ブリッジレポート
(7127) 株式会社一家ホールディングス

スタンダード

ブリッジレポート:(7127)一家ホールディングス 2022年3月期第2四半期決算

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武長 太郎 代表取締役社長

株式会社一家ホールディングス(7127)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

小売業(商業)

代表取締役社長

武長 太郎

所在地

千葉県市川市八幡2-5-6 糸信ビル3F

決算月

3月末日

HP

https://ikka-holdings.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

566円

6,657,000株

3,767百万円

-134.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

-

未定

-

52.95円

10.7倍

*株価は11/19終値。ROE、BPSは21年3月期決算短信より。その他各数値は22年3月期第2四半期決算短信より。新型コロナウイルス感染拡大の影響により合理的な算定が困難であるため今期予想は未定。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

6,149

244

243

154

27.73

0.00

2019年3月(実)

7,078

289

286

122

19.84

0.00

2020年3月(実)

7,991

167

129

-122

-19.82

0.00

2021年3月(実)

3,426

-1,115

-1,131

-949

-153.86

0.00

2022年3月(予)

-

-

-

-

-

0.00

*単位:百万円、円。17年10月12日付で1:20、18年6月15日付で1:2、19年10月1日付で1:2の株式分割を実施。EPSは遡及して調整。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により合理的な算定が困難であるため今期予想は未定。

 

 

株式会社一家ホールディングスの2022年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期第2四半期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 22年3月期第2四半期は、引き続きコロナ禍による緊急事態宣言発出等に伴う臨時休業や酒類提供の自粛の影響が、飲食事業を中心に大きく、売上高は前年同期比23.8%減の10億91百万円。ただし、ブライダル事業は健闘が光る。営業損益は6億18百万円の赤字(前年同期は6億30百万円の赤字)。なお、「助成金収入」を特別利益に、「店舗臨時休業等による損失」を特別損失にそれぞれ計上し、最終損益は5百万円の黒字で着地した。新規出店は2店舗。店舗数は2021年9月末で70店舗。

     

  • 新型コロナウイルス感染拡大による今後の事業への影響について、適正かつ合理的な算定が不可能なため2022年3月期業績予想は未定としている。算定が可能になった時点で速やかに開示を行う予定。

     

  • 第2四半期(7-9月)、特に8月は新型コロナウイルスの国内新規感染者数がピークに達していたタイミングである。これにより、飲食事業店舗ではほぼ通常営業が出来ないことは想定内だった。逆に、利益面の影響で見栄えはあまり良くないものの、業界全体で落ち込みが厳しかったブライダル事業が回復の兆しを見せたことは同社のそもそもの競争優位性、そして新たに導入した「全員接客」施策の効果の表れだろう。婚礼の小規模化はコロナ禍後も、従来からさらに加速すると見られるため、事業モデルのテコ入れを図る必要があるとはいえ、ひとまず素直に評価すべき点だ。

     

1.会社概要

グループミッションとして『あらゆる人の幸せに関わる日本一の“おもてなし”集団』を掲げ、主力業態である餃子・串焼き・もつ鍋などが中心メニューの「屋台屋博多劇場」と、炉端・蒸焼・大鍋がメインの「こだわりもん一家」、全卓にハイボールタワーを設置した「大衆ジンギスカン酒場 ラムちゃん」、韓国料理をリーズナブルに楽しめる「韓国屋台ハンサム」などを展開。他には類を見ない接客サービス、業界における独自のポジショニング、理念を共有する人材育成のための取り組みなどが特長・強み。
2021年9月末現在、1都3県に70店舗を展開。ブライダル事業も展開。

 

 

