ブリッジレポート
(6310) 井関農機株式会社

プライム

ブリッジレポート:(6310)井関農機 2021年12月期第2四半期決算

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冨安 司郎 社長

井関農機株式会社(6310)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

機械(製造業)

代表取締役社長

冨安 司郎

所在地

愛媛県松山市馬木町700番地

決算月

12月末日

HP

https://www.iseki.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,546円

22,984,993株

35,534百万円

-8.8%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

-

106.18円

14.6倍

2,887.00円

0.5倍

*株価8/26終値。発行済株式数、DPS、EPS、BPSは21年12月期第2四半期決算短信より。ROEは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年12月(実)

158,382

3,953

4,250

2,807

124.29

30.00

2018年12月(実)

155,955

3,179

2,629

1,090

48.29

30.00

2019年12月(実)

149,899

2,745

1,108

723

32.01

30.00

2020年12月(実)

149,304

2,084

1,702

-5,641

-249.58

0.00

2021年12月(予)

153,500

3,600

3,500

2,400

106.18

未定

*単位:百万円、円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

井関農機株式会社の2021年12月期第2四半期決算概要等をご紹介致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年12月期第2四半期決算概要
3.2021年12月期業績予想
4.新中期経営計画の進捗状況
5.今後の注目点
<参考1:新中期経営計画>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 1926年創立の農業機械総合専業メーカー。長期ビジョンとして『「食と農と大地」のソリューションカンパニー』を掲げ、日本のほか、北米・欧州・アジアの3極で事業を展開。「高い技術力」「農家を支える営農提案・サポート力」「連携によるイノベーション」が特徴・強み。「新中期経営計画(2021~2025)」において、『「お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供」を通じ、豊かな社会の実現』を目指しながら、次の100年に向けた礎づくりを進めている。
  • 21年12月期第2四半期の売上高は前年同期比20.0%増の866億円。国内は同9.4%増の626億円。消費増税反動減からの回復や経営継続補助金などに伴う需要喚起もあり農機製品及び作業機が増加した。海外は同60.3%増の240億円。北米、欧州、アジアとも増収。営業利益は同271.6%増の47億円。増収による売上総利益の増加に加え、前期に計上があった部品在庫評価損の剥落などの特殊要因もあり大幅増益。
  • 通期業績予想に変更は無い。2021年12月期の売上高は前期比2.8%増の1,535億円、営業利益は同72.7%増の36億円の予想。国内売上は同1.7%増の1,179億円、海外売上は同6.6%増の356億円を見込む。国内外ともに新型コロナウイルスの影響は依然残るものの、ワクチンの普及などで徐々に収束に向かい、今期中には社会活動や経済活動も緩やかに回復していくものと仮定している。販管費の増加はあるものの、増収効果に加え、構造改革と経営効率化に全社で取り組み増益を見込んでいる。配当は現時点では未定。
  • 大幅な増収増益で、第2四半期累計の進捗率は売上で56%、利益で100%を超過。ただ、第3四半期以降、国内においては「経営継続補助金などに伴う需要喚起の反動」「米価低下懸念による購買意欲減退」、海外においては「新型コロナウイルス感染症影響に伴うサプライチェーンの混乱による未出荷などの受注残拡大」、コスト面では「原材料価格の高騰と高止まり」リスクなどから、通期予想を据え置いている。まずは第3四半期の動向を待ちたい。

     

  • 一方、新中計の基本戦略に沿った動きも着実に進めているようだ。特に、国内外で環境対応、スマート農機といった時代のニーズに沿った新製品を投入している点は注目される。営農ソリューション・ポータルサイト「Amoni(エーモニー)」については、マネタイズの方法が知りたいところである。

     

1.会社概要

1926年創立の農業機械総合専業メーカー。長期ビジョンとして『「食と農と大地」のソリューションカンパニー』を掲げ、日本のほか、北米・欧州・アジアの3極で事業を展開。「高い技術力」「農家を支える営農提案・サポート力」「連携によるイノベーション」が特徴・強み。
新中期経営計画(2021~2025)において、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ、豊かな社会の実現」を目指しながら、次の100年に向けた礎づくりを進めている。

 

【1-1 沿革】

1926年、創業者である井関邦三郎氏が、愛媛県松山市新玉町に「井関農具商会」を創立し、自動籾すり選別機の製造を開始。
1936年には井関農機株式会社(資本金50万円)を設立、社長に井関邦三郎が就任し、ヰセキ式籾すり機及び自動選別機の製造を開始した。
「農家を過酷な労働から解放したい」という創業者の想いは、今も同社の基本精神として継承されており、使いやすく利便性の高い農業機械を提供することで農業の発展に貢献している。
第二次世界大戦で本社・工場を全焼するという被害も受けたが戦後、東京、大阪に進出し事業を拡大。1961年には東京証券取引所に株式を上場した。その後、日本各地に販売会社を設立し全国規模に展開。
2000年代に入り、子会社設立や買収で中国、インドネシア等のアジアにも本格進出し、グローバルで事業を展開している。

 

こうした歴史の中で、同社は創業時の自動籾すり選別機から始まり、世界初の「自脱型コンバイン」(1966年)、国産大型トラクタ(1978年)、乗用田植機(1978年)など、各種商品開発により日本における農機のスタンダードを創り出し、日本農業の生産性向上に大きく貢献してきた。

 

(同社資料より)

 

【1-2 企業理念など】

上記の創業者の理念を受け継ぎ、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ、豊かな社会の実現へ貢献する」を経営の基本理念とし、日本ならびに世界の農業・景観整備に貢献していくことを企業理念としている。製品の提供だけでなくサービス(情報・コト・機能など)にも注力し、お客さまに喜ばれる井関として活動を展開している。

 

社是

1.需要家には喜ばれる製品を

2.従業員には安定した職場を

3.株主には適正な配当を

経営理念とし、もって社会的使命を達成する。

 

井関グループが目指すもの
 井関グループは2030年の長期ビジョンとして『「食と農と大地」のソリューションカンパニー
 ~夢ある農業と美しい景観を支え、持続可能な「直と農と大地」の未来を創造する~』を掲げている。
「農」は「食」と「大地」を守り、豊かな「人・社会」を実現しています。その「農」と「農家」を支えるのが井関グループであり、関連する課題を解決していく企業であり続けたいという想いが込められている。

 

こうした理念、ミッションをベースにし「中期経営計画」ではESG、SDGsについても積極的にコミットしている。

 

【1-3 市場環境】

日本国内および世界の農業に関する市場環境は以下の通りである。
井関農機はこうした状況認識を踏まえ、後述する「新中期経営計画(2021年~2025年)」において重要な課題、施策、目指すべき姿を掲げている。

 

(1)農政から見た国内市場環境
国内の農業の現在および今後の市場環境を見ていく上では、「農政」が重要な意味を持つ。
政府は食料・農業・農村基本法に基づき、食料・農業・農村に関し中長期的に取り組むべき方針を定め「食料・農業・農村基本計画」として発表している。
概ね5年ごとに変更される同基本計画の2020年3月発表分における主要ポイントは以下のようなものである。

 

項目

概要(抜粋)

食料・農業・農村をめぐる情勢

(国内外の環境変化)

*国内市場の縮小と海外市場の拡大:人口減少、消費者ニーズの多様化

 

(農政改革の着実な進展)

*農林水産物・食品輸出額4,497億円(2012)→9,121億円(2019)

*生産農業所得2.8兆円(2014)→3.5兆円(2018)

*若者の新規就農18,800人/年(09~13平均)→ 21,400人/年(14~18平均)

基本的な方針

「産業政策」と「地域政策」を車の両輪として推進し、将来にわたって国民生活に不可欠な食料を安定的に供給し、食料自給率の向上と食料安全保障を確立

目標・展望等

(食料自給率の目標)

【カロリーベース】37%(2018) → 45%(2030)

【生産額ベース】66%(2018)→ 75%(2030)

