ブリッジレポート:(7698)アイスコ 2022年3月期第2四半期決算
相原 貴久 社長 | 株式会社アイスコ(7698) |
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企業情報
市場 | JASDAQ |
業種 | 卸売業(商業) |
代表者 | 相原 貴久 |
所在地 | 神奈川県横浜市泉区新橋町1212 |
決算月 | 3月 |
HP |
株式情報
株価 | 発行済株式数(期末) | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
1,500円 | 1,903,600株 | 2,855百万円 | 25.1% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
37.00円 | 2.5% | 199.37円 | 7.5倍 | 1,455.27円 | 1.0倍 |
*株価は1/7終値。発行済株式数、DPS、EPSは22年3月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
連結業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | DPS |
2018年3月 | 32,991 |
| 831 | 416 | 259.65 | - |
2019年3月 | 35,214 |
| 419 | 223 | 139.07 | 16.66 |
2020年3月 | 36,728 | 145 | 212 | 144 | 90.00 | 16.66 |
2021年3月 | 40,551 | 800 | 855 | 523 | 326.40 | 24.00 |
2022年3月(予) | 41,993 | 500 | 539 | 377 | 199.37 | 37.00 |
* 予想は会社予想。単位:百万円、円。EPS、DPSは2020年11月1日付で実施した1:15の株式分割を遡及して調整。18年3月期は配当を実施していない。
(株)アイスコの会社概要、業績動向、成長戦略、相原社長へのインタビューなどをご紹介致します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期第2四半期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.成長戦略
5.相原社長へのインタビュー
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 関東を中心にアイスクリーム・冷凍食品の卸売業を行うフローズン事業、食品スーパーマーケットの運営を行うスーパーマーケット事業を展開。調達から売場づくりまで、サプライチェーンの各領域に携わる一貫システムを構築し、同業他社とは一線を画す独自のポジションを確立している。自社セールスドライバーによるフルメンテナンスサービスは、顧客に対して高い付加価値を提供。高い参入障壁となっている。
- 22年3月期の売上高は前期比3.6%増の419億93百万円、営業利益は同37.5%減の5億円の予想。主要得意先の出店や、好調な内食・中食需要に支えられ増収を見込んでいるが、両セグメントともに緊急事態宣言における特需は収束する。売上総利益は同2.4%増加するが、売上拡大を見込み営業所開設や採用を進めるため人件費等の先行費用が増加し減益を見込む。配当は普通配当35.00円/株、上場記念配当2.00円/株で、前期比13.00円/株増配の合計37.00円/株の予定。普通配当は11.00円/株増配。予想配当性向は18.6%。
- 今後は既存取引先に対しては、強みを活かし、フルメンテナンスサービスレベルの向上も図り取引を拡大する。また、川上戦略として生産者・製造業者の開拓及びPB商品の開発、川下戦略としてスーパーマーケット業態の新規開拓により新規取引先の拡大を図る。加えて、これまでに培ってきた商品調達・商品開発のノウハウを活用して「フローズン専門店」を出店し、「BtoC事業」に進出するとともに、商品開発機能を拡充させ提案力の強化を図る。こうした既存・新規の取引先における事業拡大と、新規事業への進出により、拡大が見込まれるフローズン市場におけるリーディングカンパニーを目指す。
- 相原社長に、アイスコの競争優位性、今後の課題、株主・投資家へのメッセージ等を伺った。「安定的に着実な成長を目指してまいりますので、株主・投資家の皆様には、是非中長期の視点で応援していただきたいと思います」とのことだ。
