ブリッジレポート
(4849) エン・ジャパン株式会社

プライム

ブリッジレポート:(4849)エン・ジャパン 2021年3月期第2四半期決算

ブリッジレポートPDF

 

 

越智 通勝 会長

 

鈴木 孝二 社長

エン・ジャパン株式会社(4849)

 

 

会社情報

市場

東証1部

業種

サービス業

代表者

越智 通勝、鈴木 孝二

所在地

東京都新宿区西新宿 6-5-1

決算月

3月

HP

https://corp.en-japan.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,620円

44,777,200株

162,093百万円

19.6%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

39.70円

1.1%

83.55円

43.3倍

834.74円

4.3倍

*株価は11/20終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
*BPS、ROEは20年3月期実績。数値は四捨五入。
*DPSとEPSは21/3期の会社予想。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属

する当期純利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

31,719

6,856

6,848

4,005

88.03

27.60

2018年3月(実)

40,710

9,626

9,731

6,366

139.93

46.50

2019年3月(実)

48,733

11,661

11,834

8,144

178.97

62.80

2020年3月(実)

56,848

11,005

11,057

7,125

156.23

74.80

2021年3月(予)

41,543

6,129

6,261

3,741

83.55

39.70

(単位:百万円、円)

 

 

エン・ジャパンの2021年3月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画(20/3期~22/3期)
3.2021年3月期第2四半期決算
4.2021年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 21/3期第2四半期は売上高が前年同期比26.8%の減収、営業利益が同53.0%の減益。売上面は、主に新型コロナウイルスに起因した顧客企業の採用需要減少や採用の見合わせにより、前年同期比で減収となった。国内の人材サービスにおいて、受発注から売上高計上までの期間が短い掲載課金型サービスは4~6月、成約から売上高計上までに一定の期間を要する成功報酬型サービスは7~9月に減少額が大きく、更に、海外事業も3ヶ月遅れて業績を取り込んでおり、特にロックダウンの影響を大きく受けたベトナムの業績が7~9月に反映されている。費用面は、変動費である広告宣伝費の削減を行った他、今第2半期連結会計期間からは業務委託を中心としたアウトソーシング費用の本格的な削減を進めたこと等により、総費用が前年同期比19.4%減少した。
  • 21/3期の会社計画は、売上高が前年同期比26.9%の減収、営業利益が同44.3%の減益予想。売上面は、掲載課金型モデルである国内求人サイトのエン転職が改善する一方、コロナ禍の影響が遅れて波及する成功報酬型サービスを中心に、第 2 四半期から第3四半期にかけて減少幅が大きくなる見込み。費用面は、上期において変動費である広告宣伝費やアウトソーシング費用等の削減を行ったものの、下期はコストのコントロールを行いつつ、需要の回復に合わせて広告宣伝費の投資を強化するため、上期と同程度の総費用を想定している。
  • 1株当たりの配当は、前期末から35.1円減配の39.7円の予定と同社の配当還元方針である配当性向50%を維持する。

     

  • 9月に大規模なサービスのリニューアルをしたengageは、有料求人の露出が大幅にアップし、無料対比でPVが23倍へ急拡大した他、有料利用社数と有料求人数も今第2四半期に大幅に増加した模様である。サービスのリニューアルが更なる有料利用社数と有料求人数の増加に結び付き、今後どれ位の規模でengageの業績を拡大させるのか注目される。

     

1.会社概要

「人材採用・入社後活躍」を支援する企業として、採用事業のほか、顧客企業の社員に対する集合型研修サービスを中心とした教育・評価事業も展開。創業以来、「主観正義性と収益性の両立」という考え方を背景に求職者に徹底的に尽くすというスタンスを貫いてきたことで優位性を確立。現在は、更なる成長を実現すべく人材紹介サービスと海外展開、HR-Techサービスなどの新規事業を推進している。より組織・事業にフィットした人材の採用から、入社後の活躍・定着までを一貫して実現するサービスを提供することで継続的な成長につなげていく方針。
同社は、入社後活躍がゴールとの考えのもと、就職・転職自体をゴールとせず、「入社者の仕事人生の充実」・「企業の業績向上への貢献」をゴールとし、サービスを提供している。また、同社は、3つの「E」を連動させるエン・ジャパンの3Eメソッドにテクノロジーを掛け合わせ、より多くの「入社後活躍」の実現を目指している。

 

