ブリッジレポート
(2183) 株式会社リニカル

スタンダード

ブリッジレポート:(2183)リニカル 2021年3月期第2四半期決算

ブリッジレポートPDF

 

秦野 和浩 社長

株式会社リニカル(2183)

 

会社情報

市場

東証1部

業種

サービス業

代表取締役社長

秦野 和浩

所在地

大阪市淀川区宮原 1-6-1 新大阪ブリックビル

決算月

3月

HP

https://www.linical.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

718円

22,586,525株

16,217百万円

9.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

14.00円

1.9%

-円

-倍

221.97円

3.2倍

*株価は12/9終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
*ROEは20/3月期。DPSは21/3月期予想。EPSは非公表。数値は四捨五入。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

8,355

2,128

2,076

1,447

63.59

10.00

2018年3月(実)

9,113

1,846

1,826

1,295

57.02

11.00

2019年3月(実)

11,313

1,212

1,253

568

25.09

12.00

2020年3月(実)

10,935

1,005

918

482

21.38

14.00

2021年3月(予)

-

-

-

-

-

14.00

*予想は会社予想。新型コロナウイルス感染拡大による影響を現段階において合理的に算定することが困難なことから未定。

 

リニカルの2021年3月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.経営戦略
3.2021年3月期第2四半期決算
4.2021年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 21/3期第2四半期は前年同期比7.6%の減収、同71.5%経常減益。売上面では、世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、米国・欧州・日本において、医療機関への訪問規制などにより一部治験業務の実施が困難となったことや新規獲得案件の治験開始時期に遅延があったことにより受注残高の回収による売上計上が遅れた。また、前期第4四半期に新型コロナウイルス感染症の拡大の影響から製薬会社で新規開発案件の一時凍結が起こり、今第2四半期連結累計期間の売上に影響する受注の確保が不足するとともに、今期に入ってからも製薬会社において開発案件の絞り込みが継続されていることから、新規受注の獲得も想定を下回る結果となった。利益面では、売上高の減少による稼働率の低下等が大きく影響したことに加え、円高により外貨預金等に為替差損が発生したことが影響した。

     

  • 21/3期の会社計画は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響により、同社グループを取り巻く事業環境は先行き不透明な状況が続くと見込まれ、現時点で合理的な業績予想を算定することが困難との判断により、第2四半期決算発表時点でも未定とされた。同社は、今後、合理的な算定が可能となった段階で今期の業績見通しを速やかに公表する方針である。配当は前期と同額の1株当たり普通配当14円の期初予想を据え置き。20/3期は普通配当13円に19/3期の連結売上高が100億円を突破したことを記念した記念配当1円が追加されていた。

     

  • 新型コロナウイルス感染症の拡大を受け厳しい環境が続いているものの、製薬会社が新年度の研究開発予算を策定し開発計画を立案する下期において、新型コロナウイルス感染症の流行が比較的コントロールされている地域を中心に実施される新規案件の引き合いが徐々に増加するものと予想される。いつの時期から売上高を上回る新規受注を獲得することができるのか、来期の業績回復のドライバーとなるであろう今後の受注残高の動向が注目される。

     

1.会社概要

臨床試験(治験)に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization)事業を中心に、医薬品のマーケティング業務ならびに製造販売後{以下製販後という}臨床研究・調査の受託などを行う育薬事業を手掛ける。
医薬品は発売前に厚生労働省の承認・認可を受けることが義務づけられており、承認前の薬剤(医薬品候補)を患者に投与して効果や安全性を確かめる必要がある。その臨床試験としての治験を支援する事業がCRO(Contract Research Organization)である。また、医薬品は製販後も調査、臨床研究を行う必要があり、その段階を支援する事業が育薬(Contract Medical Affairs)である。
同社は創業以来、がん・中枢神経系(CNS)など、世界中の人々がその撲滅を願い、新薬開発への強いニーズが存在する疾病領域を中心にCRO事業を展開してきた。これらは非常に難易度が高い領域であり、同社の知識・経験豊富なエキスパートが高度な治験を支えている。また、同社は創薬支援・育薬事業にも力を注ぎ、申請業務支援、承認後のマーケティングや臨床研究、製販後調査支援まで、単なるアウトソーシングを越えてお客様の事業を幅広くコンサルティングする「製薬会社の真のClinical Development Partner(医薬品開発パートナー)」を目指している。更に、国際化・大規模化が進む医薬品開発の流れのなかで、グローバルで大規模なプロジェクトにも同社グループのワンストップで十分な対応を行い、製薬会社とともに新しい時代を開拓していく戦略的ビジネスパートナーとして、顧客の市場競争力の拡充をトータルに支援している。
また、同社は、受託特化型の事業形態により、特定業務への特化(治験の主要業務であるモニタリング業務、品質管理業務、コンサルティング業務)、特定治験段階への特化(フェーズⅡ、フェーズⅢ)、特定顧客への特化(豊富な医療品開発情報を有する大手製薬会社)を通じて、高収益体質を構築している。

 