- 今後の成長戦略の中で最も重要な施策の一つが、現在の顧客ポートフォリオの中では不十分なスーパーマーケット業態の新規開拓である。スーパーマーケットはドラッグストアとは異なりバックヤードを有しているため、ドラッグストア向け同様のフルメンテナンスサービスではないものの、人手不足は同じく深刻であるため、フルメンテナンスサービスで培ったサービス内容をスーパーマーケット向けのモデルに仕立て直して、付加価値の高いサービスを提供していくということだ。スーパーマーケット業態における同社認知度は現時点では決して高くないとのことだが、これまでの実績を武器にどんなスピードで新規開拓を進めていくことができるのかを注目していきたい。
1.会社概要
関東を中心にアイスクリーム・冷凍食品の卸売業を行うフローズン事業、食品スーパーマーケットの運営を行うスーパーマーケット事業を展開。調達から売場づくりまで、サプライチェーンの各領域に携わる一貫システムを構築し、同業他社とは一線を画す独自のポジションを確立している。また、「アイスコ一貫システム」の重要なパーツである自社セールスドライバーによるフルメンテナンスサービスは、顧客に対して高い付加価値を提供。高い参入障壁となっている。
【1-1 沿革】
1948年に神奈川県横浜市で相原冷菓店としてアイスキャンデーの製造・販売・卸売り等の経営を開始。
1992年、総合アイスクリーム卸売の株式会社相原冷夏と、冷菓販売業の高島物産株式会社が合併し、称号を株式会社アイスコとする。
2000年ごろから、サービスレベルの向上を目指し、現在の同社の強み・特長である自社配送網を有したアイスコ一貫システム、フルメンテナンスサービスの構築に取り組み、競争力強化を図る。
2009年、株式会社大我産業を吸収合併しスーパーマーケット事業を開始。
2021年4月、東証JASDAQ(スタンダード)へ上場。
【1-2 企業理念】
「I Care Everybody Company あらゆる人々に慈しみの心をもって接する企業でありたい」との思いを企業理念として、「株式会社アイスコ」と名付けている。
また、以下の3つを行動指針の下、顧客に感動と満足を感じてもらい、社員一人ひとりが、活き活きとやりがいをもって、仕事ができる企業を目指している。
「情熱・挑戦」 | 情熱をもって、常に新しい事に挑戦していく。失敗を恐れず、常に新しい事に挑戦する。 |
「努力・決意」
| 日々の努力と、絶対に諦めないという強い決意を持つ。日々の弛まぬ努力と、目標に対し達成出来るまで、絶対に諦めない強い信念を持つ。 |
「感謝・謙虚」
| 常に感謝の気持ちと謙虚な心を忘れない。自分たちは周囲に生かされている事を自覚し、常に感謝し・謙虚な心を忘れない。 |
【1-3 市場環境】
(1)需要が拡大するフローズン市場
同社の取り扱う冷凍食品は、共働き世帯や単身世帯、高齢世帯の増加に伴い、簡単かつ調理時間の短縮にも繋がることから需要が拡大している。加えて、昨今の環境志向の高まりによるフードロス削減ニーズ、コロナ禍の影響による外食抑制といった点も需要増を後押ししている。
一方で、こうした需要を取り込むべく、供給者(メーカー)側も技術革新を進めており、生産から流通・消費の段階まで一貫して−18℃以下の低温を保って取り扱われる冷凍食品は、食品別に最適な温度帯が設定され、通常は0~+10℃の温度帯で流通するチルド食品に引けを取らない鮮度と味を実現しており、それが更に需要増に繋がるという好循環となっている。
また、アイスクリームも、メーカーが冬場に食べる「冬アイス」や、植物油脂を使用しない「健康にいいアイス」などの商品開発を進めて新たな需要を創造しているほか、デザート用途の高価格帯商品による販売価格の上昇も見られ、市場は着実に拡大している。
冷凍食品及びアイスクリームのこうした状況下、小売各社はフローズン商品の売場面積を年々拡大している。
(同社資料より)
(2)顧客店舗数の増大・小売業における人手不足
同社の主要顧客であるドラッグストアは、各社とも店舗数を拡大させる一方、消費者の来店動機作りのため販売商品の多様化を進めており、冷凍食品・アイスクリームは重要なアイテムとなっている。
ただ、ドラッグストアはバックヤードを持たないため、同社が提供するフルメンテナンスサービス(※事業内容の項で後述)のニーズは高い。
加えて、小売業における人手不足は全産業を大きく上回り、構造的な問題となっている。店員の作業を代理で行う同サービスに対する引き合いはこちらの面からも増加傾向にある。
(同社資料より)
(3)市場規模
同社フローズン事業の売上高は約300億円。
同社では、既存商圏(東海・関東・北陸)の市場規模3,700億円、全国で最大1.1兆円と見込んでいる。
当面はまず北関東への商圏拡大を進めていく考えである。
(同社資料より)
【1-3 事業内容】
報告セグメントは、アイスクリーム・冷凍食品の卸売業を行うフローズン事業、食品スーパーマーケットの運営を行うスーパーマーケット事業の2つ。
(1)フローズン事業
