ブリッジレポート
(6826) 本多通信工業株式会社

プライム

ブリッジレポート:(6826)本多通信工業 2021年3月期第3四半期決算

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樫尾 欣司 社長

本多通信工業株式会社(6826)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

電気機器(製造業)

代表取締役社長

樫尾 欣司

所在地

東京都品川区北品川5-9-11 大崎MTビル

決算月

3月末日

HP

https://www.htk-jp.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

475円

25,006,200株

11,877百万円

0.4%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

7.00円

1.5%

2.17円

218.9倍

469.14円

1.0倍

*株価は1/29終値。発行済株式数、DPS、EPS、BPSは21年3月期第3四半期決算短信より。ROEは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

17,205

1,425

1,476

1,542

63.99

13.00

2018年3月(実)

19,498

2,007

2,111

1,625

67.87

18.00

2019年3月(実)

17,606

1,141

1,184

765

32.06

20.00

2020年3月(実)

14,923

237

157

43

1.89

21.00

2021年3月(予)

14,500

0

120

50

2.17

7.00

*単位:百万円、円。予当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。17年12月1日付で1:2の株式分割を実施。EPS、DPSは遡及して計算。

 

 

本多通信工業の2021年3月期第3四半期決算概要などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期第3四半期決算概要
3.2021年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:中期経営計画「GC20」>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>

今回のポイント

  • 2021年3月期第3四半期(累計)の売上高は前年同期比6.0%減の106億34百万円、営業利益は2億32百万円の損失。新型コロナウイルス感染拡大による上半期の受注減、生産・販売活動抑制により累計では減収減益となったが、第3四半期(10-12月)は、中国の生産活動が活況であったことに加え、自動車市場の回復を受けコネクタ事業が復調。前年同期比・前期比ともに増収で、営業利益以下、黒字に転換した。

     

  • 第3四半期(10-12月)の営業利益は、コネクタ事業の増収効果がプラス1億20百万円あったものの、車載事業における品種構成(マイナス30百万円)、生産体制再編に伴う在庫の減少(マイナス30百万円)、為替の影響(マイナス10百万円)などが押し下げた。生産体制再編に伴う在庫減少の営業利益への影響は今期限りで終了する。

     

  • 21年3月期通期業績予想に変更はない。半導体不足など不透明要因はありながらも、売上高は前期比2.8%減の145億円、営業利益は収支均衡、経常利益は同23.7%減の1億20百万円、当期純利益50百万円の黒字確保に向け諸施策に注力する。配当予想にも変更はなく、来期以降の回復を見込み7.00円/株の予定。現在の株価水準で配当利回りは約1.5%。厳しい環境ではあるが株主の期待に応えたいと考えている。

     

  • 累計では減収・減益であったが、第1四半期(4-6月)を底に回復傾向にあり、第3四半期(10‐12月)は前年同期比・前期比ともに増収で、3期ぶりに黒字転換となった。急回復を見せる車載用分野が半導体不足に伴う自動車メーカー各社の生産調整という外部要因に影響される点は気になるところではあるが、通期目標である営業利益均衡達成に向け第4四半期(1-3月)で約2億円強の営業利益が確保することができるか、他分野の動向も含め注目していきたい。

     

  • 中期的には、量産本格化ステージに入った次世代デジタルカメラ用コネクタがどこまで拡大し収益に寄与していくか、生産体制整備に加え、販売先拡大に向けた営業力強化も課題となろう。昨年11月に急逝された故佐谷前社長が残念ながら見届けることができなかった過去最高の売上・利益更新に向けた樫尾新社長の下での取り組みを引き続き注目していきたい。

     

1.会社概要

車載、FA機器、通信インフラ、民生機器用途向けの電気コネクタおよび光コネクタの製造販売を行う。「Segments No.1」を掲げ、特定分野での高い競争力を追求している。長い歴史の中で培われた幅広い設計技術力、産業用機器向けで培った長期信頼性と堅牢性に関するノウハウ、多品種少量生産体制などが特長。子会社ではソフトウエア開発なども手掛けている。グループ認知度の向上に向けて、複数存在していたブランドを「HTK」に統一。グループは同社と連結子会社7社(国内2社、海外5社)の計8社で構成されている。(2020年3月末日現在)