【1-1 沿革】

学生時代の旅の途中、お客様の笑顔に囲まれる飲食業の楽しさ・面白さに魅了された武長社長はホテルでのアルバイトなどサービスの基礎を学びながら資金を貯め、20歳で1997年10月に同社の前身である有限会社ロイスカンパニーを設立し、同年12月には1号店として「くいどころバー一家(現こだわりもん一家)本八幡店」を千葉県市川市にオープンした。
その年の12月22日、来店客からコースターの裏に書かれた「こんな素敵なお店をありがとう。」とのメッセージを受け取った武長社長は、深く感銘を受け、「お客様の喜び・感動は自分の喜び・感動である。」ことを改めて強く認識。
お客様と喜びと感動を分かち合うことを理念に掲げて店創り、会社創りに邁進する。
2000年8月に有限会社から株式会社へ組織変更し、同時に商号を「株式会社一家ダイニングプロジェクト」へ変更。
2010年2月には新業態である屋台屋博多劇場1号店「屋台屋博多劇場 成田店」を千葉県成田市にオープンした。
2011年8月には屋台屋博多劇場の初の都心部の出店となる「屋台屋博多劇場 八重洲店」を東京都中央区にオープンするなど、1都3県で店舗を拡大するとともに、2012年8月にはブライダル施設「The Place of Tokyo」 を東京都港区にオープンし、ブライダル事業へも参入し、業容を着実に拡大。2017年12月、東証マザーズ市場に上場し、2020年3月には東証1部へ市場変更した。
その後、株式会社一家ホールディングスの設立に伴い、完全子会社となる株式会社一家ダイニングプロジェクトの株式は2021年9月29日付で上場廃止。同年10月1日付で株式会社一家ホールディングスの株式が東京証券取引所市場第一部に上場した。

 

【1-2 経営理念】

沿革で述べた武長社長の創業時の強い想いを込め、以下のようなグループミッション、経営理念、社訓を掲げている。

 

(グループミッション)
『あらゆる人の幸せに関わる日本一の“おもてなし”集団』

 

(経営理念)

お客様、関わる全ての人と喜びと感動を分かち合う。

誇りの持てる「家族のような会社」であり続ける。

夢を持ち、限りなき挑戦をしていく。

 

(社訓)

笑顔であれ

どんな時も明るく元気に仕事をせよ。笑顔は活力の源である。

思いやる人となれ

人の喜びや悲しみを共有せよ。心優しき者が繁盛店を創る。

目標を定め、実行せよ

実行の前に目標がある。ゴールを定めない者は結果を出せない。

やり抜く強さを持て

自分を信じ、決して諦めるな。希望は自身の中にある。己に勝て。

前向きに捉えよ

愚痴や言い訳を言うな。否定的な考え方はつまらない人生を呼び寄せる。

素直な心であれ

感動、感激、感謝せよ。吸収力は感受性の高さに比例する。

日々改善、改革せよ

失敗を恐れるな。進化し、変化し、大きく飛躍せよ。

 

【1-3 事業内容】

報告セグメントは「飲食事業」と「ブライダル事業」の2つ。売上高で6-7割を占める飲食事業が成長ドライバーである。

 

(*)なお、飲食事業は年末・年始が、またブライダル事業は婚礼シーズンである10月、11月が年間を通じた最繁忙期となるため、3月決算の同社においては第3四半期(10-12月)に売上・利益が偏重する季節特性がある点には留意する必要がある。

 

(1)飲食事業
餃子・串焼き・もつ鍋などが中心メニューの博多業態「屋台屋博多劇場」と、炉端・蒸焼・大鍋がメインの一家業態「こだわりもん一家」が中心業態。
他に、「大衆ジンギスカン酒場 ラムちゃん」「おでんトさかな にのや」「寿司トおでん にのや」「韓国屋台ハンサム」「Remo Café」を運営している。「屋台屋博多劇場」、「こだわりもん一家」ともに、『あらゆる人の幸せに関わる日本一の“おもてなし”集団』として来店客に喜びと感動を提供するための様々な特長を備えている。

 

業態

特長

「屋台屋博多劇場」

47店舗(21年9月末)

*「福岡・博多の風物詩である、中洲の屋台街の雰囲気や活気を再現した空間で、気軽で安くて旨い屋台飯を楽しんで頂ける、笑顔と活気があふれた劇場」がコンセプト。

 

*屋台をそのままお店にしたような店舗設計店内の活気やスタッフの笑顔が外からでもわかるように間口を広くし、遠くからでも一目で博多劇場だとわかる、店名の入った提灯やのれん、看板を掲げたファザードを設置。店内に入ると、串焼きや鉄板焼き、おでんといった屋台さながらのオープンキッチンとカウンター席。個室は作らず、開放感のある店内はスタッフの元気や活気が客に伝わる劇場をイメージし、設計している。

 

