ブリッジレポート
(3853) アステリア株式会社

プライム

ブリッジレポート:(3853)アステリア 2022年3月期第2四半期決算

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平野 洋一郎 社長

アステリア株式会社(3853)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役社長

平野 洋一郎

所在地

東京都渋谷区広尾1丁目1番39号 恵比寿プライムスクエアタワー19F

決算月

3月

HP

https://www.asteria.com/jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

886円

17,491,265株

15,497百万円

15.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

-

121.44円

7.3倍

330.25円

2.7倍

*株価は2/2終値。発行済株式数、DPSは22年3月期第2四半期決算短信より。EPSは22年1月発表の業績予想修正リリースより。ROEは親会社所有者帰属持分当期利益率、BPSは1株当たり親会社所有者帰属持分、いずれも前期実績。

 

業績推移

決算期

売上収益

営業利益

税引前利益

当期利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

3,110

577

444

197

11.90

6.00

2019年3月(実)

3,478

389

463

271

16.39

4.00

2020年3月(実)

2,677

-262

-159

-176

-10.66

4.00

2021年3月(実)

2,688

820

1,026

807

49.02

4.50

2022年3月(予)

2,900

3,400

3,400

2,000

121.44

未定

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。IFRS適用。当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

 

アステリア株式会社の会社概要、業績動向、中期経営計画、平野社長へのインタビューなどをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期第2四半期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.中期経営計画「STAR」
5.平野社長へのインタビュー
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 「ソフトウェアで世界をつなぐ」をコンセプトに、ソフトウェア技術とインターネット技術を中核としたさまざまな「つなぐ」ニーズに応えるソフトウェアを開発。主力製品「ASTERIA Warp」の導入企業数は2020年に9,000社を突破。2021年まで15 年連続市場シェア No.1 を達成している。優れた「先見性」をベースにした製品開発力、独自の企業文化の浸透により構築される強力な人的資本、高い市場シェア、新技術、ソリューションへの積極的な取り組みなどが特長・強み。

     

  • 22年3月期第2四半期の売上収益は前年同期比2.1%増の13億68百万円。欧米、特に米国と英国において、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、デザイン事業が前年同期比で減収となったものの、「ASTERIA Warp」を主力製品とするソフトウェア事業が伸張した。営業利益は同155.6%増の8億62百万円。中期経営計画「STAR」に沿った人員の拡充やマーケティング施策を実施したことで販管費が増加したが、ソフトウェア事業の増収効果、投資事業の収益で吸収し、大幅な増益。上半期の最高益を記録した。

     

  • 22年3月期の通期業績予想を上方修正した。Gorilla 社のナスダック市場上場に伴う評価益の計上が見込まれることに加え、評価益の計上を背景にソフトウェア事業を中心としてTV広告を含む積極的なマーケティングを追加実施すること等を総合的に検討した結果、営業利益以下、2021年9月30日に開示した通期予想を上回ると判断した。配当予想に変更は無い。中間配当0.00円/株。期末配当は現時点では未定。

     

  • 「中期経営計画 STAR」では、「自律・分散・協調型の新社会を創るサービスを世界規模で提供する」とのビジョンの下、24年3月期目標「売上高45億円、調整後EBITDA10億円」達成を目指す。

     

  • 平野洋一郎社長に、経営理念に込めた想い、自社の競争優位性、課題、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「我々は100年のテーマとして「自律・分散・協調」を掲げ、そうした社会を実現するためのソフトウェアやサービスを、これからも世の中に次々と送り出していきます。未来志向の投資家の皆様に、是非、私たちの理念、ビジョンをご理解いただき、目指すべき社会を一緒に創り上げていきたいと強く願っています」とのことだ。

     

  • 平野社長のインタビューにあるように、同社では新製品をリリースする際、現在のニーズではなく未来の社会のあり方や先進テクノロジーを先取りしたプロダクト開発に注力しているという。一見プロダクトアウトに見えるが、パッケージソフトメーカーは需要を見越したソフトウェア開発が不可欠。時系列を取って見ると、黎明期から積極的な製品開発・マーケティング活動を展開する「未来のマーケットイン」企業である。「自律・分散・協調」をテーマに、時代を先見し、今後も独自の製品を世に送りだす同社の動向を、中期経営計画「STAR」の進捗と共に注目していきたい。

     

1.会社概要

「ソフトウェアで世界をつなぐ」をコンセプトに、ソフトウェア技術とインターネット技術を中核としたさまざまな「つなぐ」ニーズに応えるソフトウェアを開発。主力製品「ASTERIA Warp」の導入企業数は2020年に9,000社を突破。国内企業データ連携ソフト市場で直近の2021年まで15年連続市場シェア No.1を達成している。「中期経営計画 STAR」では、「自律・分散・協調型の新社会を創るサービスを世界規模で提供する」とのビジョンの下、24年3月期目標「売上高45億円、調整後EBITDA10億円」達成を目指す。

 

【1-1 上場までの沿革】

中学生のころからコンピュータに関心を持ち、ソフトウェア開発に打ち込んできた平野洋一郎氏(現 アステリア株式会社 代表取締役社長)は、コンピュータの世界をもっと知りたいと思い大学に進学したが、高い志から大学を中退し知人とソフト会社を設立。エンジニアとして活躍し自身が開発したワープロ用ソフトが人気を博した後に、世界的なソフトウェアメーカーであったロータス社に入社する。
1990年代半ば、インターネットが急速に普及する中、メーカーが異なっていてもシステムやソフトウェア同士が繋がる必要性のある時代が必ず到来すると「先見」した平野氏は、ロータス社の主力製品であったグループウェア「ロータス ノーツ」のデータ形式や通信手順を公開して他社メーカーのグループウェアと接続できるようにする事がインターネットの時代には不可欠であると提案したが、既に大きなシェアを確保していたロータス社はその提案を却下した。
データ連携の必要性・重要性を強く感じていた平野氏は、コンピュータの共通言語である新技術XMLを使用することで、社内外を問わずあらゆるシステムがつながり、さまざまな業務が遂行される時代が来ると確信し、同僚であった北原淑行氏とともに2名で、1998年9月、インフォテリア株式会社(現 アステリア株式会社)を設立した。

 

製品開発に徹底して集中することが必要と考えた平野社長は会社設立後間もなく、日本のスタートアップ企業ではこの当時では異例約27億円の資金調達を実施し開発に注力。
2002年には、データ連携のためのソフトウェアである「ASTERIA R2」(現 「ASTERIA Warp」)をリリースした。
「ASTERIA Warp」は、「ノーコード」コンセプト、つまり導入企業側で完全なプログラミングが出来なくてもデータ連携を実現できる点が当時として画期的な製品で、長年にわたりトップシェアを握る同社の主力製品に成長していった。

 

コンピュータの共通言語XMLを使用したデータ連携は、まず初めに電子商取引の領域で新しい潮流を形成し、ソニー、京セラといった一流企業が注目し採用。その後データ連携の有意さを理解する企業数は着実に増加し、「ASTERIA Warp」の導入企業数は、リリースから3年後の2005年には200社を突破。2006年にはEAI(企業データ連携、Enterprise Application Integration)のソフトウェア国内シェアNo.1となった(その後2021年まで15年連続シェアNo.1)。
こうして成長トレンドに入った同社は業容を一段と拡大し、2007年6月に東証マザーズに上場。
その後も、2009年6月モバイルコンテンツ向け管理システム「Handbook」、2016年10月モバイルアプリ作成ツール「Platio」、2017年6月AI搭載IoT統合エッジウェア「Gravio」など、時代の流れを先見し、「つなぐ」価値を拡大する製品・サービスを次々と市場に投入していく。
2018年3月には、東証1部へ市場変更し、同年10月にはアステリア株式会社に社名を変更した(アステリアは、ギリシャ語で「星座」の意。地球上に存在するさまざまな輝くものを星座のように繋いで、新しい形、新しい価値を創っていくことを目指して社名とした)。

 

【1-2 理念】

経営理念として以下の3つを掲げて、これを基に、世界中に価値を提供する企業となるべく挑戦を続けている。

発想と挑戦 (Challenge for Ideas)

