ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー 2021年3月期第2四半期決算
渡邉 陽一郎 社長 | 株式会社 朝日ラバー(5162) |
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企業情報
市場 | JASDAQ |
業種 | ゴム製品(製造業) |
代表取締役社長 | 渡邉 陽一郎 |
所在地 | 埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2 |
決算月 | 3月 |
HP |
株式情報
株価 | 発行済株式数(自己株式を控除) | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
784円 | 4,536,363株 | 3,556百万円 | 3.2% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
10.00円 | 1.28% | 26.01円 | 30.1倍 | 979.90円 | 0.80倍 |
*株価12/2終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期実績。
*EPSとDPSは今期の会社予想。
業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に帰属する四半期純利益 | EPS | 配当 |
2017年3月(実) | 6,511 | 475 | 490 | 341 | 76.09 | 16.00 |
2018年3月(実) | 7,534 | 561 | 589 | 459 | 101.98 | 20.00 |
2019年3月(実) | 7,706 | 483 | 508 | 352 | 77.97 | 20.00 |
2020年3月(実) | 7,489 | 325 | 346 | 126 | 27.91 | 30.00 |
2021年3月(予) | 6,312 | -41 | 27 | 118 | 26.01 | 10.00 |
*2020年3月期の内訳は、普通配当20円、記念配当10円。
*単位:百万円、円
(株)朝日ラバーの2021年3月期第2四半期決算の概要等をブリッジレポートにてご報告致します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.新中期経営計画
3.2021年3月期第2四半期決算
4.2021年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>
今回のポイント
- 21/3期第2四半期は前年同期比23.0%の減収、75百万円の経常損失(前年同期は1億58百万円の経常黒字)。売上高は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けて自動車向け製品全般、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業で減少した。一方、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を殆ど受けること無く、プレフィルドシリンジガスケット製品や採血用・薬液混注用ゴム製品の受注が堅調に推移した医療・衛生用ゴム事業は増加した。セグメント利益は、売上高の減少を受け工業用ゴム事業で減少したものの、売上高が増加した医療・衛生用ゴム事業は増加した。
- 21/3期の会社計画は、前期比15.7%減収、同92.2%経常減益。自動車市場の回復を受けて、自動車向けゴム製品の受注は第3四半期以降徐々に回復する見通しであることに加え、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品も緩やかに回復する見通しであることから11月9日に通期業績予想の上方修正が行われた。一方、配当予想は、今期の会社計画や内部留保の状況などを総合的に勘案して1株当たり年10円と決定された8月6日の予想(期末10円)から修正なし。
- 同社の研究開発が加速している。深紫外LEDシステムは、ウイルス不活性化のための加工性に優れ、高透過率で安価な深紫外線LED用光学部材の開発に加え、⾼精度・低価格な深紫外線LEDシステムの製品化へ期待が膨らむ。また、超親⽔性シリコーンゴムは、マイクロ流体デバイスの競争力向上に繋がる製品と期待される。これら新技術を用いた今後の製品化の動きが注目される。
1.会社概要
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明を中心に、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン(ゴム状の合成樹脂)材料の配合技術と調色技術に強みを有し(色と光のコントロール技術)、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事が可能。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。
グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)朝日FR研究所、米国の販売会社ARI INTERNATIONAL CORP.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司、及び12年1月に設立した工業用ゴム製品の開発・設計・販売を手掛ける朝日科技(上海)有限公司の連結子会社5社からなる。
事業系統図
(同社決算説明会資料より)
海外拠点
(同社決算説明会資料より)
連結業績の推移
【事業内容と主要製品】
