ブリッジレポート
(9600) 株式会社アイネット

プライム

ブリッジレポート:(9600)アイネット 2021年3月期決算

ブリッジレポートPDF

 

 

坂井 満 社長

株式会社アイネット(9600)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役社長

坂井 満

所在地

横浜市西区みなとみらい3丁目3番1号 三菱重工横浜ビル23階

決算月

3月

HP

https://www.inet.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,427円

16,242,424株

23,177百万円

9.5%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

47.00円

3.3%

100.15円

14.2倍

1,014.82円

1.4倍

*株価は6/1終値。各数値は21年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

25,615

2,081

2,051

1,368

86.06

38.00

2019年3月(実)

27,591

2,345

2,347

1,521

95.72

40.00

2020年3月(実)

31,097

2,501

2,531

1,672

105.13

43.00

2021年3月(実)

30,016

2,155

2,279

1,494

93.62

46.00

2022年3月(予)

32,500

2,330

2,330

1,600

100.15

47.00

*単位:百万円、円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。(以下、同様)

 

株式会社アイネットの2021年3月期決算概要、2022年3月期業績予想などをご紹介致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:中期経営計画について>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 国内最高レベルの安全性を備えた自社データセンターと長年培ったシステムの運用管理を基盤に、システムの企画・開発から運用・監視、印刷・封入封緘、先進のクラウドコンピューティングまで、顧客の様々なニーズに最適なソリューションをワンストップで提供。垂直統合と水平展開による強力な事業展開力、強固な顧客ポートフォリオに支えられた安定したビジネスモデルなどが強み。

     

  • 2021年3月期の売上高は前期比3.5%減の300億円。情報処理サービスは増収も、システム開発サービス、システム機器販売は減収。売上総利益は情報処理サービスが前期並み、システム開発サービスは減益。利益率も低下した。販管費が同1.2%増加したため、営業利益は同13.8%減の21億円となった。修正予想に対しては、売上・利益とも上回った。

     

  • 22年3月期の売上高は前期比8.3%増の325億円、営業利益は同8.1%増の23億円を予想。引き続き好調なデータセンターサービス・クラウドサービスの拡大と、前期に中断、延期になったシステム開発案件にも着実に対応することで、従来の成長路線への回帰を目指す。システム開発サービスは2ケタの増収増益(売上総利益)を計画している。配当は前期の普通配当44.00円/株に記念配当2.00円/株を含めた合計46.00円/株を更に1.00円/株上回る47.00円/株を予定。10期連続の増配の予定。予想配当性向は46.9%。

     

  • 現在進行中の中期経営計画について1年目は売上、利益ともに計画を達成したが、2年目の21年3月期はコロナ禍の影響もあり、売上・利益とも未達となった。取り組むべき施策に変更は無いものの、事業環境などを精査した結果、最終年度となる2022年3月期の当初計画値を下方修正した。

     

  • 減収減益で予想も下回り、中期経営計画最終年度となる2022年3月期の計画値も下方修正となった。データセンター・クラウドサービスにおいて戦略的に低利益率の大型案件を受託し、その収益低下分をシステム開発サービスでカバーしようという施策が、コロナ禍により上手く稼働しなかった形だ。ただ、同社が成長の柱と位置付けるデータセンター・クラウドサービスは引続き伸長しており、厳しい環境の中でも今後の成長基盤強化を進めることはできたといえよう。今期も急激な環境の好転は望みにくいが、強固な顧客ポートフォリオに支えられた安定したビジネスモデルを有する強みを活かし、「売上高325億円、営業利益23億円」からどれだけ上積みを行えるのかに注目していきたい。

     

1.会社概要

国内最高レベルの安全性を備えた自社データセンターと長年培ったシステムの運用管理を基盤に、システムの企画・開発から運用・監視、印刷・封入封緘、さらには先進のクラウドコンピューティングに至るまで、顧客の様々なニーズに最適なソリューションをワンストップで提供している。垂直統合と水平展開による強力な事業展開力、強固な顧客ポートフォリオに支えられた安定したビジネスモデルなどが強み。

 

【1-1沿革】

自家用車の普及が急速に進む中ガソリンスタンドも増加することが見込まれる一方で、当時のガソリンスタンドでは、売掛管理、販売管理、顧客管理などを確実・効率的に処理することは難しく、経営者は頭を抱えていた。
これを解決する仕組みを導入すれば、大きなビジネスチャンスが生まれると考えた外資系石油会社出身の池田典義氏(現:株式会社アイネット創業者最高顧問)は、1971年、ガソリンスタンドの受託計算処理を目的として株式会社アイネットの前身となる(株)フジコンサルトを設立した。
池田氏の想定通り、出光興産(当時)を皮切りに、昭和シェル石油、モービル石油、キグナス石油、三井石油など石油元売り各社の地域または全国指定計算センターに指名され、業容は急速に拡大。1997年に東証2部に上場した。
その後は、M&Aも含めて石油販売業以外にもフィールドを拡張し、データセンター、金融、製造、小売・流通など現在の主力分野でも存在感を高めていく。2006年には東証1部銘柄に指定された。
その後もドローンを始めとした新たな成長フィールドの開拓を進めている。

 

【1-2企業理念】

2021年に創立50周年を迎えるにあたり、持続的成長が可能な企業を目指し、さらなる成長をしていくためには役員および社員が全員で、いかなる行動を起こす場合においても基準となる共通の価値観を共有することが必要であると考え、グループの理念となる「inet Way」を制定した。

 

「inet Way」は、「企業理念」・「企業ビジョン」・「経営方針」・「中期経営計画」の4つの柱から形成され、その土台には企業人として守るべき「企業行動憲章」と、「inet Way」を達成するための原動力となる「行動指針」がある。

 

(同社資料より)

 

「inet Way」では、事業規模を拡大していくとともに、揺るぎない事業成長基盤を作り上げていくために、新たに「持続的成長を可能にするエクセレントカンパニーへ」という経営方針を定めた。
「会社も社員も、常に時代や時流の変化を鑑みながら自ら変化していくことで、成長を続けていかなければならない」という想いを込めている。