食料自給率の向上に向けた課題と重点的に取り組むべき事項

(農業生産)

ア:国内外の需要の変化に対応した生産・供給

「需要が旺盛な畜産物、加工・業務用需要に対応した野菜、高品質な果実、輸入品

に代替する需要が見込まれる小麦や堅調に需要が増加している大豆等、国内外の需要の変化に的確に対応した生産・供給を計画的に進める必要がある」

 

イ:国内農業の生産基盤の強化

「国内外の需要に応じた生産を進めるためには、国内農業の生産基盤の強化が必要である。このため、持続可能な農業構造の実現に向けた担い手の育成・確保と農地の集積・集約化の加速化、経営発展の後押しや円滑な経営継承を進めるとともに、農業生産基盤の整備やスマート農業の社会実装の加速化による生産性の向上、各品目ごとの課題の克服、生産・流通体制の改革等を進める必要がある」

*赤字部分は、(株)インベストメントブリッジによる。

 

食料自給率引き上げに向け官民総力を挙げて取り組んだ結果、食料消費に関する課題が解決された場合の2030年度における主要品目の食料消費および生産努力目標の見通しを、同基本計画では以下のように示している。
主食用米の生産が減少する一方、野菜、果実などは増加する見通しだ。

 

 

消費見通し

生産努力目標

克服すべき課題(抜粋)

2018年度

2030年度

2018年度

2030年度

主食用米

799

714

775

723

農地の集積・集約化による分散錯圃の解消・連坦化の推進

*多収品種やスマート農業技術等による多収・省力栽培技術の普及、資材費の低減等による生産コストの低減

飼料用米

43

70

43

70

*単収の大幅な増加による生産の効率化

野菜

1,461

1,431

1,131

1,302

水田を活用した新産地の形成や、複数の産地と協働して安定供給を行う拠点事業者の育成等を通じた加工・業務用野菜の生産拡大

機械化一貫体系や環境制御技術の導入等を通じた生産性の向上

果実

743

707

283

308

省力樹形や機械作業体系の導入、園内作業道やかんがい施設等の基盤整備等を通じた労働生産性の向上

*海外の規制・ニーズに対応した生産・出荷体制の構築、水田を活用した新産地の形成等を通じた輸出向け果実の生産拡大

小麦

651

579

76

108

*団地化・ブロックローテーションの推進、排

水対策の更なる強化やスマート農業の活用による生産性の向上

大豆

356

336

21

34

*団地化・ブロックローテーションの推進、排

水対策の更なる強化やスマート農業の活用による生産性の向上

*単位:万トン。赤字部分は、(株)インベストメントブリッジによる。

 

また、2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略 2018 -「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革-」においては、
「農林水産業全体にわたる改革とスマート農林水産業の実現」の項目で、以下のような施策を挙げている。

農業改革の加速

生産現場の強化

米政策改革

 

農業経営者が自らの経営判断に基づき作物を選択できるよう、きめ細かな情報提供や水田フル活用に向けた支援を行うなどにより、米政策改革の定着を図る。

データと先端技術のフル活用による世界トップレベルの「スマート農業」の実現

先端技術の実装

国、研究機関、民間企業、農業者の活力を結集し、現場ニーズを踏まえながら、バリューチェーン全体を視野に、オープンイノベーション、産学連携等を進め、AI、IoT、センシング技術、ロボット、ドローンなどの先端技術の研究開発から、モデル農場における体系的な一気通貫の技術実証、速やかな現場への普及までを総合的に推進する。

 

「スマート農業」においては、具体例として、「遠隔監視による農機の無人走行システムの2020年までの実現」「ドローンとセンシング技術やAI の組み合わせによる農薬散布、施肥等の最適化」「自動走行農機等の導入・利用に対応した土地改良事業の推進」「農業用水利用の効率化に向けたICT 技術の活用」「スマートフォン等を用いた栽培・飼養管理システムの導入」「農業データ連携基盤を介した、農業者間での生育データの共有やきめ細かな気象データの活用等による生産性の向上」などを挙げている。

 

以上のような農政の方針から、今後の日本の農業は、食料自給率の向上および農業の生産性向上に向け、
*「米から野菜など他作物への転換」
*「農地の集積・集約化の加速化」
*「機械化の進展による生産性の向上」
*「スマート農業の実現」
などが、日本農業における中長期の最重要テーマであることがわかる。

 

また、農林水産物・食品輸出額、生産農業所得、若者の新規就農が着実に増大している点も、留意すべき点であろう。

 

(2)世界の農業市場
「平成30年度 食料・農業・農村白書」によれば、「世界の人口は、今後も開発途上国を中心に増加することが見込まれており、令和32(2050)年には97.7億人になると見通されています、このような中、世界の穀物等の需要は、開発途上国を中心とした人口増加により食用の需要が増加するとともに、経済成長に伴い、多くの穀物等を飼料として必要とする肉類の需要が大幅に増加することにより、全体として増加する見込みです」とある。

 

また、同白書内では「OECD - FAO農業アウトルック2018 – 2027」を紹介し、農作物の供給国について「米については、タイ、インド、ベトナムが主要な供給源となる一方、カンボジア及びミャンマーが新たに供給源として浮上」すると予測している。

 

人口増に加え気候変動を始め、水資源の制約や土壌劣化等が影響して、穀物需給が逼迫するリスクも指摘されており、中国を中心としたアジア各国における安定的な農産物の生産拡大も世界的な課題である。

 

 

 

(同社資料より) 

 

(3)競合状況
日本企業では、株式会社クボタ(6326、東証1部)、ヤンマーホールディングス株式会社(未上場)があげられる。
シェアに関する詳細なデータはないが、農業機械において井関農機、クボタ、ヤンマーの3社で太宗を占めているという。
井関農機は沿革で触れたように「農家を過酷な労働から解放したい」という想いが創業の原点であり、農業機械専業メーカーとして農家に寄り添い、ユーザーの真のニーズに沿った設計思想や製品開発・提供を差別化のポイントとしている。

 

<同業他社比較>

 

 

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

ROE

6310

井関農機

153,500

+2.8%

3,600

+72.7%

2.3%

35,535

14.6

0.5

-8.8%

6326

クボタ

2,150,000

+16.0%

260,000

+48.3%

12.1%

2,686,666

14.7

1.8

8.8%

*単位:百万円、倍。売上高、営業利益は各社の今期予想。ROEは前期実績。時価総額、PER、PBRは2021年8月26日終値ベース。

 

【1-4 事業内容】

稲作、野菜作等に関連する農業用機械や景観整備用機械の開発、製造、販売・サービスを手掛けている。

 

(1)製品分類
取扱製品等を以下のように分類している。

製品分類

主な製品

構成比

整地用機械

トラクタ、耕うん機、乗用管理機、芝刈り機など

31.8%

栽培用機械

田植機、野菜移植機など

7.1%

収穫調整用機械

コンバイン、バインダ、ハーベスタなど

12.9%

作業機・補修用部品・修理収入

作業機、補修、修理など

30.3%

その他農業関連

施設工事など

17.9%

*構成比は2020年12月期

 

(2)地域別事業概要
日本国内および海外で事業を展開している。20年12月期の売上構成は、国内が約8割、海外が約2割。

①国内事業
①-1 取扱商品
稲作用機械及び畑作・野菜作用機械に関し、機械化一貫体系を確立し農家に提供している。
*稲作用機械
コメの生産にかかわる大半の機械を取り扱っている。

(同社資料より)

 

*畑作・野菜用機械
コメの生産が減少する一方で、多くの農家は付加価値の高い野菜や果物の生産に注力しており、多種多様な野菜品種に対応した製品をラインナップしている。

