ブリッジレポート
(3853) アステリア株式会社

プライム

ブリッジレポート:(3853)アステリア 2022年3月期第3四半期決算

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平野 洋一郎 社長

アステリア株式会社(3853)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役社長

平野 洋一郎

所在地

東京都渋谷区広尾1丁目1番39号 恵比寿プライムスクエアタワー19F

決算月

3月

HP

https://www.asteria.com/jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

851円

17,491,265株

14,885百万円

15.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

-

121.44円

7.0倍

330.25円

2.6倍

*株価は2/14終値。発行済株式数、DPS、EPSは22年3月期第3四半期決算短信より。ROEは親会社所有者帰属持分当期利益率、BPSは1株当たり親会社所有者帰属持分、いずれも前期実績。

 

業績推移

決算期

売上収益

営業利益

税引前利益

当期利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

3,110

577

444

197

11.90

6.00

2019年3月(実)

3,478

389

463

271

16.39

4.00

2020年3月(実)

2,677

-262

-159

-176

-10.66

4.00

2021年3月(実)

2,688

820

1,026

807

49.02

4.50

2022年3月(予)

2,900

3,400

3,400

2,000

121.44

未定

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。IFRS適用。当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

 

アステリア株式会社の会社概要、2022年3月期第3四半期決算概要及び通期業績予想などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期第3四半期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:「中期経営計画STAR」>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 「ソフトウェアで世界をつなぐ」をコンセプトに、ソフトウェア技術とインターネット技術を中核としたさまざまな「つなぐ」ニーズに応えるソフトウェアを開発。主力製品「ASTERIA Warp」の導入企業数は2020年に9,000社を突破。2021年まで15 年連続市場シェア No.1 を達成している。優れた「先見性」をベースにした製品開発力、独自の企業文化の浸透により構築される強力な人的資本、高い市場シェア、新技術、ソリューションへの積極的な取り組みなどが特長・強み。

     

  • 22年3月期第3四半期の売上収益は前年同期比6.7%増の21億27百万円。欧米、特に米国と英国において、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、デザイン事業が前年同期比で減収となったものの、「ASTERIA Warp」を主力製品とするソフトウェア事業が伸張した。営業利益は同110.9%増の9億73百万円。「中期経営計画STAR」に沿った人員の拡充やマーケティング施策を実施したことで販管費が増加したが、ソフトウェア事業の増収効果、投資事業の収益(主としてGorilla Technology社(以下Gorilla社)株式の評価益)で吸収し、大幅な増益。第3四半期(累計)の最高益を記録した。売上総利益率、営業利益率はそれぞれ前年同期比で2.6%、22.6%上昇した。

     

  • 22年1月13日に上方修正した業績予想に変更は無い。第3四半期決算を発表した2022年2月14日時点において、Gorilla社の上場予定は2022年第2四半期(2022年4-6月)と公表されているが、修正業績予想には同社の上場時期の遅延を含めた想定されるリスクを一定程度織り込んでいる。配当予想にも変更は無い。中間配当0.00円/株。期末配当は現時点では未定。

     

  • 22年1月13日の上方修正の主要因であるGorilla社のナスダック市場上場に伴う評価益は38億円の計上を予定している。第3四半期決算短信にも記載通り、評価益には上場時期の遅延を含めた想定されるリスクを一定程度織り込んだ、堅めの数字であり、仮に遅延したとしても予想の修正につながる可能性は低いとのことだ。

     

  • 一方、主力のソフトウェア事業は各製品とも引き続き順調で、デザイン事業も22年3月期第2四半期(7‐9月)をボトムに回復の兆しが見られる。第4四半期(1‐3月)に投資事業を含めた3事業でどれだけの売上・利益を積み上げていくのか注目したい。同社では例年3月中旬に配当予想を公表している。今期予想EPSは、前期の49円02銭を大きく上回る121.44円。こちらの公表にも注目したい。

     

  • 中期的な視点からは「中期経営計画STAR」における事業活動計画の進捗を、各製品の目標を中心に引き続き注視していきたい。

     

     

1.会社概要

「ソフトウェアで世界をつなぐ」をコンセプトに、ソフトウェア技術とインターネット技術を中核としたさまざまな「つなぐ」ニーズに応えるソフトウェアを開発。主力製品「ASTERIA Warp」の導入企業数は2020年に9,000社を突破。国内企業データ連携ソフト市場で直近の2021年まで15年連続市場シェア No.1を達成している。「中期経営計画 STAR」では、「自律・分散・協調型の新社会を創るサービスを世界規模で提供する」とのビジョンの下、24年3月期目標「売上高45億円、調整後EBITDA10億円」達成を目指す。

 

【1-1 上場までの沿革】

中学生のころからコンピュータに関心を持ち、ソフトウェア開発に打ち込んできた平野洋一郎氏(現 アステリア株式会社 代表取締役社長)は、コンピュータの世界をもっと知りたいと思い大学に進学したが、高い志から大学を中退し知人とソフトウェア会社を設立。エンジニアとして活躍し自身が開発したワープロ用ソフトが人気を博した後に、世界的なソフトウェアメーカーであったロータス社に入社する。
1990年代半ば、インターネットが急速に普及する中、メーカーが異なっていてもシステムやソフトウェア同士が繋がる必要性のある時代が必ず到来すると「先見」した平野氏は、ロータス社の主力製品であったグループウェア「ロータス ノーツ」のデータ形式や通信手順を公開して他社メーカーのグループウェアと接続できるようにする事がインターネットの時代には不可欠であると提案したが、既に大きなシェアを確保していたロータス社はその提案を却下した。
データ連携の必要性・重要性を強く感じていた平野氏は、コンピュータの共通言語である新技術XMLを使用することで、社内外を問わずあらゆるシステムがつながり、さまざまな業務が遂行される時代が来ると確信し、同僚であった北原淑行氏とともに2名で、1998年9月、インフォテリア株式会社(現 アステリア株式会社)を設立した。

 

製品開発に徹底して集中することが必要と考えた平野社長は会社設立後間もなく、日本のスタートアップ企業ではこの当時では異例の約27億円の資金調達を実施し開発に注力。
2002年には、データ連携のためのソフトウェアである「ASTERIA R2」(現 「ASTERIA Warp」)をリリースした。
「ASTERIA Warp」は、「ノーコード」コンセプト、つまり導入企業側で完全なプログラミングが出来なくてもデータ連携を実現できる点が当時として画期的な製品で、長年にわたりトップシェアを握る同社の主力製品に成長していった。

