ブリッジレポート
(9445) 株式会社フォーバルテレコム

スタンダード

ブリッジレポート:(9445)フォーバルテレコム 2021年3月期決算

ブリッジレポートPDF

 

谷井 剛 社長

株式会社 フォーバルテレコム(9445)

 

 

会社情報

市場

東証2部

業種

情報・通信

代表取締役社長

谷井 剛

所在地

東京都千代田区神田錦町 3-26 一ツ橋SIビル2F

決算月

3月

HP

https://www.forvaltel.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

358円

16,693,195株

5,976百万円

27.6%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

17円

4.7%

46.13円

7.8倍

104.30円

3.4倍

※株価は6/14終値。時価総額は6/4終値×発行済株式数(百万円未満切捨て)。
※ROEとBPSは2021年3月期実績、EPSとDPSは2022年3月期の会社予想。
※数値は四捨五入。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

15,683

699

720

484

29.05

15.00

2019年3月(実)

18,347

888

800

589

35.33

17.00

2020年3月(実)

21,279

1,002

965

-960

-57.56

17.00

2021年3月(実)

21,729

846

653

456

27.32

17.00

2022年3月(予)

22,100

950

760

770

46.13

17.00

*単位は百万円、円。

 

 

フォーバルテレコムの2021年3月期決算等について、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.主要なサービスの概要
3.2021年3月期決算
4.2022年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 21/3期決算は前期比2.1%の増収、同32.4%の経常減益。売上面は、前期に発生した大口卸販売先の破産手続き開始決定によりIP & Mobileソリューション・ビジネスなどで減少したものの、新規獲得件数が順調に増加したユーティリティ・ビジネスと大口保険契約の獲得及びシステム開発受託等が寄与したコンサルティング・ビジネスで増加した。利益面では、大口卸販売先の破産手続き開始決定に伴い契約数が減少したIP & Mobileソリューション・ビジネスの減少が大きく影響した。また、営業外費用でIP&Mobileソリューション・ビジネスにおける、WBAサービスの回収率悪化による、貸倒引当金繰入額が増加した。

     

  • 22/3期会社計画は、前期比1.7%増収、同16.4%経常増益の予想。インターネット接続サービスや電力サービス「Elenova」などにおける新規顧客獲得が、売上高と利益の増加に寄与する見込み。また、連結子会社における事業譲渡による特別利益の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益の増加が大きくなる。22/3期の配当予想は、前期と同額の1株当たり17円(上期末7円、期末10円)の予定。

     

  • サブスクリプションモデルのCollabo One事業は、顧客・受注管理から請求・収納までを全てペーパーレスで行うことができる優れたプラットフォームである。サブスクリプションモデルの拡大は更なるストック収益の拡大をもたらし、同社の業績の成長性と安定性の向上につながるものと期待される。Collabo One事業の今後の事業展開が注目される。

     

1.会社概要

中小・中堅法人向けにOA・ネットワーク機器の販売やサービスの取次ぎを展開するフォーバル(8275)の連結子会社。フォーバルの連結決算において、フォーバルテレコムビジネスグループとしてセグメントされている(21/3期はフォーバルの連結売上高の42.7%を占めた)。グループは同社の他、連結子会社4社。

 

【事業内容と企業グループ】

同社及び連結子会社(株)FISソリューションズによる法人向けVoIPサービス(高速ブロードバンド回線を利用した電話やインターネット接続サービス)や法人向けFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス「どこでもホン」の提供と関連機器販売の「IP&Mobileソリューション事業」、連結子会社(株)トライ・エックスを中心にオン・デマンド印刷・印刷物のプランニング・デザイン等を手掛ける「ドキュメント・ソリューション事業」及び(株)保険ステーションによる保険やプライバシーマーク等に関する各種コンサルティング等の「コンサルティング事業」、小売電気事業者として電力を提供する「ユーティリティ・ビジネス事業」に分かれる。また、同社は、「2way Smart」の企画開発及び関連するハードウエア開発を手掛けている持分法適用非連結子会社(出資比率100%)(株)であったホワイトビジネスイニシアティブを、2018年9月30日付で同社へ吸収合併した。これは、グループとして経営資源の集中と効率化を図り、グループの競争力強化を目的としたものである。

 

【過去10年間の業績推移】

 

2.主要なサービスの概要

(1)フォーバルテレコム単体の事業マップ

 

(同社決算説明会資料より)