【1-1 沿革】

2005年6月、藤沢薬品工業株式会社(現 アステラス製薬株式会社)で免疫抑制剤等の開発に携わってきたメンバー9名によって設立された。大阪発理想の医薬品開発受託(CRO)事業を目的として、設立当初から、CNS領域やがん領域の育成に取り組み、会社設立後まもなく大塚製薬からCNS領域の案件を受注。その後、人材を補強し事業部として受注活動を強化した。また、がん領域も外資系製薬会社等でがん領域の医薬品開発を手掛けた人材等に恵まれ、足元、受注が拡大している。
SMO(治験施設支援機関)事業進出を念頭に、06年1月に同事業を手掛けるアウローラ(株)を子会社化したが、CRO事業への経営資源集中を図るべく07年5月に全保有株式を売却。08年7月に、国内の製薬会社の米国進出支援を目的に米国カリフォルニア州に全額出資子会社LINICAL USA, INC.を設立。同年10月の東証マザーズ上場を経て、13年3月に東証1部に市場変更となった。13年5月に、台湾と韓国に全額出資子会社LINICAL TAIWAN CO.,LTD.とLINICAL KOREA CO.,LTD.を設立。14年4月には、LINICAL KOREA CO.,LTD.と買収した韓国のCROであるP-pro. Korea Co., Ltd.との統合を完了した。14年10月29日には欧州でCRO事業を展開しているNuvisan CDD Holding GmbHの全株式を取得し子会社化するための株式譲渡契約を、Nuvisan Pharma Holding GmbH との間で締結し、12月1日付けで同社の100%子会社となった。更に、グループとしての一体感の醸成と連携強化を図るため、連結子会社となったNuvisan CDD Germany GmbHの名称をLINICAL Europe GmbHに商号変更した。その他、16年3月にLINICAL U.K. LTD.を、同年10月にLINICAL POLAND sp.z.o.o.を、17年9月にLINICAL Czech Republic s.r.oを 設立した。また、2018年4月に米国でAccelovance,Inc.を買収し、Linical Accelovance America,Inc.に社名変更。その他、19年3月にLinical Hungary Kft.を設立、19年5月にLinical China Co., Ltd.を設立したした。更に、2019年12月にLINICAL Europe GmbHへLAA社の欧州子会社を統合し欧州地域の強化を図ったことに加え、2020年2月に上海支店を開設し国際共同治験の受託体制が更に強化された。

 

 

 

【1-2 業務内容】

同社は、主にCRO事業(臨床開発事業)、製造販売後の臨床試験や臨床研究とマーケティング活動支援を担当する育薬事業、創薬支援事業を展開している。非臨床試験段階から臨床開発、製造販売後の育薬まで一気通貫で対応出来る体制をとることで、効率的な新薬開発による上市までの期間の短縮や製品ライフサイクルの延長を可能とし、製薬会社の真のパートナーとして医薬品の価値最大化に貢献している。更に、同社は、製薬会社のみならずバイオベンチャーに対して、ライセンス等の出口戦略まで多面的に支援している。

 

(同社決算説明会資料より)

 

CRO事業(臨床開発事業)
主力のCRO事業においては、事業特化型CROに特徴がある。新薬の迅速な市場投入につながる高品質で高効率な治験の支援を目指して、高い技術と豊富な経験をもつスタッフが担当にあたっている。今後も拡大するグローバルスタディに対応していくため、アジア(韓国、台湾、シンガポール、中国など)と欧州、米国に拠点を開設。薬事から企画、実施計画書の作成、モニタリング、データマネージメント、統計解析、ファーマコビジランスまでワンストップで対応。国際共同治験においては、リニカル本社を窓口に位置づけ、各国に医薬品開発事情に精通した人材を配置。日本語ベースで機動的な国際共同治験が可能な開発環境を整えている。10年から20年近くに及ぶ新薬開発プロジェクトの中でも、3年から7年を要するといわれる治験で特に重要とされる患者を対象とする「第Ⅱ相(フェーズⅡ試験)」「第Ⅲ相(フェーズⅢ試験)」のプロセスに特化し、受託特化型の事業形態にて治験の核となる「モニタリング」を「品質管理」「コンサルティング」とともに提供。信頼性の高いデータの収集を行い、迅速、確実な新薬開発の実現を支援している。更に、豊富な医薬品開発情報を有する大手製薬会社に特化すると共に、担当領域も市場からの開発要請の強いがん領域や中枢神経系領域をはじめ難易度の高い領域に特化することで、顧客である製薬会社のニーズに応えている。
また、同社は、スケジュール管理、治験標準業務手順書・GCP遵守、データ・症例報告書の信頼性などの分野におけるサービスクオリティの高さに強みを持っている。

 

*国際共同治験
「国際共同治験」とは、新規の医薬品開発に世界規模で取り組み、早期上市を目指すため、臨床試験を複数の国または地域において同時並行的に行うことをいう。
*GCP(Good Clinical Practice)
「GCP」とは治験を実施する際に守るべきルールで、日本で正しく治験を実施できるように厚生労働省により省令(法律を補う規則)として定められているもの。

 

(同社決算説明会資料より)

 

育薬事業
臨床研究法が施行され臨床研究を取り巻く環境は大きく変化している中、情報をタイムリーにキャッチアップし、製薬会社のメディカルアフェアーズ部にとって最良のパートナーとなれるよう、臨床研究のモニタリング・研究事務局業務を中心にデータマネジメント・統計解析などを含めたフルサービスの支援を行っている。J-GCPだけでなく、倫理指針、臨床研究法に加えてICH-GCP準拠の臨床試験も対応しており、全てのレギュレーションでのサービスをご提供している。また、当初よりPrimary領域、中枢神経領域でのサービスを提供。現在はがん領域を強化し、半数以上のモニターががん領域の経験者となっている。開発で培ったノウハウをベースに、最新のレギュレーションに対応し、難易度の高い領域でエビデンス創造に貢献する方針。

 

創薬支援事業
既存の臨床開発事業と育薬事業に続く、第3の事業である創薬支援事業 (Innovative Drug Development Business) を展開中。国内大手製薬会社でライセンス、事業開発、臨床開発、開発薬事、マーケティングといった業務に携わり、開発品の目利きから、導入・導出交渉、臨床開発などで数々の実績と豊富な経験を有している担当者が中心となり、主に①開発品の市場分析、②薬事相談のサポート、③ライセンスのサポートの3種のコンサルティングサービスを提供している。これらの経験を武器に、現在、国内または国外の製薬会社、バイオテクノロジーカンパニーからの業務を開発早期より支援している。今後、更に同社の国際拠点と連携し、グローバルでトータルにサポートできる体制を進める方針。

 

 

【1-3 5つの強み】

(1)グローバル規模でワンストップ
同社は日本発のグローバルCROとして、日本を中心にアジア、欧州、米国の3極でサービスを提供可能であり、同社として20ヶ国程度、パートナーを通じてサービスを提供出来る国を含めると30ヶ国程度においてサービスの提供が可能。また、医薬品開発のプランニングから、モニタリング、データマネジメント、統計解析、メディカル・ライティング、薬事、ファーマコ・ビジランスなどあらゆるサービスにおいて経験豊富なプロフェッショナル・メンバーが顧客ニーズに応え、Local試験はもちろん、マルチナショナル・トライアルまでフルサービス、且つ、ワンストップで提供している。