 

企業理念

情報技術で新しい仕組みや価値を創造し、豊かで幸せな社会の実現に貢献する。

企業ビジョン

アイネットグループは、「創造」「挑戦」「信頼」をベースに持続的な企業価値向上を目指し、社会とステークホルダーに貢献する企業として成長します。

 

integrated

知恵の価値を共有し、情報化社会をリードする企業

 

networking

技術と技術、心と心(人と人)、個人と社会のネットワーキングづくりを目指す企業

 

energy

持続可能な社会の実現に向けた創造性とイノベーションに挑戦する活気あふれた企業

 

technology

情報技術で豊かで幸せな社会の実現に取り組む企業

経営方針

持続的成長を可能にするエクセレントカンパニーへ

 

中期経営計画については後述する。

 

【1-3市場環境】

同社では、主要分野及び今後の注力分野における業界環境、事業環境を以下のように認識している。

 

(同社資料より)

 

同社が強みとするデータセンター市場、注力しているドローン市場、共に今後も順調な拡大が見込まれている。

 

石油元売り企業が統合・再編によって1990年当時の15社から5社に集約されたこともあり、国内のサービスステーションも1990年ごろをピークに、現在はその半分まで減少している。
ただ、そうした中でも同社は、競合他社が撤退していることもあり、これまでに培ってきた実績や実力をベースに、新規顧客を獲得して更にシェアを向上させ、ナンバーワンのポジションを磐石なものとしている。
クレジットカードや売上データの相互連携などのシステム開発案件が多く発生していることに加え、顧客獲得のための大きな投資も不要で、同社にとってはフォローの風となっている。
また、クラウド、AI、IoT、RPAなどビジネスをより効率化する技術や手法の登場、浸透もあり、石油関連以外でもほぼ全ての分野でシステム投資需要が拡大しており、同社を取り巻く事業環境は良好である。

 

【1-4 事業内容】

国内最高レベルの安全性を備えた自社データセンターと長年培ったシステムの運用管理を基盤に、システムの企画・開発から運用・監視、印刷・封入封緘、さらには先進のクラウドコンピューティングに至るまで、顧客企業の様々なニーズに応じた最適なソリューションをワンストップで提供している。
主な事業は「情報処理サービス」「システム開発サービス」「システム機器販売」の3つ。

 

(1)情報処理サービス
「ITマネージドサービス」、「クラウドサービス」、「石油販売業、小売流通業、金融業等の勘定系・情報系処理受託」、「クレジットデータの与信管理並びにカード会社への納品代行」、「請求書、販促DM等の印刷、加工並びに発送処理」の5つのビジネスから構成されている。
同社ではこの情報処理サービスをストックビジネスと定義し安定成長の基盤と考えている。(詳細は【1-5 特長・強み】を参照)

 

◎データセンターサービス
情報処理サービスにおいて同社が近年最も注力し、強みを発揮しているのが「データセンターサービス」および「クラウドサービス」だ。いずれも業界に先駆けていち早く育成に取り組んだ。
データセンターは、北海道(1棟)、横浜(4棟)、長野(1棟)、大阪(1棟)と全国4か所に7棟を有し、相互のバックアップを行い災害にも備えている。

 

◎クラウドサービス
データセンタービジネスで培った事業基盤を活用してスタートした「クラウドサービス」では自社サービスのみではなく、競争力があり、顧客にとって有用なアプリケーションを提供している様々な企業と提携して、プラットフォームに搭載。
顧客満足度を高めることで、安定したストック型ビジネスとして確立している。

 

 

データセンター・クラウドサービスは過去10年間でマーケットの成長とともに、売上高は5倍近くまで成長し、売上構成比も上昇。
今後も成長ドライバーとして位置付けている。

 

◎サービスステーション向け受託計算・決済処理
創業ビジネスであるサービスステーション(ガソリンスタンド)の受託計算及び決済処理においては、ガソリンスタンドでの決済手段のうち、クレジットカードと売掛決済に関するサービスを提供している。
クレジットカード決済においては、ネットワークを通じて同社のデータセンターで処理を行っている。
売掛データはガソリンスタンドに代行して、数量、単価、値引き等、さまざまな計算を行い、月末には請求書を作成して発送している。
国内のガソリンスタンドのうち約33%が同社のシステムを利用しており、トップシェアである。
クレジットカードや売掛金処理で培ったノウハウ、実績、事業基盤を活用し、金融、小売等、他業種における決済処理へと横展開を進めてスケールを拡大してきた。

 

最近では、緊急車両等の燃料給油をシームレス化することで緊急時の活動を支援するため、全国各地の石油組合向けに「官公需カードシステム」の展開を強化している。
同システムは各都道府県の公共機関(県警本部、病院、県庁など)が、緊急時・災害時に優先的に給油可能な一括契約の下、各県内のどのメーカーのガソリンスタンドでも同一カードで給油できるというもの。全国各地の石油組合向けに展開し、現在4県に導入済みで、今後も拡大する計画だ。

 

また、LPG販売管理システムを自社クラウド上で運用するプロパンガス事業向けサービスの提供も開始した。
開発・運用・BPO・コールセンターをワンストップで提供する。営業体制を強化、更なる拡販を図る。

 

◎プリント・メーリング
ガソリンスタンドにおける請求書発送業務を手掛けてきた経緯から、クレジットカード利用明細、納税通知書、選挙はがき等の帳票印刷、ダイレクトメール、請求書などのプリント及び封入封緘なども行っている。
主要顧客であるクレジットカード会社のデータ入力・カード申込受付・カード利用照会・コールセンター業務を受託するBPO(Business Process Outsourcing)業務も手掛けている。

 

(2)システム開発サービス
長年培った信頼関係をベースに、業務アプリケーション開発、パッケージソフト開発、汎用ツール開発、制御組込、宇宙開発など幅広い分野において顧客のシステム設計、構築を行っている。
顧客業種は、銀行・金融機関、ガソリンスタンド、コンビニ・スーパー、宇宙開発、建設・建築、航空・旅行、官公庁・自治体、医療、製造と極めて幅広い。

