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(7776) 株式会社セルシード

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ブリッジレポート:(7776)セルシード 2020年12月期第3四半期決算

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橋本 せつ子 社長

株式会社セルシード(7776)

 

 

企業情報

市場

JASDAQ

業種

精密機器(製造業)

代表者

橋本 せつ子

所在地

東京都江東区青海二丁目5番10号 テレコムセンタービル

決算月

12月

HP

https://www.cellseed.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

277円

14,612,865株

4,047百万円

-

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

-

-

-56.36円

-

90.20円

3.1倍

*株価は11/27終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。EPSは直近決算短信より。ROE、BPSは前期末実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2016年12月(実)

100

-1,413

-1,415

-1,414

-

-

2017年12月(実)

85

-956

-964

-966

-

-

2018年12月(実)

1,026

140

140

129

11.27

-

2019年12月(実)

275

-780

-786

-782

-

-

2020年12月(予)

200

-742

-751

-781

-56.36

-

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

 

(株)セルシードの2020年12月期第3四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年12月期第3四半期決算概要
3.2020年12月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 20/12期3Q(累計)は売上高83百万円(前年同期比60.2%減)、営業損失6.0億円(前年同期は5.5億円の損失)。再生医療支援事業の売上が82百万円と同8.5%増加したものの、細胞シート再生医療事業の売上が前年同期比98.7%減の1百万円にとどまった。販管費が減少したものの、減収による売上総利益の減少で営業損失が拡大した。

     

  • 通期予想は売上高2億円(前期比27.5%減)、営業損失7.4億円(前期は7.8億円の損失)。新型コロナウィルス感染症の見通しが不透明であることから、20/12期通期の業績予想を合理的に算出することが困難であるとして業績予想を未定としていたが、第3四半期及び10月度の月次決算を踏まえ、また、新型コロナウィルスの状況が大きく悪化せず、国内外の環境、状況が急激に変化しないことを前提に通期の業績予想を開示した。

     

  • コロナ禍の影響で日本・台湾間の体物質のやり取りができなくなったため、MetaTech社が食道再生上皮シートの治験届の再提出を余儀なくされた。また、台湾の合弁会社Up Cell Biomedical Inc..への全般的な開発支援も遅れている他、中国・台湾を中心としたアジア諸国への新規の事業提携・ライセンシングに向けた活動も制約を受けている。このため、厳しい決算となった。4Qに入り、食道再生上皮シートの追加治験届提出や「肝細胞シート」の治験製品製造に向けた技術移転契約といった動きが出てきた。器材製品の販売も好調を維持していることから、4Q以降の展開に期待したい。

     

     

1.会社概要

失われた臓器や損傷あるいは機能が低下した臓器を再生して治療する新たな医療である再生医療。東京女子医科大学の岡野光夫名誉教授・特任教授が開発した日本発・世界初の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製した「細胞シート(シート状の培養細胞)」を用いた再生医療等製品の開発を行う「細胞シート再生医療事業」と細胞シートの基盤ツール(培養器材)である温度応答性細胞培養器材等の開発・製造・販売及び再生医療の研究開発・事業化を支援する再生医療受託サービスを提供する「再生医療支援事業」を二本柱とする。

 

「細胞シート工学」 - 再生医療の基盤技術 -

 

(同社資料より)

「細胞シート工学」は東京女子医科大学岡野光夫名誉教授が発明した日本発・世界初のプラットフォーム技術である。温度によって分子構造を変える性質を持つ温度応答性ポリマーで表面を加工した細胞培養皿で細胞を培養する。細胞培養皿の表目は37℃で細胞が付着できる適度な疎水性(水分を弾く性質)になり、20℃では細胞が付着できない親水性(水分を含む性質)になる。このため、温度を変えるだけで、細胞外マトリックス(接着蛋白質)を保持したまま有機的に結合した「細胞シート」を培養皿から回収することができる。

一般に細胞は細胞外マトリックスを分泌し、自らを固定する事により増殖する性質を持つ。言い換えると、接着蛋白質を分泌しながら自らをどこかに固定しないと増殖できないのだが、従来の培養方法では、培養した細胞をトリプシン等の蛋白質分解酵素を用いて接着蛋白質を分解して回収していた(接着蛋白質を分解する以外に培養細胞の回収方法が無かった)。

 

1-1 事業内容

細胞シート再生医療事業
現在のパイプラインは、「細胞シート工学」を基盤技術とする「食道再生上皮シート」と膝軟骨の「軟骨再生シート」の2本。「食道再生上皮シート」は、2016年8月に国内で治験を開始したが、有効性についての十分なデータを得ることができなかった。このため、2020年10月に追加治験届を提出した。海外では、17/12期4月に台湾の三顧股有限公司(以下、MetaTech社)と事業提携契約を締結し、同社が2018年12月末に治験届を提出している。

 