事業は、自動車のスピードメーターや内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品、更にはスポーツ用ゴム製品(反発弾性、高摩擦抵抗等を追及した高品質の卓球ラケット用ラバー)等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケット等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品の医療・衛生用ゴム事業に分かれ、21/3期上期の売上構成比は、それぞれ78.3%、21.7%。 今後は、RFIDタグ用ゴム製品、ASA COLOR LENS、医療回路製品用ゴム部品などの販売拡大が期待される。
・ASA COLOR LED
ASA COLOR LEDとは、LEDの光と色のばらつきを解消する商品。青色LEDに蛍光体を配合したシリコーン製キャップを被せることで、自動車内装照明用に10,000色以上の均質な光を提供。顧客に要求される均一な色を実現している。
ASA COLOR LEDのイメージ
(同社決算説明会資料より)
ASA COLOR LEDの採用例
(同社会社説明会資料より)
(同社会社説明会資料より)
・医療用ゴム製品
点滴輸液バッグ用ゴム栓、真空採血管ゴム栓、薬液混注ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケットなど、医療現場で用いられるディスポーザブル商品に使用される。安全性の高い材料を開発し、独自のコーティング技術で“漏れない”と“滑る”を両立し、注射速度の微妙な調節が可能。素材変性技術による安全性の高い材料と表面改質技術による摺動性の向上により、医療ミス防止などの安全性向上に貢献している。
プレフィルドシリンジ向けガスケットのイメージ
(同社決算説明会資料より)
・RFIDタグ用ゴム製品
RFIDタグ用ゴム製品は、溶剤を使わずに接着させる“分子接着・接合技術”を応用し、IC チップやアンテナ部をゴム素材で覆い、折り曲げに強く、耐水性、耐熱性に優れた、柔らかい小型のRFIDを提供。取り付ける対象がどのようなものかを記憶し、認識させる機能で、今後成長が期待される認証・認識ビジネスに対応。 ゴムという弾性体の特徴を生かして、RFIDが使用できなかった用途への利用が可能に。さらに応用し市場拡大を進める。
RFIDタグ用ゴム製品イメージ
(同社決算説明会資料より)
【コア技術と事業領域】
オープンイノベーションで事業領域深耕につながる研究を加速するとともに、製品化に向けた実証研究を強化する。
(同社会社説明会資料より)
・色と光のコントロール技術
シリコーンゴムに着色剤や蛍光体を配合し、様々な色と光を出すことのできる色調管理技術を有し、ばらつきを調整し、顧客が望む細かい色調を実現。また、透明なシリコーン樹脂を材料とし、耐熱性、対紫外線性に優れ、集光・拡散といったレンズ機能を実現。ASA COLOR LEDなどにこの技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、自動車内装、照明分野とコア技術を応用したスイッチ分野の拡大を図る方針。
・表面改質及びマイクロ加工技術
接着剤を使わずに、ゴムとゴムや金属、樹脂を接着させる分子接着・接合技術を有する。接着させる表面を改質処理し、化学反応で結合。これにより、有害な溶剤の廃棄処理が不要となり、耐熱性、耐水性もクリア。耐水性、耐候性に優れており、RFIDタグ用ゴム製品やマイクロ流体デバイスでこの技術が生かされている。また、数十ミクロンから数ミクロン単位の表面加工を行うマイクロ加工技術を確立。医療用ゴム製品である薬液混注ゴム栓の薬液注入口の形成と薬液漏れの防止や、充電して使用できる二次電池の内圧管理にもこのマイクロ加工技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、高性能製品や新たな分野を開拓する方針。
・素材変性技術
ゴムをはじめとするソフトマテリアルは、素材に添加物を配合することで求める機能を持たせることができる。更に、ナノ・分子レベルで成形することによりその機能をパワーアップすることも可能。卓球ラケット用ラバーなどにこの技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、医療分野を支える製品を提供する方針。
【ESGへの取り組み】
同社は、ESGへも積極的に取り組んでいる。
(同社会社説明会資料より)
項目 | 方針と実績 |
E(エンバイロンメント)環境 | 環境に対する取り組みが、持続可能性のある社会の実現に寄与すること、また、事業の競争力の向上と持続的な成長を支える視点の一つととらえ、社会の要請の応えられるよう取り組みを行う。
●工場電力の削減 白河工場と福島工場に太陽光発電パネルを設置。また、白河工場と福島工場の照明をLED蛍光灯に置き換え、省電力化を実現。 ●廃棄物のリサイクル推進 ゴム屑やポリシート、フィルムなどのプラスチック類に加え、硬質を含む混合プラスチックの焼却灰をセメント原料として使用する活動を推進。 |
S(ソーシャル)社会 | 地域社会の一員としての会社であることから、地域への貢献活動も継続して行い、地域の皆様とのコミュニケーションを深めることで、従業員の責任感とモチベーションの向上に役立てる。
●最寄駅の清掃 福島工場、第二福島工場の最寄駅であるJR東北本線泉崎駅で、毎週火曜日の就業時間前に4~5名の当番制で清掃活動を実施。活動を開始して2019年で24年目となる。 ●卓球大会の開催 福島県の県南地区の中学生を対象にした朝日ラバー杯の卓球大会と、高校生や社会人も含めた卓球大会を主催。 ●ケアハウスの清掃 新入社員研修の一環として、地域のケアハウスの清掃を実施。 ●地域イベントへの参加 福島県白河市のイベント「まるごと白河」の企業ブースに出展し、地元にある企業の活動の認知を広め、従業員が直接地域の皆様とふれあう機会を創出。 |
