ブリッジレポート
(6250) 株式会社やまびこ

プライム

ブリッジレポート:(6250)やまびこ 2021年12月期第3四半期決算

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久保 浩 社長

株式会社やまびこ(6250)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

機械(製造業)

代表取締役社長

久保 浩

所在地

東京都青梅市末広町1-7-2

決算月

12月末日

HP

https://www.yamabiko-corp.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,268円

44,108,428株

55,929百万円

11.4%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

41.00円

3.2%

163.73円

7.7倍

1632.23円

0.8倍

*株価12/3終値。発行済株式数、DPS、EPS、BPSは21年12月期第3四半期決算短信より。ROEは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年12月(実)

102,948

6,283

6,823

4,930

119.33

35.00

2018年12月(実)

118,049

6,290

5,957

4,188

101.39

40.00

2019年12月(実)

120,922

6,203

5,917

4,164

100.46

35.00

2020年12月(実)

131,972

9,643

9,402

6,635

159.90

40.00

2021年12月(予)

140,000

9,000

9,300

6,800

163..73

41.00

*単位:百万円、円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。17年12月期は9カ月決算。18年12月期のDPS40円には、設立10周年記念配当5円を含む。

 

 

株式会社やまびこの2021年12月期第3四半期決算概要等についてご紹介致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年12月期第3四半期決算概要
3.2021年12月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:中期経営計画2022の概要・重点施策>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2021年12月期第3四半期の売上高は前年同期比8.1%増の1,124億円。国内は同2.7%減。政府による経営継続補助金の新たな予算化の追い風もあり、農業用管理機械が伸長した一方、天候不順により小型屋外作業機械が減収。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、引き続き大規模な展示会が中止となるなど一般産業用機械も低調だった。海外は同14.4%増。順調な天候や新型コロナウイルスの感染拡大による在宅時間の増加などを背景に、小型屋外作業機械が主力市場の米州や欧州で伸長した。営業利益は同0.6%増の98億円。物流費や原材料価格の高騰もあったが売上総利益が同5.6%増加し、計画的な投資案件や人件費増による販管費の増加を吸収した。為替差益発生により経常利益は同5.6%増加。売上高・利益ともに第3四半期(累計)の過去最高を更新した。四半期ベースでは前年同期比、前四半期比で減収減益。

     

  • 通期予想を再度上方修正した。今期3度目となる。売上高は前期比6.1%増の1,400億円の予想。国内は農業用管理機械が政府の経済政策により伸長するが、一般産業用機械は昨年のインフラ整備に伴う発電機需要の反動減を見込んでいる。海外は主力の北米や欧州の小型屋外作業機械で旺盛な需要が継続することに加え、北米の農業用管理機械・一般産業用機械も好調に推移し増収を見込んでいる。営業利益は同6.7%減の90億円を見込む。販売数量の増加や為替差益を見込んでいるものの、原材料や輸送コストの増加に加え、物流の停滞に伴う積送品の増加による未実現利益の増加が利益を圧迫する。為替レートの前提は、1ドル=110円(修正前105円)、1ユーロ=130円(同120円)に修正。配当予想も従来予想の38.00円/株から41.00円/株に修正した。予想配当性向は25.0%。

     

  • 中期経営計画2022の目標は、「2022年12月期 売上高1,340億円、営業利益80億円」。3度目の業績予想上方修正後の第3四半期時点での進捗率は売上高で80.3%、営業利益で109.3%と、中計目標を1年前倒しで達成する可能性は一段と高くなっている。世界的なコンテナ不足や原材料価格高騰に加え、新型コロナウイルスの変異株の登場と不透明要因は多いが、第4四半期(10-12月)にどれだけ売上・利益を積み上げていくことができるかを注目していきたい。

     

     

     

1.会社概要

小型屋外作業機械(刈払機、チェンソーなど)、農業用管理機械(防除機、畦草刈機など)、一般産業用機械(発電機、溶接機など)の3事業における各種製品の開発・製造・販売をグローバルに展開。海外売上比率は約60%。小型屋外作業機械では国内首位、米州上位と高いシェアを有する。独自の生産技術、豊富なラインアップ、充実したテクニカルサポート体制等が強み。

 

【1-1 沿革】

同社は、国内で農業機械、グローバルで小型屋外作業機械を扱っていた株式会社共立(東・名・阪一部上場)と、グローバルで小型屋外作業機械及び一般産業用機械を扱っていた新ダイワ工業株式会社(東証2部上場)の2社が2008年12月に設立した共同持株会社「株式会社やまびこ」が、2009年10月に両社を吸収合併して事業会社化した会社である。

 

株式会社共立は、1947年、東京で創立された株式会社共立農機を前身とし、農業機械事業において「国産初のスピードスプレーヤ(農薬散布機)」、小型屋外作業機械事業において「国内初の背負動力刈払機」、「世界初の手持ち式パワーブロワ」を開発するなど、両事業におけるリーディング企業であった。また、創業時より小型屋外作業機械のエンジン自社開発に注力し、合併前の2008年のエンジン累計生産台数は4,000万台に上っていた。
一方、新ダイワ工業株式会社は1952年、広島で創業した浅本精機製作所が前身。小型屋外作業機械事業において「国産初の電動チェンソー」を開発したほか、一般産業用機械事業においてエンジン発電機、エンジン溶接機などを製造販売。また、世界初の混合燃料使用の4サイクルエンジンを開発するなど、高い技術開発力を特長としていた。
1990年代後半に入り温室効果ガスを要因とする地球温暖化問題への関心が高まるとともに、欧米、特にアメリカでエンジンの排出ガス規制が強化され、新基準をクリアするための研究開発費が増大。これに対応できない中堅・小型企業を対象として小型屋外作業機械市場において2000年代に入りグローバル規模での業界再編が急速に進行した。加えて、新興国企業による安値攻勢や顧客ニーズの多様化などにより、事業環境は一段と不透明なものとなっていた。
そうした中、激化する競争を勝ち抜くためには一段と企業体力を強化する必要があるとの判断から、両社は将来的な経営統合を前提として2007年5月に業務・資本提携契約を締結。
開発、生産、物流、販売、管理を始めとした全ての事業における効率化と拡充を目指して2008年12月共同持株会社、株式会社やまびこを設立し、2009年10月、株式会社やまびこが両社を吸収合併し事業会社化した。