 

コンピュータの共通言語XMLを使用したデータ連携は、まず初めに電子商取引の領域で新しい潮流を形成し、ソニー、京セラといった一流企業が注目し採用。その後データ連携の有意さを理解する企業数は着実に増加し、「ASTERIA Warp」の導入企業数は、リリースから3年後の2005年には200社を突破。2006年にはEAI(企業データ連携、Enterprise Application Integration)のソフトウェア国内シェアNo.1となった(その後2021年まで15年連続シェアNo.1)。
こうして成長トレンドに入った同社は業容を一段と拡大し、2007年6月に東証マザーズに上場。
その後も、2009年6月モバイルコンテンツ向け管理システム「Handbook」、2016年10月モバイルアプリ作成ツール「Platio」、2017年6月AI搭載IoT統合エッジウェア「Gravio」など、時代の流れを先見し、「つなぐ」価値を拡大する製品・サービスを次々と市場に投入していく。
2018年3月には、東証1部へ市場変更し、同年10月にはアステリア株式会社に社名を変更した(アステリアは、ギリシャ語で「星座」の意。地球上に存在するさまざまな輝くものを星座のように繋いで、新しい形、新しい価値を創っていくことを目指して社名とした)。

 

【1-2 理念】

経営理念として以下の3つを掲げて、これを基に、世界中に価値を提供する企業となるべく挑戦を続けている。

発想と挑戦 (Challenge for Ideas)

自由闊達な発想と挑戦を尊ぶ。時代をリードするイノベーションは新しい発想から生まれる。その実現のために、リスクを取ることを厭わず、常に新たな可能性に挑戦する。

世界的視野 (Global Perspective)

常に世界市場を視野に入れる。世界的に存在価値のある独自性を持った製品やサービスを提供する。

幸せの連鎖 (Chain of Happiness)

幸せを連鎖させる。自ら幸せを感じる誇りある活動を営むことで、お客様の幸せに貢献し、ひいては社会の進歩発展に寄与する。

 

【1-3 事業内容】

「ソフトウェアで世界をつなぐ」をコンセプトに、ソフトウェア技術とインターネット技術を中核としたさまざまな「つなぐ」ニーズに応えるソフトウェアの開発と販売およびそれに付帯する事業を行っている。
報告セグメントは「ソフトウェア事業」と「投資事業」の2つ。

 

1-3-1ソフトウェア事業セグメント
ソフトウェア事業とデザイン事業で構成されている。

 

(1)ソフトウェア事業
同社の中心事業。
個別の企業向けのソフトウェア開発を行う「受託開発」ではなく、不特定多数向けのパッケージやクラウドサービスを提供する「製品開発」に特化。企業情報システム、クラウドサービス、ハードウェア機器などを「つなぐ」ためのソフトウェアを開発し、市場に提供している。
主要製品は、「ASTERIA Warp」「Handbook X(Handbookを含む)」「Platio」「Gravio」の4つ。

 

(データ連携について)
同社事業の根幹となるコンセプトが「つなぐ」。具体的には、容易かつ効率的、安全に同一企業内や他の企業間とのデータ連携やシステム連携を行い、データの価値を拡大するということである。

 

*データ連携の必要性
システムやソフトウェアは開発したベンダー、使用しているプログラミング言語やプロトコル(規格、手順、約束事)が異なるのが大前提である。
そのため、同一企業内でも、営業部門と商品企画やマーケティング部門で使用しているシステムやツールが異なると、両部門のデータを簡単には連携させることができず、他部門からのデータを自部門で改めて加工しないと使用することができないことになる。また、外部の企業にデータを送る際も、そうした手間暇がかかることとなる。

 

こうした問題を解決するのが「データ連携」である。
データ連携を行えば、部門間または企業間で異なる形式で扱っていたデータを、自部門や自社のシステムで扱えるように加工する手間やコストを削減でき、業務の生産性が大きく向上するほか、必要なタイミングで必要なデータをすぐに利用できるため業務上の機会損失を防ぐことができる。

 

(同社資料より)

 

(主要なソフトウェア製品)
①データ連携ミドルウェア「ASTERIA Warp」(アステリア ワープ)
平野社長が「データ連携」を容易に行うことでデータの価値をさらに引き上げることを目指し、第一号製品としてリリースしたのが「ASTERIA Warp」である。
「ASTERIA Warp」の導入企業数は2020年に9,000社を突破。国内企業データ連携ソフト市場で直近の2021年まで15年連続市場シェアNo.1を達成している。シェアNo.2の製品の約1.5倍のシェアで、同分野の製品の中で圧倒的な支持を得ている。

 

「ASTERIA Warp」は、独自に設計・開発を行った企業向けデータ連携用ミドルウェア製品で、汎用のデータ連携機能をパッケージで提供することにより企業内外に存在するシステム間の連携を簡単・迅速に実現することを目指した製品。
沿革でも触れたように、「ノーコード」コンセプト、つまり導入企業はコーディングが不要で、完全なプログラミングが出来なくても、「アイコン」を並べて設定するだけでデータ連携を実現できる点が大きな特長である。

 

(データ連携の形態)
*企業内データ連携
企業内システムを連携させる際に、システム間を1対1で個別に接続するのではなく「ASTERIA Warp」を中心として多対多の接続を実現する。「ASTERIA Warp」にあらかじめ用意された多様なデータ形式、通信手順形式、業務システムへの対応によって最小限の接続数で、拡張性の高い柔軟なシステム連携を迅速かつ効率的に行うことができる。

 

*企業間データ連携
システムの仕様や業務フローなどが多様な複数企業間における、多種多様な情報をやりとりするために必要な通信プロトコルや認証などの機能を装備し、企業間での発注処理などにおいて円滑なシステム連携を行うことができる。
ユーザー企業の1社である報道機関(通信社)では、各地の新聞社など相手システムに合わせた個別設定を行う手間なく、全国一斉にニュース配信をすることができる。

 

*クラウドサービス連携
近年普及が進んでいる各種クラウドサービスとの連携が可能。AWS(Amazon Web Service)やMicrosoft Azureで提供される基本的なクラウドサービスに加え、Salesforceやkintoneなどクラウド上のアプリケーションサービスとデータ連携することができる。

 

これまでも、様々なERP、業務システムなどとのデータ連携を実現してきたが、今後も「Blockchain」「IoT」「AI」「Robot」「Fintech」といった新技術やクラウドサービスと企業システムをノーコードでAPI接続することができるよう、新しい時代の変化を「先見」して進化を続けていく製品である。