G(ガバナンス)統制 | 2015年6月に、監査等委員会設置会社に移行。社外取締役を招聘し、社内にない多様な意見を取締役会に反映し、内部統制のしくみとマネジメントの監査・監督のしくみの両輪で、適切なリスクマネジメントを推進。トップダウンによる経営理念・経営方針の伝達と、ボトムアップによる現場の知恵の具現化により事業を成長させる。 |
2.新中期経営計画
同社は、中期経営計画を策定するにあたり、「私たちは人を豊かにしてグローバル社会貢献度が高い技術会社になる」ことを未来に通ずる姿とし、朝日ラバーらしい価値を磨き、独自の新製品開発による成長を描くため、2030年を見据えたビジョンを「AR-2030VISION」を定めた。具体的な内容は、以下の通り。
【AR-2030VISION】
弾性無限の創造で持続的な価値向上がつながる社会に貢献する企業へと成長し続ける。弾性無限への挑戦。
【経営基盤】
CSR/ESG経営を重視し、グローバルな社会課題に挑戦する企業へと邁進します。
【行動指針】
ステークホルダー・エンゲージメントを高めること。
【技術基盤】
制御&感性へ -ゴムが有する無限の可能性に感性技術を加えてQOL向上を目指します-
独自の競争力の源泉となるコア技術は、色と光のコントロール技術、素材変性技術、表面改質およびマイクロ加工技術としている。それらコア技術に対して新たに感性技術を融合させ、現実世界・サイバー空間がシームレスにつながる世界において、それぞれの事業分野における「人と機械(システム)のつながり」を成長の視点と捉え、新たな価値の創造をもって社会課題の解決に挑む。
【事業基盤】
重点4事業分野へ -事業価値を高め続けて10年後にありたい姿の実現を目指します-
これまでの重点3事業分野(車載・照明事業、医療・ライフサイエンス事業、その他事業)について社会が求める 2030年の環境から見つめ直すとともに、将来に「実装化」が想定されるテクノロジーを見通しながら、光学事業、医療・ライフサイエンス事業、機能事業、通信事業の重点4事業分野に集中して10年後にありたい姿の実現を目指す。
第13次三ヵ年中期経営計画
同社は、AR-2030VISIONの実現に向けて、最初のステージの2023年3月期までの2020年4月~2023年3月を第13次中期三ヵ年として、中期計画および単年度計画を策定した。中期経営方針 として「誠実で機敏な対応力で岩盤を築き質的に成長する」を掲げ、中期経営戦略 として、①事業が貢献する機会を増やして密着し、素早く課題を解決する技術で経験と実績を積み上げる、②CSR/ESG経営へ進化させると定め、最終年度である23/3期に数値目標である、連結売上高80~90億円、連結営業利益率8%以上を目指す。環境の変化による影響を考慮しながら成長を続ける目標とするため、売上高目標は範囲を持って設定するとともに、利益については、売上高に影響を及ぼす市場環境の変化に対応しながらも、質的成長を目指すことから、連結営業利益率を目標指標とした。 また、設備投資計画は、21/3期~23/3期累計で約10億円。20/3期までに進めてきた設備投資や環境整備による生産体制充実と、更に新製品・開発製品に注力し、案件を早期に立ち上げるための開発投資も進める予定である。
(1)重点事業分野の取り組み
光学事業(主要製品:ASA COLOR LED、シリコーン製レンズ、白色シリコーンインキ、カラーフィルター、蛍光体応用製品など)
20/3期の連結売上高約35億円に対し、23/3期の売上高は40億円を計画。「感性、共感」をキーワードに、色と光を制御する技術と感性技術を磨き、自動車の内装照明市場から外装照明、またアンビエント照明※に向けた技術開発と提案を進める。また、海外の顧客へのアプローチをさらに進めていくため、自動車産業向けの品質マネジメントシステムである IATF16949の認証を白河工場で2020年11月に取得した。
※アンビエント照明とは、室内の環境照明、または全般照明の総称。
(同社中期経営計画資料より)
医療、ライフサイエンス(主要製品:採血用・薬液混注用ゴム栓、AR超薄膜シリコーンシート、ARチェックバルブ、プレフィルドシリンジ用ガスケット、マイクロ流体デバイスなど)20/3期の連結売上高約12億円に対し、23/3期の売上高は約15億円を計画。診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨き、世界の医療現場と患者のQOL(Quality of Life)向上に貢献する。また、医療機器産業に向けた提案力を高めるため、医療機器の品質管理システム構築のための国際標準規格であるISO13485の認証について、白河第二工場においてこの中期経営計画中の取得を目指す。
(同社中期経営計画資料より)
機能事業(主要製品:車載スイッチ用ラバー、感圧ラバーセンサ、F-TEM※、卓球ラケット用ラバー、気流制御電極など)
20/3期の連結売上高約18億円に対し、23/3期の売上高は21億円を計画。ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術と触覚・熱・振動・光関連の技術、感性技術を磨き、将来のライフスタイルの実現への貢献に向けて、弾性無限で人に優しい感性価値を提供する。
※F-TEM(Flexible Thermos Electric Module)とは、ゴムならではの柔軟性を持った同社独自のペルチェデバイス。
(同社中期経営計画資料より)
通信事業(主要製品:RFIDタグ用ゴム製品、ビーコン、コネクタ、伸縮配線、ラバーファントムなど)
20/3期の連結売上高約9億円に対し、23/3期の売上高は12億円を計画。自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、伝える・伝わるセンシング技術、触覚・ 熱・振動・光関連の技術、感性技術を磨き、ゴムだからこそ実現できる価値を提供する。