(同社決算説明資料より)

 

主なグループ企業

連結子会社

事業内容

エンワールド・ジャパン(株)

グローバル企業向け人材紹介・人材派遣

(株)アイタンクジャパン

インターン/新卒採用支援事業、大学生向けメディア事業

Navigos Group, Ltd.(ベトナム)

ベトナムNo.1の求人サイト運営及び人材紹介

en world Recruitment(Thailand) Co., Ltd.(タイ)

人材紹介、人材派遣

New Era India Consultancy Pvt. Ltd.(インド)

人材紹介

Future Focus Infotech Pvt.Ltd.(インド)

IT人材派遣

英才網聯(北京)科技有限公司(中国)

中国4番手規模の総合求人サイト

 

国内求人サイト

 

内容

 

特徴

顧客企業

エン転職

総合転職情報サイト

一般企業直接募集原稿は、1社1社独自に

取材・撮影

一般企業

求職者の立場に立った正直かつ詳細な求人

情報

ミドルの転職

人材紹介会社集合サイト

ミドル層の転職に強い500社以上の人材紹介会社及び求人情報を掲載

人材紹介会社

一般企業

コンサルタントの得意領域、実績などに加え

ユーザーからの評価を公開

AMBI

20代ハイクラス特化型求人サイト

20代×年収500万円以上の案件が中心

人材紹介会社

一般企業

一般企業、人材紹介会社によるスカウトに軸を置いたサイト設計

エンジニアHubキャリア

Webエンジニアに特化した求人サイト

 

「年収500万円以上」「自社プロダクトを持つ企業」の案件が中心

IT・Webエンジニア経験者向けの求人を厳選

一般企業

エン派遣 

人材派遣会社集合サイト

人材派遣会社の情報及び求人情報を掲載

人材派遣会社

ユーザーが直感的に操作しやすい検索機能

エンバイト

アルバイト求人情報サイト

主に人材派遣会社が保有するアルバイト求人情報を掲載

人材派遣会社

ユーザーの閲覧履歴からお勧めバイトを提案する等、ユーザーの希望にあったバイト探しをサポート

ウィメンズワーク

女性向け求人情報サイト

正社員として働くことを希望する女性向け求人サイト

人材派遣会社

「正社員または正社員登用あり」の求人のみ

掲載

オフィスワーク系職種を多数掲載

 

国内人材紹介

 

内容

 

特徴

顧客企業

エンワールド・ジャパン

人材紹介

日本国内に営業・サービス・製造などの拠点を設けている

外資系企業及びグローバルな展開を行っている日系企業がクライアント。グローバル人材の中間管理職~エグゼクティブレベルの案件を取扱う

外資系企業

日系企業

グローバル人材の紹介領域において、国内トップクラスのシェア

エン エージェント

人材紹介

エン・ジャパンが持つ求職者データベース及び企業顧客との取引実績を活用した人材紹介サービス。

日系企業

 

海外事業

 

内容

 

特徴

顧客企業

NEW ERA

インド

人材紹介

インドで事業を行う現地企業及びグローバル企業がクライアント

現地企業

グローバル企業

高年収層の案件を中心に取り扱っており、IT関連に強み

Future Focus Infotech

IT人材派遣

IT派遣で20年の実績があり、代表的なIT

企業を数多く顧客に持つ

現地企業

グローバル企業

AIやIoTなど先端技術への投資・教育に力を

入れている

Navigos Search

ベトナム

人材紹介

ベトナムにおいてNo.1の人材紹介

現地企業

グローバル企業

日系企業

現地企業・グローバル企業に対し、管理職

レベルの人材を紹介。日系企業も強化

VietnamWorks

総合求人情報

サイト

ベトナムにおいてNo.1の求人サイト

現地企業

グローバル企業

日系企業

主に現地の人材と現地企業・グローバル企業が顧客対象。日系企業も強化

英才網聯(北京)科技有限公司

中国

求人サイト

 

2004年に設立。建築・不動産領域に強みを

もつ求人サイトを運営

近年では建築・不動産以外の領域も強化

現地企業

グローバル企業

en world

タイ

人材紹介

タイで事業を行う現地企業及びグローバル企業がクライアント

現地企業

グローバル企業

管理職以上の案件を中心に取り扱っており、高年収層に強み

 

HR-Tech

 

内容

 