 

(販売方法)
28社(2022年2月13日現在)の、主としてシステム開発会社である「ASTERIAマスターパートナー」と呼ばれる販売パートナー(代理店)がエンドユーザーへ販売している。
「ASTERIAマスターパートナー」は、主として自社が構築するシステムの中に「ASTERIA Warp」を組み込む形でエンドユーザーに販売している。

(同社資料より)

 

また、2016年に販売を開始した月額利用料金型のサブスクリプション版「ASTERIA Warp Core」は、ASP(ASTERIA Subscription Partner)62社(2022年2月13日現在)がパートナーとして販売を行っている。

 

導入先に対して技術サポート(問合せ対応)及び製品の更新(新しいOSへの対応、機能の拡充、不具合の修正)など運用支援を行うサポート業務も提供している。サポート料金はライセンス金額の15%。ライセンスと同じく毎年ストック型で積み上がり、ASTERIA Warpの安定した収益拡大の一因となっている。
サポートの提供は原則として販売パートナー経由で行っている。

 

② Handbook X(Handbookを含む)
多様化する働き方や、営業現場の変化に対応する商談支援アプリ「Handbook X」を2022年2月28日に提供開始した。

 

商談の現場では、プレゼンテーションデータ、商品カタログの PDF、YouTube 動画、Web ページなど多様な販促コンテンツの利用が不可欠となっている。同時に、それら様々な情報を使いこなし、スムーズな顧客提案を実現するスキルが問われる機会が増加しているが、多様なコンテンツを活用するあまり、PDF や動画などを提示する際に専用アプリの切り替えに時間を浪費したり、見せたい販促コンテンツをすぐに呼び出すことができなかったりなど、課題も多い。

 

こうした課題に対し、「Handbook X」を使用すれば、商談に必要な販促コンテンツの登録から閲覧、共有までをアプリ上で完結でき、独自にカスタマイズした提案ストーリーを手軽に作成できる。
また、商品カタログなどの PDF、商材の写真、説明動画、さらには YouTube や Web サイトなどの外部コンテンツへ専用アプリに都度切り替えることなく「Handbook X」上からワンストップでアクセスが可能である。
こうした機能により、タブレットを使った対面営業においてもオンライン会議においても、多彩なコンテンツをスムーズにストーリー展開することで、商談成立の流れを作ることができる。

 

月額利用料金型のサブスクリプションで、個人から企業ユースまで幅広いユーザーを想定し、無償版を含む多様な料金体系をラインアップしている。

 

なお同社ではHandbook Xリリース以前より、以下のHandbookを提供している。
Handbookは、組織で発生する多種多様な情報を、スマートデバイス(スマートフォンやタブレット端末)に対してセキュリティを保ちながら登録・配信・共有することを可能にするサービス。
スマートデバイス上にダウンロードして使う「アプリ」と、クラウド上で提供される編集・管理ツールの構成となっている。
Handbookも月額利用料金型のサブスクリプションで提供されるため契約した時点から直ぐに利用を始めることができる。
対象ユーザーは、企業や教育機関など1600社を超え、コロナ禍の下、スマホやタブレットを使用したリモート活動を円滑に実施する際に大きな効果を発揮している。

 

市場調査・コンサルティング会社ITR社が作成した市場調査レポートである「ITR Market View:SFA/統合型マーケティング支援市場2021」では、セールス・イネーブルメント・ツール市場の2カテゴリ(売上金額シェア、累計導入社数ランキング)でシェアNo.1となっている。

 

アステリアでは、今後、今回新たにリリースしたHandbook Xを中心に拡販を進める計画だ。

 

(同社資料より:Handbookの主なユーザー)

 

 

③ 「Platio」(プラティオ)
誰でも簡単に自社の業務にフィットするモバイルアプリを作成・活用できるアプリ作成ツール。
「ASTERIA Warp」同様、「ノーコード」が大きな特長である。

 

モバイルデバイスで得られる位置情報、カメラ・ビデオの情報に加え、手入力の情報などをまとめて入力する機能を有している。アプリで入力した情報は、担当者のモバイルデバイスに即座に共有。共有されたデータはCSV形式で出力したり、APIを介して他のシステムと連携したりできる機能も有している。
100種を超える豊富なテンプレートを標準装備。柔軟なカスタマイズ機能を備えており、現場業務に適したモバイルアプリをノーコードで作成できる。
iOS版(iPhone、iPad用)及びAndroid版を、パートナー制度により月額利用料金型のサブスクリプションで提供している。
企業のみでなく、地方自治体など幅広い業界での採用事例が拡大している。

 

(同社資料より)

 

21年12月には、データ連携機能を搭載した製品「Platio Connect」(プラティオ コネクト)(4種)の提供を開始した。
「Platio Connect」では、Platioで作成した業務アプリとkintone、Box、ビジネスチャットツール、BIツール、オフィス系ツールなど100種類以上のビジネスツールがノーコードで自動連携が可能となる。「Platio」にデータ連携機能が搭載されることによって、企業システムの入力インターフェースとしてPlatioアプリの機能が大幅に強化され、現場業務のデジタル化やモバイルを活用したDX推進により一層貢献する。

 

 

④ 「Gravio」(グラヴィオ)
オフィス、ビル、店舗などでのIoTソリューションにおける、効率的なデータ収集と活用をシンプルに実現するために開発したAI搭載のエッジコンピューティング用ミドルウェア。
世界中で幅広く普及しているWindowsやMacOS上でも動作するため、既存のPC運用における知見や情報リソースを最大限に活かしながら、カメラとAIによる画像認識や各種センサーデータを利用するエッジ統合型のAI・IoTシステムをノーコードで容易に実現することができる。

 

6つの特長
1:センサーデータ処理。IoT機器からのデータ加工・連携を一元的にエッジで処理可能。
2:各種デバイスの制御が可能。IoT機器に対する作動制御(命令発行)が可能。
3:AI(マシンラーニング)搭載。顔認識や天気の識別などカメラをセンサーとして使用可能。
4:ノーコード。直感的かつ流麗なインターフェースにより高い操作性を提供。
5:レイアウトビュー。エリア内に設置されたIoT機器の状態を画面上で俯瞰することが可能。
6:Windows、MacOS、Linuxで動作。運用、管理、保守が容易でかつ高いセキュリティを実現。

 

Windows版、MacOS版、Linux版を、サブスクリプション(月額/年額)で提供している。今後もハード/ソフト両面での機能追加を継続的に予定している。

 