(2)フォーバルテレコム単体の事業(継続サービス)

Smartひかり
1社占有型の光ファイバーを使用している為、安定した回線速度を有したIP電話サービスを実現。全国一律のわかり易い料金プランで月々のコストがシンプルになり、さらに大幅ダウンが図られる。更に、自動迂回着信機能で万が一の時でも安心して使用できる。

 

(同社HPより)

 

iSmartひかり
NTT東日本・西日本が提供する光コラボレーションモデルを受け、同社がオリジナル料金で提供している光回線サービス。①バックボーンはNTTのフレッツ網を利用しているため品質が安定している、②請求の一本化ができるというメリットを持つ。おまか請求やワンビリングサービスで培われた請求一本化のノウハウが武器となっている。

 

(同社HPより)

 

 

(同社HPより)

 

iSmart接続
法人向けの高品質なインターネット接続サービスを個人ユーザー向けに価格・内容を最適化したフレッツ光(光コラボ)専用プロバイダサービス。

(同社HPより)

 

おまか請求
請求書・支払通知書・納品書をWeb化でコスト削減するツールを提供。顧客登録・受注登録・料金計算、請求書発行(WEB公開)・収納代行・督促支援業務などを含んだ請求代行サービス。請求に関する業務を代行し、顧客の請求コストの削減と業務負担の軽減を図る。また、おまか請求ではユーザーがクラウドサービスを安全に利用できるよう各種セキュリティ対策を実施している。


(同社HPより)

 

セキィリティ本舗
PマークやISMSなど各種ISOの認証取得・更新のコンサルティングを提供。認証取得支援から、運用支援、更新支援、規格改訂支援、各種セミナーなど、Pマークや各種ISOに関わるサポートを行っている。

 

(同社HPより)

 

3.2021年3月期決算

(1)連結業績

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

売上高

21,279,

100.0%

21,729

100.0%

+2.1%

売上総利益

6,596

31.0%

5,725

26.3%

-13.2%

販管費

5,594

26.3%

4,879

22.5%

-12.8%

営業利益

1,002

4.7%

846

3.9%

-15.5%

経常利益

965

4.5%

653

3.0%

-32.4%

親会社株主に帰属

する四半期純利益

-960

-

456

2.1%

-

*数値には(株)インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります(以下同じ)。
*単位:百万円

 

前期比2.1%の増収、同32.4%の経常減益
売上高は前期比2.1%増の217億29百万円。売上面は、前期に発生したインターネット接続サービスの大口卸販売先の破産手続き開始決定に伴い契約数が減少したIP & Mobileソリューション・ビジネスと新型コロナウイルス感染症の影響で、各種セミナー・イベント印刷物作成の減少が影響したドキュメントソリューション・ビジネスで減少した。一方、電力サービス「Elenova」の顧客数が順調に増加したユーティリティ・ビジネスと大口の保険契約の獲得及びシステム開発受託等などが寄与したコンサルティング・ビジネスで増加した。
営業利益は同15.5%減の8億46百万円。売上高が増加したユーティリティ・ビジネスとコンサルティング・ビジネスで増加したものの、売上高が減少したIP & Mobileソリューション・ビジネスやドキュメントソリューション・ビジネスで減少した。売上総利益率は26.3%と前期比4.7ポイント低下。前払販売奨励金の償却の減少等により販管費が同12.8%減少し、売上高対販管費比率は22.5%と前期比3.8ポイント低下した。この結果、売上高営業利益率が3.9%と前期比0.8ポイント低下した。その他、営業外費用においてIP&Mobileソリューション・ビジネスにおける、WBAサービスの回収率悪化を中心に貸倒引当金繰入額が2億18百万円(前期は44百万円)発生したことなどにより、経常利益は同32.4%減の6億53百万円と営業利益を上回る減益率となった。その他、前期に発生した貸倒引当金繰入額22億44百万円の計上がなくなったことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比14億16百万円増加した。

 

連結売上総利益の内訳

 

20/3期

21/3期

前期比

 

増減額

増減率

売上高

21,279

21,729

+449

+2.1%

 個別

16,196

16,365

+169

+1.0%

 子会社

5,083

5,364

+280

+5.5%

売上総利益

6,596

5,725

-870

-13.2%

 個別

4,574

3,666

-907

-19.8%

 子会社

2,021

2,058

+36

+1.8%

売上総利益率

31.0%

26.3%

-4.7P

-

 個別

28.2%

22.4%

-5.8P

-

 子会社

39.8%

38.4%

-1.4P

-

*単位:百万円

 