 

LINICAL Global 拠点 「日本・アジア+米国+欧州」の3極体制」

 

(同社決算説明会資料より)

 

(同社決算説明会資料より)

 

日本・アジア+米国+欧州の3極体制整備の成果により、いずれの地域においても受注残高が拡大傾向にあったものの、今期は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により各地域とも前期末(2020/3期末)比で受注残高が減少傾向となっている。

 

(2)創薬支援から臨床開発、臨床研究まで
同社はCSR(corporate social responsibility)として、医薬品開発業務の一端を担う会社として社会に貢献したいと考えている。更に、同社は顧客の真のパートナーとして薬剤の価値最大化に貢献するべく、創薬段階から臨床開発、製造販売後の育薬まで一気通貫で対応出来る体制をとることにより、効率的な新薬開発とライフサイクルマネジメントの延長を可能とし、上市までの期間の短縮(TTM)と売上の早期最大化(TTP)を図っている。日本においては創薬支援事業で創薬支援を、臨床開発事業(CRO事業)では臨床開発を、臨床研究支援事業では製造販売後の臨床試験や臨床研究をサポートしている。

 

(同社HPより)

 

(3)がん・中枢・免疫にフォーカス
医薬品開発のトレンドは、がん、中枢神経系、免疫領域に集中してきている。同社創業メンバーは免疫領域において豊富な経験を持ち、創業当初より難易度の高い免疫領域等を中心にサービスを提供してきた。その後、日本においては2006年に中枢神経領域、2010年にがん領域へと専門性を拡げていき、現在では難易度の高い、がん、中枢神経系、免疫などアンメット・メディカル・ニーズな領域でのサービスを大きな3本柱として事業を展開している。また、海外子会社においても同じく、がん、中枢神経系、免疫系のサービス実績が多く、同社全体で難易度の高いがん、中枢神経系、免疫系を得意領域としている。更に、今後成長が見込まれる皮膚科領域や眼科領域に加え、難易度の高い再生医療領域も今後のサービスの大きな柱にするべく、準備を進めている。

(同社決算説明資料より)
受注を順調に消化しつつ新規の受注を獲得し、受注残高はCNS領域(中枢神経系)、がん領域を中心に拡大傾向にあったものの、今期は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により各領域とも前期末(2020/3期末)比で受注残高が減少傾向となっている。

 

受託試験実績(2020年11月1日現在)

 

(同社決算説明会資料より)

 

(4)グローバル・コラボレーション
日本発グローバルCROとして、顧客へ世界規模のサービスを提供。高品質(Japan Quality)なサービスを提供する為に、日本に国際事業開発本部を設置し、日本語、英語、母国語を含めたその他言語(韓国語、中国語、ドイツ語など)が堪能なマルチリンガル・メンバーを大阪本社および東京支社に多数配置し、海外メンバーと適切なコミュニケーションをとっている。日本の顧客とは日本語でのコミュニケーションも可能。海外メンバーもJapan Qualityについて理解を深めており、All LinicalとしてJapan Qualityを提供している。
日本発の日台韓Asia試験の実施体制の一例として、日本にProject Managerを配置し、日台韓のLeaderを日本に配置するケース、各国拠点にLeaderを配置するケースなど、顧客ニーズに沿った提案があげられる。また、日本発の日米試験やEUとAsia、EUと米国との共同試験も多数実績があり、顧客の開発戦略に合わせた世界規模での提案が可能。

 

(5)高品質なサービス
同社は顧客へ高品質なサービスを提供すべく、社員に対して量・質ともに充実した教育を実施。その成果として、一般社団法人日本臨床試験学会によるGCPサポート認定試験にて第1回目から高い合格率を維持しており、当学会より高い合格率と質の高い臨床試験の推進に貢献した証として感謝状を授与された。また、GCP適合性調査の経験が豊富にあり、FDA inspectionの経験もある。いずれも適合・問題無しとの評価を受けており、同社の品質については社外からも高い評価を得ている。なお、海外子会社においても、FDAやKFDA 、ANVISAなどからのinspectionの経験があり、日本同様に高い評価を得ている。また、予め定められた症例登録期間を前倒しして登録満了となった試験は約67%に上っている。同社は、高品質とスピードを両立して最高のサービスを顧客に提供することが最大の使命と強く認識している。

2.経営戦略

(1)CRO事業

CRO事業の重点戦略は、グローバル1,000名体制の確立及び、グローバル体制強化による国際共同治験のワンストップ受託の促進。

 

(同社決算説明会資料より)

 

(同社決算説明会資料より)

 

買収によるLAA社の子会社化により、日本を中心とするアジア、欧州、米国の3極体制が強化された。また、グローバル1,000名体制が現実的となり、営業力の強化と質の向上が推進された。

 

各国の今後の経営展開
【日本】
(経営戦略)
①Oncology、CNS、Immunologyに加え、再生医療にも特化する他、皮膚科、眼科領域への進出を本格化する。
②臨床研究法施行による企業主導臨床研究関連業務ニーズを取り込む。
③創薬支援事業の拡大とCRO事業とのシナジーを高める。
④新卒者の採用を抑制し、雇用の安定を図る。
(投資戦略)
①Linical Australiaの設立を検討する。
【米国】
(投資戦略)
①ビジネスの中心と位置づけ育成する。
②Linical CANADAの設立を検討する。
③ラテンアメリカへの進出を検討する。
【欧州】
(経営戦略)
①競争力強化により利益率向上を目指す。
②Linical EuropeとLinical Accelovance Europeの統合によるシナジーを加速する。
(投資戦略)
①Linical Italyの設立を検討する他、UKのCRA採用を強化することに加え、さらなる増員と拠点の拡大を検討する。
②Linical South Africaの設立を検討する。
【中国】
(投資戦略)
①Linical China とLinical Accelovance Chinaとを統合し、規模の拡大を検討する。
【韓国】
(経営戦略)
①早急に100名規模まで拡大する。
②4期連続の最終利益黒字を土台に高収益体質を確立する。
【台湾】
(投資戦略)
①香港、フィリピンへの進出を検討する。