自由闊達な発想と挑戦を尊ぶ。時代をリードするイノベーションは新しい発想から生まれる。その実現のために、リスクを取ることを厭わず、常に新たな可能性に挑戦する。

世界的視野 (Global Perspective)

常に世界市場を視野に入れる。世界的に存在価値のある独自性を持った製品やサービスを提供する。

幸せの連鎖 (Chain of Happiness)

幸せを連鎖させる。自ら幸せを感じる誇りある活動を営むことで、お客様の幸せに貢献し、ひいては社会の進歩発展に寄与する。

 

【1-4 事業内容】

「ソフトウェアで世界をつなぐ」をコンセプトに、ソフトウェア技術とインターネット技術を中核としたさまざまな「つなぐ」ニーズに応えるソフトウェアの開発と販売およびそれに付帯する事業を行っている。
報告セグメントは「ソフトウェア事業」と「投資事業」の2つ。

 

1-4-1ソフトウェア事業セグメント
ソフトウェア事業とデザイン事業で構成されている。

 

(1)ソフトウェア事業
同社の中心事業。
個別の企業向けのソフトウェア開発を行う「受託開発」ではなく、不特定多数向けのパッケージやクラウドサービスを提供する「製品開発」に特化。企業情報システム、クラウドサービス、ハードウェア機器などを「つなぐ」ためのソフトウェアを開発し、市場に提供している。g
主要製品は、「ASTERIA Warp」「Handbook」「Platio」「Gravio」の4つ。

 

(データ連携について)
同社事業の根幹となるコンセプトが「つなぐ」。具体的には、容易かつ効率的、安全に同一企業内や他の企業間とのデータ連携やシステム連携を行い、データの価値を拡大するということである。

 

*データ連携の必要性
システム、ソフトウェアは開発したベンダー、使用しているプログラミング言語やプロトコル(規格、手順、約束事)が異なるのが大前提である。
すると、同一企業内でも、営業部門と商品企画やマーケティング部門で使用しているシステムやツールが異なると、両部門のデータを簡単には連携させることができず、他部門からのデータを自部門で改めて加工しないと使用することができないことになる。また、外部の企業にデータを送る際も、そうした手間暇がかかることとなる。

 

こうした問題を解決するのが「データ連携」である。
データ連携を行えば、部門間または企業間で異なる形式で扱っていたデータを、自部門や自社のシステムで扱えるように加工する手間やコストを削減でき、業務の生産性が大きく向上するほか、必要なタイミングで必要なデータをすぐに利用できるため業務上の機会損失を防ぐことができる。

 

(同社資料より)

 

 

(主要なソフトウェア製品)
①データ連携ミドルウェア「ASTERIA Warp」(アステリア ワープ)
平野社長が「データ連携」を容易に行うことでデータの価値をさらに引き上げることを目指し、第一号製品としてリリースしたのが「ASTERIA Warp」である。
「ASTERIA Warp」の導入企業数は2020年に9,000社を突破。国内企業データ連携ソフト市場で直近の2021年まで15年連続市場シェアNo.1を達成している。シェアNo.2の製品の約1.5倍のシェアで、同分野の製品の中で圧倒的な支持を得ている。

 

「ASTERIA Warp」は、独自に設計・開発を行った企業向けデータ連携用ミドルウェア製品で、汎用のデータ連携機能をパッケージで提供することにより企業内外に存在するシステム間の連携を簡単・迅速に実現することを目指した製品。
沿革でも触れたように、「ノーコード」コンセプト、つまり導入企業はコーディングが不要で、完全なプログラミングが出来なくても、「アイコン」を並べて設定するだけでデータ連携を実現できる点が大きな特長である。

 

(データ連携の形態)
*企業内データ連携
企業内システムを連携させる際に、システム間を1対1で個別に接続するのではなく「ASTERIA Warp」を中心として多対多の接続を実現する。「ASTERIA Warp」にあらかじめ用意された多様なデータ形式、通信手順形式、業務システムへの対応によって最小限の接続数で、拡張性の高い柔軟なシステム連携を迅速かつ効率的に行うことができる。

 

*企業間データ連携
システムの仕様や業務フローなどが多様な複数企業間における、多種多様な情報をやりとりするために必要な通信プロトコルや認証などの機能を装備し、企業間での発注処理などにおいて円滑なシステム連携を行うことができる。
ユーザー企業の1社である報道機関(通信社)では、各地の新聞社など相手システムに合わせた個別設定を行う手間なく、全国一斉にニュース配信をすることができる。

 

*クラウドサービス連携
近年普及が進んでいる各種クラウドサービスとの連携が可能。AWS(Amazon Web Service)やMicrosoft Azureで提供される基本的なクラウドサービスに加え、Salesforceやkintoneなどクラウド上のアプリケーションサービスとデータ連携することができる。

 

これまでも、様々なERP、業務システムなどとのデータ連携を実現してきたが、今後も「Blockchain」「IoT」「AI」「Robot」「Fintech」といった新技術やクラウドサービスと企業システムをノーコードでAPI接続することができるよう、新しい時代の変化を「先見」して進化を続けていく製品である。

 

(販売方法)
28社(2022年2月13日現在)の、主としてシステム開発会社である「ASTERIAマスターパートナー」と呼ばれる販売パートナー(代理店)がエンドユーザーへ販売している。
「ASTERIAマスターパートナー」は、主として自社が構築するシステムの中に「ASTERIA Warp」をを組み込む形でエンドユーザーに販売している。

(同社資料より)

 

また、2016年に販売を開始した月額利用料金型のサブスクリプション版「ASTERIA Warp Core」は、ASP(ASTERIA Subscription Partner)62社(2022年2月13日現在)がパートナーとして販売を行っている。

 

導入先に対して技術サポート(問合せ対応)及び製品の更新(新しいOSへの対応、機能の拡充、不具合の修正)など運用支援を行うサポート業務も提供している。サポート料金はライセンス金額の15%。ライセンスと同じく毎年ストック型で積み上がり、ASTERIA Warpの安定した収益拡大の一因となっている。
サポートの提供は原則として販売パートナー経由で行っている。

 

② 「Handbook」(ハンドブック)
組織で発生する多種多様な情報を、スマートデバイス(スマートフォンやタブレット端末)に対してセキュリティを保ちながら登録・配信・共有することを可能にするサービス。
スマートデバイス上にダウンロードして使う「アプリ」と、クラウド上で提供される編集・管理ツールの構成となっている。

 

月額利用料金型のサブスクリプションで提供し、されるため契約した時点から直ぐに利用を始めることができる。。
対象ユーザーは、企業や教育機関など1600社を超え、コロナ禍の下、スマホやタブレットを使用したリモート活動を円滑に実施する際に大きな効果を発揮している。

 

市場調査・コンサルティング会社ITR社が作成した市場調査レポートである「ITR Market View:SFA/統合型マーケティング支援市場2021」では、セールス・イネーブルメント・ツール市場の2カテゴリ(売上金額シェア、累計導入社数ランキング)でシェアNo.1となっている。

(同社資料より)

 

③ 「Platio」(プラティオ)
誰でも簡単に自社の業務にフィットするモバイルアプリを作成・活用できるアプリ作成ツール。
「ASTERIA Warp」同様、「ノーコード」が大きな特長である。

 

モバイルデバイスで得られる位置情報、カメラ・ビデオの情報に加え、手入力の情報などをまとめて入力する機能を有している。アプリで入力した情報は、担当者のモバイルデバイスに即座に共有。共有されたデータはCSV形式で出力したり、APIを介して他のシステムと連携したりできる機能も有している。
100種を超える豊富なテンプレートを標準装備。柔軟なカスタマイズ機能を備えており、現場業務に適したモバイルアプリをノーコードで作成できる。
iOS版(iPhone、iPad用)及びAndroid版を、パートナー制度により月額利用料金型のサブスクリプションで提供している。
企業のみでなく、地方自治体など幅広い業界での採用事例が拡大している。

 

(同社資料より)

 

④ 「Gravio」(グラヴィオ)
オフィス、ビル、店舗などでのIoTソリューションにおける、効率的なデータ収集と活用をシンプルに実現するために開発したAI搭載のエッジコンピューティング用ミドルウェア。
世界中で幅広く普及しているWindowsやMacOS上でも動作するため、既存のPC運用における知見や情報リソースを最大限に活かしながら、カメラとAIによる画像認識や各種センサーデータを利用するエッジ統合型のAI・IoTシステムをノーコードで容易に実現することができる。