 

 

21/3期はコロナ禍の影響で顧客企業の投資が低調で減収となったが、業務の効率化、人手不足への対応をはじめとした企業の競争力強化のために、ソフトウェア投資需要は中長期的には堅調と見込んでいる。

 

(3)システム機器販売
顧客へのシステム導入に際して必要なPC、POS、サプライ品、パッケージソフトを仕入れ・販売するほか、機器やソフトの操作指導も行っている。

 

【1-5 特長・強み】

(1)垂直統合と水平展開による強力な事業展開力
ガソリンスタンドの受託処理を祖業とする同社では、受託処理に次いで、システム導入のための設計・コンサル、システム構築、自社データセンターの運営、請求書発送のための帳票印刷・封入封緘、コールセンターやBPOといった業務を垂直統合し、ガソリンスタンド向けビジネスにおいて基盤を構築・強化し、事業フィールドを拡張してきた。
加えて、そこで培ったノウハウや技術力をベースに、ガソリンスタンド以外の流通、製造、金融機関など他業種に対象を広げてシステム構築を受託したり、データセンターを外販したりするなど、水平展開にも取り組み多種多様な顧客を開拓してきた。
事業フィールドと顧客ベースの拡張、この強力な事業展開力は同社を評価するうえで欠くことのできない重要なポイントである。

 

 

(同社資料より)

 

 

(2)強固な顧客ポートフォリオに支えられた安定したビジネスモデル
上記の強力な事業展開力によって獲得した顧客数は4,000社を超える。業種も様々で、多種多様な企業で構成された顧客ポートフォリオに対し、クラウドデータセンターを軸として、顧客のビジネス形態に合わせてさまざまなサービスを展開しているため顧客や業界の浮き沈みに影響されない安定したビジネスモデルを確立している。

 

 

(同社資料より)

 

(3)ワンストップサービスの提供
幅広い業種、業態の顧客に対し、ITに関わるさまざまなサービスをワンストップで提供できる点も強みである。

 

例えば顧客の1社であるオリックス銀行では、カードローン業務において、広告・貸付・入金・回収以外すべてのプロセスをアイネットが担当し、データセンター上で運用管理を行っている。

 

(同社資料より)

 

このように、システム開発、データセンター、システムの構築・運用、多様なクラウドサービスの提供、請求書や各種帳票の印刷・封入封緘、発送など、ITに関わる上流から下流まで、全ての工程で、セキュリティレベルの高いサービスを提供できる会社は少なく、高い顧客利便性及び顧客満足度は強固な参入障壁、強力な競争優位性に繋がっている。

 

(4)ストックビジネスの拡大により安定成長を実現
売上構成は3割強で、6割を占めるシステム開発サービスよりも低い情報処理サービスであるが、同社では同サービスを「ストックビジネス」と定義し、安定成長の基盤と位置付けている。
ストックビジネスとは、「毎月定額で売上を得られるもの」「次年度以降も契約が継続されるもの」で、クラウドサービスやデータセンターサービスに代表され、SS受託計算(ガソリンスタンド)、プリント・封入封緘など。

 

前述のように、データセンター・クラウドサービスは過去10年間でマーケットの成長とともに、売上高はCAGR17.1%で、5倍近くの規模にまで急成長してきた。
データセンター・クラウドサービスに牽引され情報処理サービスの同期間CAGRは5.4%と、全売上高の4.0%およびシステム開発サービスの3.2%を上回る。
コロナ禍の影響を大きく受けた前期を除くと、この期間、システム開発サービスにおいては減収が2期あるものの、全売上高では減収が1期もないのはまさに「ストックビジネス」の安定成長によるものである。

 

また直近の売上総利益率は23%と収益性の高さも特徴である。
今後もデータセンター・クラウドサービスを中心としたストックビジネスの拡大による安定成長を継続させる考えだ。

 

*CAGRは11/3期をスタート値とした21/3期までの年平均成長率

 

 

 

【1-6 目標とする経営指標】

持続的な企業価値向上を目指すために、事業規模の継続的拡大を通じ、本業の成果を表す「売上高」、「営業利益」、「営業利益率」および「ROE」を重要な経営指標としている。

 

【1-7 ROE分析】

 

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

21/3期

ROE (%)

8.8

9.4

10.7

10.4

10.9

11.3

9.5

 売上高当期純利益率(%)

4.23

4.56

5.34

5.34

5.52

5.38

4.98

 総資産回転率(回)

0.92

0.96

0.98

1.00

1.01

1.07

0.97

 レバレッジ(倍)

2.27

2.16

2.05

1.95

1.96

1.96

1.96

 

21/3期のROEは、収益性、資産効率性の低下で5期ぶりに1ケタ台となった。中期経営計画においては今期2022年3月期の目標ROEを10.0%としているが、売上高当期純利益率の予想は4.92%。目標達成には売上・利益の上積みが必要である。

 

【1-8 配当政策・株主優待制度】

将来の資金需要に備え内部留保しつつ安定的な配当を継続することを配当方針としている。
配当性向のめどは示していないが、過去数年間は40%を超している。22年3月期の予想配当性向は46.9%。

 

株主優待制度を設けている。
毎年9月30日時点で1,000株以上保有の株主に年1回、保有株式数に応じたクオカードを進呈しているほか、3年以上保有の場合は1,000円分の長期保有プレミアムを受け取ることができる。
また、進呈額の10%を同社が障がい者団体等へ寄付しており、株主は社会貢献にも参加することができる仕組みとなっている。

 

 

2.2021年3月期決算概要

(1)業績概要

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

予想比➀

予想比②

売上高

31,097

100.0%

30,016

100.0%

-3.5%

-4.7%

+0.1%

売上総利益

7,096

22.8%

6,804

22.7%

-4.1%

-

-

販管費

4,594

14.8%

4,648

15.5%

+1.2%

-

-

営業利益

2,501

8.0%

2,155

7.2%

-13.8%

-16.5%

+7.8%

経常利益

2,531

8.1%

2,279

7.6%

-9.9%

-10.3%

+10.7%

当期純利益

1,672

5.4%

1,494

5.0%

-10.6%

-10.8%

+8.3%

*単位:百万円。予想比①は2020年7月発表の会社予想を、予想比②は2021年1月発表の会社予想を使用。

 

