ESG Bridge Report:(6809)TOA vol.1
竹内 一弘 代表取締役社長 | TOA株式会社(6809) |
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企業情報
市場 | 東京証券取引所市場第一部(2022年4月4日よりプライム市場) |
業種 | 電気機器(製造業) |
代表取締役社長 | 竹内 一弘 |
所在地 | 兵庫県神戸市中央区港島中町7-2-1 |
決算月 | 3月 |
HP | https://www.toa.co.jp/ |
財務情報
売上高 | 営業利益 | 当期純利益 | 総資産 | 純資産 | ROA | ROE |
40575百万円 | 2,293百万円 | 1,596百万円 | 58,572百万円 | 46,365百万円 | 4.4% | 3.7% |
*2021年3月期実績。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。ROAは総資産経常利益率。ROEは、自己資本当期純利益率。
目次
1.会社概要
2.TOAのサステナビリティ方針
3.トップインタビュー
4.財務・非財務データ
<参考1:マテリアリティについて>
<参考2:「ESGブリッジレポート」と「ROESGモデル」
1.会社概要
避難誘導や案内放送を行う非常用放送設備、快適な空間を創造する音響システム、防犯カメラを含めた監視システムなど、音響機器、映像機器の製造販売を行う専門メーカー。非常用放送設備で国内トップシェア。豊富な採用実績、「音」のプロフェッショナルとしての知見・ノウハウ、ラインアップの幅広さと地域密着型の営業体制も強み。アジア・パシフィック、欧州などを中心に世界120か国以上で営業を展開。
【1-1 沿革】
1934年、マイクロホン作りに強い関心を抱いた中谷常太郎氏が東亞特殊電機製作所を創業し、トランペットスピーカーやマイクロホン等の製造販売を開始。マイクロホン、アンプ、スピーカーなどを一貫して自社生産し民需、官需を取り込み成長する。
第2次世界大戦終戦後の1947年には日本で初めて軽量・小型・取り付けが容易かつ性能に優れたレフレックス型トランペットスピーカーを開発し、「トランペットのトーア」とのブランドが定着していった。
(同社WEBSITEより レフレックス型トランペットスピーカー)
1949年、法人組織に改組し、東亞特殊電機株式会社を設立。
その後も、音響の専業メーカーとして技術開発・製品開発を進め、世界初の電気メガホンEM-202(1954年)、日本初のトランジスターメガホン ER-57(1957年)等、新製品を相次いで投入。1962年には音をより遠くまで届けるために超巨大PA(※)実験を実施。最長到達距離は12kmを記録した。
1964年の東京オリンピックでは放送設備が31ヵ所の競技場で公式採用されたほか、1971年に京成電鉄成田駅で採用された「自動案内放送システム」はその後、駅・空港などへの導入が拡大。音響機器・システム分野における同社の存在価値はますます高まっていった。
※PA=Public Addressの略。拡声放送、構内放送の意
1968年には、兵庫県・有馬温泉の旅館で30名が死亡する火災事故が発生。そうした事故を繰り返さないために同社は音響を中心とした固有技術を生かして1969年に日本で初めて非常用放送設備を開発し、生産・販売を開始した。その後、消防法改正によりホテルや大規模施設での非常用放送設備の設置が義務化され、折からの高度成長の波にも乗り、同社の中心的な事業に成長していった。
(同社WEBSITEより)
一方、1973年に西ドイツ(現・ドイツ)に初の海外法人(現・連結子会社)を設立したのを始め、1974年にはアメリカ子会社(現・連結子会社)設立。インドネシアにおいては1973年に駐在所を開設し「ホーンスピーカー」において90%以上のシェアを獲得、その後1975年に現地生産合弁会社(現・連結子会社)を設立して海外生産を開始するなど、積極的に海外事業を展開。その後もヨーロッパ、アジア、アフリカでも販売子会社や生産拠点を構築し、グローバルネットワークを構築していく。
業容の拡大に伴い、更なる事業基盤の強化を図るため1977年に大証二部に上場したのを皮切りに、1997年には東証・大証一部指定、2013年、東証・大証の市場統合に伴い東証一部に上場した。
【1-2 企業理念】
企業価値を「Smiles for the Public -人々が笑顔になれる社会をつくる-」と定めている。人々の集まりである「Public(社会)」に対し、「音の報せる力」を通じて「安心・信頼・感動」という価値を提供することで、人々の「Smiles(笑顔)」を実現することを目指している。
(同社WEBSITEより)
同社では「機器ではなく、音を買っていただく」という企業哲学が浸透しており、いかにいい音を届けるかに軸足を置いて企業活動を展開している。
【1-3 市場環境と競合状況】
◎市場環境
国土交通省の調査によれば、新設事務所・店舗・工場の床面積はリーマンショックによる落ち込みからは一旦は回復してきたものの、足元では再び低調に推移している。
一方、同じく国土交通省の調べ(令和3年度建設投資見通し 2021年10月)によると、2021年度の建築補修(改装・改修)投資は前年度比2.3%増の7.5兆円とコロナ禍で減少した前年度から回復する見通し。コロナ禍前の水準には及ばないが、建設バブル期の新築施設に納入した機器やシステムのリニューアル需要は今後も着実に発生するものと思われる。
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こうしたいわば「飽和」状態にある市場環境の下、同社では機器の販売にとどまらず、ユーザーの満足度をより高いレベルで実現させるためのシステムやソリューションを提供し、より収益性の高いビジネスを展開していく考えである。
また、工場に関しては、世界的な半導体不足が当面は継続するとの見込みから、日本政府が半導体工場の新設や増設を支援するための関連法改正案を閣議決定したほか、各国で半導体工場増設の計画が立ち上がっており、新たな需要増を同社では期待している。
さらに同社は、教育現場における学習効果向上を目的とした拡声器の活用や、商業施設・交通インフラ施設などに対する音声コンテンツの配信、各種システムの遠隔地からの集中管理・死活監視など、専門メーカーならではのソリューションを提案・提供しており、こうした様々な社会課題解決に向けた取り組みを通じて、新たな需要を創出していく考えである。
◎競合状況
同社の主力商品である非常用放送設備を手がけているのは同社の他、国内ではPanasonic、JVCケンウッド、海外ではBOSCH(ボッシュ)があるが、業務用音響・映像メーカーとして専門性を追求している同社は国内では約5割のシェアを握っている。
海外全体のシェアはまだ低いものの、いち早く進出したインドネシアなどでは高いシェアを有している。加えて、近年、日本のみならず世界中で異常気象・大規模災害が相次いで発生しており、同社が培ってきた減災・防災の技術とノウハウが海外でも活躍を始めている。昨年にはタイ、ベトナム、インドネシアで防災用高性能スピーカーをはじめとする屋外情報伝達システムを納入した。
【1-4 事業内容】
避難誘導や案内放送を行う非常用放送設備、快適な空間を創造する音響システム、防犯カメラを含めた監視システムなど、主として多くの人々が集まる公共空間において使用される音響機器、映像機器の製造販売を行っている。
納入先は、官公庁舎施設、自治体防災、商業施設、複合施設、スポーツ施設、交通施設、教育施設、宗教施設など多岐にわたり、納入先の一例を以下に示す。
分類 | 納入先の一例 |
官公庁舎施設 | 東京都庁舎、神戸市庁舎など |
自治体防災 | 東京都江東区、名古屋市、神戸市、仙台市、倉敷市など |
商業施設 | IONオーチャード(シンガポール)、国内大型商業施設など |
複合施設 | 東京スカイツリータウン、マリーナベイ・ファイナンシャルセンター・タワー(シンガポール)など |
スポーツ施設 | ウィンブルドン・テニスコート(英国)、ZOZOマリンスタジアム、阪神甲子園球場など |
交通施設 | 成田国際空港、羽田空港、関西国際空港、ゆりかもめ、南海電鉄など |
宗教施設 | イスティクラル・モスク(インドネシア:東南アジア最大のモスク)、世界各国の教会など |
(1)商品分野
同社では取扱商品を、「音響」、「映像」、「鉄道車両」の3分野に分類しており、「音響」が約8割を占めている。
商品分野 | 主な商品 |
音響分野 (音響システム) | 非常用放送設備、業務用放送設備、ワイヤレスシステム、ネットワークPAシステム、インターカムシステム、サウンドシステム、拡声放送機器 |
映像分野 (セキュリティシステム) | ネットワークカメラシステム、フルHD同軸カメラシステム、アナログカメラシステム
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鉄道車両分野 (鉄道車両関連システム) | 車両内放送設備、カメラシステム、電光表示器
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(2)事業領域
「安心・信頼・感動」の3つの価値を軸とした事業領域において独自性の高い製品・システム・ソリューションを開発・販売している。
領域① 『安心:Public Safety』
人々が日常を安心して過ごすことができるように、自然災害や犯罪・事故等の危険から少しでも多くの人々を守り、社会の安全・安心を実現するソリューションを提供している。
(具体的なソリューション)
◎屋外防災放送ソリューション
安心領域においては防災関連のソリューションが中心となる。
特に、同社のコアコンピタンスである「音の報せる力」の面から、従来の課題を克服して、災害発生時に住民のより安全・安心な環境を創り出すスピーカーを中心とした屋外防災放送ソリューションは、高く評価されている。
<日本を取り巻く状況と防災行政無線の課題>
日本は狭い国土に世界第4位(2017年現在)の110に及ぶ活火山を有し、世界の活火山の7%を占める火山大国であり、加えて、日本列島周辺では4枚のプレート(地殻)が分かれ、プレート同士がぶつかり合っている「日本海溝」、「南海トラフ」はプレートが下に沈み込んでいるため古来より多くの地震被害を受けてきた。
さらに、日本は中山間地の中小河川の奥地にも集落があり、古くから崩壊・地すべり・土石流の被害を受けてきた。さらに近年、集中豪雨や台風などによる洪水、土砂災害はその頻度及び規模が大きくなっている点も大変気がかりであり、減災・防災への取り組みは国民が強く望むものとなっている。
災害発生時には、地方自治体が運営する防災行政無線が、住民への情報提供・避難誘導において重要な役割を担っており、政府が最重要施策の一つと掲げている「国土強靭化基本計画」においても、2018年12月に閣議決定された「国土強靭化基本計画の変更」、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」では、防災行政無線のデジタル化の推進や災害時における多言語音声翻訳システムの高度化のための緊急対策などが重要な取り組みの一つとして挙げられている。
ただ、2011年3月11日に発生した東日本大震災後の調査「東日本大震災時の津波・避難情報の入手に関する調査(内閣府)」によると、震災時に津波警報や避難の呼びかけを入手した先は、テレビ・ラジオを上回り、「防災行政無線」が約5割でトップであったにもかかわらず、防災行政無線を聞いた人の中でも「はっきりと聞き取ることができた。」のは約56%にとどまっており、防災行政無線の有効性という観点からは、改善・対策は喫緊の課題となっている。
屋外での放送が聞き取りにくい主な原因として以下のような点が挙げられる。
①屋外スピーカーの音の届く距離が足りない
②周囲の騒音が大きく、放送の音がかき消される
③近接した屋外スピーカーからの音が重なり合う
④周囲の地形や建物により音の通りが遮られる
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(同社資料より)
加えて、津波や浸水による屋外スピーカーの倒壊や機器の故障、大雨における騒音の増加による聞き取りの阻害といった点も、防災行政無線を有効に機能させるために克服すべき重要なポイントである。
<TOAが行う明瞭な屋外防災放送のための総合提案>
上記のような課題に対し、同社では明瞭に聞き取ることのできる屋外防災放送実現のための総合提案を行っている。
「明瞭な音」を実現するためには、音源からスピーカーまで、システム全体を考慮したエンジニアリング力が必要であり、単にスピーカーを設置するだけではスピーカー本来の性能が発揮することは困難である。
そこで音のプロフェッショナルである同社は地方自治体担当者からのヒアリングを元に、豊富なラインアップの中からその地域に最適な防災用高性能スピーカーの配置選定を行い、コンピュータ・ソフトによるシミュレーション、実際に音を発生させる屋外鳴動試験などを行った上で再配置設計を実施し、最終的に住民が明瞭に放送を聴取できるように調整を行う。
このように、同社は創業以来培ってきた「商品力」と「エンジニアリング力」により、防災用高性能スピーカーによる明瞭な聴取を可能とする防災行政無線システムの構築を行っている。
(同社資料より)
*防災用高性能スピーカー
防災行政無線における従来型スピーカーの音の到達距離はおおむね約200~400m程度で、価格は防災用高性能スピーカーよりも安価だが、スピーカーの増設や放送音量を上げることで音達エリアを拡げる際は設置場所付近の住民への配慮が必要である。
これに対し同社の防災用高性能スピーカーは、以下のような特長を有している。
*1995年1月17日に発生した兵庫南部地震(阪神・淡路大震災)で多くの従業員が被災し、テレビやラジオ、電話もつながらない状況で「もっと広範囲に防災放送が届けば役に立った」との思いから研究が始まり、開発された。 |