 

【1-1 沿革】

1932年5月に精密ねじ加工業として現在の東京都目黒区で創業。第二次大戦後は、日本電信電話公社(現NTT)の電話交換機用プラグ・ジャック、防衛庁向けプラグ・ジャックを始め、その発展形となるコネクタの製造販売を手掛け、業容を拡大。2001年に東証2部に上場した。だが、ITバブル崩壊で売上が急減。数度のリストラクチャリングを経て、成長路線への復帰と拡大発展をめざし、2008年に松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)と資本業務提携契約を締結。2014年2月、約80年に亘って本社を置いていた目黒から品川区へ本社を移転した。
2016年3月、東証1部に上場した。

 

【1-2 経営理念など】

特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事をめざし、「Segments No.1」を掲げている。
また、新中期経営計画「GC20」策定に際し、グループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。
豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。

 

【1-3 事業内容】

事業セグメントはコネクタ事業と情報システム事業の2つ。

 

◎コネクタ事業
<コネクタとは?>
電子回路や光通信において配線基板同士を接続し、電気や信号を繋ぐために用いられる部品・器具のこと。基板をはんだ付けや圧着で接続した場合、分断時にはケーブル切断等が必要になり再接続は困難となるが、コネクタを使用した場合、手または簡易的な工具を用いて容易に繰り返し脱着することが可能であるため、ほぼ全ての電子機器で使用される。

 

<利用分野>
長年の経験で培われた高い技術力により、以下の6分野を中心に付加価値の高く、顧客志向のコネクタを始めとした製品をラインアップしている。

分野

概要

カーエレクトロニクス

日々進化するカーエレクトロニクス市場へ、通信分野・産業機器分野で培った技術をベースに高い信頼性を有するコネクタを提供

通信機器

電話交換機のプラグ・ジャックを起点に、光コネクタを中心とした通信機器用コネクタを提供

FA機器

工作機器・制御機器などの長期信頼性ニーズに対応する堅牢で高品質のFA機器用コネクタを提供

医療機器

拡大する医療分野に対して同社グループのノウハウを活かした医療用コネクタを提供。ナースコール用コネクタでは国内シェア1位。

デジタル家電

産業用コネクタで培った要素技術をベースに軽薄短小を追求し、同社グループならではのものづくりでデジタル家電市場へ商品を提供

サーバ・ストレージ

電子データの高速化・大容量化に対応すべく同社グループが得意とする高速伝送技術を最大限に生かした商品を提供

 

<主な製品ラインアップ>

(同社資料より)

 

2020年3月期の分野別売上構成比率(全売上高に対する構成比)は、車載分野35%、FA分野 18%、通信分野14%、民生分野 11%となっている。
最も構成比の高い車載分野において、安全性や運転性能向上の観点から車載カメラやセンサの搭載台数が増加しているカーエレクトロニクスの成長に対応して投資や製品開発を進めている。

 

◎情報システム事業
通信分野でのソフトウエアの重要性が高まる中、1983年に事業をスタート。
システム開発から保守運用まで幅広いソリューションを展開している。なかでも仮想化(*)サーバの構築では業界屈指の技術を有し、クラウドコンピューティングの広がりに貢献している。
世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れている。

 

*仮想化とは?:1台のサーバ(物理サーバ)を複数台の仮想的なサーバ(仮想化サーバ)に分割して利用する仕組み。それぞれの仮想化サーバではOSやアプリケーションを実行させることができ、あたかも独立したコンピュータのように使用することが可能となる。
サーバ台数の適正化や消費電力を含めた運用管理コストの低減など、企業のITコスト見直しニーズに対応し、注目が集まっている。
また、仮想化環境下ではハードウェア等を新たに購入しなくても新サーバを容易に追加することができるため、ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応するというITシステムニーズに対する有効なソリューションの一つとなっている。

 

【1-4 特徴と強み】

①幅広い設計技術力
前述のように、同社のコネクタは、様々な分野で用いられている。
同社は、日本電信電話公社(現NTT)を始めとした多くの顧客からの様々なニーズに対応したカスタマイズによる製品作りに長年取り組んできた。この「顧客密着度の高さ」が、同社の幅広い設計技術力の源泉である。