(同社中期経営計画資料より)
(2)海外展開
同社グループは、顧客の要望に応えるため最適なロケーションとして、アメリカと中国に販売子会社と生産子会社を設置している。 重点事業分野に向けて同社の価値をこれまでよりも広く認知してもらうため、積極的に海外市場へのアプローチを進めて、価格競争ではなく、顧客に密着した活動により独自の価値を提供して、顧客満足度の向上を図り販売拡大に結び付ける方針である。
(同社中期経営計画資料より)
その他、同社は新中期経営計画の経営戦略に掲げる「CSR/ESG経営に進化させる」の達成に向け、サステイナビリティビジョン2030を2020年中に策定する予定である。今後もステークホルダーとの対話を通じて企業価値の向上を目指す方針である。
3.2021年3月期第2四半期決算
(1)連結業績
| 20/3期 第2四半期 | 構成比 | 21/3期 第2四半期 | 構成比 | 前年同期比 | 8月6日 予想 | 予想比 |
売上高 | 3,702 | 100.0% | 2,849 | 100.0% | -23.0% | 2,779 | 70 |
売上総利益 | 852 | 23.0% | 521 | 18.3% | -38.8% | - | - |
販管費 | 700 | 18.9% | 647 | 22.7% | -7.5% | - | - |
営業利益 | 152 | 4.1% | -126 | - | - | -157 | 30 |
経常利益 | 158 | 4.3% | -75 | - | - | -111 | 35 |
親会社株主に帰属する四半期純利益 | 84 | 2.3% | 54 | 1.9% | -35.4% | 3 | 51 |
*単位:百万円
前年同期比23.0%の減収、75百万円の経常損失
売上高は、前年同期比23.0%減の28億49百万円。売上面では、工業用ゴム事業の売上高が同28.2%減少。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けて、自動車向け製品全般、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの売上高が減少した。一方、医療・衛生用ゴム事業の売上高は同3.5%の増加となった。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を殆ど受けること無く、プレフィルドシリンジガスケット製品、採血用・薬液混注用ゴム製品ともに受注が堅調に推移した。更に受注力を向上させるため、医療生産エリア拡充に向けた活動も引き続き推進した。利益面では、75百万円の経常損失(前年同期比は1億58百万円の経常利益)。売上高が減少した工業用ゴム事業は、58百万円のセグメント損失(前年同期は2億19百万円のセグメント利益)となった一方で、売上高が増加した医療・衛生用ゴム事業のセグメント利益は前年同期比8.8%の増益となった。売上高営業利益率は、-4.4%と前年同期比8.5ポイントの低下。収益性の高い自動車向け製品やRFIDタグ用ゴム製品の売上高の減少等が影響し、売上総利益率は、18.3%と同4.7ポイント低下した。合理化により販管費の実額は減少したものの、売上高の減少により売上高販管費率も同3.8ポイント上昇。また、前年同期は発生しなかった補助金収入52百万円の計上により経常損失額は営業損失額に比べ縮小した。その他、特別利益で有価証券売却益1億65百万円を計上したことなどにより親会社株主に帰属する四半期純利益は54百万円の黒字となった。
厳しい上期決算となったものの8月6日に開示した上期の会社計画に対しては、売上高、各段階利益とも上回って着地した。
四半期業績の推移
21/3期第2四半期(7-9月)は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けて、過去の四半期と比べ売上高、営業利益ともに低い水準にとどまった。
※15/3Qと4Qは、取締役2名逝去による役員退職慰労引当金繰入額等の特殊要因が影響。
(2)セグメント別動向
セグメント別売上高・利益
| 20/3期 第2四半期 | 構成比 | 21/3期 第2四半期 | 構成比 | 前年同期比 |
工業用ゴム事業 | 3,104 | 83.8% | 2,229 | 78.3% | -28.2% |
医療・衛生用ゴム事業 | 598 | 16.2% | 619 | 21.7% | +3.5% |
連結売上高 | 3,702 | 100.0% | 2,849 | 100.0% | -23.0% |
工業用ゴム事業 | 219 | 72.8% | -58 | - | - |
医療・衛生用ゴム事業 | 81 | 27.2% | 89 | - | +8.8% |
全社費用 | -148 | - | -157 | - | - |
連結営業利益 | 152 | - | -126 | - | - |
*単位:百万円
事業別売上高(中期事業分野別)
| 20/3期 第2四半期 | 構成比 | 21/3期 第2四半期 | 構成比 | 前年同期比 |
光学 | 1,694 | 45.7% | 1,159 | 40.7% | -31.6% |
医療・ライフサイエンス | 603 | 16.3% | 629 | 22.1% | +4.2% |
機能 | 1020 | 27.6% | 749 | 26.3% | -26.6% |
通信 | 383 | 10.4% | 312 | 10.9% | -18.6% |
連結売上高 | 3,702 | 100.0% | 2,849 | 100.0% | -23.0% |
*単位:百万円
