ブリッジレポート:(3937)Ubicomホールディングス 2022年3月期第2四半期決算
青木 正之 社長 | 株式会社Ubicomホールディングス(3937) |
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企業情報
市場 | 東証1部 |
業種 | 情報・通信 |
代表取締役CEO | 青木 正之 |
所在地 | 東京都文京区小石川2-23-11 常光ビル9階 |
決算月 | 3月末日 |
HP |
株式情報
株価 | 発行済株式数 | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
2,920円 | 11,832,000株 | 34,549百万円 | 24.2% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
未定 | - | 68.68円 | 42.5倍 | 249.28円 | 11.7倍 |
*株価は11/26終値。発行済株式数、DPS, EPSは22年3月期第2四半期決算短信より。ROE, BPSは前期実績。
業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | DPS |
2018年3月(実) | 3,208 | 322 | 355 | 212 | 19.08 | 0.00 |
2019年3月(実) | 3,555 | 564 | 591 | 368 | 32.57 | 5.00 |
2020年3月(実) | 4,038 | 707 | 715 | 533 | 46.17 | 5.00 |
2021年3月(実) | 4,198 | 919 | 877 | 623 | 53.25 | 7.00 |
2022年3月(予) | 4,963 | 1,079 | 1,104 | 811 | 68.68 | 未定 |
*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。「収益認識に関する会計基準等」を22年3月期第1四半期期首から適用している。
株式会社Ubicomホールディングスの2022年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期第2四半期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.中期ビジョン実現に向けた取り組み
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 22年3月期第2四半期の売上高は前年同期比8.4%増の22億68百万円。グローバル事業は主要ピラー顧客からの売上とソリューションの受注獲得が引き続き堅調。メディカル事業も主力商品Mightyシリーズのパッケージ販売が順調。営業利益は同10.7%増の4億35百万円。増収もグローバル事業も戦略的投資などで粗利率は1.2ポイント低下したが、売上総利益は同5.4%増加。販管費が同1.0%の増加にとどまり、2ケタの増益。経常利益は同26.7%増の4億78百万円。各段階利益は第2四半期の過去最高を更新した。
- 22年3月期の売上高は前期比18.2%増の49億63百万円、営業利益は同17.4%増の10億79百万円、経常利益は同25.9%増の11億4百万円の予想。営業利益、経常利益は今期も過去最高を更新する見込み。引き続き「戦略的投資」を進めるが、これを吸収したうえで2桁の増益を目指す。配当は現時点では未定としているが、今期も利益水準に応じて適切な株主還元を実施する考えだ。
- 今期もメディカル事業の収益性向上が著しい。売上高は収益率の低い案件を絞り込みながらも前年同期比9.6%増、Mightyシリーズが病院経営効率化という需要を確実に取り込み、直販やクロスセルの拡大および価格改定により営業利益率は50%を超え60%に近付いている。既存事業であるMightyシリーズに加え、保険ナレッジプラットフォームも各種機能が実装され始めた。
- 同社では、第2成長フェーズの4つのテーマの一つに「メディカル領域」を挙げ、フィリピン拠点を活用したメディカルエンジニアの育成および次世代型メディカルエンジンの開発強化に注力している。M&A等のレバレッジ戦略、新たなプラットフォームの立ち上げ、SaaS/リカーリングモデルの積み上げがいつごろから具体化、収益寄与してくるのか、大いに注目したい。
1.会社概要
人材不足、医療逼迫等の社会課題の解決に資するITソリューションを創造する、唯一無二のビジネスイノベーションカンパニー。医療、金融/公共、自動車、製造業およびロボティクス等の領域を戦略市場と位置付け、広範なITソリューション・サービスを提供。
フィリピンの開発拠点を中心に約1,000名のエンジニアを有し、ソフトウェア開発からAI等の先進ソリューション開発を通じて、国内のIT人材不足の解決やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するグローバル事業と、医療機関向け経営支援ITソリューションのリーディングカンパニーとして、レセプト点検、医療安全支援、クラウドサービス等の医療最適化ソリューションを手掛けるメディカル事業の二本柱で展開。スクラップ&ビルドによる事業の再構築を経て、高収益ビジネスモデルを確立。さらには、リーディングカンパニーや成長企業との戦略的提携やM&Aを通じて事業成長の加速を図るWin-Winインベストメントモデルの推進と、プラットフォームビジネス等の既存事業とは異なる軸足の新規事業の早期確立を目指す。
【1-1沿革】
元より起業意欲が旺盛であった青木 正之氏は、2005年3月に株式会社ワールドの新規事業子会社である株式会社WCLの代表取締役社長就任後、国内外で様々な新規事業のシーズを探していると、訪問したフィリピンで多くの若く優秀なエンジニアが活気に満ちて仕事をしていることを知る。折から日本企業において社内業務のIT化が進行する中、フィリピンでシステム開発を行うことで幅広いシステムソリューションを低コストかつグローバルに提供すれば需要を確実に取り込みことができると考え事業化を決意。2005年12月に株式会社AWS(現:株式会社Ubicomホールディングス)を設立した。
ICT化の進展というフォローの風に加え、優秀なトップエンジニアを多数擁するフィリピン開発拠点の競争優位性を武器に顧客開拓が順調に進み業容は拡大。2012年に医療レセプトシステム最大手の(株)エーアイエスを子会社化。2016年6月、東証マザーズに上場。2017年7月に(株)Ubicomホールディングスに社名変更後、同年12月には東証1部に市場変更した。
【1-2 経営理念・ビジョン】
「人」×「技術」で革新的なITソリューションを創造する唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーとして以下3つの経営理念を掲げている。
1.Unique beyond comparison 時代の先を見据え、社会課題の解決に資するITソリューションを創造する、唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーであり続けます。 |
2.Go Global Ubicomグループのビジネススキームを、米国およびアジア各国を中心にグローバルに展開していきます。 |
3.Win-Win お客様、協業先、そして全てのステークホルダーの皆様との相互発展を通じて、Ubicomグループの「仲間」を増やしてまいります。 |
「技術」「人材」「知財」「先見性」「パートナーシップ」の5つのコアアセットを基にビジネスイノベーションを創出し、少子高齢化、医療逼迫、IT人材の枯渇、DXといった課題を解決することを自社の社会的な責務・存在意義であると考えている。
(同社WEBSITEより)
【1-3 事業内容】
1-3-1 概要
20年以上の実績を誇る組込みソフトウェア開発、アプリケーション開発、テスト、品質保証のサービスに加え、国際化や少子高齢化など社会構造の変化や、医療生命科学・ロボット・人工頭脳の分野における技術革新を新規ビジネス創出のチャンスと捉え、戦略市場と位置付ける「医療」「金融/公共」「自動車」「製造/ロボティクス」分野において、「AI:人工知能」、「Analytics:分析」、「Automation/RPA:ソフトウェアテスト等の実行・管理の自動化」領域を中心とした同社独自のコアソリューションを開発し、多くの顧客企業に提供している。
1-3-2 同社を取り巻く事業環境
人材不足解決支援や医療最適化支援等の社会課題の解決に資するITソリューションの提供による成長を追求する同社を取り巻く事業環境は以下の通り。グローバル事業、メディカル事業(事業内容詳細は後述)ともにフォローの風が吹いている。
(同社資料より)
(1)国を挙げたデジタル化推進、深刻化するIT人材不足
政府がデジタル化に向けた旗振りを本格化するなか、経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年3月発表)によれば、付加価値の創出や革新的な効率化を通じて生産性向上等に寄与できるIT人材の確保が重要となっている一方で、少子高齢化が進む中、人材確保が難しくなっており、IT 需要の伸びを「低位」「中位」「高位」とケース分けした際、「高位」の場合、2025年に58.4万人、2030年に78.7万人の国内IT人材が不足すると試算している。
(2)膨張を続ける国民医療費とレセプト審査の厳格化、医療経営の逼迫、医療従事者の働き方改革
2018年度の概算医療費(労災・全額自費等の費用を含まない。医療機関などを受診し傷病の治療に要した費用全体の推計値である国民医療費の約98%に相当)は42.6兆円と過去最高を記録した。
高齢化の進展に伴い医療費は増大傾向にあることから各健康保険の財政状況は悪化が続いており、保険料負担軽減に向け、国はレセプト審査の厳格化等による医療費適正化政策を進めている。
(レセプトとは?)