 

②長期信頼性と堅牢性
制御装置に用いられる「1.27mmピッチコネクタ」、FTTH(Fiber To The Home:光通信のための光ファイバーを家屋内に引き込むこと)に用いられる「シャッター付きSC形プラグ」、プロジェクタに用いられる「高耐圧電源用コネクタ」などで強みを持っている。
これらは、顧客から長期信頼性や堅牢性が求められる分野であり、長年に亘って培ってきた同社の技術力や製造能力が顧客に高く評価されている証となっている。こうした強みを活かし、安全性という面でハードルの高い車載分野での売上を大きく伸ばしている。

 

③多品種少量生産
同社は現在約5,000品目のコネクタを生産しているが、このうちの月間生産個数が1万個未満の品目数は94%を占める。また生産金額ベースでも1万個未満の生産が62%、1万個以上が38%と、多品種少量生産が同社の特長となっている。
こうした状況に対応し、国内工場、海外工場の2つの車輪で最適なものづくりを行っている。
国内工場(安曇野工場:旧松本工場)は1万個未満の多品種少量生産の拠点。今後も同社の得意技を磨き、迅速な納入を行うため国内で稼動を続ける。
海外工場(深圳工場)は1万個以上の中量品の一気通貫生産を行い、機動力を高め世界で戦うための拠点とする。
加えて、ベトナムにも生産拠点を立ち上げ、車載関連中心に量産体制を構築した。

 

一方、多品種少量生産ながらも短納期を実現させ、顧客から発注を受けたら1週間以内での製品配送を確約する「1weekデリバリーサービス」に2013年から積極的に取組んでいる。
現在の取扱品目数はシステム化を進めた安曇野物流ハブの完成によりそれまでの倍にあたる約1,000品目に拡大している。

 

(主なコネクタメーカー)

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

ROE

時価総額

PER

PBR

6640

I-PEX

51,500

-4.7

1,900

+26.2

3.7%

2.0

39,374

35.8

0.8

6798

SMK

46,000

-15.1

800

-

1.7%

-9.9

22,372

21.3

0.8

6800

ヨコオ

56,500

-6.8

4,200

-14.6

7.4%

13.5

67,345

24.3

2.5

6804

ホシデン

115,000

+15.0

4,000

-29.4

3.5%

9.7

64,527

19.9

0.6

6806

ヒロセ電機

115,000

-5.6

17,200

-15.5

15.0%

5.8

626,467

45.8

1.9

6807

日本航空電子

207,000

-0.5

7,000

-50.1

3.4%

8.3

149,991

37.9

1.1

6826

本多通信工業

14,500

-2.8

0

-100.0

-

6.4

11,877

218.9

1.0

6908

イリソ電子工業

34,000

-14.2

1,400

-70.0

4.1%

6.4

117,141

102.1

2.2

6941

山一電機

-

-

-

-

-

-

38,564

-

-

※売上高、営業利益は今期会社側予想。単位は百万円。ROEは前期実績、単位は%。時価総額は1月29日終値ベース×1月29日時点直近の短信記載の発行済株式数。単位は百万円。PER(予)・PBR(実)は1月29日終値ベース。単位は倍。山一電機は今期予想未定。

 

【1-5 ROE分析】

 

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

ROE(%)

23.8

18.4

14.8

15.0

14.2

6.4

0.4

 売上高当期純利益率(%)

9.98

8.65

7.97

8.96

8.33

4.35

0.29

 総資産回転率(回)

1.51

1.39

1.30

1.22

1.24

1.09

0.97

 レバレッジ(倍)

1.58

1.53

1.43

1.37

1.37

1.35

1.31

 

目標とする経営指標に「ROE 13%以上」を掲げている。原価低減や新製品開発によるマージンの向上に加え、在庫水準のコントロールによる総資産回転率の向上に引き続き取組んでいく。

2.2021年3月期第3四半期決算概要

(1)連結業績概要(累計)

 

20/3期3Q

構成比

21/3期3Q

構成比

前年同期比

売上高

11,318

100.0%

10,634

100.0%

-6.0%

売上総利益

2,181

19.3%

1,603

15.1%

-26.5%

販管費

1,973

17.4%

1,835

17.3%

-7.0%

営業利益

208

1.8%

-232

-

-

経常利益

233

2.1%

-75

-

-

四半期純利益

148

1.3%

-46

-

-

*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。

 

