ブリッジレポート
(3992) 株式会社ニーズウェル

プライム

ブリッジレポート:(3992)ニーズウェル 2021年9月期決算

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船津 浩三 社長

株式会社ニーズウェル(3992)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表者

船津 浩三

所在地

東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニ ガーデンコート13階

決算月

9月

HP

https://www.needswell.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

582円

10,153,200株

5,909百万円

14.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

20.00円

3.4%

44.74円

13.0倍

344.60円

1.7倍

*株価は1/7終値。各数値は21年9月期決算短信より。予想値は12月10日発表の修正を反映。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年9月

5,140

476

467

325

38.78

25.00

2019年9月

5,517

508

505

347

41.15

13.50

2020年9月

5,364

492

514

347

40.99

16.00

2021年9月

5,752

580

582

421

46.64

23.00

2022年9月(予)

6,330

638

659

454

44.74

20.00

*予想は会社予想。単位:百万円、円。21年9月期のDPS23.00円には記念配当5.00円を含む。2018年4月1日付及び2019年1月1日付で1:2の株式分割を実施。EPSは遡及して調整。DPSは調整していない。

 

 

(株)ニーズウェルの会社概要、業績動向、成長戦略、船津社長へインタビューなどをご紹介致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年9月期決算概要
3.2022年9月期業績予想
4.中期経営計画
5.船津社長に聞く
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 独立系のシステムインテグレータ。金融向けを中心に通信、物流等、様々な業界のシステム開発を手掛ける。AI、RPA技術との連携で企業のDXをサポートするソリューション・ビジネスにも注力。エンドユーザーとの直接取引率は売上の5割を超え高水準。M&A、資本業務提携に積極的に取り組み、2023年売上高100億円、経常利益10億円を目指す。

     

  • 21年11月に公表した22年9月期業績予想を12月に上方修正した。これまで取り組んできた業務提携等による販路や受注の拡大により、業務系システム開発及びソリューション・ビジネスが好調に推移しているほか、リモート開発体制の改善による生産性の向上と案件の増加等により、売上・利益とも期初予想を上回る見込みである。売上高は前期比10.0%増の63億30百万円、経常利益は同13.3%増の6億59百万円。経常利益率は同0.3ポイント上昇する見込み。新卒社員の早期戦力化による生産性向上と、高付加価値案件の獲得で2期連続増収、11期連続増益を予想している。配当は普通配当20.00円/株の予想。普通配当は前期の18.00円/株から2.00円/株の増配。4期連続増配となる。予想配当性向は44.7%。

     

  • 2023年9月期を最終年度とする中期経営計画を推進中。中期基本方針は「派遣型ビジネスからの脱却、そして真のシステムインテグレータへ」。これまでは、人材派遣によって顧客のIT システム開発を支援してきたが、これからは会社として「真のシステムインテグレータ」になり、請負型ビジネスやソリューション・ビジネスを提供し、景気の上下に左右されない強い企業集団、高収益企業への転換を掲げている。

     

  • 2023年9月期までに「売上高100億円、経常利益10億円、経常利益率10%」達成を目指し、「企業価値向上の推進」「物流ビジネスの拡大」「ソリューション・ビジネスの拡大」など7つの重点施策に取り組む。

     

  • 船津浩三社長に、自身のミッション、自社の競争優位性、中期経営計画の重要なポイント、今後の課題、株主・投資家へのメッセージを伺った。「経営理念にあるように『広く経済社会に貢献し続ける』会社、『ITを活用して世の中を便利にする』会社を目指し、着実な成長を追求していく考えですので、是非中長期の視点で当社を応援していただきたいと存じます」とのことだ。

     

  • 中期経営計画の数値目標である2023年9月期売上高100億円達成に向けては、既存事業で24億円の増収、M&Aなどで23億円の増収、合計47億円の増収を掲げている。目標達成の大きなカギを握るのは、1つには倉庫管理システム「SmartWMS」である。実質初年度となる今期22年9月期にどれほどの収益貢献となるか、今後の決算発表での開示を期待したい。

     

  • 目標達成のもう1つのカギとなるM&Aおよびアライアンスについては、今期及び来期にどんなM&Aのリリースがなされるかを注目したい。また同時に、社長インタビューにあるように、単にM&Aで売上高を作るのではなく、シナジー効果の最大化が主眼ということであり、シナジー発現の進捗についても注目していきたい。なお、資本政策については、20年12月に新株予約権を発行しているため、現時点ではエクイティファイナンスのニーズは無いとのことである。

     

     

     

1.会社概要

独立系のシステムインテグレータ。金融向けを中心に通信、物流等、様々な業界のシステム開発を手掛ける。AI、RPA技術との連携で企業のDXをサポートするソリューション・ビジネスにも注力。エンドユーザーとの直接取引率は売上の5割を超え高水準。M&A、資本業務提携に積極的に取り組み、2023年売上高100億円、経常利益10億円を目指す。

 

【1-1 上場までの沿革】

1986年、ニーズウェル創業者の故佐藤一男氏が、「広く経済社会に貢献し続ける」という想いから経営コンサルティングを主要な業務とし、経営計画の策定・改善業務・システム概要設計等の事業開発を行う株式会社ニーズウェルを設立。
1992年には、システム部を創設して、経営コンサルティングからシステム開発まで業容を拡大した。
その後、基盤構築、組込系開発にサービス範囲を広げ、顧客層も拡大。2017年、東証JASDAQ(スタンダード)に上場。2019年には東証1部に指定された。

 

【1-2 理念】

以下の経営理念、経営規範、経営スローガンのほか、ミッション、ビジョンを掲げている。

経営理念

広く経済社会に貢献し続ける

 

絶えず新技術やイノベーションに挑戦し、各業務分野で蓄積したノウハウをお客様のニーズに即して経営革新活動に活かし、お客様満足を実現する。

経営規範

社会有用の人材として社員を育成すること

 