*均一で明瞭な音を伝えることに優れたラインアレイ技術(複数のスピーカーユニットを垂直方向に連結し、線状の音源を構成する技術)を採用。 |
*従来型スピーカーと比べて、距離による音の減衰が少なく、 従来型の2~3倍の距離まで均一で明瞭な音声を伝えることができる。 |
*垂直方向への音の拡がりが小さく、スピーカー直下でも音量が抑えられるため 、近くで「やさしく」、遠くで「はっきり」と聞こえる。 |
*同社独自の音の空気減衰量を考慮した補正機能を搭載しており、遠くの距離でもより明瞭に音声が聞こえるように音質調整している。 |
同社では次世代型防災スピーカーとしてそれぞれ特長のある3タイプを揃えており、案件ごとこれらを組み合わせ、最適な防災行政無線システムを提案する。
2021年度には、国土交通交省が運営する新技術情報データベース「NETIS(※)」に登録しており、同社の製品およびシステムの情報を積極的に提供している。
※NETIS:国土交通省が運営する、民間企業等により開発された新技術に係る情報を、共有及び提供するためのデータベース
近年の地方自治体の減災・防災意識の向上もあり、2021年12月末時点で全国累計約400の地方自治体で採用されている。
タイプ | 概要 |
ホーンアレイスピーカー | *8連タイプで800mから1,000m(設計基準距離)と、従来型の2-3倍の距離までクリアな音声を届ける最上級の音の遠達性。子局数を減らすことで音の重なりを軽減できることに加え、ランニングコストの低減にもつながる。
*優れた低域再生能力により地形の起伏や建物など音の遮りのある地域に効果的である。
*庁舎や学校など防災拠点に設置することで津波や洪水による子局の倒壊を避けることができる。 |
中型ホーンアレイスピーカー | *ホーンアレイスピーカー同様、従来型を上回る音の遠達性。音の重なりも軽減。
*軽量・コンパクトで防災無線柱への取り付けが可能。
*防水、耐塩で耐久性に優れる。 |
防災用スリムスピーカー | *遠達性も兼ね備えた軽量モデル。
*環境に合わせて設置構成をカスタマイズすることで更なる遠達性の向上を実現。 |
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(同社資料より)
また、防災用高性能スピーカーに適した信号処理機能(レベル調整、イコライザー)を標準搭載した防災用高性能スピーカー用アンプ「防災用DSPアンプ」は、明瞭性の高い防災放送の実現に重要な役割を果たすとともに、IP告知ユニットを使い、防災行政無線放送とIP告知放送を併用することで、緊急時にどちらか一方の放送手段が途切れても、もう一方の放送手段が使えるように放送伝送路の冗長化が可能である。
このほか、独自のネットワーク音声伝送技術「パケットオーディオ」を搭載した市庁舎などの拠点から各施設へと一斉に放送を届ける「IP告知放送システム」、緊急地震速報受信端末に連動した緊急地震放送が可能で、設定により四ヶ国語(日本語、英語、中国語、韓国語)の音声警報を流すこともできる「ラック型非常用放送設備」など、災害時、緊急時に安全・安心を提供する幅広い製品ラインアップを有している。
領域② 『信頼:Public Communication』
日々の暮らしの中で人と人との信頼を築くために、時間や空間の隔たり、言語や年齢など多様性を乗り越え、便利で快適な社会のコミュニケーションを実現するソリューションを提供している。
(具体的なソリューション)
◎空港内旅客案内放送システム
大規模な空港ターミナルにおいて緊急情報やフライト情報などのアナウンスを多様な言語で伝え、安心して利用できる空港運営に貢献している。日本の空港市場における同社シェアは約90%と圧倒的である。
*羽田空港国際線旅客ターミナル
4ヶ国語による放送や直感的に操作できる操作卓など、ユニバーサルデザインを追求した非常用放送設備と旅客案内放送設備が導入されている。
(同社WEBSITEより)
*成田国際空港・第1旅客ターミナル
空港内のインフォメーションシステムを全面的にサポートし、建築美を損なうことなく配置された約5,000個のスピーカーが、多彩な情報を自動制御によって確実かつスピーディーに伝えている。
◎車両内放送設備
ディスプレイや車内外の行先案内など電光表示器の他、運転席からのアナウンスを各車両へと届ける車両内放送設備、車両内の安全確保のための防犯カメラシステム等、乗客により安全で快適なサービスを提供している。
領域③ 『感動:Public Space Design』
人々の心を揺さぶる感動のために、日常のささやかな楽しみから、非日常の特別な体験まで、人々の心をより豊かにする空間演出を実現するソリューションを提供している。
(具体的なソリューション)
◎スポーツ施設音響システム
来場者がスポーツを快適に観戦したり、コンサートなどのイベントを楽しんだりできるような音響空間を創造している。
精緻な音場シミュレーションやデジタル計測テクノロジーなど、蓄積されたデータとノウハウを駆使して最適な音を届けることで、国際的な大型スポーツイベントの誘致や開催をバックアップしている。
*ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアム(インドネシア)
2018年に開催されたアジア競技大会の主要会場となった最大約9万人を収容する同スタジアムにおいて、新型ドライバーを搭載したホーンアレイスピーカーをはじめとする音響システムを納入した。
熱狂する大観衆の歓声にかき消されない明瞭で迫力のある音響システムを構築。その高品位な音質により今後開催される音楽イベントなどのライブパフォーマンスでの活用も期待されている。
インドネシアで長年活動を続け、当地での評価も高い同社ならではの案件である。
(同社WEBSITEより)
*京セラドーム大阪
綿密な音響シミュレーションの結果、同社が提案したセンタークラスターラインアレイスピーカーを核とした音響システムが採用された。合計76台のスピーカーユニットは、残響音の多い条件下でも音声が聞き取りやすく、カバーエリアの全ての客席へもクリアで迫力のある音を届けることができ、「大歓声の中でも音声がダイレクトに聞こえて心地よい」と評価されている。
またグラウンド上においても、キャッチャー方向からセンター方向にかけ、180度途切れなく連なるスピーカーユニットによって、均質な音空間を構築している。
操作面においては、野球運営用など、あらかじめプリセットした音響設定を呼び出すだけで、すぐに使用できるほか、スピーカー駆動用のアンプには高出力、高音質のデジタルアンプを採用して消費電力を大幅に抑えるなど、環境面での配慮も採用のポイントとなった。その他、イベント時での放送においても使いやすく、十分な音量でアナウンスできる点も好評である。
(3)セグメント
報告セグメントは地域別に、「日本」、「アジア・パシフィック」、「欧州・中東・アフリカ」、「アメリカ」、「中国・東アジア」の5つ。
グローバルブランドの確立を目指して、積極的な海外販売戦略を推進。現在、世界120ヶ国以上で販売活動を行っている。
各エリアで最適な生産体制と販売体制を実現し、求められる世界品質を、求める市場にスムーズに提供している。
現地法人である海外販社と同社の海外営業部門によって、全ての情報を統括し、市場の変化に対し素早く対応している。
(4)研究開発体制
2020年12月に完成したグループの開発拠点である「ナレッジスクエア」に、基礎技術の研究開発部門に加え、商品開発、品質保証、デザイン等、開発に関する部門を集約している。
ナレッジスクエアは、顔認証・人センシング技術を活用し、安心と快適性を両立させるオープンオフィス環境を備え、世界中の同社拠点と常につながり、リアルタイムで情報共有できるのが特徴。
異業種との協業、職場のコミュニケーション活性化や業務最適化といった取り組みを通して、最先端のソリューションを開発・提供することで、すべてのステークホルダーとの「つながりの場」において共に新しい価値を創りだすことを目指している。
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(同社資料より)
海外では、インドネシアに「アジア・パシフィックR&Dセンター」を、台湾に「得洋電子工業股份有限公司 R&D事務所」を有し、世界各地の生産拠点と連携しその地域のニーズを具現化した商品を創出している。
拠点ごとの独立運営を確保しつつ、情報はITネットワークでリンクしているため技術共有や部品の集中調達も可能であり、自由な発想による地域商品の開発体制を維持すると同時に、グループ全体の効率性向上も実現している。
(5)グループ・ネットワーク
◎国内
同社ほか、グループ会社4社がエンジニアリングサポート、ソフト企画、ホール管理・運営、生産を手がけている。
全国約30の営業所により地域密着のきめ細かいサービスを提供している。
◎海外
生産拠点はインドネシア、ベトナム、台湾の3カ所。アメリカ、ヨーロッパ、中東、アジアに26か所営業拠点を展開している。
【1-5 特長・強み】
(1)「豊富な採用実績と高いシェア」とその源泉である「音」のプロフェッショナルとしての知見・ノウハウ
同社製品及びシステムは国内外の様々な施設に多数採用されており、非常用放送設備の国内シェアは約50%でトップ、空港内旅客案内放送システムの国内空港市場におけるシェアは約90%、防災行政無線における防災用高性能スピーカーの採用実績約400件など、圧倒的な存在感を示している。
こうした実績の源泉は、1934年の創業以来、「機器ではなく、音を買っていただく」という企業哲学の下、いかにいい音を届けるかを追求し続けて蓄積してきた経験、知見、ノウハウである。
単に機器を提案・納入するのではなく、パソコンによるシミュレーションや鳴動試験などを行った上で配置設計を実施し、最終的に住民が明瞭に放送を聴取できるように調整を行うといった「前工程」を重視した総合提案を可能としているのも、同社の「届けるのは機器ではなく、音」という理念であり、それに基づいた優れた商品力とエンジニアリング力がユーザーからの信頼感や満足度の向上に繋がっている。
(同社資料より)
(2)専門メーカーとしてのラインアップの幅広さと地域密着型営業体制
同社の取扱製品ラインアップは、単品のマイク、スピーカー、メガホンから、会議システム、非常用放送設備、防災行政無線システムなど、「音」に関する機材・システムを幅広くカバーしている。
専門メーカーとしてのラインアップの広さは顧客のあらゆるニーズに対応し、課題解決のソリューションを提供できるという点で同社の強力な競争優位性となっている。
また、全国に広がる営業拠点をベースに、地域密着で機動的な営業活動を展開していることから、顧客との結びつきも強く、安定的な高シェア維持に繋がっている。
2.TOAのサステナビリティ方針
【2-1. TOAのサステナビリティ】
同社は企業目的および経営基本方針「三つの安心」を定め、その経営理念のもと行動規範「TOAグループ企業倫理規範」を制定し、企業価値「Smiles for the Public -人々が笑顔になれる社会をつくる-」の実現を目指している。
2021年5月、2030年を見据えた「経営ビジョン2030」として「Dr. Sound -社会の音を良くするプロフェッショナル集団- になる」を掲げた。
同時に、同ビジョンの下、社会及び同社の持続可能性を追求すべく、5つの取り組みで構成される「TOAのサステナビリティ方針」を策定した。
(参照ページ TOAのサステナビリティ https://www.toa.co.jp/sustainability/conduct/)
【2-2 「経営ビジョン2030」】
(1)「経営ビジョン2030」の基本的な考え方
経営ビジョン2030 「Dr. Sound -社会の音を良くするプロフェッショナル集団- になる」 には、社会の音を担う企業としての自負を持ち、Dr. Soundの言葉どおり、音のことといえばTOAと、これからも顧客やユーザーから信頼できるパートナーとして歩んでいく決意を表している。そのために専門的な知識、知見をさらに磨き、音のコンサルティングカンパニーとしての確固たる地位を築いていく。
音の課題に対する解決はもちろんのこと、専門メーカーとして先導者の役割を、また、音の見える化を進めることで、心理学や脳科学など学術的な見地から、もっとわかりやすく音の可能性や効果について提示できる企業を目指す。
不確定な時代だからこそ、強みを突き詰め、これからも音を通じた顧客への価値提供を行っていく。
こうした取り組みを通じて「社会の音を良くする」ことで、「安心」「信頼」「感動」の価値を体験した人々が自然と笑顔になれる社会の実現を目指している。
(同社資料より https://www.toa.co.jp/ir/message/interview4.htm)
(2)「経営ビジョン2030」とSDGs
「経営ビジョン2030」は、同じ2030年をターゲットにし、様々な社会課題の解決を目標に持つSDGsの考えとも重なっている。
サスティナブルな社会の実現を目指すSDGsには、「誰ひとり取り残さない」との理念がある。
SDGsの基本理念において、「人々の命を守る」という同社の本業が貢献できることは多く、SDGsの全17の目標の中でも、以下の4つの目標が同社にとって大きく関わると考えている。
4.質の高い教育をみんなに
| 11.住み続けられるまちづくりを
| 12.つくる責任つかう責任
| 13.気候変動に具体的な対策を
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(参照ページ https://www.toa.co.jp/ir/message/interview7.htm)
さらなる成長と持続的な企業価値向上のため、ESG(環境、社会、ガバナンス)を含めた統合的な視野で社会的責任を果たし、これからもステークホルダーの期待に応えられるよう対話を深めながら、企業活動に取り組んでいく考えだ。
【2-3 サステナビリティ方針における5つの取組み】
(1)社会課題解決に向けたソリューション