(同社資料より)
2020年12月期の国内における製品別売上高構成は以下の通りで、近年は収益性の高い部品・作業機・修理収入の構成比が上昇している。

①-2 事業拠点及び商流
系列の販売会社11社による全国ネットワークを構築している。うち6社は100%子会社。営業活動の効率性を考慮し広域化を進めつつ、地域ごとの特性を考慮した商品やサービスをラインアップしている。
また愛媛県、熊本県、新潟県に生産会社を4社有しているほか、茨城県の「つくばみらい事業所」に、将来の農業の在り方を研究する「夢ある農業総合研究所」、ISEKIグローバルトレーニングセンター、技術サービス部を設置している。
製品の販売は最終ユーザーである農家への直接販売が約7割、農協を含めた代理店向け販売が約3割となっている。

 

②海外事業
北米、欧州、アジア(アセアン、東アジア、中国)の3極で事業を展開している。
各地域の事業形態や取扱商品、主要顧客層は以下の通りで、地域ごとの特色がある。
海外の生産拠点は、インドネシアのPT ISEKIインドネシア、中国の東風井関農業機械有限公司(湖北省・江蘇省)の3か所。

 

地域

販売及び事業形態

取扱商品

主要顧客層

北米

OEM供給

トラクタ

・個人(ホビーファーマー)

・景観整備・軽土木業者

・農家(セカンドトラクタ、管理作業)

欧州

代理店販売(一部OEM)

トラクタ、乗用芝刈り機

・景観整備業者

・小規模農家

・個人

アセアン

代理店販売(一部OEM)・生産

トラクタ、コンバイン、田植機

・農家、コントラクター

東アジア

代理店販売

トラクタ、コンバイン、田植機、乗用管理機、野菜移植機他

中国

生産・販売

トラクタ、コンバイン、田植機、乗用管理機他

 

◎北米事業
1977年から、北米市場にトラクタを輸出してきた。
現在では世界的な農機メーカーAGCO社にコンパクトトラクタなどをOEM供給している。

 

◎欧州事業
1971年ベルギーにISEKIヨーロッパを設立。以降ヨーロッパ全域に販売エリアを拡大している。
景観整備市場(コンパクトトラクタ、乗用芝刈機)と農業用トラクタ市場を主体に、市場ニーズに即した小型・高性能な商品を投入している。

 

◎アジア事業(中国、アセアン)
中国では2004年の「農業機械促進法」制定以降、田植機、コンバインの需要が拡大し、急激に農業機械の普及が進んでいる。それに呼応し同社では2003年に井関農機(常州)有限公司、2011年には中国の国有自動車メーカーである東風汽車集団有限公司との合弁で東風井関農業機械有限公司を設立し、高機能・高品質の田植機・コンバインを投入するなど市場ニーズに即応した商品を提供している。
アセアンでは、2013年にタイに販売会社ISEKI SALES (THAILAND)CO.,LTD.(現IST Farm Machinery)を設立し、タイやタイ周辺国向けに事業を展開。日本同様、大規模化が進展する韓国、台湾においては、大型・高能率の商品を投入している。2012年にはインドネシア(水稲の生産量世界3位)にトラクタ製造会社PT. 井関インドネシアを設立した。

(同社資料より)
売上の大半を占める北米、欧州ではガーデニングを趣味とする個人や、公園などの景観整備業者が主要ユーザーである。
このため。海外事業の製品構成は、トラクタ、芝刈機が全体の7割を占めている。

【1-5 特長と強み】

(1)技術力
1926年の創立以来、世に先駆けて画期的な農業機械を開発し、農業や社会にイノベーションを起こしてきた。

 

画期的な農業機械開発の一例が2016年にリリースした業界初の「土壌センサ搭載型可変施肥田植機」である。
2種類のセンサで「肥沃度(土壌の肥え具合)」と「深さ」を測定し、苗を植える箇所毎の土壌にあわせて施肥量を自動でコントロールする田植機で、最適な施肥により、稲の倒伏の低減や生育の均一化が図れ、計画的な収穫作業を可能にした。また、品質の安定や過剰施肥防止による肥料コスト・の削減、環境保全などにも寄与している。

(同社WEBSITEより)

 

知的財産戦略にも注力し、農業機械や関連商品のコア技術の創造活動で得られた知的成果である発明や創作を戦略的に権利化している。
特許分野別登録数(その他特殊機械分野)は、2013年から2017年まで1位、2018年2位、2019年1位と常に最上位にある。
また、特許査定率(特許査定件数/(特許査定件数+拒絶査定件数+取下・放棄件数))も96%から100%で推移し、1位ないし2位に位置しており、技術力の高さを裏付けている。
こうした知的財産に裏打ちされた「強み」を活かし、他社商品との差別化を図っている。

 

(2)営農提案・サポート力
生産者の夢ある(=儲かる)農業を実現するためには、省力化や生産性を向上させる農業機械(ハード)と生産管理や先端営農技術(ソフト)の両面において、総合的に農業経営を行っていくことが重要だと考えており、総合的な営農提案とサポートを行っている。

 

この中核となっているのが茨城県つくばみらい市にある「夢ある農業総合研究所」である。

 

2015年に設立した同研究所では、国や自治体、研究機関、大学、民間企業、JAなどと連携を強化しながら、先端技術や先端営農技術を活用したスマート農業の研究・実証・普及に取り組んでいる。グループにおけるエキスパート人材の育成に注力しており、ここで教育を受けたプロ人材を、全国の販売会社に配置し、地域密着型の営農提案により、サポート力を強化している。さらに、日本で培った営農栽培技術やノウハウなどを海外にも展開し、農業の機械化とあわせて普及促進に取り組んでいる。

(同社資料より)

 

(主な取り組み事項)
*スマート農業の普及促進
*水田利活用(大豆・麦・野菜への作付転換)の提案
*GAP(※)認証取得に向けたサポート
*異業種参入、新規参入への栽培技術提案
*地域伝統作物の栽培支援
*自治体などと連携した耕作放棄地再生と地域活性化支援
*夢ある農業女子応援プロジェクトの実施

 

※GAP
Good Agricultural Practice:農業生産工程管理。農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組み。井関農機の指導員が農家の認証取得をサポートしている。

 

(3)連携によるイノベーション
変化し続ける事業環境に迅速に対応するため、産学官との連携や自前主義にこだわらないパートナーとの幅広い連携により、技術力の向上と画期的な商品・サービスの開発・提供に取り組んでいる。
また、海外では各地域の有力な戦略パートナーと提携し、新市場の開拓などグローバル展開を加速させている。

 

(国内)

 

自治体との先端技術を活用した農業推進に関する連携協定

つくばみらい市と連携したスマート農業に関する実証。センシング技術やスマート技術を活用し、稲作の生産技術向上、コスト低減、高品質化など持続可能な農業の実現を目指す。

自治体との先端技術を活用した農業及び有機農業の推進に関する連携協定

木更津市と連携したスマート農業及び有機農業に関する実証。センシング技術やスマート技術、GAP等の営農技術を活用し、生産技術向上、コスト低減、高品質化に向けた栽培方法確立を目指す。

夢ある‘農業女子’応援プロジェクト

農林水産省、各地域と連携し、農業女子目線での商品を開発。各地域で農機取扱いセミナー等女性農業者の研修を実施している。

 

(海外)

TAFE社(インド)

インドでの乗用田植機の試験販売、育苗の指導

AGCO社(米国)

販売網を活用した中南米やアジア新市場への試験販売

東洋物産グループ

韓国での高性能農機の販売

 

 

【1-6 ROE分析】

 

17/12期

18/12期

19/12期

20/12期

ROE(%)

4.2

1.6

1.1

-8.8

 売上高当期純利益率(%)

1.77

0.70

0.48

-3.78

 総資産回転率(回)

0.78

0.77

0.75

0.78

 レバレッジ(倍)

3.01

2.95

2.96

3.00

 

中期経営計画ではROE8%を目標としている。レバレッジは既に高水準であり、収益性の改善、資産効率性の向上をどこまで進められるかが課題である。

 

2.2021年12月期第2四半期決算概要

(1)連結業績概要

 