経営理念に賛同する社員が結集し、全社員のパートナーシップを基盤として、技術革新や技術向上に取り組み、企業規模の拡大と就業ステージの拡大を図って自己研鑽の機会を創造し、一企業では学ぶことのできない多くのノウハウを習得する。

経営スローガン

Try & Innovation

 

技術革新が常に激しいIT業界で、新しいものを試し、挑戦しつつ革新を掲げ、広く経済社会に貢献し続ける。

ミッション

お客様のニーズを本質的に充足するソリューションを提供し、豊かな社会の創造を目指します。

ビジョン

お客さま満足を実現する革新的ビジネスパートナーとなる。

 

絶えず未来を展望し、誇りを持ったプロフェッショナル集団となる。

 

社会に貢献するIT文化を拡充し、豊かな社会を創造する。

 

社員の自己実現のステージを創造し、社会の公器として限りない発展を創造する。

 

【1-3 事業内容】

エンドユーザーから直接受託したシステムの構築や、システムインテグレータやメーカーを経由して受託した企業向け社内システム構築などの開発案件に参画し、基本的に顧客先に常駐して顧客システムの開発・保守を行っている。
契約形態は、受託開発の請負と派遣。請負案件の一部を協力会社に委託することもある。
情報サービス事業並びにこれらの付帯業務の単一セグメント。

 

(1)サービスラインの概要
「業務系システム開発」「基盤構築」「コネクティッド開発」「ソリューション・商品等売上」の4つ。「コネクティッド開発」は、コネクティッド技術の強化を目的に2021年9月期より新設された。
各サービス分野において蓄積した技術・ノウハウを、顧客のニーズに応じて相互に組み合わせて活用するサービスを活用している。

 

①業務系システム開発
金融、物流、通信、流通、サービス等の幅広い分野において、顧客の基幹業務に関わるシステム開発を行っている。

 

システムの企画立案から、コンサルティング、課題解決提案、要件定義、基本設計、詳細設計、プログラミング、各種のテスト、納品、納品後の正常な稼働を維持するための保守・運用まで、システム開発のライフサイクル全般に関与している。
また、新規のシステム導入にとどまらず、導入後、顧客先に常駐して保守を行いながら、顧客の新商品発売等へのシステム対応から各種機能の追加・拡張、操作性の向上等、システムやその周辺領域に関して生じる大小様々な派生的なシステム開発を継続的に行っている。

 

顧客の基幹的なシステムに深くかつ継続的に関与し、実績を積み重ねていくことで、技術、顧客の業界や業務内容に対する知識・ノウハウを蓄積するとともに、顧客ニーズの理解を深め、顧客からの信頼を獲得している。

 

(顧客業界)
◎金融系システム
保険会社、銀行、クレジットカード会社など金融機関の基幹業務に関し、以下のようなサービスを提供している。

 

保険会社

本社部門における契約管理・保全、成績・収納、顧客管理、成績/業績管理、データウェアハウス・分析などのシステム、営業職員向けの顧客管理、営業支援、設計書・申込書作成などのシステム、その他CTIシステム等

銀行

流動性預金、内国・外国為替などの勘定系システム、データウェアハウス、データマート、顧客管理、収益管理などの情報系システム、全銀システム・日銀ネットなどの外部接続系システム及びインターネットバンキング、営業店端末などチャネル系システム等

クレジットカード会社

請求、与信管理、顧客管理システム等

 

金融機関のシステムは、極めて高度な信頼性が要求されるほか、中核となるシステムに大型汎用機を使用する割合が高く、一般に技術者不足・経年化傾向にある汎用系システムへの対応力が求められる。
同社は、オープン系及び汎用系システムの技術者を擁し、オープン系・汎用系両面から顧客のニーズに対応できる態勢を整えている。

 

◎物流系システム
少子高齢化による生産年齢人口の減少等から担い手不足が深刻となる中、内閣府が中心となって進める「SIPスマート物流サービス」に代表されるように、個社の垣根を越えた共同物流や、より精度の高いトレーサビリティ等、日本の経済成長と国民生活を持続的に支える「強い物流」の実現に向けたイノベーションへの取組みがはじまっている。
同社はAGV(無人搬送ロボット)等を制御するWCS(倉庫制御システム)と最適な連携を実現するWMS(倉庫管理システム)により、物流現場の省人化、効率化の実現を目指している。
◎通信系システム
ウェブサイト(カスタマーポータル)、受付窓口、代理店・量販店など消費者との接点となるシステムから顧客登録、顧客情報管理、課金・請求・入金、プロビジョニング(交換機との顧客情報の送受信システム)、データ収集及びこれらの共通プラットフォームなど業務の中核をなすシステムに至る幅広い領域でサービスを提供している。

 

◎流通・サービス・公共系システム
ホテルにおける宿泊予約・フロントシステム、不動産会社における物件情報システム、電子書籍配信・販売システム、電力・ガス等の社会インフラシステム等におけるサービスを提供している。
2022年9月期より新たに建設・建機系システムとして、運行管理システムや情報取得による現場管理システムなど、建設現場における各種システム開発を手掛けていく。

 

②基盤構築
ITシステムの基盤となるサーバ等ハードウェアの環境設計、構築、導入を実施するとともに、ネットワーク環境における通信機器の設定を行っている。
基盤構築の技術・ノウハウを活かし、独立系の情報サービス企業としての立場を活かすことにより、アプリケーションの開発にとどまらないハードウェアやネットワークまで含めた総合的なIT環境について、顧客にとって最適と考えられる提案を行っている。

 

主な業務は、以下の通り。
*保険会社における業務系システムを搭載する機器切り替え業務
保険業務に使用するプログラムを搭載する複数サーバの設定業務、複数ネットワーク機器に対する設定、保険の膨大なデータを保管する各種データベースや各種ミドルウェアの設定

 

*証券会社におけるクラウドサービスに伴うネットワーク機器設定業務
証券会社における各種業務についてインターネットを介してサービスの提供(クラウドサービス)で接続する各種ネットワーク機器の設定、証券関連データを保管する各種データベースの設定