①様々な社会課題解決に役立つ新たな価値を実現-目的・用途に合わせた安全・安心な音環境をタイムリーに提供-
同社は、今後ますます多様化・複合化が進むであろう公共空間において、様々な目的・用途に合わせた最適な音環境をタイムリーに提供したいと考えている。そのために、「音」、「映像」、「ネットワーク」の技術を融合させたソリューションやコンテンツの提供の自動化・自律化を進めている。
同社はこれまで、商品のIoT化により、各種サービスの拡充やエンジニアリング業務の効率化を進めてきた。
(具体例)
・クラウド上でのアナウンス音源制作
・CM・BGM音源コンテンツの提供・配信
・遠隔地からのカメラ映像の確認
・システムの死活監視
現在も、こうしたデジタル整備を重点施策として注力しており、これからも自社の基幹情報インフラ等の整備はもちろんのこと、新たなサービスビジネスやデジタルマーケティング、さらにはネットワークに繋がる様々な商品群からの情報を統合するデジタルプラットフォームを構築していく。
加えて、同社のデジタルプラットフォームが、それぞれのシステム情報はもちろん、商品に搭載したAI技術やカメラセンシング技術、街の様子や天候といったデータ、さらには駅・空港の運行システムや、スマートフォンや公共施設のサイネージなどの多様な配信手段と連携可能になることを目指している。このような取組みを通じて、必要な情報を必要なタイミングで全ての方に確実に届け、「施設内」だけでなく、より広いエリア(イメージ:街単位)での運用を可能にしていくことで、安全で快適な社会を築くことを目指していく。
②気候変動に関する対応
気候変動に関しては、同社の技術力・ノウハウを活かすことで、事業機会の創出と社会課題の解決を目指している。
前述のように、防災行政無線用の屋外スピーカーにおいて 「より遠くまで・明瞭に」音声を届けるホーンアレイスピーカーを開発したほか、専門技術チームによる音響シミュレーションとスピーカーの鳴動テストの実施、豊富な実績に基づく地形など周辺環境に応じたスピーカー配置の提案、カメラを使用した河川監視カメラ等、遠隔から状況を監視・必要に応じて呼びかけもできるサービスを提供してきた。
また、世界中で異常気象・大規模災害が相次いで発生する中、これまでに培ってきた減災・防災の技術とノウハウを海外でも展開し(タイの津波避難放送設備、インドネシアのダム放流用の注意喚起放送システム)、減災・防災に貢献している。
2022年3月期には新たに以下のような取り組みを進めた。
*地方自治体(神戸市)・異業種との協働による、スピーカーを搭載したドローンの実証実験
2021年8月、神戸市および日本コンピューターネット株式会社(大阪市)と共同で、国産ドローンを活用した新たな情報発信の検討を継続的に行うため、神戸ポートアイランド第2期に設置された「KOBEモビリティフィールド」で実証実験を開始した。
今まで蓄積した屋内・屋外空間でのノウハウを活かし、国産ドローンにスピーカーをはじめカメラや画像認識技術などを搭載し、災害時の放送等をおこなうことで、市民の安全・安心の向上を図る。そのために、まずは災害時の避難・捜索の呼びかけやイベント告知などでの呼びかけ等で使用できるように放送方法の検討を進めることで、情報発信の多元化を目指す。
また、災害時のみならず様々な場面での情報伝達手段として活用できる自動航行が可能で、かつ高度なセキュリティ対策を施した国産ドローン等の実現も目指す。
*地方自治体(青森県深浦町)と協働で、屋外拡声音の長期観測を開始
2021年10月、青森県深浦町において、地形や気象(気温・湿度・風速・雨量等)など、様々な環境条件下でも最適な防災用屋外放送を実現する手法を探るため、屋外拡声音の長期観測を開始した。
深浦町が運用している「防災行政情報伝達システム」より試験音を放送し、新たに設置した複数の屋外観測ステーションにて、実際に現場で聞こえる音声の収録と、風向き・風速の観測を行う。長期にわたり収集したデータから、地形や気象条件などによって生じる音の聞こえ方の違いについてAI解析等を行い、最適な防災用屋外放送の実現を目指す。
③顧客のプライバシーおよびデータ保護
個人情報の取扱いを始めとした各種方針・規程を制定し遵守することと合わせて、「映像」「音響」で安心を提供する同社ならではのソリューションの提供により、同社製品導入先の個人情報保護の課題解決にも貢献している。
◎各種方針・規程の制定
*プライバシーポリシー(個人情報の取扱いについて)
個人情報・個人データについて、その重要性を認識し、個人情報の保護に関する法律を順守することにより、個人情報の適正な取得、利活用、安全管理等を行っている。
(参照ページ プライバシーポリシー(個人情報の取扱いについて) https://www.toa.co.jp/privacy.htm)
*ソーシャルメディアポリシーおよび利用規約
ソーシャルメディアにおける公式アカウントの運営、および同社社員のソーシャルメディア参加にあたり、遵守すべき姿勢や行動、基本原則を「TOA株式会社 ソーシャルメディアポリシー」として定め、遵守している。
(参照ページ ソーシャルメディアポリシーおよび利用規約 https://www.toa.co.jp/sns.htm)
*TOA情報セキュリティ基本方針
顧客が安心して取引きできるようにするため、情報セキュリティの確保は重要課題のひとつであると考え、同社の情報資産を保護する指針として、情報セキュリティ基本方針を定めている。
(参照ページ TOA情報セキュリティ基本方針 https://www.toa.co.jp/securitypolicy.htm)
◎プライバシー保護に配慮したソリューションの提供
同社が提供する混雑状況配信ソリューションは、AI内蔵カメラ「TRIFORA」が撮影した店舗などの状況を配信し、混雑情報を把握するものだが、単に状況をリアルタイムで配信するのではなく、人を認識したら、人型アイコンを事前に撮影した背景画像に合成する。このため、個人を特定できない画像となり、映った人のプライバシーは完全に保護される。
With コロナの状況下、「空いている時には安心して施設を利用してもらい、機会ロスを軽減したい」「混んでいる時には施設の利用を抑制し、密集による感染リスクを軽減したい」「感染症対策に積極的であることを情報発信し、安心して施設利用してほしい」と考える店舗、施設のニーズを取り込んでいる。
(同社資料より)
④競争力強化に向けた取り組み
◎研究開発拠点の整備
研究開発拠点のナレッジスクエア内にある、開発者居室や実験設備等を備えた研究開発棟「ココラボ」は、開発者自身が建物設計に大きく関与した。旧施設の問題点の把握と整理はもちろん、開発業務の進め方やワークスタイルの見直しも行ったうえで、設計に反映し、引越し、既存施設の改修、維持管理方法に至るまで、開発部門の各担当者から選任したメンバーによる分科会が中心となって意見を調整・集約した。こうした取り組みにより、「ココラボ」は従来以上に研究開発に取り組みやすい場となった。
また「ココラボ」では、設計・施工業者をはじめ、専門性の高いさまざまな異業種との共創により実現した「TOAミライソリューション」を展開している。開発拠点そのものを実験場として、現在も検証と改良を継続しつつ、来客への新技術のアピールや新たな価値創造の契機として活用している。
(TOAミライソリューション詳細は特設サイトにて https://www.toa.co.jp/knowledgesquare/mirai/ )
グランドオープンから1年が経過した現在も、各部署から意見を吸い上げ、継続的に施設内の利便性向上やリニューアルを実施している。具体的には、ニューノーマル対応としてTV会議システムの新規導入や、Web動画配信専用スタジオを整備。また、新商品を活用しての遠隔での工場立ち合い検査も実施。今後も、開発テーマの変更に合わせた空間の更新など、開発環境としての機能充実化・最適化を図っている。
◎注力中のソリューション
同社は社会に「安心」「信頼」「感動」の価値を創出するため、これまで培ってきた音と映像の技術や、世の中の最先端技術との融合により、常に最適なソリューションを研究・開発している。主な注力中のソリューションは以下の通り。
ソリューション | 概要 |
多言語放送サービス | タブレット端末で簡易に操作ができ、国内の主要な駅や空港など交通インフラや、大規模なショッピングモールなどの商業施設などで提供。多言語による案内サービスや、案内板や映像機器と連携した緊急時の避難誘導など、確実な情報伝達に役立てられている。 |
アナウンスクリエーター | パソコンやタブレット端末での文字入力で、日・英・中・韓4カ国語のアナウンス音源の作成が可能。音源の再生も簡易に操作でき、商業施設、駅・空港などでの利用者への案内はもちろん、異常気象や災害時への備え、感染症対策としての注意喚起にも貢献する。 |
音声明瞭化技術 | 加齢とともに聞き取りづらくなる高齢者のみならず、一般健聴者にも明瞭に聞こえる音作りの実現を目指し、騒音の大きな駅や聴くことが大切な教育現場などでも効果を発揮できるように、さらに技術開発を続けている。 |
映像によるセンシング技術 | カメラ内蔵AIにより、カメラに映っている滞在人数や、カメラの前を通過した人数のカウントが可能。また、視覚障害者が持つ白杖を検知し、必要な情報を音声案内するなど、安全で快適な公共空間の実現に貢献可能。さらに、遠隔地の工場で計器メーターの異常値をAIが自動検知し、ネットワークを通じて異常の検知を報せるなど、工場の安定稼働や従業員の安全管理にも貢献する。 |
こうした音と映像の技術により、例えば近い将来には施設の各所に設置された情報端末に話しかけるだけで、目的地までの案内サービスや緊急時の避難指示が受けられるなど、さまざまなソリューションの研究・開発により、快適で安全な社会の実現に貢献していく。
◎海外展開の強化
「市場環境」で触れたように、減災・防災の技術とノウハウを海外にも提供している。2021年3月期は、「タイの沿岸部のリゾートホテルにおける津波避難放送設備」「ベトナムホーチミンの河川氾濫警報設備」「インドネシアにおけるダム放水時注意喚起システム」を納入した。また、半導体を始めとした工場向け需要の取り込みにも注力する。
(2)安全・安心なモノ・コトづくり
①品質管理
同社では「一個づくり」というコンセプトのもとに、約2,500種にものぼる商品の品質と、効率的な生産を両立し、必要な時に必要なだけ「顧客が安心して使用できる商品」を供給している。
「顧客が安心して使用できる商品をつくる」という以下の品質方針を掲げている。
(参照ページ 品質方針 https://www.toa.co.jp/profile/policy.htm)
これは「品質第一」ということである。 顧客から「TOAとなら安心してつき合える(顧客の満足)」といっていただくためには、品質の優れた、故障の生じない、信頼の高い製品をつくるだけでなく、われわれ一人ひとりがそれぞれの役割で、心を込めた仕事をしてはじめて達成できる。 品質はこころ、企業のいのちであり、企業発展の原動力である。これをわが社の「品質方針」とする。 |
この方針を具現化するため、本社、ナレッジスクエア、東京事務所、大阪事務所において品質保証の国際規格「ISO9001」の認証を取得。世界が認めた品質・サービスを提供している。また、地球環境の保全も重要な経営課題のひとつと認識し、ナレッジスクエアにおいて環境品質の国際規格である「ISO14001」の認証も取得した。加えて、鉄道車両関連ビジネスにおいて、ソフトウェア開発プロセスの能力達成度を評価する国際指標「CMMI(Capability Maturity Model Integration:能力成熟度モデル統合)」のレベル2を達成している。
今後は、Global One Teamの協力関係に応じてグループの品質保証体制の見直しを実施し、抽出された課題に対する改善のためのステップやグループ各社の役割について検討するとともに、地域事業部の品質保証運用レベルの向上を図るため、現在改善ステップの明確化の実施を進めている。
また、環境保全あるいはエネルギー問題のリスクとして「気候変動課題への適応」の必要性が強まる中、同社としても必要な対応を進めるべく、現在対応内容について検討を進めている。
加えて、気候変動に限らず、製造業として「つくる責任、つかう責任」に照らし、環境保全と事業成長の両立をはかるべく目標を定め計画的に進める必要を認識しており、順次検討を進める予定である。
②特定有害物質の使用制限
欧州向け製品は、すべて改正RoHS指令(※通称RoHS2)に適合している。また、欧州向け以外の製品もRoHS対応を順次進めている。
※RoHS指令
欧州連合(EU)が定めた電気電子部品における特定有害物質の使用を制限するための法令。電気電子機器を廃棄する場合の人の健康および自然環境を保護し、電気電子機器のリサイクルを容易にすることを目的としている。
③サプライチェーンマネジメント、原材料調達
「TOA調達基本方針」を制定し、「法令等の遵守」「公平・公正な取引」「相互信頼の構築」の下、具体的には以下のような取り組みを行っている。
(参照ページhttps://www.toa.co.jp/profile/policy.htm 品質への取り組み )
・調達活動にあたっては、関係法規を遵守し、社会規範に従います。
・紛争鉱物の対応にあたっては、武装勢力の資金源となる紛争鉱物の不使用に向けた取り組みを推進しています。
・お取引先様の選定にあたっては、広く門戸を開放して公正に選定し、契約に基づく誠実な取引を行います。
・お取引先様との関係にあたっては、相互理解と信頼関係の維持向上に努め、共に成長発展できる関係を目指します。
・環境への配慮にあたっては、環境保全活動を推進し、当社の環境理念に沿った活動を行います。
④環境課題への対応
同社では環境課題を企業として取り組むべき重要な課題と認識しており、「TOAは、地球環境の保全を経営の重要課題の一つと認識し、全ての企業活動において、全員が積極的に環境保全に配慮した行動をする」との「TOA環境基本理念」を設定し、以下の環境方針を掲げている。