「軟骨再生シート」は、東海大学医学部付属病院が申請していた先進医療が2019年1月に承認され、大学病院で治療の開始に向けた準備が進められている。また、MetaTech社への導出も実行され、台湾の法律(日本の先進医療Bに準じた法律)をもとに自己軟骨シートの事業化が進められている。

 

「細胞シート工学」を用いた再生医療製品は様々な分野で臨床研究が行われており、同社は第3の開発品目として、2019年8月に、東京医科歯科大学と「同種歯根膜由来間葉系幹細胞シート(歯根膜細胞シート)」の臨床開発の詳細検討に向けた協議の開始を決定した。

 

 

再生医療支援事業
温度応答性細胞培養器材等の開発・製造・販売、及び細胞シート製品の製法開発・受託製造、施設管理・申請支援、細胞培養技術者教育等の再生医療受託サービスを手掛けている。

 

細胞シート製品の製法開発・受託製造では、製薬会社・研究機関からの委託を受けて、主に細胞シートの受託開発・製造を行う。日本再生医療学会認定の臨床培養士が所属しており、培養の経験豊富なスタッフによる再生医療等製品の製法開発・製造を特定細胞加工物の製造許可を受けた細胞培養加工施設で行う。尚、軟骨再生シートは東海大学が申請していた先進医療Bが2019年1月に承認された。この先進医療に使用される細胞シートは同社が細胞培養センターで培養(受託加工)する。

 

 

1-2 細胞培養センター

延床面積約763㎡で、自動モニタリングシステムによって、清浄度、室圧、温湿度、機器(培養器や保冷庫等)が自動管理され、監視カメラシステムも完備。また、羽田空港まで車で約20分と至近で空輸にも対応しやすい。2017年3月には「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」第35条第1項の規定に基づく「特定細胞加工物製造許可」(許認可権者:厚生労働省)を取得しており、特定細胞加工物の受託製造も可能。

 

(同社資料より)

 

2.2020年12月期第3四半期決算概要

2-1 第3四半期(累計)連結業績

 

19/12期 3Q(累計)

構成比

20/12期 3Q(累計)

構成比

前年同期比

売上高

210

100.0%

83

100.0%

-60.2%

売上総利益

171

81.5%

51

61.6%

-69.9%

販管費

726

344.9%

654

780.3%

-10.0%

営業利益

-554

-

-602

-

-

経常利益

-558

-

-611

-

-

親会社株主帰属利益

-557

-

-611

-

-

* 単位:百万円

 

売上高83百万円(前年同期比60.2%減)、営業損失6.0億円(前年同期は5.5億円の損失)
売上面では、再生医療支援事業の売上が82百万円と同8.5%増加したものの、細胞シート再生医療事業の売上が前年同期比98.7%減の1百万円にとどまった。

 

損益面では、研究開発費(379百万円→340百万円)、その他経費(346百万円→314百万円)共に減少したものの、減収による売上総利益の減少で営業損失が拡大した。

 

 

19/12期 3Q(累計)

構成比

20/12期 3Q(累計)

構成比

前年同期比

再生医療支援事業

75

35.9%

82

97.9%

+8.5%

細胞シート再生医療事業

135

64.1%

1

2.1%

-98.7%

連結売上高

210

100.0%

83

100.0%

-60.2%

再生医療支援事業

-40

-

-45

-

-

細胞シート再生医療事業

-274

-

-342

-

-

調整額

-240

-

-214

-

-

連結営業利益

-554

-

-602

-

-

* 単位:百万円

 

再生医療支援事業
売上高82百万円(前年同期比8.5%増)、営業損失45百万円(前年同期は40百万円の損失)。器材製品の売上が増加した他、再生医療受託事業において、共同研究先である東海大学より受託製造した先進医療にかかる1例目、2例目の自己軟骨再生シート受託製造の売上を計上した。ただ、新型コロナウィルスの感染拡大の影響による他の医療機関からの受託製造に遅れが生じたこと等で再生医療受託事業の売上は当初の計画を下回った。

 

細胞シート再生医療事業
売上高1百万円(前年同期比98.7%減)、営業損失342百万円(前年同期は274百万円の損失)。前年同期は台湾MetaTech社への開発データ提供に伴う売上1億円を計上したが、今期は新型コロナウィルスの感染拡大の影響で台湾への渡航が制限されているうえ、その他の海外展開にも遅れが生じている。

 

 

2-2 財政状態

 

19年12月

20年9月

 

19年12月

20年9月

現預金

1,065

1,137

未払金

33

49

売上債権

56

14

未払法人税等

10

6

たな卸資産

48

49

前受金

30

58

前払費用

19

20

買掛金その他

36

30

流動資産

1,245

1,260

有利子負債

-

-

有形固定資産

29

26

負債

110

145

投資その他

181

197

純資産

1,345

1,339

固定資産

210

224

負債・純資産合計

1,456

1,485

* 単位:百万円

 

第3四半期末の総資産は前期末との比較で28百万円増の1,485百万円。新株予約権の行使に伴う、現預金が増加した。負債・純資産では、新株予約権の行使に伴う新株の発行で資本金及び資本剰余金が増加したものの、最終損失となったことで利益剰余金が減少した。