 

③コネクティッド開発
医療機器、車載機器等に組み込まれるアプリケーション等の開発を行っている。
コネクティッド開発は、IoTや自動車自律走行にみられるような技術革新の流れの中で急速に需要が拡大している。使用される技術・ノウハウは、インターネットで接続された精密機器等で収集したデータを業務系システムに連動させて活用する等、顧客にとってさらに価値の高いサービス提供を可能にする領域であり今後の注力分野である。

 

④ソリューション・商品等売上
自社及び他社のソリューション製品を活用し、5Gとテレワークでさらに重要となる情報セキュリティ対策をサポートする「情報セキュリティソリューション」、RPAやクラウドで働き方改革推進と人手不足解消をサポートしテレワークを効率化する「業務効率化ソリューション」、AI技術でDXの推進をアシストする「AIソリューション」をラインアップ。
顧客のビジネスの目的に合わせた最適なソリューションサービスの提供を行うとともに、顧客からの依頼に応じてコンピュータや周辺機器及びソフトウェア等の販売も行っている。

 

【1-4 特長・強み】

「金融系システム開発力」「エンドユーザー取引力」「ソリューション提供力」の3つを強みとしている。

 

(1)金融系システム開発力
主力の業務系システム開発では、金融系が売上高の約5割を占める。
中でも、生命保険・損害保険分野の比重が高い。また、銀行・クレジットカード・証券でも多数の実績がある。

 

(2)エンドユーザー取引力
生命保険会社・大手ホテル・通信キャリアなど、エンドユーザーとの直接取引が売上高の約5割となっている。

 

(3)ソリューション提供力
5G関連・AI・RPA・テレワークなど、顧客のビジネスの目的に合わせた最適なソリューションサービスを提供している。

 

【1-5 ESG・SDGs】

ESG・SDGsの視点を取り入れた事業戦略、事業と直結する活動を進めることでサステナブル経営をめざしている。

ニアショア開発促進

 

 

長崎開発センターを2024年までに100名体制とする。

 

前述のように、ニアショアを活用したリモート開発体制でQCD(Quality:品質、Cost:費用、Delivery:納期)にコミットメントし、開発を促進する。

DXをアシストする新たなソリューションの開発

ITリエンジニアリングサービスは、RPA連携で実現する作業の省力化、AI技術を利用したプラットフォームの構築、データ分析等、顧客企業のDXの実現・推進をアシストし、デジタル社会の産業基盤の構築に貢献する。

パートナーシップの推進による事業成長

 

 

グループ企業、受注先・仕入先企業とのパートナーシップを推し進め、ともに永く発展できる体制をめざしている。

 

主な制度や支援活動は以下の通り。

働き方改革・人材育成

 

 

・有給取得奨励日の設定

・プレミアムフライデーの導入

・残業目標20時間以内(2021年実績は月間19.6時間)

・テレワークの対象者を拡大

・スキルやモチベーションを引き出す制度

女性社員・管理職比率向上

 

 

・女性管理職比率目標30%

・女性社員比率目標30%(2021年9月実績23%)

学生向けAI教育

 

 

・学生向けにAIプログラミング体験

・5日間・3週間のインターンシップ

・電子申請アプリやAIチャットボットのプログラミング教育、WinActor(RPA)体験、味覚データ分析等を実施(2020年・2021年)

長崎県ふるさと納税

 

 

長崎県立大学において産学連携の拠点を整備し高度専門人材の育成と県内産業の振興をめざす「Society 5.0へ向けた次世代人材創造プロジェクト」(企業版ふるさと納税制度)を支援

サッカーJリーグ V・ファーレン長崎を応援

 

 

スポーツ文化の振興、地域の活性化を目指しサポーターとしてスポンサー契約

 

同社の取り組み詳細
https://www.needswell.com/ir/sdgs

 

【1-6 ROE分析】

 

17/9期

18/9期

19/9期

20/9期

21/9期

ROE(%)

24.8

20.2

18.8

16.5

14.7

 売上高当期純利益率(%)

5.7

6.3

6.3

6.5

7.3

 総資産回転率(回)

2.47

2.00

2.05

1.89

1.56

 レバレッジ(倍)

1.77

1.59

1.46

1.35

1.28

 

 

2.2021年9月期決算概要

【2-1 業績概要】

 

20/9期

構成比

21/9期

構成比

前期比

期初予想比

修正予想比

売上高

5,364

100.0%

5,752

100.0%

+7.2%

-0.8%

-0.8%

売上総利益

1,280

23.9%

1,414

24.6%

+10.4%

-

-

販管費

787

14.7%

833

14.5%

+5.8%

-

-

営業利益

492

9.2%

580

10.1%

+17.7%

+8.1%

+0.1%

経常利益

514

9.6%

582

10.1%

+13.2%

+8.5%

+0.4%

当期純利益

347

6.5%

421

7.3%

+21.0%

+13.8%

+2.7%

*単位:百万円。

 

増収増益、10期連続増益で過去最高を更新
売上高は前期比7.2%増の57億52百万円。通信、物流、ソリューションが好調でコロナ禍の影響を克服した。
経常利益は同13.2%増の5億82百万円。生産性向上と高付加価値案件獲得により売上総利益が同10.4%増加。粗利率も同0.7%改善。業績向上の努力に報いるための給与・賞与等の人事関連費用が増加したが吸収し、2ケタ増益。10期連続増益で過去最高益を更新した。経常利益率は同0.5ポイント上昇し10.1%。
売上高・利益ともほぼ予想通りの着地となった。

四半期ベースでは、第1四半期は前年同期比減収も、第2四半期以降は増収。

 

 

【2-2 サービスライン別動向】

 

21/9期

修正予想比

業務系システム開発

4,360

-4.4%

基盤構築

580

-5.6%

コネクティッド開発

191

+5.8%

ソリューション・商品等

620

+39.3%

合計

5,752

-0.8%

*単位:百万円。修正予想比は21年6月の上方修正後の予想値に対する比率。

 

