ブリッジレポート:(4549)栄研化学 2022年3月期決算
納富 継宣 社長 | 栄研化学株式会社(4549) |
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会社情報
市場 | 東証プライム市場 |
業種 | 医薬品(製造販売業) |
代表取締役社長 | 納富 継宣 |
所在地 | 東京都台東区台東4-19-9 山口ビル7 〒110-8408 |
決算月 | 3月末日 |
HP |
株式情報
株価 | 発行済株式数 | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
1,613円 | 43,541,438株 | 70,232百万円 | 14.3% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
35.00 | 2.2% | 97.66円 | 16.5倍 | 1,230.55円 | 1.3倍 |
*株価は6/20終値。各数値は22年3月期決算短信より。
業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | DPS |
2019年3月(実) | 35,761 | 4,611 | 4,681 | 3,447 | 93.63 | 30.00 |
2020年3月(実) | 36,585 | 4,622 | 4,723 | 3,538 | 95.95 | 30.00 |
2021年3月(実) | 38,667 | 6,612 | 6,808 | 5,044 | 136.65 | 41.00 |
2022年3月(実) | 42,996 | 8,387 | 8,508 | 6,218 | 168.28 | 51.00 |
2023年3月(予) | 40,000 | 4,540 | 4,570 | 3,610 | 97.66 | 35.00 |
*単位:円、百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
栄研化学株式会社の2022年3月期決算概要、新中期経営計画などをご紹介致します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期決算概要
3.2023年3月期業績予想
4.「EIKEN ROAD MAP 2030」と新中期経営計画
5.納富社長に聞く
6.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>
今回のポイント
- 22年3月期の売上高は前期比11.2%増の429億円。各種検診・スクリーニングプログラムの再開や外来患者数の回復傾向及び第4四半期に入り新型コロナウイルスの感染拡大に伴い検出試薬の需要が増加した。海外売上高は便潜血検査試薬中心に大幅に伸長。営業利益は同26.8%増の83億円。新型コロナウイルス検出試薬を中心に売上総利益が同11.0%増加。一方、営業活動がコロナ禍に於いて自粛せざるを得ず販売費は小幅な増加となった。
- 7月以降の国内感染再拡大に伴い、新型コロナウイルス検査試薬の需要が予想を上回って拡大したことに加え、経費が予想を下回ったことから、売上・利益とも期初予想を上回った。良好な業績を受け、期末配当を10円/株増配の31円/株とし、22年3月期の配当を前期比10円/株増の51円/株とした。配当性向は30.3%。
- 23年3月期の売上高は前期比7.0%減の400億円、営業利益は同45.9%減の45億40百万円と減収減益の予想。新型コロナウイルス感染症の遺伝子検査(新型コロナウイルス検出試薬)の需要は前期からは大きく減少することを想定している。また、高収益の新型コロナウイルス検出試薬の売上及びLAMP法の特許権収入の減少のほか、研究開発投資や経営基盤整備のための投資による費用増により減益を見込んでいる。配当は前期比16円/株減の35円/株を予想。予想配当性向は35.8%。
- 事業を取り巻く環境変化に対応するとともに、サステナビリティ経営の視点を取り込むため、経営構想「EIKEN ROAD MAP 2019」を見直し、2030 年をゴールとして、新たに「EIKEN ROAD MAP 2030」として再定義した。加えて、ゴールに向けた最初の中期経営計画を策定した。現在の事業領域を中核事業としつつ、注力事業分野として「がんの予防・治療への貢献」「感染症撲滅・感染制御への貢献」「ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供」の 3 分野を設定している。
- 今期は減収減益予想であるが、前期、前々期は新型コロナウイルス感染症検査薬が大幅に増大し、今期以降は同感染症沈静化に伴う需要の反動減が避けられないのは、致し方ないところであろう。ただ、コロナ禍前5年間と、コロナ禍後中期経営計画最終年度までの5年間のCAGR(Compound Annual Growth Rate、年平均成長率)を比較すると、どちらも3%強と大きな違いはない。
- 一方で、コロナ禍沈静化により従来の検査・検診数は回復基調にあり、特に便潜血検査試薬の海外における伸びは著しい。今期予想を受け株価も今年に入り下落基調となっているが、同社成長の巡航速度に大きな変化はなく、その後は成長スピードの加速を計画している点を留意すべきであろう。「EIKEN ROAD MAP 2030」のビジョン実現に向けた各種施策の進捗に期待したい。
1.会社概要
臨床検査の内、免疫血清検査、微生物検査、生化学検査、尿検査、遺伝子検査など、人体から採取した試料(検体)を調べる臨床検査薬の総合メーカー。検査機器の開発・販売も行っている。
国内シェア60%以上の便潜血検査を始め、尿検査や微生物検査など他社にはない独自技術・ノウハウを利用した高シェア製品多数。また独自開発の遺伝子増幅技術「LAMP法」は世界的に高い評価を得ている。便潜血検査、尿検査とLAMP法などの独自技術を武器にグローバル企業への成長を目指している。
【1-1 沿革】
1939年、興亜化学工業(株)として創立し、家畜臓器を原料とした栄養食品および医薬品の製造販売を開始し、1949年には日本で初めて細菌検査用粉末培地(SS寒天培地)の製品化に成功。1961年に臨床検査部門を開設し、臨床検査薬の研究開発を開始した。
1989年には便潜血検査において世界初の全自動分析装置「OC-センサー」を発売。同分野における現在の圧倒的なポジショニング構築につながっていく。
その後も、尿検査用試薬や微生物検査用試薬など事業ドメインを拡大するとともに、1998年に新規遺伝子増幅技術LAMP法を開発。従来の検査法に比べ簡易・迅速・精確なLAMP法を用いた各種製品を上市している。
2005年には「FIND(Foundation for Innovative New Diagnostics)」とLAMP法を利用した結核の遺伝子迅速検査法の共同開発契約を締結したことを皮切りに、マラリア、HIV等の検査に関する共同開発を進める。
全世界で感染拡大が進む新型コロナウイルスに対しても、2020年3月にLAMP法を利用した新型コロナウイルス検出用試薬を発売した。
*LAMP法、FINDについては「2.特徴と強み④LAMP法の優位性」を参照
【1-2 経営理念】
*経営理念:「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」
*経営ビジョン:「EIKENグループは、人々の健康を守るために、検査のパイオニアとしてお客様に信頼される製品サービスを提供し、企業価値の向上を図ります。」
*モットー:「品質で信頼され、技術で発展する“EIKEN”」
これらを中心に各ステークホルダーへの考え方として、EIKEN WAYを策定している。
(同社資料より)