減収減益、修正予想は上回る。
売上高は前期比3.5%減の300億円。情報処理サービスは増収も、システム開発サービス、システム機器販売は減収。売上総利益は情報処理サービスが前期並み、システム開発サービスは減益。利益率も低下した。
販管費が同1.2%増加したため、営業利益は同13.8%減の21億円となった。
今後の成長のためにデータセンター・クラウドサービスにおいて戦略的に低利益率の大型案件を受託し、その収益低下分をシステム開発サービスでカバーしようという施策が、コロナ禍により上手く稼働しなかった。
修正予想に対しては、売上・利益ともに上回った。

 

(2)サービス別動向

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

売上高

 

 

 

 

 

情報処理サービス

10,819

34.8%

11,861

39.5%

+9.6%

システム開発サービス

18,924

60.9%

16,936

56.4%

-10.5%

システム機器販売

1,353

4.4%

1,217

4.1%

-10.0%

合計

31,097

100.0%

30,016

100.0%

-3.5%

売上総利益

 

 

 

 

 

情報処理サービス

2,783

25.7%

2,803

23.6%

+0.7%

システム開発サービス

4,136

21.9%

3,821

22.6%

-7.6%

システム機器販売

176

13.1%

179

14.8%

+1.7%

合計

7,096

22.8%

6,804

22.7%

-4.1%

*単位:百万円。売上総利益の構成比は利益率。

 

(情報処理サービス)
増収増益。
データセンター利用が好調で増収。昨今のデジタル化の進展の影響等によりメーリングサービスの利用が減少したほか、業容拡大を目的として戦略的に低利益率案件を獲得したため、利益率が低下し、粗利額は前期並み。

 

(システム開発サービス)
減収減益。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、主として流通業・サービス業、石油業、及び製造業向けシステム投資の延期や中止が相次いだほか、技術者の稼働率が低下した。

 

(システム機器販売)
減収増益。
ガソリンスタンド向けPOS機器販売における消費税増税対応の反動、新型コロナウイルスの影響による各サービスに付随した機器販売の一部における投資の見送り等で減収。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

20/3月末

21/3月末

 

20/3月末

21/3月末

流動資産

9,628

10,561

流動負債

8,407

8,625

現預金

3,083

4,027

仕入債務

1,102

1,409

売上債権

5,739

5,930

短期借入金

2,872

3,039

固定資産

19,960

21,494

固定負債

5,957

7,218

有形固定資産

14,875

15,547

長期借入金

5,589

6,868

投資その他の資産

3,904

4,652

負債合計

14,365

15,843

資産合計

29,589

32,056

純資産

15,224

16,212

 

 

 

利益剰余金

9,089

9,890

 

 

 

負債純資産合計

29,589

32,056

 

 

 

借入金合計

8,461

9,908

*単位:百万円。

 

借入金増などによる現預金の増加等で資産合計は前期末に比べ24億円増加し320億円。負債合計は同14億円増加の158億円。
利益剰余金の増加等で純資産は同9億円増加の162億円。
自己資本比率は前期末より0.9ポイント低下し、50.6%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

20/3期

21/3期

増減

営業CF

3,965

3,419

-545

投資CF

-3,872

-2,929

+943

フリーCF

92

489

+397

財務CF

-308

454

+763

現金同等物残高

3,083

4,027

+944

*単位:百万円。

 

税金等調整前四半期純利益の減少等で営業CFのプラス幅は縮小したが、有形固定資産の取得による支出が減少しフリーCFのプラス幅は拡大した。
長期借入による収入の増加などで財務CFはプラスに転じた。
キャッシュポジションは上昇した。

 

(4)主なトピックス

中期経営計画達成およびその後の成長も見据えて以下のような取り組みを行った。

 

①宇宙開発事業の強化
1977年の気象衛星ひまわり初号機開発からスタートし、40年以上宇宙開発に貢献してきた同社は、人工衛星のシステム/サブシステム設計、検査/試験、運用/評価解析において豊富な実績を有し、有力スタートアップの殆どから衛星開発協力の依頼を受けるなど高い評価を受けている。
今後も更に連携を強化する方針である。

 

<【新たな宇宙事業への取り組み>
1. 衛星データ活用、超小型衛星開発事業
東京工業大学を中心とした産学連携による超小型天文・陸・海観測衛星プロジェクトに参画した。
JAXAの革新的衛星技術実証3号機に搭載される。

 

2. アンテナ運用事業
アンテナの非稼働時間を減らし稼働率を上げることで、アンテナ運用のストックビジネス化を図る。

 

②アート教育におけるデジタルプラットフォーム構築
2020年11月、大磯町(神奈川県)、株式会社ワコム、株式会社セルシスと、大磯町の初等、中等教育の質のさらなる向上を目指す「ニューノーマル・デジタル・クリエイティブ教育」を推進するため、相互連携を強化するパートナーシップ協定を締結した。

 

「ニューノーマル・デジタル・クリエイティブ(NDC)教育」とは、これまでペンや筆などで紙に描いて行われてきた「アナログの創造活動」をデジタル環境で行うことに加え、ネットワークの利便性を活用して作品を共有し共同で作業するなど、「デジタルならではのメリット」を生かした創作活動を、教育に積極的に取り込むもの。
生徒のクリエイティビティを刺激し、生徒同士でインスピレーションを与え合う中で、自然な形でデジタル技術に触れ、体験の共有を介してネットワークの世界における道徳観などを育み、初・中等教育の早い段階からクリエイティビティを開花させることに加え、将来にわたってアートに親しみ続ける素地を養うことを目指している。

 

NDC教育の推進に際し、アイネットは、ネットワーク環境や教育データの保守・管理に関する技術とサービスを提供するなど、3社それぞれが得意分野を持ち寄り、大磯町の実際の教育現場を「舞台」として連携して、NDC教育を推進する。