*「旨くて安い屋台飯」をコンセプトに、メニューを作成毎日手仕込みで作り、鉄鍋で調理する博多劇場名物の「鉄鍋餃子」をはじめ、肉や季節の野菜のほか、色々な食材を串に刺して焼く「博多串焼き」、博多名物である「博多もつ鍋」など。その他、鉄板焼きやおでんなどの屋台飯、辛子明太子や、ごま鯖などのメニューを取り揃え、ドリンクは、ハイボールや店内で仕込む自家製塩レモンサワー、九州の酒蔵より取り寄せた焼酎などを提供している。

 

*サービスと商品を組み合わせることで顧客との接点を増やし、客に楽しんでもらうために様々な取り組みを行っている。(「鉄鍋餃子」100個(総重量1.5㎏)を60分以内に食べたら無料イベントの実施の他、年齢同数の餃子の誕生日プレゼント、3回以上の来店で、乾杯ドリンクを通常料金で1リットルサイズに変更するなど独自のアプリ会員システム「屋台屋会員」の運営)。

 

(同社資料より)

 

業態

特長

こだわりもん一家

7店舗(21年9月末)

*「お客様の第二の我が家」をコンセプトに、「いらっしゃいませ」ではなく「おかえりなさい」と出迎えるなど、自分の家に居る様なくつろげるお店造り。

 

*30代~50代のサラリーマンやOLを中心に、家族連れやカップルなど幅広い客層が様々なシーンで利用。

 

*店内の中央部分には、その日水揚げされた鮮魚や旬の野菜が並べられた食材のディスプレイを設置。奥には開放感のあるオープンキッチンを配置し、目の前で食材や調理の様子を見ることができる。

 

*オープンキッチンを囲む様に配置されたカウンター席の間には、「こだわりもん一家」の特徴である「畳」を設置。「畳」には着物を着た「女将」がおり、一人一人の客と会話をし、魚を煮る・焼く・刺し身にするなど要望に合わせたおもてなしを提供する。その他、様々な利用シーンに対応できるよう、カウンター席、テーブル席や掘り炬燵の宴会個室などを用意。

 

*日本各地から地魚や旬の野菜、郷土の名物調味料や地酒を仕入れており、素材の味を活かした炉端焼きを中心とした通常メニュー、旬の食材を使用し45日ごとに年8回変わる旬彩メニュー、料理長が市場へ足を運び買い付けした日替わりメニューなどがある。

 

*店舗ごとに、その日の鮮魚や旬野菜を桶に入れて席まで運び、直接素材を見てもらったうえで、好みの調理法で料理を提供する「桶売りサービス」、料理長一押しの厳選素材を通常の販売価格より低価格で提供する「タイムセール」、食事が進んだ頃に、メニューにはない料理長のおもてなしの一品を、出来立ての状態で客の席を回り販売する「中間サービス」など、料理を通じ顧客との接点を増やす取り組みを実施している。

 

(同社資料より)

 

業態

特長

大衆ジンギスカン酒場

ラムちゃん

11店舗(21年9月末)

*昨今の健康志向の高まりにより、「低糖質」「高タンパク」な食材が注目されヘルシーで太りにくい健康食材が一段と注目されている。脂肪燃焼に効果的なカルニチンを多く含むラム肉と、低糖質でプリン体も少ないウイスキー(ハイボール)を思う存分楽しめることをコンセプトとして、そうした需要を取り込む。

 

*全卓に強炭酸ハイボールタワーを設置し、60分500円(税抜)飲み放題で、顧客自身でハイボールを好きなタイミングで好きなだけ注ぐことができるため、注文してもなかなか運ばれてこないといった心配がない、ストレスフリーな構造となっている。

 

*こだわりの岩塩で塩締め・低温熟成させ、かつ柔らかく旨みを最大限に引き出した低カロリー高タンパクのラム肉を使ったジンギスカンが最大の売りとなっている。マトンに比べてクセがない(羊肉特有の臭み)ため、男女・世代を問わずに気取らず楽しめる、活気に溢れた大衆酒場。

 

(同社HPより)

(同社資料より)

 