 

6つの特長
1:センサーデータ処理。IoT機器からのデータ加工・連携を一元的にエッジで処理可能。
2:各種デバイスの制御が可能。IoT機器に対する作動制御(命令発行)が可能。
3:AI(マシンラーニング)搭載。顔認識や天気の識別などカメラをセンサーとして使用可能。
4:ノーコード。直感的かつ流麗なインターフェースにより高い操作性を提供。
5:レイアウトビュー。エリア内に設置されたIoT機器の状態を画面上で俯瞰することが可能。
6:Windows、MacOS、Linuxで動作。運用、管理、保守が容易でかつ高いセキュリティを実現。

 

Windows版、MacOS版、Linux版を、サブスクリプション(月額/年額)で提供している。今後もハード/ソフト両面での機能追加を継続的に予定している。

 

自動化、遠隔化のための事例が続々と登場している。

(同社資料より)

 

(2)デザイン事業
2017年、英国This Place社を買収し提供を開始したサービス。
企業向けのソフトウェアも今後はデザインファースト、つまり、機能だけでなく、それ以上に使いやすさ・分かりやすさを重視したデザインが重要になるとの考えから、企業のデジタルトランスフォーメーション実現を支援することを目的としている。顧客企業のデジタルデザインにおけるブランディング戦略のコンサルティング、顧客企業のDX戦略策定・実行支援、ウェブやモバイルアプリのデザインに関するコンサルティング、開発支援等を提供している。

 

英国、米国、香港を拠点にサービスを、大手企業が中心顧客としてサービス提供している。現在の中期経営計画期間内に日本でも拠点を設置しサービス提供を開始する計画である。

 

1-4-2 投資事業セグメント
2019年に設立した米国に拠点を置く100%子会社Asteria Vision Fund Inc.で実施する企業投資事業。
重点投資対象を「4D」と定義し、投資対象を発掘している。

 

領域

コンセプト

具体的な製品・サービス

Data

データのみが企業IT資産になる

AI、Big dataなど

Device

デバイスが不可欠なインフラになる

IoT、Smart devicesなど

Decentralized

分散して協調ができる「個」の時代になる

Blockchain、DAppsなど

Design

「デザインファースト」の時代に

Design Thinking、DXなど

 

2022年1月末現在、日本、オーストラリア、台湾で各国1社、米国2社の計4社に投資を行っている。ファンド総額は22万USD。

 

【1-5 特長・強み・競争優位性】

①優れた「先見性」をベースにした製品開発力
同社は「IT業界」の中で、主としてソフトウェアの製品開発に軸足を置いて事業を展開している。
不特定多数のユーザーを対象とした製品開発は、個々のクライアントのニーズに対応したシステムを開発する受託開発と違い、売上規模を拡大しやすい。また初期の開発コストを一定のボリュームを販売することでカバーし損益分岐点を超えれば、その後は「売上≒利益」となるため、粗利率は受託開発に比べて極めて高い。
「ASTERIA Warp」の粗利率は80-90%、Handbookも既に損益分岐点を超えた。Platio、Gravioの2つの新製品は未だ利益貢献には至っていないが、今後の販売拡大・利益貢献を同社では見込んでいる。

 

もちろん、開発した製品が想定通りに販売数量が拡大しない場合のリスクは大きいため、製品開発にあたっての先読み、設計思想が重要になるが、同社の場合、企業内外でデータを「つなぐ」ことの重要性をいち早く「先見」して主力製品「ASTERIA Warp」を開発したように、時代の先を読む優れた「先見性」によって競争力の高い製品を次々と世の中に提供している。

 

 

 

(同社資料より)

 

②独自の企業文化の浸透により構築される強力な人的資本
前述した経営理念に代表される独自の企業文化が全社に浸透し、行動のベースとなっている。
特に、日本企業に見られがちな前例踏襲ではなく、「発想と挑戦 (Challenge for Ideas):自由闊達な発想と挑戦を尊ぶ。時代をリードするイノベーションは新しい発想から生まれる。その実現のために、リスクを取ることを厭わず、常に新たな可能性に挑戦する」ことを最大の評価項目としている。

 

また、前記①とも重複・関連するが、創業時に平野社長は現在のインターネットで全てが「つながる」世の中を「先見」し、「日本発で世界に通用するソフトウェアを発信」するというビジョンをもって、およそ20年間にわたり製品開発に取り組み、ノーコードで製品を開発できるソフトウェア開発力を培ってきた。

 

こうした理念、ビジョンを全社員が共有することで、「ASTERIA Warp」の後も、次々と新たな発想で新製品を世の中に送り出しており、独自の企業文化の浸透により構築されたエンジニアを中心とした強力な人的資本は同社競争優位性の源泉となっている。

 

③高い市場シェア
①、②をベースに開発された同社製品は、その有用性、使い易さなどからユーザーの評価は高く、No.1製品となっている。
2021年時点で、「ASTERIA Warp」は、EAI/ESB製品の国内市場シェア(出荷数量ベース)で15年連続No.1。「Handbook」も、セールス・イネーブルメント・ツール市場の2カテゴリでシェアNo.1となっている。

 

④新技術、ソリューションへの積極的な取り組み
「発想と挑戦」を経営理念のトップに掲げる同社は、新たな技術やそれを活かしたソリューションの普及、製品化、サービス化にも積極的に取り組んでいる。
平野社長は、コンピュータ共通言語XML普及啓発のための団体「XMLコンソーシアム」の副会長を務めていた(2010年3月に活動終了)。現在注力中のブロックチェーンは、2015年に上場企業として初めて取り組みを始め、2016年4月には、平野社長の提唱により、ブロックチェーン技術の幅広い普及推進を行う団体「BCCC(ブロックチェーン推進協会)」が設立され、平野社長は代表理事を務めている。

 

現在注力中のブロックチェーン技術については、2020年12月1日に開催された明治安田生命保険相互会社の「総代報告会」においてアステリアの開発した、ブロックチェーン技術を活用した「出席型バーチャル株主総会ソリューション」を採用した。
明治安田生命が「出席型バーチャル株主総会ソリューション」を採用したポイントは、「新型コロナウイルス感染者の急拡大で12/1開催の総代報告会で3密回避が必須」「バーチャル開催でも投票集計や質問の公正性が担保されるブロックチェーン技術に着目」「最新技術を導入しても、高齢者でも操作が簡単なインターフェース」などである。

 

また、2021年6月26日(土)に開催したアステリアの第23回定時株主総会において、新型コロナウイルスの感染拡大予防対策として、「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」を実施した。
今回の株主総会は、基盤技術として、企業向けのブロックチェーンとして注目されるQuorum(※)を適用し、バーチャルオンリー株主総会で必須となる動議対応をバーチャル環境から実現した。これにより、株主総会で議決権を有する株主の全ての行為(投票・質問・動議)のバーチャル対応が完了した。
株主は議決権行使書の案内に従ってPC、スマートフォン等のブラウザから簡単に投票ができるほか、企業は株主総会の最中でも投票や質問の受付が可能で、得票数はリアルタイムで瞬時に集計される。また、投票結果はブロックチェーンに記録するので主催者でも投票内容の改ざんができないなど、これまでにはない画期的な株主総会となった。

 

※Quorum
米国JPモルガン・チェース社が開発し、現在米国ConsenSys社が所有するEthereumをベースとしたスマートコントラクトプラットフォーム。金融分野における企業向けブロックチェーンとして開発される。

 

今後は、上場企業を中心とした企業向けサービスとして展開していくとともに、行政さらにはエンターテイメント領域における投票の集計方法や結果に公正性を担保できる仕組みとして拡張する計画である。

 

⑤多様性を重視したガバナンス及び経営体制
世界に通じるものづくりを追求するためには多様性が極めて重要という考えから、社外取締役は多様性(ジェンダー、国籍)を重視した構成となっている。
「コーポレート・ガバナンス」という言葉を耳にすることが珍しかった1998年の創業期から継続的に社外取締役2名以上を選任しており、現在は5名の取締役のうち3名が社外取締役である。
また、経営と執行を分離した体制をとっており、兼務しているのは平野社長・北原副社長の2名のみ。様々な分野に強みを持ち、8名中2名が外国人という執行役員構成で、グローバルな経営体制を構築している。