現在の保険診療制度の下では、医療機関が受け取る診療報酬のうち、患者が支払う医療費は最大3割で、7割以上は健康保険組合、共済組合、市区町村などが負担する。
患者が受けた診療について、医療機関がこれら公的機関に保険負担分の支払いを請求するための医療診療の明細書をレセプトと呼び、レセプトを発行するレセプト業務は医療機関の収益の大部分を支える大切な業務である。
提出されたレセプトは、審査支払機関で厳重な確認作業が行われ、レセプトの記載内容に誤りがあると、審査支払機関からレセプトを差し戻されたり(返戻)、診療報酬点数を減点されたりすることがある。返戻された場合には、レセプトを精査・修正して、再提出しなければならず、適切なレセプトを提出することは効率的な医療機関経営を行うにあたり極めて重要な作業である。2009年には、医療機関は原則としてオンラインによるレセプトの請求が義務付けられるようになった。
(医師等の働き方改革)
日本は超高齢社会の進行とともに医療ニーズの急速な拡大、多様化、高度化が進む一方で、医師の不足や偏在、長時間労働等の業務負荷の問題が顕在化している。
深刻化の一途を辿る医師への負担を軽減し、医療現場における働き方改革を推し進めるべく、2024年4月より医師の時間外労働に対する罰則付き上限規制が施行される。その為、医療機関においては医師等の業務の効率化・最適化への取り組みが待ったなしの状況である。
コロナ禍を受けて医療提供体制の逼迫や病院経営の悪化が重大な社会問題として表面化するなか、審査支払機関におけるレセプト審査の厳格化や医療従事者の働き方改革の動きも重なり、レセプトチェックの等の業務効率化による収益改善、医療の安全と質の確保、働き方改革への対応は医療機関経営における重要課題となっている。
(3)急成長が見込まれる医療クラウド市場
2010年2月に一部改正された、厚生労働省通知「「診療録等の保存を行う場所について」により、民間企業が保有するデータセンターへの医療情報の外部保存が認められ、民間企業にとって医療クラウドサービスを提供しやすい環境が整った。
アプリケーションプラットフォーム、サーバがネットワーク内に存在するクラウドサービスは、医療分野においては、電子カルテ、医療用画像管理システム、地域医療連携システム、在宅療養支援サービス、遠隔画像診断サービス、治験向けサービス、調剤薬局向けサービスなど、様々なサービスにおいて活用されると言われている。
特に、今日の医療機関におけるデータ量の急速な増大、およびネットワーク活用の広まりの中にあって、クラウドサービスには「他施設との連携が容易」、「自前で保守管理をする手間がない」、「価格が安い」、などのメリットがあることに加え、2011年3月の東日本大震災の際に被災地の多くの紙カルテが失われた事態を受け、災害対策という面からも医療クラウドへの期待が高まっている。更に今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴う医療現場逼迫は、オンライン診療や電子カルテの必要性を強く認識させることとなった。
個人情報保護の観点から安全性の問題を指摘する声もあるものの、規制と緩和のバランスの中で、社会的課題解決に向けたソリューションとして今後大きく発展していくものと思われる。
1-3-3 注力する事業領域
新しい時代を切り拓く「3A」分野を戦略的な技術領域と位置付け、これらをベースとした事業拡大に注力している。
分野 | 現状及び今後 |
AI | 音声AI、チャットボット(自動会話プログラム)に係る開発を終え、横串的展開を推進。今後は自動車のSDL(カーオーディオとスマートフォンを連携させるスマートデバイスリンク)に音声AIを用いた車載向けAI機器のソリューション開発に注力する。加えて自動走行車搭載デバイスへの応用も見据えており、本格普及期には、大きな利益を持続的にもたらすストックビジネス化を目指している。 |
Analytics | 日本におけるNo.1レセプト点検ソフトのMightyシリーズや分析ツールの開発フェーズを終え、データの質・量の向上を図り、医療関連のビッグデータ分析を行うエンジンをつくり、今後は新たなマネタイズモデル実現に向けたフェーズへ移行。 その他、工場や船舶会社などに向けた予知保全のソリューションを提供。 |
Automation/RPA | ソフトウェア自動化のエンジンを確立しており、ロボティックス(ロボット工学)・RPA(ロボットによる業務自動化)を推進。 大手ロボティクス、FAメーカーにリーチしたマーケットの拡大を目指している。 |
1-3-4 セグメント
報告セグメントは、ITソリューション・サービスを金融/公共、医療、自動車、製造/ロボティクス等の幅広い市場に向けて提供するグローバル事業と、レセプト点検ソフトをはじめとする医療機関向け経営改善ソリューション等を手掛けるメディカル事業の2つ。
(同社WEBSITEより)
(1)グローバル事業
◎概要
フィリピンの100%子会社であるAdvanced World Systems, Inc.およびAdvanced World Solutions, Inc.を主要開発拠点に、金融/公共、医療、自動車、製造/ロボティクスを重点対象業種として、組込みソフトウェア開発、業務アプリケーション開発、保守、テスティング等を行っている。
さらには同社が戦略的技術領域と定義する「3A」(「AI:人工知能」、「Analytics:分析」、「Automation/RPA:自動化」)技術を活用し独自のコアソリューションを展開しているが、その高度なソリューション開発力の源泉が、約1,000名のトップクラスのエンジニアを擁するフィリピン開発拠点であり、強力な競争優位性を生み出している。(詳細は【1-4 特徴と強み】を参照)
◎顧客
顧客企業は金融、公共、医療、自動車、製造、サービス業等と多岐にわたる。
前述のように日本ではIT人材不足が深刻化していることに加え、開発・運用にかかるコスト削減ニーズが根強いが、約1,000名の日本語、英語に堪能なIT人材を擁する同社はこうしたニーズを着実に取り込んでいる。
加えて多数の国内大手顧客との長年に亘る豊富な開発実績は同社に対する信頼・評価を一段と高めている。
(2)メディカル事業
◎概要
100%子会社である株式会社エーアイエスが、医療従事者の働き方改革、医療機関の収益改善、医療の安全と質の向上に資する、医療機関向けソリューションパッケージの開発・販売、クラウドサービス、データ分析ソリューション、開発支援、コンサルティングを手掛けている。
医療現場の業務効率を改善し経営品質を高める「Mightyシリーズ」製品は、その豊富かつ有用な機能が高く評価され、「働き方改革」という追い風もあり、ここ数年で毎年1,300以上の新規ユーザーを獲得しており、2021年3月末時点では、病院(20床以上)の約40%(3,311施設)、クリニック(19床以下)の約14%(14,141施設)、合計17,452施設が導入するトップシェア製品である。