(参照ページ 環境活動コメント https://www.toa.co.jp/sustainability/environment/comment/)
☆ | ナレッジスクエアが行う主な事業活動は、技術開発、製品開発、設計等であり、これらの活動が環境に与える影響を的確に把握する。また同時に技術的、経済的に可能な範囲で環境目的及び目標を定め、計画的な取り組みをし、環境保全活動の継続的改善を図る。 |
☆ | 技術開発及び製品開発、設計には生産工程、製品の流通、使用、廃棄などの各段階での環境負荷の軽減及び有害化学物質の削減に配慮する。また、既存商品の改善変更時には流通、使用、廃棄などの各段階での環境負荷軽減に配慮する。 |
☆ | 環境保全、改善及び汚染の予防活動を経済的、効果的、継続的に推進するために、環境保全体制を整備し運用する。 |
☆ | 地域社会の一員として、省資源、省エネルギー、産業廃棄物の削減の推進に積極的に協力する。 |
☆ | 環境に関する法律、規制、協定等を遵守するとともに、必要に応じて自社規制を設定し、環境保全に努める。 |
☆ | 環境に関する教育、広報活動に努め、全従業員に「TOA環境基本理念」「環境方針」の理解と意識向上を図る。 |
☆ | 環境に配慮した技術、製品及び環境管理の実施状況については、必要に応じて公開する。 |
◎温室効果ガス排出削減
同社は、従来から製品およびサービスを通じてのRoHS2対応やクールビズの実施、グリーン購入、産業廃棄物のリサイクル等、CO2排出量の削減や環境負荷低減のための取組みを継続している。
現状、気候変動に係るリスクおよび収益機会が同社の事業活動や収益等に与える影響について、重要取組項目、および対応策について検討するとともに、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の見える化を進めている。測定可能な目標含め、開示できる状況になった時点で開示を行う予定である。
◎エネルギー管理
*クールビズ-COOL BIZ-、および柔軟な被服の着用の実施
かねてより、全社をあげて「夏の軽装活動(クールビズ)」を実施している。室温が28℃程度となるようエアコンの温度を設定し、涼しく効率的に働くことができるよう、「ノー上着・ノーネクタイ」の軽装スタイルで執務することを推進した。また、2021年11月から、多様な働き方に合わせた柔軟な被服の着用を実施。環境面への配慮のみでなく、「業務の目的」や「仕事をする相手」のことを考えた上で、仕事を行う場所や個人の立場を踏まえ、自ら考え、選択していくことを重要視している。
*オフィスにおける節電
オフィスでのCO2削減活動として、必要以上の電力を使わない取り組みを積極的に続けている。
ナレッジスクエアに新設された「ココラボ」では、コーポレートガーデンや六甲山系の豊かな眺望を得るために、西面の外装において全面的に開口を設ける一方で、西日の日射遮蔽のために太陽光追尾型自動制御の外部ブラインドを設置し、Low-Eペアガラスと組み合わせて日射遮蔽・遮熱効果を高め、冷暖房負荷の削減に努めている。また、タイマー制御により、夜間は自動全閉する設定とし、近隣住居への光害を抑制している。
吹抜は、トップライトに偏光ガラスを織り交ぜた光拡散ルーバーの設置や講堂・カフェテリア床面のガラスブロック化により、昼光利用の採光装置としても機能させ、照度センサによる照明制御システムと組合せて、照明負荷を低減している。また、トップライト部には換気窓を設置し、重力換気による空調負荷低減も実施するなど、積極的に節電を実施ししている。
◎循環型社会形成への貢献・環境保全
*小型2次電池のリサイクル協力
小型2次電池使用機器メーカーとして、小型2次電池の確実なリサイクル活動に協力している。
同社でリサイクルの対象となる小型2次電池の種類は、ニカド畜電池、 リチウムイオン電池、ニッケル水素電池。修理や定期メンテナンスの際に、全国の営業所で回収した小型2次電池をナレッジスクエアに集め、リサイクルセンターに送っている。
毎年2t以上の電池を、資源有効利用促進法の処理方法に基づき、適切に処理している。
*オフィスごみのリサイクル
環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」の認証を受けているナレッジスクエアでは、リサイクルの向上を目指し、分別廃棄する廃棄物を細分化している。さらに、製品ケースを外したり、電源コードを切断したりするなど分別廃棄時に個々人で簡単に対応できる取り組みを進めるなど、従業員の一人一人が分別に対する意識を高めることで、効率のよいリサイクルを追及している。
*グリーン購入
環境負荷低減の配慮を行うグリーン購入を推進している。紙・文房具・事務用品の購入については「エコマーク取得商品」「グリーンマーク取得商品」「グリーン購入法対応商品」のいずれかに該当するものを、各部門の担当者が選択できるようになっている。グリーン購入の達成率を高く維持できるようにし、環境負荷の低減を進めていく。
(3)従業員の安心づくり
持続的成長・企業価値向上に向けた「人的資本強化」の重要性を認識している。
労働安全衛生面での職場環境の安全・安心の維持・向上を常に図っているほか、労使関係については、真の労使協調をつらぬき、両者が対等の立場で誠意をもって話し合うよう心がけることを基本としている。
また、前中期経営計画では人事制度を大幅に見直し、多様なキャリア・アップを可能とする複線型評価制度や対話を重視した評価・育成など(ダイアログ活動)を進め、従業員エンゲージメントの向上を図っている。
2020年3月に健康宣言を制定。健康経営についての各種取り組みを実施したことが評価され、経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人認定制度において、2021年に続き「健康経営優良法人2022大規模法人部門)」に認定された。
持続的成長、企業価値向上のための重要な資産である「人的資本」の強化のための仕組みづくり、環境整備に取り組んでいる。これまでの取組をベースに、22年3月期より「エンゲージメントの向上」「人材育成の推進」「ダイバーシティの推進」を人材戦略の3本柱として推進する。
①従業員の働き甲斐醸成
持続的な企業価値向上のためには、「自らビジョンを考え、主体性をもって行動できる人材」を育成していくことが重要と考えており、従業員が自身のキャリアを描くことのできる複線型人事制度や、多様性を活かす評価制度を導入・運用している。
加えて、従業員の挑戦を促す環境創りも重視している。
(参照ページ リクルートサイト https://recruit-toa.jp/hrdevelopment/index.html)
◎ダイアログ活動
「ダイアログ活動」とは、「個人のパフォーマンス向上を通じて、組織のパフォーマンスを高める」ことを目的とし、1年間を通して上長と担当者間で行う対話活動。仕事を進めるうえで最も基本的な人間関係である、「上司⇔部下」の対話を充実させることが第一に重要と考え、人事制度を支える活動として運用に組み込み、促進している。
担当者が自身の成長意欲や仕事への熱意を上長に伝えることで、相互理解を深め、信頼関係を醸成するとともに、担当者の成長促進やモチベーション向上に繋げる。さらに、担当者が自身のキャリアをイメージし、考えやありたい姿を整理する機会とし、それを基にした目標設定や日々の業務におけるフィードバック、能力開発を主体的に行うことで、個人、さらには組織のパフォーマンス向上・成長促進を図る。
2021年1月に制度開始1年を前にダイアログ活動に関するアンケートを実施し、「お互いの関係性が深まる」「アドバイスが得られる」「仕事が進めやすくなる」等の回答が半数を占めるも、日常との業務報告との棲み分けや対話テーマ設定への課題も見えてきた。
2021年7月には、そうした課題を解決する策として、部下編・上司編として対話のガイドラインやFAQを作成し、ダイアログ活動の充実を図っている。
◎人事制度の改定
2021年3月期に人事制度の改定を行った。従業員それぞれのキャリア志向に応え、スピード感を持って育成できる制度とし、個の成長が全社の成長となるように運用・活用することがその狙いである。
2021年3月期より取組む人事制度
役割等級制度
組織(機能)に求められる役割を、管理者、担当者などそれぞれの期待レベルに応じて展開し、その役割にもとづき社員の能力開発や評価・処遇に活用する。
役割とは、組織から与えられた任務で、社員それぞれに与える。与えられた任務に基づき職群として5つ設定する。それぞれの職群ごとの定義、期待する役割基準を設定する。
◎人材育成
2022年3月期に掲げた「経営ビジョン2030」の中で「人材育成」を全社重点施策として掲げ、若手・中堅層、リーダー人材、プロ人材の育成を進めている。
リーダー人材育成については、経営知識・リテラシー向上の研修企画等、プロ/イノベイティブ人材の育成については、企業間共創プラットフォーム「point 0」を中心とした他社との共創、アイデア・ビジネス創出ワークショップ、産学連携強化企画のほか、出向規程等の見直しによる社外活動の促進と知見・ノウハウの獲得を目指す。
以下のような階層別研修を中心とした教育体系を構築し、実施している。
(同社WEBSITEより 教育体系図)
◎研修プログラム例:「音塾」
同社では「機器ではなく、音を買っていただく」という企業哲学が浸透しており、いかにいい音を届けるかに軸足を置いて企業活動を展開している。
そうした考え方の下、音のプロとなるべくこれまで培ったノウハウを伝承し、「音の匠」を育てることを目的とした音の専門メーカーならではの特徴的なプログラムが「音塾」である。
音塾のキーワードは「実践」であり、机上の理論だけでなく、実際に「聴いて、体験する」ことで、音に関する経験を得ることを最大の狙いとしている。
「音を買っていただく」ためには何が必要か、何をしなければならないのか実践的に経験し音に関する経験を得るほか、「匠」の発掘・伝承を図っている。
(参照ページ リクルートサイト https://recruit-toa.jp/hrdevelopment/index.html)
②従業員の健康と安全
◎働き方改革の実施
企業価値の実現に向け、無駄の徹底的な削減と多様性を力に変えるチームプレイで成長し続ける強い会社をめざすべく、働き方改革に継続して取り組んでいる。
従来から取り入れていたフレックスタイム勤務制度、育児短時間勤務を2019年4月に見直し、拡充すると同時に、テレワーク勤務制度、5日連続有給休暇推奨制度、副業・兼業の許可などを導入している。
◎健康経営
2020年3月に、「私たちは、企業価値を生み出すためには従業員が心身ともに健康で活き活きと笑顔で働けることが重要であると考えます。そのために、従業員の健康意識の向上と、職場環境づくりに持続的に取り組んでまいります。」との健康宣言を制定、以下のような取り組みを行っている。
健康維持・増進
| 健康経営優良法人として、従業員の健康を経営資源と捉え、健康診断受診の徹底・生活習慣病予防に関する周知活動・管理栄養士への相談窓口設置等の対策を講じている。健康状態に留意が必要な従業員を重視し、産業医との協議・改善施策を実施している。 また、新型コロナウイルス感染症に鑑み、個人参加型のウォーキングイベントを促進している。 喫煙対策としては、敷地内禁煙・勤務時間中禁煙にとどまらず、禁煙外来治療費の補助も実施している。 |
コミュニケーションの活性化
| 日常的な対話により動機付け・見守り・フィードバックを行うための制度として、従前よりダイアログ活動(対話)を導入し、コミュニケーション活性化を重視している。ダイアログ活動をより良い制度にするための従業員アンケート・経営陣への報告も行っている。業務インフラ面では、コミュニケーションがとりやすいWEBツールも採用している。 また、メンタルヘルス対策の必要性を重視し、各自の志向に応じて任意に選択したコンテンツで教育を受ける全社的な啓蒙活動を継続的に実施している。 ストレスチェック結果は、産業医も関与の上、労働時間・職務内容・所属等も踏まえ、傾向性も加味しながら検証している。 (ストレスチェック受検率92.3%) |
労働時間の適正化
| 全社レベルで総労働時間の低減を掲げ、定時退社の推進、WEBツール活用による業務改善、時間外労働の月次報告・管理、有給休暇取得率の管理を行っている。業務の効率化、デジタル活用等も採り入れ、労働内容にも着目し、業務改善を進めている。 ワークライフバランスは、多様な働き方・生産性の向上の拡充も重要な要素と考え、中長期的かつ全社的な視点から重点的に取り込んでいる。(平均勤続年数16.4年) テレワーク等は、手段の一つと位置付け、生産性向上の視点で多様な働き方の選択ができるよう、発展的な取組みとして推進している。
|
こうした各種取り組み・実績が評価され、経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人認定制度において、2021年に続き「健康経営優良法人2022大規模法人部門)」に認定された。
(参照ページ 健康経営 https://www.toa.co.jp/profile/health.htm)
③従業員の多様性・参画
同社経営指針のもと、従来から企業価値・ありたい姿に共感する人材において、性別や国籍などの属性や新卒採用者・中途採用者の区分に関係なく、品性および能力を第一主義とする人物本位の人材登用を実施している。
実態として、現状の従業員構成は、日本人男性が多数を占めており、女性や外国人の社員数・管理職登用者の実績は少ない。また、現時点で、測定可能な目標については開示に至っていないが、実現すべき多様性は、視点や価値観であるとの考えのもと、人材配置や社内環境を踏まえた上で測定可能な目標の検討を継続し、今後の開示に向けた取組みを進める。
