ブリッジレポート:(6826)本多通信工業 2023年3月期第1四半期決算
樫尾 欣司 社長 | 本多通信工業株式会社(6826) |
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企業情報
市場 | 東証プライム市場 |
業種 | 電気機器(製造業) |
代表取締役社長 | 樫尾 欣司 |
所在地 | 東京都品川区北品川5-9-11 大崎MTビル |
決算月 | 3月 |
HP |
株式情報
株価 | 発行済株式数(期末) | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
704円 | 25,006,200株 | 17,604百万円 | 6.1% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
0.00円 | - | 43.32円 | 16.3倍 | 516.14円 | 1.4倍 |
*株価は8/2終値。発行済株式数、DPS、EPSBPSは23年3月期第1四半期決算短信より。ROEは前期実績。ミネベアミツミ株式会社による株式公開買付けにより完全子会社となる予定のため、今期は期末配当を行わない。
業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | DPS |
2019年3月(実) | 17,606 | 1,141 | 1,184 | 765 | 32.06 | 20.00 |
2020年3月(実) | 14,923 | 237 | 157 | 43 | 1.89 | 21.00 |
2021年3月(実) | 14,932 | -74 | 147 | 75 | 3.29 | 7.00 |
2022年3月(実) | 18,451 | 875 | 1,043 | 693 | 30.07 | 12.00 |
2023年3月(予) | 20,000 | 1,400 | 1,400 | 1,000 | 43.32 | 0.00 |
*単位:百万円、円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。ミネベアミツミ株式会社による株式公開買付けにより完全子会社となる予定のため、今期は期末配当を行わない。
本多通信工業の2023年3月期第1四半期決算概要、ミネベアミツミ株式会社による公開買付けについての同社の対応などをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2023年3月期第1四半期決算概要
3.2023年3月期業績予想
4.ミネベアミツミ株式会社による公開買付けについて
<参考:コーポレートガバナンスについて>
今回のポイント
- 2023年3月期第1四半期の売上高は前年同期比28.9%増の54億19百万円。設備投資の活況により通信・FA・車載分野中心にコネクタ事業が伸長した。営業利益は同299.4%増の3億49百万円。人件費増、物流費増、部材価格高騰などコスト増加を、増収・生産拡大・合理化に伴う売上総利益の増加で吸収し大幅な増益。経常利益は同337.2%増の5億1百万円。前期第4四半期に続き四半期売上高は50億円を超えた。対前期比では6.4%増収、21.1%営業増益。
- 業績予想に変更は無い。23年3月期の売上高は前期比8.4%増の200億円の予想。全分野で好調な需要が継続する。高水準の受注残も寄与。営業利益は同59.9%増の14億円の予想。開発投資・人的投資の増加や調達価格上昇などのコスト増を合理化や価格改定で吸収する。価格改定に関しては、前期は第4四半期に入ってからであったため、今期は前期以上に寄与するものと見ている。自動化生産増により合理化効果も前期以上を見込んでいる。ミネベアミツミ株式会社による株式公開買付けにより完全子会社となる予定のため、期末配当を行わない。
- 2022年7月29日、同日開催の取締役会において、ミネベアミツミ株式会社(6479、東証プライム上場)による本多通信工業の普通株式に対する公開買付けに関して、賛同する旨の意見を表明するとともに、同社株主に対して、本公開買付けへの応募を推奨する旨を決議した。なお、この取締役会決議は、ミネベアミツミが、本公開買付け及びその後の一連の手続により、本多通信工業をミネベアミツミの完全子会社とすることを企図していること並びに同社株式が上場廃止となる予定であることを前提として行われたものである。
- 樫尾社長にコメントを伺った。