(2)ブライダル事業
東京タワーの目の前に位置し、東京タワーを一望できる開放的なチャペルが特長であるブライダル施設「The Place of Tokyo」を運営している。
「The Place of Tokyo」には、和モダンをコンセプトとしてデザインした4階会場「Tower room」、オープンキッチンを併設した3階会場「Terrace room」、パリの宮殿をイメージした地下2階会場「Grand room」と趣の異なる3つの披露宴会場があり、婚礼料理も、幅広い年齢層のゲストにも喜んでもらえるよう、素材そのままの風味を活かした和テイストのオリジナルのジャパニーズキュイジーヌを提供している。
また、利用客の要望に応じて出身地の食材を使用したメニューをアレンジしたり、新郎新婦の希望に沿ったウェディングケーキを作成したりするなど、「日本一の“おもてなし”集団」として独自のサービスを創出・提供している。
 

(同社資料より)

 

【1-4 特長と強み】

(1)他には類を見ない接客サービスによる高いリピート率
同社では来店客を自分の大切な人(家族)と考え、接客している。
基本的なサービスマニュアルはあるものの、それをベースにスタッフが自ら考え、マニュアルにはないおもてなしを表現できるよう理念浸透や教育に取り組んでいる。
調理場スタッフも含めスタッフ全員で来店客を出迎えるためのオープンキッチンの導入、こだわりもん一家業態における「女将」の対応に加え、「2.成長戦略」で述べる会員企画など、他社には見られないユニークな接客サービスが高いリピート率に結び付いている。

 

(2)業界における独自のポジショニング
居酒屋マーケットの中で低価格帯ながらも、顧客に対するサービスレベルが高く、独自のポジションを構築している。また、コロナ禍の影響とは関係なしに、飲食店の利用は昔と比較して企業や大人数での利用から、個人や親しい人との少人数利用の需要形態へと移行しつつある。こうした社会背景等も反映しつつ、積極的な業態開発を行っていく方針を示している。

 

(同社資料より)

(同社資料より)

 

(3)理念を共有する人材育成のための取り組み
グループミッション、企業理念、社訓を、パートアルバイトを含めた全スタッフにいかに深く浸透させることができるかが業容拡大、企業価値向上のための最も重要なポイントであると考えており、人材の採用および育成についても同社ならではの取り組みを実施している。
◎社内教育プログラム「IKKAユニバーサルカレッジ」
「マインド」、「知識」、「スキル」、「行動」、「コミュニケーション」など、広範囲なテーマにわたり座学と実践を交えて包括的な人材育成を行っている。
社内講師も着実に育ってきており、継続的かつ安定的に同社の理念やビジョンを継承・浸透させていく仕組みとなりつつある。

(同社資料より)

 

◎社内動画共有ポータルサイト
後述の従来型イベントの開催や、集合研修や対面での会議をすることに伴う新型コロナウイルス感染リスクも警戒されるなか、社内動画共有ポータルサイトを立ち上げ、各種教育プログラム動画を配信し、コロナ禍においても歩みを止めることなく、教育体制の充実、理念浸透の強化を図っている。

 

(同社資料より)

 

◎各種イベントの実施
社員やアルバイトメンバーへの理念浸透、モチベーション向上、離職率低下を図るため、以下のような各種賞賛・イベントを開催している。

(同社資料より)

 

こうした取り組みが功を奏し、同業他社と比較して低い離職率を実現するとともに、人手不足が深刻化する中でも新卒採用に関しても安定したエントリー数を確保し、計画通りの採用に成功している。

 

【1-5 成長戦略】

同社では成長ドライバーを飲食事業、なかでも中心業態である「屋台屋博多劇場」の拡大と位置付けてきたが、今後は「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」「韓国屋台ハンサム」の出店拡大にも注力していく考えだ。

 

「屋台屋博多劇場」による成長戦略は以下のとおりである。

 

(1)商品戦略
同社資料によると、2015年に仕事帰りの「ちょい飲み」が一般化し、新生銀行の発表した統計データによるとサラリーマンの小遣い額は、37,873円と前年比231円の微増で1979年の調査開始以来、過去3番目に低い額となった。

 

そうした中、博多劇場では下記の代表的なメニューに見られるように、気軽に利用できる客単価でありながら、高いコストパフォーマンスを実現している。
また、2018年4月からは「180円メニュー」を増品し、よりリーズナブルなメニュー作りを進めている。

(同社資料より)

 

(2)会員企画
総来店客数の増大及び継続的なリピーターの獲得を重視する同社において「会員企画」は重要な取り組みであり、ユニークな販促企画を次々と産み出している。

 