個別売上総利益の内訳

 

20/3期

21/3期

前期比

 

増減額

増減率

売上高

16,196

16,365

+169

+1.0%

 ストック収益(通話系)

9,411

8,660

-750

-8.0%

 ストック収益(ネット系他)

3,951

2,622

-1,328

-33.6%

ストック収益(電力)

1,399

3,772

+2,373

+169.6%

 一時収益

1,433

1,309

-124

-8.7%

売上総利益

4,574

3,666

-907

-19.8%

 ストック収益(通話系)

1,364

1,217

-147

-10.8%

 ストック収益(ネット系他)

2,558

1,543

-1,015

-39.7%

 ストック収益(電力)

209

467

+258

+123.8%

 一時収益

442

438

-4

-1.0%

売上総利益率

28.2%

22.4%

-5.8P

-

 ストック収益(通話系)

14.5%

14.1%

-0.4P

-

 ストック収益(ネット系他)

64.8%

58.9%

-5.9P

-

 ストック収益(電力)

14.9%

12.4%

-2.5P

-

 一時収益

30.9%

33.5%

+2.6P

-

*単位:百万円

 

連結の売上総利益は前期比8億70百万円の減少、売上総利益率は同4.7ポイントの低下となった。個別ベースの売上総利益は、大口卸販売先の破産手続き開始決定の影響が出たネット系他のストック収益の減少などが影響し、全体として9億7百万円減少した。電力のストック収益の売上高と売上総利益が増加した。また、子会社の売上総利益は、同36百万円の増加となった。

 

販管費の内訳

 

20/3期

21/3期

増減額

主な増減要因

販管費合計

5,594

4,879

-715

 

 

人件費

1,983

2,051

+67

 

 

支払手数料

1,900

1,218

-682

前払販売奨励金の償却の減少 前期比-682

委託業務費

498

544

+45

ユーティリティ・ビジネス拡大による各種

業務委託委費の増加など 前期比+45

情報処理費

185

245

+59

 

 

貸倒引当金繰入額

223

94

-129

 

 

その他

801

725

-76

 

 

*単位:百万円

 

販管費は、前期比で7億15百万円減少した。主にIP&Mobileソリューション事業におけるネット系ストック収益(ISPサービス)の獲得に伴う前払販売奨励金の償却費が減少した。大口卸販売先の破産手続き開始決定の影響を除いた場合、前払販売奨励金の償却費は前期比1億40百万円増加した。その他、ユーティリティ・ビジネス拡大により各種の業務委託費が増加した。

 

営業外損益の内訳(組替表示)

 

19/3期

20/3期

21/3期

主な増減要因

違約金収入等

691

(560)

3,076

(928)

618

(618)

 

 

前払費用除却損等

-678

(-547)

-3,041

(-893)

-564

(-564)

 

 

貸倒金引当金繰入額等

-47

-44

-218

WiFiルータ違約金収入の回収率悪化

その他

-55

-26

-29

 

 

営業外損益合計

-88

-36

-193

前期比-157

*単位:百万円
*下段の( )内の数値は、大口卸販売先の破産に関する金額を含まない金額

 

大口卸販売先の破産の影響を除くと、21/3期はWiFiルータ違約金収入の回収率悪化が営業外損益悪化の主要な要因となった。

 

(2)セグメント別動向

セグメント別売上高・利益

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

 IP&Mobileソリューション・ビジネス

15,497

72.8%

13,244

61.0%

-14.5%

 ユーティリティ・ビジネス

1,399

6.6%

3,772

17.4%

+169.6%

 ドキュメントソリューション・ビジネス

1,744

8.2%

1,586

7.3%

-9.0%

 コンサルティング・ビジネス

2,639

12.4%

3,126

14.4%

+18.4%

連結売上高

21,279

100.0%

21,729

100.0%

+2.1%

 IP&Mobileソリューション・ビジネス

915

91.4%

701

82.9%

-23.3%

 ユーティリティ・ビジネス

-199

-

-183

-

-

 ドキュメントソリューション・ビジネス

67

6.7%

56

6.7%

-16.3%

 コンサルティング・ビジネス

218

21.8%

271

32.1%

+24.3%

 その他

0

-

0

-

-

連結営業利益

1,002

100.0%

846

100.0%

-15.5%

*単位:百万円
*今第1四半期より「IP & Mobileソリューション・ビジネス」「ユーティリティ・ビジネス」「ドキュメントソリューション・ビジネス」「コンサルティング・ビジネス」の4つの報告セグメントに変更となった。前第1四半期のセグメント情報は、変更後の区分方法により作成された数値。