 

③ESGへの取り組み
同社は健康経営およびダイバーシティの推進を掲げ、以下のような取り組み姿勢を宣言している。
「アイネットは、社員が経営における最大の財産であるという考えのもと、社員が心身ともに健康であることこそが、持続的な企業価値向上の源泉であると考え、健康経営を推進します。そして、社員のみんなが安心して力を発揮できる労働環境をつくるため、ワークスタイルの変革を推進します。」

 

これを具体的に実践している点を評価され、健康経営優良法人「ホワイト500」(経済産業省が実施する「健康経営優良法人認定制度」の大規模法人部門の通称)に2021年2月、3年連続で認定された。
健康経営を宣言しているほか、最高健康責任者(CHO)のもと、人事部・健康支援室・健康保険組合が連携して取り組んでいる。

 

また、横浜市のSDGs認証制度である「Y-SDGs」の上位Superior認証を受けた。
地域、社会、環境、ガバナンスの評価項目の中で、特に地域面で高い評価を獲得した。

3.2022年3月期業績予想

(1)業績予想

 

21/3期

構成比

22/3期(予)

構成比

前期比

売上高

30,016

100.0%

32,500

100.0%

+8.3%

売上総利益

6,804

22.7%

7,380

22.7%

+8.5%

販管費

4,648

15.5%

5,050

15.5%

+8.6%

営業利益

2,155

7.2%

2,330

7.2%

+8.1%

経常利益

2,279

7.6%

2,330

7.2%

+2.2%

当期純利益

1,494

5.0%

1,600

4.9%

+7.0%

*単位: 百万円。

 

増収増益
売上高は前期比8.3%増の325億円、営業利益は同8.1%増の23億円を予想。
引き続き好調なデータセンターサービス・クラウドサービスの拡大と、前期に中断、延期になったシステム開発案件にも着実に対応することで、従来の成長路線への回帰を目指す。システム開発サービスは2ケタの増収増益(売上総利益)を計画している。
配当は前期の普通配当44.00円/株に記念配当2.00円/株を含めた合計46.00円/株を更に1.00円/株上回る47.00円/株を予定。10期連続の増配となる。予想配当性向は46.9%。

 

(2)サービス別動向

 

21/3期

構成比

22/3期(予)

構成比

前期比

売上高

 

 

 

 

 

情報処理サービス

11,861

39.5%

12,500

38.5%

+5.4%

システム開発サービス

16,936

56.4%

18,660

57.4%

+10.2%

システム機器販売

1,217

4.1%

1,340

4.1%

+10.1%

合計

30,016

100.0%

32,500

100.0%

+8.3%

売上総利益

 

 

 

 

 

情報処理サービス

2,803

23.6%

2,890

23.1%

+3.1%

システム開発サービス

3,821

22.6%

4,250

22.8%

+11.2%

システム機器販売

179

14.7%

240

17.9%

+34.1%

合計

6,804

22.7%

7,380

22.7%

+8.5%

*単位:百万円。売上総利益の構成比は利益率。

 

(3)中期経営計画の計画値を下方修正

1年目は売上、利益ともに計画を達成したが、2年目はコロナ禍の影響もあり、売上・利益とも未達となった。
取り組むべき施策に変更は無いものの、事業環境などを精査した結果、最終年度となる2022年3月期の当初計画値を下方修正した。

 

 

 

4.今後の注目点

減収減益で、中期経営計画最終年度となる2022年3月期の計画値も下方修正となった。
データセンター・クラウドサービスにおいて戦略的に低利益率の大型案件を受託し、その収益低下分をシステム開発サービスでカバーしようという施策が、コロナ禍により上手く稼働しなかった形だ。
ただ、同社が成長の柱と位置付けるデータセンター・クラウドサービスは引続き伸長しており、厳しい環境の中でも今後の成長基盤強化を進めることはできたといえよう。
今期も急激な環境の好転は望みにくいが、強固な顧客ポートフォリオに支えられた安定したビジネスモデルを有する強みを活かし、「売上高325億円、営業利益23億円」からどれだけ上積みを行えるのかに注目していきたい。

 


 

<参考1:中期経営計画について>

(1)中期経営計画の位置づけ

同社では経営方針に掲げた「持続的成長を可能にするエクセレントカンパニー」を目指す第1ステップとして、2020年3月期をスタートとし2022年3月期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画を策定し、遂行中である。
企業価値向上と事業規模拡大を目指し、「事業戦略計画」「投資戦略計画」「ESG取組計画」の3計画を推進している。

 

(2)経営戦略

基本となる経営戦略は、顧客との絆をより強固にする「守り」と、新たな市場領域やサービスを開拓する「攻め」のバランスの重視。
顧客第一の考え方の徹底、付加価値のある提案、成長が見込める商品・サービス開発、人材への投資に取り組む。
特に、顧客の期待を超えた付加価値の高い提案が可能な水準まで能力を磨き上げる。

 

全社重点施策①:パートナー戦略とチャネル戦略
自社のみで全てのビジネスを進めることは難しくなっているため、システム開発、クラウドサービス、販売、OEMにおいて強みを持つ各パートナーとの連携を深め、トップラインの拡大、サービスラインナップ拡大、販売拡大、事業領域の拡大に努める。

 

全社重点施策②:プラットフォーマーとして『クラウド基盤(NGEC)+アプリ』のサービス化
同社の武器であるクラウド基盤上に、自社サービスだけではなく、顧客にとって有用な様々な優れたアプリケーションを搭載し、プラットフォーマーとしての強み・価値を格段に高める。

 

全社重点施策③:『企画からBPOまでの一貫ビジネスにおけるクロスセル』のさらなる推進
幅広いサービスを連携させてワンストップで提供するという特徴を活かし、顧客の企画段階から、システム開発、同社データセンターでの運用、クラウド運用、封入封緘作業まで、顧客の業種、業態関係なく、間口の広い営業活動を展開し、部門間クロスセルをさらに活性化させる。

 