20/12期2Q

対売上比

21/12期2Q

対売上比

前年同期比

売上高

72,245

100.0%

86,672

100.0%

+20.0%

 国内

57,249

79.2%

62,630

72.3%

+9.4%

 海外

14,995

20.8%

24,041

27.7%

+60.3%

売上総利益

21,444

29.7%

25,785

29.8%

+20.2%

販管費

20,173

27.9%

21,064

24.3%

+4.4%

営業利益

1,270

1.8%

4,721

5.4%

+271.6%

経常利益

1,068

1.5%

5,508

6.4%

+415.4%

四半期純利益

979

1.4%

4,127

4.8%

+321.2%

*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。

 

大幅な増収増益
売上高は前年同期比20.0%増の866億円。国内は同9.4%増の626億円。消費増税反動減からの回復や経営継続補助金などに伴う需要喚起もあり農機製品及び作業機が増加したほか、補修用部品および修理整備等のメンテナンス収入が堅調した。施設工事は、大型物件の受注・完工が減少。海外は同60.3%増の240億円。北米は好調なコンパクトトラクタ市場を背景に増収。欧州もライフスタイルの変化によるコンシューマー向けが好調で円安の影響もあり増収。アジアは前期末にタイの販売代理店を連結子会社化したことや、中国向け半製品の出荷増などにより増収。
営業利益は同271.6%増の47億円。増収による売上総利益の増加に加え、前期に計上があった部品在庫評価損の剥落などの特殊要因もあり大幅増益。

 

四半期ベースでも第1四半期、第2四半期と前期比及び前年同期比連続して増収増益。前期第4四半期を底に回復傾向にある。

 

(2)地域別動向

①国内

売上高

20/12期2Q

21/12期2Q

前年同期比

 農機製品

 

 

 

  整地機

133

147

+10.1%

  栽培機

55

64

+16.9%

  収穫調整機

43

48

+11.6%

 小計

231

259

+12.0%

 作業機

106

135

+26.8%

 部品

71

72

+1.5%

 修理収入

27

28

+2.9%

 小計

206

236

+14.8%

農機関連計

438

496

+13.3%

施設工事

30

19

-36.1%

その他農業関連

103

110

+6.4%

合計

572

626

+9.4%

*単位:億円

 

(概要)
上期は、消費増税反動減からの回復や経営継続補助金などに伴う需要喚起があったものの、新型コロナウイルス影響の長引き等により需要回復に遅れが出ている。下期以降は、経営継続補助金などに伴う需要喚起の反動や米価低下による購買意欲減退等の懸念が残る。

 

(同社の動向)
田植機新商品効果などにより、同社の実売は業界を上回って推移している。
*農機製品・作業機は消費増税反動減からの回復や経営継続補助金などに伴う需要喚起もあり増収
*新型コロナウイルスの影響により展示会中止や規模縮小などの影響を受けたが前年同期比では緩和に向かっている。
*部品売上、修理収入は引続き堅調に推移
*施設工事は大型物件の受注・完工が減少

 

②海外

売上高

20/12期2Q

21/12期2Q

前年同期比

北米

50

78

+56.3%

欧州

64

108

+69.2%

アジア

34

51

+51.4%

その他

1

2

+23.0%

合計

149

240

+60.3%

*単位:億円。

 

(概要)
*北米市場
コンパクト市場は、個人ユーザー向けの需要増が継続している。下期も上げ幅に若干の落ち着きはあるものの前年を上回って推移すると予想している。
こうした状況を背景に、高い基本性能と低価格を実現したコンパクトトラクタが2021年より本格稼働していることなどから同社の売上・受注状況は好調だが、海上輸送用コンテナ不足による未出荷等が発生している。

 

*欧州市場
現地小売店は、エッセンシャル・リテールとして営業を継続している。欧州排ガス規制(EU StageV)に適合したエンジンを搭載した最高レベルの環境性能と充実機能を実現したプロ向け乗用モーアが2021年より本格稼働。巣ごもり需要によるコンシューマ向け需要増もあり、引き続き堅調に推移している。
現地実売・同社受注ともに好調だが、米国同様、海上輸送用コンテナ不足による未出荷等が発生している。

 

*アジア市場
タイ
農作物生産量、作物価格ともに昨年より回復し、農機需要も回復基調。現地販売会社IST Farm Machineryの子会社化により体質改善を図り、収益構造の再構築中。現地実売は、子会社化直後の第1四半期は苦戦したが、第2四半期は前年同期を上回った。井関の出荷・受注は好調。

 

インドネシア・ミャンマー
インドネシアでは、政府入札が予算のコロナ対策への充当もあり当初予定台数より減少したが、政府入札、一般販売の強化により堅調。現地でのブランド力を軸に更なる販売を推進する。
ミャンマーはクーデターによる国内情勢の混乱から販売店の営業活動に影響が出ている。

 

中国
中央政府補助金増額もあり、田植機、コンバイン、トラクタの各市場とも大きく伸びており、東風井関の販売も堅調である。

 

韓国・台湾
韓国では、農業経営の大規模化に伴い、大型・高性能農機需要が高まっており、同社の大型・高能率コンバインは好調。一方、
トラクタは代理店の在庫調整により出荷が減少した。
台湾でも大型農機需要が引き続き旺盛だが、補助金は反動減となった。加えてコロナの影響もあり伸び悩んだが、下期は請負業者向け高能率・高精度の田植機(スマート田植機)を中心に拡販を図る。

 

(3)財政状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

20/12月末

21/6月末

増減

 

20/12月末

21/6月末

増減

流動資産

89,979

97,806

+7,827

流動負債

86,147

87,222

+1,075

 現預金

10,787

14,320

+3,533

 仕入債務

36,872

41,142

+4,270

 売上債権

21,780

32,148

+10,368

 短期有利子負債

39,459

35,412

-4,047

 たな卸資産

51,845

47,748

-4,097

固定負債

38,861

40,767

+1,906

固定資産

97,449

97,235

-214

 長期有利子負債

29,890

31,811

+1,921

 有形固定資産

86,287

85,450

-837

負債合計

125,009

127,989

+2,980

 無形固定資産

1,967

2,232

+265

純資産

62,419

67,051

+4,632

 投資その他の資産

9,193

9,552

+359

 株主資本

50,346

54,479

+4,133

資産合計

187,428

195,041

+7,613

負債純資産合計

187,428

195,041

+7,613

 

 

 

 

有利子負債残高

69,349

67,223

-2126

*単位:百万円。仕入債務には電子記録債務を含む。

 

現預金、売上債権の増加で資産合計は前期末比76億円増加し1,950億円。
有利子負債が減少したが、負債合計は同29億円増加し1,279億円。
利益剰余金の増加などで純資産は同46億円増加の670億円。
自己資本比率は前期末比1.1ポイント上昇し33.5%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

20/12期2Q

21/12期2Q

増減

営業CF

-3,096

7,449

+10,545

投資CF

-4,620

-1,345

+3,275

フリーCF

-7,716

6,104

+13,820

財務CF

6,664

-2,944

-9,608

現金同等物残高

7,327

14,032

+6,705

単位:百万円

 

税金等調整前四半期純利益の増加、たな卸資産の減少などから営業CF、フリーCFはプラスに転じた。
キャッシュポジションは上昇。

 

(4)トピックス

①新市場区分「プライム市場」の上場維持基準の適合
2021年7月9日付で株式会社東京証券取引所より、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果を受領し、「プライム市場」の上場維持基準に適合していることを確認した。
この結果に基づき、2021年8月31日開催の取締役会において、新市場区分における「プライム市場」を選択することを決議した。今後は、2021年9月から開始される予定の新市場区分の選択申請に係る手続きを進めていく。

 