自動化、遠隔化のための事例が続々と登場している。

(同社資料より)

 

(2)デザイン事業
2017年、英国This Place社を買収し提供を開始したサービス。
企業向けのソフトウェアも今後はデザインファースト、つまり、機能だけでなく、それ以上に使いやすさ・分かりやすさを重視したデザインが重要になるとの考えから、企業のデジタルトランスフォーメーション実現を支援することを目的としている。顧客企業のデジタルデザインにおけるブランディング戦略のコンサルティング、顧客企業のDX戦略策定・実行支援、ウェブやモバイルアプリのデザインに関するコンサルティング、開発支援等を提供している。

 

英国、米国、香港を拠点とし、大手企業を中心顧客としてサービス提供している。現在の中期経営計画期間内に日本でも拠点を設置しサービス提供を開始する計画である。

 

1-3-2 投資事業セグメント
2019年に設立した米国に拠点を置く100%子会社Asteria Vision Fund Inc.で実施する企業投資事業。
重点投資対象を「4D」と定義し、投資対象を発掘している。「4D」は時々の流行り廃りに左右されないIT成長の根本であると同社では考えている。

 

領域

コンセプト

具体的な製品・サービス

Data

データのみが企業IT資産になる

AI、Big dataなど

Device

デバイスが不可欠なインフラになる

IoT、Smart devicesなど

Decentralized

分散して協調ができる「個」の時代になる

Blockchain、DAppsなど

Design

「デザインファースト」の時代に

Design Thinking、DXなど

 

2022年1月末現在、日本、オーストラリア、台湾で各国/地域で1社、米国2社の計5社に投資を行っている。ファンド総額は22万USD。

 

投資先

国/地域

投資年月

概要・特徴

Gorilla

台湾

2019年10月

台湾最大のAIソフト企業。AIを画像認識とサイバーセキュリティに適用

Imagine

オーストラリア

2020年2月

新炭素素材グラフェンを液体化しIoTセンサーとして使う技術

Workspot

アメリカ

2021年2月

リモートでのPC作業をクラウド経由で実現しコロナ禍で伸張

JPYC

日本

2021年3月

ブロックチェーン基盤のステーブルコインの発行とNFT技術

SpaceX

アメリカ

2022年1月

分散型衛星インターネット「Starlink」

 

【1-4 特長・強み・競争優位性】

①優れた「先見性」をベースにした製品開発力
同社は「IT業界」の中で、主としてソフトウェアの製品開発に軸足を置いて事業を展開している。
不特定多数のユーザーを対象とした製品開発は、個々のクライアントのニーズに対応したシステムを開発する受託開発と違い、売上規模を拡大しやすい。また初期の開発コストを一定のボリュームを販売することでカバーし損益分岐点を超えれば、その後は「売上≒利益」となるため、粗利率は受託開発に比べて極めて高い。
「ASTERIA Warp」の粗利率は80-90%、Handbookも既に損益分岐点を超えた。Platio、Gravioの2つの新製品は未だ利益貢献には至っていないが、今後の販売拡大・利益貢献を同社では見込んでいる。

 

もちろん、開発した製品が想定通りに販売数量が拡大しない場合のリスクは大きいため、製品開発にあたっての先読み、設計思想が重要になるが、同社の場合、企業内外でデータを「つなぐ」ことの重要性をいち早く「先見」して主力製品「ASTERIA Warp」を開発したように、時代の先を読む優れた「先見性」によって競争力の高い製品を次々と世の中に提供している。

 

 

 

(同社資料より)

 

②独自の企業文化の浸透により構築される強力な人的資本
前述した経営理念に代表される独自の企業文化が全社に浸透し、行動のベースとなっている。
特に、日本企業に見られがちな前例踏襲ではなく、「発想と挑戦 (Challenge for Ideas):自由闊達な発想と挑戦を尊ぶ。時代をリードするイノベーションは新しい発想から生まれる。その実現のために、リスクを取ることを厭わず、常に新たな可能性に挑戦する」ことを最大の評価項目としている。

 

また、前記①とも重複・関連するが、創業時に平野社長は現在のインターネットで全てが「つながる」世の中を「先見」し、「日本発で世界に通用するソフトウェアを発信」するというビジョンをもって、およそ20年間にわたり製品開発に取り組み、ノーコードで製品を開発できるソフトウェア開発力を培ってきた。

 

こうした理念、ビジョンを全社員が共有することで、「ASTERIA Warp」の後も、次々と新たな発想で新製品を世の中に送り出しており、独自の企業文化の浸透により構築されたエンジニアを中心とした強力な人的資本は同社競争優位性の源泉となっている。

 

③高い市場シェア
①、②をベースに開発された同社製品は、その有用性、使い易さなどからユーザーの評価は高く、No.1製品となっている。
2021年時点で、「ASTERIA Warp」は、EAI/ESB製品の国内市場シェア(出荷数量ベース)で15年連続第1位。「Handbook」も、セールス・イネーブルメント・ツール市場の2カテゴリでシェアNo.1となっている。

 

④新技術、ソリューションへの積極的な取り組み
「発想と挑戦」を経営理念のトップに掲げる同社は、新たな技術やそれを活かしたソリューションの普及、製品化、サービス化にも積極的に取り組んでいる。
平野社長は、コンピュータ共通言語XML普及啓発のための団体「XMLコンソーシアム」の副会長を務めていた(2010年3月に活動終了)。現在注力中のブロックチェーンは、2015年に上場企業として初めて取り組みを始め、2016年4月には、平野社長の提唱により、ブロックチェーン技術の幅広い普及推進を行う団体「「BCCC(ブロックチェーン推進協会)」が設立され、平野社長は代表理事を務めている。

 

現在注力中のブロックチェーン技術については、2020年12月1日に開催された明治安田生命保険相互会社の「総代報告会」においてアステリアの開発した、ブロックチェーン技術を活用した「出席型バーチャル株主総会ソリューション」を採用した。
明治安田生命が「出席型バーチャル株主総会ソリューション」を採用したポイントは、「新型コロナウイルス感染者の急拡大で12/1開催の総代報告会で3密回避が必須」「バーチャル開催でも投票集計や質問の公正性が担保されるブロックチェーン技術に着目」「最新技術を導入しても、高齢者でも操作が簡単なインターフェース」などである。

 