光学事業は、ASA COLOR LEDの受注が回復基調となっているものの第1四半期の新型コロナによる自動車市場の需要低下の影響が大きく減少した。医療・ライフサイエンス事業は、医療用ゴム製品の受注が新型コロナの影響を受けることなく全般的に好調に推移した。機能事業は、自動車スイッチ用ゴムや卓球ラケット用ラバーの受注が新型コロナの影響を受け減少した。通信事業は、RFIDタグ用ゴム製品の受注が北米市場での新型コロナの影響を受けて減少した。
国内・海外別売上高
| 20/3期 第2四半期 | 構成比 | 21/3期 第2四半期 | 構成比 | 前年同期比 |
国内 | 2,989 | 80.7% | 2,218 | 77.9% | -25.8% |
海外 | 713 | 19.3% | 630 | 22.1% | -11.6% |
アジア | 625 | 16.9% | 567 | 19.9% | -9.2% |
北米 | 80 | 2.2% | 58 | 2.1% | -27.6% |
欧州 | 7 | 0.2% | 4 | 0.1% | -42.4% |
合計 | 3,702 | 100.0% | 2,849 | 100.0% | -23.0% |
*単位:百万円
国内売上高は前年同期比25.8%減少、海外売上高はアジアの減少の影響が大きく同11.6%減少した。
主力製品の売上推移
| 20/3期 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 21/3期 1Q | 2Q | 前年同期比 (21/3期上期) |
ASA COLOR LED | 758 | 846 | 815 | 801 | 501 | 582 | -32.4% |
ディスポーザブル用ゴム製品 | 279 | 306 | 309 | 293 | 322 | 292 | +5.0% |
卓球ラケット用ラバー | 123 | 113 | 88 | 104 | 98 | 51 | -36.9% |
RFIDタグ用ゴム製品 | 139 | 142 | 130 | 172 | 113 | 126 | -15.0% |
*単位:百万円
ASA COLOR LEDは、新型コロナの影響を大きく受けた第1四半期に比べ受注が回復傾向にある。ディスポーザブル用ゴム製品は、採血用・薬液混注用ゴム栓の生産工場を白河第二工場に移管し、更なる増産体制を確保した。卓球ラケット用ラバーは、競技活動の中止に伴い、受注が大幅に減少した。RFIDタグ用ゴム製品は、最終顧客である北米市場において新型コロナの影響が大きく受注の減少傾向が続いた。
(3)個別及び子会社の動向
個別業績
| 20/3期 第2四半期 | 構成比 | 21/3期 第2四半期 | 構成比 | 前年同期比 |
売上高 | 3,443 | 100.0% | 2,659 | 100.0% | -22.5% |
売上総利益 | 713 | 20.8% | 420 | 15.8% | -41.0% |
営業利益 | 117 | 3.4% | -144 | - | - |
経常利益 | 156 | 4.5% | -72 | - | - |
四半期純利益 | 86 | 2.5% | 56 | 2.1% | -34.5% |
*単位:百万円
単体も新型コロナの影響により売上高と各段階で利益が減少したものの、投資有価証券の売却益を特別利益で計上したことから四半期純利益は黒字となった。
子会社の動向
| (株)朝日FR研究所 | ARI International Corp. |
| ||||
| ゴム・プラスチック等の研究開発 1987年4月設立 | 工業用ゴム製品の販売 1999年6月設立 |
| ||||
| 中間期 | 前年同期比 | 中間期 | 前年同期比 |
|
| |
研究収入/売上高 | 79,800 | +17.7% | 65,071 | -15.3% |
|
| |
経常利益 | 4,074 | +114.3% | -5,299 | - |
|
| |
四半期期純利益 | 2,855 | +114.2% | -5,304 | - | 1米ドル=108.25円 | ||
| 朝日橡膠(香港)有限公司 | 東莞朝日精密橡膠制品有限公司 | 朝日科技(上海)有限公司 | ||||
| 工業用ゴム製品の販売 2005年11月設立 | 工業用ゴム製品の製造・販売 2010年7月設立 | 工業用ゴム製品の開発・設計・販売 2012年1月設立 | ||||
| 中間期 | 前年同期比 | 中間期 | 前年同期比 | 中間期 | 前年同期比 | |
研究収入/売上高 | 145,487 | -22.8% | 267,964 | -18.8% | 105,872 | -10.9% | |
経常利益 | 15,172 | +2.6% | -6,472 | - | 3,560 | +35.0% | |
当期純利益 | 13,920 | +2.6% | -6,472 | - | 3,382 | +35.0% | |
円換算レート | 1香港ドル=13.95円 | 1人民元=15.32円 | 1人民元=15.32円 |
*単位:千円
中国を中心に車載関連製品の受注減少が影響した。
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー
| 20年3月 | 20年9月 |
| 20年3月 | 20年9月 |
現預金 | 2,259 | 3,098 | 仕入債務 | 413 | 291 |
売上債権 | 1,826 | 1,400 | 短期有利子負債 | 1,019 | 1,473 |
たな卸資産 | 995 | 957 | 流動負債 | 2,946 | 2,742 |
流動資産 | 5,305 | 5,712 | 長期有利子負債 | 2,006 | 2,345 |
有形固定資産 | 3,953 | 3,857 | 固定負債 | 2,992 | 3,350 |
無形固定資産 | 99 | 92 | 純資産 | 4,456 | 4,358 |