特徴

顧客企業

engage

採用・入社後の活躍を目的としたデジタルプラットフォーム

フリーミアムモデルの採用支援ツール

一般企業

高クオリティな企業の採用ホームページ、求人募集を簡単かつスピーディーに作成可能

作成した求人は自動で「indeed」や「googleしごと検索」等に連携

有料プランの利用により、より多くの応募獲得を顧客企業に提供し、採用強化をサポート

適性テストやリテンション対策ツール等、関連サービスもengage上に搭載

 

国内その他事業・子会社

 

内容

 

特徴

顧客企業

3Eテスト

en-college、

HR OnBoard

社員の活躍・定着を図る各種サービスの提供

適性テストの開発・販売

一般企業

人材派遣会社

研修サービス「エンカレッジ」の運営

リテンション対策ツール「HR OnBoard」の開発・販売

人事評価制度の構築 等

iroots

新卒学生向けスカウトサイト

新卒学生向けの逆求人型就活スカウトサイト

プロフィールや適性診断に基づき、企業が直接新卒学生にスカウトすることができるサービス

一般企業

ZEKU

株式会社ゼクウ

採用管理システム

業務管理システム

求人情報、面接者、応募対応、効果測定などの各種管理を一元化

人材派遣会社

一般企業

採用後のスタッフや求人募集案件を一元管理

O.W.L.S

Webサイト及びアプリケーションのデザイン・開発受託

UI×UXグロース事業を展開。デザインだけではなく、ユーザーがサイトやアプリを通じて得る適切な体験までを設計・コンサルティングの上でサービスを提供

一般企業

キャリアバイト

大学生向け

インターン情報サイト

時間の切り売りではなく「成長できる有給インターン」を目的とした 大学生向けサイト

一般企業

インターンシップサイトのパイオニアであり、国内最大級の実績、求人件数

JapanWork

外国人向け求人事業

チャットで日本国内の外国人求職者と採用企業とのやり取りを代行

一般企業

日本語のみの求人案件や電話での会話が難しいことなど、求職者側の不自由を解決

コミュニケーション不足により、求職者が面接に来ない等、採用企業側が抱える課題を解決

pasture

フリーランスマネジメントサービス

 

フリーランスへの発注、進捗、請求を一元管理できるクラウドサービス

受発注情報を全てデジタル化、CRMや会計ソフトなど他Webサービスとの連携も

一般企業

FREELANCE

START

フリーランスエンジニア 案件検索エンジンサイト

国内最大級のフリーランス案件検索エンジンサイト

フリーランスエージェントの案件情報をまとめて検索・

エントリーが可能

フリーランス

エージェント

 

その他新規事業  ※非連結子会社

 

内容

 

特徴

顧客企業

Insight Tech

マーケティングリサーチ

AIを活用したデータ解析

消費者から買い取った「不満」をDB化~解析し、商品開発に役立つ商品として企業へ販売

一般企業

高度なデータ解析技術を元に企業が保有するデータを解析。課題解決のソリューション提供

エン婚活エージェント

オンライン

婚活支援サービス

「結婚後の幸せ」をゴールとした新しいコンセプトの婚活サービス

一般消費者

(同社決算説明資料より)

 

採用事業のビジネスモデル

(同社決算説明資料より)

 

売上計上の特性

(同社決算説明資料より)

 

同社サービスの売上高は、国内求人サイトのエン転職および派遣会社向け求人サイトは掲載課金型が主体の収益モデル、人材紹介会社向け求人サイトは成功報酬型が主体の収益モデルという特性を有している。成功報酬型は、実際の受注活動および成約から売上高の計上タイミングが2~4ヶ月程度遅れる傾向にある(同社サービス経由の候補人材が新たな会社に入社した時点で売上高を計上するため)。また、海外子会社の業績は、3ヶ月遅れて業績へ取り込まれる。

 

同社の強み
同社は、1,000万人を超える求職者のデータベースを有する。また、採用に携わった企業は延べ5万社以上を誇る。今後はこうした国内トップクラスの求人サイト資産を有効活用し、人材紹介やHR-Tech領域での売上高拡大を目指している。
また、直販中心の営業体制、理念を重視した経営、求職者重視、クオリティ重視、採用・教育・評価連動、企業規模と資金力など強みが複合的な要素で構成されており、模倣が困難となっている。

 