②ESG経営
2021年7月1日付で、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を新設した。事業活動を通じて豊かで持続可能な社会の実現に貢献するとともに、中長期的な企業価値向上に向けてサステナビリティを巡る課題への取り組みを強化する。
また、2021年5月1日付で、開発製造本部内に「グリーンイノベーション推進室」を新設した。脱炭素社会の実現に向け、電動化や水素活用など製品のゼロエミッション化技術戦略及び中長期的に取り組む新研究・開発テーマの立案、商品化をさらに推進していく。
井関グループの価値創造プロセスや価値創造を支えるESGの取り組みを紹介する「ISEKIレポート2021」を発行した。

 

③知的財産
2020年、特許の日本における分野別登録数が 「その他特殊機械分野」で 第2位、特許査定率は 「全産業中」 第1位となった。

 

④「令和3年度全国発明表彰」にて「発明賞」を受賞
「穀粒乾燥機のヒートリサイクル制御の発明」が、「令和3年度全国発明表彰」で「発明賞」を受賞した。
排風に含まれる熱と水分を利用して、穀粒の胴割れを防止しながら省エネかつ高速乾燥を実現するもので、燃料消費量は従来比13%の削減となる。

 

3.2021年12月期業績予想

(1)業績予想

 

20/12期

構成比

21/12期(予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

1,493

100%

1,535

100%

+2.8%

56.5%

 国内

1,159

78%

1,179

77%

+1.7%

53.1%

 海外

333

22%

356

23%

+6.6%

67.5%

売上総利益

434

29%

464

30%

+6.9%

55.6%

販管費

413

28%

428

28%

+3.6%

49.2%

営業利益

20

1%

36

2%

+72.7%

131.1%

経常利益

17

1%

35

2%

+105.6%

157.4%

当期純利益

-56

-

24

2%

-

172.0%

*単位:億円。予想は会社側発表。

 

*為替の前提

 

20/12期

21/12期

予想

1ドル

107.0円

105.0円

1ユーロ

121.5円

123.0円

 

業績予想に変更無し。増収・増益を予想
業績予想に変更は無い。売上高は前期比2.8%増の1,535億円、営業利益は同72.7%増の36億円の予想。
国内売上は同1.7%増の1,179億円、海外売上は同6.6%増の356億円を見込む。
国内外ともに新型コロナウイルス感染症は依然残るものの、ワクチンの普及などで徐々に収束に向かい、今期中には社会活動や経済活動も緩やかに回復していくものと想定している。
販管費の増加はあるものの、増収効果加え、構造改革と経営効率化に全社で取り組み増益を見込んでいる。

 

第3四半期以降の見通し及びリスクについて、国内においては「経営継続補助金などに伴う需要喚起の反動」「米価低下懸念による購買意欲減退」、海外においては「北米、欧州の好調な受注継続」「新型コロナウイルス感染症影響に伴うサプライチェーンの混乱による未出荷などの受注残拡大」を挙げている。また、原材料価格の高騰と高止まりもリスクとして認識している。
利益の進捗率は100%を超過しているが、これらのリスクを勘案して通期見通しは据え置いている。
配当は現時点では未定。

 

 

(2)地域別動向

①国内

売上高

20/12期

21/12期(予)

前期比

進捗率

 農機製品

 

 

 

 

  整地機

228

238

+4.0%

61.8%

  栽培機

88

93

+4.9%

69.3%

  収穫調整機

168

178

+5.4%

27.1%

 小計

486

509

+4.6%

51.0%

 作業機

204

201

-1.8%

67.3%

 部品

156

157

+0.3%

46.3%

 修理収入

58

61

+3.6%

46.9%

 小計

420

419

-0.2%

56.5%

農機関連計

906

928

+2.4%

53.5%

施設工事

61

55

-10.5%

35.6%

その他農業関連

191

196

+2.5%

56.3%

合計

1,159

1,179

+1.7%

53.1%

*単位:億円。予想比は20年8月公表予想との対比。

 

農業の構造変化に対応した大型機械、スマート農機に加え、サービス・サポート対応の推進強化と、堅調な部品・修理収入により増収を見込んでいる。

 

②海外

売上高

20/12期

21/12期(予)

前期比

進捗率

北米

128

138

+7.5%

57.6%

欧州

139

140

+0.3%

77.4%

アジア

62

74

+18.7%

69.8%

その他

3

4

+7.0%

50.8%

合計

333

356

+6.6%

67.5%

*単位:億円。2021年12月期より、海外売上高の集計区分を変更している。①地域区分の変更 ・アジア:「中国」「アセアン」「東アジア」、・その他:「オセアニア」ほか、②「部品その他」を地域別に集計

 

北米におけるコロナ禍での巣ごもり需要の継続、2020年12月に実施したアセアン販売代理店の連結子会社化などにより、増収を見込んでいる。

 

 

4.新中期経営計画の進捗状況

今期を初年度とする5年間の新中期経営計画(2021~2025)では、基本戦略を「1.ベストソリューションの提供」「2.収益とガバナンス強化による企業価値向上」とし、「1.ベストソリューションの提供」の具体的な展開として「選択と集中」「ビジネスモデル転換」を挙げている。
足元における進捗状況は以下の通りである。
(1)選択と集中
①国内商品戦略
大型機においては、田植機が加わり、井関農機のフラッグシップモデル「All Japanシリーズ」が勢揃いした。21年春より本格稼働し、販売は好調だ。
スマート農機においては、田植機8条クラスのうち直進アシスト仕様は約6割と過半を超えた。
また、使用者の監視下において無人作業が可能な有人監視型ロボット田植機を2022年2月に投入する計画である。
②持続可能な農業の実現に向けて
2021年5月、農林水産省は、「みどりの食料システム戦略」を策定した。
これは、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるため中長期的な観点から戦略的に取り組む政府方針である。
2050年までに目指す姿として、
・農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現
・化学農薬使用量(リスク換算)の50%低減
・化学肥料使用量の30%低減
・有機農業の取組面積割合を25%(100万ha)に拡大
などを掲げている。

 

このうち、有機農業の普及・発展、特に稲作における有機農業拡大には水管理作業や雑草管理作業が大きな課題である。
この課題解決に向けて同社では、21年6月、有機米デザイン株式会社と自動抑草ロボットを活用した有機農業の普及発展に向けた業務提携を締結した。

 

(有機米デザイン株式会社概要)
2019年11月設立。
事業内容は、自動抑草ロボットの開発、有機栽培技術の開発。有機栽培米の流通。 農業者の所得向上と有機米マーケットの拡大に取り組むことを目的に、有機米栽培の大きな課題となる除草作業を省力化する自動抑草ロボットの開発、有機米栽培のノウハウの確立に向けた研究開発を行っている。

 

(業務提携の目的・内容)
井関農機はこれまで水管理作業の省力化に向けICT技術を用いたスマート水位センサの提案や自治体との連携によるスマートオーガニックの実証などに取り組み、有機農業拡大に向けた技術提案を行ってきた。有機米デザイン社と提携することにより自動抑草ロボットの早期社会実装を目指す。また、自動抑草ロボットにより除草作業を効率化したスマートオーガニック技術を進化させ有機農業の普及拡大を図るとともに、脱炭素社会に向け積極的に取り組んでいく。

 

(2)ビジネスモデルの転換
◎ベストソリューションの提供
2021年7月、営農ソリューション・ポータルサイト「Amoni(エーモニー)」を開設した。

 

Amoniは、農業の各分野を代表する様々な国内外の企業が参画し、各企業より掲載されるコアな商品情報や技術情報、また、これらを生かした営農・栽培・先端技術情報等、バラエティに富んだリアルな実演・実証・イベント情報を一括で閲覧できるウェブサイト。
井関グループ、参画企業、生産者がともに、オンライン上で大規模生産者の農業課題の解決を目指して取り組むプラットフォームである。
会員登録数10万件を目標としている。

 