人材育成については、「OJT(職場教育)」が教育の基本となり、補完要素として「Off-JT」、「自己啓発」を実施している。「OJT(職場教育)」は、現場の責任者である管理者による対話「ダイアログ活動」を中心としたマネジメントに加えて、従業員一人ひとりの主体性が必要不可欠であると考えており、特に、中核人材の育成では、個々人の主体的な挑戦を促す機会の提供と成長のための動機付けが重要であるとの考え方をもとに、人材育成を進める。
さらに、「経営ビジョン2030」の実現に向け、強い信頼関係にある組織を形成し、様々なアイデアを企業価値向上に繋げていくため、また、従業員一人ひとりの主体性が必要不可欠であることから、お互いの心理的な繋がりをより強固とするため、主に次の施策を進める。
・ | グループ会社を含む他社や異なる部門・職種などでの経験や人脈形成の支援、アイデアを具体的な活動に展開する主体的な挑戦の促進 |
・ | 上司と個々人との垣根のない対話「ダイアログ活動」の推進 |
・ | 生産性向上だけでなく、コミュニケーション価値の最大化、創造力をかき立てるため、自らの働き方を自ら考える「働き方改革・働きがい改革」の推進 |
・ | 強い会社であり続けるための源泉は従業員の健康にあるとの考えのもと、健康経営の推進 |
労働基準法など関係法令・規則を遵守している。以下の労働組合が組織されているが、労使関係は安定している。
名称 | TOA労働組合 |
上部団体 | JAM |
組合員数 | 543名(2021年3月31日) |
(4)地域社会との共生
①産官学共同で社会課題を解決
産官学共同で、減災・防災、地域活性化、公共空間での安全・安心の確保といった社会課題の解決を目指している。
直近では以下のような取り組みを行った。
*産学連携による特産品・観光地の情報発信で地域活性化に貢献
2021年11月、東金元気づくり株式会社(千葉県東金市)、城西国際大学 観光学部(千葉県鴨川市)とともに、「道の駅みのりの郷東金」において、地域活性化を目的とする情報発信の実証実験を開始した。
同社の自動案内放送システムで、施設利用客に対して地場の特産品やイベントのPR、地域の観光情報などを発信。放送コンテンツの制作には、城西国際大学の学生が参画し、周辺の観光スポット・グルメなどについて実体験を通したリアルな魅力を伝える。放送内容に関心を持った施設利用客に対しては、施設内に設置されている観光案内所にて、詳細情報の提供も可能。また、案内放送のBGMには、千葉県にゆかりのあるクリエイターの楽曲が採用されている。
なお、コロナ禍における音の課題解決を目指し、レジでの店員と利用客の会話を聴き取りやすくサポートする「パーティション取付型 会話補助システム」や、AIカメラを活用した「人数カウント」に基づく混雑状況の配信・三密を避ける案内といった、感染対策を意識したソリューションの実証実験も行う。
*神戸市営地下鉄駅舎内におけるスマート音声案内システムの実証実験を実施
2020年7月、神戸市が取り組む「Be Smart KOBE」 プロジェクトの一環で、AI搭載カメラで混雑状況を感知し、自動音声案内により混雑状況を緩和させる、Withコロナ社会を見据えた「スマート音声案内システム」の実証実験を神戸市営地下鉄三宮駅で実施した。
ラッシュ時に駅ホーム階と改札口階を繋ぐエスカレーター付近が混雑する神戸市営地下鉄三宮駅では、コロナ禍を通じて、密集解消の必要性がより一層高まっている。
この実証実験では、混雑状況をAI搭載カメラが認識し、混雑時にのみ階段の利用を促す自動音声案内を流すことで、エスカレーター付近の混雑状況の緩和を図る。また、エスカレーターに近い車両内の混雑を緩和するため、空いている車両への誘導も音声案内システム上であわせて実施するとともに、AI搭載カメラを通じて各動線の人流データを取得・活用することで、地下鉄利用者の密集を回避する意識の醸成を促す。
②CSR活動
「音楽と映像」を通じて、豊かな市民社会の実現への貢献を掲げている。
業務用音響機器と映像機器の専門メーカーとして培ってきた技術や自社資源を有効活用し、世代を超えて受け入れられる数多くのイベントや文化・芸術活動、地域のスポーツ振興をサポートしている。
自主企画では、社会に多く存在する「危険を報せる音」に対し、耳を澄ませて、自分の身を守るために考えて行動することの大切さを伝える、防災人形劇「カンカン塔の見はり番」を創作。全国各地の保育園や小学校、地域の防災施設などでの公演を通して、子どもたちの防災意識醸成に貢献している。
◎主な活動
TOA音の防災シアター「カンカン塔の見はり番」 | 「危険を報せる音」をテーマとした完全オリジナル作品「カンカン塔の見はり番」を創作。全国各地の保育園や小学校、地域の防災施設などで人形劇の公演を行っている。 |
「社会の安全・安心」に貢献できる人材を産学連携で育成 | 関西国際大学が2016年から開講中の企業協力講座「防災入門」に、初年度より講師を派遣。講座では減災・防災における音の重要性についての講義を行うなど、自社資源を活かして学生防災士の育成に取り組んでいる。 |
こうしたCSR活動に対して、以下のように外部から高い評価を得ている。
メセナ大賞受賞 | 本社に設置しているXEBEC(ジーベック)ホールを中心として行う音文化啓蒙活動に対して、1995年に最も芸術文化の発展に寄与した企業に贈られる「メセナ大賞'95」を受賞した。 メセナ大賞は、社団法人企業メセナ協議会が1991年に設立。2004年からは「メセナアワード」として、企業メセナの奨励とよりいっそうの発展をはかることを目的に、毎年、芸術文化の振興に高く貢献した企業・企業財団を表彰している |
メセナアワード2010 文化庁長官賞受賞 | 子どもたちと音楽との出会いを創出するメセナ活動「音楽による次世代育成の多角的活動 ―TOA Meet! Music Concept―」が、2010年に「文化庁長官賞」を受賞。同賞は、メセナアワードの一環として、芸術文化振興に高く貢献し、かつ地域活性化と次世代育成に関わるメセナ活動を表彰するもの。子どもの成長過程にあわせた複数の音楽体験プログラムを多角的に展開していること、NPOや地域の教育機関と連携した独自のプログラムを、長年にわたって継続していることが評価された。 |
第18回フィランソロピー大賞 特別賞「防災の見はり番賞」受賞 | 危険を報せる音をテーマとした創作人形劇、TOA音の防災シアター「カンカン塔の見はり番」が、2020年開催の「第18回フィランソロピー大賞」において、特別賞「防災の見はり番賞」を受賞した。同顕彰は、社会の課題解決のために自社資源を有機的・持続的に活用した社会貢献活動を表彰するもの。 音の専門メーカーならではの取り組みを継続的に行っていること、常に成長しようと活動の幅を広げていることが評価された。 |
「第6回パートナーシップ賞」受賞 | 芸術文化の力で子どもたちの健全育成を目指す「NPO法人子どもとアーティストの出会い」をパートナーとしてメセナ活動を展開している。2008年、優れた協働事例であるとして、「第6回パートナーシップ賞」(主催:NPO法人 パートナーシップ・サポートセンター)を受賞した。同賞は、社会が大きな変革を迫られている中、NPOと企業のパートナーシップを確立、活性化することにより新しい市民社会・新しい公共の実現に寄与することをめざし、2002年にNPO法人パートナーシップ・サポートセンターが設立したもの。 |
第12回PRアワードグランプリ 「優秀賞」受賞 | 第12回PRアワードグランプリ」(主催:社団法人パブリックリレーションズ協会)において、メセナ活動の一環として実施している「TOA 音楽と教育の意識調査」が、2010年に「ツール・スキル部門 優秀賞」を受賞した。 同調査では、調査に必要な工程を、専門スキルを持つNPOやベンチャー企業、業界団体など8団体と連携することにより実現。連携の仕組みそのものが汎用性のある優れた「社会的ツール」であるとして、今回の受賞となった。 |
(参照ページ CSR活動 https://www.toa.co.jp/sustainability/culture/approach/appraisal.htm)
(5)コーポレート・ガバナンス
①コーポレート・ガバナンス(2022年3月29日時点)
株主・顧客・取引先・従業員等、すべてのステークホルダーに対して、遵法性が確保された健全かつ透明性の高い企業経営を実践することにより、長期的・継続的に企業価値を増大させることを経営上のもっとも重要で恒久的な課題のひとつとして位置づけている。コーポレート・ガバナンスの更なる強化のため、各ステークホルダーへのアカウンタビリティー(説明責任)の重視と充実、迅速かつ適切なディスクロージャー(情報開示)等の実践に積極的に取り組んでいく。
(参照ページ コーポレート・ガバナンス https://www.toa.co.jp/ir/message/governance.htm)
◎組織形態及び取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役会設置会社 |
取締役 | 7名、うち社外2名 |
監査役 | 3名、うち社外2名 |
2019年3月に、コーポレート・ガバナンス体制のより一層の充実及び強化を図ることを目的として、任意の指名委員会及び報酬委員会を設置している。
指名委員会は、委員長である代表取締役社長をはじめ、社外取締役で構成され、取締役の選解任及び後継者育成計画等に関する事項について審議している。
また、報酬委員会は、委員長である代表取締役社長をはじめ、社外取締役で構成され、取締役が受ける報酬等の方針の策定及び取締役が受ける個人別の報酬等に関する事項について審議している。
両委員会とも社外取締役が関与することで、取締役会の機能の独立性・客観性を強化する体制を構築している。
◎コーポレート・ガバナンス報告書(同社WEBSITEより一部抜粋)
更新日:2021年12月16日
<基本的な考え方>
当社では、株主・顧客・取引先・従業員等、すべてのステークホルダーに対して、遵法性が確保された健全かつ透明性の高い企業経営を実践することにより、長期的・継続的に企業価値を増大させることを経営上のもっとも重要で恒久的な課題のひとつとして位置づけています。コーポレート・ガバナンスの更なる強化のため、各ステークホルダーへのアカウンタビリティー(説明責任)の重視と充実、迅速かつ適切なディスクロージャー(情報開示)等の実践に積極的に取り組んでまいります。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
2021年6月の改訂後のコードに基づき記載しております(2022年4月以降適用となるプライム市場向けの内容を含みます)。
原則 | 開示内容 |
【原則1-4政策保有株式】 | 当社は、取引・協業関係の維持・拡充のための手段として、他社の株式を取得・保有する場合があります。 当該保有に関しては、企業連携が高まり、企業価値向上につながることを政策保有方針の基本とし、以下の諸点を総合的に判断しております。 (1)発行会社と当社事業における中長期の協力関係の維持・強化、取引関係等の円滑化に資するか (2)資金調達等の円滑化に資するか (3)事業機会の創出・発展に資する可能性を有するか
なお、政策保有株式の縮減に関しては、上記の政策保有方針に合致しない場合には、上場株式を保有しないことを基本方針としており、現在の保有株式は、当社として、既に縮減した結果になっております。 さらに、当社は、今後も政策保有方針に合致しない上場株式を新たに保有する意思はありません。 当社は、取締役会にて、保有意義、定性的効果、定量的効果等を総合的に勘案し、検証を行っております。
政策保有株式の議決権の行使については、 発行会社が当社の政策保有方針に適う目的・事業を有していること、 発行会社の経営陣が適切な人材であること、 企業活動の適時かつ適切な情報開示を行っていること、 持続的な成長につながる事業基盤を有し、将来の株主価値の向上が見込まれること、 などを総合的に勘案し、議案の内容が中長期的な企業価値の向上に資するか否かという視点から、「権限規程」に定める然るべき決裁者が賛否を判断しております。
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【原則4‐1.取締役会の役割・責務(1)】 補充原則4‐1① 取締役会自身として何を判断・決定し、何を経営陣に委ねるのか | 取締役会は、月1回および必要に応じて適宜開催しており、会社運営の基本方針、中長期の事業計画および業務執行に関する重要事項を審議、決定しております。 また、経営戦略に関する重要事項を審議する場として、取締役および執行役員で構成する経営執行会議を月2回および必要に応じて適宜開催しております。 さらに、当社は、経営陣に対し、取締役会および経営執行会議における審議内容、中長期の事業計画、権限規程に基づき経営執行を委ね、意思決定の迅速化を追求しております。 |
補充原則4‐11③取締役会全体の実効性の分析・評価 | 当社は、2021年5月において、取締役会事務局を実施主体とし、全取締役・監査役を対象とした以下の項目に関するヒアリングを実施し、取締役会の実効性の評価を実施しました。 ①議案の適切性 ②説明内容・資料 ③社外視点を尊重する気風の醸成 ④会議運営全般 ⑤取締役会活性化の有益な方策 ⑥指名委員会及び報酬委員会の運営 ⑦四半期業務執行状況報告 ⑧中長期経営課題に対する実施報告 ⑨Web会議形式における改善要望 ⑩取締役会実効性評価の開催時期 その結果、各項目は適切に実施され、取締役会が有効に機能していると評価しております。 今後更に、重要会議体との関連性の明確化のもと、会議体全般を通じ、業務執行課題のPDCAの循環を加速、中長期経営課題・戦略の議論の充実およびデジタル技術を活用した会議の環境整備を進めることで、更なる取締役会の実効性を高めてまいります。 |