*業務系システム開発
携帯電話の料金改定に伴うシステム開発やペーパーレス対応、強化傾向が続くECサイトの改修等、通信向けが好調だった。物流向けも増加した。

 

*基盤構築
ECサイトや官公庁向け案件の基盤増強の需要を取り込み、安定して開発を継続した。

 

*コネクティッド開発
新型コロナウイルス感染症の影響は残るものの、安定して開発を継続した。

 

*ソリューション・商品等売上
経費管理クラウド向けの独自ソリューション「Speed EA」「Invoice PA」や、RPAが好調だった。企業のDXを支援するITリエンジニアリング、業種別AIソリューション「Work AI」の販売に注力した。

 

【2-3 財政状態とキャッシュ・フロー】

◎財政状態

 

20年9月

21年9月

増減

 

20年9月

21年9月

増減

流動資産

2,553

3,842

+1,289

流動負債

765

861

+95

現預金

1,780

2,868

+1,088

仕入債務

101

143

+41

売上債権

689

938

+248

固定負債

-

-

-

固定資産

444

517

+73

負債合計

765

861

+95

無形固定資産

58

84

+25

純資産

2,231

3,498

+1,266

投資その他

346

397

+51

利益剰余金合計

1,522

1,807

+285

資産合計

2,997

4,360

+1,362

負債・純資産合計

2,997

4,360

+1,362

*単位:百万円。

 

現預金の増加などで資産合計は前期末比13億円増加の43億円。負債合計はほぼ変わらず。
純資産は同12億円増加。
自己資本比率は前期末より5.7ポイント上昇し80.2%。
約29億円のキャッシュは、積極的な人材獲得・育成、研究開発投資やM&A、資本業務提携に使用していく。

 

◎キャッシュ・フロー

 

20/9期

21/9期

増減

営業CF

431

331

-100

投資CF

-87

-81

+6

フリーCF

344

250

-93

財務CF

-112

838

+950

現金同等物残高

1,659

2,748

+1,088

*単位:百万円。
新株予約権の行使による新株の発行で財務CFがプラスに転じ、キャッシュポジションは大幅に上昇した。

【2-3 トピックス】

◎プライム市場選択申請書及び計画書提出
2021年10月、2022年4月に予定されている株式会社東京証券取引所の市場区分の見直しに関して、プライム市場を選択する申請書及び上場維持基準の適合に向けた計画書を提出した。

 

(現在の適合状況)
スタンダード市場においては全ての基準を満たしているものの、プライム市場においては流通株式時価総額における100億円以上という基準を満たしていない。
ただ、企業価値向上と持続的な成長を推し進めていくためには優秀な人材確保による開発力及び信用力の強化が不可欠であると考え、プライム市場を選択し全ての基準の充足に取り組んでいく。

 

(計画の概要)
企業価値の向上により、2023年9月期末日までに流通株式時価総額基準の充足を目指す。

 

「業績拡大による経営指標数値の向上」「資本政策による流通株式比率等の向上」から成る定量的アプローチと、「IR・広報活動の強化による理解と認知の向上」「サステナブル経営による社会価値の向上」から成る定性的アプローチにより企業価値の向上を図り、流通株式時価総額の増大を目指す。

 

業績面からの取り組み、IR・PR活動については、後述の「中期経営計画」を参照。

 

 

3.2022年9月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

21/9期 

構成比

22/9期(予)

構成比

前期比

修正率

売上高

5,752

100.0%

6,330

100.0%

+10.0%

+2.0%

営業利益

580

10.1%

638

10.1%

+10.1%

+7.0%

経常利益

582

10.1%

659

10.4%

+13.3%

+6.4%

当期純利益

421

7.3%

454

7.2%

+7.9%

+6.4%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

業績予想を上方修正
21年11月に公表した業績予想を12月に上方修正した。これまで取り組んできた業務提携等による販路や受注の拡大により、業務系システム開発及びソリューション・ビジネスが好調に推移しているほか、リモート開発体制の改善による生産性の向上と案件の増加等により、売上・利益とも期初予想を上回る見込みである。
売上高は前期比10.0%増の63億30百万円、経常利益は同13.3%増の6億59百万円。経常利益率は同0.3ポイント上昇する見込み。新卒社員の早期戦力化による生産性向上と、高付加価値案件の獲得で2期連続増収、11期連続増益を予想している。
配当は普通配当20.00円/株の予想。普通配当は前期の18.00円/株から2.00円/株の増配。4期連続増配となる。予想配当性向は44.7%。

 

4.中期経営計画

経営理念である「広く経済社会に貢献し続ける」の実現に向け、2023年9月期を最終年度とする中期経営計画を推進中である。

 

【4-1 中期基本方針】

中期基本方針は「派遣型ビジネスからの脱却、そして真のシステムインテグレータへ」
これまでは、人材派遣によって顧客のITシステム開発を支援してきたが、これからは会社として「真のシステムインテグレータ」になり、請負型ビジネスやソリューション・ビジネスを提供し、景気の上下に左右されない強い企業集団、高収益企業への転換を掲げている。

 

【4-2 業績目標】

2023年9月期までに「売上高100億円、経常利益10億円、経常利益率10%」達成を目指している。
売上・利益ともに年平均2割以上の成長率となるが、M&Aやシナジー効果を有効に活用していく。

 

(同社資料より)
売上高については、以下のように、2020年9月期比、既存事業で24億円の増収、M&Aなどで23億円の増収、合計47億円の増収で100億円達成を計画している。

 

 

事業分野

取り組み

増収額

既存事業

 

24億円増収

物流ビジネス

多様化するニーズが高まる一方、担い手不足が深刻な物流業界。AIやIoTを活用した合理化・高品質化・環境負荷低減が急務で投資需要が高い。

+12億円

コネクティッド・ビジネス

IoTやAIの活用で街全体を効率化し便利に住みやすくするスマートシティ等、生活を豊かにするコネクティッド技術にも取り組む。

+3億円

ソリューション・ビジネス

DXへの構造改革で投資需要が高い。AI、RPAを活用した連携機能等で独自に差別化した製品を投入する。

+9億円

M&A等

 