◎主力製品・サービス
①レセプト点検ソフト「Mighty Checker®」
レセプト点検の効率化と精度向上が求められる中、1999年にレセプト点検ソフト「Mighty Checker®」を他社に先駆けてリリースした同社は、その有用性が高く評価されレセプト点検ソフトのリーディング企業としてのポジションを確立。2019年3月期にはレセプト点検にAIを導入した次世代レセプトチェックシステム「Mighty Checker® EX」をリリースし、その地位を揺ぎ無いものとしている。
主として以下のような機能により医療機関のレセプト業務を強力にバックアップしている。
製品名 | 特長 |
Mighty Checker® EX | ・2018年秋にリリースしたMighty Checkerシリーズの最上位製品 ・従来製品「Mighty Checker PRO」において好評の機能やユーザビリティを更に進化させ、レセプト点検にAIを導入した次世代レセプトチェックシステム |
Mighty Checker® PRO Analyze | ・医科レセプト点検ソフトウェアの上級システム ・点検結果を分析し、効率的な点検業務を提案 ・査定・返戻対策に加え、レセプト点検結果を活用した、より効率的な点検結果の活用が可能 ・査定返戻データ取り込みによりスムーズなデータベース修正を実現し、査定返戻の抑止を強化 |
Mighty Checker® PRO Advance | ・医科レセプト点検ソフトウェアの普及型システム ・病名・医薬品・医療行為の適応症を点検 ・査定・返戻対策の点検(突合点検・縦覧点検・算定日チェック等) ・算定支援機能による点検(指導料等で算定できる可能性がある項目をチェック) |
Mighty Checker® Cloud | ・クラウド型レセプト点検サービスで、クラウド型電子カルテとの連携が可能 ・院内システムのクラウド化対応の他、運用と導入のしやすさから業務効率化、リモートワーク、端末を選ばないBYOD対応、BCP対策にも ・今後、クラウド型電子カルテへの組込みを強化 |
②オーダリングチェックソフト「Mighty QUBE® PRO」
Mighty Checker®のデータベースを活用し、疾患と診療行為・投薬の適応性、用法用量等を処方オーダー時にリアルタイムで点検し、不適応のものや、病名が漏れているケースへエラーを出すシステム。医療指示の誤入力・誤操作を防ぐことで、医療事故(ヒヤリ・ハット)や査定(減額)を防止し、医師が最も重要な診療行為に集中できるよう支援する。医療安全・質の向上と業務効率化の両立を追求することで、病院の財務・経営面の改善をサポートするとともに、病院と患者の両方に利益をもたらす点が高く評価され、多くの医療機関での導入が進んでいる。
◎導入事例
医事課職員6名の病院における導入事例を挙げると、導入後1カ月で診療分レセプト月間作業時間が半減したことに加え、算定支援機能により売上高が増収となった。
今後、職員が操作に慣れるに従い作業時間が更に短縮し、過去データの蓄積とAI検知により点検精度は更に向上していくことが見込まれるという。
③「備えの医療クラウドSonaM(そなえむ)」
医療機関のBCP対策と医療データ保全を、国内屈指の高度なセキュリティ基盤で支えるクラウドサービス。
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、オンライン診療の必要性がクローズアップされるなど診療方法の多様化が進むとともに、医療デジタル化・クラウド化におけるセキュリティの必要性が高まっている。
また、災害時における役割が一段と大きい医療機関においては、院内の医療データの安心安全な保管先と保管方法の確保が急務となっている。
こうした環境下で逼迫した医療提供体制を支援することを目的に開発された「SonaM(そなえむ)」は、レセプトデータ、カルテ、検査画像などの医療データをセキュアクラウドにより保全するもの。
医療データをクラウドで扱うためには、厚労省、経産省、総務省の3省が提唱する3つの医療情報セキュリティガイドラインの総称である「3省3ガイドライン」に準拠することが必要だが、NTT東日本の高度なクラウドセキュリティ基盤を採用することによって万全の態勢を整えている。
また事業規模の異なる医療機関毎の多様なニーズに対応できるよう、複数の段階的な利用プランを用意している。
Mightyシリーズに次ぐ新たな高収益サブスクリプションモデルであり、Mightyシリーズとのクロスセルや、直接取引の拡大によるユーザー単価向上を目指している。
④保険ナレッジプラットフォーム
保険業界における保険金支払審査業務に必要な情報や知識を一つのシステムに統合した、業界初(Ubicom調べ)の業務効率化支援プラットフォーム。
(概要・特長)
これまで保険会社では、顧客からの保険金請求に対する審査業務において、診療行為、医薬品、傷病名、先進医療、法改正など、散在した情報を網羅するために多大な労力が必要であった。
同社の18,000を超える医療機関ユーザーへの提供実績に裏打ちされた独自の医療データベースを利用した保険ナレッジプラットフォームを活用することで煩雑な審査業務を大幅に効率化することができる。
保険加入者が退院した後、保険会社や病院との書類手続きを経て給付金を受給するまでに現在は2-4週間、保険会社も支払審査から支払いまで約2-3週間かかっている。
「保険ナレッジプラットフォーム」はまずフェーズ1では、保険会社の上記必要期間を最短で1日程度に短縮する。
次のフェーズ2では、保険加入者の手続きが数分で完了することになる。
(マネタイズ構想)
Mightyシリーズを超える高単価・高収益サブスクリプションモデルを目指している。
収益は、基本初期費用、基本接続使用料、オプション初期費用、オプション接続使用量から構成されるが、同社では多様なニーズに対応して複数のオプションを開発し、この積み上げにより高収益を実現する考えだ。
(同プラットフォームの強み)
1.知財
20年以上に亘って18,000を超える医療機関ユーザーへの提供実績に裏打ちされた独自の医療データベースを活用し、保険審査向け診療や医薬品コードや先進医療情報などを独自に搭載している。
また、AI開発の知見も寄与している。
2.ビジネスモデル
高単価、月額制でかつクラウドベースの次世代型サービスモデルである。
また開発次年度から維持コストのみで横展開が可能であり、潜在的な将来価値は巨額である。