(主なコンテンツ)
*毎日の営農に役立つ情報
① 天気予報
② 雨雲レーダー
③ 積算温度予測
④ 水稲生育予測
*大規模農家の課題解決に向けた情報
⑤ 実演:最新の農業機械技術や栽培技術のリアルな実演動画を紹介
⑥ 実証:最新技術を用いた実証試験を各地で行いその状況をレポート形式でタイムリーに掲載することで実践的な技術情報を掲載
⑦ 開催:Webを活用した技術セミナーや各種イベントの案内

 

(3)最適生産体制構築に向けた組織変更
新中期経営計画の構造改革に関する取り組みとして、最適生産体制構築による生産性向上を図るため、2021年4月1日付で開発製造本部の組織変更を行った。これまで開発製造本部及び各製造所にてそれぞれ行っていた生産技術と原価管理に関する業務を集約のうえ、統括管理する「生産技術統括部」を新設。各製造所の外注調達管理業務を「購買部」に集約し、取引先及び開発部門との連携強化を図る。

 

5.今後の注目点

大幅な増収増益で、第2四半期累計の進捗率は売上で56%、利益で100%を超過。ただ、第3四半期以降、国内においては「経営継続補助金などに伴う需要喚起の反動」「米価低下懸念による購買意欲減退」、海外においては「新型コロナウイルス感染症影響やコンテナ不足などに伴うサプライチェーンの混乱・生産停滞による未出荷などの受注残拡大」、コスト面では、「原材料価格の高騰と高止まり」リスクなどから、通期予想を据え置いている。まずは第3四半期の動向を待ちたい。
一方、新中計の基本戦略に沿った動きも着実に進めているようだ。特に、国内外で環境対応、スマート農機といった時代のニーズに沿った新製品を投入している点は注目される。営農ソリューション・ポータルサイト「Amoni(エーモニー)」については、マネタイズの方法が知りたいところである。

 

 

<参考1:新中期経営計画>

今期を初年度とする5年間の新中期経営計画(2021~2025)を公表した。
長期ビジョンに『「食と農と大地」のソリューションカンパニー』を掲げ、次の100年に向けた礎づくりとするものである。

 

(1)前中計の振り返り

①位置づけ
同社は、創立100周年となる2025年にあるべき姿に近づくための重要なステップとして策定した前半5ヶ年の計画である「中期経営計画(2016-2020)」を策定した。2016年17年は順調に推移したが、2018年以降、市場環境が想定以上に大きく変化し、2020年には新型コロナウイルスが全世界で拡大し大きく影響を受けた。

 

②市場環境の変化
世界的な新型コロナウイルス感染症拡大に加え、国内では、未来投資戦略など、農政によるスマート農業推進が想定以上に加速したが、消費税増税による駆け込み需要に対する反動が想定以上であった。また、天候不順、長雨による作況悪化、台風など自然災害による被害も甚大であった。
海外では、アセアンにおいてタイ市場が軟調で、販売競争が激化したほか、中国でも補助金政策の変化、穀物価格下落等により農機市場が低迷し、現地メーカー製品も台頭するなど成長の踊り場状態が継続した。

 

③数値目標について
上記のように想定した環境からの乖離もあり売上高、利益面ともに大きく未達となってしまった。
ただ、会社側は、各種施策は着実に進んだと考えているとともに、以下のような課題を認識している。

(同社資料より)

 

 

主な成果

引き継ぐべき残課題

激変する国内農業への対応強化

*販売・サービス体制広域化

広域販売会社を10社から6社体制に再編

*収支構造改革

メンテナンス収入が増加し、販売会社の利益率が改善。市場変化に合わせた拠点大型化

*大型、先端、野菜作の取り組み施策強化

*販売会社収益体質の更なる強化

海外事業の拡大

*イギリス、インドで戦略パートナーとの提携が拡大*市場にマッチした商品開発・投入

排出ガス規制対応、先端製品、コンパクトトラクタ等

*更なる連携強化による事業拡大

*ニーズ変化に対応した商品開発

(欧州:電動化、中国:ハイエンド等)

開発・生産最適化による収益力強化

*排出ガス規制エンジン内製化

コスト低減、競争力強化

*インドネシア事業の収益改善

PT.ISEKIインドネシアの黒字定着

*国内外の不採算商品の収益改善、低コスト設計の抜本的見直し

*生産区分最適化

 

(2)新中期経営計画の概要

①基本理念、長期ビジョン、キーワード
◎基本理念
「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ、豊かな社会の実現へ貢献する」
事業環境に対応したビジネスモデルの変化を目指すために前述の企業理念に、新たに「サービス」を加えた。

 

◎長期ビジョン
「食と農と大地」のソリューションカンパニー
~夢ある農業と美しい景観を支え、持続可能な「食と農と大地」の未来を創造する~

 

このビジョンの下、SDGsの実現にも取り組む。
*農業の強靭化を応援
*住みよい村や街の景観整備
*循環型社会を目指す環境保全

 

◎キーワード
「変革」
『次の100年に向けて…』

 

②経営環境と課題
◎環境認識

国内

海外

*農家戸数の減少と大規模化

*作付転換

*スマート化、規制改革(WAGRI(※)、オープンAPI、DX他)

*低価格化

*地域毎の多様な環境

*高機能化と低価格化(多様なニーズ)

*競争激化

※WAGRI:農業の担い手が、データを使って生産性の向上や、経営の改善に挑戦できる環境をつくるために、データの連携や提供機能を持つ「農業データ連携基盤」を指す。
※オープンAPI:OSやソフトウェアが提供している機能を外部のアプリケーションから利用できるようにするインターフェース。

 

加えて、「ウィズ〜アフターコロナ、世界的食糧問題、気候変動リスク」「ビジネスモデルの変化(モノからコトへ)」「環境意識の高まり(排出ガス、電動)」「非財務情報の開示要求の高まり、SDGs」「法規制変化への対応、コンプライアンス」への対応も必須である。

 

◎経営課題
*需要、ニーズ変化への対応
*技術革新の実現
*ESGへの取り組み強化
*財務体質改善、収益拡大
の4つを挙げている。

 

③基本戦略
計画の位置づけは「2025年に迎える100周年の次の100年に向けた礎づくり」。

 

基本戦略は経営課題の解決のための以下2つ。
<1.ベストソリューションの提供>
お客さまを対象に、製品だけでなくモノからコトへ「サービス」の提供に注力する。

 

各分野で国内、海外、開発生産が一体となった商品開発と営業戦略を推進し「選択と集中」に取り組む。
また、「サービス」を柱とするビジネスモデルの転換を図る。ビジネスモデルの転換においては、「情報」を軸としたDXの推進、ニューノーマルへの対応、メンテナンス収入の更なる拡大を目指す。

 

<2.収益とガバナンス強化による企業価値向上>
売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換を進める。対象となるステークホルダーは、株主・従業員・取引先。

 

営業利益率5%に向け、最適生産体制構築による構造改革、グループ全体最適視点での経営効率化、適切な財務・資本戦略を推進する。
また、ESGマテリアリティの見直しによる取り組み強化とSDGsへの貢献にも注力する。

 

これら基本戦略の推進にあたっては、事業別視点や社内カンパニー制導入による「不採算事業の見える化」や、グループ全体での人材をフル活用しての「人材の最適配置」が不可欠である。

 

④基本戦略の具体的な展開
◎選択と集中
(国内市場戦略)
重点施策は「大規模農家取組み強化」「DX、スマート戦略強化」「収支構造改革加速」の3つ。
大規模農家への取り組み強化には、「売上拡大機種」としてALL Japanシリーズ、スマート農機、野菜作機械、輸入作業機を挙げる。2020年にALL Japanシリーズのフルラインナップが完成した。今期はロボットトラクタの本格展開・低価格商品・野菜作機械を投入し、その後も上記重点商品を投入する。
DXやスマート戦略を強化し、「営業力及びサービス力向上」を図る。
収支構造改革を加速化し、「営業利益率を改善」する。

 

こうした国内事業の変革を進め、農業機械の「販売」と「サービス」を通じて存在感のある「ISEKI」を目指す。

 