 

IP&Mobileソリューション・ビジネス 売上高132億44百万円(前期比14.5%減)、セグメント利益7億1百万円(同23.3%減)
主にVoIPサービス、モバイルサービス等の情報通信サービス全般を提供。前期に発生したインターネット接続サービスの大口卸販売先の破産手続き開始決定に伴い契約数が減少したこと等により売上高・利益が減少した。売上総利益は前期比17.2%減、経費は同15.7%減となった。また、売上高対セグメント利益率は5.3%と前期比0.6ポイント低下した。一方、大口卸販売先の破産手続き開始決定の影響を除くと、売上総利益が前期比10.0%増、セグメント利益が同22.9%増となった。

 

ユーティリティ・ビジネス 売上高37億72百万円(前期比169.6%増)、セグメント損失1億83百万円(前期はセグメント損失1億99百万円)
電力を提供。電力サービス「Elenova」の新規獲得件数が順調に伸びたこと等により、売上高が大幅に増加したものの、売上総利益は15百万円の増加にとどまった。2020年12月下旬から2021年1月にかけて発生した、日本卸電力取引所の電力取引価格の高騰の影響を受け、仕入原価が増加したことにより、3億78百万円の売上総利益の押し下げ要因が発生しセグメント損失となった。売上総利益は前期比18.5%減、経費は同13.3%減となった。

 

ドキュメントソリューション・ビジネス売上高15億86百万円(前期比9.0%減)、セグメント利益56百万円(同16.3%減)
主に普通印刷、印刷物のプランニング・デザイン等を行う。新型コロナウイルス感染症の影響で、各種セミナー・イベント印刷物作成が縮小されたことなどにより、前期比で売上高・利益が減少した。売上総利益は前期比11.9%減、経費は同11.2%減となった。また、売上高対セグメント利益率は3.6%と前期比0.3ポイント低下した。

 

コンサルティング・ビジネス 売上高31億26百万円(前期比18.4%増)、セグメント利益2億71百万円(同24.3%増)
主に経営支援コンサルティング、保険サービス及びセキュリティサービス等を行う。新型コロナウイルス感染症拡大により、ショッピングモール併設の保険店舗の一時的な閉鎖等が発生したものの、大口の保険契約の獲得及びシステム開発受託等により売上高・利益が増加した。売上総利益は前期比3.6%増、経費は同0.8%減となった。また、売上高対セグメント利益率は8.7%と前期比0.4ポイント上昇した。

 

 

(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

20/3月末

21/3月末

 

20/3月末

21/3月末

 現預金

1,030

1,535

 仕入債務

2,395

2,375

 売上債権

3,443

3,462

 短期有利子負債

3,956

3,800

 有形固定資産

115

94

 長期有利子負債

90

30

 無形固定資産

841

842

負債合計

10,234

10,002

 投資その他

2,904

2,495

純資産合計

1,580

1,753

資産合計

11,814

11,755

負債純資産合計

11,814

11,755

*有利子負債=借入金
*単位:百万円
21/3月末の総資産は、20/3月末比59百円減の117億55百万円。資産サイドでは現預金、たな卸資産等が主な増加要因で、未収入金、長期前払費用等が主な減少要因。負債・純資産サイドでは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金等が主な増加要因で、短期借入金、未払法人税等が主な減少要因となった。21/3月末の自己資本比率は14.8%と20/3月末の13.3%から1.5ポイント上昇した。

 

キャッシュ・フロー

 

20/3期

21/3期

前期比

営業キャッシュ・フロー(A)

59

1,249

1,190

+2,010.6%

投資キャッシュ・フロー(B)

-189

-244

-55

-

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

-130

1,004

1,134

-

財務キャッシュ・フロー

-349

-499

-150

-

現金及び現金同等物期末残高

1,030

1,535

505

+49.0%

*単位:百万円

 