加えて、ITを活用することで、保険請求手続きの負荷軽減、保険金受給までの日数短縮を実現するとともに、保険会社の事務負荷の大幅軽減を目指す「生命保険エコシステム構想」への参画により市場浸透の加速が期待できる。
また、サービスのブラッシュに向け同社のフィリピン開発リソースを活用できる点も大きなメリットである。
3.市場性
同社では業界初のブルーオーシャン市場への参入であると考えている。
1社あたり年間数百~数千万円の利用料で潜在的には約100社の顧客・市場を有している。
(今後の展開)
メディカル事業における新たなサブスクリプション型メニューの一つとして、保険業界全体への保険ナレッジプラットフォームの横展開を図るとともに、保険業界向けソリューションの更なる進化に向けて、AI(人工知能)等の先進技術を搭載した支払審査検索システムの開発と実装を目指す。更には、昨今の感染症対策を背景とした「対面サービス」から「非対面サービス」への転換ニーズを追い風に、保険業を含む金融サービス全体のDX化およびAI化に伴う開発需要の取り込みに注力する。
また、2020年11月には、「保険ナレッジプラットフォーム」の横展開として、「生命保険エコシステム構想」に参画することとなった。
生命保険エコシステム構想は、ITを活用することで、保険請求手続きの負荷軽減、保険金受給までの日数短縮を実現するとともに、保険会社の事務負荷の大幅軽減を目指すもの。
非定型AI-OCRの技術を持ち保険販売事業、ソリューション事業、システム事業を手掛ける株式会社アイリックコーポレーション(東証1部、7325)とソフトウェア販売や技術サポートを手がける株式会社アシストが中核となっている。
この構想の展開・拡大に向け「保険ナレッジプラットフォーム」における保険金支払業務自動化技術が高く評価され、構想強化企業第1号として参画することとなった。
「保険ナレッジプラットフォーム」の好調な引き合いを背景に、ユーザー目線の機能の拡充と訴求力の強化に向けて、基本機能である保険金支払審査業務向け「医療情報検索エンジン」に加え、複数のオプション実装を準備している。
Ubicomにとって新しい取り組みである保険業界向けサブスクリプション型プラットフォームの提供を、新たなコア事業の一つとして育成するために、保険会社とその顧客の相互メリットや協業先企業とのシナジーの創出、技術革新およびビジネスモデルの確立を図る。
また、21年3月期第3四半期より、「保険ナレッジプラットフォーム」を含む保険業界向け先進ソリューション開発及びDX推進の一層の強化に向けて、同社グループが有する約1,000名のグローバルIT人材の活用を拡大する。
加えてAI等の先端領域に特化した次世代技術者育成の為の人材開発投資を進め、将来を見据えた企業価値の更なる向上に取り組む考えだ。
【1-4 Ubicomの特徴と強み】
1-4-1 フィリピンの開発拠点を中心に、約1,000名のエンジニアを育成・活用
沿革でも触れたように、青木社長が現地視察を重ねた中で開発拠点として最適と判断したフィリピンは、同社競争優位性の源泉であると同時に今後の成長戦略を牽引する極めて重要な役割を担っている。
前身を含め25年以上に亘る開発実績を有するフィリピン開発拠点の主な特徴は以下のとおりである。
①グローバル開発の最適地「フィリピン」
フィリピンは若年層中心に長期的な人口増加が続く人口ボーナス期に入っていることなどから平均して年6%近い経済成長を続けており、特に若年層は活力にあふれ、上昇志向が強まっている。
加えて英語が公用語であるためグローバルで活躍できる素地が整っていること、ITリテラシーが高いこと、ASEANの中心に位置しアクセスも良好であることなどから、グローバルベースでのIT開発拠点として最適である。
②超一流の人材を採用
フィリピンの開発拠点を中心に、約1,000名という多くのエンジニアが在籍しているが、「量:人数」のみでなく「質:優秀さ」においても他に例を見ないレベルの高さを誇っている。
長年の実績に裏打ちされ、フィリピン開発拠点に対するエンジニア志望者の評価は高く、入社希望者は例年数千名に上るが、採用されるのはわずか約4%と極めて狭き門となっており、まさに超一流の人材を獲得することができている。
③独自の教育・研修プログラムによる戦力化
超一流の人材を採用しても、それだけではトップクラスのエンジニア集団を構築することはできない。
戦力となる真のトップエンジニアに育て上げるための研修・教育制度こそが、他社が容易にキャッチアップすることのできない強力な差別化要因の一つである。
同社グループは今から18年前の2003年4月、フィリピンに自社研修センター「ACTION」を設立し運営を開始した。
「ACTION」における研修プログラムは同社が自社開発したもので、IT基礎概念、先進技術、対人ソフトスキル、日本語の4カテゴリーで構成され、PhilNITS(フィリピン国家情報技術者試験)と日本語検定4級の合格を目標に5カ月間の研修を実施する。
研修終了後、研修生はボードメンバーに対して成果を発表し面接評価を経て初めてプロジェクトへの参加がアサインされる。優秀な学生であっても実際に仕事を任されるまでの道のりはけっして楽なものではないが、こうしたハードルを乗り越えたプログラム卒業者は高度な技術力と日本語環境における業務遂行能力を有することから日本のIT市場において圧倒的な優位性を発揮しており、同社成長の強力なエンジンとなっている。
また、同社ではチャレンジングで最先端を行くプロジェクトが常に多数稼動しているため、やる気に溢れた優秀な人材に活躍の場を与えており、この点も同社グループが就職先としてフィリピンにおいて大きな人気を得ている要因の一つでもある。
④ソリューション開発力の更なる高度化・強化
既に他社を凌駕する高いソリューション開発力を有する同社だが、そのアドバンテージを更に強固なものとすべく2017年に設立したのが「先端技術開発センター」である。
同センターでは約数十名の先端技術者がAIやビッグデータ分析に特化しており、そのネイティブな英語力を活かし世界的なトップ研究者に繋がることで最先端技術にアクセスできる体制を構築している。
これにより短期間かつ低コストで顧客ニーズにマッチした高付加価値プロトタイプ(試作品)を作成し、日本の大手顧客に直接提供することが可能となったため、同社の提案力は飛躍的に向上している。
⑤外部から高評価を獲得
高いハードルを越えてプロジェクトに参画することができたトップエンジニア達の活躍は外部から高く評価され数々の受賞歴に結びついている。
*2020年、フィリピン子会社がフィリピン貿易産業省等よりソフトウェア開発サービス輸出優秀賞を受賞。
*2020年、エンジニア2名がアジア版情報処理技術者試験のトップ合格者の中でも特に優秀なアジアトップガン人材に選出。
*2017年、「国際ICTアワード」においてフィリピン子会社がフィリピン全土NO.1のベストソフトウェアカンパニーを受賞。