(四半期推移)

 

20/3 1Q

2Q

3Q

4Q

21/3 1Q

2Q

3Q

4Q

売上高

3,649

3,897

3,772

3,605

3,120

3,630

3,883

-

営業利益

31

86

91

29

-194

-44

5

-

経常利益

6

89

138

-76

-63

-32

19

-

*単位:百万円

 

累計では減収・減益も第3四半期は増収・黒字転換。
売上高は前年同期比6.0%減の106億34百万円、営業利益は2億32百万円の損失。
新型コロナウイルス感染拡大による上半期の受注減、生産・販売活動抑制により減収減益となったが、第3四半期(10-12月)は、中国の生産活動が活況であったことに加え、自動車市場の回復を受けコネクタ事業が復調。前年同期比・前期比ともに増収で、営業利益以下、黒字に転換した。

 

第3四半期(10-12月)の営業利益は、コネクタ事業の増収効果がプラス1億20百万円あったものの、車載事業における品種構成(マイナス30百万円)、生産体制再編に伴う在庫の減少(マイナス30百万円)、為替の影響(マイナス10百万円)などが押し下げた。生産体制再編に伴う在庫減少の営業利益への影響は今期限りで終了する。

 

(2)分野別売上動向

 

20/3期3Q(累計)

21/3期3Q(累計)

前年同期比

通信

1,541

1,685

+9.3%

FA

1,861

2,154

+15.7%

車載

4,142

3,488

-15.8%

民生

1,325

1,029

-22.3%

情報システム

2,216

2,112

-4.7%

合計

11,318

10,634

-6.0%

*単位:百万円

 

 

20/3期3Q

21/3期3Q

21/3期3Q(予)

前年同期比

予想比

通信

501

577

580

+15.2%

-0.5%

FA

636

721

620

+13.4%

+16.3%

車載

1,356

1,474

1,280

+8.7%

+15.2%

民生

482

373

380

-22.6%

-1.8%

情報システム

729

685

740

-6.0%

-7.4%

合計

3,772

3,883

3,670

+2.9%

+5.8%

*単位:百万円

 

 

 

20/3期4Q

21/3期1Q

21/3期2Q

21/3期3Q

前期比

通信

548

550

558

577

+3.4%

FA

751

688

745

721

-3.2%

車載

1,041

864

1,150

1,474

+28.2%

民生

368

286

370

373

+0.8%

情報システム

824

674

753

685

-9.0%

合計

3,605

3,120

3,630

3,883

+7.0%

*単位:百万円

 

第3四半期(10‐12月)はFA、車載中心に第2四半期時点での想定を上回った。

 

*通信分野:ICT/5Gインフラ投資が活況で堅調に推移した。在宅勤務の広がりにより国内外でFTTH需要が増大した。
*FA分野:第3四半期前半は調整が続いたが、中国における設備投資の活況により後半から回復した。
*車載分野:コロナ禍前の水準まで想定以上の回復を見せた。次世代デジタルカメラ用コネクタの納入が本格化した。
*民生分野:機器によって好不調が分かれている。プロジェクタ・DSC向けが低調で前年割れとなった。
*情報システム分野:コロナ禍により民間プロジェクトが停滞し低調だった。各市場によって回復はまばらである。

 

(3)財務状態

◎主要BS

 

20年3月末

20年12月末

 

20年3月末

20年12月末

流動資産

11,194

10,685

流動負債

2,711

2,518

現預金

5,576

5,514

仕入債務

1,370

1,336

売上債権

3,291

3,515

短期借入金

163

176

たな卸資産

1,959

1,444

固定負債

701

568

固定資産

3,532

3,215

負債合計

3,412

3,087

有形固定資産

2,318

2,124

純資産合計

11,314

10,813

無形固定資産

445

356

資本金

1,501

1,501

投資その他の資産

767

733

利益剰余金

9,103

8,574

資産合計

14,726

13,900

負債純資産合計

14,726

13,900

*単位:百万円。売上債権には電子記録債権を、仕入債務には電子記録債務を含む。

 