【1-3 市場環境】
<国内市場>
臨床検査薬市場は、2020年度で約3,470億円、研究用試薬と検査用機器を含めると約6,047億円(一般社団法人日本臨床検査薬協会調査。栄研化学提供データ)となっている。行政は増大している医療費を抑制するために特定健診(メタボ健診)やがん検診の受診率向上やOTC検査薬(薬局で購入できる検査薬)の規制緩和といった予防医療に力を入れており、今後、高齢化の進展と共に臨床検査数(検体数)の増加が見込まれる。
一方でマイナス面としては、価格競争による単価の低下、診療報酬改定(引き下げ)及び長期的には少子化による人口減少がある。ただ、診療報酬改定の対象である保険(検体検査実施料)の推移を見ると、1997年から2006年までの期間に約4割引き下げられたものの、その後はほぼ横ばいないし微減となっている2020年度検体検査実施料 -1.12%)。これは同社の含めた業界全体として予防、検査の重要性を働きかけた結果という事で、中期的には国内市場は年率2%程度の微増傾向が続くと思われる。
前述の協会会員139社(2021年4月時点)の内メーカーは約80社で、売上100億円以上の企業は15社程度となっており、大多数は中堅・中小企業という構造。臨床検査は検査項目が多岐にわたっているため企業ごとに得意とする分野が異なり、企業間での棲み分けが出来ている。そのため、他社から原料・製品を仕入れて製造・販売するといった業務提携が多く見られる。また、そうした棲み分けが出来ている中、市場は小幅ながらも拡大しているため、明確な淘汰は現在のところ起きていないということだ。
<海外市場>
2018年の世界の検体検査薬・機器市場は約672億USDといわれており、地域別構成比は米国36%、欧州28%、アジア24%などとなっている。(富士経済「2019年World Wide臨床検査市場」栄研化学提供)
市場規模自体が国内市場の10倍超と巨大であると同時に、先進国では高齢化の進展に伴う検査数の増加、また新興国においては経済成長、所得増加に伴う医療ニーズの拡大などにより、年率5%以上と国内市場を大きく上回る成長が見込まれるため、国内企業は積極的にグローバル化を進めている。
ただ、グローバル市場においては、2019年の売上高614億ドルのロシュを筆頭に、アボット、シーメンス、ベックマンなど世界的大企業がメインプレーヤーとなっており、日本企業が競争に勝ち抜くためには独自性のある製品・システムの開発など競争力強化が不可欠である。
【1-4 事業内容】
1.臨床検査とは
臨床検査には、レントゲン、CT、MRI、心電図、超音波など、医療機器を使用して体を直接調べる「生体検査」と、患者から採取した血液、尿・便、細胞などの生体試料(検体)を調べる「検体検査」がある。
同社が取り扱う臨床検査薬とは、検体検査に使用する試薬の事で、例えば感染症の検査や便に含まれる微量の血液の測定など、病気の診断をサポートするもの。これら試薬の大部分は体外診断用医薬品と呼ばれ、医薬品医療機器等法の規制を受け、試薬メーカーなどがPMDA(医薬品医療機器総合機構)に対し申請し、認可を受けたものである。ユーザーは、病院、医院、診療所、受託を受けて検査を行う検査センター、健診センター、保健所、衛生検査所など。
2.主力製品
主として以下の各検査用試薬や測定装置を製造・販売している。
同社は幅広い検査薬を取り扱うために、自社製品に加え他社製品の仕入販売も行っている。
主要な自社製品は、便潜血検査用試薬、微生物検査用試薬、免疫血清検査用試薬、尿検査用試薬、遺伝子検査用試薬など。自社製品と他社製品の売上比率は約60:40。粗利率は自社製品が約55%、他社製品が約35%。
製品名 | 売上高 | 売上構成比 |
便潜血検査用試薬 | 11,233 | 26.1% |
免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く) | 9,359 | 21.8% |
尿検査用試薬 | 3,783 | 8.8% |
微生物検査用試薬 | 3,924 | 9.1% |
生化学検査用試薬 | 599 | 1.4% |
器具・食品環境関連培地 | 2,252 | 5.2% |
遺伝子(LAMP法)関連(機器含む) | 7,445 | 17.3% |
医療機器関連(遺伝子関連機器を除く) | 4,396 | 10.2% |
売上高合計 | 42,996 | 100.0% |
*2022年3月期実績。単位:百万円
便潜血検査用試薬
大腸がんのスクリーニング検査として糞便中ヒトヘモグロビンを特異的に検出・測定する便潜血検査用試薬・採便容器を主力製品とし、グローバルに販売している。
免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く)
リウマチや炎症性疾患の診断及び胃がんリスク層別化検査(ABC分類)に使用する汎用自動分析装置用試薬「LZテスト‘栄研’」を始め、各種検査用試薬の開発、製造、販売を行っている。また東ソー(株)から、全自動エンザイムイムノアッセイ装置用試薬及び自動グリコヘモグロビン分析装置用試薬を導入・販売している。
尿検査用試薬
尿中の潜血、たんぱく質、ブドウ糖など多項目の検査が行える尿検査用試験紙「ウロペーパーⅢ‘栄研’」、全自動尿分析装置用には専用試験紙の「ウロペーパーαⅢ‘栄研’」などを開発・製造・販売している。
また、海外については、2017年よりシスメックス株式会社と業務提携し、販売行っている。
微生物検査用試薬
同社は創立以来、感染症及び食中毒の予防を目的とし、生体試料や食品・環境の微生物検査用試薬を開発してきた。現在では、各種細菌検査用培地(増菌用培地、分離用培地、生物学的性状検査用培地、同定検査用培地)、薬剤感受性検査用試薬、迅速検査試薬など、微生物感染症の診断・治療に有用な各種検査用試薬を開発・製造・販売している。
生化学検査用試薬
生活習慣病との関連性が注目されている検査項目を中心に、血清や尿を検体とし生体成分を測定・分析する「エクディアXL ‘栄研’」シリーズなど、生化学検査用自動分析装置に対応する各種検査用試薬を開発・製造・販売している。
器具・食品環境関連培地
食中毒原因微生物の検査などの食品微生物検査用試薬や作業環境の汚染実態などを把握できる環境微生物検査用試薬及び検査用器具・器材の販売を行っている。
遺伝子(LAMP法)関連
同社は1998年、新規遺伝子増幅技術LAMP法を独自開発し、このLAMP法を利用した遺伝子検査用試薬を開発・製造・販売している。このLAMP法は、「簡易、迅速、精確」という特徴を有しており、今後の国内及びグローバル展開のための大きな武器となっている。(詳細は後述)
医療機器
各種自動分析装置を販売している。自社試薬を使用する専用装置は製造委託を行っている。便潜血測定装置「OCセンサー」は1989年の発売以来、技術革新と品質向上を重ねている。また、独自技術である画像処理システムを使用した尿自動分析装置「US」、臨床検査分野で世界初となる全自動生物化学発光免疫測定装置「BLEIA-1200」、LAMP法リアルタイム濁度測定装置「LoopampEXIA」など取り揃えている。
3.販売体制
国内の販売体制は10営業部。学術部門が販売促進の支援を行っている。
2022年3月期の全従業員745名(連結)中、約300名が営業部門。
ユーザーである病院など医療機関向けチャネルに関する直接の販売先は医療系卸会社で、殆ど全ての卸会社と取引を行っている。
海外販売においては、基本的に1か国・1代理店体制をとっており、販売とメンテナンスを委託しており、本社の海外事業室が管理している。輸出先は43ヵ国(2021年3月期)。米国、ドイツ、イタリア、スペイン、イングランド、フランス、オーストラリア、韓国、台湾が海外売上の大半を占めている。アムステルダム(オランダ)に欧州支店があるほか、中国に関しては連結子会社「栄研生物科技(中国)有限公司」での生産・販売体制の強化を行う他、中国事業室を設置しビジネス拡大を図っている。今後は規模拡大に伴い現地法人化も検討していく。