海外進出の状況
同社はアジア圏を中心に海外にも展開している。2013年4月にベトナム最大の求人サイト及び人材紹介を手掛ける「Navigos Group」を子会社化した。また、同年12月にはタイの人材紹介会社「The Capstone Group Recruitment and Consulting(現、en world Recruitment(Thailand) )」、2014年6月にはインドの人材紹介会社「New Era India Consultancy」を子会社化した。更に、2019年3月にインドのIT人材派遣会社「Future Focus Infotech」を子会社化した。
現在は、中長期観点からベトナム・インドにリソースを集中している。

 

(同社HPより)

 

ESGの取り組み状況
同社は、採用した人が定着せず、転職を繰り返すほうが短期的な収益に貢献する業界構造は課題であり、持続的な事業成長につながらないという考え方のもと、就職・転職自体をゴールとせず、「入社者の人生の充実」・「企業の業績向上への貢献」をゴールとし、入社後に活躍できるための各種のサービスを提供している。具体的には、エン転職では、「100%の取材・正直・詳細な原稿」や「担当者名」、「顔写真入りの責任原稿」を掲載している。さらに加えて、業界初で口コミサイトと求人広告を連動させ、企業からの口コミに関するコメント機能も充実。更に、従業員の離職リスクを早期に可視化し適切なフォローを実施でき、入社者の早期離職を防ぐことのできるリテンション対策ツールであるHR OnBoardを提供している。

 

また、国・地方自治体・NGO団体等の、持続的な発展に必要な「人材面」の課題を解決するため、同社及び同社サービスによる全面的な採用支援を多数実施している。

(同社決算説明資料より)

 

更に、ダイバーシティとして、女性の活躍推進と福利厚生の適用拡大を充実している。女性の活躍推進では、女性活躍を推進するプロジェクト「WOMen らぼ」を展開し、育児休暇をとる社員のサポートとして交流会、ランチ会の開催、女性社員満足度調査、スマートグロース制度(育休復帰後の時短勤務による、キャリア停滞・収入減を防ぐことを目的とした制度)などを実施。こうした取り組みにより、エン・ジャパン単体(2020年11月現在)で従業員に占める女性の割合49.8%、取締役における女性の割合40%(2名)となっている。
更に、同性のパートナーがいる社員向けにも福利厚生制度を適用し、拡大している。従来男女の婚姻関係がある社員に提供していた福利厚生制度を同性のパートナーがいる事実婚関係の社員へも適用。結婚記念日お祝い金、慶弔休暇、単身赴任時の金銭補助、退職給付株式の遺族給付なども提供している。

 

2.中期経営計画(20/3期~22/3期)

同社は、2019年5月14日に中期経営計画(20/3期~22/3期)を公表していた。中期経営計画の基本方針は、①国内求人サイトは、売上高拡大重視から安定的な利益成長を重視、②国内人材紹介は、売上高成長・シェア向上による規模の拡大、③海外事業は、ベトナム・インドにリソースを集中、Tech領域の強化、④HR-Techは、積極的な投資を行い、高収益モデルを確立。最終年度である22/3期に、売上高850億円(19/3期比74%増)、営業利益230億円(19/3期比97%増)を目指すという数値目標であった。
しかし、2020年5月13日に中期経営計画の取り下げを行った。新型コロナウイルスによる経済活動の停止、顧客企業の業績悪化、景気後退及び採用活動の停滞等により、短期的には同社グループの業績に大きな影響が見込まれる一方で、構造的な人手不足要因等により、コロナ終息後は徐々に採用需要が回復する可能性も高い。こうした状況下、新型コロナウイルスの収束時期を予想することは極めて困難であり、現時点で中期経営計画を合理的に算定することが困難であるとの判断である。
なお、中期経営計画の基本戦略方針に大きな変更はなく、算定可能な状況になった場合に改めて公表される見込みである。

 

(同社決算説明資料より)

 

3.2021年3月期第2四半期決算

(1)2021年3月期第2四半期連結業績

 

20/3期

第2四半期

構成比

21/3期

第2四半期

構成比

前年同期比

会社予想

予想比

売上高

28,204

100.0%

20,650

100.0%

-26.8%

19,703

+4.8%

売上総利益

23,026

81.6%

16,264

78.8%

-29.4%

15,247

+6.7%

販管費

16,825

59.7%

13,347

64.6%

-20.7%

13,255

+0.7%

営業利益

6,200

22.0%

2,917

14.1%

-53.0%

1,992

+46.4%

経常利益

6,197

22.0%

2,995

14.5%

-51.7%

1,956

+53.1%

親会社株主に帰属

する四半期純利益

4,108

14.6%

1,549

7.5%

-62.3%

1,018

+52.2%

(単位:百万円)
※数値には(株)インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります(以下同じ)。