 

 

3.2020年12月期業績予想

3-1 通期連結業績

 

19/12期 実績

構成比

20/12期 予想

構成比

前期比

売上高

275

100.0%

200

100.0%

-27.5%

営業利益

-780

-

-742

-

-

経常利益

-786

-

-751

-

-

親会社株主帰属利益

-782

-

-781

-

-

* 単位:百万円

 

売上高2億円(前期比27.5%減)、営業損失7.4億円
新型コロナウィルス感染症の見通しが不透明であることから、20/12期通期の業績予想を合理的に算出することが困難であるとして業績予想を未定としていたが、第3四半期及び10月度の月次決算を踏まえ、また、新型コロナウィルスの状況が大きく悪化せず、国内外の環境、状況が急激に変化しないことを前提に通期の業績予想を開示した。

 

3-2 食道再生上皮シートの追加治験届提出

10月20日に、食道再生上皮シート(ヒト自己口腔粘膜由来細胞シート及びその移植デバイス[開発名:CLS2702C/D])の追加治験届を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出した。
追加治験では、ステロイド投与にリスクがある患者を対象に実施して有効性を確認する。対象患者を限定したことやPMDAから当初の治験よりも多い症例数を求められているため、製造販売承認申請は2025年になる予定。このため、試験施設の追加等、治験期間の短縮に向けて、引き続き検討を重ねていく。

 

 

3-3 鳥取大学発ベンチャー企業カノンキュア株式会社への技術移転

11月24日に、カノンキュア(株)が再生医療等製品として開発を進める間葉系幹細胞を利用した肝疾患治療用細胞シート(以下「肝細胞シート」)の治験製品製造に向けた技術移転契約を締結した。

 

肝細胞シートについて
肝疾患は年間約 53,000人が発症し、肝移植適応者数は年間約 2,200人と言われているが、肝移植を受けられるのは年間、約 500 例に過ぎない。
鳥取大学医学部ゲノム再生医学講座遺伝子医療学分野の汐田剛史教授らは、間葉系幹細胞を低分子化合物により肝細胞へ分化誘導することで肝細胞シートを作製することに成功し、この肝細胞シートを肝表面に貼り付けることで、急性肝障害や慢性肝障害による線維化状態を軽減する可能性を見出した。肝臓の線維化は肝硬変や肝発癌の発生要因ともなる病態であり、この肝細胞シート移植が有効な治療法となると期待されている。そして、この契約にかかる肝細胞シートは、温度応答性培養器材UpCell®を用いて培養した肝細胞シートが使われる。

 

契約の概要
(株)セルシードは、カノンキュア(株)から技術情報の提供を受けて、肝細胞シートの製造のために必要な技術及び関連する技術を検証のうえ製造方法をカノンキュア(株)に移管する。また、カノンキュア(株)との治験製品の製造受託契約締結に向けた準備も進めていく。

 

セルシードが受け取る対価
(株)セルシードは、カノンキュア(株)から提出を受けた技術情報を基に肝細胞シートの試験製造等を行い、肝細胞シートの製造の設計品質を検証し、検証の対価をカノンキュアから受領する。また、肝細胞シートの製造方法が確立した場合には、カノンキュア(株)と治験製品の製造受託契約の締結に向けて協議を開始する予定。

 

 

カノンキュア(株)の概要

代表者の役職・氏名

代表取締役 堀川 武晴

所在地

鳥取県米子市西町 86 番地 鳥取大学医学部内

事業内容

消化器及びその他臓器の再生医療に関する製品の開発、製造及び販売疾患の治療、診断、予防に関する医薬薬の開発、製造及び販売

資本金

9,050万円

設立日

2016年4月25日

 

 

4.今後の注目点

細胞シート再生医療事業がコロナ禍の影響を受けている。日本と台湾との間で生体物質のやり取りができなくなったため、MetaTech社が食道再生上皮シートの治験届の再提出を余儀なくされ、台湾の合弁会社Up Cell Biomedical Inc..への全般的な開発支援も遅れている。加えて、中国・台湾を中心としたアジア諸国への新規の事業提携・ライセンシングに向けた活動も制約を受け、第3四半期も厳しい決算となった。
ただ、第4四半期に入り、食道再生上皮シートの追加治験届提出や「肝細胞シート」の治験製品製造に向けた技術移転契約といったポジティブな材料が出てきた。器材製品も好調を維持していることから、第4四半期以降の展開に期待したい。

 

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

4名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2020年03月31日)
基本的な考え方
当社は、技術革新と創造性を発揮し、質の高い優れた製品とサービスの提供を通じ、人々の健康と福祉に貢献していくことを使命とし、全ての企業活動において品質を高めるべく企業統治の整備を進めています。
今後につきましては、ディスクロージャーの透明性を高めるため一層説明責任を充実するとともに、さらなる経営のチェック機能強化を図ってまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、JASDAQ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。

 

 

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

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