2022年3月期の海外売上高は88億68百万円。うち便潜血検査用試薬は51億84百万円で構成比は58.5%。
【1-5 ROE分析】
| 13/3期 | 14/3期 | 15/3期 | 16/3期 | 17/3期 | 18/3期 | 19/3期 | 20/3期 | 21/3期 | 22/3期 |
ROE(%) | 10.9 | 8.3 | 8.3 | 8.9 | 10.0 | 8.3 | 10.3 | 9.9 | 12.9 | 14.4 |
売上高当期純利益率 | 8.56 | 6.61 | 6.77 | 7.55 | 8.77 | 7.45 | 9.64 | 9.67 | 13.04 | 14.46 |
総資産回転率 | 0.84 | 0.84 | 0.83 | 0.83 | 0.80 | 0.78 | 0.77 | 0.75 | 0.73 | 0.73 |
レバレッジ | 1.52 | 1.50 | 1.47 | 1.42 | 1.43 | 1.43 | 1.38 | 1.36 | 1.35 | 1.36 |
*単位:%、回、倍
22/3期の売上高当期純利益率上昇は前期に続き新型コロナウイルス検出試薬及び便潜血検査試薬の伸長などで上昇した。
引き続き高付加価値製品の開発、新規事業・新規市場の創出及び原価率及び販管費率の低減による利益率及び生産性向上を一段と強化し、資本コストを上回るROEを維持していく考えだ。
【1-6 特徴と強み】
①高シェアの製品群
便潜血検査用試薬の国内シェアは63%でトップであるほか、尿検査用試薬で約27%(2位)、微生物検査用試薬で約16%(4位)等と他社にはない独自技術・ノウハウを利用した多くの自社製品において高いシェアを有している。同社が便潜血検査用試薬で高いシェアを獲得することができた背景としては、1987年に発売した目視判定法用の便潜血検査用試薬「OC-ヘモディア」が、競合品に比べユーザーニーズに合致した製品であったこと、1989年には測定原理に免疫法(ラテックス凝集法)を採用し世界初の全自動分析装置「OC-センサー」を発売したことである。
また、便潜血検査は1992年に老人保健法の改正が行われ、大腸がん検診のスクリーニング検査法として公費で受診が可能(受診者負担が無料)になったのをきっかけに、普及が加速し競争が激しくなったが、同社は、機能を一新した「OC-センサーneo」を2001年に発売し、シェアを拡大してきた。
(同社資料より)
便潜血検査に関してはこの特徴を活かして海外展開を進めている。
日本で実施されている免疫法は、ヒトの血液のみ反応する試薬となっており、また、自動化装置による大量処理が可能である。
一方海外では化学法による古いタイプの試薬が使用されており、精度面に課題がある。2011年になりようやく欧州の検診ガイドラインで免疫法による自動装置測定が推奨され、大きな市場の変化が現れ始めた。
また、市場が最も大きいアメリカでも化学法が主流であるが、徐々に免疫法へのシフトが始まっており、USPSTF(米国予防医療特別委員会)の大腸がんスクリーニングに関する新ガイドラインが2016年6月に発行されたが、その中で従来の化学法ではなく免疫法が優れていると指摘されたことに加え、同社の便潜血検査製品『the OC FIT-CHEK family of FITs』が、高い感受性と特定性で最高の検査パフォーマンスを有していると評価された。さらにアジア、南米の先進国・新興国には未開拓な大きな市場が控えている。
便潜血検査市場は、ニッチな市場であるため、いち早く免疫法を開始した日本企業の技術が最も進んでおり、同社の試薬・装置がグローバルスタンダードとなっている。
②研究開発に注力
研究開発型企業として独自性のある技術の研究開発と、それをベースとした顧客ニーズに対応したオリジナル製品の開発に注力している。研究開発要員は約150名。
顧客の要望は医療のクオリティ向上。具体的には、高感度・高品質による疾患の鑑別精度の向上、検出率の改善といった点が挙げられる。加えて、使用法が簡便であれば医療従事者の負荷軽減につながるため、そうしたニーズへの対応も重要なポイントとなっている。
同社は、1939年の創業以来培ってきた試薬製造の独自技術が蓄積されており、またその試薬の性能を有効に活用するための装置に関しても、便潜血検査用装置や尿自動分析装置、生物化学発光免疫測定装置(BLEIA法)、遺伝子検査などで他社にはない独自技術が用いられている。
③アライアンス戦略による多品種・多分野展開
臨床検査薬はその対象、項目は多岐にわたり、すべてを自社で開発・製造・販売を手掛けることは困難である。同業他社の多くは自社の得意な技術・製品に絞っているが、同社は臨床検査薬の総合メーカーとして、収益構造の安定化をめざし、アライアンス戦略を通じて自社の有する強みの拡大、機能の補完、新技術の取得といったシナジー効果を追求しつつ、広範に取扱製品を揃え、医療機関を始めとした顧客、ユーザーのニーズに対応している。
多品種・多分野に展開しているもう一つの理由としては、経営理念「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」にあるように国民の健康を守るという責務を達成するためには、幅広い臨床検査に対応することが企業としての社会的責任であるとの想いも根底にある。
④「LAMP法」の優位性
遺伝子検査の中の過程の一つである遺伝子増幅プロセスにおける現在の主流技術は「PCR法」と呼ばれるもの。これに対し同社は1998年「LAMP法」という独自技術を開発した。
「LAMP法」はPCR法と比較して、以下の様な優れた特徴を持ち、簡易で迅速に特異性の極めて高い遺伝子検査を行うことが出来るものである。
簡易 | 一定温度で増幅反応が進む。(PCR法は増幅に温度変化が必要) |
迅速 | 増幅効率が高く30~60分で検出可能。(一般的なPCR法は2~3時間)。 |
精確 | 特異性が極めて高い。 |
現在、医療分野では感染症検査である新型コロナウイルスや結核、マイコプラズマ(真正細菌の一属で、肺炎の原因となることもある。)、レジオネラ、百日咳等の検査に使われている。
同社はLAMP法の地位確立のため感染症検査に注力すると同時に、LAMP法の普及・認知度向上のために、畜産・水産、食品・環境など医療以外の分野での利用を推進しており、実際にLAMP法に基づく製品は2002年以降次々と実現している。
また同様の目的から、LAMP法陣営構築のために外部に対し積極的なライセンス許諾を行っている。
LAMP法を世界的に普及させるための中心的な取り組みの一つが、「FIND」とのアライアンスである。
「FIND」は「Foundation for Innovative New Diagnostics」のことで、2003年5月に開催された国連の世界保健会議の場で設立されたスイス政府認可の非営利財団。当初5年間、Bill & Melinda Gates Foundationからの助成金を受けて活動を本格化している。途上国における感染症撲滅のために、手頃な価格で、取り扱い易く、先進的な検査・診断方法を開発・導入する事を活動の目的としている。
FINDでは対象とする感染症として、結核、マラリア、アフリカ睡眠病などを上げているが、このうち結核について途上国で実施されている顕微鏡検査(塗沫検査)よりも精度を向上させることを目的として、LAMP法による結核検査の共同研究が同社とFINDによって2005年7月より開始された。