 

【1-6 ESG/SDGs】

社会からの信頼や期待に応えるために、顧客、株主、従業員、取引先、地域社会をはじめとするあらゆるステークホルダーと積極的にコミュニケーションを図りながら事業活動を行うことにより、社会の持続的発展への貢献を目指している。

 

以下の基本方針を掲げている。

アステリアは、「繋がる」ことにより価値を創造し、つねにお客様本位であり続けます。

アステリアは、すべての判断に説明可能な理由を持ち、株主の皆様の期待に応えていきます。

アステリアは、個人の多様性、人格、個性を尊重し、従業員のやりがいと誇りを大切にします。

アステリアは、「世界をつなぐ」という目標に向け、取引先と共に発展していきます。

アステリアは、人々の役に立つ価値を生み出すことで社会に貢献します。

 

同社は、2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を社会から求められる重要な課題と捉えている。
世界共通の目標としてSDGsが示されたことで、企業が取り組むべき方向が明確になり、多くの企業が主体的な取り組みを始めており、同社もSDGsを意識した事業活動に取り組んでいる。既に17ゴール中、11ゴールをカバーしており、今後も更に推進する。主な考え方、取り組みは以下の通り。

 

Environment(環境)

 

 

環境保全活動

ビジネスパートナーおよびエンドユーザーとの良好な「エコシステム」を構築していくだけでなく、自然環境における「共存協栄」を実現する「エコシステム」の整備にも注力し、持続可能な社会の構築に貢献していく。この活動を通じて「地球環境・自然」と「社会・産業」との間の「エコシステム」の構築に向けたさまざまな施策を中長期的な視点で展開し、サステナブルな社会の実現を目指す。

 

*ペーパーレスの推進

*Asteria Green Activity(※)

 

 

Social(社会)

 

社会貢献活動

健康で豊かな社会実現とその持続的な発展のため、これからを担う若者の支援などを通し、「社会貢献活動」を展開している。

 

*かものはしプロジェクトの支援

*チャリティマラソンへの参加

*パンゲア(スタートアップ支援)

 

 

働き方に多様性を

さまざまなバックグラウンドを持った人材が継続的に活躍できるよう、多様な働き方を支援する職場環境づくりを積極的に推進している。

 

*ダイバーシティの推進

*テレワーク

*サバティカル休暇/誕生日休暇

*子育て支援

 

 

Governance(ガバナンス)

*コーポレート・ガバナンス

*内部統制システム

*反社会的勢力排除

 

 

 

(※)Asteria Green Activityとは?
2015年に、主力製品である「ASTERIA Warp」導入5,000社突破を記念して開始した持続的な社会・自然環境の構築に貢献する活動(開始当時の名称は「Infoteria Green Activity」)。
現在までに以下のような実績を残している。

 

◎熊本県小国町との地域再生計画
熊本県小国町(おぐにまち)のブランド材「小国杉」の森林保全活動や、間伐材の利用促進、林業・林産業の再生に向けた取り組みを、2015年から行っている。
小国杉を使ったおもちゃやノベルティを製作して社員やユーザー企業に提供するほか、同社オフィスでも小国杉を使用し、木のぬくもりを感じられる暖かい空間を創出している。

 

◎秋田県仙北市との地域再生計画
秋田県仙北市と2016年より産業振興に向けたICT導入促進について提携を行い、ドローンで撮影した映像コンテンツを同社製品「Handbook」を用いて各観光拠点で閲覧できるようにしているほか、タブレットを活用した観光サービスの充実に向けた実証実験などを進めている。

 

◎熊本県小国町と秋田県仙北市への企業版ふるさと納税
同社から提供されるそれぞれ年間100万円を事業資金とした小国町への事業計画「小国杉をもっとずっと使って計画」と、仙北市への事業計画「桜に彩られたまちづくり事業」(桜の保全活動や観光振興活動)は、どちらも「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」の対象事業として内閣府より認定されている。

 

5年間にわたり継続し、企業版ふるさと納税に係る寄附を行い、寄附を契機とし、寄附先の地方公共団体との対話や広報に関する勉強会を重ね新たなパートナーシップを構築。自社の強みを活かして、市職員の体温管理等のアプリを開発し無償で提供するなど、地域に貢献した取組を実施してきたことが評価され、2022年には、内閣府による令和3年度(2021年度)「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に係る大臣表彰」を受賞した。

 

◎カーボンオフセットの株主総会を開催
2021年6月に開催した同社のバーチャルハイブリッド形式の定時株主総会で、CO2のオフセットを実施した。
総会が開催される株主総会会場に加え、テレワーク環境から参加する出席役員14名の自宅での電力消費によって排出されるCO2を実質ゼロとした。
このオフセットは、国が運営するJクレジット制度(※)に準じたもので、熊本県小国町などでのCO2吸収量から生まれた森林吸収クレジット1tを一般社団法人 more trees(東京都)から購入して実施した。アステリアでは、 2015年より熊本県小国町と協定を締結し森林保全活動を展開しており、同町の森林がCO2オフセット先に含まれている一般社団法人 more treesを採用した。

 

Jクレジット制度(※):省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。 経済産業省、環境省、農林水産省で共同運営されている。

 

2.2022年3月期第2四半期決算概要

【2-1業績概要】

 

21/3期2Q

構成比

22/3期2Q

構成比

前年同期比

売上収益

1,340

100.0%

1,368

100.0%

+2.1%

売上総利益

1,089

81.3%

1,143

83.5%

+4.9%

販管費

796

59.4%

965

70.5%

+21.2%

営業利益

337

25.2%

862

63.0%

+155.6%

税引前利益

326

24.4%

889

65.0%

+172.5%

四半期利益

238

17.8%

559

40.8%

+134.7%

*単位:百万円。四半期利益は親会社の所有者に帰属する四半期利益。以下、同様。

 

増収、大幅な増益。上場来最高益。
売上収益は前年同期比2.1%増の13億68百万円。
欧米、特に米国と英国において、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、デザイン事業が前年同期比で減収となったものの、「ASTERIA Warp」を主力製品とするソフトウェア事業が伸張した。
営業利益は同155.6%増の8億62百万円。
中期経営計画「STAR」に沿った人員の拡充やマーケティング施策を実施したことで販管費が増加したが、ソフトウェア事業の増収効果、投資事業の収益で吸収し、大幅な増益。上半期の最高益を記録した。

 

【2-2 セグメント別動向】

 

21/3期2Q

22/3期2Q

前年同期比

ソフトウェア事業

1,340

1,368

+2.1%

投資事業

-

-

-

連結売上高

1,340

1,368

+2.1%

ソフトウェア事業

302

192

-36.4%

投資事業

-10

641

-

調整額

0

0

-

連結セグメント利益

292

833

+184.8%

投資事業:評価額増減

-

656

-

*単位:百万円。売上髙は外部顧客への売上高。セグメント利益は売上収益から、売上原価、及び販管費を控除。投資事業の評価額増減は、損益計算書の「その他の収益」に含まれる。

 

(1)ソフトウェア事業セグメント

 

21/3期2Q

22/3期2Q

前年同期比

ソフトウェア事業

1,070

1,197

+11.9%

デザイン事業

270

171

-36.4%

合計

1,340

1,368

+2.1%

 

 

①ソフトウェア事業
各製品とも順調に拡大した。MRR(Monthly Recurring Revenue、月次経常収益)は、「Platio」が24か月で6.7倍、「Gravio」が同31倍と大幅な伸び。一方、解約率は各製品とも低水準で推移している。

 

*「ASTERIA Warp」
テレワークに対応した社内システムの構築などによる新たな連携ニーズの拡大が継続しており、製品シリーズ全体で販売は好調。特に、旗艦製品となるライセンス版の売上は前年同期比22.9%の増収。サブスクリプション売上は同30%を超える増収。ソフトウェア事業全体を牽引している。

 

*「Gravio」
コロナ禍による3密回避に対応するニーズが引き続き旺盛であったほか、販売パートナーが拡大し、幅広い業種での採用に繋がっている。前年同期比約2倍の増収。

 