 

売上高は前年同期比26.8%減収、営業利益は同53.0%減益
売上高は前年同期比26.8%減の206億50百万円。国内求人サイトの売上高は、前年同期比大幅な減収となった。第1四半期(4-6月期)の売上高は前年同期比38.5%減の46億42百万円、第2四半期(7-9月期)の売上高は同36.4%減の51億96百万円となり、四半期比で売上高が増加し、前年同期比の売上高減少率も若干改善した。採用需要の回復を受け、正社員求人サイトエン転職の売上高が前四半期比で増加。人材紹介会社向けサイトは、成功報酬型が主体の収益モデルであるため、新型コロナウイルス感染拡大の影響を最も受けた第1四半期の成約が第2四半期の売上高に計上されたこと等から、前四半期比で減収となった。派遣会社向け求人サイトは、顧客の派遣会社において既存派遣スタッフの就業は堅調であるものの、同社サイトの収益に繋がる新規募集案件数の回復には時間を要しており、第2四半期の売上高は前四半期比並みに留まった。国内人材紹介の売上高は、前年同期比16.9%減の50億18百万円。第1四半期の売上高は同7.8%減の28億12百万円、第2四半期は26.2%減の22億06百万円となり、四半期比で売上高が減少し、前年同期比の売上高減少率も拡大した。EWJはハイクラス人材を対象としており、厳しい市況下においても一定の採用需要を獲得することができたものの、エン エージェントにおいては、若手層を中心とした領域の採用需要の減少は大きく、減収幅が拡大した。海外事業の売上高は、会計上3ヶ月遅れて業績を取り込んでおり、前年同期比24.7%減の41億62百万円となった。第1四半期の売上高は前年同期比19.1%減の22億08百万円、第2四半期の売上高は30.1%減の19億53百万円となり、四半期比で売上高が減少し、前年同期比の売上高減少率も拡大した。ベトナムは同国内において4月に大規模なロックダウンを実施した影響を受け、第2四半期は大幅な減収となった一方、インドはIT派遣事業を主体としており、在宅での就業等により事業継続を行ったことから、減収幅は相対的に抑えられる結果となった。その他、HR-Techは、売上高が前年同期比約4.1倍の5億15百万円へ拡大した。人事・採用プラットフォーム「engage」は、総利用社数が30万1,000社(2020年9月現在)と順調に増加。2020年9月に大規模なサービスのリニューアルを実施した効果が奏功した。
利益面では、変動費である広告宣伝費の削減を行った他、第2四半期からは業務委託を中心としたアウトソーシング費用の本格的な削減を進めたこと等により、総費用が177億33百万円と前年同期比19.4%減少した。営業利益は前年同期比53.0%減の29億17百万円。売上総利益率は同2.8ポイント低下し、売上高対販管費比率は同4.9ポイント上昇した。その結果、売上高営業利益率は14.1%と前年同期比7.9ポイント低下した。その他、第1四半期において連結子会社JapanWorkに係るのれんの減損を反映したことや非上場株式の投資有価証券評価損を計上したこと等により、6億16百万円の特別損失を計上した。
厳しい業界環境ではあったものの、コストを概ね想定通り削減する中、国内求人サイトを中心に売上高が上振れたことにより、上期業績は会社計画に対し売上高で9億47百万円、営業利益で9億25百万円上振れた。

 

売上原価の主な費用

21/3期第2四半期(7-9月期)の売上原価は、前年同期比で22.7%減少した。主にIT派遣のFFI社(インド)の労務関連費用が減少した。

 

販管費の主な費用

21/3期第2四半期(7-9月期)の販管費は、前年同期比で23.6%減少した。広告宣伝費に加え、アウトソース費用を本格的に削減した。

 

(2)セグメント別動向

国内求人サイト【エン転職、ミドルの転職、AMBI、エン派遣、エンバイト、その他関連商品販売等】

 

20/3期2Q実績 

21/3期2Q計画 

21/3期2Q実績

前期比

計画比

(百万円)

利益率

(百万円)

利益率

(百万円)

利益率

増減額

(百万円)

増減率

増減額

(百万円)