途上国の現場でも利用できるように、前処理工程の簡略化(PURE法)、試薬保存方法の改良(室温保存)、装置の簡略化など、PCR法では実現できない改良が加えられた(TB-LAMP)。LAMP法を利用したこの製品は2011年に日本で既に販売となっている。その後、WHO(World Health Organization、世界保健機関)の推奨獲得のために、途上国14ヵ国での評価試験を終了し、WHOに資料を提出していたが、2016年8月、顕微鏡検査に代わる、あるいは顕微鏡検査を補強する検査としてWHOの推奨を取得することができた。
WHOが2017年11月に発表した世界の結核に関する報告書によれば、2016年の世界202カ国における結核の罹患患者数は1,040万人で、2014年の960万人から80万人増加し、死亡者数は170万人で、2014年の150万人から20万人増加したという。そのほとんどが未診断例や未治療例と見られ、「診断や治療へのアクセスが整備されていない国での対策強化が必要」としており、TB-LAMPの普及、浸透はこうした問題解決に大きく貢献するものと同社では考えている。
加えて、結核以外にも前述の疾病のほか、リーシュマニア症及びシャーガス病の検査薬に関して、FINDと共同開発を進めている。
また、同社ではLAMP法を利用した次世代の小型全自動遺伝子検査装置および多項目検査チップによる検査システム「Simprova(シンプローバ)」の開発を完了し、2020年4月から発売を開始した。現在は、装置の海外製造委託先における供給面の課題から、国内製造委託先に変更中であり、新たな販促を一時的に見合わせている。
本装置は、検体前処理(核酸抽出・精製)から増幅・検出までを全自動で行え、従来の高純度な核酸抽出・精製を行う装置と増幅・検出装置で合わせて2時間以上を要していた操作時間を、LAMP法の特徴を活かした独自プロトコルの開発により、1時間以内に短縮することが可能。まず、呼吸器感染症パネルの発売を開始、次いで抗酸菌症パネル、呼吸器ウイルスパネルの発売を予定し、順次検査項目を拡大する。
同社では、「Simprova(シンプローバ)」はLAMP法の普及を加速させるとともに、新たな市場を構築した中でグローバルスタンダードとしての地位を確立させるものと期待している。
*遺伝子増幅法
遺伝子検査では、検体に含まれる目的の遺伝子量が極めてわずかなため、遺伝子を検出するためにはまず目的とする遺伝子を増幅させなければならず、遺伝子検査において最も重要なポイントが遺伝子増幅となる。
*アフリカ睡眠病
熱帯アフリカの風土病で、トリパノソーマという原虫がヒトに感染して引き起こす重大な熱帯病。ツェツェバエが媒介する。ヒトの血液中のトリパノソーマがツェツェバエに吸血され、その体内で発育、増殖し2~5週で終末トリパノソーマ型となって次の感染源となる。高熱、頭痛、嘔吐などをきたし、ひたすら眠るようになる。食事が摂れなくなるので痩せ、全身衰弱となり、多くは合併症を引き起こして死亡する。
*リーシュマニア症
リーシュマニアという原虫の感染によって引き起こされ、黒熱病といわれる内臓リーシュマニア症、皮膚と粘膜をおかすブラジルリーシュマニア症、皮膚をおかす熱帯リーシュマニア症があり、いずれも吸血昆虫、とくにサシチョウバエが媒介する。内臓リーシュマニア症は約3か月の潜伏期の後、高熱、発汗や下痢が生じ、1か月ぐらいすると肝臓と脾臓が腫れ、貧血が進み、放置すると衰弱し、半年から2年で死亡することもある。
*シャーガス病
米国南部や中南米において哺乳類吸血性であるオオサシガメ亜科のサシガメを媒介とする感染症。すぐには発病せず、一般的に30年ほどの潜伏期間がある。リンパ節、肝臓、脾臓などの腫脹、筋肉痛、心筋炎、心肥大、脳脊髄炎、心臓障害といった症状をもたらす。
【1-7 株主還元】
株主に対する利益還元を経営の最重要課題のひとつと位置づけたうえで、財務体質の強化と積極的な事業展開に必要な内部留保の充実を勘案し、安定した配当政策を実施することを基本方針としている。連結配当性向30%以上を目標としている。
22年3月期の配当性向は30.3%、23年3月期は35.8%を予想している。
2.2022年3月期決算概要
(1)連結業績概要
| 21/3期 | 構成比 | 22/3期 | 構成比 | 前期比 | 予想比 |
売上高 | 38,667 | 100.0% | 42,996 | 100.0% | +11.2% | +6.4% |
国内 | 31,772 | 82.2% | 34,128 | 79.4% | +7.4% | +9.0% |
海外 | 6,895 | 17.8% | 8,868 | 20.6% | +28.6% | -2.4% |
売上総利益 | 18,526 | 47.9% | 20,572 | 47.8% | +11.0% | - |
販管費 | 11,914 | 30.8% | 12,184 | 28.3% | +2.3% | - |
営業利益 | 6,612 | 17.1% | 8,387 | 19.5% | +26.8% | +31.7% |
経常利益 | 6,808 | 17.6% | 8,508 | 19.8% | +25.0% | +32.3% |
当期純利益 | 5,044 | 13.0% | 6,218 | 14.5% | +23.3% | +26.7% |
*単位:百万円
2ケタの増収増益。予想も上回る。
売上高は前期比11.2%増の429億円。各種検診・スクリーニングプログラムの再開や外来患者数の回復傾向及び第4四半期に入り新型コロナウイルスの感染拡大に伴い検出試薬の需要が増加した。海外売上高は便潜血検査試薬中心に大幅に伸長。
営業利益は同26.8%増の83億円。新型コロナウイルス検出試薬を中心に売上総利益が同11.0%増加。一方、営業活動がコロナ禍に於いて自粛せざるを得ず販売費は小幅な増加となった。
7月以降の国内感染再拡大に伴い、新型コロナウイルス検査試薬の需要が予想を上回って拡大したことに加え、経費が予想を下回ったことから、売上・利益とも期初予想を上回った。
良好な業績を受け、期末配当を10円/株増配の31円/株とし、22年3月期の配当を前期比10円/株増の51円/株とした。配当性向は30.3%。
(2)製品別売上高
製品名 | 21/3期 | 22/3期 | 前期比 |
便潜血検査用試薬 | 9,632 | 11,233 | +16.6% |
免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く) | 9,117 | 9,359 | +2.7% |
尿検査用試薬 | 3,380 | 3,783 | +11.9% |
微生物検査用試薬 | 3,989 | 3,924 | -1.6% |
生化学検査用試薬 | 594 | 599 | +0.8% |
器具・食品環境関連培地 | 2,125 | 2,252 | +6.0% |
遺伝子(LAMP法)関連(機器含む) | 6,390 | 7,445 | +16.5% |
医療機器関連(遺伝子関連機器を除く) | 3,437 | 4,396 | +27.9% |
売上高合計 | 38,667 | 42,996 | +11.2% |
*単位:百万円
○便潜血検査用試薬
国内は前期比6.1%増。海外は同31.9%増。各国とも新型コロナウイルス感染症拡大によって中断していた各検診プログラムが再開された。特に前年同期に低調だった海外の伸びが顕著であった。
ただ、下期は上期比で国内・海外とも減収。
| 21/3期 | 22/3期 | 前期比 |
国内 | 5,703 | 6,049 | +6.1% |
海外 | 3,929 | 5,184 | +31.9% |
合計 | 9,632 | 11,233 | +16.6% |
*単位:百万円
○免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く)および
外来患者数が回復傾向にあり増収。
○尿検査用試薬