(海外市場戦略)
「食と農と大地」のソリューションカンパニーとして世界各地の地域ニーズに、ものづくりを通して貢献する。

 

3極それぞれにおける戦略、施策は以下の通りである。

 

【北米】
*環境認識
北米コンパクト市場は堅調に拡大している。2020年度は21万台超の実績であった。
巣ごもり特需の一時的な反動は予想されるものの中長期的に市場は安定推移すると見込む。

 

*戦略・施策
パートナーであるAGCO社との協力関係を強化し、AGCOブランド戦略の展開をサポートする。
堅調な市場における売上・マーケットシェアの拡大に向け、商材の拡充、エコノミー仕様コストダウン機の投入を進める。
一方、収益性の改善・拡大のために低収益商品の改善を目指す。
こうした施策により、収益性の改善と共にシェアアップを図る。

 

 

【欧州】
*環境認識
欧州でのコンパクト及びディーゼルガーデン市場は中東欧含め緩やかに拡大する。
環境意識の高まりによる電動化が加速する。

 

*戦略・施策
欧州販売網を再構築する。サービスおよび販売体制を強化するほか、効率化によるグループ収益拡大を目指す。
ブランド認知度の高い景観整備市場でのシェア維持・拡大に向け、電動化及びインド勢対抗の低価格機の研究、開発を進める。
コンシューマー向け商品やインプルメント(※)の調達の効率化や低収益商品の改善による収益性の改善・拡大にも取り組む。
※インプルメント:トラクタが牽引する様々な作業機械。

 

【アジア】
*環境認識
アセアンでは、農市場の大きさと成長性が期待される。
韓国、台湾では、農業従事者の高齢化等、農業従事者不足が顕著となっている。
中国では、アジア最大の米生産量を担う低価格農機と高性能農機が混在している。

 

*戦略・施策
新生IST Farm Machinery(タイ)を起点にアセアン事業を加速化させる。
パートナーである韓国・台湾代理店を通じ大型高性能農機市場でのマーケットプレゼンスを確立する。
日本の高性能稲作農機と中国生産によるコストメリットを生む商材を取り混ぜて事業を展開する。

 

(商品・開発戦略)
強みである地域・商品と成長市場に集中した商品開発により収益を拡大させる。

 

国内では、「大規模化対応」がメインテーマである。
大中型、低価格、スマート農機、畑・野菜作商品のラインアップを強化する。
また農業スタイルの変化にも対応し、提供方法を多様化させる。

 

海外でのメインテーマは「ブランド拡大対応」。
強みである欧州と北米商品を更に強化する。
アセアンにおける商品の強化による足固めを図る。
中国・東アジアにおけるブランドを確立する。

 

国内外共通のテーマは、「安全・環境対応」と「先行開発」。
安全・環境対応においては、農作業事故防止への対応、排出ガス規制対応内製エンジンの拡大、電動商品の開発に取り組む。
先行開発(フロントランナー)においては、グローバル戦略機、環境問題に対応した電動化・水素活用、自動化・ロボット化・データ活用などがターゲットである。
この中で、「グローバル戦略機」「電動化」「自動化・ロボット化・データ活用」への取り組みは以下の通りである。

グローバル戦略機

食糧不足による農機需要の拡大に向けて、トラクタ、コンバイン、田植機それぞれ主となるプラットフォームを開発し、それをベースに各地域の規制および耐久性、デザインも考慮し、必要装備を付加したシンプル低価格なグローバル戦略機を投入する。

電動化

電動商品や研究で培った技術を活用し、環境問題に対応する欧州景観整備市場のプロ向け電動化商品を投入する。

コンシューマーを対象に、家庭菜園やハウス向け商品も展開する。

自動化・ロボット化・データ活用

国内農家の規模拡大に向けて、省力化やデータ利用型農業に対応するスマート農機を順次投入していきながら、レベル3の完全無人型の本格的な普及に向けて開発を推進する。

 

(同社資料より)

 

◎ビジネスモデル転換
(DXの推進)
スマート農機が重要なデバイスとなる。
収集したデータを販売・サービスにおいては「データを活用したユーザーの想いに応えるサービス」の開発につなげる。また、開発・生産においては新機能開発や品質分析を通じた商品開発に活用する。
ユーザーのDXと自社のDX、双方を推進し、農業バリューチェーンの発展に貢献する。

(同社資料より)
(ニューノーマル)
新型コロナウイルス感染症の拡大により、食への関心の高まりから食料の安定供給に向け、生産基盤の強化や食料自給率向上が重要となっていることや住環境保全による住みよい街づくりに貢献することから農業、景観整備事業はエッセンシャルビジネスであると再認識された。「食と農と大地」を支えるISEKIという立場から、営業面ではWebを活用したバーチャル実演会や小規模ロングラン商談会、生産面ではオンラインでの生産立ち上げサポート、働き方の面では在宅勤務や分散業務など、様々な変革を進めている。

 

(サービス事業の拡大)
「モノ」売りにとどまらず、「情報」のビジネス化などサービス事業を拡大していく。
国内では、部品・修理収入、作業機の拡大に向け、大型整備拠点の拡充、ICT等新規商材の拡大、サービス担当者増員および人材育成に取り組んでいく。
海外でも、部品、サービス事業の確立のため、ディーラー教育によるサービス力の強化、欧州代理店との連携強化を図る。
また、上記以外の新たなビジネススタイルを企画、展開していく。

 

◎収益性改善
(構造改革)
生産体制の改革を進める。
部品・ユニットの生産拠点および製品組立、出荷拠点など生産体制を再編し、グループの人材・設備を有効活用し生産性の向上を図る。
また、内外作の区分も見直す。
重要保安部品や技能伝承が必要なコア技術については内作を継続する一方で、上記の生産体制再編成に伴い、内作部品の外作化を推進し構造改革を図る。

(同社資料より)

 

 

(経営効率化)
各視点から効率化を図る。

業務効率化

*開発プロセス厳格化による開発の効率化

*IT、RPA、シェアードサービス強化で間接部門スリム化

営業効率化

*デジタルツールを活用した営業活動

*国内商品流通改善による運送コストと在庫の削減

投資効率最大化

*グローバル共通設計によるコストダウン、型式削減

*最適生産体制の再構築

人材の最大活用

*グループ全体での人員フル活用

*ダイバーシティ推進体制整備

 

(財務・資本戦略)
この5年間累計で営業CFを600億円創出し、ROE8%を目指す。
粗利率改善などによる営業利益率向上、CCCの改善などによる資産効率改善、減価償却内での設備投資、有利子負債削減、安定的な配当継続などに取り組む。
2025年に営業利益率5%、D/Eレシオ0.8倍を掲げている。設備投資においては資本コストも重視する。

 

 

前中計が大幅計画未達であったことを踏まえて、「売上に左右されることなく収益を確実にあげられる筋肉質への転換」が必須と考えている。

 

営業利益率5%実現に向けては、製品ごとの利益率改善、不採算商品の見直し、メンテナンス収入拡大、新規事業立ち上げによる「売上総利益率改善」と、生産区分最適化、余剰設備の整理、PRS・シェアード強化、ブロック戦略、不採算事業の整理による「固定比率改善」を具体的な施策として挙げている。

 

 

◎ESG
(SDGs)
3つのテーマを設定し、事業を通じての目標達成を目指している。

農業の強靭化を応援

 

 

住みよい村や街の景観整備

 

 

循環型社会を目指す環境保全

 

 

 

(ESG)
以下のESGマテリアリティを特定し、事業機会の創出とリスク低減を通じて社会課題の解決と価値提供を追求する。

分野

重要課題(マテリアリティ)

社会へ提供する価値

関連するSDGs

社会

ブランド価値向上

*顧客満足向上と品質づくり

*サプライチェーンマネジメント

*社会貢献と国際協調

*農業・景観整備の生産性向上、安全や環境負荷低減に貢献する商品・サービス

*女性農業者の活躍促進(農業女子応援プロジェクト)