*自社研修プログラム「ACTION」がフィリピンeサービスアワードにおいて企業プログラム部門賞等を6年連続で受賞。
1-4-2 強固な顧客基盤
グローバル事業、メディカル事業ともに圧倒的な競争優位性を武器に強固な顧客基盤を構築している。
成長戦略における、サブスクリプションモデルによるストック型ビジネスの拡大、Win-Winインベストメントモデルにおける成長企業と顧客企業のマッチングなどにおいてもこの強固な顧客資産は大きな役割を果たすものと思われる。
1-4-3 グループ内外を問わない仲間意識、オーナーシップが根付いた企業風土
青木社長は海外を含めた従業員およびその家族を「仲間」と位置付け、全員が笑顔を絶やさず常に明るく前向きに、現状に満足することなく1人1人がオーナーシップを持って時代を先取りすることによって飛躍する企業グループであることも同社グループの強みの一つであると考えている。
このフラットな関係性を重視する仲間意識は、グループ内だけではなく、グループ外に対しても向けられている。
同社の重要な成長戦略の一つである「Win-Winインベストメントモデル」はリーディングカンパニーや成長企業との協業・戦略的提携を推進し、既存事業の成長の加速と新規事業の創出を図るものだが、企業規模の違いや株主と出資先といった関係を超え、ともに成長を目指す「仲間」であるとの意識を根底に置いていることが、提携先企業に向けたモチベーションの一段の向上に繋がると期待できる。この点は一般的なVCやCVCとの大きな違いであろう。
【1-5 ROE分析】
| 15/3期 | 16/3期 | 17/3期 | 18/3期 | 19/3期 | 20/3期 | 21/3期 |
ROE(%) | 4.9 | - | 12.2 | 17.7 | 24.7 | 27.3 | 24.2 |
売上高当期純利益率(%) | 1.24 | -0.16 | 3.76 | 6.63 | 10.37 | 13.21 | 14.86 |
総資産回転率(回) | 1.33 | 1.46 | 1.44 | 1.36 | 1.27 | 1.17 | 1.02 |
レバレッジ(倍) | 2.97 | 2.62 | 2.25 | 1.96 | 1.87 | 1.76 | 1.60 |
*総資産回転率及びレバレッジは期首・期末平均を使用。有価証券報告書・決算短信を元に(株)インベストメントブリッジが計算。
総資産回転率、レバレッジは低下傾向にあるが、マージン改善が続いている。今期の予想売上高当期純利益率は16.3%。
引き続き高水準のROEを維持するであろう。
【1-6 株主還元】
同社は株主への利益還元を経営の最重要課題の一つとして認識しつつも、これまでは将来の事業展開と経営体質の強化のための内部留保の拡充を優先してきたが、昨今の受注の拡大及び堅調な業績の進捗に加えストック型の高収益モデルの基盤を確立したことを踏まえ、19年3月期、初めて5.00円/株の配当を実施。前21/3期は前期比2円増配の7.00円/株とした。配当性向は13.1%。
今後はサブスクリプション事業モデルへの転換による安定的なキャッシュ・フローの創出をベースに、業績の成長と戦略的投資のバランスを取りながら、将来的には配当性向30%以上を目指して株主還元策の拡充にも注力する考えだ。
【1-7 ESGに関する取り組み】
「技術」「人材」「知財」「先見性」「パートナーシップ」の5つのコアアセットを基にビジネスイノベーションを創出し、少子高齢化、医療逼迫、IT人材の枯渇、DXといった課題を解決することを社会的な責務・存在意義であると考えている同社のESGに関する取り組みは以下の通り。
グローバル事業 | *顧客DX(AI/分析/自動化/クラウド等の先進技術支援を通じたお客様の業務改革) *ニューノーマル促進(オフショア活用、非対面/非接触/遠隔ソリューション開発) *国内企業のグローバル化支援を通じた日本のグローバル競争力向上 |
メディカル事業 | *保険業界向け新事業に代表される非競争領域のプラットフォーム化による三方良しの推進 *医療機関の収益改善、業務改善、ペーパーレス化、クラウド活用、遠隔医療支援 *医師の働き方改革、医療安全と質の向上 |
グループ全体 | *レジリエンス経営(テレワークを含む事業継続体制の強化) *SDGsに資する社会的インパクトの高い企業との戦略的提携 *アジアの若い人材の教育と活躍の場の提供 *人材と管理職の多様性への取り組み |
2.2022年3月期第2四半期決算概要
(1)業績概要
| 21/3期2Q | 構成比 | 22/3期2Q | 構成比 | 前年同期比 |
売上高 | 2,093 | 100.0% | 2,268 | 100.0% | +8.4% |
売上総利益 | 874 | 41.8% | 920 | 40.6% | +5.4% |
販管費 | 480 | 22.9% | 485 | 21.4% | +1.0% |
営業利益 | 393 | 18.8% | 435 | 19.2% | +10.7% |
経常利益 | 377 | 18.0% | 478 | 21.1% | +26.7% |
四半期純利益 | 254 | 12.2% | 350 | 15.4% | +37.4% |
*単位:百万円。
増収増益。利益は第2四半期の過去最高を更新。
売上高は前年同期比8.4%増の22億68百万円。グローバル事業は主要ピラー顧客からの売上とソリューションの受注獲得が引き続き堅調。メディカル事業も主力商品Mightyシリーズのパッケージ販売が順調。
営業利益は同10.7%増の4億35百万円。増収もグローバル事業も戦略的投資などで粗利率は1.2ポイント低下したが、売上総利益は同5.4%増加。販管費が同1.0%の増加にとどまり、2ケタの増益。
経常利益は同26.7%増の4億78百万円。
各段階利益は第2四半期の過去最高を更新した。
(2)セグメント別動向
| 21/3期2Q | 構成比 | 22/3期2Q | 構成比 | 前年同期比 |
グローバル事業 | 1,418 | 67.8% | 1,528 | 67.4% | +7.8% |
メディカル事業 | 675 | 32.2% | 740 | 32.6% | +9.6% |
連結売上高 | 2,093 | 100.0% | 2,268 | 100.0% | +8.4% |
グローバル事業 | 239 | 16.9% | 198 | 13.0% | -16.9% |
メディカル事業 | 337 | 49.9% | 399 | 53.9% | +18.4% |
調整額 | -182 | - | -162 | - | - |
連結営業利益 | 393 | 18.8% | 435 | 19.2% | +10.7% |