また、2021年6月26日(土)に開催したアステリアの第23回定時株主総会において、新型コロナウイルスの感染拡大予防対策として、「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」を実施した。
今回の株主総会は、基盤技術として、企業向けのブロックチェーンとして注目されるQuorum(※)を適用し、バーチャルオンリー株主総会で必須となる動議対応をバーチャル環境から実現した。これにより、株主総会で議決権を有する株主の全ての行為(投票・質問・動議)のバーチャル対応が完了した。
株主は議決権行使書の案内に従ってPC、スマートフォン等のブラウザから簡単に投票ができるほか、企業は株主総会の最中でも投票や質問の受付が可能で、得票数はリアルタイムで瞬時に集計される。また、投票結果はブロックチェーンに記録するので主催者でも投票内容の改ざんができないなど、これまでにはない画期的な株主総会となった。

 

※Quorum
米国JPモルガン・チェース社が開発し、現在米国ConsenSys社が所有するEthereumをベースとしたスマートコントラクトプラットフォーム。金融分野における企業向けブロックチェーンとして開発される。

 

今後は、上場企業を中心とした企業向けサービスとして展開していくとともに、行政さらにはエンターテイメント領域における投票の集計方法や結果に公正性を担保できる仕組みとして拡張する計画である。

 

⑤多様性を重視したガバナンス及び経営体制
世界に通じるものづくりを追求するためには多様性が極めて重要という考えから、社外取締役は多様性(ジェンダー、国籍)を重視した構成となっている。
「コーポレート・ガバナンス」という言葉を耳にすることが珍しかった1998年の創業期から継続的に社外取締役2名以上を選任しており、現在は5名の取締役のうち3名が社外取締役である。
また、経営と執行を分離した体制をとっており、兼務しているのは平野社長・北原副社長の2名のみ。様々な分野に強みを持ち、8名中2名が外国人という執行役員構成で、グローバルな経営体制を構築している。

 

【1-5 ESG/SDGs】

社会からの信頼や期待に応えるために、顧客、株主、従業員、取引先、地域社会をはじめとするあらゆるステークホルダーと積極的にコミュニケーションを図りながら事業活動を行うことにより、社会の持続的発展への貢献を目指している。

 

以下の基本方針を掲げている。

アステリアは、「繋がる」ことにより価値を創造し、つねにお客様本位であり続けます。

アステリアは、すべての判断に説明可能な理由を持ち、株主の皆様の期待に応えていきます。

アステリアは、個人の多様性、人格、個性を尊重し、従業員のやりがいと誇りを大切にします。

アステリアは、「世界をつなぐ」という目標に向け、取引先と共に発展していきます。

アステリアは、人々の役に立つ価値を生み出すことで社会に貢献します。

 

同社は、2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を社会から求められる重要な課題と捉えている。
世界共通の目標としてSDGsが示されたことで、企業が取り組むべき方向が明確になり、多くの企業が主体的な取り組みを始めており、同社もSDGsを意識した事業活動に取り組んでいる。既に17ゴール中、11ゴールをカバーしており、今後も更に推進する。主な考え方、取り組みは以下の通り。

 

Environment(環境)

 

 

環境保全活動

ビジネスパートナーおよびエンドユーザーとの良好な「エコシステム」を構築していくだけでなく、自然環境における「共存協栄」を実現する「エコシステム」の整備にも注力し、持続可能な社会の構築に貢献していく。この活動を通じて「地球環境・自然」と「社会・産業」との間の「エコシステム」の構築に向けたさまざまな施策を中長期的な視点で展開し、サステナブルな社会の実現を目指す。

 

*ペーパーレスの推進

*Asteria Green Activity(※)

 

 

Social(社会)

 

社会貢献活動

健康で豊かな社会実現とその持続的な発展のため、これからを担う若者の支援などを通し、「社会貢献活動」を展開している。

 

*かものはしプロジェクトの支援

*チャリティマラソンへの参加

*パンゲア(スタートアップ支援)

 

 

働き方に多様性を

さまざまなバックグラウンドを持った人材が継続的に活躍できるよう、多様な働き方を支援する職場環境づくりを積極的に推進している。

 

*ダイバーシティの推進

*テレワーク

*サバティカル休暇/誕生日休暇

*子育て支援

 

 

Governance(ガバナンス)

*コーポレート・ガバナンス

*内部統制システム

*反社会的勢力排除

 

 

 

(※)Asteria Green Activityとは?
2015年に、主力製品である「ASTERIA Warp」導入5,000社突破を記念して開始した持続的な社会・自然環境の構築に貢献する活動(開始当時の名称は「Infoteria Green Activity」)。
現在までに以下のような実績を残している。

 

◎熊本県小国町との地域再生計画
熊本県小国町(おぐにまち)のブランド材「小国杉」の森林保全活動や、間伐材の利用促進、林業・林産業の再生に向けた取り組みを、2015年から行っている。
小国杉を使ったおもちゃやノベルティを製作して社員やユーザー企業に提供するほか、同社オフィスでも小国杉を使用し、木のぬくもりを感じられる暖かい空間を創出している。

 

◎秋田県仙北市との地域再生計画
秋田県仙北市と2016年より産業振興に向けたICT導入促進について提携を行い、ドローンで撮影した映像コンテンツを同社製品「Handbook」を用いて各観光拠点で閲覧できるようにしているほか、タブレットを活用した観光サービスの充実に向けた実証実験などを進めている。

 

◎熊本県小国町と秋田県仙北市への企業版ふるさと納税
同社から提供されるそれぞれ年間100万円を事業資金とした小国町への事業計画「小国杉をもっとずっと使って計画」と、仙北市への事業計画「桜に彩られたまちづくり事業」(桜の保全活動や観光振興活動)は、どちらも「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」の対象事業として内閣府より認定されている。

 

5年間にわたり継続し、企業版ふるさと納税に係る寄附を行い、寄附を契機とし、寄附先の地方公共団体との対話や広報に関する勉強会を重ね新たなパートナーシップを構築。自社の強みを活かして、市職員の体温管理等のアプリを開発し無償で提供するなど、地域に貢献した取組を実施してきたことが評価され、2022年には、内閣府による令和3年度(2021年度)「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に係る大臣表彰」を受賞した。

 

◎カーボンオフセットの株主総会を開催
2021年6月に開催した同社のバーチャルハイブリッド形式の定時株主総会で、CO2のオフセットを実施した。
総会が開催される株主総会会場に加え、テレワーク環境から参加する出席役員14名の自宅での電力消費によって排出されるCO 2を実質ゼロとした。
このオフセットは、国が運営するJクレジット制度(※)に準じたもので、熊本県小国町などでのCO2吸収量から生まれた森林吸収クレジット1tを一般社団法人 more trees(東京都)から購入して実施した。アステリアでは、 2015年より熊本県小国町と協定を締結し森林保全活動を展開しており、同町の森林がCO2オフセット先に含まれている一般社団法人 more treesを採用した。