*地域社会の活性化・発展

 

エンゲージメント向上

*ダイバーシティ

*働きやすい職場づくり

*労働安全衛生マネジメント

*多様な人材の創出

*安全で働きがいのある職場提供

 

環境

環境保全

*環境経営マネジメント

*環境適合設計(エコ商品)

*環境負荷低減(CO2ほか)

*温暖化ガス排出量削減

*循環型社会形成への貢献

 

企業統治

企業価値向上

*ガバナンスの強化

*リスクマネジメント

*コンプライアンス

*情報開示と建設的な対話

*企業価値向上、安定的な配当

 

 

(エコ商品、環境マネジメント)
グループ全体で環境マネジメントシステム(EMS)を導入しており、製造拠点(国内6、海外3)での認証取得率は100%。非製造拠点(国内販売会社9社)、その他9拠点でも同じく100%の取得率である。

 

また、環境負荷低減に向け、中長期目標を設定し推進している。
国内製造所の生産活動におけるCO2排出量削減を、2030年には2013年度比26%削減する。また、国内売上高におけるエコ商品比率を2030年には50%以上に引き上げる考えだ。また、2050年の脱炭素に向けて、電動化・水素活用なども検討し、取り組みを更にレベルアップしていく方向だ。

 

(人事の変革とエンゲージメント)
人事の変革においては、事業戦略に基づく人事政策を実行し、グループ人材の最適配置を行う。また、先端技術やグローバル人材など、今後の事業戦略実現に向けた人材の確保・育成に注力する。
従業員エンゲージメント向上に向け、エンゲージメントサーベイの実施やワークライフバランス充実を通じて働きやすく魅力ある職場を形成する。
加えて、次の100年を担う人材を育成するために、育成プログラムや教育を充実させるとともに、ダイバーシティを推進する。

 

(ガバナンス)
2021年に行われるコーポレートガバナンス・コードの改定を踏まえ、改革を進める。
取締役会に関しては、現在の取締役は全員日本人の男性のみで、社外取締役は10名中3名という状況であり、「社外取締役の比率向上、多様化検討」に取り組む。また、「後継者計画策定・報酬制度見直し」も重要な課題である。
海外子会社の内部統制や国内外における個人情報保護などコンプライアンスの更なる徹底、リスクマネジメントの一層の強化を図っていく考えだ。

 

◎計数目標
基本戦略の一つを「売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換を進める」としたように、売上規模を計数目標としては設定せず、「2025年 売上高営業利益率5%」を目標として掲げている。
前述の通り、売上総利益率改善、固定費削減、経営効率化、構造改革に取り組む。

 

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

10名、うち社外3名

監査役

5名、うち社外4名

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年3月31日

 

<基本的な考え方>
当社は経営環境の変化に迅速かつ的確に対応し、公正な経営を維持することを主たる目的として経営システムを運営しております。また、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を経営の最重要課題と考えており、株主の皆様やお客さまをはじめ、取引先、地域社会、従業員等のステークホルダーとの良好な関係を維持するために、コーポレート・ガバナンスの充実を図っております。ステークホルダーに対し重要な情報を適時適切に開示するための社内体制を整備するとともに、「コーポレート・ガバナンスはグループ全体で充実させることが重要である」との認識のもと、関係会社の管理規程、報告体制等を整備し業務の適正性の確保及び情報の共有化を図っております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則のうち、実施しない原則とその理由>

原則

実施しない理由

【原則4-1 取締役会の役割・責務】

【補充原則4-1-3 最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)】

当社は、取締役会の諮問機関として独立社外取締役を主要な構成員とする「指名報酬委員会」を設置しております。取締役候補者の指名に関しては、「指名報酬委員会」の答申を踏まえ、取締役会にて決議する体制としておりますが、現状においては、後継者の計画(プランニング)の策定までは行っておりません。 今後、「指名報酬委員会」において、最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)策定に向けた議論を行ってまいります

【原則4-11 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】

取締役会全体としての知識・経験・能力のバランス及び取締役会の規模は適正であると判断しておりますが、ジェンダーや国際性の面を含む多様性の確保については、今後の課題として検討を進めてまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

【原則1-4政策保有株式】

・政策保有に関する方針 当社は、農業機械の製造・販売等の過程における取引先企業との長期的・安定的な取引関係の維持・強化が、農業機械総合専業メーカーとして「需要家に喜ばれる製品」を安定的にお届けすることに不可欠であり、また、当社の中長期的な企業価値向上に繋がるものと考えております。そのため当社は、事業活動に不可欠な円滑な取引関係の維持・強化等により、中長期的な企業価値向上に資するものである場合に、必要と認める会社の株式を保有します。 株式保有の意義については、保有に伴う便益とリスク等について、資本コストを踏まえ、毎年取締役会において個別に検証しております。検証の結果、当社の中長期的な企業価値向上への貢献が期待できないと判断し、保有の意義が希薄となった株式については、売却検討対象とします。

 

・議決権行使の基準 保有株式に係る議決権行使は、発行会社の経営方針や経営状況等を踏まえ、当社の中長期的な企業価値向上に繋がるかに加え、株主共同の利益に資するかについて必要に応じて発行会社との対話を行う等、総合的に判断することとしております。

【補充原則4-11-3 取締役・取締役会の評価】

当社は、取締役会の機能のさらなる向上を目的として、取締役会の実効性につき、各役員による自己評価および分析を行いました。実効性評価は、第三者機関を起用し、取締役、監査役全員を対象に個別にアンケートおよびインタビューを実施するなど、個々の意見を求めやすい方法で実施しました。

アンケートの回答からは、社外役員の意見の反映や監督機能、「指名報酬委員会」を通じた取締役候補者指名の適切な監督などおおむね肯定的な評価が得られており、取締役会全体の実効性については確保されていると認識いたしております。

一方で、経営計画の進捗状況のフォロー、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画の策定・運用など、取締役会の機能の更なる強化や議論の活性化に向けた課題についても共有いたしました。

今後、当社の取締役会では本実効性評価を踏まえ、課題について十分な検討を行ったうえで迅速に対応し、取締役会の機能をさらに高めるべく、継続的にPDCAのサイクルを回して対応してまいります。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、株主の理解が不可欠であると認識しております。株主に当社の経営方針を分かりやすい形で説明し、建設的な対話を行い、長期的な信頼関係を構築していきたいと考えております。

 

(1)対話全般について統括・目配りを行う経営陣・取締役の指定 株主との対話全般については、経営管理部門(IR・広報室、総合企画部、財務部、総務部)の担当役員が統括し、当該役員、当該経営管理部門が決算説明会をはじめとした様々な取組みを通じて、建設的な対話が実現できるよう積極的な対応に努めています。 また、ホームページ上に専用ページを設け、経営方針、業績、様々な取組みなどを分かり易く掲載しています。

 

(2)対話を補助する社内部門の有機的な連携のための方策 IR担当者は対話を充実させるため、各テーマの担当部署と連携し、開示資料の作成や必要情報の共有などを積極的に進めています。 また、経営陣幹部への情報共有を図るため広報連絡会を月1回実施しています。

 

(3)個別面談以外の対話の充実に関する取組み 個別面談以外の対話の手段としては、アナリスト・機関投資家向けの決算説明会や個人投資家向け説明会を行っているほか、当社事業所見学会などを実施しています。

 

(4)対話において把握された株主の意見の経営陣へのフィードバック 株主との対話内容は、必要に応じ、会議体での報告やレポートの配布などにより、取締役・経営陣および関係部門にフィードバックし、情報の共有を図っています。

 

(5)対話に際してのインサイダー情報の管理・情報開示に関する方策 インサイダー情報の管理に関する規定を策定し、管理しています。 決算発表前の期間は、サイレント期間とし、投資家との対話を制限しています。また、情報開示にあたっては、公平かつ適時、適切な開示を実施します。

 

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

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