 

(2)育薬事業

育薬事業の重点戦略は、拡大する企業主導臨床研究関連業務の外注ニーズへ対応。
他社が手掛けるMRの派遣サービスとは一線を画し、同社が主体となって業務を進める受託サービス型の育薬事業を志向している。臨床研究のサポート業務受託が柱。臨床研究のサポート業務受託は、エビデンス創出のための臨床研究において質の確保が課題となっている。同社では、手順書作成などの体制構築サポートやモニタリング、監査などを実施している。13/3期は臨床研究の受託に成功し、セグメント損益が黒字転換し、14/3期以降臨床研究等の新規受注により売上・利益の成長が加速してきた。
臨床研究法施行を追い風に今後も旺盛な引き合いに対応すべく、積極的な採用を継続する予定である。

 

育薬事業の業績推移

 

11/3期

12/3期

13/3期

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

売上高

97,827

138,400

169,226

288,205

364,918

553,399

806,764

908,810

954,438

1,032,353

営業利益

-15,834

-21,016

19,504

68,010

111,006

208,284

293,028

288,121

313,911

427,600

*単位:千円
(注)16/3期第1四半期連結会計期間より従来のセグメントの名称を「CSO事業」から「育薬事業」へ変更した。

 

(3)創薬支援事業(新規事業の育成)

創薬支援事業の重点戦略は、開発計画立案から薬事当局対応まで幅広いサービスを提供するとともに、創薬ファンドを活用する。
日本の行政当局においては、日本発の革新的な医薬品・医療機器を世界に先駆けて実用化したい、また、韓国・台湾の行政当局においては、国際的な競争力を高め、新たな医薬品を創出していきたいとのニーズを持っている。また、顧客となる製薬会社やバイオテック・ベンチャー・カンパニーにおいては、日本の医薬品市場に参入し、自社製品を流通・販売したいが、日本の市場や薬事に精通していない、十分な開発能力がない、或いは、戦略的パートナー/ライセンシーを必要としているなどの問題点を抱えている。こうした昨今のニーズへの対応を念頭に創薬支援事業を第3の事業へ育成すべく強化している。同社は、臨床開発品だけでなく、より早期段階での支援や大手製薬会社で研究・開発・ライセンスを長年経験したプロフェッショナルが、国内外バイオベンチャーのパートナリングまでの支援を提供することが可能である。また、創薬ファンドへの出資も行う。

 

(同社決算説明会資料より)

 

創薬支援事業 -3種のコンサルティング-

市場分析/調査

・対象疾患の疫学調査

・市場価値と動向予測

・現行治療アルゴリズムとガイドライン調査

・承認薬と開発パイプライン調査

・目標とする製品性能(TPP)立案

・公定薬価とピークセールス予測、収益性評価

薬事・

開発戦略

PMDA相談

(MW)

・開発/薬事戦略の立案と提案

・PMDA相談のための資料作成、申し込み、会議出席、照会事項対応

・治験薬概要書、プロトコル、同意文書等の作成

・治験届と照会事項対応

・治験国内管理人業務

・オーファン薬の登録申請

・Common Technical Document(CTD)作成

戦略的提携/

ライセンス

・提携候補会社/ライセンシーの調査と分析

・提携候補会社/ライセンシーとの面談、製品/技術の説明

・パートナリング目的のカンファレンスへの参加

・Due Diligenceのサポート

・契約交渉のサポート

 

創薬支援事業の契約実績 - (2016年10月~2020年11月)

製品/技術

疾患領域

契約相手会社

の国籍

最も先行する国 での開発段階

契約サービス内容

市場分析

薬事・MW

戦略的提携/ライセンス

核酸

呼吸器疾患

A国

Phase I

 

再生医療等製品

免疫疾患

B国

Phase II

モノクローナル抗体

感染症

C国

前臨床

 

モノクローナル抗体

悪性腫瘍

A国

前臨床

 

PETイメージジングトレーサー

神経変性疾患

C国

Phase I

 

 

低分子化合物

眼疾患

A国

Phase I

 

 

治療デジタルアプリ

心療内科領域

A国

Phase Ⅲ

 

 

免疫療法

アレルギー疾患

D国

Phase I/II

 

 

モノクローナル抗体

悪性腫瘍

E国

Phase Ⅲ

低分子化合物

神経痛

A国

前臨床

 

低分子化合物

皮膚疾患

A国

申請準備中

 

 

核酸

炎症/感染症/眼疾患

A国

非臨床

 

 

低分子化合物

神経痛

A国

Phase I

 

 

モノクローナル抗体

炎症性神経疾患

A国

申請準備中

 

 

低分子化合物

消化器疾患

F国

Phase II/Ⅲ

 

●(ICCC)

 

低分子化合物

神経変性疾患

G国

Phase I/II

 

低分子化合物

神経内科

H国

Phase I

 

再生医療等製品

眼疾患

E国

Phase I/II

●(CTD)

 

再生医療等製品

心臓疾患

A国

Phase I/II

 

 

:サービス提供中  :サービス提供終了
ICCC: In-Country Clinical Caretaker (治験国内管理人)
CTD: Common Technical Document (医薬品の承認申請のための国際共通化資料)(同社決算説明資料より)

3.2021年3月期第2四半期決算

(1)連結業績

 

20/3期

第2四半期

構成比

21/3期

第2四半期

構成比

前年同期比

売上高

5,389

100.0%

4,981

100.0%

-7.6%

売上総利益

1,835

34.0%

1,361

27.3%

-25.8%

販管費

1,264

23.5%

1,175

23.6%

-7.0%

営業利益

571

10.6%

185

3.7%

-67.4%

経常利益

484

9.0%

138

2.8%

-71.5%

親会社株主に帰属する四半期純利益

230

4.3%

-13

-0.3%

-

*単位:百万円
*数値には(株)インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります(以下同じ

 