- 「当社は現在推進している経営計画において、基本戦略として「Society5.0で拡大する“つなぐ”市場に、新商品をスピーディに創出」を掲げ、25年度(26年3月期)での過去最高売上/営業利益の更新を狙っています。また、より長期の視点に立った2032年に向けた「創業 100 周年ビジョン」の実現を目指しています。ただ、一方で当社を取り巻く事業環境の変化は大きく、そのスピードも想像を上回るものであり、当社が現在保有するリソースのみでは、スピードを伴った施策の実行は難しいのが実情です。このたびミネベアミツミ株式会社から株式公開買付および完全子会社化の申し出を受けました。様々な判断の結果、同社の完全子会社となってミネベアミツミのリソースを活用することが当社の企業価値を向上させ、目指すべき姿を実現させるためには最適な選択であると判断いたしました。株主の皆様に対しては、本公開買付への応募を推奨申し上げるとともに、これまで厳しい環境下でも応援いただいてきたことに対し、改めて厚く御礼申し上げます。当社は非上場企業となりますが、ミネベアミツミグループの一員としてこれからも成長を追求して参りますので、引き続きご注目いただきたいと存じます」とのことだ。
1.会社概要
車載、FA機器、通信インフラ、民生機器用途向けの電気コネクタおよび光コネクタの製造販売を行う。「Segments No.1」を掲げ、特定分野での高い競争力を追求している。長い歴史の中で培われた幅広い設計技術力、産業用機器向けで培った長期信頼性と堅牢性に関するノウハウ、多品種少量生産体制などが特長。子会社ではソフトウエア開発なども手掛けている。グループ認知度の向上に向けて、複数存在していたブランドを「HTK」に統一。グループは同社と連結子会社7社(国内2社、海外5社)の計8社で構成されている(2022年3月末日現在)。
【1-1 沿革】
1932年5月に精密ねじ加工業として現在の東京都目黒区で創業。第二次大戦後は、日本電信電話公社(現NTT)の電話交換機用プラグ・ジャック、防衛庁向けプラグ・ジャックを始め、その発展形となるコネクタの製造販売を手掛け、業容を拡大。2001年に東証2部に上場した。だが、ITバブル崩壊で売上が急減。数度のリストラクチャリングを経て、成長路線への復帰と拡大発展をめざし、2008年に松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)と資本業務提携契約を締結。2014年2月、約80年に亘って本社を置いていた目黒から品川区へ本社を移転した。
2016年3月、東証1部に上場した。2022年4月、市場再編に伴い、東証プライム市場に移行。
2022年9月、ミネベアミツミ株式会社による公開買い付けに伴い同社の完全子会社となり、上場廃止の予定。
【1-2 経営理念など】
特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事をめざし、「Segments No.1」を掲げている。
また、2015年に策定した中期経営計画「GC20」策定に際し、グループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。
豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。
【1-3 事業内容】
事業セグメントはコネクタ事業と情報システム事業の2つ。
◎コネクタ事業
<コネクタとは?>
電子回路や光通信において配線基板同士を接続し、電気や信号を繋ぐために用いられる部品・器具のこと。基板をはんだ付けや圧着で接続した場合、分断時にはケーブル切断等が必要になり再接続は困難となるが、コネクタを使用した場合、手または簡易的な工具を用いて容易に繰り返し脱着することが可能であるため、ほぼ全ての電子機器で使用される。
<利用分野>
長年の経験で培われた高い技術力により、以下の6分野を中心に付加価値の高く、顧客志向のコネクタを始めとした製品をラインアップしている。
分野 | 概要 |
カーエレクトロニクス | 日々進化するカーエレクトロニクス市場へ、通信分野・産業機器分野で培った技術をベースに高い信頼性を有するコネクタを提供 |
通信機器 | 電話交換機のプラグ・ジャックを起点に、光コネクタを中心とした通信機器用コネクタを提供 |
FA機器 | 工作機器・制御機器などの長期信頼性ニーズに対応する堅牢で高品質のFA機器用コネクタを提供 |
医療機器 | 拡大する医療分野に対して同社グループのノウハウを活かした医療用コネクタを提供。ナースコール用コネクタでは国内シェア1位 |