*「Platio」
現場のDX推進や業務アプリの内製化を実現するノーコード開発ツールなどが注目され、観光・小売などデジタル化による業務改善意欲の高い業界からの引合いが好調。また、ASTERIA Warp販売パートナーと共に地方を含めた販促活動を展開した結果、約2倍の増収を記録した。

 

*「Handbook」
社内業務のペーパーレス化ニーズが拡がり、既存顧客での利用拡大やオンラインミーティング用途等で堅調に推移。

 

②デザイン事業
英国・米国を中心に既存顧客からの追加受注を獲得したほか、新規顧客獲得活動を強化したものの、新型コロナウイルス感染拡大による影響で小売業における顧客プロジェクトの見直し減収。

 

 

(2)投資事業セグメント
2019年に開始したAsteria Vision Fund I,L.P.(AVF-1)を通じた企業投資事業。
引き続き順調で、6億56百万円の評価益を計上した。AVF-1の投資先のうち、Gorilla Technology社(台湾)において評価増、Imagine Intelligent Material社(オーストラリア)において評価減が発生した。

 

【2-3 財務状態とキャッシュ・フロー】

◎主要BS

 

21年3月末

21年9月末

増減

 

21年3月末

21年9月末

増減

流動資産

2,787

2,879

+92

流動負債

1,213

1,432

+218

現金・現金同等物

2,451

2,051

-400

仕入債務

182

304

+121

売上債権

256

348

+91

非流動負債

973

1,291

+318

非流動資産

5,120

6,198

+1,078

繰延税金負債

101

309

+208

有形固定資産

181

483

+302

長短借入金

825

814

-11

のれん

1,015

1,003

-11

負債合計

2,186

2,723

+536

無形資産

69

78

+8

資本合計

5,721

6,355

+633

投資等

3,855

4,486

+631

利益剰余金

1,487

1,952

+465

資産合計

7,907

9,077

+1,170

負債資本合計

7,907

9,077

+1,170

*単位:百万円。売上債権は「営業債権及びその他の債権」、投資等は「持分法で会計処理されている投資」「その他の金融資産」「その他の非流動資産」の合計、仕入債務は「営業債務及びその他の債務」、株主資本は「親会社の所有者に帰属する持分合計」

 

現金・現金同等物の減少、有形固定資産及び投資等の増加で資産合計は前期末比11億70百万円増加の90億77百万円。仕入債務及び繰延税金負債の減少などで負債合計は同5億36百万円増加の27億23百万円。利益剰余金の増加などで資本合計は同6億33百万円増加の63億55百万円。
親会社所有者帰属持分比率は前期末より2.7ポイント低下し67.4%。

 

◎キャッシュ・フロー

 

21/3期2Q

22/3期2Q

増減

営業CF

495

196

-299

投資CF

-123

-375

-252

フリーCF

373

-178

-551

財務CF

-204

-210

-6

現金同等物残高

2,665

2,051

-614

*単位:百万円。

 

税引前四半期利益増加の一方、その他の収益の減少、売上債権の増加などで営業CFのプラス幅は縮小。貸付による支出などで投資CFのマイナス幅が拡大し、フリーCFはマイナスに転じた。
キャッシュ・ポジションは低下したが20億円と潤沢である。

 

【2-4 トピックス】

①新市場区分「プライム市場」を選択
2021 年 7 月に東証より「新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果について」を受領し、新市場区分における「プライム市場」への上場維持基準に適合していることを確認した。
これを受け、21年9月、新市場区分「プライム市場」を選択することとした。
今後は、東京証券取引所が定めるスケジュールに従い、新市場区分の選択申請に係る所定の手続きを進めていく。

 

②「ASTERIA Warp」が国内企業データ連携ソフト市場で15年連続市場シェアNo.1を達成
21年11月に発表された民間調査会社 株式会社テクノ・システム・リサーチ(東京都千代田区)の調査の結果、2020 年における国内 EAI/ESB※ソフト市場で主力製品「ASTERIA Warp(アステリア ワープ)」が 15 年連続シェア No.1(出荷数量ベース)を達成した。

 

テクノ・システム・リサーチの「2021年ソフトウェアマーケティング総覧EAI/ESB 市場編」によると、2020年のEAI/ESB製品市場規模は約150億円。
こうした中、ASTERIA Warpの出荷数量は1,150サイトとなり、市場シェア44.0%(出荷数量ベース)を記録し、15年連続で市場シェアNo.1を達成した。シェアNo.2の製品の約1.5倍のシェアと、同分野の製品の中で引き続き圧倒的な支持を得ている。

 

※EAI/ESB
企業データ連携。Enterprise Application Integration / Enterprise Service Bus

 

③IR優良企業賞 2021でアステリアがIR優良企業奨励賞を初受賞
21年11月、一般社団法人日本IR協議会が主催する、IR活動において優れた成果を挙げた企業を表彰する「IR優良企業賞 2021」で「IR優良企業奨励賞」を初めて受賞した。
主な選定理由
「経営トップの発信力が高く、メッセージ性のあるIR活動を実行している。経営トップの説明はIT業界全般を踏まえたもので、わかりやすいと評価を得ている。ブロックチェーンに関する勉強会も開催しており、トップがブロックチェーン推進協会の理事長も務めていることもあって注目度が高い。IR部門も工夫して開示に努め、事業説明が分かりやすいと評価されている。昨年度からは、海外機関投資家の開拓にも注力している」

 

④投資事業における出資先であるGorilla 社がナスダック上場へ
21年12月、投資事業における出資先であるエッジAI 開発企業 Gorilla Technology Group Inc.(台湾)と特別買収目的会社(SPAC)である Global SPAC Partners Co.(ナスダック上場)は、両社の合併により Gorilla 社が 2022年第1四半期(1〜3
月)にナスダック市場にティッカーシンボル「GRRR」で上場する予定であることを発表した。
Gorilla 社の上場は、投資事業の出資先として初の株式上場。なお、上場後も、アステリアの代表取締役社長の平野洋一郎氏が引き続き社外取締役に就任予定である。

 

3.2022年3月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

21/3期

構成比

22/3期(予)

構成比

前期比

修正率

進捗率

売上収益

2,688

100.0%

2,900

100.0%

+7.9%

0%

47.2%

営業利益

820

30.5%

3,400

117.2%

+314.8%

+240%

25.4%

税引前利益

1,026

38.2%

3,400

117.2%

+231.5%

+240%

26.2%

当期利益

807

30.0%

2,000

69.0%

+147.7%

+135.3%

27.9%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

業績予想を上方修正。
業績予想を上方修正した。Gorilla 社のナスダック市場上場に伴う評価益の計上が見込まれることに加え、評価益の計上を背景にソフトウェア事業を中心としてTV広告を含む積極的なマーケティングを追加実施すること等を総合的に検討した結果、営業利益以下、2021年9月30日に開示した通期予想を上回ると判断した。
配当予想に変更は無い。中間配当0.00円/株。期末配当は現時点では未定。

 

4.中期経営計画「STAR」

2021年6月、21年4月から24年3月までの3か年を期間とする「中期経営計画 STAR」を公表した。

 

(1)ビジョン

創業ビジョンである「組織を超えるコンピューティングを実現するソフトウェアを開発し、世界規模で提供する」を踏まえ、中計期間の経営ビジョンを「自律・分散・協調型の新社会を創るサービスを世界規模で提供する」とした。

 

(中期経営計画名STARについて)
計画期間における重点項目の頭文字をとって「STAR」と名付けている。

Sustainable

持続可能な社会構築に貢献する事業を遂行すること

Top-line

価値創出・提供の結果として売上増大を狙うこと

Acquisition

企業買収・事業買収を通じて成長のスピードを獲得すること

Refine

既存の製品・サービスに磨きをかけて新時代を先取りすること

 

 

ビジョンの下となる基本的な考え方は以下の通りである。

アステリアは創業時のXML技術製品以来20年以上におよび「つなぐ」製品を提供している。

2002年のASTERIA R2出荷以降は「Graphical Language」というコンセプトのもと、全製品が「ノーコード」である。近年、「ノーコード」という用語の認知が広がってきているが、この傾向は当面拡大する。