 

社名「やまびこ」は、山の神「山彦」を由来としており、「人と自然と未来をつなぐ」を経営理念とし、自然と環境の育成・整備への貢献を掲げる同社の姿勢を表している。

 

【1-2 経営理念など】

やまびこグループの理念は「エッセンス」「存在意義」「行動指針」という3つの要素で構成されている。
「エッセンス」は、「存在意義」と「行動指針」を凝縮した、やまびこグループとして目指すべき企業の姿・企業活動の本質を表現したもの。
「存在意義」は、やまびこグループが社会の中で担うべき役割と責任を宣言し、約束するもの。
「行動指針」は、やまびこグループの社員一人ひとりが業務に臨むべき姿勢をまとめたもの。

(同社HPより)

 

<エッセンス>

◇ 人と自然と未来をつなぐ

 

<存在意義>

◇ 世界最高の製品とサービスを提供し続けること

◇ 自然と環境の明日を担う人と企業に貢献すること

◇ 業界のリーダーとして顧客を創造し業界の成長を牽引すること

◇ やまびこにつながる全ての人々を幸せにすること

 

<行動指針>

◇ 変化を見定め布石を打つ

◇ 理論とともに三現主義を実践する

◇ 現状を打破する革新的発想をもつ

◇ グローバル企業の気概を携え行動する

◇ 感謝を心に刻み誠意を尽くす

これに加えて、行動指針を補完し、具体的な対応方法を示した14項目からなる行動指針細目を制定し、企業理念に則った事業活動が行われるように努めている。

 

【1-3 市場環境】

小型屋外作業機械市場についての明確な統計は存在していないが、米国を始めとする北米市場が最大市場とされ、ついで欧州地域が続いており、日本は100万台という統計がある。
同社の収益動向に影響を与える関連指標としては、海外市場においては「住宅着工件数」、「穀物価格」、「原油価格」等、国内市場においては「米価」等が挙げられる。

 

小型屋外作業機械でグローバルに展開するメーカーとしては、欧州(ドイツ・スウェーデン)に2社存在すると会社側では認識している。

 

【1-4 事業内容】

1.セグメント
小型屋外作業機械事業、農業用管理機械事業、一般産業用機械事業の3事業を展開。報告セグメントもこの3セグメント。

 

(決算短信より当社作成)

 

『小型屋外作業機械事業』
「手で持つ」または「背負って」使用する小型エンジンを搭載した山林・緑地管理用などの機械の製造・販売を行っている。
主要製品は、チェンソー、刈払機、パワーブロワ、ヘッジトリマーなど。
2014年11月に、業務用ロボット芝刈機を開発、製造、販売するベルギーのベンチャー企業「ベルロボティクス社」を買収した。(2017年1月、欧州における販売強化を目的としてベルロボティクス社は「やまびこヨーロッパ」へ商号変更。)
長年をかけて蓄積してきたノウハウや顧客ニーズにきめ細かく対応する高い開発力をベースに、高性能・高耐久・高品質エンジンを産み出し続けている。

 

<チェンソー>

 

<刈払機>

 

<パワーブロワ>

 

 

 

(ガソリンエンジンの仕組み)
小型屋外作業機械のチェンソーや刈払機などの動力には主に2ストロークガソリンエンジンが用いられている。
後述するように、同社のエンジン開発能力の高さは最も重要な特長・強みの1つとなっている。
ガソリンエンジンの仕組みおよびエンジンの種類による特長を知っておくことは同社事業を理解する上でも有用なので以下簡単に解説する。

 

ガソリンエンジンとは、基本的に以下の4つのステップを経てガソリンが燃焼する力でピストンを押し下げて動力を発生させるもの。

 

ステップ

概要

1.吸気

燃料と空気が混ざった混合気をシリンダーに吸い込む。

2.圧縮

シリンダー内の混合気がピストンの上昇に伴い圧縮される。

3.膨張

もっとも混合気が圧縮された時に火花を飛ばして混合気を燃焼させる。燃焼による膨張の力でピストンは下に押される。

4.排気

燃焼済みのガスが外へ排出される。

 

ピストンの往復運動は、クランクシャフトと呼ばれる部品によって回転運動に変換され、自動車の車軸やチェンソーの回転軸を回転させる。
この4つのステップ「1周期」をピストンの往復運動何回で完結するかによって、ガソリンエンジンは2ストローク・エンジンと4ストローク・エンジンの2つに概ね大別される。

 

「2ストローク・エンジン」
2つのストロークで1周期を完結させる。すなわち、「ピストン1往復、クランクシャフト1回転」ごとに動力を1回発生させる。
1回目のストローク(ピストンの上昇):混合気の「吸入」と「圧縮」を行う。
2回目のストローク(ピストンの下降):混合気の「膨張」によりピストンが下降し、その後半で「排気」を行う。

 

 

 

 

「4ストローク・エンジン」
4つのストロークで1周期を完結させる。「ピストン2往復、クランクシャフト2回転」ごとに動力を1回発生させる。
1回目のストローク(ピストンの下降):混合気の「吸入」を行う。
2回目のストローク(ピストンの上昇):混合気の「圧縮」を行う。
3回目のストローク(ピストンの下降):「膨張」によりピストンが急速に押し下げられる。
4回目のストローク(ピストンの上昇):燃焼済のガスが「排気」される。

 

 

 

 