デジタル家電 | 産業用コネクタで培った要素技術をベースに軽薄短小を追求し、同社グループならではのものづくりでデジタル家電市場へ商品を提供 |
サーバ・ストレージ | 電子データの高速化・大容量化に対応すべく同社グループが得意とする高速伝送技術を最大限に生かした商品を提供 |
<主な製品ラインアップ>
(同社資料より)
2022年3月期の分野別売上構成比率(全売上高に対する構成比)は、車載分野30%、FA分野28%、通信分野16%、民生分野10%となっている。
最も構成比の高い車載分野において、安全性や運転性能向上の観点から車載カメラやセンサの搭載台数が増加しているカーエレクトロニクスの成長に対応して投資や製品開発を進めている。
◎情報システム事業
通信分野でのソフトウエアの重要性が高まる中、1983年に事業をスタート。
システム開発から保守運用まで幅広いソリューションを展開している。なかでも仮想化(*)サーバの構築では業界屈指の技術を有し、クラウドコンピューティングの広がりに貢献している。
世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れており、Tier2からTier1.5への進化を目指している。
*仮想化とは?:1台のサーバ(物理サーバ)を複数台の仮想的なサーバ(仮想化サーバ)に分割して利用する仕組み。それぞれの仮想化サーバではOSやアプリケーションを実行させることができ、あたかも独立したコンピュータのように使用することが可能となる。
サーバ台数の適正化や消費電力を含めた運用管理コストの低減など、企業のITコスト見直しニーズに対応し、注目が集まっている。
また、仮想化環境下ではハードウェア等を新たに購入しなくても新サーバを容易に追加することができるため、ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応するというITシステムニーズに対する有効なソリューションの一つとなっている。
【1-4 特徴と強み】
①幅広い設計技術力
前述のように、同社のコネクタは、様々な分野で用いられている。
同社は、日本電信電話公社(現NTT)を始めとした多くの顧客からの様々なニーズに対応したカスタマイズによる製品作りに長年取り組んできた。この「顧客密着度の高さ」が、同社の幅広い設計技術力の源泉である。
②長期信頼性と堅牢性
制御装置に用いられる「1.27mmピッチコネクタ」、FTTH(Fiber To The Home:光通信のための光ファイバーを家屋内に引き込むこと)に用いられる「シャッター付きSC形プラグ」、プロジェクタに用いられる「高耐圧電源用コネクタ」などで強みを持っている。
これらは、顧客から長期信頼性や堅牢性が求められる分野であり、長年に亘って培ってきた同社の技術力や製造能力が顧客に高く評価されている証となっている。こうした強みを活かし、安全性という面でハードルの高い車載分野での売上を大きく伸ばしている。
③多品種少量生産
同社は現在約5,000品目のコネクタを生産しているが、このうちの月間生産個数が1万個未満の品目数は94%を占める。また生産金額ベースでも1万個未満の生産が62%、1万個以上が38%と、多品種少量生産が同社の特長となっている。
こうした状況に対応し、国内工場、海外工場の2つの車輪で最適なものづくりを行っている。
国内工場(安曇野工場:旧松本工場)は1万個未満の多品種少量生産の拠点。今後も同社の得意技を磨き、迅速な納入を行うため国内で稼動を続ける。
海外工場(深圳工場)は1万個以上の中量品の一気通貫生産を行い、機動力を高め世界で戦うための拠点とする。
加えて、ベトナムにも生産拠点を立ち上げ、車載関連中心に量産体制を構築した。
一方、多品種少量生産ながらも短納期を実現させ、顧客から発注を受けたら1週間以内での製品配送を確約する「1weekデリバリーサービス」に2013年から積極的に取組んでいる。
現在の取扱品目数はシステム化を進めた安曇野物流ハブの完成によりそれまでの倍にあたる約1,000品目に拡大している。
【1-5 ROE分析】
| 15/3期 | 16/3期 | 17/3期 | 18/3期 | 19/3期 | 20/3期 | 21/3期 | 22/3期 |
ROE(%) | 18.4 | 14.8 | 15.0 | 14.2 | 6.4 | 0.4 | 0.7 | 6.1 |
売上高当期純利益率(%) | 8.65 | 7.97 | 8.96 | 8.33 | 4.35 | 0.29 | 0.50 | 3.76 |