 

Jクレジット制度(※):省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。 経済産業省、環境省、農林水産省で共同運営されている。

 

2.2022年3月期第3四半期決算概要

【2-1業績概要】

 

21/3期3Q

(累計)

構成比

22/3期3Q

(累計)

構成比

前年同期比

売上収益

1,994

100.0%

2,127

100.0%

+6.7%

売上総利益

1,620

81.3%

1,785

83.9%

+10.2%

販管費

1,206

60.5%

1,539

72.4%

+27.6%

営業利益

461

23.1%

973

45.7%

+110.9%

税引前利益

419

21.0%

1,067

50.2%

+154.9%

四半期利益

294

14.7%

680

32.0%

+131.6%

*単位:百万円。四半期利益は親会社の所有者に帰属する四半期利益。以下、同様。

 

増収、大幅な増益。上場来最高益。
売上収益は前年同期比6.7%増の21億27百万円。
欧米、特に米国と英国において、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、デザイン事業が前年同期比で減収となったものの、「ASTERIA Warp」を主力製品とするソフトウェア事業が伸張した。
営業利益は同110.9%増の9億73百万円。
「中期経営計画STAR」に沿った人員の拡充やマーケティング施策を実施したことで販管費が増加したが、ソフトウェア事業の増収効果、投資事業の収益(主としてにGorilla社株式の評価益)で吸収し、大幅な増益。第3四半期(累計)の最高益を記録した。売上総利益率、営業利益率はそれぞれ前年同期比で2.6%、22.6%上昇した。

 

【2-2 セグメント別動向】

 

21/3期3Q

(累計)

22/3期3Q

(累計)

前年同期比

ソフトウェア事業

1,994

2,127

6.7%

投資事業

-

-

-

連結売上高

1,994

2,127

6.7%

ソフトウェア事業

426

267

-37.4%

投資事業

-13

673

-

調整額

0

0

-

連結セグメント利益

414

940

+127.4%

投資事業:評価額増減

-

695

-

*単位:百万円。売上髙は外部顧客への売上高。セグメント利益は売上収益から、売上原価、及び販管費を控除しているが、その他の収益及び費用のうち、Asteria Vision Fund I,L.P.で保有する純損益を通じて公正価値で測定する金融資産に関する評価損益は投資事業のセグメント利益に振り替えている。

 

(1)ソフトウェア事業セグメント

 

21/3期3Q

(累計)

22/3期3Q

(累計)

前年同期比

ソフトウェア事業

1,593

1,821

+14.4%

デザイン事業

401

306

-23.7%

合計

1,994

2,127

+6.7%

 

 

①ソフトウェア事業
各製品とも順調に拡大した。MRR(Monthly Recurring Revenue、月次経常収益)は、「Platio」が24か月で5.7倍、「Gravio」が同24倍と大幅な伸び。「Handbook」は横這いも、第4四半期に新製品を投入し、拡大を図る。
一方、解約率は、「Platio」は2.9%とやや高いものの、「ASTERIA Warp Core」0.5%、「Handbook」0.6%、「Gravio」0.6%と低水準で推移している。
「Platio」で、同社史上最大級のプロモーション活動を展開したが、今後は「ASTERIA Warp」「Handbook」でも同様に積極的なプロモーションを実施する予定である。

 

*「ASTERIA Warp」
売上は15億円を超え、過去最高を記録した。
テレワークに対応した社内システムの構築や、改正電子帳簿保存法の施行に伴う新たな連携ニーズが引き続き拡大しており、好調。特に、旗艦製品となるライセンス版の売上は前年同期比33.4%の増収を記録し、ソフトウェア事業全体を牽引した。
サブスク版である「ASTERIA Warp Core」も同3割の増収。

 

開発環境の利便性を強化し、開発者の作業効率を大幅に向上させた新バージョンの提供を開始したほか、SAPおよびEthereum対応の新アダプターをリリースした。

 

*「Gravio」
CO2を可視化し3密回避に対応するニーズが引き続き旺盛であったことや、販売パートナーとの協業による新たなビジネス機会の獲得等で前年同期比約2倍の増収を記録した。

 

*「Platio」
現場のDX推進や業務アプリの内製化を実現するノーコード開発ツールとしての認知度を更に引き上げるため、TV、交通広告、「ノーコード」をキーワードとした大型対談の実施など、積極的なプロモーション活動を実施した。その結果、地方自治体を含めた幅広い業界からの引き合いが好調。また、2021年12月にデータ連携機能を搭載した「Platio Connect」のラインアップ追加を発表し、利用シーンを広げる機能強化も実施した。

 

*「Handbook」
社内業務のペーパーレス化ニーズの増大を受けて、松屋銀座におけるオンライン研修で導入されるなど利用シーンが拡大しているほか、オンラインミーティング用途等で堅調に推移した。

 

②デザイン事業
世界的な新型コロナウイルス感染拡大による影響で、顧客企業におけるプロジェクト受注が減少している。一部の既存顧客においては追加受注を獲得できたほか、新規顧客獲得に向けた動きを強化したものの、前年同期比で減収。ただ、四半期ベースでは前期比、前年同期比とも増収で、底入れの兆しも見えている。

 

(2)投資事業セグメント
引き続き順調で、6億95百万円の評価益を計上した。AVF-1の投資先のうち、第2四半期(7‐9月)中に発生した、Gorilla社の評価増、Imagine Intelligent Material社(以下、Imagine社)の評価減に加えて、第3四半期(10-12月)中にはJPYC社(日本)において評価増が発生した。事業継続が困難となり民事再生手続きに入ったImagine社については第2四半期に全額評価減を計上済みである。

 

なお、第3四半期中に公表したGorilla社のNASDAQ上場計画については現時点ではその評価額を含んでいない。

 

2022年1月末には、新たにSpaceX(アメリカ)に200万USD(約2.3億円)の出資を行った。
イーロン・マスク氏が率いる同社はロケット打ち上げ事業が有名だか、アステリアは分散型衛星インターネット「Starlink」の成長性に着目して出資を決定した。
評価益反映は来期以降となる。

 