*単位:百万円。売上髙は外部顧客への売上高。営業利益の構成比は売上高利益率。
(グローバル事業)
増収減益。
主要ピラー顧客からの売上とソリューションの受注獲得が継続している。一方、下期から来期に向けて見込まれる旺盛な需要への対応、コロナ禍におけるDX化をチャンスと捉えたDX人材の育成とサブピラー化に向けた取り組みの強化を通じて更なる高収益モデルを進めるため、前倒しで戦略投資を実行した。
◎グローバル部門
ソフトウェアテストやその実行・管理の自動化、製品開発支援およびアプリケーション開発分野での、フィリピンおよび日本における既存のピラー顧客からの受注が堅調に推移している。
PC/IT機器の分野では、グローバル大手PCメーカーの取引拡大に加えて他の大手PCメーカーへの横展開を推進した。
また、AIチャットボット領域では、大手監査法人系グローバルコンサルティンググループにおいて実用段階を経て、今後の同グループでの他領域における横展開を見据え、取引を順調に拡大しており、業界を代表する大手顧客を中心に、顧客のピラー化に向けた積極的に取り組んでいる。
新たなソリューションとして取り組みを開始した IVA(インテリジェントビデオ解析)技術を活用したEdge IoT/AIoTおよびEdge IoT/ARの分野に関しても、遠隔支援ソリューションをはじめとする各種先進ソリューションが、実証実験を経て、モビリティ領域における顧客で実際に採用・運用されるなど大きく進捗した。
◎エンタープライズソリューション部門
金融セクターおよび製造・公共セクターの新規案件の立ち上げを推進している。下期から来期にかけて見込まれる大型案件の拡大見込みを背景として、今後予想される人材リソースの不足に対応すべく、人材の再教育および中途を含めた積極的な人材投資を実施している。
(メディカル事業)
増収増益。
レセプト点検ソフト「Mighty Checker®」およびオーダリングチェックソフト「Mighty QUBE®」の引き合いは、引き続き順調に拡大している。
戦略的商品である、次世代レセプトチェックシステム「Mighty Checker® EX」については、売上トップクラスの大手グループ内病院などの引き合いがあり、直販を中心に導入数は堅調に推移した。
こうした大手医療グループ内における横展開に加え、新型コロナウイルス感染症対策としてWEBを活用した営業・サポートへの移行により、更なるダイレクトアカウント(直接販売)獲得、価格政策の実行およびソリューションの重ね売り(顧客単価アップ)の推進を行っている。
また、医療クラウド新サービスSonaM(そなえむ)や、生損保向け新ソリューションの開発、その他データ分析(健保組合・学会等)など、医療のデジタル化に関する新事業を積極的に立ち上げ、Mightyシリーズに次ぐ将来の「新たなサブスク型の収益源」の確保に向け、積極的な投資を実施し、更なる収益率向上の実現に向けた施策に取り組んでいる。
医療データベースを活用した支払審査検索エンジン「保険ナレッジプラットフォーム」については本格的な横展開を推進しており、複数の生命保険会社との実証実験を実施し、協業に向けた交渉を開始すると同時に、早期のローンチを見据えて開発に着手している。
今後は新たなサブスクリプション型メニューとして、保険業界全体へ向けた同プラットフォームの浸透を図っていく。
高収益サブスクモデルの確立と、収益率の低い案件の絞り込みや価格政策の実行、ソリューションの重ね売り等により、セグメント利益が大幅に改善し、営業利益率は53.9%と過去最高を記録した。
(3)財政状態とキャッシュ・フロー
◎主要BS
| 21/3末 | 21/9末 | 増減 |
| 21/3末 | 21/9末 | 増減 |
流動資産 | 3,793 | 4,091 | +298 | 流動負債 | 1,239 | 1,276 | +36 |
現預金 | 2,808 | 3,136 | +328 | 短期借入金 | 100 | 100 | 0 |
売上債権 | 655 | 758 | +103 | 前受金・契約負債 | 682 | 715 | +32 |
固定資産 | 647 | 616 | -30 | 固定負債 | 258 | 242 | -16 |
有形固定資産 | 60 | 51 | -8 | 長期借入金 | - | - | 0 |
無形固定資産 | 81 | 48 | -33 | 負債 | 1,498 | 1,518 | +20 |
投資その他の資産 | 504 | 515 | +11 | 純資産 | 2,942 | 3,189 | +247 |
資産合計 | 4,440 | 4,708 | +267 | 負債・純資産合計 | 4,440 | 4,708 | +267 |
*単位:百万円。
現預金の増加等で資産合計は前年末に比べ2億67百万円増加の47億8百万円となった。
前受金・契約負債の増加等で負債合計は同20百万円増加の15億18百万円。
利益剰余金の増加で純資産は同2億47百万円増加の31億89百万円。
この結果、自己資本比率は前期末から1.4ポイント上昇し67.7%となった。
◎キャッシュ・フロー
| 21/3期2Q | 22/3期2Q | 増減 |
営業CF | 488 | 498 | +9 |
投資CF | -42 | -47 | -5 |
フリーCF | 445 | 450 | +4 |
財務CF | -58 | -96 | -38 |
現金同等物残高 | 2,344 | 3,101 | +757 |
*単位:百万円。
営業CF、フリーCFのプラス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。
(4)トピックス
①世界中の女性の健康を推進しエンパワーメントを行う イスラエルの医療スタートアップ「illumigyn」へ出資
21年10月、世界中の女性に婦人科検査をアクセス・入手可能にし、女性の健康のエンパワーメントを行うために設計された婦人科遠隔ソリューションである Gynescope™ システムを搭載したプラットフォームソリューションを開発した illumigyn Ltd.(イスラエル)に出資することを決定した。
(Illumigyn社概要)
2012年9月設立。女性の健康に力を与え、世界中のすべての女性にアクセス・入手可能にすることに注力するイスラエルの企業。FDA(アメリカ食品医薬品局) の認可を取得した革新的な「婦人科内視鏡」及びクラウドプラットフォームサービスであるGynescope™ システムを搭載した完全なプラットフォームソリューションによって、婦人科の医療分野に破壊的変化をもたらすことをビジョンとしている。また、同社が有する技術ノウハウと専門知識によって、女性の健康のあらゆる側面に力を与えるエコシステムを構築することも掲げている。