23億円増収

M&A、資本業務提携

既存技術の規模拡大と、新規技術の補強・参入。物流、コネクティッド、AI、IoT、Web等を重点的に探索する。

+23億円

 

物流ビジネスでは、WMS等の物流IoTソフトソリューションは2020年比CAGRで8.8%成長し、2023年の市場規模は1,030億円と見込まれている。
昨年開発した倉庫管理システム「SmartWMS」(後述)は、今後の重要な製品であると同社では期待している。

 

コネクティッド技術の強化を目的に2021年9月期よりサービスラインにコネクティッド開発を新設したように、コネクティッド・ビジネスの拡大を目指している。
同技術の活躍が期待されるスマートシティ市場は2020年比CAGRで20.8%成長し、2023年の市場規模は1兆2000億円と見込まれている。

 

ソリューション・ビジネスはDXを絡めたAIに力を入れ、企業におけるDX化の推進支援に取り組む。
画像認識、音声認識、音声合成、言語解析、検索・探索、翻訳などから成るAI主要市場は2020年比CAGRで26.0%成長し、2023年の市場規模は640億円と見込まれている。

 

M&Aと資本業務提携には約20億円の投資を実施する計画である。
物流システム関連技術、コネクティッド関連技術、AI・IoTの要素技術、Webソリューション関連技術など、同社の既存事業とのシナジーを期待できる周辺領域を中心に探索している。
案件については、金融機関10社、M&A仲介会社15社から、1か月に5~10社程度の案件情報を収集し検討しており、 2021年9月時点で11社が案件として挙がっている。

 

 

【4-3 重点施策】

重点施策としては、以下の7点に取り組む。

(同社資料より)

 

(1)企業価値向上の推進
各重点施策への取組みにより業績向上を実現することに加えて、サステナビリティ、IR、資本政策等の面からの総合的な取組みにより企業価値を高める。

 

*業績
前述のように、2023年9月期 売上高100億円、経常利益10億円を目指す。また、プライム市場移行に向け、流通時価総額100億円達成のため、M&Aや資本業務提携を積極的に推進する。

 

*IR・PR
機関投資家に加え、個人投資家に対してもオンライン説明会などを実施しながら、IR活動を展開する。
また、認知度向上のためにメディアへの露出も増やしていく。

 

*サステナビリティ
サステナビリティ委員会の設置など、ESG、SDGへの取り組みを強化する。

 

(M&Aについて)
業績目標達成のための重要なカギを握る「M&A、資本業務提携」についての取り組みは以下の通りである。

 

*株式会社アイティフォー(2020年2月、資本業務提携)
開発案件の要員確保のため両社の技術者を活用し、新規顧客を開拓。

 

*明治安田生命相互会社、明治安田システム・テクノロジー株式会社(2020年3月、コアパートナー契約)
将来にわたる強力なパートナー関係の構築と長期的な開発技術者を維持。

 

*株式会社物流革命、株式会社オフィスエフエイ・コム(2020年12月、協業)
WMSをニーズウェルが開発し、オフィスエフエイ・コムがロボットの制御系を担い、物流革命が運用系を中心にコンサルティングを提供。WMS導入からロボット倉庫、運用・保守まで一気通貫の新たな物流ビジネスを提案。

 

*株式会社総研システムズ(2021年3月、資本業務提携)
開発人員の供給を受け、総研システムズの得意とする分野の開発案件で受注を強化。

 

*キヤノンITソリューションズ株式会社(2021年7月、資本業務提携)
生産性を高めるためのローコード開発ツール・WebPerformerを活用した開発案件拡大と受注支援、技術者の育成。

 

*コネクシオ株式会社(2021年9月、業務提携)
異業種コラボレーションにより、コネクシオが営業系を中心に担い、ニーズウェルがサービスを提供するTwo-Stopビジネスを展開。顧客層の拡大を目指す。

 

*零壱製作株式会社(2021年10月、株式譲受)
ゼネコン向けの開発を得意としている零壱製作の株式を7割取得。ゼネコン向け受託開発とMVNO事業で協業し取引基盤を拡大。

 

*アセンテック(2021年11月、業務提携)
コロナ禍対策や働き方改革の需要の拡大を背景に、高いセキュリティ環境下で短期間・低コストでテレワーク環境を構築するソリューションの販売・導入・保守を相互に協力して提供。売上拡大を目指すとともに、ニーズウェルの受託開発の現場でも活用。

 

(2)物流ビジネスの拡大
物流分野では多様化するニーズが高まる一方で担い手不足が深刻な状況となっており、自動運転、倉庫ロボット等に加え、AIやIoTなど、ITの最新技術を活用した合理化・高品質化・環境負荷低減が急務である。
同社は物流分野において、AGV(無人搬送ロボット)等を制御するWCS(倉庫制御システム)と、これと最適な連携を実現する倉庫管理システムとして2021年8月に自社ソリューション「SmartWMS」の提供を開始した。

 

(同社資料より)

 

(SmartWMSの概要・特長)
以下の3つのスマートを提供し、物流現場の省人化、効率化を実現する。
前述のとおり、WMS導入からロボット倉庫、運用・保守まで(株)物流革命及び(株)オフィスエフエイ・コムとの協業を通じて、迅速に一気通貫で対応する。

 

*省人化・ペーパーレス化
ハンディーターミナルの活用により、現場のオペレーションを改善するほか、倉庫内の一連の作業をペーパーレス化。

 

*課題を見える化
高度な分析機能で生産性を向上。加えて、倉庫内の人員配置を最適化する。

 

*操作性の高いシステム
操作性の統一や検索項目の自由化により使いやすいシステムを実現している。

 

 