投資その他 | 1,036 | 788 | 負債・純資産合計 | 10,395 | 10,451 |
固定資産・繰延資産 | 5,089 | 4,738 | 有利子負債合計 | 3,025 | 3,819 |
※単位:百万円。有利子負債=借入(リース債務含まず) |
20年9月末の総資産は20年3月末比56百万円増の104億51百万円。資産サイドでは長期運転資金の借入の増加による現預金の増加が、負債・純資産サイドでは、借入金が主な増加要因。純資産はその他有価証券評価差額金及び利益剰余金が減少し、同97百万円減少した。20年9月末の自己資本比率は、41.7%と前期末から0.8ポイント低下した。
キャッシュ・フロー
| 20/3期 第2四半期 | 21/3期 第2四半期 | 前年同期比 | |
営業キャッシュ・フロー | 538 | 75 | -463 | -85.9% |
投資キャッシュ・フロー | -435 | 65 | 500 | - |
フリー・キャッシュ・フロー | 103 | 141 | 37 | +36.0% |
財務キャッシュ・フロー | 68 | 682 | 614 | +903.2% |
現金及び現金同等物の期末残高 | 997 | 1,661 | 664 | +66.6% |
*単位:百万円
CFの面から見ると、前年同期との比較で、投資有価証券売却益の増加や仕入債務の減少などにより営業CFのプラスが縮小した。一方、有形固定資産の取得による支出額の減少や投資有価証券の売却による収入額の増加などにより投資CFがプラスに転じたことからフリーCFのプラスが拡大した。また、短期借入金と長期借入金の増加などにより財務CFのプラスが拡大し、2021年9月末のキャッシュポジションは前期末比で増加した。
(5)通期の会社予想(上方修正後)に対する第2四半期累計期間の実績の進捗状況
| 21/3期 第2四半期 | 21/3期 通期会社予想 | 進捗率 |
売上高 | 2,849 | 6,312 | 45.1% |
売上総利益 | 521 | 1,295 | 40.3% |
営業利益 | -126 | -41 | - |
経常利益 | -75 | 27 | - |
四半期(当期)純利益 | 54 | 118 | - |
*単位:百万円
21/3期第2四半期連結累計期間の業績は、11月9日に上方修正された通期の会社計画に対して売上高で約45%、売上総利益で約40%と下期の回復を織り込んだ内容となっている。同社は自動車市場の回復により、当初予想に比べ通期業績が上回るとの見通しを立てている。
4.2021年3月期業績予想
(1)連結業績
| 20/3期 | 構成比 | 21/3期 | 構成比 | 前期比 | 8月6日予想 | 予想比 |
売上高 | 7,489 | 100.0% | 6,312 | 100.0% | -15.7% | 6,137 | 175 |
売上総利益 | 1,755 | 23.4% | 1,295 | 20.5% | -26.2% | 1,304 | -9 |
販管費 | 1,430 | 19.1% | 1,336 | 21.2% | -6.6% | 1,330 | 6 |
営業利益 | 325 | 4.3% | -41 | -0.6% | - | -26 | -15 |
経常利益 | 346 | 4.6% | 27 | 0.4% | -92.2% | 17 | 10 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 126 | 1.7% | 118 | 1.9% | -6.9% | 89 | 29 |
*単位:百万円
21/3期は、前期比15.7%の減収、同92.2%の経常減益予想
同社は、自動車市場の回復を受け、自動車向けゴム製品の受注が第3四半期以降徐々に回復する見込みであること、加えて卓球ラケット用ラバーとRFIDタグ用ゴム製品も緩やかな回復が予想されることから11月9日に8月6日に公表した通期業績予想の上方修正を行った。
21/3期の会社計画は、売上高が前期比15.7%減の63億12百万円、経常利益が同92.2%減の27百万円。売上面では、医療・衛生用ゴム事業において一部顧客の在庫調整の影響を受け8月6日の前回予想より受注が減少する見込みであるものの、工業用ゴム事業における車載用ゴム製品の受注が引き続き緩やかに回復が続く見通しであることから、前回予想よりも増加する見込みとなった。
利益面では、付加価値の高い医療・衛生用ゴム事業の販売が減少する影響で営業利益は前回予想を下回る見
込みとなった。売上総利益率は、前期比2.9ポイント低下の20.5%、売上高対販管費率は、同2.1ポイント上昇の21.2%の会社前提。この結果、41百万円の営業損失(前期は3億25百万円の営業利益)となる見込み。売上高営業利益率は、前期比4.9ポイント低下の-0.6%の予想。その他、経常利益は補助金収入が見込みより増加したこと、また、親会社株主に帰属する四半期純利益は、保有有価証券の売却益が見込みより増加したことから、前回予想を上回る見込みである。
配当予想は、今期の会社計画や内部留保の状況などを総合的に勘案して決定された1株当たり年10円の前回予想(期末10円)を据え置き。
| 21/3期上期実績 | 21/3期下期会社予想 | |||
実績 | 構成比 | 会社予想 | 構成比 | 上期比 | |
売上高 | 2,849 | 100.0% | 3,463 | 100.0% | +21.6% |
売上総利益 | 521 | 18.3% | 774 | 22.4% | +48.6% |
営業利益 | -126 | - | 85 | 2.5% | - |
経常利益 | -75 | - | 102 | 2.9% | - |
当期純利益 | 54 | 1.9% | 64 | 1.8% | +18.5% |
*単位:百万円