主な企画名

概要

バースデー餃子

誕生日に年齢同数の餃子をプレゼント

V・I・P会員

3回行くとVIP会員になり、VIP会員は最初の飲み物をメガジョッキにしてくれるのに加え、同伴来店客にも同様のメガジョッキをサービス

博多出身者を探せ

博多出身者の方には、特別メニューをプレゼント

持ち出せ企画

指定の品物を持参するとその個数分ドリンクをサービス

博多劇場1号店オープンからの8年間の累計会員数は20年9月末で100万人を突破。
一方、16年10月からスマホ・アプリ会員をスタートさせ、18年1月からはアプリ会員に一本化しているが、21年6月末のアプリ会員は77万人を突破した。継続した会員獲得とアプリ企画のブラッシュアップで客数増・リピート率上昇を目指している。

 

(3)出店戦略
認知度およびブランド価値向上を図るため、今後3年程度は東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県で集中的に出店する。
最寄り駅乗降客数10万人以上の都心店舗と、それ以外の郊外店舗を組み合わせたハイブリッド型出店で、約200の候補地(駅)の中から厳選して年間10~12出店する計画である(※コロナ禍を除く)。
心のこもった接客を最重視する同社では十分な接客が可能なスタッフの育成が不可欠であり、サービスレベルを低下させることなく成長を追求するためには無理のない着実な店舗拡大が重要と考えている。

 

【1-6 株主還元】

同社は現在成長過程にあり、事業規模の拡大および財務基盤の強化を目的として内部留保の充実を優先するため、配当を実施していない。
ただ、株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しており、今後は、経営成績および財務状況等を総合的に勘案しながら、配当の実施を検討していく考えだ。
なお、株主の支援に対する感謝の意を表すとともに、店舗の利用を通じて事業内容の理解と継続的な支援を得ることを目的として株主優待制度を設けている。

 

(2021年3月末日以降の株主向け優待)

所有株式数

優待内容

100株以上200株未満

2,500円相当の食事優待券

200株以上400株未満

5,000円相当の食事優待券

400株以上

10,000円相当の食事優待券

 

2.2022年3月期第2四半期決算概要

同社飲食事業では、過去の実績からも12月の忘年会等の需要による客数の増加およびコース予約増加による客単価の向上、ブライダル事業では、婚礼の需要が高まる10~11月の施行件数の増加といった季節要因に加え、第1~2四半期に新規出店した店舗の売上寄与もあり、第3四半期(10-12月)の売上高が他四半期に比べ増加する傾向にある。
これに対し、第1~2四半期(4-9月)は、飲食事業において新規出店を集中し、それに伴う出店コストや人員確保のための採用費、新卒入社での人員増による人件費の増加などにより、費用が先行するため利益は低水準となりやすい。投資家はこうした同社決算の特性に留意する必要がある。

 

(1)業績概要

 

21/3期2Q

構成比

22/3期2Q

構成比

対前年同期比

売上高

1,432

100.0%

1,091

100.0%

-23.8%

売上総利益

969

67.7%

657

60.3%

-32.2%

販管費

1,600

111.7%

1,276

116.9%

-20.3%

営業利益

-630

-

-618

-

-

経常利益

-638

-

-625

-

-

当期純利益

-659

-

5

0.5%

-

単位:百万円

 

大幅減収の影響を吸収できず営業損益は赤字継続
引き続きコロナ禍による緊急事態宣言発出等に伴う臨時休業や酒類提供の自粛の影響が、飲食事業を中心に大きく、売上高は前年同期比23.8%減の10億91百万円。売上総利益は同32.2%減の6億57百万円。営業損益は6億18百万円の赤字(前年同期は6億30百万円の赤字)。不要不急のコストの見直し等による経費削減が奏功し、販管費は大きく抑制されたものの、売上減の影響を吸収できなかった。また、「助成金収入」を特別利益に、「店舗臨時休業等による損失」を特別損失にそれぞれ計上し、最終損益は5百万円の黒字で着地した。
新規出店は2店舗。その結果、店舗数は2021年9月末で70店舗となっている(その他、既存店1店舗の業態変更を実施)。なお、新規出店2店舗の内訳は、大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん1、寿司トおでん にのや1。

 