SpaceXが手掛ける分散型衛星インターネット「Starlink」は、地球の低軌道を周回する衛星のグローバルネットワークを活かして、アクセスが不安定か高額な場所で、高速ブロードバンドインターネットを利用できるようにすることを目指している。
現在、12,000機の衛星が国際電気通信連合(ITU)で承認されており、さらに3万機の衛星の承認を申請中である。
SpaceXではすでに1,700機以上の衛星を打ち上げ済みで、Starlink端末を10万台出荷済みという実績を持つ。
米、英、独、加、豪、仏、蘭など世界12カ国以上でベータ版を実施中で、60万人がポテンシャルユーザーとして予約後、入金を済ませており、今後の成長が期待されている。

 

【2-3 財務状態とキャッシュ・フロー】

◎主要BS

 

21年3月末

21年12月末

増減

 

21年3月末

21年12月末

増減

流動資産

2,787

3,278

+490

流動負債

1,213

1,480

+267

 現金・現金同等物

2,451

2,486

+35

 仕入債務

182

399

+216

 売上債権

256

307

+51

非流動負債

973

1,256

+284

非流動資産

5,120

6,011

+891

 繰延税金負債

101

316

+215

 有形固定資産

180

505

+324

長短借入金

886

536

-107

 のれん

1,015

1,035

+21

負債合計

2,186

2,737

+550

 無形資産

69

82

+13

資本合計

5,721

6,553

+832

 投資等その他

3,855

4,389

+534

 利益剰余金

1,487

2,073

+586

資産合計

7,907

9,290

+1,382

負債資本合計

7,907

9,290

+1,382

*単位:百万円。売上債権は「営業債権及びその他の債権」、投資等その他は「持分法で会計処理されている投資」「その他の金融資産」「その他の非流動資産」の合計、仕入債務は「営業債務及びその他の債務」、株主資本は「親会社の所有者に帰属する持分合計」

 

有形固定資産及び投資等その他の増加で資産合計は前期末比13億82百万円増加の92億90百万円。仕入債務及び繰延税金負債の増加などで負債合計は同5億50百万円増加の27億37百万円。利益剰余金の増加などで資本合計は同8億32百万円増加の65億53百万円。
親会社所有者帰属持分比率は前期末より2.7ポイント低下し67.4%。

 

◎キャッシュ・フロー

 

21/3期3Q

22/3期3Q

増減

営業CF

591

304

-287

投資CF

-431

-47

+384

フリーCF

160

257

+97

財務CF

-295

-234

+61

現金同等物残高

2,387

2,486

+99

*単位:百万円。

 

税引前四半期利益増加の一方、その他の収益の減少、売上債権の増加などで営業CFのプラス幅は縮小したが、投資の償還による収入などで投資CFのマイナス幅が縮小し、フリーCFはほぼ変わらず。
キャッシュ・ポジションは25億円と潤沢。

 

【2-4 トピックス】

① 「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に係る大臣表彰」を受賞
22年1月、内閣府による令和3年度(2021年度)「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に係る大臣表彰」を受賞した。

 

内閣府では、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の活用促進を図ることを目的に、平成30年度(2018年度)から毎年度、その制度の活用において、特に顕著な功績を上げ、他の模範となると認められる活動を行った企業や地方公共団体を内閣府特命担当大臣(地方創生担当)から表彰している。

 

アステリアは、秋田県仙北市および熊本県小国町を寄付先として、5年間にわたり継続して、企業版ふるさと納税に係る寄附を実施している。また、寄附を契機とし、寄附先の地方公共団体との対話や広報に関する勉強会を重ね新たなパートナーシップを構築し、自社の強みを活かして、自治体職員の体温管理等のアプリを開発し無償で提供するなど、寄付にとどまらない地域に貢献した取組を実施してきたことが評価された。

 

② 商談支援アプリ「Handbook X」の提供を開始
22年2月、多様化する働き方や、営業現場の変化に対応する商談支援アプリ「Handbook X」の提供を開始した。
詳細は「会社概要:主要なソフトウェア製品」を参照。

 

3.2022年3月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

21/3期

構成比

22/3期(予)

構成比

前期比

売上収益

2,688

100.0%

2,900

100.0%

+7.9%

営業利益

820

30.5%

3,400

117.2%

+314.8%

税引前利益

1,026

38.2%

3,400

117.2%

+231.5%

当期利益

807

30.0%

2,000

69.0%

+147.7%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

業績予想に変更なし
22年1月13日に上方修正した業績予想に変更は無い。
なお、第3四半期決算を発表した2022年2月14日時点において、Gorilla社の上場予定は2022年第2四半期(2022年4-6月)と公表されているが、修正業績予想には同社の上場時期の遅延を含めた想定されるリスクを一定程度織り込んでいる。
配当予想にも変更は無い。中間配当0.00円/株。期末配当は現時点では未定。

 

4.今後の注目点

22年1月13日の上方修正の主要因であるGorilla社のナスダック市場上場に伴う評価益は38億円の計上を予定している。
第3四半期決算短信にも記載通り、評価益には上場時期の遅延を含めた想定されるリスクを一定程度織り込んだ、堅めの数字であり、仮に遅延したとしても予想の修正につながる可能性は低いとのことだ。
一方、主力のソフトウェア事業は各製品とも引き続き順調で、デザイン事業も22年3月期第2四半期(7‐9月)をボトムに回復の兆しが見られる。第4四半期(1‐3月)に3事業でどれだけの売上・利益を積み上げていくのか注目したい。同社では例年3月中旬に配当予想を公表している。今期予想EPSは、前期の49円02銭を大きく上回る121.44円。こちらの公表にも注目したい。
中期的な視点からは、「中期経営計画STAR」における事業活動計画の進捗を、各製品の目標を中心に引き続き注視していきたい。

 

<参考1:「中期経営計画STAR」>

2021年6月、21年4月から24年3月までの3か年を期間とする「中期経営計画 STAR」を公表した。

 

(1)ビジョン

創業ビジョンである「組織を超えるコンピューティングを実現するソフトウェアを開発し、世界規模で提供する」を踏まえ、中計期間の経営ビジョンを「自律・分散・協調型の新社会を創るサービスを世界規模で提供する」とした。

 

(中期経営計画名STARについて)
計画期間における重点項目の頭文字をとって「STAR」と名付けている。

Sustainable

持続可能な社会構築に貢献する事業を遂行すること

Top-line

価値創出・提供の結果として売上増大を狙うこと

Acquisition

企業買収・事業買収を通じて成長のスピードを獲得すること

Refine

既存の製品・サービスに磨きをかけて新時代を先取りすること

 

 