(3)AIビジネスの拡大
AI技術者の専門グループを核として、より高付加価値のシステム開発や既存の製品との連携機能を提供するとともに、自社ソリューションの「Work AIサービス」においては、精度向上のためのデータ分析やAIを利用した独自のサービスの開発を目指す。幅広い業種向けに、企業が持っているデータを的確にAI化し、効率化を狙った製品を提供していく考えである。

 

(Work AIサービス概要)
同社が長年培ったシステム開発力にAI技術・RPA技術を組み合わせ、DXなど企業のニーズにきめ細かに応えながら企業と共に創りあげる業種別AIソリューション。
ラインナップのひとつとして、ビジネスシーンのトークをAIで分析し、成績上位者と比較して弱点や課題を数値やグラフで定量的に見える化しフィードバックする「Speak Analyzer」を提供している。
2つ目のラインナップとして建設・建機業界向けに新設橋梁の部材の概算見積りをAIで自動化するシステムの実証実験が終了した。製品化に向けて具体的に動きつつある。

 

(4)ニアショア開発の拡大
ニアショア拠点の活用で優秀な人材の獲得と人材不足の解消を目指す。
ニアショアの活用においては、持ち帰り案件によりニアショア開発体制を拡大するほか、派遣型・常駐型からの移行を進めニアショア開発を標準化する。
また、人材獲得においては、地元大学からの採用やUターン・Iターン採用により地元志向の強い優秀な技術者を採用し育成する。
同社のニアショア拠点である長崎開発センターでは、2024年9月期までに100名体制を目指す。

 

(5)事業基盤の確立
「業務系システム開発」「基盤構築」「コネクティッド開発」の3つのサービスラインを一層拡充し事業基盤を確立する。

 

*「業務系システム開発」
最大の強みである金融系の業務知識の蓄積及び上流工程から参画可能な高い業務知識を有する技術者を育成し、金融系分野の拡大を目指す。
また、新たに物流分野を開拓する。

 

*「基盤構築」
「業務系システム開発」と連携してトータル受注による相乗効果で売上構成比率を高める。

 

*「コネクティッド開発」
医療機器、自動車のほか、コネクティッド技術を強化し、AIとIoTによるデータ集積・活用への取組みを進める。

 

(6)ソリューション・ビジネスの拡大
上記の事業基盤の確立と並行して、事業拡大・付加価値向上を加速するサービスラインである「ソリューション・ビジネス」の拡大を目指す。
2023年9月期のソリューション・ビジネス売上高15億円、構成比15%を目指す。

(同社資料を基にインベストメントブリッジ作成)

 

そのために、事業拡大と付加価値向上に向け、自社ソリューション及び他社ソリューションのさらなる品揃えの拡充、他社ソリューションとの連携による販売促進、競合製品との差別化による販売促進に取り組む。
特に22年9月期は自社ソリューションである「ITリエンジニアリングサービス」に電子契約の導入・基幹システムとの連携メニューを追加し、一段と充実した効率化を提案していく。

 

また、ITが高度化する一方で、対応可能な人材の不足が顕在化すると言われている「2025年の崖」問題を支援するツール「2025 Solutions」を準備した。世界の技術者不足を補っていくソリューションを提供する。

 

他社ソリューションに関しては、NTTデータの「WinActor」とマイクロソフト「Teams」のチャット機能を活用する連携ソリューションを、2022年にも提供を開始する予定。AIチャットボットでユーザーの問い合わせを受け付け、ユーザーの要望する処理・動作をRPAで起動するというもの。

 

これらの取り組みで、ソリューション・ビジネスは好調に推移すると見ている。

 

(ITリエンジニアリングサービス概要)
DX推進による業務変革と生産性向上を目的として、業務プロセス分析から最適なシステムの提案、システムの移行・導入、運用・保守までのトータルサービスを行う独自サービスの総称。
基幹システムERPの周辺システムを連携することで、RPAやAIを活用しながら、手入力によるミスなどを防止する。
同社が持つ業務効率化ソリューションの導入実績、多様な業種のシステム構築実績と豊富な業務ノウハウにより、顧客企業の社内業務の再構築(リエンジニアリング)と効率化を実現する。

 

(7)エンドユーザー取引の拡大
受注安定化と収益性向上のため、エンドユーザー比率50%超を維持拡大。60%までの引き上げを目指す。
既存ユーザーに関しては、システムメンテナンスや改善など継続案件を確保しつつ、高い業務知識を持つ技術者の育成と担当分野の規模拡大、担当分野以外の開拓などの深耕により、取引拡大を目指す。
また、既存ユーザーと類似する会社へこれまでの開発実績や業務ノウハウを紹介することで横展開し、新規ユーザーを開拓する。
加えて、エンドユーザーへの販売比率が高いソリューション・ビジネスに注力し、新規エンドユーザーの開拓に繋げる。

 

5.船津社長に聞く

船津浩三社長に、自身のミッション、自社の競争優位性、中期経営計画の重要なポイント、今後の課題、株主・投資家へのメッセージを伺った。
船津社長は1951年7月27日生まれ。株式会社日立製作所、富士ソフトエービーシ株式会社(現富士ソフト株式会社)専務取締役などを経て2014年7月、株式会社ニーズウェルに顧問として入社。同年12月、社外取締役就任。2016年12月、創業者である佐藤一男氏(2017年逝去)の後継として代表取締役社長に就いた。
Q:「社長ご自身のミッションは何であると考えていますか?」

 

私が社外取締役を引き受けた時点で当社は人材派遣主体の企業でした。ですので、就任前ではありますが、リーマンショックでは赤字に転落するなど、業績が景気に大きく左右されてしまうという点が最も大きな課題でした。
そこで派遣中心のビジネスモデルから、営業も強化しながら開発案件を受注するSIベンダーへの転換を進めてきました。
当時派遣の比率は95パーセント程度だったのが今は6割程度まで低下し、その分システムインテグレータとしての比率が4割ぐらいまでに上昇しています。

 