健診市場・外来患者数とも回復傾向で、シスメックス(株)向け販売が増加した。
○微生物検査用試薬
新型コロナウイルス検査の影響を受け、その他の感染症検査数減少により減収。
○遺伝子(LAMP法)関連
新型コロナウイルス検出試薬の売上が大幅に伸長した。
TB-LAMP、結核撲滅のためのアクションプログラムを各国で継続して実施した。
LAMP法を用いた検査試薬の安定供給およびグローバル展開により、新型コロナウイルス感染症対策への貢献に努める考えだ。
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特許料収入は前期比1億20百万円減少の11億65百万円。
(3)海外動向
| 21/3期 | 22/3期 | 前期比 |
海外売上高 | 6,895 | 8,868 | +28.6% |
北米 | 1,598 | 1,983 | +24.1% |
欧州 | 1,853 | 2,611 | +40.9% |
アジア・他 | 3,443 | 4,272 | +24.1% |
うち、OC | 3,929 | 5,184 | +31.9% |
その他 | 2,966 | 3,684 | +24.2% |
*単位:百万円
便潜血検査用試薬は各国における検診プログラムが再開され大幅に増加した。
コロナ禍における検診スキーム変更によるFIT(免疫化学的便潜血検査)の需要が増加しているほか、Web検診、郵送検診、内視鏡トリアージの考え方が浸透し需要掘り起こしが進んでいる。
シスメックス向けの尿検査用試薬・装置の売上は引き続き堅調。
半期ベースでは、欧州、北米は上期比減収。
(4)設備投資・研究開発・減価償却
| 20/3期 | 21/3期 | 22/3期 | 22/3期予想 |
研究開発費 | 3,333 | 3,086 | 3,408 | 3,400 |
設備投資 | 2,985 | 2,876 | 4,347 | 5,900 |
減価償却費 | 1,629 | 1,711 | 2,058 | 2,080 |
*単位:百万円
研究開発費は主に便潜血検査および尿検査用装置の後継機の開発費。設備投資は主に生産システム開発、新研究棟建設。計画には達しなかった。
(5)財務状態
◎主要BS
| 21年3月末 | 22年3月末 | 増減 |
| 21年3月末 | 22年3月末 | 増減 |
流動資産 | 29,983 | 37,039 | +7,055 | 流動負債 | 12,772 | 12,533 | -239 |
現預金 | 9,150 | 16,121 | +6,971 | 買入債務 | 6,680 | 7,456 | +776 |
売上債権 | 12,298 | 11,956 | -342 | 未払法人税等 | 1,373 | 1,305 | -68 |
たな卸資産 | 7,765 | 8,230 | +465 | 固定負債 | 1,239 | 4,175 | +2,935 |
固定資産 | 25,701 | 25,473 | -228 | 社債 | - | 3,000 | +3,000 |
有形固定資産 | 12,768 | 15,275 | +2,506 | 負債合計 | 14,012 | 16,708 | +2,696 |
無形固定資産 | 1,450 | 1,350 | -100 | 純資産 | 41,672 | 45,803 | +4,131 |
投資その他の資産 | 11,481 | 8,847 | -2,633 | 利益剰余金 | 29,166 | 33,162 | +3,996 |
資産合計 | 55,685 | 62,512 | +6,827 | 負債純資産合計 | 55,685 | 62,512 | +6,827 |
*単位:百万円。買入債務には電子記録債務を含む。
現預金、たな卸資産、建設仮勘定の増加などで資産合計は前期末比68億27百万円増加の625億12百万円。
社債の発行などで負債合計は同26億96百万円増加の167億8百万円。
純資産は利益剰余金増などで同41億31百万円増加の458億3百万円。
この結果、自己資本比率は前期末から1.5ポイント低下し72.8%となった。
3.2023年3月期業績予想
(1)連結業績予想
| 22/3期 | 構成比 | 23/3期(予) | 構成比 | 前期比 |
売上高 | 42,996 | 100.0% | 40,000 | 100.0% | -7.0% |
国内 | 34,128 | 79.4% | 30,260 | 75.6% | -11.3% |
海外 | 8,868 | 20.6% | 9,740 | 24.4% | +9.8% |
営業利益 | 8,387 | 19.5% | 4,540 | 11.4% | -45.9% |
経常利益 | 8,508 | 19.8% | 4,570 | 11.4% | -46.3% |
当期純利益 | 6,218 | 14.5% | 3,610 | 9.0% | -42.0% |
*単位:百万円。
減収・減益
売上高は前期比7.0%減の400億円、営業利益は同45.9%減の45億40百万円の予想。
新型コロナウイルス感染症の遺伝子検査(新型コロナウイルス検出試薬)の需要は前期からは大きく減少することを想定している。また、高収益の新型コロナウイルス検出試薬の売上及びLAMP法の特許権収入の減少のほか、研究開発投資や経営基盤整備のための投資による費用増により減益を見込んでいる。
配当は前期比16円/株減の35円/株を予想。予想配当性向は35.8%。
(2)設備投資・研究開発・減価償却
|
| 20/3期 | 21/3期 | 22/3期 | 23/3期 (予) |
研究開発費 |
| 3,333 | 3,086 | 3,408 | 4,300 |
設備投資 |
| 2,985 | 2,876 | 4,347 | 4,060 |
減価償却費 |
| 1,627 | 1,711 | 2,058 | 2,310 |
*単位:百万円
研究開発費は主に継続している便潜血検査および尿検査用装置の後継機の開発。
設備投資は新研究棟の着工を予定しており大幅に増加。減価償却費も増加する。
野木事業所に建設予定の新研究棟は、「消化器がんのグローバルブランド確立」「三大感染症の診断システムを実現するための基盤技術の創造・」「付加価値の高い製品開発」「品質・コストを追求した生産技術の確立」など成長戦略の具現化のための施設と位置付けている。
また、外部との協同によるオープンイノベーションや分散している研究所の集約による創造性の向上など、新たな情報と技術の集結によるブレイクスルーも追求していく。夢を実現し、無限でありたいという想いを込めた「夢現の場」である。
2022年10月の稼働を予定している。
4.「EIKEN ROAD MAP 2030」と新中期経営計画
事業を取り巻く環境変化に対応するとともに、サステナビリティ経営の視点を取り込むため、経営構想「EIKEN ROAD MAP 2019」を見直し、2030 年をゴールとして、新たに「EIKEN ROAD MAP 2030」として再定義した。加えて、ゴールに向けた最初の中期経営計画を策定した。
【4-1】前中期経営計画(2020年3月期-2022年3月期)の振り返り
売上高、営業利益とも最終年度2022年3月期目標を大幅に上回った。売上高は22期連続増収、営業利益は過去最高を更新した。
営業利益率は19.5%(目標13.7%)、ROEも14.3%(目標10%)と目標を上回った。
外部要因としては、「新型コロナ拡大による検診受診率低下、外来患者数減」はマイナス要因であったが、「新型コロナ検査関連製品の需要増」「LAMP法ライセンス収入の増加」「海外における便潜血検査のWeb/郵送検診の拡大」といったプラス要因が大きく寄与した。
内部要因としては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う販管費予算の未消化が挙げられる。