総資産回転率(回) | 1.39 | 1.30 | 1.22 | 1.24 | 1.09 | 0.97 | 1.02 | 1.20 |
レバレッジ(倍) | 1.53 | 1.43 | 1.37 | 1.37 | 1.35 | 1.31 | 1.31 | 1.36 |
原価低減や新製品開発によるマージンの向上に加え、在庫水準のコントロールによる総資産回転率の向上に引き続き取組んでいく。
2.2023年3月期第1四半期決算概要
(1)連結業績概要
| 22/3期1Q | 構成比 | 23/3期1Q | 構成比 | 前年同期比 |
売上高 | 4,204 | 100.0% | 5,419 | 100.0% | +28.9% |
売上総利益 | 734 | 17.5% | 1,077 | 19.9% | +46.7% |
販管費 | 647 | 15.4% | 728 | 13.4% | +12.5% |
営業利益 | 87 | 2.1% | 349 | 6.4% | +299.4% |
経常利益 | 114 | 2.7% | 501 | 9.2% | +337.2% |
四半期純利益 | 99 | 2.4% | 330 | 6.1% | +242.3% |
*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。
増収増益、拡大基調が続く
売上高は前年同期比28.9%増の54億19百万円。設備投資の活況により通信・FA・車載分野中心にコネクタ事業が伸長した。
営業利益は同299.4%増の3億49百万円。人件費増、物流費増、部材価格高騰などコスト増加を、増収・生産拡大・合理化に伴う売上総利益の増加で吸収し大幅な増益。
経常利益は同337.2%増の5億1百万円。
前期第4四半期に続き四半期売上高は50億円を超えた。対前期比では6.4%増収、21.1%営業増益。
(2)分野別売上動向
◎累計
| 22/3期1Q | 22/3期4Q | 23/3期1Q | 前年同期比 | 前期比 |
通信 | 682 | 785 | 882 | +29.3% | +12.4% |
FA | 1,139 | 1,474 | 1,534 | +34.7% | +4.1% |
民生 | 452 | 405 | 488 | +8.0% | +20.5% |
車載 | 1,229 | 1,577 | 1,846 | +50.2% | +17.1% |
情報システム | 702 | 849 | 670 | -4.6% | -21.1% |
合計 | 4,204 | 5,090 | 5,419 | +28.9% | +6.5% |
*単位:百万円
*通信分野:通信インフラ投資の好調が継続している。光コネクタの自動機導入で生産が拡大した。
*FA分野:生産の拡大により順調に伸長。足元も高水準の受注が継続している。
*民生分野:SDソケットの好調および円安効果により堅調に推移。
*車載分野:顧客の在庫政策もあり伸長。半導体不足や上海ロックダウン等の影響は不透明。
*情報システム分野:大型案件の延伸により前年同期、前期比とも減収。クラウド案件は拡大している。
(3)財務状態
◎主要BS
| 22年3月末 | 22年6月末 | 増減 |
| 22年3月末 | 22年6月末 | 増減 |
流動資産 | 12,752 | 13,184 | +432 | 流動負債 | 4,031 | 4,368 | +337 |
現預金 | 5,007 | 4,987 | -20 | 仕入債務 | 2,059 | 2,442 | +383 |
売上債権 | 4,709 | 5,017 | +308 | 短期借入金 | 177 | 203 | +26 |
棚卸資産 | 2,649 | 2,905 | +256 | 固定負債 | 532 | 528 | -4 |
固定資産 | 3,508 | 3,626 | +118 | 負債合計 | 4,563 | 4,896 | +333 |
有形固定資産 | 2,627 | 2,769 | +142 | 純資産合計 | 11,697 | 11,914 | +217 |
無形固定資産 | 289 | 265 | -24 | 資本金 | 1,501 | 1,501 | 0 |
投資その他の資産 | 591 | 592 | +1 | 利益剰余金 | 9,228 | 9,282 | +54 |
資産合計 | 16,261 | 16,811 | +550 | 負債純資産合計 | 16,261 | 16,811 | +550 |
*単位:百万円。売上債権には電子記録債権を、仕入債務には電子記録債務を含む。