(3)進捗状況

前述のように、1年目は売上、利益ともに計画を達成したが、2年目はコロナ禍の影響もあり、売上・利益とも未達となった。
取り組むべき施策に変更は無いものの、事業環境などを精査した結果、最終年度となる2022年3月期の当初計画値を下方修正した。

 

データセンター・クラウドサービスは引き続き好調な中、最終年度となる22年3月期は、顧客とのエンゲージメント強化(より多くの顧客との接点拡大、新規取引のバックアップ体制整備)、IoT、フィンテック、ビッグデータ、AI、テレワーク等に対する商品・サービス力の向上、クラウドサービスの推進強化の取り組み、売上・利益の上積みを目指す。

 

(4)事業戦略計画

①情報処理サービス

分野

施策

SS・受託計算・決済

*処理SS数シェア率アップ(33%⇒中長期 50%超へ)

*全国営業支店網を活かした非石油ビジネスの拡大

*LPG販売業向けサービスの拡販

クラウドサービス

*クラウドサービス基盤(NGEC)の販売拡大

*販売チャネルの強化・拡大(リセラーの増加/OEMモデルの展開)

プリント・メーリング/BPO

*提供サービス範囲の見直し、拡大

*BPOサービス事業の積極的拡大

DXソリューション

*ドローンを活用したBIM、CIMビジネスの早期収益化

*中堅、中小企業向けAIクラウドサービスの拡充と販売拡大

*IoTビジネスモデルの確立と展開

 

国内のガソリンスタンドは減少傾向が続いているが新規SSを獲得して、シェアを向上させ、ナンバーワンポジションを継続してきた。引き続き、守りと攻めの新たな施策を進め更なるシェアアップを図る。
【クラウド・データセンターサービスの取組み】
同社が最も注力しているクラウド・データセンターサービス拡大に向けて、販売を担うパートナー戦略・チャネル戦略、サービスを担うクラウドパートナー戦略、データを担うプラットフォーム戦略の3戦略に注力している。

 

(同社祖資料より)

 

*販売を担うパートナー戦略・チャネル戦略
クラウド・データセンターサービスに限った戦略ではなく、全社的な戦略でもある。
業界や環境が日々大きく変化する中では、自社のみで全てのビジネスを進めることは難しいためシステム開発においては信頼のできる強みを持ったパートナー会社と関係強化を図り、連携を強めていく。
また、販売面においても、自社でクラウドサービスを行っている株式会社ネオジャパン(東証1部、3921)とのアライアンスのように、ネオジャパンのビジネスチャット等をアイネットのクラウド基盤の上で動かし、アイネットの営業もネオジャパンの製品を販売するクラウドサービスパートナーとしての連携を拡大させるほか、販売パートナーやOEMパートナーも増やしていく。
加えて、多数の顧客基盤や強力な営業力を有する企業との販売提携も進め、こうした戦略により、サービスラインアップの拡大、販路拡大、事業領域の拡大、トップラインの拡大を図る。

 

*サービスを担うクラウドパートナー戦略
プラットフォーマーとしての強みを活かし、自社のクラウド基盤上に各専門分野に強い他社企業のアプリケーションを載せ、クラウドサービスとして提供する。
例えば、建設設計向け分野に強みを持つアクティオやペーパレススタジオジャパンのBIM(Building Information Modeling)等のシステムや、ユニリタの自動運転パッケージシステムをサービス化し顧客に提供している。
今後も、各分野に特化した企業と連携してサービスを多様化させるとともに、各サービスを積極的に販売していく。

 

*データを担うプラットフォーム戦略
ドローンやAI、衛星やロボットなど、あらゆるデバイスや機器がデータを使用しており、各サービスにおいて膨大なデータが生まれている。
同社では、こうしたデータをデータセンターに収集することでビッグデータ化し、蓄積や解析を通じてデータを活用することが可能である。今後もIoT、AI、フィンテックなどさらに発展する分野にも積極的に取り組み、データセンターやクラウドサービスを展開し、着実に収益を積み上げていく。

 

【DXへの取り組み】
現在顧客ニーズが急速に高まっているDX(デジタルトランスフォーメーション)に関するソリューション開発にも注力している。

 

*主要分野における取り組み

働き方改革

東京オリンピック・パラリンピックの通勤混雑回避や新型コロナウイルス感染症拡大等のテレワークによる働き方改革へのニーズの高まりから、テレワーク推進窓口を設置し、仮想デスクトップや複数メンバーとのリアルタイムでの情報共有ツールなどを提供している。

データ・AI

データサイエンスやAIビジネスの領域拡大や中堅・中小企業にターゲットを絞ったAIクラウドサービスの販売強化を推進している。

フィンテック

今後の市場トレンドを見つつ、強みの一つである金融パッケージの強化、金融商品の見直し、パッケージリニューアルの企画・検討を進めている。

特定業種、特定用途向けソリューション

流通業向け販売管理業務ノウハウを活かした競合他社との差別化や、建設業向けBIM、CIM ビジネスなど、顧客ニーズに的確に応えるサービスの提供に取り組んでいる。

5G

デジタルディバイドの解消や地域の公共福祉増進に寄与することを目的として導入された2.5GHz帯の周波数(2,575~2,595MHz)の電波を用いた電気通信業務の無線システムである地域BWAへの取組みを検討している。

 

*機構改革を実施
DXを強力に推進するために、2020年4月に機構改革を実施した。

 

・DXニーズへの対応
顧客のDXニーズに的確に応えるために、ソリューション本部を「DX本部」に改組し、新たに「FinTechソリューション事業部」、「流通・サービスソリューション事業部」、「エンタープライズソリューション事業部」、「IoTソリューション事業部」、「宇宙・衛星ソリューション事業部」を編成した。
様々な顧客が求めるニーズに対して、高度な業種業務ノウハウを提供し、機動的な業務遂行の実現を推進するとともに、顧客の追求するDXへの到達をサポートする。

 