(出資の背景)
女性が抱える健康課題等にテクノロジーを活用して取り組む、「フェムテック市場」の中長期的な成長性を見込んでいる。
加えて、SDGs に掲げられる女性のエンパワーメントの推進と健康・福祉の促進に資する社会的インパクトの大きい事業内容に強く共鳴。Illumigyn社との将来的なアライアンス及びグローバルマーケットを視野に入れた 「GO GLOBAL 戦略」の一環として、出資を決定した。
(今後の取り組み)
Ubicomは、メディカル領域を中心に SaaS 型モデルへの転換を図っており、今後は、医療ビックデータ及び AI を活用した新たなソリューションに注力する。更に 17,000 を超える医療機関とのネットワークを有する国内市場および米国を含めたグローバル市場における協業を見据え、メディカル領域のエンジニアを含めた戦略的投資を推進するとともに、将来の新たな収益源となる事業機会の創出を目指す。
②「保険ナレッジプラットフォーム」において保険支払業務の一部自動化に向けたDXメニュー「ゆらぎ補正」を提供
21年11月、「保険ナレッジプラットフォーム」において、保険会社における保険給付金支払業務の一部自動化に向けた新たなDXメニュー「ゆらぎ補正」の提供を開始ました。
また、2020 年11月より同社が参画している「生命保険エコシステム構想」を通じて、チューリッヒ生命保険株式会社が「ゆらぎ補正」を採用し、2021 年11 月17 日より業務利用が始まった。
(新DX メニュー「ゆらぎ補正」の概要)
「ゆらぎ補正」は、「保険ナレッジプラットフォーム」において、保険会社の審査支払部門向けに提供する、医療系書類のOCR による読取精度の向上に特化したDXメニュー。
医療系書類に記載される診療行為や病名の表現は、医師や医療機関のシステム毎に違い(ゆらぎ)があり、OCR の精度を100%にしたとしても、診療行為や病名を完全に特定することができない。そこで「ゆらぎ補正」を使用することにより、OCR 読み取り後のゆらぎを補正、医療情報を抽出し、自動的にコード化する。「ゆらぎ補正」の実証実験では98%以上の補正に成功し、高い成功率を実現した。
「ゆらぎ補正」は、メディカル分野に特化した同社だからこそ実現できたソリューションであると同社では考えており、これにより、煩雑な保険支払業務を効率化し、保険業界全体のDXを支援していく考えだ。
3.2022年3月期業績予想
(1)業績予想
| 21/3期 | 構成比 | 22/3期(予) | 構成比 | 前期比 | 進捗率 |
売上高 | 4,198 | 100.0% | 4,963 | 100.0% | +18.2% | 45.7% |
営業利益 | 919 | 21.9% | 1,079 | 21.7% | +17.4% | 40.4% |
経常利益 | 877 | 20.9% | 1,104 | 22.2% | +25.9% | 43.3% |
当期純利益 | 623 | 14.9% | 811 | 16.3% | +30.2% | 43.2% |
*単位:百万円。予想は会社側予想。
業績予想に変更無し。増収増益。利益は連続して過去最高を更新。
業績予想に変更は無い。売上高は前期比18.2%増の49億63百万円、営業利益は同17.4%増の10億79百万円、経常利益は同25.9%増の11億4百万円の予想。営業利益、経常利益は今期も過去最高を更新する見込み。
引き続き「戦略的投資」を進めるが、これを吸収したうえで2桁の増益を目指す。
配当は現時点では未定としているが、今期も利益水準に応じて適切な株主還元を実施する考えだ。
4.中期ビジョン実現に向けた取り組み
(1)各事業動向
①グローバル事業
グローバル事業の目指す方向性
同社では、日本のソフトウェア開発の潜在市場は約10兆円、そのうち現在のオフショア利用率は2%程度に過ぎず、今後10%までは上昇する余地があると見ている、
そうした需要を取り込むため、技術力・語学力・グローバル開発力を備えたオフショアでDXに取り組むことができる人材育成のための教育投資に注力する。
アジアの若い人材にとってより魅力的なキャリアを提供することで同社への求心力を向上させる。
また、日本のみでなく、より巨大市場である欧米も視野に入れ、M&Aや戦略的なアライアンスも推進する。
英語と日本語ができるエンジニアを有することで自社の競争優位性が更に向上。「英語」×「ジャパンクオリティ」は、同社しか提供できない高付加価値であると考えている。
顧客のピラー化
同社では継続的に取引のある各業界のマーケットリーダーで数億円規模の売上実績のある顧客をピラー顧客(主柱となる顧客)と定義している。
新規顧客に関しては当初は顧客先に1-5名が出向してオンサイトで開発に当たるが、売上額が拡大するにつれエンジニア配属数を増やし、オフショアへの切り出しを始め、オフショア中心の開発体制に移行。最終的には50名以上が継続的な開発を行うビッグピラー顧客とすることを目指している。
この段階に進む過程で、規模のメリット、業界の知見集積による開発生産背の向上、テスト自動化の自社ソリューションの展開により、営業利益率は15%まで上昇する。
今上期は、新規ピラー候補顧客を9社獲得した。
2024年3月期に向けて、既存ピラー顧客6社に加え新たに20社以上のピラー顧客の確立を目指している。
国内の技術特化型スモールアーキテクトベンチャーとのアライアンス「「Ubicom開発パートナーシップ」
公共関連企業をはじめとした、アライアンス型のラボ開発モデルを更に強化するため、国内における「Ubicom開発パートナーシップ」を推進していく。
国内エンジニア不足をカバーするとともに、顧客ピラー化の加速、高付加価値化による単価向上を見込んでいる。
エンタープライズ事業部において、日本における上流経験や積極的な人材投資を継続し、金融・公共ほか、IBM以外のプロジェクトが約4割に伸長。下期以降にビジネス拡大を見込む。また、開発力の増強のため、内外でのM&Aも組み合わせていく考えだ。
②メディカル事業
メディカル事業の目指す方向性
「事業内容」の項で触れたように、日本の医療逼迫は深刻な状況となっている。その改善に向けて医療機関の経営を多面的にサポートする。
具体的には、Mighty QUBEによる医師の働き方改革のサポート、Mighty Checkerによる医療従事者のサポート、クラウド型商品の拡充を推進する。
*MightyCheckerによる医療機関経営改善の強化
約200床の中規模病院を想定したMightyChecker導入によるレセプト作業時間削減効果は、約50%。
これに第3四半期以降に開発予定のコンサルナビゲーション機能(分析機能におけるユーザー・インターフェースの最適化)を組み合わせると更に20%削減できると見ている。