前年同期比7.6%の減収、同71.5%経常減益
売上高は前年同期比7.6%減の49億81百万円、経常利益は同71.5%減益の1億38百万円。
2020年年初からの新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響により、製薬会社においても新型コロナウイルス感染症関連の研究開発を優先する一方、その他の研究開発については革新性の高い新薬の開発案件であったとしても今期の開発の絞り込みを行うことを余儀なくされるなど製薬会社の研究開発計画は大きな影響を受けている。同社グループが属するCRO業界においても製薬会社の研究開発計画の修正の影響を受け、限られた開発案件を複数社で取り合う過酷な競争環境となっている。その一方で、長期的に見れば同社が属するCRO業界とCSO業界は、医薬品開発・販売のアウトソーシング化及び国際共同治験の増加を背景として、市場規模の緩やかな拡大が予想される。また、製薬会社は革新的新薬の創出並びにその生産性や効率性を更に向上させるため、医薬品開発・販売のアウトソーシングを一層加速させるものと予想される。こうした中、同社は、日本を中心にアジア、米国、欧州(主にドイツ、フランス、スペイン)の3極でサービスを提供している。
売上面では、世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、米国・欧州・日本において、医療機関への訪問規制などにより一部治験業務の実施が困難となったことや新規獲得案件の治験開始時期に遅延があったことにより受注残高の回収による売上計上が遅れた。また、前期第4四半期期に新型コロナウイルス感染症の拡大の影響から製薬会社で新規開発案件の一時凍結が起こり、今第2四半期連結累計期間の売上に影響する受注の確保が不足するとともに、今期に入ってからも製薬会社において開発案件の絞り込みが継続されていることから、新規受注の獲得も想定を下回る結果となった。
利益面では、売上高の減少による稼働率の低下等が影響し、営業利益が前年同期比67.4%減益の1億85百万円に留まった。売上総利益率は27.3%と前年同期比6.7ポイント低下。支払手数料等が減少したものの、売上高対販管費率は23.6%と同0.1ポイント上昇した。また、円高により外貨預金等に為替差損が発生したことから経常利益は1億38百万円と前年同期比71.5%減益と営業利益の減益率を上回った。その他、親会社株主に帰属する四半期純損失はLAA社(Linical Accelovance America,Inc.)の前身であるAccelovance, Inc.が買収以前に受託していた案件に関する仲裁やLAA社の売主との交渉等に関連する弁護士報酬等の費用や税金費用が発生したため13百万円(前年同期は2億30百万円の親会社株主に帰属する四半期純利益)となった。

 

セグメント別売上高・利益

 

20/3期

第2四半期

構成比

21/3期

第2四半期

構成比

前年同期比

CRO事業

4,948

91.8%

4,458

89.5%

-9.9%

育薬事業

441

8.2%

523

10.5%

+18.5%

連結売上高

5,389

100.0%

4,981

100.0%

-7.6%

CRO事業

1,179

87.6%

691

76.0%

-41.4%

育薬事業

166

12.4%

218

24.0%

+31.0%

調整額

-775

-

-724

-

-

連結営業利益

571

-

185

-

-67.4%

*単位:百万円

 

CRO事業は、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、医療機関への訪問規制などにより一部治験業務の実施が困難となったことや新規獲得案件の治験開始時期に遅延があったこと等により受注残高の回収による売上計上が遅れたこと等から、減収減益となった。売上高は前年同期比9.9%減少した。また、売上高の減少により、営業利益は同41.4%減少した。セグメント利益率は、15.5%と前年同期比8.3ポイント低下した。

 

育薬事業は、新薬発売後の臨床研究を中心とした案件の受注により人員の稼働率が上昇した結果、増収増益となった。売上高は前年同期比18.5%増加し、営業利益は同31.0%増加した。セグメント利益率は、41.8%と前年同期比4.0ポイントの上昇となった。

 

(2)各国単体の状況

 

2020/3期 第2四半期

2021/3期第2四半期

売上高

経常利益

売上高

増減率

経常利益

増減率

日本

3,694

573

3,323

-9.9%

287

-49.8%

米国連結*1

(LU+LAA)

658

-187

836

+27.0%

24

-

欧州連結*1

1,314

152

1,105

-15.9%

-39

-

韓国

239

62

222

-7.1%

19

-69.4%

台湾

121

25

74

-38.8%

-25

-

中国

(LU+LAC)

47

-2

118

+146.7%

17

-

連結調整*1

-684

-139

-697

-

-145

-

合計

5,389

484

4,981

-7.6%

138

-71.5%

*単位:百万円
*1 のれんの償却費用は連結調整に計上

 

新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きくグループ全体では減収減益となったものの、米国と中国は好調に推移し、増収増益となった。

 

(3)受注残高の推移

 

20/3期 期末

(A)

21/3期 

第2四半期期末

20年11月13日現在

(B)

前期末比

(B-A)/A

中外製薬

3,227

3,200

3,170

-1.7%

エーザイ

3,802

3,108

2,981

-21.6%

小野薬品工業

1,328

1,034

1,055

-20.5%

その他

11,541

10,264

10,041

-13.0%

受注残高合計

19,900

17,607

17,249

-13.3%

*単位:百万円

 

CRO事業は、1年から3年程度の治験実施期間において、症例数や対象疾患に起因する治験の難易度などにより受託総額が決定する。この実施期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い毎月売上が発生する。育薬事業においても、同程度の期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い毎月売上が発生する。受注残高は、既に契約締結済みの受託業務の受注金額の残高である。このため、今後1年から5年程度の期間で発生する売上高を示しており、同社グループの今後の業績予想の根拠となる指標である。

 