増減率

売上高

15,723

-

8,942

-

9,839

-

-5,884

-37.4%

897

+10.0%

営業利益

6,044

38.4%

2,608

29.2%

3,384

34.4%

-2,660

-44.0%

776

+29.8%

 

エン転職は、売上高は計画を上回った。中小顧客が増加し1Q比で2Qは広告件数が改善したものの、顧客ミックスの変化により単価は減少した。人材紹介会社向けサイトは、成功報酬型モデルのため、2Qから本格的なコロナの影響を受けるも計画を上回った。料金改定効果及び入社決定数が堅調に推移したもの。派遣会社向けサイトも計画を上回った。顧客派遣会社の新規案件回復には時間を要すものの、一部顧客の出稿増が後押しした。バイトは介護領域等を継続的に強化した。こうした環境下、利益は計画比上振れで着地した。費用が想定線となる中、売上が増加したことが寄与した。

 

国内人材紹介【エンワールド・ジャパン、エン エージェント、 その他関連商品販売等】

 

20/3期2Q実績 

21/3期2Q計画 

21/3期2Q実績

前期比

計画比

(百万円)

利益率

(百万円)

利益率

(百万円)

利益率

増減額

(百万円)

増減率

増減額

(百万円)

増減率

売上高

6,039

-

4,925

-

5,018

-

-1,021

-16.9%

93

+1.9%

営業利益

752

12.5%

357

7.2%

408

8.1%

-344

-45.7%

51

+14.3%

 

エン エージェントは、若手ポテンシャル領域において採用需要の減少及び厳選採用化の影響を受け、減収幅が大きくなった。EWJは、ハイクラス領域を対象としており、一定の採用需要が継続した他、一部の顧客で想定よりも採用需要が改善し、計画を上回った。こうした環境下、EWJは売上の超過が、エン エージェントはコストコントロールが奏功し、利益は計画を上回った。

 

海外事業【ベトナム、インド、中国、タイ (求人サイト、人材紹介、IT技術者派遣)】

 

20/3期2Q実績 

21/3期2Q計画 

21/3期2Q実績

前期比

計画比

(百万円)

利益率

(百万円)

利益率

(百万円)

利益率

増減額

(百万円)

増減率

増減額

(百万円)

増減率

売上高

5,524

-

4,209

-

4,162

-

-1,362

-24.7%

-47

-1.1%

営業利益

594

10.8%

199

4.7%

185

4.4%

-409

-68.9%

-14

-7.0%

 

海外子会社の業績は、3ヶ月遅れで取り込まれているため、主力のベトナム・インドは新型コロナウイルスの影響を受けた4-6月の業績が反映されている。ベトナムは、4月にロックダウンを実施した影響を受け、2Qの業績は大幅に減少した。外需の遅れもあり、経済活動の回復は緩やかとなっている。インドは、国内における新型コロナウイルスの感染拡大が継続しているものの、IT派遣を主体としており在宅等で業務を継続しているため影響は限定的となった。

 

国内その他事業・子会社【教育評価商品、新卒採用商品、ゼクウ、アウルス、 Brocante、新規事業開発他】

 

20/3期2Q実績 

21/3期2Q計画 

21/3期2Q実績

前期比

計画比

(百万円)

利益率

(百万円)

利益率

(百万円)

利益率

増減額

(百万円)

増減率

増減額

(百万円)

増減率

売上高

1,038

-

1,277

-

1,319

-

281

+27.1%

42

+3.3%

営業利益

29

2.8%

-115

-9.0%

-27

-2.0%

-56

-193.1%

88

-

 

売上高は、派遣会社向け応募管理システムのゼクウ社がサブスクの強みを活かし増加した他、今期から連結のBrocante社も貢献した。また、新卒学生向けスカウトサービス「iroots」も、リピートの拡大に加え、新規顧客の拡大により伸長した。利益面では、売上高が増加したものの9月に売却を決定したJapanWorkが赤字となったことに加え、新規事業の立ち上がりによる先行投資費用の増加等により、利益は前年同期比で減少した。一方で売上高の上振れや細かい費用抑制の積み上げにより計画比では赤字幅が縮小した。

 

HR-Tech【engageおよび関連サービス販売】

 

20/3期2Q実績 

21/3期2Q計画 

21/3期2Q実績

前期比

計画比

(百万円)

利益率

(百万円)

利益率

(百万円)