基本戦略として、(1)経営効率を高めるための基盤整備、(2)グローバル展開の推進。(3)国内販売の維持とシェアアップ、(4)研究開発力の強化を掲げ、事業の成長と基盤強化を着実に進めたが、①においては「DXの推進、人事制度改革」、②においては「大腸がんスクリーニングの受診率の向上Web検診・郵送検診・内視鏡トリアージの需要掘り起こし、結核・マラリア検査の普及・定着」、③においては「健診・検診受診率向上、認知機能スクリーニング検査の市場定着と育成」、④においては「研究開発の効率化・迅速化、基盤技術・生産技術の強化、次世代大腸がんスクリーニング検査の開発」などが今後の課題と認識しており、さらなる成長に向けた変革が必要と考えている。
【4-2】EIKEN ROAD MAP 2030
上記のような認識のもと経営構想を「EIKEN ROAD MAP 2030」として再定義した。
2030 年の当社グループが目指す姿を「EIKEN Vision 2030」として明確化し、スローガンとして、「Beyond the Field ~ Team×Challenge ~」を掲げた。
従業員一人ひとりがそれぞれの能力を高め自らが活躍できる領域を広げて、その高めた個の力を、領域を超えて結集しチームでチャレンジすることで新しい可能性を生み出す。加えて、現在の事業領域から一歩踏み出し、医療のプロセスにイノベーションを起こし、検査の未来を創っていく。
(同社資料より)
(1)事業戦略:注力事業分野
現在の事業領域を中核事業としつつ、注力事業分野として「がんの予防・治療への貢献」「感染症撲滅・感染制御への貢献」「ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供」の 3 分野を設定している。
①がんの予防・治療への貢献
これまで検診事業(予防と早期発見)に注力し、特に大腸がんではスクリーニングプログラムをグローバルに構築し、早期発見により死亡率減少と医療費抑制に貢献してきた。
一方で、がんの治療には高額の医療費を必要とすることから適切な治療の選択が重要である。がんの予防・早期発見だけではなく、こうした医療課題に対しても対応すべく、治療薬の選択や治療効果の判定まで網羅した検査システムを開発し提供することによって、がんによる死亡率の更なる減少を目指す。
②感染症撲滅・感染制御への貢献
脅威となる感染症への対策として製品ラインアップを拡充し、グローバルでの結核やマラリアなど遺伝子検査システムを展開する。また、より簡易で誰でもどこでも使える迅速で精確な感染症診断システムを開発することで、医療アクセスの向上に寄与する。
③ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供
健康寿命の延伸に向けて、遠隔診療や在宅での検査の領域を広げ、モバイルヘルスへ発展させる。最終的には本人が意識しなくても健康状態を知らせてくれる暮らしに寄り添ったモニタリングシステムの開発を目指す。
(2)サステナビリティ経営の推進
「地球環境と調和した事業活動」「人を活かした活力ある企業」を経営戦略とし、サステナビリティ経営を推進する。
「人を活かした活力ある企業」となることが成長ドライバーであると考えている。
持続可能な社会の実現に向けて、優先的に取り組むべき 11のマテリアリティ(重要課題)を特定し、具体的な行動計画を開示した。社会課題の解決を通じて、さらなる企業価値の向上と持続可能な社会の実現につなげる。
(同社資料より)
マテリアリティとKPI詳細 https://www.eiken.co.jp/sustainability/eiken#03
(3)目標
①財務目標
2031年3月期の目標は以下のとおりである。25/3期までの目標は後述の中期経営計画(2023 年 3 月期~2025 年 3 月期)の目標数値。
②非財務目標
世界の人々の健康を守る企業として「医療」の課題、および「環境」・「社会」・「ガバナンス」の課題に取り組む。特定したマテリアリティについては、達成度を評価する指標(KPI)を設け、進捗状況をモニタリングする。また、KPI の達成度を評価し、執行役の業績評価と報酬に反映する。
マテリアリティとKPI詳細 https://www.eiken.co.jp/sustainability/eiken#03
(同社資料より)
【4-3】中期経営計画(2023 年 3 月期~2025 年 3 月期)
「EIKEN ROAD MAP 2030」に向けた最初の中期経営計画であり、3ヵ年の成長戦略。
「EIKEN ROAD MAP 2030」のビジョンに従って重点施策を設定し、加速する医療のパラダイムシフトに応えていく。
経営基盤の強化を進めるとともに、人財にフォーカスした経営を推進し、社員のやりがい・働きがいを高め、イノベーションを創出できる環境を整備し、持続的な成長と着実な収益性の向上を目指す。
(1)注力分野と重点施策
注力事業分野である「がんの予防・治療への貢献」「感染症撲滅・感染制御への貢献」「ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供」での重点施策は以下のとおり。
(同社資料より)
大腸がん検診分野では、検診受診率の向上に向け、郵送検診やオンライン検診を拡充し検査アクセスの向上を図る。また、次世代便潜血検査の開発にも取り組む。また、検査精度の向上のため、より初期状態のがんの検出や正診率の向上など検診の付加価値を向上させるほか、内視鏡検査対象者の絞り込みや患者負担の軽い検査の開発など、高精度な検査技術の開発を目指す。
また、がんにおける複数遺伝子異常を次世代シークエンサー(NGS)で一挙に検出する「包括的遺伝子変異検査システム」の開発にも注力する。結果報告までの時間が短い、高感度で多くの試料が必要ない同システムにより、新たな分子標的薬に対応した標的遺伝子の追加や多がん腫への適応拡大が期待され、血液検査によって多くのがん治療方針(分子標的薬)を決定することが可能となる。
(2)持続的成長に向けた経営基盤の確立
以下5つの取り組みにより経営基盤を一段と強化する。
①人財戦略
役割・専門性をより重視した賃金制度、従業員のチャレンジ志向を高める評価制度へ移行し、従業員のやり甲斐・働き甲斐を追求する。
②機構改革
顧客は「グローバル」の共通認識のもと、業務プロセスの最適化と意思決定スピードを意識した体制を整備する。
③IT戦略
AI・ロボットを積極的に導入・活用し、製品・サービス、研究開発、製造をはじめ、あらゆる業務プロセスで DX を推進し、DX人財の育成、DXの組織浸透を図る。
④財務・資本戦略
目標キャッシュ・コンバージョン・サイクルを設定し、事業投資のための資金効率の改善と資金調達の多様化を進めることで健全な財務基盤の維持と事業拡大のバランスを図りつつ、機動的・弾力的に投資を実施する。
研究開発、DX、働き方改革、設備増強など、3年間で累計284億円の戦略投資を計画している。
M&Aについては具体的な金額を設定せず、この金額以外に別枠で検討する。
株主還元を重要な経営課題と認識し、安定的・継続的に実施する。配当性向は30%以上を目安とする。
⑤ガバナンス
長期的な企業価値向上に資する健全な経営を目指し、ESG 施策を強化する。統合報告書の発行をはじめ、透明性の高い積極的な IR・PR を進める。
5.納富社長に聞く
納富社長に「EIKEN ROAD MAP 2030」と新中期経営計画についてお話を伺った。
Q:今回、経営構想「EIKEN ROAD MAP 2019」を見直し、2030 年をゴールとして、新たに「EIKEN ROAD MAP 2030」として再定義し、ゴールに向けた最初の中期経営計画を策定されました。
なぜ再定義が必要と考えたのでしょうか?