売上高の増加に伴い、下期は営業利益と経常利益が黒字化する見込み。
セグメント別売上高(中期事業分野別)
| 20/3期 | 構成比 | 21/3期 | 構成比 | 前年同期比 |
光学 | 3,429 | 45.9% | 2,791 | 44.2% | -18.6% |
医療・ライフサイエンス | 1,224 | 16.3% | 1,203 | 19.1% | -1.7% |
機能 | 2,084 | 27.8% | 1,686 | 26.7% | -19.1% |
通信 | 751 | 10.0% | 632 | 10.0% | -15.9% |
連結売上高 | 7,489 | 100.0% | 6,312 | 100.0% | -15.7% |
*単位:百万円
光学事業は、ASA COLOR LEDの受注が自動車市場の回復を受けて増加傾向にあるものの、前半の売上減少が影響する。医療・ライフサイエンス事業は、一部の製品で在庫調整の影響を受けるものの、医療用ゴム製品の受注が好調で前期並みとなる見込み。機能事業は、自動車用ゴムに加え、卓球ラケット用ラバーも競技の再開により回復傾向となる見込み。通信事業は、RFIDタグ用ゴム製品の受注回復が予想される。
主要製品の売上計画
| 20/3 実績 | 21/3 当初計画 | 21/3計画(変更後) | 前提・方針 |
ASA COLOR LED | 3,221 | 2,509 | 2,628 | ・自動車市場の回復傾向に伴い、受注が回復する見通し。 ・新型コロナウイルス感染症の第3波など、グローバル市場の回復度合いは不透明感あり。 |
医療用ゴム製品 | 1,189 | 1,236 | 1,174 | ・採血用・薬液混注用ゴム栓の生産ラインを8月に白河第二工場に移設し、増産体制を整備。 ・受注は堅調だが、一部の用途の製品について、在庫調整のため当初予測より受注が減少する見込み。 |
卓球ラケット用ラバー | 429 | 307 | 304 | ・競技の再開により徐々に受注は回復傾向。 ・新型コロナウイルス感染症の第3波など、グローバル市場の回復度合いは不透明感あり。 |
RFIDタグ用ゴム製品 | 583 | 473 | 491 | ・新機種を中心に第3四半期から受注は徐々に回復傾向だが、回復ペースは不透明。 |
*単位:百万円
21/3期会社計画の主要製品の売上高は、当初計画に対しASA COLOR LED、RFIDタグ用ゴム製品で引き上げられたものの、医療用ゴム製品において引き下げられた。
設備投資計画
| 19/3 実績 | 20/3 実績 | 21/3 期初会社計画 | 21/3 上期実績 | 21/3 変更後会社計画 |
設備投資 | 948 | 633 | 235 | 157 | 235 |
減価償却費 | 497 | 550 | 500 | 247 | 500 |
*単位:百万円
設備投資計画は、当初予想から変更なし。今期の設備投資計画2億35百万円の事業分野別内訳は、光学事業60百万円(上期35百万円)、医療・ライフサイエンス事業60百万円(上期30百万円)、機能事業50百万円(上期35百万円)、通信事業5百万円、その他60百万円(上期57百万円)。生産効率を図る改造投資と生産環境整備の投資を継続して実施する計画。
また、法人別では、同社1億円70百万円(全事業)、東莞朝日精密橡膠制品53百万円(機能事業)、朝日FR研究所12百万円(研究開発)
(2)21/3期の経営方針と経営戦略
【経営方針】
さらに好奇心を高めて深化、進化、新化しよう。
【経営戦略】
① 事業が貢献する機会を増やして密着する。
② 素早く課題を解決する技術で経験と実績を積み重ねる。
③ CSR/ESG経営へ進化させる。
④ 実効性や有効性を磨き鍛える。
【重点4事業の戦略】
◆光学事業
主な製品 | 主な戦略 |
ASA COLOR LED ASA COLOR LENS 白色シリコーンインキ | 「感性、共感」をキーワードに、色と光を制御する技術と感性技術を磨き、自動車の内装照明市場から外装照明、またアンビエント照明に向けた技術開発と提案を進める。 |
◆医療・ライフサイエンス事業
主な製品 | 主な戦略 |
プレフィルドシリンジ用ガスケット 採血用・薬液混注用ゴム栓 マイクロ流体デバイス | 診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨き、世界の医療現場と患者のQOL(Quality of Life)向上に貢献する。 |
◆機能事業
主な製品 | 主な戦略 |
自動車スイッチ用ゴム 卓球ラケット用ラバー F-TEM(フレキシブルサーモエレクト リックモジュール) | ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術と触覚・熱・振動・光関連の技術、感性技術を磨き、将来のライフスタイル の実現への貢献に向けて、弾性無限で人に優しい感性価値を提供する。 |
◆通信事業
主な製品 | 主な戦略 |
RFIDタグ用ゴム製品 ビーコン | 自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、伝える・伝わるセンシング技術、触覚・熱・振動・光関連の技術、感性技術を磨き、ゴムだからこそ実現できる価値を提供する。 |
(3)最近のトピック
【白河工場でIATF16949の認証取得】
白河工場では、自動車の内装用照明向けに、青色LEDにシリコーンゴム製キャップを被せて、10,000色以上の光を実現する「ASA COLOR LED」を生産している。今回自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格であるIATF16949の認証を取得したことにより、同社の製品や技術が自動車向けの厳しい品質マネジメントを実施していることを世界中の顧客に認識してもらうことが可能となった。同社は、今後もグローバルな新規顧客開拓と継続した品質改善を加速させる方針である。