売上債権、たな卸資産の増加などで資産合計は前期末比5億50百万円増加し168億11百万円となった。
仕入債務の増加などで負債合計は同3億33百万円増加の48億96百万円。
為替換算調整勘定の増加などで純資産合計は同2億17百万円増加の119億14百万円。
この結果、自己資本比率は前期末から1ポイント低下し70.9%となった。
3.2023年3月期業績予想
(1)業績予想
| 22/3期 | 構成比 | 23/3期(予) | 構成比 | 前期比 |
売上高 | 18,451 | 100.0% | 20,000 | 100.0% | +8.4% |
営業利益 | 875 | 4.7% | 1,400 | 7.0% | +59.9% |
経常利益 | 1,043 | 5.7% | 1,400 | 7.0% | +34.2% |
当期純利益 | 693 | 3.8% | 1,000 | 5.0% | +44.1% |
*単位:百万円
業績予想に変更なし、増収増益予想、配当予想を修正
業績予想に変更は無い。売上高は前期比8.4%増の200億円の予想。全分野で好調な需要が継続する。高水準の受注残も寄与。
営業利益は同59.9%増の14億円の予想。開発投資・人的投資の増加や調達価格上昇などのコスト増を合理化や価格改定で吸収する。
価格改定に関しては、前期は第4四半期に入ってからであったため、今期は前期以上に寄与するものと見ている。
自動化生産増により合理化効果も前期以上を見込んでいる。
ミネベアミツミ株式会社による株式公開買付けにより完全子会社となる予定のため、期末配当は行わない。
4.ミネベアミツミ株式会社による株式公開買付けについて
2022年7月29日、同日開催の取締役会において、ミネベアミツミ株式会社(6479、東証プライム上場)による本多通信工業の普通株式に対する公開買付けに関して、賛同する旨の意見を表明するとともに、同社株主に対して、本公開買付けへの応募を推奨する旨を決議した。
なお、この取締役会決議は、ミネベアミツミが、本公開買付け及びその後の一連の手続により、本多通信工業をミネベアミツミの完全子会社とすることを企図していること並びに同社株式が上場廃止となる予定であることを前提として行われたものである。
また、2021年10月28日付で公表した「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を撤回すること、2023年3月期の期末配当を行わないこと、株主優待制度を廃止することも決議した。
(1)公開買付け概要
①買付け等の価格:普通株式1株につき705円
②公開買付け期間:2022年8月1日~9月12日
(2)本多通信工業が買付けに賛同した背景
本多通信工業は、創業 100 周年(2032 年)ビジョンの実現に向けて、コネクタの製造面においては、従来以上に組立の自動化などによる生産性の向上やメッキ工程の内製化による更なる収益性改善等が必要であること、コネクタの販売面においては、海外拠点及び人材が不足しているため、海外販売網に限界があること、また、管理面においては、製造技術面や生産管理等での中核人材や営業面における海外人材の不足に課題があると認識している。
大株主であるパナソニック ホールディングス株式会社より人材の提供や海外販路などで支援を受けているものの、開発、製造、営業の各方面において相互に協力関係を構築し、パナソニックが、コネクタ市場での顧客満足度を高めることを企図した2008 年の資本提携当時とはパナソニックにおけるコネクタ事業の位置付けや方針が変わり、今後更なるシナジー効果を期待するには限界が生じている。
このような課題認識及び状況の下、同社としては、独力で企業価値を向上させる手法のみならず、戦略的パートナーとの提携により企業価値を向上させる手法の可能性についても模索してきた。
そうした中、ミネベアミツミ株式会社の株式公開買い付けに賛同し、ミネベアミツミの完全子会社となることは、主として以下のような点から、本多通信工業の企業価値向上に資するものであり、創業100周年ビジョンの達成に必要であるとの考えに至った。
①組立工程の全自動機等、本多通信工業が現在外作に頼っている設備機器の設計製作の内製化
②ミネベアミツミグループの製造における KPI 管理、生産の各工程での技術力活用による生産性向上・収益改善
③ミネベアミツミのメッキ工程・技術者の活用
④海外販売網の強化
⑤人材交流・人材派遣
⑥海外拠点利用