・データセンター事業の強化
従来の、1本部2事業部から、2本部5事業部体制に移行した。
データセンター本部を「データセンター事業部」、「クラウドサービス事業部」、「ビジネスソリューション事業部」の3事業部制に再編成し、「DC本部」としてデータセンタービジネスの拡大と新規ビジネス開発の推進をはかる。
また、ITマネージドサービス事業部を「ITMS本部」へ格上げし、「DCマネージドサービス事業部」と「ITソリューション事業部」の 2 事業部制として、データセンター運営体制を攻守両面で強化し、運用管理機能の拡充を図るとともにクラウドサービス技術サポートとプロダクトマーケティング機能の集約を行う。

 

・研究開発機能の強化
持続的成長を可能にするエクセレントカンパニーを目指すという基本方針に基づき、新たなイノベーションの創造を目指して、経営企画本部内に「R&D推進室」を新設した。
先進的クラウドサービスの活用や最新のデータサイエンス、AI、IoT技術を駆使した新たな価値を生み出す研究開発空間とし、未来につながるDXテクノロジーの研究開発・技術獲得を推進する。

 

*「働き方改革」推進のためのテレワークツール支援専用窓口の設置
昨今の日本企業における「働き方改革」推進のトレンドに加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークへの関心が急速に高まっている。
リモートデスクトップやビジネスチャット、Web会議システム、ファイル共有サービスなど多様なサービスをSaaSで提供している同社は、迅速にかつ各企業の状況に応じた的確なアドバイスを実施しこうした需要を確実に取り込むために2020年3月、データセンター本部クラウドサービス事業部内にテレワークツール支援専用窓口を開設した。

 

②システム開発サービス

分野

施策

金融

*金融市場のニーズ変化に合わせた金融パッケージの強化、見直し

流通・サービス

*流通業向け販売管理業務ノウハウを活かした競合差別化(業種テンプレート導入ビジネスの展開)

*AS400レガシー資産のモダナイゼーションのノウハウ活用/受注拡大

宇宙

*ニュースペース企業、自社衛星開発ベンチャー企業との取引先拡大で事業範囲拡大

新市場・サービス

*新たなビジネス市場への参入・展開、「駐車場」関連、「レンタル」関連

 

「宇宙」においては、ベンチャー数社との取引を始めており、新たなビジネスモデルを構築していく。
新たなサービスマーケットとしては、シェアビジネス、レンタルビジネスといった、今後、市場改革が求められていく新たな分野の開拓を進める。

 

(5)投資戦略計画

分野

施策

データセンター/クラウドプラットフォーム

*クラウド基盤(NGEC)を進化させた次世代クラウドプラットフォーム開発

*データセンター設備更新、増床、増設の計画的遂行

*データ分析、データサイエンスビジネスの展開

人材育成

*新卒採用人数の目標達成への施策実行、即戦力の中途採用の強化

*各レベル層の人材力アップに向けた教育研修制度や内容の強化

研究開発

*NGECを進化させた次世代クラウドプラットフォーム開発

*データ分析、データサイエンスビジネスの展開

*人工衛星データのビジネス活用

海外事業

*東南アジアにおける事業基盤構築(事業拠点化予定)

*得意分野と先端技術によるサービス展開を目指す

 

◎設備投資
データセンターサービスの顧客増加やクラウドサービスのニーズに幅広く応えるために、データセンターの設備強化を実施している。データセンターは完成時に全ての設備を整えるのではなく、案件獲得の目途とともに、都度設備を増強しており、その結果、設備の増強と共に、データセンターサービス・クラウドサービスの売上は順調に拡大している。
引き続きニーズにフレキシブルに対応し、設備増強のための支出とのバランスを検討しつつ、注力ビジネスであるデータセンターサービス・クラウドサービスを成長させることで、事業規模拡大を図る。

 

◎人材投資
人材への投資は、中長期目標として掲げている事業規模の拡大、企業価値の向上の実現をするために、最も重要な投資であると考えている。
成長を担う新卒社員については、アイネット単独で21年4月には67名が入社(計画は80名)した。新型コロナウイルスの影響なども考慮し、22年4月は50名を計画している。

 

中途採用については、データサイエンティストを初めとするAIやビッグデータなどの新しい技術に対応していくための技術を保有している高度IT人材や、注力ビジネスである宇宙開発分野の即戦力人材を、積極的に獲得する。

 

社員の人材育成に関しては、以前から充実させている新入社員研修をはじめとした若手向けの研修、部長課長級向けに経営やマネジメントを学び自社を成長させるための施策を考える将来の経営層を育成するための「経営塾」、社員の多様な働き方へのニーズに対応するためのダイバーシティを初めとするテーマ別の研修など、一人一人の社員に合わせた研修を実施し、引き続き強化していく。

 

 

 

 

◎研究開発
差別化や競争力強化のために、今まで以上に研究開発に投資する。対象は、現在のクラウド基盤をさらに進化させた次世代クラウドプラットフォームの開発、急速な成長が期待されるビッグデータの解析や分析といったデータサイエンスビジネス等。

 

◎海外事業
IT関連マーケットの成長著しい東南アジア地域を中心とした市場調査を目的として、2019年11月にシンガポールに駐在員事務所を開設した。
同地域における情報収集、市場調査、新規事業展開の検討を実施。注力するデータセンター・クラウドサービスや長年培ってきたガソリンスタンド向けの受託計算業務システム開発などの得意分野をベースにIoT、AI、データ分析などの先端技術によるサービス展開を目指し今後の海外進出形態を検討していく。

 

(6)ESG取組み計画

<S:社会>
健康経営およびダイバーシティの推進を掲げ、以下のような取り組み姿勢を宣言している。
「アイネットは、社員が経営における最大の財産であるという考えのもと、社員が心身ともに健康であることこそが、持続的な企業価値向上の源泉であると考え、健康経営を推進します。そして、社員のみんなが安心して力を発揮できる労働環境をつくるため、ワークスタイルの変革を推進します。」

 

具体的な取り組み実績を評価され、以下の公的な認定を受けている。

制度

認定時期

概要・取り組み

健康経営優良法人「ホワイト500」

(経済産業省が実施する「健康経営優良法人認定制度」の大規模法人部門の通称)