たな卸資産の減少などで資産合計は前期末比8億26百万円減少し139億円となった。
賞与引当金の減少などで負債合計は同3億25百万円減少の30億87百万円。
利益剰余金の減少などで純資産合計は同5億1百万円減少の108億13百万円。
この結果、自己資本比率は前期末から1.0ポイント上昇し77.8%となった。

 

 

3.2021年3月期業績予想

(1)業績予想

 

20/3期

構成比

21/3期(予)

構成比

前期比

売上高

14,923

100.0%

14,500

100.0%

-2.8%

営業利益

237

1.6%

0

0.0%

-100%

経常利益

157

1.1%

120

0.8%

-23.7%

当期純利益

43

0.3%

50

0.3%

+14.7%

*単位:百万円

 

業績予想に変更なし。減収、営業利益収支均衡、当期純利益は増益へ
業績予想に変更はない。半導体不足など不透明要因はありながらも、売上高は前期比2.8%減の145億円、営業利益は収支均衡、経常利益は同23.7%減の1億20百万円、当期純利益50百万円の黒字確保に向け諸施策に注力する。
配当予想にも変更はなく、来期以降の回復を見込み7.00円/株の予定。現在の株価水準で配当利回りは約1.5%。厳しい環境ではあるが株主の期待に応えたいと考えている。

 

(2)分野別概観

各分野の第4四半期(1-3月)の見通しは以下の通り。

 

*通信分野
テレワーク需要の継続や5G拡大でICTインフラ投資が堅調に推移する。

 

*FA分野
旺盛な需要を背景に顧客が増産体制に向かう。半導体製造設備の需要拡大に期待している。

 

*車載分野
回復基調は継続するが、半導体供給不足による顧客の生産調整を懸念している。

 

*民生分野
PC向けが好調に推移するが、プロジェクタやDSC向けコネクタは引き続き低調と予想。

 

*情報システム
年度末という季節要因もあり増収予想ではあるが市況の好転は見込んでいない。Society5.0やDX等の新規案件に期待している。

 

 


 

(3)車載用コネクタ分野における取組み

同社が成長の主軸と位置付ける車載用コネクタ分野の取り組みは以下のとおり。

 

*テーマ
運転支援から準自動運転、完全自動運転への進化を見据え、先端商品の開発と収益力強化に取り組む。

 

*具体的な取り組み
◎車載カメラ用コネクタ
以下3つの施策を推進する。

現状の月産10万個から来期同25万個に向け、量産が本格化する次世代デジタルカメラ用コネクタに関しては合理化に注力する。

来期から新OEMおよび新車種への納入が始まる。

ベトナムへの生産移管が完了した。今期第4四半期から生産をスタートさせる。来期からの合理化を見込んでいる。

 

◎車内LAN用高速コネクタ
超高速タイプの技術課題をクリアすることができたので、今春よりサンプル提供を開始し、製品化へ向けブラッシュアップを目指す。

 

4.今後の注目点

累計では減収・減益であったが、第1四半期(4-6月)を底に回復傾向にあり、第3四半期(10‐12月)は前年同期比・前期比ともに増収で、3期ぶりに黒字転換となった。
急回復を見せる車載用分野が半導体不足に伴う自動車メーカー各社の生産調整という外部要因に影響される点は気になるところではあるが、通期目標である営業利益均衡達成に向け第4四半期(1-3月)で約2億円強の営業利益が確保することができるか、他分野の動向も含め注目していきたい。中期的には、量産本格化ステージに入った次世代デジタルカメラ用コネクタがどこまで拡大し収益に寄与していくか、生産体制整備に加え、販売先拡大に向けた営業力強化も課題となろう。
昨年11月に急逝された故佐谷前社長が残念ながら見届けることができなかった過去最高の売上・利益更新に向けた樫尾新社長の下での取り組みを引き続き注目していきたい。

 

 

<参考1:中期経営計画「GC20」>

全てのステークホルダーから信頼と期待をされる「よい会社」であるとともに、過去最高の売上、利益を更新し持続的成長企業へのスケールアップを目指すのが中期経営計画「GC20」。昨今の事業環境および業績動向を踏まえ、最終年度を2年後ろにずらし2023年3月期とした。

 