株式の非公開化に伴うデメリットとしては、資本市場からのエクイティ・ファイナンスによる資金調達を行うことができなくなること、知名度や社会的信用の向上といった上場会社として享受してきたメリットを以後享受できなくなることが挙げられるものの、エクイティ・ファイナンスによる資金調達については、ミネベアミツミグループの資金支援により代替可能であること、また、知名度や社会的信用についても、本多通信工業として真摯な事業遂行を継続することにより維持することが可能であり、かつ、ミネベアミツミグループの傘下に入ることで、同グループが有する知名度や社会的信用も得られることからすれば、本多通信工業における株式の非公開化に伴うデメリットは限定的であると同社では考えている。
(3)本多通信工業株式会社 代表取締役社長 樫尾 欣司氏のコメント
当社は現在推進している経営計画において、基本戦略として「Society5.0で拡大する“つなぐ”市場に、新商品をスピーディに創出」を掲げ、25年度(26年3月期)での過去最高売上/営業利益の更新を狙っています。また、より長期の視点に立った2032年に向けた「創業 100 周年ビジョン」の実現を目指しています。
そのため、中心的な施策として、コネクタ事業における新商品創出・新規顧客開拓、情報システム事業における新ビジネス創出に全社挙げて取り組んでいます。
ただ、一方で当社を取り巻く事業環境の変化は大きく、そのスピードも想像を上回るものであり、当社が現在保有するリソースのみでは、スピードを伴った施策の実行は難しいのが実情です。
そうした中、ミネベアミツミ株式会社は、車載用コネクタにおける高シェアに代表されるコネクタ事業における当社の技術力や製品ラインアップを高く評価し、当社に対し株式公開買付けおよび完全子会社化による同社グループ入りを提案してきました。
当社ではこの申し出に対し、様々な角度から検討を重ねた結果、同社の完全子会社となってミネベアミツミのリソースを活用することが当社の企業価値を向上させ、目指すべき姿を実現させるために最適な選択であると判断いたしました。
これは、従業員を始めとしたお客様、お取引先など、当社のステークホルダーにとっても大変好ましいものであると考えております。また、株主の皆様に対しては、本公開買付への応募を推奨申し上げるとともに、これまで厳しい環境下でも応援いただいてきたことに対し、改めて厚く御礼申し上げます。
当社は非上場企業となりますが、ミネベアミツミグループの一員としてこれからも成長を追求して参りますので、引き続きご注目いただきたいと存じます。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役設置会社 |
取締役 | 8名、うち社外3名 |
監査役 | 3名、うち社外2名 |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2022年6月27日
<基本的な考え方>
コーポレートガバナンス基本方針に定めています。(https://www.htk-jp.com/csr/governance.html)
(コーポレートガバナンスの基本的な考え方)
第1条 当社は、常に最適なコーポレートガバナンスを追求し、その充実に継続的に取り組む。
2.当社は、当社の持続的な成長及び長期的な企業価値の向上を図る観点から、意思決定の透明性・公正性を確保するとともに、保有する経営資源を十分有効に活用し、迅速・果断な意思決定により経営の活力を増大させることがコーポレートガバナンスの要諦であると考え、次の基本的な考え方に沿って、コーポレートガバナンスの充実に取り組む。
(i) 株主の権利を尊重し、平等性を確保する。
(ii) 株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーと適切に協働する。
(iii) 会社情報を適切に開示し、透明性を確保する。
(iv) 独立社外取締役および独立社外監査役に業務執行状況や取締役会決議事項等を丁寧に説明することにより的確な助言を得、業務執行の監督機能を実効化する。
(v) 中長期的な株主の利益と合致する投資方針を有する株主との間で建設的な対話を行う。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
2021年6月改定後のコードの各原則についてすべてを実施しています。
<【コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
原則 | 開示内容 |
<原則1-4>