【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】 | (1)IR活動を所管する役員・その他担当部門等 当社は、経営企画担当部門を所管する役員がIR活動を統括し、広報担当部門とIR活動に関して適宜連携しております。さらに、経営企画担当部門・経理担当部門・法務担当部門が有機的に連携し、株主との対話促進に努めております。 (2)IRポリシーの作成・公表 当社は、業績、財務状況、将来ビジョンについて、公平、迅速かつ解りやすい情報開示に努めており、IRの基本方針と姿勢をIRポリシーとして公表しております。 当社ホームページのIRポリシー(https://www.toa.co.jp/ir/message/policy.htm)をご参照ください。 (3)株主との対話促進 当社は、企業説明会であるIR企業研究会等を開催しております。 (4)インサイダー情報の管理 当社は、「内部情報管理およびインサイダー取引防止規程」を定めており、株主・投資家との対話に際しては、IRポリシーに則り、インサイダー情報を管理しております。 |
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
原則 | 開示内容 |
【原則2-4.女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保】 補充原則2-4① 中核人材の登用等における多様性の確保・育成環境 | 当社は、人材の登用に関し、当社経営指針のもと、従来から企業価値・ありたい姿に共感する人材において、性別や国籍などの属性や新卒採用者・中途採用者の区分に関係なく、品性および能力を第一主義とする人物本位の人材登用を実施しております。持続的な成長と企業価値の向上を実現させるためには、お互いが多様な生き方、働き方を尊重し合うことが重要であり、その上で一人ひとりが最大限に能力を発揮することで、あらゆる創造が生まれてくると考え、多様性を活かすための人材配置および環境整備の推進を進めております。 なお現時点では、測定可能な目標については開示に至っておりませんが、実現すべき多様性は、視点や価値観であるとの考えのもと、人材配置や社内環境を踏まえた上で測定可能な目標の検討を継続し、今後の開示に向けた取組みを進めてまいります。
当社は、成果・能力主義に基づく客観的で公正な評価を行うとともに、多様性や専門性に富んだ人材を育成してまいります。人材育成については、「OJT(職場教育)」が教育の基本となり、補完要素として「Off-JT」、「自己啓発」を実施しております。「OJT(職場教育)」は、現場の責任者である管理者による対話「ダイアログ活動」を中心としたマネジメントに加えて、従業員一人ひとりの主体性が必要不可欠であると考えており、特に、中核人材の育成では、個々人の主体的な挑戦を促す機会の提供と成長のための動機付けが重要であるとの考え方をもとに、人材育成を進めてまいります。 さらに、経営ビジョン2030の実現に向け、強い信頼関係にある組織を形成し、様々なアイデアを企業価値向上に繋げていくため、また、従業員一人ひとりの主体性が必要不可欠であることから、お互いの心理的な繋がりをより強固とするため、主に次の施策を進めてまいります。 ・グループ会社を含む他社や異なる部門・職種などでの経験や人脈形成の支援、アイデアを具体的な活動に展開する主体的な挑戦の促進 ・上司と個々人との垣根のない対話「ダイアログ活動」の推進 ・生産性向上だけでなく、コミュニケーション価値の最大化、創造力をかき立てるため、自らの働き方を自ら考える「働き方改革・働きがい改革」の推進 ・強い会社であり続けるための源泉は従業員の健康にあるとの考えのもと、健康経営の推進
今後も、当社の持続的な成長と企業価値の向上につながる多様性の確保のための取組みを推進してまいります。 |
【原則3-1.情報開示の充実】 補充原則3-1③ サステナビリティについての取組みの開示(TCFD等の取組み) | (1)サステナビリティについての取組み 当社のサステナビリティの考え方は、当社の企業目的をはじめとする企業理念の実践そのものが、持続可能な社会の実現につながると考えております。 企業目的、経営基本方針(三つの安心)およびそれを実現するための行動規範としての「TOAグループ企業倫理規範」のもと、経営ビジョン2030 「Dr. Sound -社会の音を良くするプロフェッショナル集団- になる」の実現に向けた活動を通じ、当社の企業価値である「Smiles for the Public-人々が笑顔になれる社会をつくる-」を追求し続けていくことで、持続可能な社会の実現を目指しております。 サステナビリティを巡る取組みについての方針および具体的な取組みについては、以下の当社ホームページで開示を行っております。 https://www.toa.co.jp/sustainability/ (2)人的資本への投資等 経営ビジョン2030の実現に向け、そのフェーズ1(2021-2022年度)において、「エンゲージメントの向上」、「人材育成」を掲げ、取組みを進めております。具体的には、人事制度の刷新、能力伸長を促すカリキュラムや研修の提供、柔軟な勤務体制の仕組み整備、また、健康経営の推進のため健康経営優良法人の認定(https://www.toa.co.jp/profile/health.htm)など、自律した強い個を育む人材育成に注力し、組織力に最も重要なエンゲージメントの向上を図る環境を整備するなど、人材への投資を継続して行ってまいります。 なお、多様性の確保に向けた人材育成方針や社内環境整備方針等については、「補充原則2-4①中核人材の登用等における多様性の確保・育成環境」に記載をしておりますので、ご参照ください。 (3)知的財産への投資等 当社は、経営ビジョン2030の実現に向け、そのフェーズ1(2021-2022年度)において、「事業を支える知的財産ポートフォリオの構築」、「タイムリーな知的財産施策体制の構築」を掲げ、ビジネス環境の変化に対応して知的財産保護の強化と迅速化への取組みを進めております。 具体的には、社会のスマート化やつながるビジネスといった技術開発スピードの速い分野・多様なユーザーニーズへの対応が必要となる分野を重点分野として、知的財産ポートフォリオの構築を進め権利の強化を図ると共に、事業展開において当社の強みを活かすべく知的財産環境分析を行うなど知的財産情報を効果的に活用できる環境整備を進めております。 また、共創環境において創出されるソリューションや実証実験を活用した技術開発で生まれる発明に対して、知的財産保護の強化と迅速化を図る新たな特許出願プロセスを試行する取組みを行っております。共創により創出されたソリューションを知的財産保護の対象とし、その権利を活かしてさらに他の共創構築につなげる知的財産共創サイクルの実現を目指しております。 これらの取組みを推進し、今後展開するソリューションにおいて継続的に当社の強みを活かせる環境を知的財産の側面からも構築していく投資を行ってまいります。 (4)TCFD等の取組み 気候変動に係るリスクおよび収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を進めており、開示できる状況になった時点で開示を行う予定です。 |
◎会社の支配に関する基本方針に照らして不適切な者によって同社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
<大規模買付ルールの必要性>
同社は、大規模買付行為が行われた際には、株主が適切な判断に必要かつ十分な情報や時間を確保することや、大規模買付者と交渉を行うことが、自社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることにつながると考えている。そのため、同社は、大規模買付行為や買付提案を行う際の情報提供等に関するルール(以下「大規模買付ルール」といいます。)を定めている。
この大規模買付ルールは、株主に対し、大規模買付行為や買付提案に応じるか否かについて適切な判断をするために必要かつ十分な情報や時間を確保してもらうものであり、株主共同の利益に資するものと考えている。
(詳細は、同社2021年3月期有価証券報告書 28-31ページ https://www.toa.co.jp/books/yukahoukoku73/)
②内部統制システムに関して(2022年3月29日時点)
■内部統制システムに関する基本的な考え方(抜粋)
当社は、「プロの厳しい基準にかなう高い専門性を追求し、徹底した市場細分化と創造的な商品開発により、人間社会の<音によるコミュニケーション>に貢献する国際企業をめざす」を企業目的とし、三つの安心(一、顧客が安心して使用できる商品をつくる。一、取引先が安心して取引きできるようにする。一、従業員が安心して働けるようにする。)を経営基本方針としています。
かかる経営理念のもと、当社は「企業倫理規範」を制定し、業務の適正を確保するための「内部統制システム」を整備してまいります。
<基本方針>(抜粋)
当社は、会社法および会社法施行規則ならびに金融商品取引法に基づき、以下のとおり当社の業務の適正および財務報告の信頼性を確保するための体制を整備する。
(詳細は、同社コーポレート・ガバナンスに関する報告書のⅣ内部統制システム等に関する事項を参照 https://www.toa.co.jp/assetss/files/pdf/cg_211216.pdf)
③TOAグループ企業倫理規範
経営理念を実践するための行動指針として、企業倫理の観点からTOAグループの役員および従業員一人ひとりが遵守すべき基本的な考え方や行動姿勢を規定している。
(参照ページ TOAグループ企業倫理規範 https://www.toa.co.jp/profile/ethics.htm)
3.トップインタビュー
●社会的責任、社会的存在意義について
Q.近年、社会全体が持続可能な成長を目指す中で、その重要なプレーヤーの一員である企業の理念、ミッション、社会的存在意義が重視されています。
先ずは社長がお考えになる御社の社会的な責任や存在意義についてお聞かせください。
当社は、企業価値を「Smiles for the Public -人々が笑顔になれる社会をつくる-」と定めています。「笑顔」とは、単なる満足を超え、人々が「安心」「信頼」「感動」という価値を心の底から感じたときに自然と湧き出すものであり、それを当社は、人々の集まりである「社会」に対して実現することを目指しています。
当社は1934年の創業以来、拡声放送機器の製造・販売により、音で社会に貢献してまいりました。今では、建物内での火災発生時に避難を呼びかける非常用放送設備や、地震や津波といった大規模災害発生時に市民に危険を報せる防災用の屋外スピーカー、さらには駅や空港などの案内放送システムなど多くの場所で当社の音響システムをご採用いただいています。これらは全て「社会の音」として、屋内外の環境や人々の多様性に応じて誰にでも聴き取りやすく、正確な情報として皆様にお伝えする必要があります。加えて、当社の手掛ける防犯カメラや画像センシング技術を組み合わせて、様々な状況変化にも柔軟かつタイムリーに対応することで、誰もが安心で快適に過ごせる社会の実現に貢献していくこと、それが当社の使命であり存在意義だと考えています。
●ESGについての認識、考え方
Q.今伺った御社の責任や存在意義とESGの関係性についてお聞かせください。
当社には創業期に定められた「経営基本方針:三つの安心」があります。
一、顧客が安心して使用できる商品をつくる。
一、取引先が安心して取引きできるようにする。
一、従業員が安心して働けるようにする。
これは、お客さまはもちろんのこと、取引先や従業員、ひいては私たちを取り巻く自然環境など当社を取り巻くあらゆるステークホルダーの安心をつくっていくために努力し続けていくことの重要性を記したものです。こうした考えは、当社の企業価値や、今年度より掲げている経営ビジョン2030「Dr. Sound -社会の音を良くするプロフェッショナル集団- になる」においても基礎となっています。音の専門メーカーとして、社会課題解決に向けたソリューションを提供し続けるためにも、社会の変化、環境の変化に適応させた地域社会との共生、企業としてのガバナンスの取組みの進化を継続していきます。
●特徴・強み・競争優位性
Q.御社の特徴や強み、競争優位性はどんな点でしょうか。
当社は音で社会課題の解決に貢献してきた音の専門メーカーです。
当社従業員には「顧客に機器を買っていただくのではなく、≪音≫を買っていただく」という企業哲学が浸透しています。これは、「顧客が真に求めるものは機器そのものではなく、それを使用することによって得られる満足感(価値)である」という考え方です。この企業哲学のもと当社は、開発した商品はもちろんのこと、お客さまに提案・提供しているソリューションにおいても、“実際にお客さまの耳に届く音が、お客さまが真に求める価値を実現するものか”ということに徹底してこだわり、ひとたび問題が発生すれば、現場に駆けつけてその要因分析と解決に妥協せずに取り組んできました。当社の収益を支える屋台骨である「非常用放送設備」や、全国の自治体様にご採用いただいている「防災用高性能スピーカー」も、そのようにして生まれてきた商品です。そして今後も「これらの商品から出る音を聞いた人々が、命を守るための行動をとれるか」という視点で、更なる研究や改良、新たな商品の開発、現場での調査や提案活動、更にCSR活動とも一体となって取り組んでいきます。
これらは当社が常に音による社会課題の解決に取り組んでいるからこそ実現できることです。こうした取り組みを通じて蓄積した音の技術やノウハウ、エンジニアリング力はTOAの財産であり、最も大きな強みです。
●「サステナビリティ方針」について
Q.今回、御社の持続可能性を追求していく考えとして「TOAのサステナビリティ」を発信しました。ここでは、従来からの企業目的や経営基本方針、行動規範の内容等がTOAのサステナビリティの方針そのものであることを改めて打ち出したものとなっています(「3.TOAのサステナビリティ方針」参照)。このうち、御社の持続的成長にとって特に重要な課題について社長のお考えを伺いたいと思います。
まず、「社会課題解決に向けたソリューション」について伺います。特に社会の安全・安心を実現するソリューションについてどのように お考えでしょうか?