4ストローク・エンジンは、吸気と排気をコントロールしやすいといったメリットがある反面、吸・排気バルブをシリンダーヘッド部に設置するため、シリンダーの胴体に設置されるポートから吸・排気を行う2ストロークに比べ構造が複雑になる。また、そのため重量も重くなる。

 

これに対し、2ストローク・エンジンは、混合気の吹き抜けやピストン運動を円滑にするために用いられるエンジンオイルが燃料と一緒に燃焼する割合が4ストローク・エンジンに比べると多いため、排気ガス中に有害物質が多くなるといった面があるものの、構造がシンプルで部品数も少ないため小型・軽量化が可能で、同じ理由からオーバーホールも容易といったメリットがあり、小型屋外作業機械には2ストローク・エンジンが最適である。

『農業用管理機械事業』
国内向けに農薬散布のための機械である防除機械、北米向け農作物収穫機械などの製造・販売を行っている。
主要製品は、防除機(スピードスプレーヤ、乗用管理機、動力噴霧機)、畦草刈機、大豆収穫機など。
共立が長年にわたって蓄積してきた送風技術、噴霧技術、ポンプ技術、機器の軽量化や小型化等が同事業における技術的な強みである。

 

<乗用管理機>

 

<スピードスプレーヤ>

<畦草刈機>

 

 

 

『一般産業用機械事業』
建設・土木・鉄工用機械の製造・販売を行っている。
主要製品は発電機、溶接機、投光機、切断機、高圧洗浄機など。

 

新ダイワ工業が創業時から蓄積してきたAC(交流)モータ開発技術を進化、発展させた発電体設計技術や、電子制御技術、防音技術などが同事業における技術的な強みである。

 

<発電機>

 

<溶接機>

 

(アクセサリーや部品)
各種機械用のアクセサリーやアフターサービス用部品の製造・販売も行っている。高収益性が特長。

 

<メンテナンスキット>

 

<刈払機用ナイロンコード>

 

<燃料・オイル>

 

 

2.ブランド
2社の統合によって設立された同社だが、両社製品は長年にわたり日本およびグローバルで認知されているため、ブランド名はそのまま、KIORITZ 、Shindaiwa 、ECHO の3ブランドを展開している。
更なるブランド価値の向上を目指し、積極的なマーケティング投資、新しい販売ルートの開拓を進めている。

 

3.開発体制
各事業では以下のような重点課題を設定し、開発に取り組んでいる。

事業

開発の重点課題

小型屋外作業機械

*グローバルレベルでのエンジン排出ガス規制対応

*北米での燃料透過規制対応

*ヨーロッパでの騒音および振動規制対応

*小型軽量化・低騒音・低燃費・耐久性向上

*安全性向上

農業用管理機械

*ドリフト対策・適量散布・高性能化・操作性簡便化

一般産業用機械

*小型軽量化・低騒音・高性能・高機能・低燃費

 

排出ガス規制は今後もさらに厳しくなることが予想されるため、最重点課題である。
この他、電子制御分野において制御技術の研究を進めている。

 

4.生産体制
国内3事業所(横須賀、盛岡、広島)と4社の生産関連子会社を、海外では、アメリカ、ベルギー、中国、ベトナムに合計10社の生産関連子会社を有している。

 

5.販売ルート&販売方法
世界90か国以上、約2万8千店舗に同社製品は供給されている。
全売上高の6割以上が海外売上となっている。

 

<国内市場>
2017年4月、管理体制の一元化・事業資産の一体運用を通じた経営資源の効率化、販売力強化と顧客サービス向上を目的に、主に地域別に分かれていた販売子会社7社を統合し、やまびこジャパン株式会社を設立した。

 

やまびこジャパンが販売代理店、全農(全国農業協同組合連合会)、ホームセンター、建設機械レンタル会社等に同社製品等を販売し、エンドユーザーである農林業家、建設・土木・鉄工業者、緑地管理業者などに供給される。
販売店や代理店と協力しながら展示会を各地で実施し、実演や試乗などを通じて販売に繋げているほか、販売店と同行してエンドユーザーを訪問。ユーザーのニーズを汲み取ったうえで製品開発に活かしている。

 

<北米市場>
子会社エコー・インコーポレイテッドグループがホームデポ(※)や代理店に販売し、エンドユーザーである緑地管理業者、ホームオーナー、農林業家、建設・土木業者などに供給される。

 

※ホームデポ(The Home Depot)
世界最大の住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売チェーン。1978年設立。2020年の売上高1,321億ドル(約14.4兆円)、純利益128億ドル(約1.4兆円)。米国、カナダ、メキシコに2,296の店舗を有する。NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場。(同社WEBSITEより抜粋)

 

ホームデポでは、GOOD、BETTER、BESTの区分で品質ごとに分類されており、高品質なBESTとして製品を供給しているのは同社のみである。これが、同社製品が北米市場で高く評価されている証左の一つとなっている。

 

中南米市場においては子会社エコー・インコーポレイテッドが各国代理店に販売し、その後販売店を通じてエンドユーザーに供給される。
欧州市場では子会社のやまびこヨーロッパが、中国市場では子会社の愛可機械が代理店に販売しており、アジア・その他地域では、やまびこが各国代理店に販売している。

 

海外の販売店では、ブランド別に製品を展示しており、エンドユーザーのニーズを聞きながら販売員が対面販売を行っている。
またホームセンターでは、各機種群別・価格別に製品が展示されており、エンドユーザーはニーズや予算、CM等で得たイメージを基に購入する。

【1-5 特長と強み】

①独自の生産技術力・一貫生産体制
同社最大の特長・強みは「独自の生産技術力・一貫生産体制」である。
中心事業である小型屋外作業機械に搭載される2ストローク・エンジンに関しては、開発、材料となるアルミの調達、鋳造、部品製造、加工、組立てまで全て自社で一貫して生産する体制をとっているが、世界的に見ても他に例がないという。なお、農業用管理機械事業と一般産業用機械事業の製品も動力源はエンジンであるが、主に外部調達をしている。
また、様々な課題を鉄めっき、放電加工などの自社独自技術で解決し、製品の品質向上や生産能力向上に結び付けている。
具体的には下記のような技術を確立している。