コロナ禍によって、アステリアが創業時から標榜する「自律・分散・協調」の世界への動きがいよいよ顕在化している。

この時代においては、分散環境において「いつでもどこでも」使えるモバイルデバイスが当たり前となる。また、チップや部品の性能向上とIPv6の普及、さらにクラウドのセキュリティリスク回避のために、エッジコンピューティングの普及が加速する。

 

 

(同社資料より)

 

(同社資料より)

 

(2)事業別活動計画

①ソフトウェア事業
◎主力製品
21年3月期時点で「柱」となっている2製品についての目標
*ASTERIA Warp
サブスク比率を向上させストック比率を7割までに上げる

 

*Handbook
22年3月期後半に新製品をリリース

 

◎新製品
2製品を育成し4本柱を確立する
*Platio
積極的なマーケティングを実施する。カテゴリを確立し市場シェアNo.1を目指す。

 

*Gravio
世界展開を開始する。22年3月期は日本、米国、英国、シンガポール、23年3月期は中国市場に参入。
自社デザインのGravioセンサー、機器のチップや部品の製造国を吟味し、貿易上の影響を回避する(既に対応済み)。
カテゴリを確立し市場シェアNo.1を目指す。

 

◎研究開発・コンサルティング
長期的製品のベース技術として以下の研究開発を推進する。
*Blockchain:自社開発ブロックチェーンの外部提供
*AI:ロボティクス向けミドルウェア(Asteria ART)
*成長性の高いマネタイズ方法としてサービサーとのJVを推進する。

 

◎M&A
コロナ禍の状況を反映し国内M&Aを強化する。
*国内M&A組織を立ち上げた。
*対象はクラウドサービスに限定し、ライセンス売上が過半数の案件

 

②デザイン事業
◎既存市場
ポートフォリオ戦略を継続する。
欧米の顧客企業のコロナ禍からの復活後のプロジェクトを獲得する。

 

◎日本市場
早期に日本法人を設立する。

 

③投資事業
◎Asteria Vision Fund-1
IRR 10%のための投資先成長により未実現益を定常的に上げている。

 

◎第2号ファンド
Asteria Vison Fundの成果次第で組成を検討する。

 

④人員計画
21年3月末(124人)の約1.5倍の人員を目指す。
ジェンダー、国籍等のダイバーシティを重視した採用を継続する。
新卒採用を継続し、インターン採用なども拡大する。
テレワーク中心、スーパーフレックスなど働き方の多様性を活用し、世界中から優秀な人材を採用する。

 

(3)数値計画・目標

以下のような数値計画を掲げている。

 

21/3期(実績)

24/3月期(計画)

CAGR

売上収益

2,688

4,500

+18.7%

調整後EBITDA

615

1,000

+17.6%

同マージン

22.9%

22.2%

-

営業利益

820

-

-

営業利益率

30.5%

-

-

単位:百万円。調整後EBITDA=営業利益+減価償却費±その他の調整項目。その他の調整項目は、のれん減損、未実現買収対価、未実現評価損益等。CAGRは同社計画よりインベストメントブリッジ作成。

 

5.平野社長へのインタビュー

平野洋一郎社長に、経営理念に込めた想い、自社の競争優位性、課題、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

Q:「近年、企業を評価するにあたり、社会的存在意義やビジョン、理念への関心が急速に高まっています。アステリアの経営理念について、平野社長はどんな想いを込めているのでしょうか?」

 

発想と挑戦 (Challenge for Ideas)

自由闊達な発想と挑戦を尊ぶ。時代をリードするイノベーションは新しい発想から生まれる。その実現のために、リスクを取ることを厭わず、常に新たな可能性に挑戦する。

世界的視野 (Global Perspective)

常に世界市場を視野に入れる。世界的に存在価値のある独自性を持った製品やサービスを提供する。

幸せの連鎖 (Chain of Happiness)

幸せを連鎖させる。自ら幸せを感じる誇りある活動を営むことで、お客様の幸せに貢献し、ひいては社会の進歩発展に寄与する。

 

3つの経営理念はどれも当社にとって重要な考え方です。
私は全社ミーティングの際はもちろんのこと、入社レクチャーなど、ことあるごとに経営理念について触れていますので、全社員にしっかりと浸透しています。

 

1つ目の「発想と挑戦」。
当社は上場企業ではありますが、常にベンチャー精神を忘れずにいたいのです。「日本発で世界中にソフトウェアを提供する」という創業からのミッションは、まだ道半ばです。常にチャレンジし、大きな成長を目指さなければ、その実現はできませんから、開発だけでなく全ての部門、全ての社員が自由で新しい発想とチャレンジを続けていくことが大切だと考えています。

 

2つ目が「世界的視野」。
創業時から世界を目指していますから、海外担当だけでなく、開発、営業、マーケティング、経理、法務、人事など全ての業務において、全ての社員が世界の標準・レベルを意識した視野を持って仕事に取り組んでいく。これができて初めて世界に発信することができると思っています。

 

3つ目が「幸せの連鎖」。
最近は「Well-being」とも言われ、社員の幸せにフォーカスしようという企業も増えてきました。
私がここに込めた念いは、「まず自らが幸せを感じる仕事をしよう、それができてこそ継続的に幸せを外に届けることができる。その幸せを連鎖させていこう」というものです。
日本ではともすると、「自分は二の次として、世のため人のためにとにかく施しましょう」、滅私奉公のような考えがありますが、これを否定しています。
なぜなら、ビジネスは継続性が最も重要であり、施したのはいいが疲弊してそこで息絶えたら何の意味もありません。継続的に幸せを連鎖させていくには、自らが幸せでいなくてはいけない。自分たちが幸せだからこそ、お客様も、取引先も、ビジネスパートナーも幸せにできる。ひいては社会にも幸せを伝播することができるのです。

 

先程、ことあるごとに社内では経営理念について触れているとお話ししましたが、Slackというコミュニケーションツールでほぼ毎日全社員にメッセージを発信しています。
世の中のちょっとした出来事を素材にして、私の考え方を社員に知ってもらうことで、理念、ビジョンの共有、浸透を図っています。

 

Q:「今年5月に『中期経営計画 STAR』を公表されました。その冒頭で『自律・分散・協調』という御社のテーマを示されています。このテーマについてお聞かせください」

 

「自律・分散・協調」は当社にとっての100年テーマです。

 

アステリアは創業時より、「自律・分散・協調」の時代になると唱え、それを支えるソフトウェアを開発してきました。20世紀までの組織や社会は、階層があり、規律があり、統制されているいわば『階層・規律・統制』の時代でしたが、インターネットが普及することによって21世紀は『自律・分散・協調』の時代・社会になる」と考えています。

 

小さなチームや個人が、何かにぶら下がるのではなく自律している。そして地球上どこにでも分散して存在できている。しかし、必要に応じて協調している。必要な時は繋がるし、必要ない時には切れる。重要なのはこの「必要ない時は切れる」ということなのです。
従来は何か大きいことをやろうとするたびに組織が大きくなっていった。繋がり続けて、切れることはないので組織はどんどん肥大化する。しかし、これだけ社会の変化が激しいと、大きな組織は動きが鈍くなり、変化への対応が難しくなる。PDCAを速く回そうとするが、図体が大き過ぎて、まさに恐竜のように時代に対応できない存在となってしまっている企業がたくさんあります。
ですから、これから求められるのは、大きな組織ではなく、自律している小さなチームをいかにして必要に応じてつなぐかということになります。

 

「自律・分散・協調」の最大の利点は、とにかく動きが速いということです。必要に応じて最小限のチームを、しかもつなぐことで最適なチームを組むことができます。
例えば、ブロックチェーンで何か立ち上げようとした場合、自律・分散・協調型であれば、世界中から最適な専門家を組み入れて、どんどん仕事を進めることができます。自律・分散・協調の仕組みは専門性が高く、小さくスピーディーに良いものが低コストで作り上げることができるのです。
組織が大きく、専門性は高くないが既にあるリソースを使用せざるを得ない大企業=恐竜は敵うわけがありません。

 