アイスクリーム、冷凍食品に特化して卸売を行っている。
①顧客
主要顧客はドラッグストア、食品スーパーマーケットなど。
株式会社クリエイトSDホールディングスのドラッグストア事業子会社「(株)クリエイトSD」と、株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの子会社「(株)ドン・キホーテ」及びそのグループ会社の2社で同事業売上高の約5割を占めている。
②商品調達
アイスクリーム、冷凍食品に関する長年の経験や蓄積したノウハウをベースに、「企画提案」「商品開発」「マーケティング」によって、顧客ニーズに対応した専用商材(看板商品・目玉商品・差別化商品など)の開発をメーカーと共にプロデュース・コーディネイトしている。
また、売上拡大に伴いメーカーに対する交渉力が年々強化されており、調達力向上・粗利率改善に寄与している。
③物流
関東及び東海エリアを中心に、13拠点の物流センター・営業所、約300台の配送用の自社保有トラック、約360名のセールスドライバーにより自社配送網を構築している。
難易度の最も高いアイスクリーム流通で培ったノウハウをベースとしたコールドチェーンは他社にはない強力な優位性である。
*物流拠点
食の安心・安全を確保する厳格な温度管理や賞味期限管理を行っているほか、最新鋭システムによる仕分け精度の向上や、直近2週間の出荷データを元にした1日当たりの出荷量算出による在庫量管理なども行っている。
*自社保有トラック
環境配慮と品質管理に優れた、最新鋭でかつ作業性重視のカスタムオーダーを施した冷凍専用車を導入。全車に運行管理システムを装備し安全運転の監視と定時納品管理を行っている。
*セールスドライバー
単に配送を行うだけではなく、個店レベルでの売場提案まで行う。平均年齢は36歳。若さと機動力で市場の変化と顧客ニーズに対応している。「自分が受け持つ店は自分の店だと思え」とのポリシーで、顧客満足度の向上を図っている。
物流業界も小売業界同様、深刻な人手不足、ドライバー不足が大きな課題であるが、同社では、通常9割を自社社員が配送しており、残り1割を協力会社等に委託している。
自社社員で配送しているため、きめ細かい「フルメンテナンスサービス」を顧客に提供することが可能。同サービスの質を高める教育を行い優秀な人材を育成し、既存得意先の満足度の向上、新規得意作の開拓、拡大を図っている。
④サービス内容
フローズン事業における同社の最も大きな特徴が、「フルメンテナンスサービス」である。
主要顧客であるドラッグストア等では、バックヤードに冷凍庫がなく、アイスクリーム・冷凍食品の性質上、溶解を防ぐため、すぐに売場の冷凍ケースに陳列しなければならない。ところが、少人数で運営する店舗においては、その人手・時間を確保することが難しいケースが多い。
こうした状況に対し、同社はアイスクリーム・冷凍食品の専門の卸問屋として、配送員が商品をバックヤードに置いてくるだけの納品スタイル「ドロップ納品」ではなく、売場に直接陳列して納品するにとどまらず、売場づくりまで行っている。
これを同社では「フルメンテナンスサービス」と呼んでおり、小売業の人手不足を補い、店舗に陳列の業務負担をかけることなく、商品を販売できるというメリットを顧客企業に提供している。
また、同社社員が得意先に代わって需要を予測し発注するケースもある。
(2)スーパーマーケット事業
神奈川県を中心に「スーパー生鮮館TAIGA」を8店舗、テナント2店舗を展開している。直営店舗売場面積は150~320坪程度。
「地域の冷蔵庫」として、生鮮3品(青果・鮮魚・精肉)に注力し、鮮度・品質・品揃え・価格に徹底的にこだわる事で、大手スーパーとの差別化を図っている。
早朝に市場で経験豊富な担当バイヤーが青果・鮮魚を買い付け、その日のうちに店頭で販売する「当日仕入れ当日販売」によって新鮮な商品を提供している。
店舗を運営することにより消費者の嗜好やニーズなどを直接吸い上げることができる点は、今後の新規事業展開やフローズン事業とのシナジー効果などに大きなメリットがあると考えている。
(同社資料より)
【1-4 特長・強み・競争優位性】
(1)アイスコ一貫システム
調達から売場づくりまで、サプライチェーンの各領域に携わる一貫システムを構築。この「アイスコ一貫システム」により、「食」の安心・安全の確保はもとより、顧客企業の売上拡大ならびに人手不足対策に貢献しており、同業他社とは一線を画す独自のポジションを確立している。
(同社資料より)
(2)フルメンテナンスサービスによる高い参入障壁
「アイスコ一貫システム」の重要なパーツである自社セールスドライバーによるフルメンテナンスサービスは、「配送」の域を超え顧客に対して高い付加価値を提供している。
顧客企業に対し大きなメリットを提供しているため、顧客企業は他社に切り替える動機は少なく、高い参入障壁となっている。
