している。これらにより、半導体市況は厳しさを増し、ディスプレイ市況も同様と見込んだ。その一方、システム製品分野とバッテリ&電力機器分野における一部の部品供給難は、徐々に改善するものと見込んでいる。下期の想定為替レートは1ドル=144円としている。足元において円安が進行しており、それに伴う為替差損を上期に営業外費用で計上している。その影響については、下期の売上総利益においてリカバリーし、現段階では為替差損が通期連結経常利益予想値へ大きな影響を与えないものと見込んでいる。年度後半から市況の潮目が変化し、厳しい事業環境に突入するものと見込んでいるが、上期の業績を踏まえ、下期のビジネスの状況を精査し、昨今の円安基調で推移している為替相場を考慮した結果、通期連結業績予想を修正することとなった。
売上高は、半導体製品分野及びディスプレイ分野における、円安の効果と、システム製品分野・バッテリ&電力機器分野の一部部品の供給制約が緩み、顧客の生産が復調する見通し。半導体製品分野が、ほかの分野の不調をリカバリーし、前年対比は増加見通し。営業利益は、比較的利益率の高いシステム製品分野が復調することと、円安効果により、売上総利益が増加することに伴い大幅に増加する見込み。経常利益以下の利益は、ドル金利の上昇による支払利息の増加要因、営業外損益における為替差損益の発生は見込んでいない。下期想定レートの1ドル=144 円より円安であれば、為替差損の計上、円高に転じると為替利益の計上が見込まれる。
依然、為替相場が不透明なため、配当は修正なく、127円/株の期末配当と予想を据え置いている。

 

 

3-2 対処すべき課題と収益構造改革

対処すべき課題と対処方針

対処すべき課題の現状認識として外部要因と内部要因を同社では挙げている。外部要因としては以下を掲げる。
1)景気の変動
2)需給動向の変動(半導体をはじめとする部品不足による顧客の生産調整)
3)為替や金利の変動
4)地政学的リスク(サプライチェーンの混乱)
5)汎用品における価格競争の激化
6)国内産業構造の変化(コンシューマー系製品の生産数減少による数を追うビジネスの減少)
7)顧客や仕入先における事業再編や経営戦略等の変更。
内部要因としては、汎用品ビジネスの販売構成が高い一方、主要仕入れ先が東アジアに偏重した傾向にあるとしている。

 

これらへの対処方針として、既存仕入先の汎用品ビジネスを維持・拡大させるとともに、「収益構造改革」を通じて世界的視点で欧米や国内の高付加価値商品を発掘し、システムソリューションとして顧客に提供する考え。それにより、最大価値を創出し、安定的かつ持続的な成長を目指す。

 

収益構造改革の5つの戦略

22/3期より商品を軸とした横断的組織である「プロダクト・マーケティング本部(略称:PM本部)」を設立し、運用を開始した。「収益構造改革」にかかる以下の戦略と新たな組織を有機的に運用することで、最大価値の創出を図る。

 

①基本戦略
a. 中核分野(半導体製品)の高利益化
b. 収益のもう一つの柱となるビジネスモデルの確立
c. 資金効率の向上と財務体質の強化

 

②市場・顧客戦略
a. DX(5G・IoT)及びGX(カーボンニュートラル)
▶基地局や再生可能エネルギー等のインフラ
▶FA(Factory Automation)やEV(電気自動車)関連向け応用製品

 

b.新規市場と中核優良顧客
▶スマート農林業・輸送機器・建設機器・データセンタ等の市場及び優良顧客を開拓

 

③製品戦略
a. 半導体製品 :
▶高付加価値商品の拡販
▶国内・米国製等の商品深掘

 

b. ディスプレイ
▶OLED等の表示装置の発掘
▶好採算ビジネスへの転換

 

c. システム製品
▶EMSビジネスの強化
▶Boardビジネスの強化
▶サーバ機器の拡張

 

d. バッテリ、パワーデバイス・電源
▶ESS(電力貯蓄システム等のエネルギーマネジメント向け製品の強化
▶EV化に向けた関連製品へのアプローチ

 

④財務戦略
a. 現在の良好な取引金融機関との関係を維持し、業容拡大に対応できる安定的な資金調達手段を確保
b. 高利益化による資金効率の向上をもって自己資本を充実させ、財務体質を強化

 

⑤協業戦略 (New)
以下の分野で検討・推進
▶EV関連市場
▶カーボンニュートラル
▶エネルギーマネジメント

 

経営目標・株主還元

「収益構造改革」を推進し高利益化を図るとともに、資産の効率化、財務レバレッジの向上を追求、ROE10%以上の継続を目標とする。
また、株主に対する利益還元を重要な経営政策の一つと位置づけ、財政状態や経営環境等を総合的に勘案し、必要な内部留保を確保しつつ、配当を実施する方針。年1回期末配当として、株主総会の決議により配当を実施することが基本方針。

 

中間総括

Ⅰ以下のプラス要因及びマイナス要因があったが、利益の向上を目指した「収益構造改革」に一定の成果が出ているものと見込める。

 

プラス要因
▶コロナ特需を含め、旺盛なメモリ需要と価格の上昇
▶当中期経営期間を通し、円安に推移した為替相場

 

マイナス要因
LG ディスプレイビジネスの直接取引への移管(21年度)
▶世界的な半導体不足を背景とした、顧客の生産調整(20年度~)
▶コロナ禍における行動制限(20年度~)

 