 

<具体例①:鉄めっき>
めっきとは金属などの材料の表面に金属の薄膜を被覆した表面処理のこと。エンジン製造においては、ピストンとの摩擦による摩耗防止のためシリンダー内部にめっきを施す必要がある。
従来は耐久性やコストからクロムめっきが一般的であったが、環境への悪影響、生産効率の低さといった問題点から、他の材料によるめっき加工が求められてきた。

 

同社では、環境負荷低減の観点などから1978年より「鉄めっき」に取り組んでいる。
当初日産能力は数百個であったが生産性向上、めっき精度の向上、環境負荷削減などを進めた結果、現在では仕上げ加工が不要で環境負荷を大幅に削減した鉄めっき技術を確立することができ、日産能力も数千個と大幅に拡大させることができた。現在保有する鉄めっき関連特許件数は5件。

 

<具体例②:放電加工>
前述の様に、2ストローク・エンジンは、部品数が少なく構造も4ストローク・エンジンに比べシンプルであるため、「手で持つ」、「背負う」小型屋外作業機械には最適であるが、混合ガスの一部が排気されるという側面があり、世界的に強化が進む排出ガス規制に対応するためには、混合ガスの流れをコントロールして効率よく燃焼させることが課題であった。
そのためには、シリンダー内面形状を変更(混合ガス通路とシリンダー内面の間に壁を設ける)する必要があり、生産方法の検討が必要となった。

 

ダイカスト鋳造(※)により「壁」を形成する事は可能だったが、その壁に混合ガスを燃焼室に導くための横穴を開ける必要があり、ダイカスト鋳造では横穴を開ける事は出来ず、また狭い箇所であるため切削加工も困難であった。
そこで同社では、ダイカスト鋳造の特長を活かしながら切削加工できない形状を加工するために「放電加工(※)」を採用することとした。
放電加工は複雑な形状も加工が可能である一方、加工時間が長く電極消耗が多いなどコスト面での課題があった。
同社は量産化に向け加工条件の研究、特殊電極形状の設計などに取り組み、加工時間の短縮、省人化、電極の低コスト化、能率向上など量産化に成功した。
放電加工関連特許保有件数は3件であり、他社には真似のできない同社独自技術を確立した。

 

(※)ダイカスト鋳造
金型鋳造法のひとつで、金型に溶融した金属を圧入することにより、高い寸法精度の鋳物を短時間に大量に生産する鋳造方式のことで、薄肉化、低コストを可能にする。

 

(※)放電加工
電極と非加工物との間に短い周期で繰り返される放電によって、非加工物表面の一部を除去する機械加工の方法。極めて硬い鋼鉄などに複雑な輪郭を切り出すことができる。

 

同社はこれらの技術を始めとした「高度なモノ作り力」によって、排出ガス規制対応以外にも、軽量化、高耐久性、更なるコスト削減など様々なニーズに対応し、「排出ガス規制対応・軽量化・高耐久性2ストローク・エンジン」の開発・量産に成功している。
これらの課題に対応できず市場から退出を余儀なくされた企業も世界的に多数ある中で、同社はトップクラスのメーカーとして更なる成長を続けている。

 

 

②各事業固有の研究・開発力
環境問題の対応力は高く、同社エンジンに対する米国EPA(Environmental Protection Agency、環境保護庁)によるエンジン認証数は世界でもトップクラスとなっている。
また、小型屋外作業機械に限らず、農業用管理機械、一般産業用機械においても固有の研究開発力を有している。
共立、新ダイワ工業それぞれが長い年月を経て培った技術力をベースに、更に磨きをかけている。

 

③豊富なラインアップ・販売ネットワークおよび国内サービスネットワークの拡大
様々な顧客ニーズに対応し、3事業それぞれにおいて豊富なラインアップを有している。
また、現在世界90カ国以上、約2万8千店舗に同社製品が供給されている。
2社の合併によって、ラインアップおよび販売ネットワークは更に拡充された。
多様化するユーザーの満足度向上を目指し、2013年から国内に“やまびこサービスショップ(YSS)”を立ち上げ、故障時に整備・修理などを行う他社にはないサービス体制を全都道府県で展開している。2020年3月現在の加入店舗数は342店。

 

④充実したテクニカルサポート体制
製品に対する信頼性を高め、代理店や販売店との関係をより強固なものとするためにテクニカルサポート体制の充実にも注力している。
国内外を合わせておよそ年間40回のサービススクール実施に加えて、海外の代理店向けに、修理技能やエンジンの仕組みなどについて理解を深めてもらうため、2018年から新たにオリジナル教材によるe-learningを始めた。
また、欧州の子会社では、ロードショー形式による代理店内のトレーナー育成や代理店のセールスマンを対象とした講習会を実施するなど、さらなるサービス力の強化に努めている。

 

⑤高い製品シェア
上記①から④の特長・強みを総合的に発揮してグローバルで高い競争力を実現しており、小型屋外作業機械事業では最大市場の北米で上位、日本においては30%以上のシェアを持つNo.1企業である。

 

【1-6 ROE分析】

 

12/3期

13/3期

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

17/12期

18/12期

19/12期

20/12期

ROE(%)

7.9

8.7

14.5

12.4

10.4

5.1

9.9

7.9

7.6

11.4

 マージン(%)

2.27

2.72

4.48

4.67

4.15

2.12

4.79

3.55

3.44

5.03

 ターンオーバー(回)

1.14

1.13

1.28

1.18

1.21

1.20

1.05

1.18

1.18

1.23

 レバレッジ(倍)