新型コロナウイルス感染症の拡大で、当社を取り巻く環境に大きな変化が生じました。
新型コロナウイルスの遺伝子検査に関しては、諸外国に比べて検査数を大幅に増やすことのできない構造的な問題が明らかになりました。
また、感染防止の観点から病院での様々な検査や検診が控えられる中、郵送やWebといったリモートで可能な検査・診療方法へのニーズが一段と大きくなりました。医療体制についてもオンライン診療の必要性が大きくクローズアップされるようになりました。
当社自身も、新型コロナウイルス検査試薬の供給が社会的に大きな意義を持つとの考えから最優先課題として取り組み、需要に対応してきました。一方で、それ以外の項目については、外来の患者数の減少や検診の受診控えの影響を受けました。
このように、新型コロナウイルス感染症によって直接、間接双方で大きな影響を受けたことや、サステナビリティ経営の重要性が増すなど、時代も大きく変化していますので、一旦現在の計画を見直す必要があると考え、議論を繰り返して再定義し、今回の公表に至りました。
Q:「EIKEN ROAD MAP 2030」では、「がんの予防・治療への貢献」「感染症撲滅・感染制御への貢献」「ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供」を注力事業分野として、事業戦略を推進していくこととしています。
これまでは、「経営効率を高めるための基盤整備」「グローバル展開の推進」「国内販売の維持とシェア」「研究開発力の強化」といったテーマを掲げていましたが、今回はより踏み込んだ事業分野にフォーカスしたものとなっているように思います。この点はどういうお考えでしょうか。
今回は事業戦略の切り口を変えました。いままでは社内の各部門が取り組むべき課題をベースとしていましたが、今回は各部門が協働していくことを重視しました。
会社の風土改革にもつながるのですが、社内の壁を取り払ってそれぞれが協力して新しいことにチャレンジしていくことをテーマとしてします。
研究も生産も営業も一体となって、前回の中計でやり残した課題を一つ一つ潰して3分野の事業化を推進していくということです。
Q:「がん」「感染症」「ヘルスケア」3つの注力事業分野について、それぞれ簡単にコメントをお願いします。
将来の幹を育てるという意味では、がんの個別化医療が最も重要と考えています。
個別化医療の治療薬や治療方法の有効性を高め、より安全に使うためには、患者さんがその治療薬を使う対象であるかどうかを正しく見極める必要があります。そのためには特定の遺伝子の有無を調べることとなるのですが、研究目的ではなく、治療目的のためには、より簡易にスピーディーに検査をしなくてはなりません。
当社が開発中の包括的遺伝子変異検査システムは、1回の検査で治療薬の選択や治療効果の判定まで網羅する検査システムであり、今まで以上に、がんによる死亡率減少と医療費抑制に貢献できるものと考えています。
システム自体は既に完成しており、2023年度の上市を目指しています。
感染症においては、製品ラインアップを拡充し、グローバルでの結核やマラリアなど遺伝子検査システムを展開していきます。結核で認められた実績をベースに、グローバルヘルスへの貢献という意味合いもありますので、一つ一つの感染症に対してコツコツと進めていきたいと考えています。
また、より簡易で誰でもどこでも使える迅速で精確な感染症診断システムを開発することで、医療アクセスの向上に寄与していきます。
ヘルスケアでは、便潜血検査を対象に、遠隔診療や在宅での検査の領域を広げていきます。そのためのプラットフォームを構築し、他の検査項目にも展開できるようにしていきたいと考えています。
認知症予防については、まずは診断薬ではなく、認知機能のレベルを判定するテストで、認知症の疑いがないかどうかを人間ドッグや住民健診でスクリーニングとして導入してもらうことを目指していきます。
Q:「海外売上高比率 31年3月期40%以上」という目標をあげておられますが、達成のための施策、課題はなんでしょうか。
便潜血検査用試薬の拡販が中心となります。現在はアメリカ、ヨーロッパ各国など先進国が中心ですが、未開拓な市場はたくさんありますから、当社の膨大なデータに裏付けられた信頼性と優位性を武器に開拓を進めていきます。
中国では、当社の検査方法が大腸がんスクリーニング検査のガイドラインに掲載されました。現在は中国政府による新型コロナ対応政策による影響を受けています。また、結核の患者数がけた違いに多く、結核の遺伝子検査が急速に伸びています。今後の展開に期待しています。
これまで海外の拠点は、中国・上海、オランダ・アムステルダムのみでしたが、今後それ以外の地域の拠点設置も検討を進めています。
Q:続いて、「人材マネジメント」についてはどんな点に注力されていくお考えでしょうか。
教育や研修を充実させるということもありますが、重要なのは全社でモチベーションを上げていく必要があると考えており、「チャレンジ」をキーワードに、企業風土の変革に取り組んでいきます。
挑戦し、たとえ失敗したとしても再度挑戦する機会を提供したり、挑戦したこと自体を評価したりといった制度を作っていきます。
また、「チャレンジ」は、新規の研究や事業に挑戦するということだけではなく、すべての職場で、今までやろうとしてこなかったことに取り組もうとしたときに否定的な意見を出すのではなく、みんなでそれを応援するということも含みます。
Q:ありがとうございます。それでは最後に株主・投資家へのメッセージをお願いします。
新型コロナウイルス感染症により、この2年間の売上・利益は大きく伸長しました。今後の同感染症の広がりを明確に読むことは難しく、また、今期はその反動もあり、減収減益の予想としていますが、新型コロナウイルスを除いた基盤となる部分は着実に成長させることができています。
今後も「EIKEN ROAD MAP 2030」とそのゴールを目指すための新中期経営計画の施策を確実に実行して、さらなる成長を続けてまいりますので、是非ご期待ください。
6.今後の注目点
今期は減収減益予想であるが、前期、前々期は新型コロナウイルス感染症検査薬が大幅に増大し、今期以降は同感染症沈静化に伴う需要の反動減が避けられないのは、致し方ないところであろう。
ただ、コロナ禍前5年間と、コロナ禍後中期経営計画最終年度までの5年間のCAGR(Compound Annual Growth Rate、年平均成長率)を比較すると、どちらも3%強と大きな違いはない。一方で、コロナ禍沈静化により従来の検査・検診数は回復基調にあり、特に便潜血検査試薬の海外における伸びは著しい。
今期予想を受け株価も今年に入り下落基調となっているが、同社成長の巡航速度に大きな変化はなく、その後は成長スピードの加速を計画している点を留意すべきであろう。
「EIKEN ROAD MAP 2030」のビジョン実現に向けた各種施策の進捗に期待したい。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 指名委員会等設置会社 |
取締役 | 8名、うち社外5名(うち女性1名) |
指名委員会 | 3名、うち社外2名 |
報酬委員会 | 3名、うち社外2名 |
監査委員会 | 4名、うち社外3名(うち女性1名) |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2022年6月22日
<基本的な考え方>
当社のコーポレートガバナンスの考え方は、経営理念、経営ビジョン、モットーを基本としております。
*経営理念
ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。
*経営ビジョン