「人材不足解消」「医師等の働き方改革」「残業削減」を実現し、医療機関経営改善に大きく貢献する。
*保険ナレッジプラットフォーム
保険会社数社に対しマーケティング及びプロトタイプの提供と実証実験を行っており、来期の本格ローンチ(リカーリング開始)に向けて着実に前進している。
「トピックス」で触れたように、21年11月には、保険会社における保険給付金支払業務の一部自動化に向けた新たなDXメニューである「ゆらぎ補正」の提供を開始した。また、2020 年11 月より同社が参画している「生命保険エコシステム構想」を通じて、チューリッヒ生命保険株式会社がDXメニュー「ゆらぎ補正」を採用し、2021 年11 月17 日より業務利用が始まった。
③グループ全体
戦略
フィリピン拠点を活用したメディカルエンジニアの育成および次世代型メディカルエンジンの開発を強化し、SaaS/リカーリングモデルの積み上げを図る。
また、メディカル領域をはじめとするM&A先やグローバルパートナーとのアライアンス体制の早期構築を目指している。
その具体的な取り組みとして、これも「トピックス」で触れたように、フェムテック市場の中長期的な成長性に着目し、婦人科遠隔プラットフォームソリューションを手掛けるイスラエルの医療スタートアップ「illumigyn社」への出資を決定した。
(2)成長ビジョン
既存事業とM&Aのシナジーを最大化し、新たなリカーリング/SaaSモデルの積み上げを推進。
各事業で掲げている成長ビジョンの実現に向け戦略的投資を実行し、「ニッチNo.1プラットフォーマー戦略」を推進する。
(同社資料より)
5.今後の注目点
今期もメディカル事業の収益性向上が著しい。売上高は収益率の低い案件を絞り込みながらも前年同期比9.6%増、Mightyシリーズが病院経営効率化という需要を確実に取り込み、直販やクロスセルの拡大および価格改定により営業利益率は50%を超え60%に近付いている。既存事業であるMightyシリーズに加え、保険ナレッジプラットフォームも各種機能が実装され始めた。
同社では、第2成長フェーズの4つのテーマの一つに「メディカル領域」を挙げ、フィリピン拠点を活用したメディカルエンジニアの育成および次世代型メディカルエンジンの開発強化に注力している。M&A等のレバレッジ戦略、新たなプラットフォームの立ち上げ、SaaS/リカーリングモデルの積み上げがいつごろから具体化、収益寄与してくるのか、大いに注目したい。
(同社資料を基にインベストメントブリッジが作成)
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態及び取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役設置会社 |
取締役 | 5名、うち社外2名 |
監査役 | 3名、うち社外2名 |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年6月24日
*基本的な考え方
当社は、「唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーであり続けること」「グローバル展開」「Win-Winモデルの推進による相互発展」を経営理念としております。この経営理念のもと、更なる企業価値の向上及びグローバルな競争力を維持していくためには、コーポレート・ガバナンスの充実と強化が重要課題であると認識しております。具体的には、「より効率的かつ健全に事業活動を行うことにより、企業の収益力を高め、株主の利益を最大化することを目標とする」との基本的認識とコンプライアンスの重要性をコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方として、株主、従業員、取引先、地域社会等のあらゆるステークホルダーに対して社会的責任を果たし、持続的成長と発展を遂げていくことが重要であるとの認識にたち、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。
<コーポレートガバナンス・コードの実施しない主な原則とその理由>
原則 | 実施しない理由 |
【補充原則3-1② 英語での情報の開示・提供】 | 現在のところ各種開示資料の英語による開示を実施しておりませんが、当社の株主構成等を勘案した上で英語による情報の開示・提供は必要であると認識しており、海外投資家向けIR・SR活動において英語での情報提供の充実化を図っております。今後も海外の機関投資家の比率や対応に必要な諸条件を総合的に勘案し、英文開示の実施時期について継続的に検討してまいります。 |
【補充原則4-2① 経営陣の報酬とインセンティブ】 | 当社の取締役の任期が1年であるため、報酬は前年度の業績により毎年見直されますが、中長期的な業績と連動する報酬や自社株による報酬制度は設けておりません。経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うことの必要性は認識しており、今後適切な方法を継続的に検討してまいります。 |
<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく主な開示>
原則 | 開示内容 |
原則1-4【いわゆる政策保有株式】 | 当社は、当社グループの中長期的な企業価値向上に資すると判断される場合、株式を政策保有します。当該株式の保有は、業務提携・協業などによる取引関係の維持・強化等、保有目的の合理性が確保されているなどの条件を満たす範囲で行うことを方針としております。また、株式に係る議決権の行使については、議案が当社保有方針と適合するかを勘案したうえで議決権の行使を行うこととしております。 |
【補充原則4-11② 社外役員の兼任状況】 | 社外取締役及び社外監査役の他社での兼任状況は、株主総会招集通知、有価証券報告書及びコーボレート・ガバナンスに関する報告書等を通じ、毎年開示を行っております。 なお、社外取締役及び社外監査役を除く取締役及び監査役は、他の上場会社の役員を兼任しておりません。 |
原則5-1【株主との建設的な対話に関する方針】 | 株主からの対話の申込みに対して、積極的に対応しております。 当社のIR活動は、戦略企画本部を担当部署とするIR体制を整備しており、投資家からの電話取材やスモールミーティング等のIR取材を積極的に受け付けております。 更に、代表取締役自らが出席する決算説明会の開催及び決算説明の動画の配信を、年2回以上実施しております。 |
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