3.04

2.85

2.52

2.26

2.08

2.00

1.98

1.91

1.84

1.81

*マージンは売上高当期純利益率。ターンオーバーは総資産回転率。

 

前期は売上伸長によるマージン改善にドライブされ、ROEは11.4%まで上昇した。

 

2.2021年12月期第3四半期決算概要

(1)連結業績概要

 

20/12期3Q

対売上比

21/12期3Q

対売上比

前年同期比

売上高

104,033

100.0%

112,435

100.0%

+8.1%

国内

38,555

37.1%

37,498

33.4%

-2.7%

海外

65,478

62.9%

74,937

66.6%

+14.4%

 米州

56,597

54.4%

63,030

56.1%

+11.4%

 その他海外

8,880

8.5%

11,906

10.6%

+34.1%

売上総利益

30,188

29.0%

31,876

28.4%

+5.6%

販管費

20,412

19.6%

22,037

19.6%

+8.0%

営業利益

9,776

9.4%

9,838

8.8%

+0.6%

経常利益

9,739

9.4%

10,286

9.1%

+5.6%

四半期純利益

7,237

7.0%

7,726

6.9%

+6.7%

*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。

 

増収増益
売上高は前年同期比8.1%増の1,124億円。国内は同2.7%減。政府による経営継続補助金の新たな予算化の追い風もあり、農業用管理機械が伸長した一方、天候不順により小型屋外作業機械が減収。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、引き続き大規模な展示会が中止となるなど一般産業用機械も低調だった。
海外は同14.4%増。順調な天候や新型コロナウイルスの感染拡大による在宅時間の増加などを背景に、小型屋外作業機械が主力市場の米州や欧州で伸長した。
営業利益は同0.6%増の98億円。物流費や原材料価格の高騰もあったが売上総利益が同5.6%増加し、計画的な投資案件や人件費増による販管費の増加を吸収した。
売上高・利益ともに第3四半期(累計)の過去最高を更新した。
四半期ベースでは前年同期比、前四半期比で減収減益。

 

(2)セグメントおよび地域別動向

 

20/12期3Q

対売上比

21/12期3Q

対売上比

前年同期比

小型屋外作業機械

72,553

69.7%

79,475

70.7%

+9.5%

農業用管理機械

17,819

17.1%

20,341

18.1%

+14.2%

一般産業用機械

12,029

11.6%

10,892

9.7%

-9.5%

その他

1,630

1.6%

1,726

1.5%

+5.9%

売上高

104,033

100.0%

112,435

100.0%

+8.1%

小型屋外作業機械

12,830

17.7%

13,332

16.8%

+3.9%

農業用管理機械

472

2.6%

610

3.0%

+29.0%

一般産業用機械

710

5.9%

449

4.1%

-36.6%

その他

340

20.9%

380

22.0%

+11.8%

調整額

-4,577

-

-4,934

-

-

営業利益

9,776

9.4%

9,838

8.8%

+0.6%

*単位:百万円。利益の構成比は売上高営業利益率。

 

◎小型屋外作業機械

 

21/12期3Q

前年同期比

売上高

79,475

+9.5%

国内

12,185

-1.7%

海外

67,289

+11.9%

*単位:百万円

 

(国内)
前年の定額給付金効果による需要の反動減に加え、一部地域で夏場に長雨となるなど天候不順の影響により刈払機など
の販売が低迷し減収。

 

(海外)
主力の北米や欧州では物流の停滞により品薄状態が続いているものの、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う在宅時間の増加を背景にチェンソーやパワーブロワの需要が好調で増収。

 

◎農業用管理機械

 

21/12期3Q

前年同期比

売上高

20,341

+14.2%

国内

15,152

+11.5%

海外

5,188

+22.7%

*単位:百万円

 

(国内)
引き続き政府の経営継続補助金により高性能防除機械や省力化・効率化に寄与する畦草刈機、モアが伸長して増収。

 

(海外)
北米は、農産物の市場価格の上昇に伴い農業機械の市況が改善し、大豆収穫機の販売が大幅に伸長し増収。

 

◎一般産業用機械

 

21/12期3Q

前年同期比

売上高

10,892

-9.5%

国内

8,435

-22.8%

海外

2,456

+124.2%

*単位:百万円

 

(国内)
前年伸長したガソリンスタンド向け非常用発電機需要の反動により、発電機販売が大幅に減少したことに加え、引き続き新型コロナウイルスの影響による販売活動の停滞が継続し、溶接機や投光機が減少。

 

(海外)
北米で経済活動の再開に伴い、前期に落ち込んでいた発電機需要が回復し増収。
◎その他

 

21/12期3Q

前年同期比

売上高

1,726

+5.9%

 

*単位:百万円

 

除雪機販売や保守サービス収入が増加した。

 

(3)財政状態

◎主要BS

 

20年12月末

21年9月末

増減

 

20年12月末

21年9月末

増減

流動資産

77,796

89,443

+11,647

流動負債

33,117

39,442

+6,325

 現預金

13,243

13,297

+54

 仕入債務

21,849

26,731

+4,882

 売上債権

27,294

33,145

+5,851

 短期借入金

3,330

2,804

-526

 たな卸資産

35,141

40,579

+5,438

固定負債

14,221

13,664

-557

固定資産

29,355

31,483

+2,128

 長期借入金

11,374

10,742

-632

 有形固定資産

22,635

23,750

+1,115

負債合計

47,338

53,107

+5,769

 無形固定資産

428

630

+202

純資産

59,814

67,820

+8,006

 投資その他の資産

6,291

7,103

+812

 利益剰余金

45,133

51,192

+6,059

資産合計

107,152

120,927

+13,775

負債純資産合計

107,152

120,927

+13,775

*単位:百万円。仕入債務には電子記録債務を含む。

 