近年の地球温暖化による異常気象で、これまでにない甚大な災害が相次いで発生するようになりました。豪雨災害による河川の氾濫や土砂崩れなど、いつ、どこで発生するかわからない災害に対して、万が一を想定した備えと行動が求められています。こうした顕在化する社会課題に対し、人々の命を守るための情報を、いち早く、広く、確実に人々に届けるのが、当社のソリューションです。
その一例として、近年では創業以来培ってきた屋外拡声の技術とノウハウを生かし、防災行政無線に用いられる「防災用高性能スピーカー」を全国の自治体様に納入し、確実に人々に届く音を提供しています。また、豪雨による河川増水への対応として、太陽光駆動の監視カメラを使用した遠隔監視ソリューションにより、電源の確保が難しい河川でのリアルタイムでの状況監視も実現しています。屋内向けには、緊急地震速報、4か国語放送に対応した非常用放送設備を業界に先駆けて開発し、地震や火災の時でもいち早く多様な人々に情報伝達を行うことが可能です。さらに、直近の取組みとして、当社の地元である神戸市と国産ドローンメーカーと共同でスピーカーを搭載したドローンの実証実験を重ね、さらなる多様な情報発信手段実現のための活動を行っています。
一方で、コロナ禍において急速に浸透したデジタル化・リモート化は、常態化し更に進化していくことが予想される中で、当社が対象とするPublic空間では都市機能や人流の分散化や用途の多様化・複合化が進むものと考えます。当社としては日々刻々とその目的・用途が変化するPublic空間に合わせた安全・安心な音環境をタイムリーに提供するために、音と映像さらにはネットワークの技術を融合させたソリューションやコンテンツの提供の自動化・自律化を進めていきます。前述したようなそれぞれのシステムがネットワーク上でつながり、状況に応じて最適な形で連携する統合型プラットフォームのようなイメージです。こうした価値の提供に向けて、商品のIoT化はもちろんのこと、お客さまとつながる情報インフラの整備や、AI技術の取得、最適な音を届けるためのデータ取得と分析、様々な実証実験等の活動を行っています。このような活動を通じて、例えば、地震や火災などの災害発生時に、“避難情報を必要な場所に必要なタイミングで伝える”ことができる、新たな避難誘導システムの実現も可能だと考えています。
そしてその先には、駅・空港の運行システムや、スマートフォン・サイネージなどの多様な情報配信手段と相互に連携することで、一つの建物の中だけではなく、都市全体に対して最適な情報伝達を行い、いつでもどこでも安全・安心で快適な音環境を提供し、社会へ貢献していきたいと考えています。
Q:続いて「安全・安心なモノ・コトづくり」について、どのようにお考えでしょうか?
当社は、品質方針を「顧客が安心して使用できる商品をつくる」と掲げています。これは「品質第一」ということです。お客さまが当社と安心してお付き合いいただくために、当社はこれまでも高い品質を備えた製品を提供することにこだわってきました。加えて、災害発生時に人々の命を守るシステムや、社会インフラ機能の維持に関わるシステムなどを提供しています。こうした商品は中核事業であると同時に、社会にとっても無くてはならないものであり、有事の際であっても商品供給をストップしないために、BCP(事業継続計画)の策定・運用に注力しています。
継続的な事業成長を実現するには、気候変動が及ぼすリスクへの対応も欠かせません。異常気象の激甚化や自然災害がもたらす被害を少しでも低減していくことは、前述のとおり当社のソリューションの価値である一方で、当然、製品の生産計画や部品調達、物流などにおけるリスクでもあり、常に柔軟に対応できる体制を構築する必要があります。また、環境負荷軽減に対しても、これまでも取り組んできた自社商品の省電力化、オフィスにおけるエネルギー効率向上を継続しつつ、さらに中長期的、かつグローバルな視点で取組まなければなりません。
当社は、社会の安全・安心を実現するメーカーとしての責任を果たし、価値あるソリューションを生み続けていくことで、社会にとってかけがえのない存在であり続けたいと考えています。そのためにも、お客さまとの信頼関係を大切にし、TOAグループ全体の品質保証体制の向上を継続しながら、環境保全と事業成長の両立を図ります。
Q.続いて「従業員の安心づくり」についてお聞かせください。特に、健康経営や基盤・環境づくりについて どのようにお考えでしょうか?
当社のすべての原動力は、“人”です。「健康宣言」でもうたっておりますとおり、当社の企業価値「Smiles for the Public -人々が笑顔になれる社会をつくる-」を実現するには、従業員自身が心身ともに健康であること、活き活きと笑顔で働いていることが重要と考えています。そのためにも、まずは従業員の健康維持・増進が大前提であると考え、従業員間のコミュニケーション活性化を図る人事制度の制定・運用や個々人のワークライフバランス実現に向けて多様な働き方が選択できる環境の整備を推進しています。
Q.現在、企業の持続的成長のためには人的資本が極めて重要な経営資源と位置づけられています。「人的資本強化」が御社企業価値向上にいかに重要か、またそのためにどのような取り組みを進めているかをお聞かせください。
企業が今後ますます加速する環境変化のスピードに適応し、収益力、競争力を向上させ続けるには、従業員一人ひとりが主体性を持って活動し、着実に成長し続けられる基盤を構築しなければなりません。直近の取組みとして、前中期経営計画で人事制度を大幅に見直し、多様なキャリア・アップを可能とする複線型評価制度を導入し、さらに対話を重視した目標設定・評価を行うダイアログ活動を進め、従業員エンゲージメントの向上を図っています。
特に重視しているのは、従業員間の日常的な対話です。上司・部下だけでなく、疑問があったら誰にでもなんでも話すことができる、気軽に相談できる集団となることで、それぞれが助け合い、高め合える、強い信頼関係のある組織となります。従業員は安心して前向きな気持ちで自身の仕事に向き合うことができ、主体的、かつ挑戦的な行動を行えるようになります。このような行動は個々人の働き甲斐醸成、成長の促進、そして新たな価値の創造にもつながります。そして、自立した「強い個」の力が結集し、全員が目指す方向性を共有して仕事に取り組むことで、大きな力を持った組織集団となり得ます。
現在は、これら「エンゲージメントの向上」「人材育成の推進」に、「ダイバーシティの推進」を加えて、人材戦略の3本柱としています。この度の改訂CGコードにおいても「女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保」や「多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針」について、企業の考え方や目標、現状の開示が求められているように、企業の変革が必要とされています。さらに、多様化する顧客ニーズを的確に捉え、社会にとって価値あるソリューションを提供し、あらゆるステークホルダーに必要とされる企業であり続けるには、組織における「ダイバーシティの推進」は欠かせません。従業員が多様な生き方、働き方を尊重し合い、ひとり一人が最大限力を発揮し、あらゆる創造を生み出していく組織となるために、ダイバーシティの推進を強化していきます。
Q:ここ数年で人的資本強化が顕著に表れているのはどんな点でしょうか?
当社には、独自の“体感型・実践型”の技術研修プログラム「音塾®」があります。音の特性や電気の取扱いに関する基礎的な知識から専門的な技術まで、実際の音響機器を使用しながら参加者自身が体験し、習得することをコンセプトとしています。講義内容も、当社の従業員全員が受講している基礎的なものから、当社の営業担当者がお客さまに「TOAの音づくり」「音の価値」を分かりやすく、自信を持ってお伝えできるようになることを目指したもの、さらには、音響現場で機器を正しく作動させる実践レベルの技術を学びライセンス取得を目指すものまで、目的別に行われています。正しい音の知識、音づくりの技術を習得する事で、社会の音を良くする活動であり、発足から講義の企画まで全て従業員が主導となって継続しています。
他にも、社内では開発アイデア、販促アイデアのコンテストや、成功体験だけではなく失敗体験や今後の課題も共有することを目的とした意見交換会なども実施されています。近年では、Web会議システムを活用したオンライン開催により、場所や組織を超えて国内外問わず広くの従業員が議論を行い、お互いを高め合える場となっています。こうした従業員同士が学び合う文化は当社の強みと考えています。加えて、将来の事業拡大に必要な技術を選定し、先頭に立ってその技術を習得し社内に展開する従業員を育成することで、自社商品への導入加速化を図っています。
さらに昨今のコロナ禍において、感染症対策に奔走する世の中に音でお役に立てる商品をお届けしたいという想いの元、緊急開発プロジェクトが発足しました。そして、パーティション越しの会話を聴き取りやすくサポートする「パーティション取付型 会話補助システム」が生まれました。業界に先駆けて発売した本商品は、すでに自治体の窓口や、大規模ワクチン接種会場、大手スーパー様など、さまざまな場所でご活用いただいています。
こうした取り組みは全て、当社の従業員が自ら、「専門メーカーとして自分たちに何ができるのか」「音と映像の技術で社会の課題を解決できないか」という問題意識を常に持っているからこそ、日々の生活の中での気づきをそれぞれの活動に活かすことができているのだと思っています。創業87年間における当社のあゆみは、すべてこうした従業員の強い思いが原動力となっており、そのための環境を整えることが私の役割だと考えています。
Q:「地域社会との共生」や「コーポレート・ガバナンス」についてのお考え、取り組みをお聞かせください。
当社は、さまざまな現場における課題解決のための実証実験を実施しています。例えば、日本の教育現場の皆様に音の重要性を広く知っていただく為、国内の教育機関と連携し、音と学習効果の関係を検証しました。その結果を国際論文誌に公開し、日本国内でも学会等において成果発表を開始し、教室内の音環境が重要であることを提唱しています。また、埼玉県立総合教育センターさまが立ち上げた「次世代の学び創造プロジェクト」にも参画しており、学校教育の課題解決に向けた音の研究・開発を協働で進めようとしています。
また、CSR活動にも注力しており、地元神戸を中心に多くのイベントや文化・芸術活動、地域スポーツ振興をサポートしてきました。特に、阪神・淡路大震災の鎮魂イベントとして開催されてきた「神戸ルミナリエ」や、2011年から開催されている「神戸マラソン」においては、音響機器の設置・運営にてイベントの演出に貢献しています。また、自主企画イベントとして、2011年の東日本大震災をきっかけに2016年に誕生した防災人形劇「カンカン塔の見はり番」は、子どもたちに「危険を報せる音」を聴くこと、音を聴いた後に自ら取るべき行動を考えることの大切さを伝える内容となっています。
これらの活動においても、根底にあるのは「音で社会に貢献したい」という考えです。音の技術や自社資源で社会に貢献するとともに、当社としても更なる技術向上、ノウハウの蓄積の場として最大限に活用したいと考えています。
さらに、ここまで述べてきました取組みを支える仕組みとして、コーポレート・ガバナンスの充実は欠かせません。全てのステークホルダーとともに成長・発展していくためには、透明性と多様性を担保した企業統治が重要と考えています。今後も、持続的な企業価値向上を目的に、適時・適切な情報発信に努めて広くステークホルダーの皆さまとの対話の充実を図ってまいります。そして、事業成長による業績向上をはかることは勿論のこと、事業と一体となった形で環境、社会に配慮した取組みを推進し、ステークホルダーへの還元も充実させていきたいと考えています。
●「経営ビジョン2030」について
Q.次に、新たに掲げた「経営ビジョン2030」について伺います。社長が特に重要と考えているのはどの点でしょうか?
まず、「Dr. Sound -社会の音を良くするプロフェッショナル集団- になる」という言葉には、社会の音を担う企業としての自負を持ち、お客さまに「音のことといえばTOA」と頼っていただけるパートナーになる、という意味が込められています。
“Dr.”には「医師」や「医者」という意味に加えて、「博士」という意味もあります。当社はこれまでも、医者のように、お客さまの音に関するお困りごとを解決してまいりました。今後も、専門的な知識や知見をさらに磨き、社会の課題解決に貢献することで、音のコンサルティングカンパニーとしての確固たる地位を築きます。一方で、博士のように“音の見える化”を進め、心理学や脳科学など学術的な見地から、もっとわかりやすく音の可能性や効果についてご提示できるようになりたいと考えています。そのためには、さまざまなデータの蓄積や解析が必要ですし、産官学連携等の社外共創を積極的に進めることが重要です。こうした取り組みは、当社の新成長分野の探索と創造にもつながってきます。
もちろん、この経営ビジョンにおける考え方は、先ほど語った「サステナビリティ方針」に組み込まれています。2021年、2022年の2年間は経営ビジョン実現に向けたフェーズ1と位置付けて、グローバルでの収益力・競争力の向上と、新たな成長基盤の構築を推進しています。AIやクラウドを活用した新しい技術の開発、それらを最大限に生かすデータの収集や分析といった活動を通じて、お客さまとつながり続ける基盤を確立し、付加価値の高いソリューションやコンテンツの提供を実現していく考えです。また、ビジネス基盤のデジタル化にも注力しています。お客さまとのエンゲージメントを高め、需要の創出や新たなビジネス創出の源泉となる仕組みの整備や、当社バリューチェーンの好循環を支える基幹システムの更新を進めています。これら一連の仕組みは、当社ソリューションとデータ連携していくことで必要な情報を必要なタイミングで全ての方に確実に届けることができる、次世代のコミュニケーションシステムの基盤となります。そして、これらの取組みを推進していくためには、自立した強い個を持った「人」が育ち、結集できる環境の整備が最も重要になります。
●ROEについて
Q.投資家の期待に応えるためにも現在のROEを引き上げていくことが必要ではないかと思いますが、どのような道筋でROEの改善を実現させますか?
中長期的に資本生産性を向上していくことは持続的成長のためには非常に重要だと認識しており、ROEだけでなく、資本コストや今後想定されるリスクや機会等踏まえた将来キャッシュを総合的に考えております。既存事業の収益性を高めながら持続的な成長に向けた将来への投資を行うことを基本と考えており、「経営ビジョン2030」を掲げる中で、現在、中長期スパンでの財務戦略・資本政策についても検討を進めています。
●その他のリスク、課題
Q.目指すべき将来像を実現するうえで現状では不足しているリソース、課題も当然おありだと思います。どんな点を課題と認識されていますか?またリスクともなるそれらの課題をどのようにして克服していきますか。加えてESGについてもこれから必要な取り組みはどんな点でしょうか?