ただ、SIベンダーとしても特色を打ち出していかなかればなりませんので、2年ほど前からソリューション・ビジネスを立ち上げました。
そして今後は、エンドユーザーとの直接取引比率を引き上げ、下請け的な仕事を減らして高収益化を追求し、ソリューション・ビジネスのリーディングカンパニーを目指しています。前期の経常利益率は10%を超えました。
日立、富士ソフトなど、日本を代表するシステム開発会社でこれまで培ってきた経験やノウハウを還元することで、ニーズウェルの収益性を高め、優秀な人材を確保して企業価値の向上に努める。これが社長としての私のミッションです。

 

 

Q:「御社の同業他社に対する競争優位性はどんな点でしょうか?」

 

主力の業務系システム開発では、金融系が売上高の約5割を占めており、これが当社の特長です。そしてこの金融系案件における当社の強みは、業務知識を有した技術者が開発から保守まで一気通貫で手掛けることができるという点です。
金融機関における開発は、海外ベンダーなども含め数社を使うケースが多いのですが、保守段階まで最後まできっちりとフォローしてもらえないケースもあります。
これに対し当社は長崎の拠点で保守についても責任をもってフォローすることができる。また、一気通貫で手掛けることで、お客様である金融機関にコストメリットも提供することができます。
これは当社の大きな強みであると考えています。

 

 

Q:「続いて、中期経営計画について伺います。7つの重点施策を挙げておられますが、その中でも社長が特に重要と考えている点についてお話しください」

 

まず、1番目の企業価値向上の推進、これはプライム市場への移行を掲げていることもあり、業績向上のみでなく、サステナビリティ、IR、資本政策などあらゆる角度から取り組んでいきます。

 

次に、2023年9月期までに「売上高100億円、経常利益10億円、経常利益率10%」を達成する上で最も重要になるのが「物流ビジネスの拡大」です。ニーズが増大する一方で人手不足が深刻な物流業界における、省人化、効率化を実現するため、21年8月に倉庫管理システムの自社ソリューション「SmartWMS」の提供を開始しました。
自前ではシステム開発が難しい中堅・中小の物流関連企業を対象に、WMS導入からロボット倉庫、運用・保守までを、(株)物流革命及び(株)オフィスエフエイ・コムとの協業を通じて一気通貫で対応していきます。
他には、開発人員の拡充のため「ニアショア開発の拡大」にも注力していきます。
安定的にかつ質の高い開発人員を確保していくためには、中途採用・キャリア採用に依存するのではなく、新卒社員の継続的な採用が必要です。私の出身地である長崎県で地元大学からの採用やUターン・Iターン採用により地元志向の強い優秀な技術者を採用し育成していきます。
また、セキュリティの問題さえクリアできればリモートでもお願いしたいというお客様も増えていますから、開発・保守についてもニアショアを利用する体制を構築し、派遣型・常駐型からの移行を進めニアショア開発を標準化していく考えです。
長崎開発センターでは、2024年9月期までに100名体制を目指しています。

 

加えて、「ソリューション・ビジネスの拡大」も重要な施策です。
事業拡大と付加価値向上に向け、自社ソリューション及び他社ソリューションのさらなる品揃えの拡充、他社ソリューションとの連携による販売促進、競合製品との差別化による販売促進に取り組みます。
特に今期22年9月期は自社ソリューションである「ITリエンジニアリングサービス」に電子契約の導入・基幹システムとの連携メニューを追加し、一段と充実した効率化を提案していきます。
2023年9月期にはソリューション・ビジネス売上高は15億円、構成比で15%を目指します。

 

 

Q:「M&Aと資本業務提携で23億円の増収を掲げています。その進捗はいかがでしょうか?」

 

M&Aと資本業務提携には約20億円の投資を実施する計画です。
M&Aについては現在売上高10億円レベルの案件がいくつか進行中です。一方、23億円の増収は、単純にM&Aで売上を作るのではなく、資本業務提携によってシナジーを創出することをメインに考えています。
これまでも多くのアライアンスを実現してきましたが、お互いのノウハウを上手に活用することで、安定的な受注につなげていきます。

 

 

Q:「中期経営計画の目標達成や、中期ビジョンの実現に向けた課題は何でしょうか?」

 

1つは、キャリア採用から新卒採用へのシフトです。
これまでの当社は派遣型ビジネスでキャリア採用を中心に即戦力を確保し、売上を伸ばしてきたのですが、人手不足により即戦力の採用が難しくなってきました。コストも上昇するし、母数が大きくなっている中で十分なキャリア採用ができないと当然売上高の成長スピードも低下します。また、キャリア採用は帰属意識に欠ける点もあり、給与水準の高い他社に転職するケースも多い。
こうした状況を打破するには、新卒を中心とした採用にシフトしなければなりません。東証1部への上場もそうした環境整備の一つです。
おかげさまで、2021年は約60名、2022年も約70名を採用する計画です。全社員の10%を当面の目標に新卒採用を行っていきます。

 

もう1つは管理者層の教育です。
中期基本方針に「派遣型ビジネスからの脱却、そして真のシステムインテグレータへ」を掲げ、着実に進行していますが、依然として管理者層の意識が、派遣型から脱却できていません。
また、SE(セールスエンジニア)も、指示されたことに対しては忠実・的確に対応するのですが、お客さんに課題を提案するという点では物足りない。
そのあたりの意識改革が不可欠です。特に請負案件においてはマネジメントが不完全ですと大きな痛手となります。また、重要施策に掲げているソリューション・ビジネスの拡大も「受け身」では実現不可能です。
社内リソースのみでは不十分ですので、外部講師を招いた社内研修を実施し、意識改革をスピーディーに進めています。

 

Q:「では最後に株主・投資家へのメッセージをお願いします」

 

中期経営計画では「2023年9月期 売上高100億円」を目標としています。これに対し、今期2022年9月期の売上高予想を63億円としていることに対し、保守的ではないかというご意見も頂いておりますが、現時点で判断できる材料で積み上げた数字であるという点は是非ご理解いただきたいと存じます。

 