CFの面では、税金等調整前当期純利益の増加や前払費用の増減額の減少などにより営業CFのプラス幅が拡大した。一方、無形固定資産の取得による支出の増加などにより投資CFのマイナス幅が拡大したものの、フリーCFはプラスへ転じた。その他、短期借入金の減少などにより財務CFのマイナス幅が拡大した。以上の結果により、現金及び現金同等物期末残高は前期比49.0%増加した。

 

(4)報告セグメントの変更

同社は従来「IP & Mobileソリューション事業」「ドキュメント・ソリューション事業」「コンサルティング事業」の3つの報告セグメントであったが、21/3期第1四半期より、「IP & Mobileソリューション・ビジネス」「ユーティリティ・ビジネス」「ドキュメントソリューション・ビジネス」「コンサルティング・ビジネス」の4つの報告セグメントに変更した。これは、従来、「IP & Mobileソリューション・ビジネス」に集計されていた電力供給事業を、経済的特徴の相違・金額の重要性の観点から、報告セグメントを「ユーティリティ・ビジネス」にすることが望ましいと判断したものである。

 

(5)連結子会社における事業譲渡及び特別利益の計上

同社は、連結子会社である株式会社トライ・エックスの複写・印刷業の広島事業部を株式会社トライサクセスへ譲渡することを決定した。なお、この譲渡により約 3億54百万円の事業譲渡益が見込まれるものの、譲渡実行日が4月1日であることから、2022年3月期決算における特別利益の計上となる。

 

4.2022年3月期業績予想

1)連結業績

 

21/3期 実績

構成比

22/3期 予想

構成比

前期比

売上高

21,729

100.0%

22,100

100.0%

+1.7%

営業利益

846

3.9%

950

4.3%

+12.2%

経常利益

653

3.0%

760

3.4%

+16.4%

親会社株主に帰属

する当期純利益

456

2.1%

770

3.5%

+68.7%

*単位:百万円

 

22/3期の業績予想は、前期比1.7%増収、同16.4%の経常増益
22/3期会社計画は、売上高が前期比1.7%増の221億円、経常利益が同16.4%増の7億60百万円の予定。引き続き、顧客の事業インフラと生活インフラの費用対効果の向上ニーズへの対応を通じて事業の拡大を図る。
売上高面では、現在注力している電力サービス「Elenova」とSmartひかりやiSmartひかりやおまか請求など継続サービスとのシナジー効果により、新規顧客の獲得を図り、ユーティリティ・ビジネス、IP & Mobileソリューション・ビジネス、コンサルティング・ビジネスの拡大を目指す。
利益面では、売上高拡大に加え、電力サービスにおける相対電源比率100%による仕入価格の安定化などが営業利益の増加に寄与する見込みである。売上高営業利益率は4.3%と前期比で0.4ポイント上昇する計画。また、WiFiルータ違約金収入の未回収率抑制により貸倒引当金繰入額が減少することから経常利益の増益率は営業利益の増益率を上回る予定。その他、連結子会社における事業譲渡による特別利益の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益の増加が大きくなる。
また、22/3期の配当予想は前期と同額の1株当たり17円(上期末7円、期末10円)の予定。同社は、成長事業を中心とした販売促進と基幹システム投資に内部留保を活用する一方で、業績に連動した利益還元の双方バランスに配慮して連結配当性向50%程度を目安に配当を実施するとの配当政策の基本方針を掲げている。なお、この事業譲渡による特別利益を除外した場合の連結配当性向は54.4%となる見込み。

 

(2)22/3期の取り組み

電力事業の拡大-【Elenova(エレノバ)】
Elenovaとは、電力自由化に伴い、同社が小売電気事業者となって、オリジナル料金で提供している電力サービス。
Electric(電気の)+nova(新星 新しい)+value(価値)から作成した新語。すべての人に、あらたな価値をもたらす電気事業の意味が込められている。
Elenovaは、電力自由化に伴い、同社が小売電気事業者として顧客に電力を提供する新電力サービス。従来電力は、地域指定の電力会社に供給されていたため、法人・個人を問わず電力会社を自由に選ぶことはできなかったが、2016年4月に電力が全面自由化されたことにより、企業、一般家庭共に電力会社を選ぶことが可能となった。現在は小売電気事業者ごとに「低価格設定」や「環境への配慮」など、様々な形態で電力が供給されている。こうした環境下、様々な小売電気事業者が誕生しているが、同社のように全国規模で中小法人を対象に事業を運営している小売電気事業者は少ない。
一般社団法人エネルギー情報センター統計情報(新電力ネット)のデータによると2020年12月末の新電力低圧全国契約口数は、前年12月末に比べ31%増加した。今後も魅力的な料金を提供している小売電気事業者の契約口数の拡大が予想される。