また、フルメンテナンスサービスによる販売比率は約70%を占めており、収益面でも大きく貢献している。
(同社資料より)
2.2022年3月期第2四半期決算概要
【2-1 連結業績】
(1)概要
| 21/3期2Q (適用無) | 構成比 | 22/3期2Q (適用有) | 構成比 | 前年同期比 |
売上高 | 22,105 | 100.0% | 22,601 | 100.0% | +2.2% |
売上総利益 | 4,062 | 18.4% | 4,108 | 18.2% | +1.1% |
販管費 | 3,321 | 15.0% | 3,612 | 16.0% | +8.8% |
営業利益 | 740 | 3.4% | 495 | 2.2% | -33.1% |
経常利益 | 796 | 3.6% | 519 | 2.3% | -34.8% |
四半期純利益 | 513 | 2.3% | 362 | 1.6% | -29.3% |
* 単位:百万円。21年3月期第2四半期の数値は会社資料より、監査法人による監査を受けていない。収益認識会計基準を2022年3月期第1四半期期首より適用。
微増収減益
売上高は前年同期比2.2%増の226億1百万円。フローズン事業は増収、スーパーマーケット事業は減収。
営業利益は同33.1%の減収。増収も、売上総利益は同1.1%の伸びにとどまり、粗利率も0.2ポイント低下。フローズン事業の売上拡大のための人件費、広告宣伝費、運搬費など販管費増を吸収できなかった。
(2)セグメント別動向
| 21/3期2Q | 22/3期2Q | 前年同期比 |
売上高 |
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フローズン事業 | 17,484 | 18,354 | +5.0% |
スーパーマーケット事業 | 4,748 | 4,367 | -8.0% |
セグメント利益 |
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フローズン事業 | 548 | 475 | -13.3% |
スーパーマーケット事業 | 192 | 20 | -89.6% |
①フローズン事業
増収減益。
売上高は既存得意先の出店や、新規得意先の開拓により増収も、セグメント利益は巣ごもり需要の反動により減益となった。
②スーパーマーケット事業
減収減益。
新型コロナウイルス感染症拡大による巣ごもり需要の反動等の影響を受けた。
顧客業態別売上高
| 21/3 2Q | 構成比 | 22/3 2Q | 構成比 | 前年同期比 |
ドラッグストア | 8,228 | 47.1% | 8,383 | 45.7% | +1.9% |
ディスカウントストア | 5,042 | 28.8% | 5,439 | 29.6% | +7.9% |
食品スーパー | 2,958 | 16.9% | 3,312 | 18.0% | +12.0% |
その他 | 1,245 | 7.2% | 1,218 | 6.6% | -2.9% |
合計 | 17,484 | 100.0% | 18,354 | 100.0% | +5.0% |
カテゴリー別売上高
| 21/3 2Q | 構成比 | 22/3 2Q | 構成比 | 前年同期比 |
冷凍食品 | 8,194 | 46.9% | 9,164 | 49.9% | +11.8% |
アイスクリーム | 8,863 | 50.7% | 8,780 | 47.8% | -0.9% |
その他 | 427 | 2.4% | 409 | 2.2% | -4.2% |
合計 | 17,484 | 100.0% | 18,354 | 100.0% | +5.0% |
【2-2 財政状態とキャッシュ・フロー】
◎財政状態
| 21年3月 | 21年9月 | 増減 |
| 21年3月 | 21年9月 | 増減 |
流動資産 | 7,714 | 9,779 | +2,065 | 流動負債 | 8,809 | 9,886 | +1,087 |
現預金 | 1,733 | 2,845 | +1,112 | 仕入債務 | 5,505 | 7,248 | +1,742 |
売上債権 | 3,456 | 4,401 | +944 | 短期有利子負債 | 1,688 | 1,386 | -301 |
未収入金 | 1,955 | 1,900 | -55 | 固定負債 | 3,169 | 3,138 | -31 |
固定資産 | 6,601 | 6,457 | -143 | 長期有利子負債 | 2,312 | 2,262 | -49 |
有形固定資産 | 5,260 | 5,119 | -141 | 負債合計 | 11,978 | 13,025 | +1,046 |