売上債権、たな卸資産の増加などで、資産合計は前期末比137億円増加の1,209億円となった。
仕入債務の増加などで負債は同57億円増加の531億円。
利益剰余金及び為替換算調整勘定の増加で、純資産は同80億円増加の678億円。
この結果、自己資本比率は前期末より0.3ポイント上昇し56.1%となった。

 

(4)トピックス

◎新市場区分における「プライム市場」を選択
2021年7月、2022年4月に予定されている新市場区分への移行に関して、株式会社東京証券取引所より、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果を受領し、「プライム市場」の上場維持基準に適合していることを確
認した。
この結果を受け、取締役会において、新市場区分「プライム市場」を選択し、東京証券取引所に対してその旨を申請することについて決議した。
今後は、今年9月から東京証券取引所で予定されている新市場区分の選択申請に係る所定の手続きを進めていく。

 

3.2021年12月期業績予想

(1)業績予想

 

20/12期

構成比

21/12期(予)

構成比

前期比

修正率

対通期進捗率

売上高

131,972

100.0%

140,000

100.0%

+6.1%

+2.9%

80.3%

売上総利益

37,640

28.5%

39,500

28.2%

+4.9%

+1.8%

80.7%

販管費

27,997

21.2%

30,500

21.8%

+8.9%

+0.7%

72.3%

営業利益

9,643

7.3%

9,000

6.4%

-6.7%

+5.9%

109.3%

経常利益

9,402

7.1%

9,300

6.6%

-1.1%

+9.4%

110.6%

当期純利益

6,635

5.0%

6,800

4.9%

+2.5%

+11.5%

113.6%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。修正率は21年8月発表の前回予想からの修正率。

 

 

 

*為替の前提

 

20/12期

21/12期予想

1ドル

107円

110円

1ユーロ

122円

130円

*ドルは(株)やまびこのレート。

 

業績予想を再び上方修正
通期予想を上方修正した。今期3度目となる。主力の小型屋外作業機械事業において北米や欧州での在宅時間の増加を背景に需要が引き続き好調に推移している。また、原材料価格や物流費の高騰に加え、物流の停滞に伴い海外子会社向けの積送品が増加したことによる未実現利益の増加が利益を圧迫したものの、販売数量の増加や為替が想定よりも円安に推移したことにより、利益も前回予想を上回る見通しとなった。

 

売上高は前期比6.1%増の1,400億円の予想。
国内は農業用管理機械が政府の経済政策により伸長するが、一般産業用機械は昨年のインフラ整備に伴う発電機需要の反動減を見込んでいる。
海外は主力の北米や欧州の小型屋外作業機械で旺盛な需要が継続することに加え、北米の農業用管理機械・一般産業用機械も好調に推移し増収を見込んでいる。
営業利益は同6.7%減の90億円を見込む。販売数量の増加や為替差益を見込んでいるものの、原材料や輸送コストの増加に加え、物流の停滞に伴う積送品の増加による未実現利益の増加が利益を圧迫する。
為替レートの前提は、1ドル=110円(修正前105円)、1ユーロ=130円(同120円)に修正。
配当予想も従来予想の38.00円/株から41.00円/株に修正した。予想配当性向は25.0%。

 

(2)今期の重点施策(前回レポート再掲)
次の①~⑤の5つの施策に重点的に取り組んでいく。
①開発組織の再編
◎進捗状況
開発機能は、これまで小型屋外作業機械、農業用管理機械、一般産業用機械とセグメント別であったが、そこに3つの横串と新規開発組織「技術研究所」を加え、開発統合本部の傘の下に再編した。

 

他に、「北米バッテリーR&Dセンターの拡充」「農機セグメントの収益改善タスクフォースの設置」を行った。

 

◎今後の取り組み
再編した開発機能の下、IoTを活用した機能や制御システムなど市場で好評な機能を多機種に展開し、高付加価値な製品開発を進める。
営業組織との有機的な連携による市場との対話を加速させるほか、開発プロトコル・BOM (Bill Of Material:部品表)の整理による開発効率向上、バッテリー製品のグローバルプラットフォーム管理組織の新設、組織最適化の継続などを進める。

 

 

農業用管理機械
安心・安全で操作性の高い製品開発とスマート農業で活躍する補助機の開発やタスクフォースによる収益性の改善に取り組む。メンテナンス、サービスの事業化も目指す。
散布範囲を自動で調整するシステムを広範なモデルに搭載する予定である。

 

小型屋外作業機械
現在は新型コロナ拡大以降、海外を中心に高い需要が継続し、グループ総力を挙げて需要に対応している。
グローバルDC(直流電源利用)製品を来期に上市予定である。引き続きエンジン製品に注力しつつ、DC製品の拡充と環境対応の合成燃料であるeFuelへの取組みによりカーボンニュートラルを進める。
また、環境負荷の低いエンジン製品開発に継続して取り組むほか、グローバルでのブランド戦略を再考する。

 

 

一般産業用機械
省人・省力化への寄与をコンセプトに、建設現場における管理業務の低減など、IoTシステムを活用した機能・製品開発に取り組む。
また、頻発する深刻な自然災害の被害の復旧に貢献する製品群も開発する。
遠隔モニタリング機能付き発電機は、遠隔地の発電機の稼働状況を確認でき、保守点検の省人省力化に寄与する。

 

②経営基盤の強化
◎進捗状況
経営陣のグローバル化・多様性を進めるため、米国子会社社長を執行役員に起用した。
客観性・透明性の確保のため、指名報酬委員会に社外監査役を1名追加した。

 

◎今後の取り組み
2022年1月に人事制度を改訂する予定である。
今期中に執行役員に対する成果型インセンティブを導入する。
執行役員を戦略的に現場へ集中配置する。
取締役・監査役の多様性を確保する。

 

③IT基盤の強化とDX
◎進捗状況
IT基盤・ITネットワークインフラを改修した。引き続きセキュリティ投資を実施する。
ERPの改修のための条件・要件を定義中である。
実際原価の導入準備を開始した。
DX遠隔モニタリングサービスを実証中である。
グループウェアの入替を行った。