当社の収益力、競争力を向上させるには、海外地域での業績をさらに伸ばす必要があります。日本では業務用音響機器メーカーとして高いシェアを誇り、海外でも当社が得意とする学校、工場、宗教施設などでは一定の実績があります。特に、生産工場を置くインドネシアや台湾では、現地のニーズに合わせた商品を生み出す地域密着での開発が進み、成果を上げていますが、市場全体を見たときのシェアや知名度はまだ限られています。しかし、このような状況を当社の伸びしろと捉えています。業務用音響機器の専門メーカーとしてグローバルに活動しているのは、当社の強みです。“グローバルワンチーム”の考えのもと、自社資源を結集してより最大限に活用し、地域を超えて水平展開することで、グローバルで存在価値を高めていきたいと考えています。
環境や気候変動、ダイバーシティ推進等に代表されるESGテーマにおいても、これまで申し上げた通り事業と一体で取組と成果を進めて行く考えです。まずは自社の現状や社会の動向、それらがもたらす影響やリスクなどについて、正しく把握し、見える化を進め、具体的な施策と目標の検討を進めます。
●ステークホルダーへのメッセージ
Q.様々なお考えをお聞かせいただきありがとうございました。最後にステークホルダーへのメッセージをお願いいたします。
当社は、さまざまなステークホルダーとつながり、対話を重ねることで、社会が真に求める「新たな価値」を実現したいと考えています。
当社は、これまで数多くの「音」と「映像」のソリューションを社会に提供してきました。さらに現在は、それらを「ネットワーク」でつなぎ、さらにはお客さまともつながることで、新たな価値を提供する、というビジネスの展開を進めています。このようなビジネスを実現するためには、自社の技術やノウハウを高めるとともに、社外の知見を融合させる必要があります。2020年12月にグランドオープンした研究開発拠点ナレッジスクエアは、「共創」をコンセプトとしており、社外の方々と共に価値をつくり上げていく仕組みとして、「TOAミライソリューション」を展開しています。また、さまざまな市場・地域において産官学連携による実証実験や、コンソーシアムなどを活用した企業間での共創を通じて、新たな価値の創出を目指しています。こうした活動を加速させていくためにも、ステークホルダーの皆さまとの対話は不可欠です。
今後も、私たち一人ひとりが社会の一員であることを強く意識し、社会のためにできることに全社一丸となって挑戦してまいります。そして、皆さまとともに、「社会の音」を良くしていきたいと考えています。応援よろしくお願いいたします!
4.財務・非財務データ
(1)財務データ
◎BS/PL
| 2016/3期 | 2017/3期 | 2018/3期 | 2019/3期 | 2020/3期 | 2021/3期 |
売上高 | 45,840 | 42,504 | 44,180 | 46,338 | 45,068 | 40.575 |
営業利益 | 3,638 | 2,935 | 3,510 | 3903 | 3,465 | 2,293 |
当期純利益 | 2,093 | 1,750 | 2,138 | 2,504 | 2,065 | 1,596 |
EPS(円) | 61.83 | 51.70 | 63.16 | 73.97 | 60.99 | 48.87 |
ROE(%) | 5.3 | 4.4 | 5.1 | 5.8 | 4.8 | 3.7 |
純資産 | 41,572 | 42,307 | 45,786 | 45,689 | 44,780 | 46,365 |
総資産 | 52,865 | 54,294 | 57,824 | 57,742 | 58,653 | 58,572 |
自己資本比率(%) | 75.0 | 74.1 | 75.2 | 74.8 | 72.9 | 75.8 |
*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
◎CF
| 2016/3期 | 2017/3期 | 2018/3期 | 2019/3期 | 2020/3期 | 2021/3期 |
営業CF | 2,955 | 3,040 | 2,760 | 3,261 | 1,832 | 5,290 |
投資CF | -987 | -642 | -1,158 | -2,025 | -2,558 | -2,072 |
フリーCF | 1,968 | 2,398 | 1,602 | 1,236 | -726 | 3,218 |
財務CF | -1,210 | -796 | -1,393 | -865 | -2,743 | -3,055 |
現金・現金同等物 | 17,913 | 19,161 | 19,670 | 19,660 | 16,108 | 16,268 |
*単位:百万円
(2)非財務データ
①社会資本関連
| 2016/3期 | 2017/3期 | 2018/3期 | 2019/3期 | 2020/3期 | 2021/3期 |
株主数 | 3,934 | 3,876 | 2,970 | 2,939 | 3,084 | 3,066 |
*同社 有価証券報告書より
②人的資本関連
| 2016/3期 | 2017/3期 | 2018/3期 | 2019/3期 | 2020/3期 | 2021/3期 |
従業員数 連結 | 3,130 | 3,129 | 3,161 | 3,253 | 3,312 | 3,020 |
単体 | 789 | 782 | 778 | 803 | 820 | 818 |
うち、女性従業員数 | 186 | 190 | 190 | 199 | 197 | 196 |
同比率 | 23.6% | 24.3% | 24.4% | 24.8% | 24.0% | 24.0% |
外国人従業員数 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 |
管理職数 | 108 | 114 | 113 | 109 | 113 | 113 |
うち、女性管理職数 | 0 | 0 | 1 | 2 | 2 | 2 |
同比率 | - | - | 0.9% | 1.8% | 1.8% | 1.8% |
取締役数 ※( )内は社外 | 6名(1名) | 6名(1名) | 7名(2名) | 7名(2名) | 7名(2名) | 7名(2名) |
うち、女性取締役数 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
有休取得率 | 58.30% | 59.92% | 63.24% | 63.79% | 65.19% | 54.15% |
離職率 | 5.2% | 6.0% | 5.3% | 5.4% | 3.9% | 4.5% |
*従業員数は連結、それ以外は単体
*有給取得率は、2021年/3月末のみ、当年度に付与された有休日数を上限として集計
例.有休付与が20日の従業員が22日取得していた場合、付与日数上限分の20日取得(取得率100%)したものして集計
*有休取得率及び離職率以外は期末数値。
<参考1:マテリアリティについて>
今回のレポートで取り上げた同社の取り組みや課題認識を基に、(株)インベストメントブリッジにてSASB Materiality Mapなどを参考にマテリアリティを設定した。同社の課題認識や取組みとの関係は以下の通りである。
環境 | 温室効果ガス排出削減 | ④環境課題への対応:温室効果ガス排出削減(P17) |
エネルギー管理 | ④環境課題への対応:エネルギー管理(P17) | |
循環型社会形成への貢献・環境保全 | ④環境課題への対応:循環型社会形成への貢献・環境保全(P18) | |
気候変動の影響・対応 | ②気候変動に関する対応(P13) ①コーポレート・ガバナンス(P29) |
社会資本 | 顧客のプライバシー保護・データ保護 | ③顧客のプライバシーおよびデータ保護(P14) |
社会・地域との共生 | ①産官学共同で社会課題を解決(P23) ②CSR活動(P23) | |
品質管理 | ①品質管理(P16) ②特定有害物質の使用制限(P16) |
人的資本 | 従業員の働き甲斐醸成、教育・育成制度 | ①従業員の働き甲斐醸成(P20) |
従業員の健康と安全 | ②従業員の健康と安全(P21) | |
従業員の多様性・参画 | ③従業員の多様性・参画(P22) |
ビジネスモデル& イノベーション | 競争力強化に向けた取り組み | ④競争力強化に向けた取り組み(P15) |
サプライチェーンマネジメント、原材料調達 | ③サプライチェーンマネジメント、原材料調達(P16) |
リスク管理・ガバナンス | コーポレート・ガバナンス体制の拡充 | ①コーポレート・ガバナンス(P24) ②内部統制システムに関して(P29) ③TOAグループ企業倫理規範(P29) |
<参考2:「ESGブリッジレポート」と「ROESGモデル」>
ESG Bridge Reportの発行に際しては、柳 良平氏(京都大学経済学博士、エーザイ株式会社専務執行役CFO、早稲田大学大学院会計研究科客員教授)に多大なご協力を頂いた。
この「参考」のパートでは、ESG Bridge Report発行の趣旨についても述べさせていただくとともに、同氏の提唱する「ROESGモデル」の概要を同氏の著作「CFOポリシー」から引用する形で紹介する。
(1)ESG Bridge Reportについて
ESG投資がメインストリーム化する中で、投資家からは日本企業に対し積極的なESG情報開示が求められ、これに呼応する形で統合報告書作成企業数は増加傾向にあります。
ただ、統合報告書の作成にあたっては経営トップの理解・関与が不可欠であることに加え、人的リソースおよび予算負担から多くの企業が踏み出すことができていないのが現状です。
また、統合報告書の作成にあたっては各種データの整理、マテリアリティの特定、指標や目標値の設定など多くのステップが必要ですが、現状の準備不足のために二の足を踏んでいるケースも多いようです。
しかし、柳氏が「CFOポリシー」で、「日本企業が潜在的なESGの価値を顕在化すれば、少なくとも英国並みのPBR2倍の国になれるのではないだろうか」「ROESGの実現により日本企業の企業価値は倍増でき、それは投資や雇用、年金リターンの改善を経由して国富の最大化に資する蓋然性が高い」と述べているように、日本企業のESG情報提供は、日本全体にとっても有意で積極的に推進すべき事項であると株式会社インベストメントブリッジは考えています。
そこで、一気には統合報告書作成には踏み出せないものの、ESG情報開示の必要性を強く認識している企業向けに、現時点で保有するデータやリソースをベースに、投資家が必要とするESG情報開示に少しでも近づけるべく、弊社がご協力して作成しているのが「ESG Bridge Report」です。
日本企業のESG情報開示を積極的に後押ししている日本取引所グループが発行している「ESG情報開示実践ハンドブック」のP6には「ここで紹介している要素が全て完璧にできていないと情報開示ができないということでもない。自社の状況を踏まえてできるところから着手し、ESG情報の開示を始めることで、投資家との対話が始まり、そこから更なる取り組みを進めていく際に、本ハンドブックが手がかりになることを期待している」とありますが、「ESG Bridge Report」は、まさに「できるところから着手し、ESG情報の開示を始める」ためのツールであると考えています。
柳氏によれば「ROESG」の本格的な展開のためには、ESGと企業価値の正の相関を示唆する実証研究の積み上げ、企業の社会的貢献が長期的な経済価値に貢献する具体的事例の開示などが必要とあり、実際のハードルは高いのですが、各企業のESGへの取り組みがいかにして企業価値向上に繋がっているかをわかりやすくお伝えしたいと考えています。
お読みいただいた多くの投資家からのフィードバックを基に、よりクオリティの高いレポートへと改善してまいりますので、是非忌憚のないご意見を賜りたいと存じます。
株式会社インベストメントブリッジ
代表取締役会長 保阪 薫
k-hosaka@cyber-ir.co.jp
(2)「ROESGモデル」について
(拡大する非財務資本の価値、ESG投資の急増、ESGと企業価値をつなぐ概念フレーム策定)
近年、多数の実証研究において企業価値評価における非財務情報の重要性拡大が証明されており、今や、企業価値の約8割は見えない価値(無形資産)、非財務資本の価値と推察される。
加えて、非財務情報と企業価値の関係を調べた多数の実証研究の結果から、ESGと企業価値は正の相関を持つ蓋然性があると考えられる。
一方、グローバルにESG投資のメインストリーム化が進む中、潜在的なESGの価値にもかかわらず多くのケースでPBRが1倍割れもしくは低位に留まる日本企業は、PBR上昇のために「ROESGモデル」により、非財務資本を将来の財務資本へと転換すること、つまりESGと企業価値をつなぐ概念フレームを策定して開示する必要がある。
(「ROESGモデル」の概要)
株主価値のうち、「PBR1倍相当の部分」にあたる株主資本簿価は現在の財務資本・財務価値により構成される。
一方、株主価値のうち「PBR1倍超の部分」にあたる市場付加価値は、(将来の財務資本ともいえる)非財務資本により構成されると同時に、残余利益モデルにおいてはエクイティス・プレッド(ROE-株主資本コスト)の金額流列の現在価値の総和でもある。
このことから柳氏は、非財務戦略の結論として「非財務資本とエクイティ・スプレッドの同期化モデル」=「ROESGモデル」を、ESGと企業価値を同期化する概念フレームワークとして提案している。
「ROESGモデル」においては、「市場価値(MVA)」を通じて残余利益の現在価値の総和としてのエクイティ・スプレッドと非財務資本が相互補完的である、つまり、エクイティ・スプレッドによる価値創造はESGを始めとする非財務資本の価値と市場付加価値創造を経由し、遅延して長期的には整合性を持つ。
そのため、ESG経営は資本効率を求める長期投資家とは市場付加価値を経由して同期化でき、協働が可能であろう。
これを傍証するように、柳氏が実施した投資家サーベイにおいては、世界の投資家の大多数が「ESGとROEの価値関連性を説明してほしい」と要望していると同時に、「ESGの価値の100%あるいは相当部分をPBRに織り込む」と回答しており、「ROESGモデル」は間接的にも長期投資家の大半から支持されていると解釈できよう。
(同氏の「ROESGモデル」の詳細については、柳良平著「CFOポリシー」中央経済社(2020)
をご参照されたい。
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