【光学設計受託ビジネスの開始】
同社は、ゴム製だけでなく、ガラス製や樹脂製の光学設計について提案することで、顧客のニーズに対応しながら、同社の光学設計の技術的ノウハウを向上させるために、光学設計受託ビジネスを開始した。ゴム製レンズの場合は、光学設計だけでなくサンプルの製造により顧客の製品企画をサポートし、同社での量産受注を目指す。また、ガラス製、樹脂製レンズの場合は、これまでのネットワークで培った外部設計を活用し、最良の光学設計を提案する。
【深紫外LEDシステムの研究開発】
深紫外線(波長が280nm以下の光)は、殺菌・浄水、空気清浄をはじめ、ウイルスの不活性化にも利用が期待されており、深紫外線LEDの光を効率的に配光させる光学部材が求められている。今回の研究開発は、埼玉大学先端産業国際ラボラトリーとの共同開発であるが、ウイルス不活性化のための深紫外線LED用光学部材について、加工性に優れ、高透過率で安価な光学部材を開発し、高精度・低価格な深紫外線LEDシステムを製作し、製品化することを目的としている。更に、深紫外線LEDシステム、光触媒、抗菌剤などを組合せることにより、効率よくウイルスの不活性化が可能なシステムを空気清浄機やエアコンディショナーに組み込み、フィルターなどに深紫外線を効果的に照射してウイルスの不活性化が可能かどうかなどを検証する。
【超親水性シリコーンゴムの開発】
シリコーンゴムはその素材性質上、親水性(水をはじかない性質)が少なく、ゴムの表面に水分を接触させると水分の接触角が100°以上となる。物質の表面に水溶液をなじませて、その効果を付与させたい場合は、通常、乾式処理、湿式処理、蒸着という方法が用いられるが、シリコーンゴムに対してはいずれの方法も親水効果が一過性であり、長期間親水性を保持することができなかった。今回同社が開発した親水化技術は、ゴムの表面に水分を接触させた場合の接触角が10°以下にすることができる。また、親水化効果を長期間保持できること、耐滅菌性があること、簡便なものづくりができることがその特長である。同社では、シリコーンゴムの特徴を活かした分子接着・接合技術によりマイクロ流体デバイスをライフサイエンス分野に展開しているが、この開発した超親水性処理技術をマイクロ流体デバイスに応用することで、マイクロ流路内の送液性をこれまで以上に向上させることが可能になる他、細胞培養器材に使用することで、細胞の取り出しやすさが向上し蛍光観察も可能となる。
5.今後の注目点
同社の2021年3月期上期の業績は、前年同期比23.0%の減収、1億26百万円の営業赤字の大変厳しい内容となった。しかしこれは、新型コロナウイルス感染症の拡大により主要自動車メーカーが減産に追い込まれたこと、需要先である中国や米国において経済活動が抑制されたことなどが影響したものであり、致し方ないことと思われる。一方で、中国、米国共に生産活動が再開され経済が回復力を強めている。更に日系自動車メーカーにおいても生産が回復傾向となっている。同社においても今後業績の回復傾向が強まってくるものと期待される。主力のASA COLOR LEDをはじめ、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品など収益性の高い製品の受注が今下期にどの様な回復力を示し、同社の業績回復を牽引するのか注目される。
また、同社の研究開発が加速している。その中でも11月に立て続けに発表となった深紫外LEDシステムと超親水性シリコーンゴムの今後の開発状況が注目される。深紫外LEDシステムは、ウイルス不活性化のための加工性に優れ、高透過率で安価な深紫外線LED用光学部材の開発に加え、高精度・低価格な深紫外線LEDシステムの製品化に期待が膨らむ。また、超親水性シリコーンゴムは、マイクロ流体デバイスの競争力向上に繋がる製品と期待される。これら新技術の今後の進展に期待を込めて注目したい。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役 | 7名、うち社外2名 |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2020年6月30日
「当社は、JASDAQ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。」と記載している。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>
原則 | 開示内容 |
【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】
| 年二回行っている社内での方針説明会、また毎月全社員を対象に行っている月例報告会で、健全な事業活動倫理を尊重する精神について、様々な角度と表現で伝えています。また、地域の経済同友会などに加盟し、他企業と交流を深めることで情報収集を行い、社内に展開しております。 特に重視しているのは社内のオープンなコミュニケーションです。いろいろな意見を出せる環境、聞く環境を整えていくことで、ステークホルダーを尊重する企業風土を醸成していけると考えております。 |
【株主との対話】
| 当社WEBサイトで中期経営計画をわかりやすく公開しています。また、個人投資家向けのページでは、会社の目指す方向やトップメッセージなどを紹介しています。なお、2020年3月期通期決算の説明会は、新型コロナウイルス感染症の感染予防のため中止といたしましたが、当社ホームページにおいて2020年3月期決算と2021年3月期の見通しに関するQ&Aおよび中期経営計画についての動画を掲載しております。 |
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