*既存店とは、新規開店した月を除き、18ヶ月以上経過した店舗。改装等により稼働していない期間があった店舗は当該月から除外している。

 

(2)セグメント動向

 

21/3期2Q

構成比

22/3期2Q

構成比

対前年同期比

売上高

 

 

 

 

 

飲食事業

1,270

88.7%

560

51.4%

-55.9%

ブライダル事業

161

11.3%

530

48.6%

228.2%

合計

1,432

100.0%

1,091

100.0%

-23.8%

営業利益

 

 

 

 

 

飲食事業

-427

-

-415

-

-

ブライダル事業

-203

-

-203

-

-

合計

-630

-

-618

-

-

*単位:百万円。営業利益の構成比は営業利益率。

 

◎飲食事業
大幅な減収、営業損失で着地。
アフターコロナにおけるニーズや、テイクアウト・デリバリーに対応した新業態の開発及び新規出店、既存店のサービス力向上及び店舗オペレーションの改善、自社アプリなどの会員獲得によるリピーター客数の増加に継続して注力。ただし、緊急事態宣言の発出、まん延防止等重点措置等に伴い、臨時休業及び要請の範囲内での時短営業を行ったことに加え、臨時休業の長期化に伴う食材廃棄等による一時的な原価圧迫なども重しとなった。

(新規出店など)
ドミナントエリア拡大に向けて下記、出店した。
東京都への出店(大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん有楽町店、寿司トおでん にのや)

 

以上、直営店2店舗を出店し、直営店は合計で70店舗となった。
内訳は、屋台博多劇場47、こだわりもん一家7、大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん11、Remo Café2、にのや2、韓国屋台ハンサム1。

 

(業態変更、退店など)
*業態変更
既存店の「屋台屋博多劇場 柏2号店」を「韓国屋台ハンサム」へ変更した。

 

*退店
特になし。

 

(既存店の状況)
既存店(屋台屋博多劇場業態・こだわりもん一家業態・大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん業態)は前年同期比78.2%の減収。緊急事態宣言の発出、まん延防止等重点措置の適用対象地区が拡大されたことに伴い、対象エリアの店舗を中心に臨時休業の措置を講じ、その他店舗については酒類提供の自粛を含む要請の範囲内での時短営業を実施したことが苦戦の背景。業態別では、「屋台屋博多劇場」が同92.4%減収、「こだわりもん一家」が同77.2%減収、「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」が同4.9%増収となった。なお、客単価については同1.8%増。客数は同78.6%減少。コロナ禍の影響が直撃した中で、客単価の増加を達成したことはポジティブな要素と言えよう。

(同社資料より)

 

◎ブライダル事業
大幅増収ながら営業損失。
近年、結婚式のニーズの多様化により少人数婚のニーズが高まり、婚礼1組当たりの組人数が減少傾向にある中、婚礼の主力広告媒体との連携強化による来館数・成約率の向上、サービス力向上及びコスト削減、宴席の新規案件の取り込み及びリピート客数の増加、レストランのサービス力、商品力の向上及び新規客数の増加にも継続して注力。また、SNSのLIVE配信を利用したリモート会場案内、オンライン結婚式オプションや家族婚・挙式のみプランの販売、3密を回避した婚礼料理コースの開発など、コロナ禍における様々なニーズに対応した取り組みを強化した。
その結果、施行件数は前年同期比で大幅に増加。一方、感染予防の観点から少人数での挙式が増えたことにより、組人数・組単価は減少している。なお、施行件数増加による費用増(アウトソーシング費の増加)の他、付帯原価率の高い婚礼件数が増加したことが重しとなり、営業損失は2億3百万円と前年同期とほぼ同水準での着地となった。ちなみに、婚礼売上については2021年10月の直近の実績で9割まで回復、来館数もコロナ以前と同様の水準まで回復していることを決算説明会資料のなかで示している(※いずれもコロナ以前の2020年3月期比)。
■婚礼の成約率推移について

(同社資料より)

 

婚礼のコロナ後の売上回復率について

(同社資料より)

 

婚礼のコロナ後の組単価回復率について

(同社資料より)

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

21年3月末

21年9月末

 