(1)基本コンセプト

GC20の基本コンセプトは、『事業戦略として「Segments No.1戦略の深耕」、プラットフォーム戦略として「コンパクト経営の追求」により価値を創造し続けるGood Companyを目指す。』というもの。
また、Good Companyを持続的なものにするのが、グループ企業理念とコーポレートガバナンス基本方針である。

 

(2)グループ企業理念

今回のGC20策定に際し、同社ではグループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。
豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。

(同社資料より)

(3)コーポレートガバナンス基本方針

金融庁と東京証券取引所により策定された「コーポレートガバナンス・コード」が2015年6月1日から適用されるのに先立ち、2015年5月22日、「コーポレートガバナンス基本方針」を公表した。
株主を始めとした全てのステークホルダーとの信頼関係構築のためのコーポレートガバナンスの重要性を深く認識したうえで、最適なコーポレートガバナンスを実現することが自社の責務であると宣言している。

 

(4)事業戦略

特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事を目指すのが「Segments No.1戦略」。
これまでも同社では、様々なNo.1商品を生み出してきたが、現在の形ではそれぞれの商品の持続性・継続性は不十分と考えている。
そこで、それぞれのNo.1商品を核に水平展開と次世代化で「Segments No.1 領域」を創り出し、特長のある価値を提供する事で持続的成長を目指していく。

 

その展開モデルは、現在のSegments No.1商品/サービスを核に、次世代商品やサービスを創出し、顧客の具体的な欲求である「ウォンツ」を解決するというもの。
同社の強みである、スピード、カスタム対応、少量短納期、周辺技術を差異化要因とし、新たな顧客、新たな市場への展開を図る。
分野別のSegments No.1 戦略は以下の通りである。

 

①業務用コネクタ Segments No.1 戦略:サービスとの融合戦略で顧客価値を倍化
長年培ってきた堅牢性や長期信頼性というハードの強みに、少量短納期、カスタマイズに加え、コネクタに付随する適切なハーネスもあらかじめ接続するワンストップ受注といった「サービス」を融合させ、顧客満足度を引上げる。
世界的にIoT、4Kや8Kの高画質化ニーズが高まる中、通信分野(海外における光通信化)、FA分野(グローバルな生産性向上ニーズ)、業務分野(セキュリティニーズ)において、堅牢性や長期信頼性といったノウハウの展開や高速POFによる市場創出により、通信分野やFA分野で規模と収益性を堅持する。

 

②車載用コネクタ Segments No.1 戦略:ADASコネクタへ進化させ、将来価値を倍化
自動車の安全系機能の進化スピードは目を見張るものがある。
自動車の目となる車載カメラも、パーキングアシストなど「見る」機能から、ADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)というコンセプトの下、車線検知、歩行者認識、衝突防止といった「測る」機能がより重要になると同時に、各自動車メーカーに限らずGoogleなど大手IT企業も含め、自動運転システムの開発が加速している。

 

ADASを構成するものは、車載カメラに加え、センサ、ミリ波レーダー(ミリ波帯の電波を用いて100m程度の範囲の状況を探知可能なレーダーシステム)、レーザー、ECU(エンジンコントロールユニット:エンジンの運転制御を電気的な補助装置を用いて行う際に、それらを総合的に制御するマイクロコントローラ)、電子ミラー、カーナビ、HUD(Head Up Display:フロントガラスに運転者向けの基本的な情報の画像を提供する)など、多岐にわたり、その全てがデジタル高速伝送により情報のやり取りが行われ、コネクタの活躍するシーンはますます拡大する。

 

こうした流れの中、車載カメラ数量は2014年度から2020年度で約3.5倍の14,000万個に、ADAS市場も同期間に2.5倍の7,700億円に急成長すると見られており、同社では高速伝送、小型化などコネクタメーカーならではのノウハウを注入したADAS用コネクタを開発し、急成長市場に投入する。
販売は、北米のTier1(自動車部品メーカーのうち、自動車メーカーに直接納入する一次サプライヤー)メーカーへの参入を狙う。また、製造においては中国、東アジアに次ぐ拠点づくりの検討を開始している。

 