 

◎今後の取り組み
年内をめどにグローバルセキュリティ体制を構築する。
計画したBPRを実行した上で、2023年に改修ERPの運用を開始する。
やまびこLINK(仮称)を年内に上市する予定。
汎用ビジネスアプリ・ツールの活用と業務効率の向上を進める。

 

④売上の拡大と収益性の向上
◎進捗状況
売上拡大に向け、プロ向け製品「Xシリーズ」の新モデルを市場投入した。グローバルDC製品の開発は順調に進捗している。
収益性改善のために、原価低減活動を継続している。農機セグメントの収益改善のため、タスクフォースを設置したほか、
蘇州山彦農機を清算して、事業所を集約。生産拠点の戦略的配置を実施した。

 

◎今後の取り組み
売上拡大のためには、引き続きプロ向けを中心とした製品を投入する。来期にはグローバルDC製品を全世界で上市する予定だ。
収益性改善のために、資材・原材料・物流コスト増の売価への転嫁を図るほか、農機製品のポートフォリオ見直しによる黒字化を目指す。また、IoT等を活用した産機製品のシステム化・サービス事業化に取り組む。

 

⑤やまびこグループのサステナブル経営
◎進捗状況
カーボンニュートラルへの取組み、新コーポレート・ガバナンスコードへの対応を進めた。

 

◎今後の取り組み
TCFD対応、GHG排出量の公表に向けた準備を進める。
プライム市場で求められるガバナンスレベルへの準拠を目指す。

 

同社は、事業活動そのものが、自然環境や社会環境への課題解決に貢献すると考えている。企業理念「人と自然と未来をつなぐ」をさらに浸透・深化させることで企業価値の向上とSDGsのゴール達成を目指す。

(同社資料より)

 

 

4.今後の注目点

中期経営計画2022の目標は、「2022年12月期 売上高1,340億円、営業利益80億円」。3度目の業績予想上方修正後の第3四半期時点での進捗率は売上高で80.3%、営業利益で109.3%と、中計目標を1年前倒しで達成する可能性は一段と高くなっている。
世界的なコンテナ不足や原材料価格高騰に加え、新型コロナウイルスの変異株の登場と不透明要因は多いが、第4四半期(10-12月)にどれだけ売上・利益を積み上げていくことができるかを注目していきたい。

<参考1:中期経営計画2022の概要・重点施策>

(1)中期経営計画2022の方針・重点施策

①基本方針
前中期経営計画の基本方針を継続する。

 

強い経営基盤を持ち、持続的に成長することで社会の発展に貢献し、やまびこにつながる全ての人々を幸せにします。

 

革新的な製品を生み出し、グローバルに製造・販売・サービスを展開することで企業価値を高めるとともに、やまびこにつながる人々の多様な価値観に対応します。

 

②セグメント別目標・戦略
市場環境として、小型屋外作業機械においては、長時間・高負荷な作業環境への対応が求められるプロ向け市場では引き続き、エンジン製品の需要が見込まれると見ており、プロ向け市場への一段のシフトを進める。
農業用管理機械・一般産業用機械においては、国内の農業・建設業界では働き手不足と高齢化が進み、省人化、省力化が求められている。

 

◎小型屋外作業機械事業
重点目標としては、① エンジン製品の環境規制を先取りした取組み、② ロボット事業の収益化、③ DCラインナップの充実を挙げている。

 

市場

売上高目標(22/12期)

日本

145億円

海外

774億円

 

(北米)
プロ向け戦略を深化させ、持続的成長を図り、エンジン製品市場における存在感を示し、着実に上昇しているシェアの更なる引き上げを目指す。

 

重点施策としては、高性能なプロ向け製品群である「Xシリーズ」のラインナップを拡充するほか、引き続きデジタルマーケティングを強化する。ソーシャルメディアを使用したプロによる最新製品の評価拡散、ジェネレーション毎のマーケティング最適化、ユーザーの関心が高い野球(MiLB)、サッカー(MSL)広告によるブランド力向上等に取り組む。
主要販売ルートであるホームデポにおいては、重点製品の販売に集中するとともに販売面積の拡大を図るほか、期間限定で効果的なプロモーションを継続する。
また、ロボット製品の米国市場開拓にも注力する。

 

(欧州)
市場に合わせた拡販とブランド認知度の向上を推進する。

 

重点施策としては、プロ向け製品群「Xシリーズ」の拡販、バッテリー製品のラインナップ拡充、排出ガス規制対応のラインナップ充実、ロボット製品の拡販と市場開拓、デジタルマーケティングによる認知度向上等に取り組む。
ロボット製品の更なる性能向上のため、キメシスS.R.L.社を持分法適用会社とし(出資比率24.9%)、ソフトウェアの開発を進める。

 

(日本)
重点施策としては、新型DC製品としてトップハンドルチェンソーを市場投入するほか、効果的なキャンペーンの継続、省力化・効率化製品(ロボット芝刈機の発売)の推進、ホームセンター販売の強化などに注力する。

◎農業用管理機械事業

市場

売上高目標(22/12期)

日本

162億円

海外

46億円

 

具体的には、開発・生産・営業が一体となった生産コストの低減と収益性の改善、販売ルート拡大、効果的なキャンペーンの継続、スマート農業への対応等に取り組む。

 

◎一般産業用機械事業

市場

売上高目標(22/12期)

日本

137億円

海外

54億円

 

(日本)
防災・減災、国土強靭化インフラ投資の流れを背景に需要を確実に取り込むために、効果的なキャンペーンの継続やレンタル会社向け販売強化に取り組む。

 

(海外)
北米では広域レンタル会社への開拓本格化、ロシアでは資源市場向けに溶接機の拡販、アジア・アフリカでは、新規販売網の構築に取り組む。

 