 

(出所:一般社団法人エネルギー情報センター統計情報(新電力ネット)より)

 

(同社決算説明会資料より)

 

こうした環境下、SmartひかりやiSmartひかり、おまか請求など継続サービスとのシナジー効果を高め、電力サービス「Elenova」の新規顧客獲得の拡大を目指す。更に、2020年12月下旬から2021年1月にかけて発生した、日本卸電力取引所の電力取引価格の高騰の影響を受け仕入原価が大幅に増加したことに対応し、22/3期より電力サービスにおける相対電源比率を100%にすることで仕入価格の安定化を図る予定である。

(同社決算説明会資料より)

 

Collabo One事業の拡大
Collabo One事業は、見込管理・顧客管理・電子契約・受注管理・料金計算・請求書発行・収納などに関する統合プラットフォームをサブスクリプションモデルで提供するサービスである。本サービスの導入により、顧客企業は顧客・受注管理から請求・収納までの全てをペーパーレスにできる他、営業数字の見える化、リアルタイムの業績管理、販売戦略の策定に役立てることができる。また、クラウドサービスであるため、テレワークが推進され働き方改革にもつながる。更に、当該統合プラットフォームは、代理店管理(手数料計算など)、見積書・各種帳票PDFデータの作成、通知メール配信、エンドユーザ向け会員サイトの提供、営業日報、各種データ出力などの便利な機能も利用することができる。現在おまか請求を受託している通信分野の顧客に加え、中小企業に対して当該統合プラットフォームを今後積極的に販売する計画である。

 

(同社決算説明会資料より)

5.今後の注目点

同社の21/3期業績は、前期比32.4%の経常減益と一見すると厳しい決算となったものの、その内容は決して悪くない。主力事業であるIP&Mobileソリューション・ビジネスは、売上総利益が前期比17.2%減、セグメント利益が同23.3%減となったものの、これは20/3期に発生した大口卸販売先の破産手続き開始決定の影響である。この影響がなければ、売上総利益は前期比で10.0%増加し、セグメント利益も同22.9%増加していた。新規顧客が順調に増加している証明であろう。これら特殊要因がなくなる22/3期において、IP&Mobileソリューション・ビジネスの成長基調が再度強まるのか注目される。また、現在注力しているユーティリティ・ビジネスにおいては、売上高が前期比で23億73百万円の大幅な増加となった。業界の成長率をはるかに上回る驚きの数字である。通信分野で多数の顧客を抱える同社の豊富な顧客基盤が高成長に結びついているものと推測される。一方で、ユーティリティ・ビジネスの売上総利益は前期比で38百万円の減少となった。これは、前期に発生した日本卸電力取引所の電力取引価格の高騰による仕入原価の増加が影響したものである。同社はこれに対応して22/3期より相対電源比率を100%にすることで仕入価格の安定化を図る予定である。相対電源比率の上昇は、平常時の割高な電源調達につながり収益率の低下を招くものの、電力取引価格の高騰時に大規模な赤字の計上を回避することが可能となる。売上高の拡大と経費のコントロールによりどれ位の利益を獲得することができるか、ユーティリティ・ビジネスの今後の収益性が注目される。
加えて、今後注力するサブスクリプションモデルのCollabo One事業は、顧客・受注管理から請求・収納までを全てペーパーレスで行うことができる優れたプラットフォームであり今後の拡大が期待される。本格的な業績寄与は数年先になると思われるが、サブスクリプションモデルの拡大は更なるストック収益の拡大をもたらし、同社の業績の成長性と安定性の向上につながるものと予想される。Collabo One事業の今後の動向にも期待を込めて注目したい。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態および取締役・監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役(監査等委員含む)

8名、うち社外2名

監査等委員

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年5月31日

 

<基本的な考え方>
当社では、取締役会を唯一の経営意思決定機関として位置付けております。
定例取締役会を毎月開催するほか、重要案件が生じる都度臨時取締役会を機動的に開催し、迅速かつ的確な経営判断を行っております。
また、企業経営情報の積極的な開示を目的として、適時に当社のホームページにおいて財務情報に限定されないディスクロージャーを行っております。
当社は、監査等委員設置会社形態を採用しており、同形態により十分にガバナンスが機能していると認識しております。