投資その他 | 1,301 | 1,303 | +2 | 純資産 | 2,337 | 3,212 | +875 |
資産合計 | 14,316 | 16,237 | +1,921 | 負債・純資産合計 | 14,316 | 16,237 | +1,921 |
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| 有利子負債合計 | 4,000 | 3,649 | -351 |
* 単位:百万円。
現預金の増加などで資産合計は前期末比19億21百万円増加の162億37百万円。
仕入債務の増加などで負債合計は同10億46百万円増加の130億25百万円。
純資産は同8億75百万円増加の32億12百万円。
自己資本比率は前期末より3.5ポイント上昇し、19.8%となった。
◎キャッシュ・フロー
| 21/3期2Q | 22/3期2Q | 増減 |
営業CF | 1,577 | 1,285 | -291 |
投資CF | -270 | -333 | -63 |
フリーCF | 1,307 | 951 | -355 |
財務CF | -78 | 158 | +237 |
現金同等物残高 | 2,459 | 2,787 | +327 |
*単位:百万円
営業CF、フリーCFの黒字幅は縮小。キャッシュポジションは上昇した。
【2-3 トピックス】
◎新市場区分「スタンダード市場」を選択
2021年7月に株式会社東京証券取引所より、「新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果について」を受領し、新市場区分における「スタンダード市場」の上場維持基準に適合していることを確認している。
これを受け、21年12月、新市場区分への移行につき、「スタンダード市場」を選択することとした。
今後、株式会社東京証券取引所の定める申請スケジュールに従い、所定の手続きを進めていく。
3.2022年3月期業績予想
主要損益計算書
| 21/3期 | 構成比 | 22/3期(予) | 構成比 | 前期比 | 進捗率 |
売上高 | 40,551 | 100.0% | 41,993 | 100.0% | +3.6% | 53.8% |
売上総利益 | 7,447 | 18.4% | 7,627 | 18.2% | +2.4% | 53.9% |
販管費 | 6,647 | 16.4% | 7,127 | 17.0% | +7.2% | 50.7% |
営業利益 | 800 | 2.0% | 500 | 1.2% | -37.5% | 99.0% |
経常利益 | 855 | 2.1% | 539 | 1.3% | -37.0% | 96.3% |
当期純利益 | 523 | 1.3% | 377 | 0.9% | -28.0% | 96.0% |
* 単位:百万円。21/3期は収益認識基準適用無し、22/3期は適用有り。
増収減益を予想
売上高は前期比3.6%増の419億93百万円、営業利益は同37.5%減の5億円の予想。
主要得意先の出店や、好調な内食・中食需要に支えられ増収を見込んでいるが、両セグメントともに緊急事態宣言における特需は収束する。
売上総利益は同2.4%増加するが、売上拡大を見込み営業所開設や採用を進めるため人件費等の先行費用が増加し減益を見込む。
配当は普通配当35.00円/株、上場記念配当2.00円/株で、前期比13.00円/株増配の合計37.00円/株の予定。普通配当は11.00円/株増配。予想配当性向は18.6%。
4.成長戦略
同社が追求する成長戦略は以下の通り。
(1)事業環境
「市場環境」の項で触れたように、「商品」および「顧客」の両面から、同社を取り巻く事業環境は良好であると同社では考えている。
①商品
技術革新により冷凍食品の味・品質が飛躍的に向上していることに加え、冷凍食品はフードロス問題を解消する重要なカテゴリーである。また、需要増加に伴い小売業者も売場を年々拡大。
同社はこうした成長市場を対象に事業を展開している。
②顧客
主要顧客であるドラッグストアに加え、新規顧客開拓の対象と考えているスーパーマーケット等小売り各社は、人手不足と最低賃金上昇に伴う人件費の増加大きな課題である。
一方で冷凍バックヤードを持たないドラッグストアやディスカウントストアがフローズン売場を拡大している。加えて、競争を勝ち抜くためには他社との差別化が図られている商品へのニーズが大きい。
(2)施策
①既存事業
こうした事業環境において、同社はその強みである「商品調達力・開発力」「自社物流」「フルメンテナンスサービス」というソリューションを武器に、組織の成長に合わせて営業を推進して、顧客数を増やすとともに、1顧客当たりの販売量を拡大させ受注を拡大していく。