EIKENグループは、人々の健康を守るため、検査のパイオニアとしてお客様に信頼される製品・サービスを提供し、企業価値の向上を図ります。
*モットー
品質で信頼され、技術で発展する“EIKEN”
当社は、経営の健全化、迅速化及び透明性を高め、企業価値の向上を図るためにも、株主の視点を重視したコーポレートガバナンスの充実を経営の重要課題の一つと認識し、その取り組みを行っております。
当社は、指名委員会等設置会社の体制を採用しており、経営の業務執行機能と監督機能を分離しております。経営の基本方針に係わる重要事項については、取締役会の審議を経て決定し、業務執行については、社内規則・規程に基づき、適正な指示命令系統のもと迅速かつ円滑に行っております。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社はコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
原則 | 開示内容 |
【原則1-3 資本政策の基本的な方針】 | 当社は、株主価値の維持向上を実現するために、資本効率の向上と持続的かつ安定的な株主還元を資本政策の基本方針としております。株主還元につきましては、財務体質の強化と積極的な事業展開に必要な内部留保の充実を勘案した上で、連結配当性向30%以上の配当の継続を目標としております。 なお、支配権の変動や大規模な希薄化をもたらす資本政策(増資、MBO等を含む)を行う際には、取締役会において、その必要性と合理性について十分検討し、適正な手続きを確保いたします。また、株主・投資家への十分な説明に努めてまいります。 |
【原則1-4政策保有株式】 | 1.上場株式の政策保有に関する方針 当社は、営業活動の円滑な推進、取引関係維持、業務及び資本提携のため、合理性があると認める場合に限り、取引先の株式を保有し、これら政策保有株式について、当社事業の発展に資すると判断する限り保有を継続することを基本方針としております。保有意義の検証については、毎年取締役会において当社の資本コストを踏まえ、リターン(配当や取引状況等の定量要素に加え、経営戦略上の重要性や事業上の関係等を総合的に判断)とリスクが見合っているかどうかについて議論しております。保有する意義が乏しいと判断される銘柄については、株価動向等を勘案した上で売却を進めることとしております。上場株式について、2021年度においては、2021年4月28日の取締役会において検討を実施した結果、5銘柄の保有を継続するという方針を決定しております。 2.政策保有株式に係る議決権行使基準 当社は、政策保有株式の議決権について、当該企業のコーポレート・ガバナンスの整備状況、株主価値の向上に資する議案であるか、当社に与える影響等を総合的に判断して行使しております。 |
【補充原則2-4① 中核人材の登用等における多様性の確保】 | 当社は、積極的かつ継続的に国籍・性別・入社時期に関係なく、人材の採用、役職の任用等を実施しております。 2022年4月1日現在、女性役職者は19名であり、比率としては14.8%です。また、役職者に占める中途採用者は37名であり、比率としては28.9%です。今後は、ダイバーシティをさらに進める観点から、2030年までに女性役職者比率30%を目指してまいります。 本方針のもと、目指す人材像として「能力開発ビジョン」を策定し、国籍・性別・年齢を問わない多種多様な人材の活躍を推進しております。また、テレワーク勤務制やコアタイムなしのフレックスタイム制度をはじめとする各種就業制度を導入しており、働き方の多様性を高め、その能力を最大限発揮できる環境を構築しています。 |
【補充原則 3-1③ サステナビリティについての取り組み等】 | 当社は、「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」の経営理念のもと、事業活動を通じてさまざまな社会課題の解決に努めてまいりました。より積極的に、グループ全体でサステナビリティの推進を図るため、サステナビリティ方針を策定し、 代表執行役社長を委員長、各機能・事業グループの担当執行役で構成されるサステナビリティ委員会を設置して活動を推進しております。サステナビリティ委員会の内容は取締役会にて報告され、監督される体制となっております。 「EIKEN ROAD MAP 2030」では、持続可能な社会の実現に向けてマテリアリティを特定のうえ、具体的な行動計画に展開し、指標(KPI)を設けて進捗状況をモニタリングしながら取り組みを進めております。 当社のサステナビリティの考え方や方針、推進体制、取り組みについては、当社ウェブサイトにて情報開示を行っております。 (https://www.eiken.co.jp/sustainability/) また、当社は、気候変動が金融市場にもたらすリスクを認識し、これまでの気候変動に関する取り組みをより一層推進するとともに、 TCFD提言を踏まえた情報開示を行っております。今後も分析・議論を重ね、順次、情報開示を拡充する方針です。詳細は当社ウェブサイトに掲載しております。 (https://www.eiken.co.jp/sustainability/environment/weather/) 人的資本への投資については、当社は、人財にフォーカスした経営を推進し、社員のやりがい・働きがいを高め、イノベーションを創出できる環境を整備し、持続的な成長と着実な収益性の向上を目指してまいります。詳細は当社ウェブサイトに掲載しております。 (https://www.eiken.co.jp/sustainability/social/engagement/) また、知的財産への投資については、既存事業を着実に成長させるとともに、当社のコア技術の周辺事業への拡大及び外部とのオープンイノベーションによる新規事業の開発に経営資源を配分してまいります。詳細は当社ウェブサイトに掲載しております。 (https://www.eiken.co.jp/rd/) |
【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】 | 当社は、取締役会で承認されたディスクロージャーポリシーを制定し、基本方針、開示情報、情報開示方法、沈黙期間等を開示しており、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で株主からの対話に対応しております。 当社は、サステナビリティ推進部をIR担当部署とし、サステナビリティ推進部を管掌する経営管理統括部長をIR担当執行役としたIR体制を整備し、株主・投資家との対話の場を設けており、理解と信頼を得るよう努めております。経営管理統括部長は経営企画部、経理部、人事総務部等のIRに関連する部署も同時に管掌しており、情報共有を密にすることで部署間の連携を図っております。 株主との対話といたしましては、決算発表及び第2四半期決算発表時の年2回、アナリスト・機関投資家向けに決算説明会を開催し、代表執行役社長による説明及び対話を行っております。また、株主・投資家との個別面談に関しては、サステナビリティ推進部が対応しております。株主・投資家からの要望や、保有株数によっては、合理的な範囲で経営陣幹部が面談に対応しております。対話によって把握された株主・投資家の主要な意見等は、定期的にIR担当執行役から取締役会へ報告されます。 なお、当社は、ディスクロージャーポリシーに基づき、株主・投資家との対話を行っており、インサイダー情報が含まれないように十分留意することはもちろん、所定の法令等を踏まえて社内規程を制定し、それに基づき適正に情報を管理しております。 |
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