2021年3月

(2019年から3年連続で取得)

*健康経営を宣言

*最高健康責任者(CHO)のもと、人事部・健康支援室・健康保険組合が連携して対応

*定期健康診断の受診の徹底、及び受診結果に基づいたフォロー

*産業医、健康支援室設置

*メンタルヘルスマネジメント検定試験取得奨励

えるぼし

(女性活躍推進法に基づく認定制度で、一定の基準を満たし、女性活躍推進に関する状況などが優良な企業に発行される認定マーク)

2018年10月

*女性比24.4%

*新卒女性採用比率40%以上

*女性委員会の設置

*ダイバーシティ推進室の設置

*女性取締役の就任(12名中3名)

*かながわ女性の活躍応援団

くるみん

(一定の要件を満たして申請した場合に、厚生労働大臣から子育てサポート企業として認定を受けた企業に与えられるマーク)

2012年5月

*短時間勤務制度の拡充(小学3年まで)

*定時退社日の設置

*配偶者の出産休暇

*メモリアル休暇

*在宅勤務制度

*ジョブリターン制度

 

この他、障がいのある方に活躍の場を提供し、自立・自律を支援することを目的に設立した特例子会社(厚生労働大臣認定)である(株)アイネット・データサービスでは、障がいのある方々がデータ入力、スキャニング、軽作業、名刺作成といった業務を行っている。
また、本社所在地・横浜市のオープンデータを活用して保育施設を検索できる子育て・女性活躍支援サイト「働くママ応援し隊」を開設した。

 

加えて、2019年に創業者である創業者最高顧問の池田典義氏が、新たに、神奈川県内で社会貢献活動を行う団体の持続可能な活動を支援・助成することを目的とする財団法人「アイネット地域振興財団」を設立。2020年1月には、公益認定を取得し、より一層の社会への貢献ができる体制となり、改めて活動を開始した。引き続き、長期的かつ安定的な活動を実現し、よりよい地域社会の発展に貢献していく。

 

<G:ガバナンス>
委任型執行役員制度や譲渡制限付株式報酬制度の導入に次いで、さらなるコーポレート・ガバナンスの強化を図り、指名・報酬諮問委員会を設置し、監査等委員会設置会社へ移行した。

 

また、経営陣幹部の選解任と取締役候補の指名、経営陣幹部・取締役の報酬等に係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任の強化を図り、コーポレート・ガバナンス体制をより一層充実させるため、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬諮問委員会を設置した。
監査等委員会設置会社への移行に際し、取締役の職務執行の監査等を担う監査等委員を取締役会の構成員とすることにより、取締役会の監督機能を強化し、更なる監視体制の強化を通じてより一層のコーポレート・ガバナンスの充実を図っている。

 

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

12名、うち社外6名

監査等委員

4名、うち社外4名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年4月28日

 

<基本的な考え方>
当社は、業務の有効性と効率性、財務報告の信頼性、関連法規の遵守を目的に、透明性を高め、経営環境の変化に迅速に対応できる組織体制の構築、維持を重点事項として推進しております。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

開示内容

補充原則1-2-4 【株主総会における権利行使】

当社は、議決権の電子的行使は実施しておりますが、招集通知の英訳は行っておりません。但し、2021年6月開催予定の第50回定時株主総会における招集通知から英訳化を行う予定であります。また、決算短信およびアニュアルレポートについては英訳版を作成しております。

 

<各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

【原則1-4. 政策保有株式】

<政策保有に関する方針>

当社は、円滑な事業運営、取引関係の維持・強化などを目的として、中長期的な経済合理性や将来見通しを総合的に勘案した上で、必要と判断される場合に限り、株式を政策的に保有します。保有する株式については、事業環境の変化などを踏まえ、個別銘柄毎に保有目的、保有に伴うリスク、投資リターン等の検証を行い、縮減を念頭に置き、定期的に保有方針を検証してまいります。

 

<政策保有株式に係る議決権行使の基準>

当社は、政策保有株式の議決権行使について、当社の保有方針に適合するかどうかに加え、当該企業の経営方針や事業戦略を確認し、企業価値の向上につながるか等を総合的に勘案して、議案への賛否を個別に判断しております。 また、必要に応じて、提案内容等について発行会社と対話を行っていきます。

原則5-1 【株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、IRポリシーを制定し、基本方針・開示基準・開示方法・沈黙期間等を開示しております。また持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で株主・投資家との対話に対応しております。

当社は、経営戦略・IR部をIR担当部署として設置し、IR担当部署を管掌する取締役をIR担当役員としてIR体制を整備しており、株主や投資家を含むステークホルダーに対し、IR担当が経営企画・総務・経理・人事・事業部門等と十分に連携し、経営・財務状況等を適時適切に開示しております。

株主との対話としては、本決算発表後の事業説明会、アナリスト・機関投資家向けに年2回決算説明会を開催し、代表取締役社長による説明および対話を行っております。また、機関投資家との個別面談や個人投資家向けの会社説明会等を適宜実施し、積極的なIR活動を合理的な範囲で代表取締役社長はじめ経営陣幹部やIR担当が対応しております。

対話により把握いたしました株主・投資家の意見等は、IR担当役員が適切に判断し必要に応じて取締役会等に付議・報告する等、フィードバックを図っております。

なお、対話に際しては、インサイダー情報の管理には社内規程に則り十分留意しながら実施しております。

 

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申し上げます。

Copyright(C) Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.

 

ブリッジレポート(アイネット:9600)のバックナンバー及びブリッジサロン(IRセミナー)の内容は、www.bridge-salon.jp/ でご覧になれます。

 

 

同社の適時開示情報の他、レポート発行時にメールでお知らせいたします。

>> ご登録はこちらから

 

ブリッジレポートが掲載されているブリッジサロンに会員登録頂くと、株式投資に役立つ様々な便利機能をご利用いただけます。

>> 詳細はこちらから

 

投資家向けIRセミナー「ブリッジサロン」にお越しいただくと、様々な企業トップに出逢うことができます。

>> 開催一覧はこちらから