②新たな取り組み
また、今後は、これまでに培ってきた商品調達・商品開発のノウハウを活用して、自社運営の「フローズン専門店」の出店を予定している。
「フローズン専門店」では、商品調達・商品開発・物流・販売までを自社で行える体制を構築する。
(同社資料より)
(3)成長イメージ
今後は既存取引先に対しては、強みを活かし、フルメンテナンスサービスレベルの向上も図り取引を拡大する。
また、川上戦略として生産者・製造業者の開拓、川下戦略としてスーパーマーケット業態の新規開拓により新規取引先の拡大を図る。
加えて、上記「フローズン専門店」により「BtoC事業」に進出するとともに、商品開発機能を拡充させ提案力の強化を図る。
こうした既存・新規の取引先における事業拡大と、新規事業への進出により、拡大が見込まれるフローズン市場におけるリーディングカンパニーを目指す。
なお、2022年3月期決算発表時に、より明快な成長戦略を含めた中期経営計画を公表する予定である。
(同社資料より)
5.相原社長へのインタビュー
相原社長に、アイスコの競争優位性、今後の課題、株主・投資家へのメッセージ等を伺った。
Q:「御社の競争優位性はどんな点か、改めて社長からお聞きしたいと思います」
商品の調達から売場に商品を並べるところまでサプライチェーンの各領域に携わる「アイスコ一貫システム」は当社の大きな特長・強み・競争優位性となっています。
中でも、フルメンテナンスサービスにおいてお客様に高品質なサービスを提供できているのは、配送を下請け業者に委託するのではなく、セールスドライバーによる自社物流網を有しているためです。
300台以上のトラックを保有・管理し、360名以上のセールスドライバーを確保・教育することは容易ではありませんが、高品質・高付加価値のサービスを提供するには絶対不可欠な要素です。
単にトラックと人員を揃えればできるものではなく、アイスが溶けないように管理する専門技術やセールスドライバーの教育など、20年をかけて積み重ねてきたノウハウや経験は、他社が簡単に追随できるものではありません。
Q:「ありがとうございます。そんな、御社にとって非常に需要な人的資産であるセールスドライバーについて、どんな点を重視して教育・育成を行っていますか?」
1つは2トントラックの運転技術です。安全にかつ確実に品物をお届けるすることが求められますが、多くの新卒社員は経験がありませんから、半年くらいをかけて先輩社員の運転するトラックに同乗しながら確実に習熟してもらいます。
次は、売場づくり、納品スピード、接客の技術や態度です。セールスドライバーは人手の足りない店舗で、店員に代わって売り場を作り、接客を行います。お買い物に来店されたお客様からすると当社のセールスドライバーは店員と同じですから、少しでも失礼な態度があればクレームになりますのでその点は細心の注意が求められます。「自分が受け持つ店は自分の店だと思え」との心構えで接客するように指導しています。
これらをOJTで身に付けてもらい、卒業検定のようなものを経て、運転技術、配送技術の点から判断して問題ないと判断したセールスドライバーが初めて一人で配送業務につくこととなります。
運送業界も小売業界同様人手不足が構造的な問題となっていますが、おかげさまで昨年の上場をきっかけに新卒の応募状況も良好で、人材確保の面でも上場の効果が表れています。
Q:「今後の成長を実現していく上での課題は何でしょうか?」
価格競争への対応は重要な課題と考えています。
原材料価格が上昇する中でメーカーも値上げを実施しています。当然小売り各社も値上げをしたい。ただ、余力のある企業は据え置くこともある。
当社は他社にはないフルメンテナンスサービスで高い付加価値を得ていますが、今後は価格競争にも対応していかなければなりません。その中でも利益を確実に確保していくためには生産性の向上が不可欠ですので、最適な配送ルートを自動的に決定するシステムを始めとしたDXの導入に取り組んでいきます。
まだ試験運用の段階ですが、DX導入や意識変革による生産性の向上は喫緊の課題と認識しています。
また、商品開発機能の強化も重要な課題です。
メーカー機能を強化し、お客様に対する提案力を向上させ「アイスコ一貫システム」を更に磨き上げます。
加えて、当社では、これまでに培ってきた商品調達・商品開発のノウハウを活用して、自社運営の「フローズン専門店」の出店を予定しており、新たに開発したPB商品を主体とした店舗運営を目指しています。
こうした商品開発機能強化のために21年4月には専門部署である「商品開発ユニット」を立ち上げました。
Q:「では最後に、株主・投資家へのメッセージをお願いします」
当社は、先程申し上げた競争優位性である「アイスコ一貫システム」を武器に、今後の成長が期待されるフローズン市場の深耕を目指していきます。