| 当社は、株価変動の影響を受けにくい強固な財務基盤の構築や資本効率性の向上の観点から、政策保有株式を原則として保有しないことを基本方針としています。ただし、業務提携その他経営上の合理的な理由から保有する場合には、目的に応じた保有であることを検証の上、合理性を定期的に確認します。 |
<原則2-3-1> | サステナビリティ委員会を設置し、その内容は都度取締役会に報告されています。また、経営計画にサステナビリティに関する内容を盛込み、統合報告書にもサステナビリティについて開示しています。 |
<原則2-4-1> | 〇多様性の確保について 当社は、持続的成長を実現するため多様性の確保が重要と認識しています。企業理念の価値観・行動規範である8Valuesの一つとして「創発価値」を定め、互いの違いを尊重して力を合わせることを重視し、人材・働き方・雇用におけるダイバーシティに取り組んでいます。 採用や管理職登用においては機会均等性を確保し、ジェンダー・人種・国籍などは問わずに人物本位で実施しています。女性の割合が少ない業種であることから、現状国内コネクタ事業における女性従業員の割合は2割弱、女性管理職比率は7%です。また、当社グループの取引先は日系企業が多くを占めており、海外拠点も少ないことから、外国人の割合は極めて少ない状況です。一方で、当社は2032年(創業100周年)に向けて事業の拡大を計画しており、この達成のためには中核人材の多様性確保や人材育成が重要課題であると認識しています。 このような状況を踏まえて、2032年に向けた中核人材の多様性確保に係る目標を以下の通り設定しています。 ・女性管理職比率:7%から14%へと2倍に ・中途採用者比率:20%から30%へ ・管理職における中途採用者の比率:30%以上を維持(現状32%) なお、外国人の管理職比率については、現時点では比率が大きくないため定めませんが、今後の企業規模や事業戦略に応じて設定します。 これらの目標に向けて、多様性の確保を意識した採用、働き方改革、職場環境整備をすすめるとともに、健康経営の推進、人材育成の強化、マネジメントの意識改革に継続して取り組みます。 ○多様性確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針について 当社は、多様性確保に向けて人材育成と社内環境の整備を推進すべく、サステナビリティの取組みの重点テーマに「人材力の強化」と「働きやすさと働きがいの追求」を設定しています。 具体的な取組みについては、統合報告書に記載しています。 |
<原則3-1-3> | 〇サステナビリティの取組みについて 経営計画にサステナビリティの取組みを織り込むとともに、統合報告書に詳細を記載しています。 〇知的財産・人的資本への投資について 当社は、Society5.0に向けて多様化・拡大する“つなぐ”ニーズに対して、スピーディに新商品を創出することを経営戦略の根幹に据えており、本内容を実践するためには、提案から量産までの開発スピードの向上と今後さらに高まる高速伝送ニーズへの対応が重要と考えています。 当社は、長年蓄積した設計技術・ノウハウの磨き上げ、高速伝送に不可欠なEMCに関する要素技術や光接続技術の研究開発を推進するとともに、全ての事業活動のベースとなる人材の強化に取り組んでいます。 新商品および技術開発の具体的な内容および投資額の計画・実績については、有価証券報告書や決算説明等において開示しています。 人的資本への投資については、サステナビリティの取組みの人材に関する重点テーマとして「人材力の強化」「働きやすさと働きがいの追求」「健康経営の推進」を設定しています。具体的な取組みや目標等については統合報告書をご参照ください。 なお、当社ビジネスの多くはカスタマイズ商品の開発が主であり、必要に応じ権利侵害を防止することを目的に特許権や意匠権を取得しています。 〇気候変動に係る開示について 当社は2021年に中長期視点でサステナビリティに関する各方針・目標・施策等を検討する「サステナビリティ委員会」を設置し、気候変動に係るリスクや機会についての検討を進めています。2021年7月にはTCFD提言に賛同し、 TCFDの枠組みに沿った分析をサステナビリティ委員会において進めています。 当該内容については、統合報告書等で段階的に開示を充実させます。 GHGについては、2030年までに2013年度比で38%以上の削減、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目標に設定しています。 |
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