この「自律・分散・協調」社会を実現するために、「つなぐ」ことを世の中の仕事においてソフトウェアで推し進めるのが当社のアプローチです。
まず初めにシステムをつなぎ(ASTERIA Warp)、次にモバイルをつなぎ(Handbook)、今はIoT等のデバイスをつなぐGravioや、現場をつなぐPlatioも提供しています。当社自身も、コロナ禍で完全にテレワークとなり、未来の仕事の在り方を自ら実践している状況です。実践の中から様々なアイデアや気付きがあり、今後は更に新たな製品やサービスが磨かれていく事と考えています。

 

アメリカの大きなテクノロジー企業は、規模こそ大きいものの、その動きは「自律・分散・協調」です。一方、日本は依然として動きは鈍く、結果的に失われた30年となり、企業の新陳代謝もほとんど起きていない。
こうした点を、私たちが変えていかなければならない。「自律・分散・協調」こそが、最も求められ、最も価値を生み出す形であると考えています。

(同社資料より)

 

Q:「ありがとうございます。続いて御社の競争優位性について社長のお考えをお聞かせください」

 

一言で申し上げれば、「コンパクトな組織と強力な人的資本」、これが当社の競争力、競争優位性の源泉です。たった150人足らずで5ヶ国/地域に展開しています。
ご存じのように、IT業界、ソフトウェア業界は変化のスピードが極めて激しい。このスピードに遅れることなく付いていく、それ以上に、先回りして自らビジネスを仕掛けるには、大きな組織のトップの号令だけでは全然間に合いません。
ですので、現場の一人一人が自ら考え、自ら行動に移すことが不可欠です。

 

当社の場合、先程申し上げた経営理念の一つ目「発想と挑戦」が全組織、全社員にしっかりと根付いているため、時代の先を読む優れた「先見性」や自由な発想力・チャレンジ精神によって、「ASTERIA Warp」が15年連続シェアNo.1であるほか、それに続く、「Handbook」「Platio」「Gravio」など最先端の技術を企業のビジネスに活かす製品を提供し続けることが出来ています。中期経営計画では、この「人的資本」を更に強化していくことで、当社および当社製品の競争力を更に磨き上げていこうと考えています。

 

Q:「今お話しいただいた競争優位性とのつながりで、「先見性」や「発想と挑戦」によって、世の中に存在していなかった最先端製品が生み出されてきたのかを、もう少し詳しく教えていただけますか」

 

例えば、「Handbook」は、2009年の発売ですが、開発コンセプトの発想は2005年になります。
2007年の上場に向けて、収益を安定させるためにも「ASTERIA Warp」の1本足打法ではなく、第2、第3の製品が必要だと考え、様々検討した結果、創業時の事業展開説明図でも示していた「モバイル」に進むことにしました。

 

当時、社外や周辺はモバイルをやるならNTTドコモの「i モード」という意見が圧倒的でした。なぜなら、当時は「iモード」全盛時代で、「iモード」対応製品が売りで上場した企業もあったほどだったからです。しかし、私も副社長の北原も「i モード」ではないだろうと判断しました。
理由は明確です。エンジニアリングの観点からは、OSの限界や、画面制御の限界が明らかだったからです。グラフィックではない文字のみ、OSもマルチタスクではない(同時に複数のアプリケーションを動作できない)「i モード」に未来はないと考えました。
一方で、今使っているノートPC、具体的にはアップルのMac等はどんどん小型化し、ポケットに入るようになるだろうと考え、その方向に向かって研究開発を進めました。

 

2年後の2007年には予想したように、Macの流れを汲むiPhoneが米国で発売され、日本では2008年に発売。アステリアは、2009年に「Handbook」をリリースしました。
2009年頃のiPhoneは、まだ高級な玩具といった感じで捉えられていました。それでも私たちは、これからスマートフォンはビジネスでどんどん使用される、その際、「Handbook」も「つなぐ」価値を大いに発揮すると確信していましたが、周辺での理解は極めて低いものでした。
ところが翌2010年にiPadが登場し、A4サイズの資料が閲覧できるようになると、私たちが以前から言ってきた「文書共有・情報共有」がようやく具体的な形になって理解されるようになり、株式市場も反応します。
1年前には全く理解していなかった方から「いやインフォテリアって前から先見性があると思ってたんだよ」とも言われるなど、評価は180度転換しました。

 

こんなエピソードもあるように、早すぎて理解されないこともあります。
ブロックチェーンも同様です。2015年の当時、上場企業の中でブロックチェーンに言及する企業は1社もなく、当社が最初にブロックチェーンを手掛け、出資も行い、翌年2016年にはブロックチェーン推進協会を立ち上げました。株式市場でもブロックチェーンが急速にテーマとなりました。先んじて製品や技術を手掛けたりするが、リリースしたときは世間ではよく理解できていない、しかし数年後には時代が追い付いてくるというパターンですね。

 

「Platio」も「Gravio」もリリースした時はよく理解されませんでした。
実は、社内でもわからないと言われることがよくあります。
当社では、新しい製品を開発する際、お客様の声を聞かないという方法を採っています。
市場の声を聞かないし、営業の声すら聞かない。開発とプランニングに携わってる人間だけで先を見越して設計をして出荷します。その上で、バージョン2以降はお客様の声を積極的に聴いて製品を磨いていきます。
今でこそ「Gravio」「Platio」も評価されていますが、今のニーズから作っていないバージョン1の販売には営業のメンバーは大変苦労しました。
目の前のニーズから作らずに、将来のニーズに向けて開発、リリースする。その後、バージョン2、バージョン3でお客様の声を元にどんどん磨いていくわけです。これはまさにスティーブ・ジョブズが言っている「何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。多くの場合、人は形にして見せてもらうまで自分は何が欲しいのかわからないものだ」ということです。

 

ただ、当社としては突拍子もないことを行っているつもりはありません。
マーケティング用語に、「マーケットイン」「プロダクトアウト」という言葉があります。当社はプロダクトアウトに見えますが、時系列で見ると、「未来のマーケットイン」なんです。一見プロダクトアウトに見える会社、ソニーやアップルも実は、未来のマーケットインもしくは未来のマーケットクリエイトです。
この点も是非皆さんに知っておいていただきたいと思います。

 

Q:「未来のマーケットイン、御社を表現するのに非常にぴったりなキーワードですね。製品開発について、もう一つ伺います。御社製品の大きな特長が、『ノーコード』です。何故ノーコードであるのか、その想いは何でしょうか?」

 

ノーコードを目指した理由は、私たちが100年テーマとしている「自律・分散・協調」の社会を創造するには、「誰でもつなぐ製品を使うことができる、現場が使うことができる」ことが不可欠だからです。
情報システム部門にお願いしないとつながらないということでは、必要なときにつながることができません。現場でいつでもつながるためには特別な人、エンジニアがいなくてもつながることができる環境を提供する必要がありますから、当社製品は創業以来全てがノーコードです。
私たちはエンジニアとして、コンピュータやソフトウェアの利点を、特別な人の特別なものではなく、世の中の隅々にまで広げたいという強い思いをもっており、それが「自律・分散・協調」の社会・未来に繋がると考えています。

 

 

Q:「中期経営計画 STARの、具体的な取り組みについてお聞かせください」

 

この3年間は、誰でも作れる「ノーコード」、いつでもどこでも使える「モバイル」、安心・安全な「エッジ」を製品としての注力領域とし、新技術のブロックチェーン、AIなどについて研究開発を行っています。

 

中期経営計画の名称であるSTARは、重点4項目の頭文字です。

Sustainable

持続可能な社会構築に貢献する事業を遂行すること

Top-line

価値創出・提供の結果として売上増大を狙うこと

Acquisition

企業買収・事業買収を通じて成長のスピードを獲得すること

Refine

既存の製品・サービスに磨きをかけて新時代を先取りすること

 

*Sustainable(サステナブル)
サステナブルの重要性は改めて私たちが言及しなくても現在では皆さんが理解されているともいますが、ここに掲げた意味は、私たちの事業活動にサステナブルを組み込んでいくということです。以前からCSR、SDGsに取り組んでいますが、今回は経営計画として1つ1つの事業の中でこのサステナビリティを組み込んでくという意味です。

 

*Top-line(トップライン)
サステナブルを実現していくためには成長が不可欠です。成長とは私たちが社会に生み出す価値が増加している証拠でもありますから、トップライン(売上)を、しっかり伸ばしていきます。単に数字を伸ばすのが目的ではなく、価値創造のリターンであるという意味合いを込めています。