③重点施策
◎総原価低減と製品品質の向上
更なる原価低減のための生産効率の改善を継続する。
製造リードタイムの短縮と製品在庫の削減につながる新生産方式の確立、「絶対品質」を実現するための継続的な品質管理の改善を挙げている。

 

◎サービス力の強化
収益力向上につながるサービス力の強化に取り組む。
収益性の高いサービス部品やアクセサリーの充実と拡販、各製品のサービス資料の充実や研修体制の強化、トータル物流コスト削減と在庫圧縮等に注力する。

 

(2)設備投資・研究開発費・減価償却費

(同社資料より)
設備投資に関しては、前中計期間の総額104億円を上回る、133億円を計画(20年12月期終了時点で修正)。
経費コントロールの中でも研究開発投資は計画通り実行する。

 

(3)数値目標

2022年12月期「売上高1,340億円、営業利益80億円」を目標としている。
新型コロナウイルス感染症の状況を注視しつつも現段階では継続して取り組む。

(同社資料より)

(同社資料より)

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

7名、うち社外2名

監査役

4名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年7月26日

 

<基本的な考え方>
 当社は、当社グループ全体の最適化戦略、監督機能および当社グループのグローバルな経営戦略や成長のための資源配分など、グループ全体の企業価値向上のための諸施策を積極的に推進してまいります。
 そのために当社は、企業理念、行動規範に基づく健全な企業風土を構築し、当社グループのコンプライアンスおよびリスク管理を柱とするコーポレート・ガバナンス体制の充実・強化に取り組み、地域社会、株主の皆様、顧客および従業員など、全ての利害関係者から価値ある企業グループとして評価されるよう、健全で透明性の高いグループ経営を徹底してまいります。

 

 当社の取締役会は社外取締役2名を含む7名の取締役で構成され、当社グループの経営方針、経営戦略およびグループ会社の経営指導・監督に関わる重要な意思決定を行います。取締役は取締役会において、他の取締役の職務を監視、監督するほか、自己の職務の執行状況について取締役会に定例的に報告します。また、取締役会の決定事項を的確かつ迅速に実践するため、経営戦略会議において十分な審議を行います。

 

 当社は監査役制度を採用し、常勤監査役2名と社外監査役2名の計4名で監査役会を構成します。
 監査役は別に定める監査役会規則および監査役監査基準に基づき、取締役会、経営戦略会議、執行役員会ならびに社内の重要会議に出席し、取締役の業務執行の監査を行うとともに、会計監査人・内部監査部門と連携しつつ、監査の実効性の確保を図ってまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則のうち、実施しない原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則4-11-1.取締役会の構成等に関する考え方】

社取締役会は、知識・経験・能力をバランス良く備えた人材を有していると判断しておりますが、今後もジェンダーを含む多様性の確保に向けた人材を計画的に育成してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

【原則1-4政策保有株式】

(1)政策保有に関する方針について 当社は、国内外の緑地管理、農作業、建築・土木、その他幅広いフィールドで事業を展開しております。そのため、各事業に関わる多くの企業との協力関係が必要であり、中長期的な企業価値向上に資すると判断した場合については、株式の政策保有を行い、保有の意義が希薄と判断した場合については、相手先企業との対話を行い、市場への影響等を総合的に考慮のうえ、売却・縮減していくことを方針としております。 当社は毎年、取締役会で銘柄毎の政策保有株式について協力関係の維持・強化等の政策保有の意義や経済合理性等を具体的に検証し、保有継続の可否および保有株式数を見直します。 なお、2015年のコード適用以降、検証の結果、25銘柄から17銘柄に減少させております。

(2)政策保有に係る議決権の行使基準について 政策保有株式の議決権の行使については、企業業績のほか、適切なコーポレート・ガバナンス体制の強化や株主価値の向上に資するものか否か、また、当社への影響等の観点を踏まえ、総合的に賛否を判断し適切に行使します。また、提案の内容等について必要に応じて相手先企業との対話を行います

【補充原則4-11-3.取締役会の実効性評価】

当社は、取締役会の運営改善を図るため、取締役会全体の実効性について毎年、評価を実施しております。 2020年度においては、取締役および監査役に対し、個別のアンケートによる分析・評価を実施し、全体としては、取締役会はその役割や責務を実効的に果たしていることが確認されました。 一方、取締役会の構成や運営の一部において課題が認識されましたので、今後の取締役会において取り組むべき対応案を議論いたしました。引き続き取締役会の実効性をさらに高めていくための取組みを行ってまいります。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

 当社は、株主・投資家との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針として、以下の施策を実施しております。

(1)会社情報の公平かつ適時適正な情報開示により、当社への理解促進を図るとともに持続的な企業価値向上に資するよう、経営企画担当役員をはじめIR担当者が株主・投資家との積極的な対話に取り組んでおります。

(2)経営企画室を中心に、総務部や経理部、営業部門などの対話を補助する社内の関連部門は、建設的な対話の実現に向け、開示資料の作成・審査や必要な情報の共有など、積極的に連携を取りながら業務を行っております。

(3)株主・投資家との個別面談以外の対話の手段として、定期的に機関投資家向け決算概要説明会や事業所見学会などを実施しており、株主に対しては、当社のトピックスや業績をまとめた冊子を配布しております。また、株主・投資家からの意見・要望などをもとに、当社ホームページの内容充実を図っており、今後はニュースリリースの拡充を図っていきたいと考えております。

(4)対話において把握した株主の意見などは、必要に応じて、会議体での報告やレポートの配付などにより、取締役および関係部門へフィードバックし、情報の共有化を図っております。

(5)当社は、インサイダー取引の未然防止を図るために「内部者取引管理規定」を制定し、新入社員研修や社内報でインサイダー取引の記事を掲載することなどにより、社内啓蒙を促進するなど、内部者取引に関する情報の管理徹底を図っております。

 

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