私は、「企業は人」と考えており、人を大切にした「全員経営」を目指しています。
「全員経営」とは、全社員が当社を愛するような会社にしたい、不満を感じることのないような会社にしたいということです。そのためには、いかにしてそうした人材を育成していくかが私の大きな役割であろうと考えています。
そうして育成した社員と共に、経営理念にあるように「広く経済社会に貢献し続ける」会社、「ITを活用して世の中を便利にする」会社を目指し、着実な成長を追求していく考えですので、是非中長期の視点で当社を応援していただきたいと存じます。

 

 

 

6.今後の注目点

中期経営計画の数値目標である2023年9月期売上高100億円達成に向けては、既存事業で24億円の増収、M&Aなどで23億円の増収、合計47億円の増収を掲げている。
目標達成の大きなカギを握るのは、1つには倉庫管理システム「SmartWMS」である。実質初年度となる今期22年9月期にどれほどの収益貢献となるか、今後の決算発表での開示を期待したい。
目標達成のもう1つのカギとなるM&Aおよびアライアンスについては、今期及び来期にどんなM&Aのリリースがなされるかを注目したい。また同時に、社長インタビューにあるように、単にM&Aで売上高を作るのではなく、シナジー効果の最大化が主眼ということであり、シナジー発現の進捗についても注目していきたい。
なお、資本政策については、20年12月に新株予約権を発行しているため、現時点ではエクイティファイナンスのニーズは無いとのことである。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

9名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外2名

 

取締役の指名及び報酬の決定に関する手続の客観性及び透明性を一層高めることにより、コーポレート・ガバナンス体制をより一層充実させるため、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬委員会を設置している。取締役会の決議により選定された委員3名以上で構成し、その半数以上は独立社外取締役から選定する。

 

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2021年12月22日)
基本的な考え方
当社は、絶えず新技術やイノベーションに挑戦し、各分野で蓄積したノウハウをお客様の経営革新活動に活かし「広く経済社会に貢献し続ける」を経営理念とし、法令の遵守及び社会規範に則った経営を実践し、ステークホルダーの信頼を得るとともに、事業の持続的発展を図ることを掲げております。
この経営方針に則り、企業利益と社会的責任が調和することにより、株主を含めた全てのステークホルダーの利益にかなう経営の実現のためにコーポレート・ガバナンスのよりー層の充実を図ります。
経営理念を実現するためのコーポレート・ガバナンスの強化として、社外取締役及び社外監査役の招聘による取締役会の監督機能の強化及び内部統制システムによる業務執行の有効性、違法性のチェック・管理を通して、経営の効率化、組織の健全化に取り組むとともに、経営の透明性を高めるために、株主や投資家に対して決算や経営政策の迅速かつ正確な公表や開示に取り組んでおります。

 

<実施しない主な原則とその理由>
【補充原則2-4①】中核人材の多様性の確保
当社は、「女性社員・管理職比率の向上」を掲げ、女性活躍推進に取り組んでおります。また、長崎県に拠点を置く企業として、「ながさき女性活躍推進会議」の趣旨に賛同し、女性管理職比率30%以上、女性社員比率30%以上等、女性の活躍に向けた自主宣言を行っています。
一方、外国人・中途採用者においては、管理職として登用する上で国籍や採用時期によって特段の差が生じているとは認識していないため、現時点では管理職登用の目標策定・開示は行っておりません。

 

【補充原則3-1③、補充原則4-2② サステナビリティについての基本的な方針の策定と情報開示】
当社のサステナビリティについての取組みについては当社ウェブサイトで開示しております。
(SDGs・ESG・CSR:https://www.needswell.com/ir/sdgs
当社は、業務系システム開発・ソリューション等の企画・開発・販売を事業としており、現在のところ、気候変動問題が当社事業に重大な影響を及ぼすことは想定されないため、TCFDに基づく開示等は行っていません。しかしながら、気候変動問題への対処は、安定的な経済発展や国民生活の基盤確保等において重要な取り組みであると捉えており、当社においても省エネや文書の電子化、環境にやさしい製品の使用等の取り組みを行っています。

 

 

<開示している主な原則>
【原則1-4】:政策保有に関する方針、政策保有株式に係る議決権の行使基準当社は、株価変動の影響を受けにくい強い財務基盤の構築と資本効率性向上の観点から、政策保有株式を原則として保有しないものとしております。ただし、業務提携その他経営上の合理的な理由がある場合には、目的に応じた保有であり、かつ、当社の持続的成長と中長期的な企業価値向上に資することを検証した上で保有することがあります。
取得した政策保有株式については取締役会において、定期的に当該株式の保有意義、配当利回り、格付け等を確認して保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、継続保有の要否を判断し、有価証券報告書において保有のねらい・合理性について具体的な説明を行ってまいります。
また、政策保有株式に係る議決権については、議案の内容が株主利益を損なうものとなっていないかとの観点に加え、中長期的な観点から、保有先において企業価値の向上および株主利益を重視した経営が行われているか等に着目して行使します。

 

【原則5-1】株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針
当社は、株主・投資家の皆様との双方向のコミュニケーションにより、経営状況や運営方針の正確・迅速な説明に努めるとともに、企業価値の最大化に取り組んでいます。
株主総会や決算説明会では代表取締役社長が決算内容・業績見通し・成長戦略等を説明し、また、機関投資家に向けては個別のIRミーティング等を実施しております。株主・投資家との対話は、社長の指揮のもとCC室が所管し、必要に応じて経営企画室・総務部・財務経理部等と密接に連携しながら真摯に建設的な対話の促進に努めております。
また、投資判断に必要となる情報については、東京証券取引所の適時開示ルールに則り、適時開示を行い、適時開示後速やかに当社ウェブサイトに掲載いたします。
なお、対話において一部の株主・投資家のみに未公表の重要事実を伝達することがないよう細心の注意を払っておりますが、万が一情報を伝達したことが判明した場合はフェア・ディスクロージャー・ルールに則り速やかに適切に対処いたします。

 

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