 

<コーポレート・ガバナンス・コード各原則の実施について>
実施をしないコード:8項目、そのおもな原則と理由

原則

実施しない理由

(原則3-1 情報開示の充実)

(1)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画

会社の目指すところ(経営理念等)は、「社是」であり、「社員・家族・顧客・株主・取引先と共に歩み社会価値創出を通してそれぞれに幸せを分配することを目指す」を基本理念に中期経営計画を策定しております。

しかし当社の事業環境における経営状況の変化は激しいため、柔軟な対応が阻害されないよう、現在、中期経営計画は公表をしておりません。

なお、公表はしておりませんが中期経営計画の目標に対する実績分析は毎回実施し、毎年度の経営戦略・経営計画に反映させるとともに、次期中期経営計画に反映しております。

(2)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針

コーポレート ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針は、コーポレート・ガバナンスに関する報告書「1.基本的な考え方」に記載しております。

(3)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続

取締役の報酬等を決定する方針については、会社業績との連動性を確保し、職責と成果を反映させた体系としています。特に賞与(決算賞与)については各期の当期純利益をベースとし、配当、社員への賞与水準、過去の支給実績などを総合的に勘案し、取締役会が決議しております。

(4)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続

取締役候補の指名にあたっては、当社の社是を理解し、的確かつ迅速な意思決定、適切なリスク管理、業務執行の監視および会社の各機能と各事業部門をカバーできるバランスを考慮し、適材適所の観点より総合的に検討し、取締役会で決議しております。

(5)取締役会が上記(4)を踏まえて経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選解任・指名についての説明

取締役候補者の指名理由は、「株主総会招集ご通知」の参考書類に記載しております。

(補充原則4-1-2 中期計画達成状況の株主説明)

会社の目指すところ(経営理念等)は、「社是」であり、「社員・家族・顧客・株主・取引先と共に歩み社会価値創出を通してそれぞれに幸せを分配することを目指す」を基本理念に、中期経営計画を策定しております。

しかし当社の事業環境における経営状況の変化は激しいため、柔軟な対応が阻害されないよう、中期経営計画は公表をしておりません。

なお、公表はしておりませんが中期経営計画の目標に対する実績分析は毎回実施し、毎年度の経営戦略・経営計画に反映させるとともに、次期中期経営計画に反映しております。

(補充原則4-2-1 中長期的な業績と連動する報酬体系)

当社は、経営陣の報酬については、毎年定時株主総会後の取締役会において、会社の業績や経営内容、経済情勢等を総合的に考慮して個別の報酬額を決定しております。

中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合については、検討してまいります。

(補充原則4-10-1 任意の仕組みの活用)

当社の取締役会は独立社外取締役2名を含む総勢8名と少人数で構成されており、指名・報酬等に係る重要事項の審議についても、現行の仕組みで独立社外取締役の適切な関与・助言を得ることができると考えております。

(原則5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表)

当社は、中期経営計画を策定しておりますが、当社の事業環境における経営状況の変化は激しいため、柔軟な対応が阻害されないよう、中期経営計画は公表をしておりません。

なお、公表はしておりませんが中期経営計画の目標に対する実績分析は毎回実施し、毎年度の経営計画に反映させるとともに、次期中期経営計画に反映しております。

 

<開示している主な原則>

原則

開示している主な原則

(原則1-4 政策保有株式)

当社では政策保有株式は現在保有しておりません。また、今後も原則として政策保有は行わない方針です。

(原則2-6 企業年金のアセットオーナーとして機能発揮)

当社には、企業年金基金制度はありません。

(原則4-9 独立社外取締役の独立性判断基準及び資質)

当社は、会社法及び東京証券取引所が定める独立性基準を満たしていることに加え、誠実な人柄、高い見識と能力を有し、当社の経営に対し真摯かつ建設的に助言できる経験を重視しております。

(補充原則4-11-3 取締役会の実効性の分析評価)

当社は、取締役会の実効性を評価するため、すべての取締役に対し「取締役会評価のための自己評価アンケート 」を実施し、その回答を分析・評価しました。

その結果、取締役会の構成員の多様性や中長期の戦略討議等に課題があるものの当社の取締役会は概ね適切に運営されていることを確認いたしました。

今後も、評価結果を次年度に生かしつつ引き続き取締役会の実効性の向上に努めてまいります。

 

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