2020年11月13日時点の受注残高は、前期末(2020年3月)に比べ、13.3%減少。これは、受託案件の新規契約があったものの、これを上回る既存の委受託契約を消化し受注残高が売上高として計上されたことや欧州の既存案件で新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により治験期間の終了時期の前倒しが決定し契約変更の完了により受注残高が減少したこと等によるものである。新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響により製薬会社においても開発案件の絞り込みがなされており新規受注の獲得が想定を下回る状況となっているものの、製薬会社が新年度の研究開発予算を策定し開発計画を立案する下期においては、新型コロナウイルス感染症の流行が比較的コントロールされている地域を中心に実施される新規案件の引き合いが増加していくことが予想される。加えて、前期第4四半期以降に凍結された複数案件の再始動も見え始めている模様であり、同社はグループ一体となってこれらの新規案件の獲得に取り組む方針である。

 

(4)財政状態及びキャッシュ・フロー

財政状態

 

20年3月

20年9月

 

20年3月

20年9月

現預金

5,210

4,706

短期有利子負債

1,469

1,948

売上債権

2,057

2,247

未払金・未払費用

1,060

759

立替金

821

783

前受金

1,534

1,480

流動資産

8,517

8,321

長期有利子負債

3,179

2,952

有形固定資産

741

714

負債

8,922

8,848

無形固定資産

4,033

3,832

純資産

5,338

5,013

投資その他

968

993

負債・純資産合計

14,260

13,862

固定資産

5,743

5,540

有利子負債合計

4,649

4,900

*単位:百万円
*有利子負債=借入金+リース債務

 

2020年9月末の総資産は前期末比3億98百万円減の138億62百万円。資産サイドは現預金、のれん等が、負債純資産サイドは、主に未払金、前払金、長期借入金等が主な減少要因。2020年9月末ののれんは、36億56百万円と同1億75百万円減少。また、2020年9月末の自己資本比率は36.2%と前期末比1.2ポイント低下した。

 

キャッシュ・フロー

 

20/3期 第2四半期

21/3期 第2四半期

前年同期比

営業キャッシュ・フロー

581

-484

-1,065

-

投資キャッシュ・フロー

-99

-43

56

-

フリー・キャッシュ・フロー

481

-527

-1,008

-

財務キャッシュ・フロー

-580

-88

492

-

現金及び現金同等物の四半期末残高

4,988

4,706

-281

-5.6%

(単位:百万円)

 

CFの面から見ると、前年同期との比較で、税金等調整前四半期純利益、未払金、前受金、預り金等の減少などにより営業CFがマイナスへ転じた。有形固定資産の取得による支出の減少などにより投資CFのマイナスが縮小したものの、フリーCFもマイナスへ転じた。その他、短期借入金が増加したことなどにより、財務CFのマイナスは縮小した。

 

(5)最近のトピックス

【新型コロナウイルス感染症治療薬治験受託】

同社は、2020年9月9日に学校法人北里研究所との間で、イベルメクチン(注)の新型コロナウイルス感染症に対する適応追加を目指した医師主導治験についての治験業務委託契約を締結した。同社は、治験業務においてRisk Based Monitoringの手法を導入し、信頼性の高いデータの収集を行い、迅速、確実な開発の実現に貢献することで患者の健康的な生活に寄与していく方針である。
(注)イベルメクチンは、2015 年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智北里大学特別栄誉教授が発見したマクロライド
系抗生物質。動物薬として寄生虫駆除に用いられるほか、オンコセルカ症(河川盲目症)やリンパ系フィラリア症など寄生虫感染症薬としてアフリカ・中南米を中心に 2019 年は約 4 億人が服用している。

 

【大阪府「新型コロナウイルス助け合い基金」への寄付】

同社は、2005年6月に大阪で創業以来、「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する。」を経営理念に掲げ事業を展開してきた。今回同社は、新型コロナウイルス感染症に関する医療や療養に携わる医療従事者等の活動を支援するため大阪府が創設した「新型コロナウイルス助け合い基金」の趣旨に賛同し、1,000万円を寄付する決定を行った。

 

4.2021年3月期業績予想

(1)連結業績

 

20/3期 実績

構成比

21/3期 予想

構成比

前期比

売上高

10,935

100.0%

-

-%

-%

営業利益

1,005

9.2%

-

-%

-%

経常利益

918

8.4%

-

-%

-%

親会社に帰属する

当期純利益

482

4.4%

-

-%

-%

*単位:百万円

 

21/3期の会社予想は未定
新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響により、同社グループを取り巻く事業環境は先行き不透明な状況が続くと見込まれ、現時点で合理的な業績予想を算定することが困難であるとの判断により、第2四半期決算発表時点においても21/3期の会社計画は未定とされた。同社は、今後、合理的な算定が可能となった段階で速やかに公表する方針である。
配当は前期と同額の1株当たり普通配当14円の期初予想を据え置き。20/3期は普通配当13円に19/3期の連結売上高が100億円を突破したことを記念した記念配当1円が追加されていた。

 

製薬会社が新年度の研究開発予算を策定し開発計画を立案する下期において、新型コロナウイルス感染症の流行が比較的コントロールされている地域を中心に実施される新規案件の引き合いが増加していくことが予想される。加えて、前期第4四半期以降に凍結された複数案件の再始動も見え始めており、同社グループ一体となってこれらの新規案件の獲得に取り組む。加えて、同社は学校法人北里研究所との間で締結したイベルメクチンの新型コロナウイルス感染症に対する適応追加を目指した医師主導治験など、今後も新型コロナウイルス感染症に対する有効な治療や予防手段の開発支援に尽力することで、感染予防、患者の早期回復に効果的な治療と医療システムの維持に貢献していく方針である。

 

(2)新型コロナウイルス感染拡大の影響

同社グループは、日本発グローバルCROとなるため医薬品開発業務受託に特化して日亜米欧15か国に事業展開し、グローバル受託体制を確立・進展させ成長してきた。医薬品開発業務受託に特化し、欧米など海外売上比率が高いことから、欧米で新型コロナウイルス感染症の流行が続く環境下、新型コロナウイルス感染拡大の影響が同業他社よりも大きくなっている。

 