ビジョンの下となる基本的な考え方は以下の通りである。

アステリアは創業時のXML技術製品以来20年以上におよび「つなぐ」製品を提供している。

2002年のASTERIA R2出荷以降は「Graphical Language」というコンセプトのもと、全製品が「ノーコード」である。近年、「ノーコード」という用語の認知が広がってきているが、この傾向は当面拡大する。

コロナ禍によって、アステリアが創業時から標榜する「自律・分散・協調」の世界への動きがいよいよ顕在化している。

この時代においては、分散環境において「いつでもどこでも」使えるモバイルデバイスが当たり前となる。また、チップや部品の性能向上とIPv6の普及、さらにクラウドのセキュリティリスク回避のために、エッジコンピューティングの普及が加速する。

 

 

(同社資料より)

 

(同社資料より)

 

(2)事業別活動計画

①ソフトウェア事業
◎主力製品
21年3月期時点で「柱」となっている2製品についての目標
*ASTERIA Warp
サブスク比率を向上させストック比率を7割までに上げる

 

*Handbook
22年3月期後半に新製品をリリース

 

◎新製品
2製品を育成し4本柱を確立する
*Platio
積極的なマーケティングを実施する。カテゴリを確立し市場シェアNo.1を目指す。

 

*Gravio
世界展開を開始する。22年3月期は日本、米国、英国、シンガポール、23年3月期は中国市場に参入。
自社デザインのGravioセンサー、機器のチップや部品の製造国を吟味し、貿易上の影響を回避する(既に対応済み)。
カテゴリを確立し市場シェアNo.1を目指す。

 

◎研究開発・コンサルティング
長期的製品のベース技術として以下の研究開発を推進する。
*Blockchain:自社開発ブロックチェーンの外部提供
*AI:ロボティクス向けミドルウェア(Asteria ART)
*成長性の高いマネタイズ方法としてサービサーとのJVを推進する。

 

◎M&A
コロナ禍の状況を反映し国内M&Aを強化する。
*国内M&A組織を立ち上げた。
*対象はクラウドサービスに限定し、ライセンス売上が過半数の案件

 

②デザイン事業
◎既存市場
ポートフォリオ戦略を継続する。
欧米の顧客企業のコロナ禍からの復活後のプロジェクトを獲得する。

 

◎日本市場
早期に日本法人を設立する。

 

③投資事業
◎Asteria Vision Fund-1
IRR 10%のための投資先成長により未実現益を定常的に上げている。

 

◎第2号ファンド
Asteria Vison Fundの成果次第で組成を検討する。

 

④人員計画
21年3月末(124人)の約1.5倍の人員を目指す。
ジェンダー、国籍等のダイバーシティを重視した採用を継続する。
新卒採用を継続し、インターン採用なども拡大する。
テレワーク中心、スーパーフレックスなど働き方の多様性を活用し、世界中から優秀な人材を採用する。

 

(3)数値計画・目標

以下のような数値計画を掲げている。

 

21/3期(実績)

24/3月期(計画)

CAGR

売上収益

2,688

4,500

+18.7%

調整後EBITDA

615

1,000

+17.6%

同マージン

22.9%

22.2%

-

営業利益

820

-

-

営業利益率

30.5%

-

-

単位:百万円。調整後EBITDA=営業利益+減価償却費±その他の調整項目。その他の調整項目は、のれん減損、未実現買収対価、未実現評価損益等。CAGRは同社計画よりインベストメントブリッジ作成。

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

5名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年12月10日

 

<基本的な考え方>
当社は、継続的な事業成長を通じて株主、お客様、従業員等の関係者をはじめ、広く社会に貢献する企業となることを経営目標としております。 このため、透明性及び健全性の高い企業経営を目指し、会社創立時から社外取締役の招聘等によりコーポレート・ガバナンスの強化に取り組むとともに、役員・従業員へのコンプライアンスの徹底を経営の基本原則として位置づけ、法令やルールを厳格に遵守し、社会的規範にもとることのない誠実かつ公正な企業活動を遂行することを基本方針としております。

 

<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレート・ガバナンス・コードの各原則について全てを実施しております。

 

<各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

【原則1-4. 政策保有株式】

当社は業務提携、取引先との安定的・長期的な取引関係維持・強化の観点から、当社の中長期的な企業価値の向上に資すると判断される場合に、株式の政策保有を行い、企図した効果が見込めないと判断した場合には政策保有株式を縮減する方針です。当社が保有する政策保有株式について、上記の観点及びリターンとリスクも踏まえ、政策保有株式を保有することが当社の中長期的な企業価値の向上に資するかどうか定期的 に取締役会において検証いたします。

政策保有株式の議決権については、投資先企業の中長期的な企業価値向上の観点、社会的要請に合致するかの観点から、その行使について 判断いたします。

【補充原則3-1-3.サステナビリティに関する開示】

当社のサステナビリティについての取組は、当社ウェブサイトに記載しております。

https://www.asteria.com/jp/company/csr/

【補充原則4-11-1.取締役会の知識、経験、能力のバランス、多様性及び規模に関する考え】

当社では、定款で取締役員数を8名以内としており、取締役会は、国籍、性別、年齢などにかかわらず、取締役に最適と思われる人材を取締役候補者として選定する方針を採っております。現在は、情報技術、企業経営、企業投資、金融に関する豊富な知識と経験を備えた5名が取締役を務めております。当社では、取締役および執行役員のスキル・マトリックスを作成し、役員選任議案の参考として株主総会招集通知に記載しております。

https://www.asteria.com/jp/wp-content/files_mf/1623227514ipr210609_01.pdf

取締役5名のうち1名が女性、1名が外国籍、3名が東京証券取引所の定める独立社外取締役の要件を満たしており、取締役会における活発な議論が可能となっております。

原則5-1 【株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、持続的な成長と中期的な企業価値向上のためには、株主と積極的な対話を行うことが重要であると認識しております。そのため、IR体制を整備し、当社の経営戦略や経営状況に対する理解を得るため、株主との対話の場である個人投資家向け説明会に社長が出席しわかりやすく説明しております。

株主との対話の対応は、広報・IR部にて行い、株主から個別の要望がある場合には、合理的な範囲で代表取締役及び執行役員が面談に対応しております。対話において把握された株主の意見等については、経営判断に役立てるべく取締役会に報告しております。

対話に際してのインサイダー情報の管理に関する方策としては、「インサイダー取引防止規程」を定めインサイダー情報を管理しており、特定の株主にインサイダー情報を伝達しないよう情報管理を徹底しております。

 

 

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