21年3月末

21年9月末

流動資産

1,242

1,573

流動負債

1,313

1,327

現預金

632

760

仕入債務

61

39

売上債権

102

44

短期借入金

833

887

固定資産

3,022

2,967

固定負債

2,597

2,802

有形固定資産

1,896

1,869

長期借入金

2,254

2,454

建物

1,651

1,623

負債合計

3,910

4,130

無形固定資産

11

10

純資産

353

410

投資その他の資産

1,113

1,088

利益剰余金合計

-537

-581

敷金・保証金

572

566

負債純資産合計

4,264

4,541

資産合計

4,264

4,541

借入金合計

3,088

3,341

単位:百万円

 

店舗の営業時間短縮等に関連した助成金等の計上に伴い未収入金が増加したこともあり、資産合計は前期末に比べ276百万円増加し45億41百万円となった。
なお、借入金は同2億53百万円増加。新株の発行に伴い資本金が増加した他、資本剰余金も増加。加えて、四半期純利益の計上もあり、純資産は同56百万円増加の4億10百万円。この結果、自己資本比率は前期末より0.6ポイント上昇し、8.8%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

21/3期2Q

22/3期2Q

増減

営業CF

-891

-66

+824

投資CF

-212

-109

+102

フリーCF

-1,103

-176

+927

財務CF

1,823

301

-1,522

現金同等物残高

1,330

667

-662

単位:百万円

 

税引前四半期純利益の影響等で、営業CFが大幅に改善。フリーCFのマイナス幅も縮小。
前年同期は長期借入れによる収入が大きかったこともあり、財務CFは減少。
長期借入金の返済による支出もあり、キャッシュポジションも減少した。

 

3.2022年3月期業績予想

(1)業績予想について

新型コロナウイルス感染拡大による今後の事業への影響について適正かつ合理的な算定が不可能なため2022年3月期業績予想は未定としている。算定が可能になった時点で速やかに開示を行う予定。

 

(2)注力施策

新業態『にのや』
4月12日に、にのや業態2店舗目となる『寿司トおでん にのや』を有楽町にオープンしている。ウィズコロナ・アフターコロナの居酒屋の在り方を見据え、短時間の利用に向いた立ち飲みカウンター席と、少人数向けのテーブル席を設け、小分け可能な手作りの料理を提供する。酒のあて(肴)になるリーズナブルな巻き寿司や日本酒を、手軽に楽しめるのが魅力の店舗だ。ただし、オープンからすぐに緊急事態宣言が発出され、その後も時短営業に加えて、同業態の訴求ポイントでもある酒類の提供が終日停止となるなど、上期は稼働が難航した。

 

(同社資料より)

 

新業態 『韓国屋台ハンサム』
既存店である屋台屋博多劇場柏2号店を業態変更し、新業態『韓国屋台ハンサム』1号店を4月26日に出店している(※2021年10月11日に2号店目となる海浜幕張店を開店)。20代~40代女性を中心に韓国ドラマや音楽コンテンツやファッションが人気を博し、大きなブーム(第4次韓国ブーム)となっている背景を受けて開発した業態となる。従来の屋台屋ブランドの客層(30~50代男性がメインターゲット)に加えて、10代~20代の若年層の女性客を中心とした新規客層の獲得及びノンアルコール需要の取込みを狙った格好だ。また、ランチ営業・テイクアウト・デリバリー対応も行う他、SNSを利用した効果的な販促も進めている。

 

(同社資料より)

 

(3)出店戦略

出店数については引き続きコロナ禍の状況を見ながら検討する方針であり、期初及び上期段階で具体的な出店計画は開示していない。ただし、前述した通り、にのや業態の2店舗目となる『寿司トおでん にのや』、『韓国屋台ハンサム』は出店済みながら、新型コロナ影響による緊急事態宣言の発出に伴う酒類メニューの提供制限や外出自粛等で正確なデータを十分に収集することができていない状況だ。こうした新業態のポテンシャルの見極めを行ったうえで、出店を漸次加速していくことになるとみられる。なお、会社側は、両業態に非常に手ごたえを感じているとのことだ。

 

(4)その他

2021年10月1日から、予定通り持株会社体制に移行。これをきっかけに、今後はレジャーサービス事業や宿泊・ホテル事業など”おもてなし“に関わる事業にビジネス領域を広げることを視野に入れ、おもてなしの総合商社を目指していくことを決算説明会において、改めて表明している。