【新型コロナウイルス感染症拡大が今期業績に与える影響】
① 受注残の回収による売上計上に遅れ

医療機関への訪問規制などにより、一部治験業務の実施ができないことに加え、新規獲得案件の治験開始時期に遅延が発生した。

② 新規受注の積み上げに遅れ

製薬会社の新規開発案件の一時凍結や絞り込みが続き、限られた開発案件を複数社で取り合う厳しい競争環境となっている。

 

【新型コロナウイルス感染症拡大に対応した今後の戦略】

 

短期

国内

①CRO事業において、製薬会社が新規開発案件の一時凍結や絞り込みが続き厳しいものの、製薬会社の新年度予算を見据え、新規案件の掘り起こしと受注獲得を進める。

②育薬事業において、臨床研究法が施行された後、医薬品製造販売後の臨床研究案件の受注が増加しており、今後も成長を続ける。

③創薬支援事業において、国内外の製薬ベンチャーから開発初期段階の創薬支援を始め多くの受注を獲得しており、今後、医薬品開発の中心である第2、3相のCRO事業とのシナジーをさらに高めていく。

海外

①米欧を中心に新規案件の引き合いは徐々に増加しており、製薬会社の潜在的な医薬品開発需要は高い。コロナ収束を見据え、新規案件の掘り起こしと受注獲得を進める。

 

中長期

前提

①病という人類の脅威に対する新薬開発は止まらない。

②新型コロナウイルス感染症のワクチンや治療薬の開発が加速し、同社サービスを通じた社会への貢献機会が増加する。

戦略

①韓国子会社が2020年3月に現地製薬会社から新型コロナウイルス感染症治療薬の韓国内での治験業務を受託した他、日本も2020年9月学校法人北里研究所との間で締結したイベルメクチンの新型コロナウイルス感染症に対する適応追加を目指した医師主導治験などを受託した。

新型コロナウイルス感染症に対する有効な治療や予防手段の開発支援に尽力することで、感染予防、患者の早期回復に効果的な治療と医療システムの維持に貢献し、同社の社会的使命を果たす。

 

 

(3)のれんの残高と残存償却期間(2020/3期末)

 

金  額

残存償却期間

年間償却額

韓国

2019年3月期で償却終了

欧州 ※1、※2、※4

1,370

13-14年

102

米国 ※1、※3、※4

2,471

14年

176

*単位:百万円

 

韓国子会社はのれんの償却が終了し、今後収益性の改善が期待される。

 

※1 Linical Accelovance America, Inc.(以下、LAA)買収により発生したのれんについて、その欧州子会社分を欧州に按分。
※2 のれん以外にPurchase Price Allocation により認識された無形固定資産の2020/3期末残高は92百万円。
これらの残存償却期間1~11年。
※3 のれん以外にPurchase Price Allocation により認識された無形固定資産の2020/3期末残高は64百万円。
これらの残存償却期間1~7年。
※4 LAA買収後における価格調整が完了しておらず、現時点ではのれんの金額は暫定的に算定された金額。

 

 

5.今後の注目点

同社の上期決算は、前年同期比7.6%減収、同71.5%経常減益の厳しい内容となった。これは、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大する中、これまで医薬品開発業務受託に特化し、グローバル受託体制を確立してきた同社にその悪影響がより大きく出たものである。第2四半期においても新規受注が売上高を下回り受注残高が減少する厳しい環境が継続していた。しかし、厳しい環境はいつまでも続くものではなく今後徐々に明るい話が増加してくるものと期待される。製薬会社が新年度の研究開発予算を策定し開発計画を立案する下期において、新型コロナウイルス感染症の流行が比較的コントロールされている地域を中心に実施される新規案件の引き合いが徐々に増加するものと予想される。、また、前期第4四半期以降に凍結された複数案件の再始動も予想される。特に同社が得意とするがん領域や中枢神経領域などにおける新薬の研究と開発はいつまでも抑制できるものではない。加えて、新型コロナウイルスのワクチン投与が本格化する過程においては、ワクチンの効果があるのかを明らかにするための製造販売後調査の拡大が予想され、同社の育薬事業へも大きな恩恵をもたらすものと期待される。上期の厳しい環境の中でも、米国と中国の子会社の業績は順調に拡大しており、米国と中国の子会社が軌道に乗ってきたことが確認された。今後業界環境が好転する局面においては、グローバル展開で勝る同社の成長性が業界他社に比べ高まるものと予想される。いつの時期から売上高を上回る新規受注を獲得することができるのか、来期の業績回復のドライバーとなるであろう今後の受注残高の動向が注目される。
また、同社は今後グローバル拠点の責任者の異動を実施する予定である。米国拠点の社長経験もあり、欧州極点を軌道に乗せた辻本副社長が日本へ戻り日本から欧州と米国を統括する予定である。今後これまで以上に欧州と米国のシナジー効果が拡大するものと期待される。更に、米国の責任者である坂本取締役が欧州拠点へ、アジアの責任者である河合副社長が米国へ、日本で秦野社長をサポートしていた宮崎常務がアジアの責任者へ就任する予定である。担当役員の変更が今後いかなるシナジー効果を発揮するのか注目される。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態および取締役・監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

11名、うち社外2名

監査役

3名、全員社外監査役

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2020年7月1日
コーポレート・ガバナンス・コード適用以降のコーポレート・ガバナンス報告書直近の提出日、2020年7月1日。
<基本的な考え方>
当社は、その有している医薬品開発の技術をもって国内大手製薬会社のパートナーとして医薬品開発に貢献し、医薬品の分野から社会全体の期待に応えてまいります。さらに、企業価値を高めていくためには、健全性と透明性が確保された迅速な意思決定を可能にする体制の整備が必要であると考えております。 この考えに基づき、最重要課題であるコンプライアンスの徹底を含む内部統制の強化を図っております。

 

<コーポレート・ガバナンス・コード各原則の実施について>
実施をしないコードのおもな原則と理由

原則

実施しない理由

【補充原則1-2④ 株主総会における権利行使】

当社は、株主が議決権行使を行いやすい環境の整備は必要であると認識しております。議決権の電子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英訳については、機関投資家並びに海外投資家の比率等を勘案しながら、導入を検討してまいります。