また、スーパーマーケット事業においては、商品の鮮度、品質、品ぞろえ、価格にこだわり、買い物に来て良かった、また来たいと思って頂けるような店づくりに取り組んでおり、定期的な出店を続けてまいります。
今後の具体的な数値目標や施策については、22年3月期決算発表時に公表を予定している中期経営計画でお伝えしたいと考えています。
安定的に着実な成長を目指してまいりますので、株主・投資家の皆様には、是非中長期の視点で応援していただきたいと思います。
6.今後の注目点
今後の成長戦略の中で最も重要な施策の一つが、現在の顧客ポートフォリオの中では不十分なスーパーマーケット業態の新規開拓である。
スーパーマーケットはドラッグストアとは異なりバックヤードを有しているため、ドラッグストア向け同様のフルメンテナンスサービスではないものの、人手不足は同じく深刻であるため、フルメンテナンスサービスで培ったサービス内容をスーパーマーケット向けのモデルに仕立て直して、付加価値の高いサービスを提供していくということだ。
スーパーマーケット業態における同社認知度は現時点では決して高くないとのことだが、これまでの実績を武器にどんなスピードで新規開拓を進めていくことができるのかを注目していきたい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態及び取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役 | 10名、うち社外3名 |
◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2021年12月17日)
基本的な考え方
当社は、「I care everybody company ~あらゆる人々に慈しみの心をもって接する企業でありたい~」という企業理念のもと、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、経営環境の変化に対応した迅速な意思決定と、経営の健全性の向上を図ることによって企業価値を高めることを経営の最も重要な課題の一つとして位置付けております。
これを実現するために、少数株主等に十分に配慮するなど、株主の権利の実質的な確保、平等性の確保、ステークホルダーとの良好な関係の構築、情報開示の充実及び株主総会、取締役会、監査等委員会、会計監査人などの機関、制度を強化しながら、コーポレート・ガバナンスを充実させてまいります。
<実施しない主な原則とその理由>
【補充原則2-4①】中核人材の多様性の確保
当社は、会社規模・事業特性から女性・外国人・中途採用者の管理職への登用に関する測定可能な目標を設定しておりませんが、女性・外国人・中途採用者の管理職登用については、能力を見極めたうえで、継続的に取り組んでまいります。
【補充原則3-1③、補充原則4-2② サステナビリティについての基本的な方針の策定と情報開示】
当社の経営戦略の開示については、決算説明資料等により行っておりますが、サステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定しておりません。しかしながら、サステナビリティを巡る課題への対応を重要な経営課題であると認識しており、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると考えております。また、人的資本や知的財産への投資等の重要性も認識しており、サステナビリティに関する今後の方向性や方針を策定し、取締役会にて実効的に監督してまいります。
【原則5-2】経営戦略や経営計画の策定・公表
当社は、現時点において中期経営計画を公表しておりませんが、IR活動を通して事業の活動内容や方向性を示し、目標達成に向けた具体的な施策を分かりやすく説明するよう努めてまいります。
<開示している主な原則>
【原則1-4】政策保有株式事業戦略上の必要性、取引・協業関係の維持・強化を保有の目的として、企業価値の向上に資するものを政策保有株式と定義し、それ以外は保有しない方針です。現在、取引関係の維持・強化を目的として1社の上場会社株式を保有しておりますが、継続保有の適否については、取締役会において定期的に検証してまいります。
【原則5-1】株主との建設的な対話に関する方針
当社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため、株主との間で積極的かつ建設的な対話を行う方針であります。株主との対話の機会として、株主総会をはじめ、決算説明会を随時開催するほか、当社ウェブサイトにおいて開示資料を充実させ、当社の事業に対する理解の促進に努めてまいります。
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