③情報システム Segments No.1 戦略:インテグレーションで事業価値を倍化
サーバ効率化のための仮想化において業界屈指の技術を有しており、現在はクラウドコンピューティングの広がりの中、世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れ高付加価値の一括案件の獲得を進めている。今後は、データの収集から分析までを一括して請け負うビッグデータ基盤ソリューションを提供し、特徴あるSegments No.1の獲得を目指す。
成長市場において、企画から運用までフルサポートする総合提案で収益性の向上にも取り組む。

 

(5)プラットフォーム戦略:コンパクト経営の追求

以上の様な事業戦略の下で営業利益率の向上を目指す同社だが、繰越欠損が無くなること等から今後の実効法人税率の上昇は避けられず、市場の期待に応える水準のROE、ROAを実現するためには「資産の軽量化/高回転化」、具体的には総資産回転率の引き上げが重要な課題となる。
前期の同回転率は1.09回だったが、以下のような取り組みによって1.4~1.5の達成を目指す。

 

*ROICを意識した事業投資。設備は小型、省スペースおよび転用が可能なものとする。またEMSの活用など、社外リソースとの共創を進める。
*ロスや無駄をなくしての生産性向上。製造や業務品質の向上。遊休資産や過剰在庫の極小化に取り組む。
*CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮
*機動的な資本政策

 

(6)よい会社に向けて

全てのステークホルダーからの信頼と期待の下、組織力と人材力の強化に最注力し、持続的成長を遂げる「よい会社」を目指す。

 

(7)数値目標

GC20の最終年度である2023年3月期の計画は以下の通り。

 

 

18年3月期

23年3月期

計画

売上高

194億円

270億円

営業利益

20億円(10.3%)

32億円(12.0%)

ROE

14.2%

13%+α

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

8名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2020年6月30日

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

<補充原則1-2-4>

議決権電子行使プラットフォームは導入済です。招集通知の英訳は、議案部分について実施しています。

<補充原則3-1-2>

外国法人等の持ち分が10%未満のため、業務、効率面から未実施。20%を超えた段階で実施します。

<開示している主な原則>

原則

開示内容

<原則1-3>

総還元性向30%を基本とし、2020年度に向けて段階的に増配します。また、業績見通しの変動等により、配当性向<25%と見込まれる場合に自己株式取得を検討します。

<原則1-4>

 

株主総会の動向を参考とするための2月決算企業の1千株を除いて、保有していません。当社は、株価変動の影響を受けにくい強固な財務基盤の構築や資本効率性の向上の観点から、政策保有株式を原則として保有しないことを基本方針とします。ただし、業務提携その他経営上の合理的な理由から保有する場合には、目的に応じた保有であることを検証の上、合理性を定期的に確認します。

<原則4-11>

年に一度、全取締役、全監査役が、取締役会の実効性について自己評価し、その評価方法、評価結果、今後の課題等を取締役会で議論し、改善を図っています。その結果、取締役会の構成は、当社の事業内容および規模に照らして適格であり、多様性も高まりました。また、監査役は、財務・会計または法務に関する知見を有する者が選任されています。

<原則5-1>

 

コーポレートガバナンス基本方針 第1条第2項にて、「中長期的な株主の利益と合致する投資方針を有する株主との間で建設的な対話を行う。」と定めた上で、第21条第3項にて、「3.当社は、株主との建設的な対話を促進するためにIRをサポートする部門を配置する。」と定めています。

<補充原則5-1-2>

 

(i) 対話全般について代表取締役社長が統轄し、且つ担当します

(ii) 経営企画グループをIR活動の事務局と定め、本グループが各部門と有機的に連携しています

(iii) 毎年、IR活動計画を策定した上で、その充実・進化を継続的に進めています

(iv) 対話にて重要な株主の意見等が把握できた場合は、速やかに常勤役員で構成する経営会議等に報告し検討します。さらに必要に応じ、取締役会へ報告等を実施します

(v) 説明資料のHP開示、説明者の限定により、発信情報の均一化に取り組んでいます。特にインサイダー情報についてはグループ行動規範に則り、厳格に運用しています

<原則5-2>

 

自社の資本コストを的確に把握しており、事業ポートフォリオの見直し、中長期的な設備投資や研究開発を実行し、これらは経営計画等に織り込み、適宜公表しています。

 

 

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