Ⅱ課題
ⅰ)コロナまん延による行動制限により、既存顧客向け営業活動が中心となり、新規開拓活動が遅れている。
ⅱ)部品の供給制約による顧客の生産調整により、「システム製品分野」「バッテリ&電力機器分野」の販売構成が下がり「半導体製品分野」の比率が高い販売構成となってしまう見込みになった。
ⅲ)メモリの循環市況の潮目の変化(ピークアウト)。
ⅳ)世界的な景気後退懸念の増加。

 

 

Ⅲ次期中期経営期間(23年4月開始)の方向性
▶「収益構造改革」の基本的戦略構造を踏襲する。
▶引続き重点市場をDX(デジタル)及びGX(脱炭素・再生エネルギー)関連市場とし、遅れている新規開拓活動を加速化させるともに、システム製品分野及びバッテリ&電力機器分野の販売構成を相対的に上昇させる。それは、現状でもシステム製品分野において新規ビジネスの仕込みを継続しているが、メモリ市況をはじめとした循環市況に左右されない複数のビジネス(=岩盤ビジネス)の構築が急務である。

 

4.今後の注目点

同社のビジネスを考えるうえでのポイントは、表面的な売上・利益よりも、先を見越して進めている水面下でのパイプラインの整備である。売上・利益は結果であり、その時々の為替やデバイスの市況にも左右されてしまうが、パイプラインが整備されていれば、目先の業績が振れても、中長期の成長に不安はない。今も数年先を見据えた営業努力が続いている。
23/3期上期は微増収、大幅営業増益となった。1Q(4-6月)は売上高98.7億円(前年同期比11.4%減)、営業利益4.6億円(同23.8%増)、経常損失0.6億円(前年同期は3.5億円の利益)というスタートでやや不安な立ち上がりだったが、スロースタートは期初に想定していたことであった。2Q(7-9月)は売上高128.9億円(前年同期比16.3%増)、営業利益7.8億円(同91.6%増)、経常利益5.6億円(同62.8%増)と躍進し安心感をもたらしたといえる。
通期予想を修正したが、下期は、円安効果及びシステム製品分野とバッテリ&電力機器分野の部品供給難が、徐々に改善する見通し。一方で、半導体製品やディスプレイの需給ひっ迫の状況が緩み価格が下落基調。在庫水準も高めに推移、半導体市況は厳しさを増しており暗雲も漂う状況にある。
こうした中、株価についてはPER、PBRとも極めて低位にある上、配当利回りは高い。下期の市場環境はやや陰りも見える中ではあるが、収益構造改革は着実に進んでおり、営業努力を続けながらも利益重視の取り組みを評価したい。改めて、株価は極めて割安に放置されている印象を持った。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

10名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2022年11月9日)
基本的な考え方
当社は、コーポレート・ガバナンスの強化・充実を経営上の重要な課題の一つとして位置付けております。
経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応し、グループ全体の持続的な企業価値の向上を図るとともに、企業理念を具現化し発展していくために、意思決定の迅速化及び責任の明確化、並びに内部統制システムの整備等により、経営体制を充実させ、経営の透明性向上とコンプライアンス遵守の徹底を図っていくことを当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方としております。さらに、株主をはじめとするステークホルダーに対する、企業としての社会的責任を果たすことを、経営の重要な責務として認識し、グループ内における監督機能、業務執行機能及び監査機能を明確化することにより、経営目標の達成に向けた経営監視機能の強化に努めております。

 

 

<実施しない原則とその理由>
【補充原則1-2④】
当社は、機関投資家が議決権行使をおこないやすい環境の整備や海外株主に向けた英文による情報提供が必要と認識していますが、現状は、自社の株主における機関投資家や海外投資家が少ないため、英訳は実施しておりません。今後の株主動向等を踏まえ、検討してまいります。

 

【補充原則2-4①】
当社は、管理職や中核人材の登用等において、性別・国籍・採用ルート等の属性による制限なく、役割に必要な能力・知識・経験等に基づいて、適任と判断した人物を登用しております。
現時点では、女性・外国人・中途採用者の管理職・中核人材への登用に対する測定可能な数値目標を定めるには至っておりませんが、今後も引き続き多様性の確保に努めるとともに、今後の企業規模の拡大や環境変化に応じて、目標について検討してまいります。

 

【補充原則3-1②】
当社は、海外投資家等に向けた英文による情報提供が必要と認識していますが、現状は、自社の株主における海外投資家等が少ないため、英訳は実施しておりません。今後の株主動向等を踏まえ、検討してまいります。

 

【補充原則4-1③】
当社は、最高経営責任者である社長の後継者の計画を現時点では明確に定めておりませんが、当社の企業理念・経営理念の実現及び会社の持続的な成長に向けてリーダーシップを発揮しうる者を、経験・能力・識見・人格を踏まえ、取締役会において協議し適切に決定しております。
後継者計画の立案については、今後必要に応じて検討してまいります。

 

【補充原則4-10①】
当社は、独立社外取締役を主要な構成員とする独立した指名委員会・報酬委員会を設置しておりませんが、取締役会等で、取締役や監査役、経営陣等と意見交換や提言をおこなっており、独立社外取締役としての責務を十分に果たしていると考えております。
指名や報酬などの特に重要な事項については、適宜、独立社外取締役から意見や助言を得ながら、取締役会で定めた方針に従い、決定してまいります。

 

【補充原則4-11③】
取締役会において、取締役は、相互に業務執行状況や経営課題進捗状況について意見交換等が行われているとともに、社外取締役及び監査役から意見表明や提言、助言がなされ、取締役会の実効性は保たれていると判断しております。
取締役会の実効性の分析評価制度の導入及びその結果概要の開示につきましては、必要に応じて検討してまいります。

 

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