 

*Acquisition(アクイジション)
これは創業理念にも書いていますが、自前主義に陥らないということです。日本の企業はすぐに自社内でやりたがるのですが、これではスピードが遅くなります。スピードを獲得するために仲間をどんどん増やしていく。技術も買っていきますし、メンバーも仲間もどんどん組み入れていく、これがアクイジションです。世界市場で勝負できるスピードをつけていきます。

 

*Refine (リファイン)
私たちは新しい価値創造を追求していきますが、既に私たちが持っている製品・サービス・自分たちのスキルをさらに磨きをかけていくという意味です。

 

 

Q:「中期経営計画の中でも、社長が特に投資家に知ってほしい、伝えたいというところをお話しいただけますか」

 

今期より、事業報告のカテゴリを「ソフトウェア事業」「デザイン事業」「投資事業」の3本柱としました。
特に大きなポイントは2019年に開始した投資事業です。これまではどのぐらいの規模となるか不明確であったので、その他のような位置としていたのですが、前期からはしっかりと成果が出始めてます。今期以降も十分期待できると見ていますので、一つの事業セグメントとしました。

 

中期経営計画では2024年3月期、売上高45億円(21年3月期26.9億円)、調整後EBITDA10億円(同6.2億円)を目標としています。それぞれ伸び率は60%以上の増加とチャレンジングな数字となっていますが、今期は仕込みの時期で、来期に仕切り、最終24年3月期に仕上げに入ります。

 

当社は、新たな発想で全く新たな製品を世の中に出していきますので、新製品「Platio」「Gravio」に関しては、現在自らマーケットを創り出しているところです。商品カテゴリを認知していただき、マーケットを確立しトップシェアを握るという戦略です。
両製品とも急成長中です。
現時点では「ASTERIA Warp」と「Handbook」で稼ぎ、「Platio」「Gravio」に投資するというモードですが、中期経営計画が終了するころには両製品とも利益に貢献し、更に次の新製品への投資を行うというフェーズになっているものと考えています。

 

 

Q:「一方で、先程おっしゃった100年のテーマを実現し、御社がさらに大きく成長するためにもっと強化しなければならない部分や不足しているリソースといったものは何でしょうか?」

 

まず、日本以外の海外における当社のプレゼンスを向上させることが重要です。
今は外国籍の社員も随分入社し、ダイバーシティも進んでいますが、日本に興味のある人が入社する傾向が強いです。
そうではなく、それぞれのマーケットで優秀な人は世界に大勢いますから、特別に日本に興味がなくても優秀な方々に喜んで入社してもらうためにも、海外でのプレゼンス向上は不可欠です。
グローバルでのプレゼンス向上には、製品の浸透と海外投資家へのアプローチが重要です。今まで以上に積極的に海外向けのIR活動を展開していく考えです。

 

他には、21世紀に活躍する100年企業を目指すうえでは、今後はマネジメントをどう継いでいくかも重要な課題と認識しています。

 

どの業界でも人手不足が大きな課題となっています。特に、この変化の時代に適応できる柔軟性を持った人、優秀な経験を持っている人は少ないのが現状で、当社においても、私たちが希望する優秀な人を採用するのはそれなりに難易度が高くなっています。
ただ、当社ではほぼ全社的にテレワークを行っているため、優秀でかつどこでも仕事のできるような能力を持った人にとっては魅力ある職務環境を提供することができています。
幸いなことに、その点でアドバンテージをもって採用活動を行うことができています。

 

 

Q:「では最後に、株主・投資家へのメッセージをお願いいたします」

 

私は創業時から大きな投資を受け入れ、投資家の皆さんと共に会社を成長させてきました。
投資というのは未来に向けてのチャレンジです。リスクもあるけれど、だからこそ大きなリターンがある。
先程お話ししたように、私たちは100年のテーマとして「自律・分散・協調」を掲げ、そうした社会を実現するためのソフトウェアやサービスを、これからも世の中に次々と送り出していきます。
未来志向の投資家の皆さんに、是非、私たちの理念、ビジョン、事業をご理解いただき、多くの人に幸せをもたらす社会を一緒に創り上げていきたいと強く願っています。

 

 

6.今後の注目点

 

平野社長が同社創業時から予見し、100年テーマとしている「自律・分散・協調」は、まさに顧客が意識していない社会の変化であり、「つなぐ」ための「ASTERIA Warp」を始めとした各種ソフトウェアが顧客ニーズが顕在化・明確化していない段階からでも、時代の要請から幅広いユーザーに採用され続けているという事実は、同社の強みである優れた「先見性」をベースにした製品開発力の証左である。

 

平野社長のインタビューにあるように、同社では新製品をリリースする際、未来の社会のあり方や先進テクノロジーを先取りしたプロダクト開発に注力しているという。一見プロダクトアウトに見えるが、パッケージソフトメーカーは需要を見越したソフトウェア開発が不可欠。時系列を取って見ると、黎明期から積極的な製品開発・マーケティング活動を展開する「未来のマーケットイン」企業である。「自律・分散・協調」をテーマに、時代を先見し、今後も独自の製品を世に送りだす同社の動向を、中期経営計画「STAR」の進捗と共に注目していきたい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

5名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年12月10日

 

<基本的な考え方>
当社は、継続的な事業成長を通じて株主、お客様、従業員等の関係者をはじめ、広く社会に貢献する企業となることを経営目標としております。 このため、透明性及び健全性の高い企業経営を目指し、会社創立時から社外取締役の招聘等によりコーポレート・ガバナンスの強化に取り組むとともに、役員・従業員へのコンプライアンスの徹底を経営の基本原則として位置づけ、法令やルールを厳格に遵守し、社会的規範にもとることのない誠実かつ公正な企業活動を遂行することを基本方針としております。

 

<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレート・ガバナンス・コードの各原則について全てを実施しております。

 

<各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

【原則1-4. 政策保有株式】

当社は業務提携、取引先との安定的・長期的な取引関係維持・強化の観点から、当社の中長期的な企業価値の向上に資すると判断される場合に、株式の政策保有を行い、企図した効果が見込めないと判断した場合には政策保有株式を縮減する方針です。当社が保有する政策保有株式について、上記の観点及びリターンとリスクも踏まえ、政策保有株式を保有することが当社の中長期的な企業価値の向上に資するかどうか定期的 に取締役会において検証いたします。

政策保有株式の議決権については、投資先企業の中長期的な企業価値向上の観点、社会的要請に合致するかの観点から、その行使について 判断いたします。

【補充原則3-1-3.サステナビリティに関する開示】

当社のサステナビリティについての取組は、当社ウェブサイトに記載しております。

https://www.asteria.com/jp/company/csr/

【補充原則4-11-1.取締役会の知識、経験、能力のバランス、多様性及び規模に関する考え】

当社では、定款で取締役員数を8名以内としており、取締役会は、国籍、性別、年齢などにかかわらず、取締役に最適と思われる人材を取締役候補者として選定する方針を採っております。現在は、情報技術、企業経営、企業投資、金融に関する豊富な知識と経験を備えた5名が取締役を務めております。当社では、取締役および執行役員のスキル・マトリックスを作成し、役員選任議案の参考として株主総会招集通知に記載しております。

https://www.asteria.com/jp/wp-content/files_mf/1623227514ipr210609_01.pdf

取締役5名のうち1名が女性、1名が外国籍、3名が東京証券取引所の定める独立社外取締役の要件を満たしており、取締役会における活発な議論が可能となっております。

原則5-1 【株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、持続的な成長と中期的な企業価値向上のためには、株主と積極的な対話を行うことが重要であると認識しております。そのため、IR体制を整備し、当社の経営戦略や経営状況に対する理解を得るため、株主との対話の場である個人投資家向け説明会に社長が出席しわかりやすく説明しております。

株主との対話の対応は、広報・IR部にて行い、株主から個別の要望がある場合には、合理的な範囲で代表取締役及び執行役員が面談に対応しております。対話において把握された株主の意見等については、経営判断に役立てるべく取締役会に報告しております。

対話に際してのインサイダー情報の管理に関する方策としては、「インサイダー取引防止規程」を定めインサイダー情報を管理しており、特定の株主にインサイダー情報を伝達しないよう情報管理を徹底しております。

 

 

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