【原則1-3 資本政策の基本的な方針】

当社は、株主価値を中長期的に高め、持続的成長を実現するため、財務健全性の確保と持続的成長に向けた戦略的投資を行います。具体的には、財務健全性の確保については、成長投資とリスクを許容できる株主資本の水準を保持することを基本とします。持続的成長に向けた戦略的投資については、内部留保資金を、将来の事業発展に必要不可欠な国際共同治験への体制構築のための投資やM&Aによる拠点拡充などに活用し、資本効率の向上に努めます。株主への利益還元である配当については、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元のバランスの最適化を図ることを基本方針とし、安定的な利益還元に努めます。以上の資本政策の基本的な方針に関し、今後、Webサイト上等でご説明できるよう検討してまいります。

【<補充原則4-1② 取締役会の役割・責務(1)】

当社では、経営会議において中期計画を検討し、各会議において進捗状況の確認、分析を行い、必要に応じて適宜、中期目標や方針の見直しを行うこととしております。取締役会は、経営会議が策定した中期計画を決議するとともに、進捗状況や分析結果について報告を受け、監視、監督することとしております。現在当社では中期計画を公表しておりませんが、決算説明会(年2回)ならびに個人投資家説明会(年2回)において、長期的な経営戦略、ビジョンを説明するとともに説明会資料等を開示し、株主・投資家との共有認識を醸成できるよう努めております。今後、中期計画の公表について検討してまいります。

【原則4-9 独立社外取締役の独立性判断基準及び資質】

当社は、一般株主と利益相反が生ずるおそれがない客観的な独立性判断基準等の開示に関して慎重に検討をしてまいります。

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

【原則1-4 政策保有株式】

当社は、 株価変動というリスクの回避のため、また資本効率の向上のためという2つの理由から、協業・提携のための株式保有等の必要がある場合を除き、上場株式を保有しません。

【補充原則4-11① 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】

当社は、医薬品開発を主たる事業としております。このため取締役会は、迅速かつ的確な意思決定ならびに執行の監督が行えるよう、新薬開発をはじめとした医薬品業界の業務に精通し、深い知識・経験を有する者を中心に構成しています。さらに、財務・会計の専門知識を有する者、海外で当該事業のグローバル展開を経験した者等がガバナンスの充実や成長戦略に関して積極的に意見を述べ、活発な議論が行える体制を整えています。現在、取締役会は11名で構成されており、このうち女性を1名含んでおります。

【補充原則4-11② 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】

現在、当社の取締役・監査役は、その役割・責務を適切に果たすため、独立社外取締役を除き、他の上場会社役員の兼務は行っておりません。また、利益相反取引の観点からも、他社の役員の兼務については取締役会にて決議を行い、兼務する場合であっても合理的な範囲にとどめることを前提といたします。なお、取締役・監査役の他社との主な兼務状況は、従来から毎年事業報告において適切に開示を行っております。

【補充原則4-11③ 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】

当社取締役会は、社外監査役(3名)による取締役全員(11名)へのインタビューを実施し、その結果に基づき取締役会の実効性を以下のとおり評価いたしました。 1.取締役会の構成医薬品開発の実務や医薬品事業に精通している取締役並びに財務経理等経営管理に関する専門的な知識及び経験を有するCFOから構成されており、取締役の構成としては適切である。医薬品事業に関する国際的な知識・経験を有する取締役及び女性の取締役が選任されており、多様性は確保されている。技術革新の著しいICT分野、AI等への知見、Global展開に伴うグループ経営等に対応すべく、各取締役の一層の研鑽・貢献が望まれる。2.取締役の活動支援体制社内の取締役は、他国の子会社の役員が参加する会議も含め複数の会議に参加しており、その担当業務以外の業務に関しても情報収集及び議論の機会が確保されている。一方で、社外取締役に対する取締役会の議案に関する事前の情報提供につき、一層の充実を要する。3.取締役会の運営 議論の活性化社外取締役から質疑や意見等が十分に述べられ、活発に建設的な議論がなされている。4.議題・議論の内容 決議事項・報告事項については適切に付議されている。中期的戦略課題をより重点的に議論すべきとの意見があった。以上の評価結果をもとに、取締役会にて、当社取締役会の実効性は確保されている旨の結論を得ました。今後、継続的な評価の過程での意見・議論を踏まえ、取締役会の運営並びに運営環境を洗練させ、戦略課題の審議、推進状況のモニタリングなどを一層充実させてまいります。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

当社では、企業と株主(潜在株主としての機関投資家や個人投資家を含む)の共通目的である企業価値の持続的成長を目指し、信頼関係を構築するために、業績、経営戦略、資本政策、リスク、コーポレートガバナンス体制などについて以下の方法により継続的・建設的で透明・公正な対話を実施しております。-株主との対話は専務取締役CFOが統括を行い、面談の目的と効果、株主属性を勘案し、代表取締役社長、専務取締役CFOを中心とした経営幹部により対話者と対話方法を検討のうえ実施しています。-IRは財務部ならびに経営企画室が中心となり社内関連部署から必要情報を収集し、分かり易い資料作成や説明により株主との対話を充実させています。-定時株主総会、決算説明会(年2回)、個人投資家向け説明会(年2回)、四半期決算開示毎の国内外機関投資家・アナリストとの会議、ホームページでのIR情報開示、個人投資家様からの電話・メール等による問い合わせへの個別対応などを通じて対話の機会を持ち、質問や要望、説明会での参加者情報やアンケート結果などをIR活動へ反映しています。-株主との対話を通じて把握した株主の関心や懸念は専務取締役CFOに集約し、経営分析や情報開示の在り方などの検討に活かしています。-IR活動や株主との対話においては、社内規程の定めるところに従い、適切にインサイダー情報を管理しております。なお、当社では決算情報に関する対話を控える沈黙期間を四半期決算期日の翌日から決算短信発表日までを沈黙期間としております。

 

 

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