4.今後の注目点

第2四半期(7-9月)、特に8月は新型コロナウイルスの国内新規感染者数がピークに達していたタイミングである。これにより、飲食事業店舗ではほぼ通常営業が出来ないことは想定内だった。逆に、利益面の影響で見栄えはあまり良くないものの、業界全体で落ち込みが厳しかったブライダル事業が回復の兆しを見せたことは、同社のそもそもの競争優位性、そして新たに導入した「全員接客」施策の効果の表れだろう。婚礼の小規模化はコロナ禍後も、従来からさらに加速すると見られるため、事業モデルのテコ入れを図る必要があるとはいえ、ひとまず素直に評価すべき点だ。なお、通期予想は非開示となっているが、足元で飲食事業の戻りは順調ながら、宴会需要の戻りが非常に弱いことを会社側は説明しており、少人数需要をどれだけ取り込めるかは重要なポイントとなりそうだ。

 

諸外国の状況を鑑みると、感染再拡大の可能性は否定できないものの、コロナ禍もひとまず落ち着きを見せるなか、新業態『韓国屋台ハンサム』やレジャーサービス事業や宿泊・ホテル事業などへの進出可能性の示唆など、今後の期待材料も出てきており、持株会社体制に移行した同社の事業展開に注目したい。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

9名、うち社外4名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年10月1日

 

<基本的な考え方>
当社は、「お客様、関わる全ての人と喜びと感動を分かち合う」とういう理念のもと、「あらゆる人の幸せに関わる日本一の“おもてなし”集団」というグループミッションを掲げ、飲食事業、ブライダル事業のみならず、おもてなしに関わる様々な事業で、日本人の文化である“おもてなし”を広め、日本を代表する「おもてなし」のリーディングカンパニーを目指しております。
当社は、企業価値の継続的な向上には、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが必要不可欠であると考え、コーポレート・ガバナンスの強化及び充実に努めております。株主をはじめとするステークホルダーと良好な関係を築き、事業活動を行うことで、長期的な成長を遂げることができると考えております。
透明かつ公平な経営を最優先に考え、株主総会の充実をはじめ、取締役会の活性化、監査等委員会の監査機能の強化及び積極的な情報開示に努め、コーポレート・ガバナンスの一層の強化を図ってまいります。

 

<実施しない主な原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。

【補充原則1-2-4】

当社は、機関投資家や海外投資家の比率が相対的に低いため、議決権の電子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英訳は実施しておりません。今後は、株主・投資家の皆様のご意見・ご要望を参考にしつつ、機関投資家や海外投資家の比率、費用対効果等を勘案し、引き続き議決権の電子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英訳の導入について検討してまいります。

【原則1-3】

当社は、資本効率の向上や株主に対する適切な利益還元は、重要な経営課題のひとつであると考えておりますが、具体的な方針を定めるには至っておりません。当面は、収益力の向上・改善が最重要課題であると認識しており、収益力を強化し、企業価値の向上に努めてまいります。

【補充原則4-1-2】

当社は、経営環境の変化が激しい中で、中期的な業績予測を掲げることは、必ずしもステークホルダーの適切な判断に資するものではないとの観点から、事業単年度毎の見通しを公表することとしており、数値目標をコミットメントする中期経営計画は策定しない見込みです。一方、単年度予想と実績との乖離に関する原因分析は定期的に行っており、決算発表等を通じ必要なタイミングで株主を含むステークホルダーに対し開示・説明を行っております。

 

<各原則に基づく主な開示>

【原則1-4】

当社は現状、政策保有株式として上場株式を保有する見込みはありません。

【原則5-1】

当社では、IR担当取締役を選任するとともに、管理部をIR担当部署としております。管理部は、経理部、広報部、総務部等IR活動に関連する部署を統轄し、日常的な部署間の連携を図ってまいります。株主や投資家に対しては、代表取締役社長が出席する決算説明会を半期に1回開催するとともに、個人投資家説明会や役員懇親会(株主総会後)を実施してまいります。その他、株主から面談の希望があった際は、目的・内容等に応じ、IR担当取締役や代表取締役社長が対応してまいります。これらの活動を通じて得られた意見等は、適宜取締役会にフィードバックを行ってまいります。なお、株主との対話に際してはインサイダー情報の漏洩防止を徹底してまいります。

 

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