利益率

増減額

(百万円)

増減率

増減額

(百万円)

増減率

売上高

124

-

579

-

515

-

391

+315.3%

-64

-11.1%

営業利益

-763

-615.3%

-574

-99.1%

-612

-118.8%

151

-

-38

-

 

2Qの有料利用社数は回復し、四半期では売上高が過去最高を更新した。9月に大規模リニューアルを実施したことから有料利
用による露出が大幅に向上したものの、2Qはリニューアルに伴い、戦略を見直したこと等から計画比未達となった。利益面では、プロモーション・人員増強等の先行投資を継続したものの、前年同期比で赤字が縮小した。

 

(3)engageの状況

同社は、2020年9月にengageの大規模なサービスのリニューアルを実施した。顧客は新有料プラン「エンゲージ プレミアム」の利用により様々な求人サービスの有料枠へ掲載が可能となった。今回のリニューアルによって無料比でPVが23倍になるなど、有料求人の露出が大幅に向上したことで採用成功確率が高まっている。また、同社は有料利用方法を金額チャージ方式へ変更した。従来は、有料申し込み時には入金せず応募時に毎月請求・支払を行うことから同社及び顧客双方の対応が煩雑になるという問題を抱えていた。しかし、今回、初回最低5万円からの事前チャージ方式へ変更したことにより、顧客の利便性向上と最低発注額の底上げにつながるものと期待される。engageは総利用社数が30万社を突破し、利用企業数国内No.1の求人サービスへ成長している。

 

(同社決算説明資料より)

 

(同社決算説明資料より)

 

(同社決算説明資料より)

 

(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

 

20年3月

20年9月

 

20年3月

20年9月

現預金

28,081

23,557

仕入債務

475

323

売上債権

5,736

3,805

未払法人税等

1,883

1,052

有価証券

2,047

2,045

流動負債

11,762

8,438

流動資産

37,065

30,643

固定負債

1,485

1,684

有形固定資産

1,021

901

負債

13,247

10,123

無形固定資産

7,712

7,395

純資産

38,648

35,114

投資その他

6,096

6,296

負債・純資産合計

51,896

45,237

固定資産

14,830

14,593

有利子負債合計

0

0

(単位:百万円)
※ 有利子負債=借入金(リース債務含まず)

 

20/9月末の総資産は前期末比66億59百万減少の452億37百万円。資産サイドでは、現預金や売上債権等が、負債・純資産サイドでは、未払金や未払法人税等や配当金の支払いによる利益剰余金や自己株式の増加等が主な減少要因。総資産の約68%を流動資産が占める等、資産の流動性が高い。自己資本比率も76.0%と、高水準を維持している。

 

キャッシュ・フロー

 

20/3期第2四半期

21/3期第2四半期

前期比

営業キャッシュ・フロー

3,511

1,873

-1,638

-46.7%

投資キャッシュ・フロー

-3,055

-1,410

1,645

-

フリー・キャッシュ・フロー

456

463

7

+1.5%

財務キャッシュ・フロー

-3,184

-4,958

-1,774

-

現金及び現金同等物の期末残高

27,123

24,118

-3,005

-11.1%

(単位:百万円)

 

CFの面から見ると、税金等調整前四半期純利益や仕入債務の減少などにより営業CFのプラス幅が縮小した。一方、有価証券の取得による支出の減少などにより投資CFのマイナス幅が縮小したことにより、フリーCFのプラス幅が若干拡大した。また、自己株式の取得や配当金の支払額が増加したことなどにより財務CFのマイナス幅が拡大した。

 

(5)投資方針

DX事業の立ち上げと投資強化
同社は、新たに中小企業向けDX推進事業を立ち上げ、M&A・出資枠200億円の内、100億円をDX領域ヘ投資する。DX領域のスタートアップベンチャー等への出資・子会社化を通じて、これら企業より提供された商品を同社顧客へ提案・導入することで、顧客の生産性向上に貢献する方針である。

 

(同社決算説明資料より)

 

こうした投資方針のもと、同社は11月にSaaS(Software as a Service)領域で展開するベンチャー企業投資の強化を目指し、One Capital株式会社が運営する1号ファンド「One Capital 1号投資事業有限責任組合」(以下 OC1号ファンド)にLP出資することを決定した。今回出資する「OC1号ファンド」は、元セールスフォース・ベンチャーズ 日本代表であった浅田慎二氏と元ボストン・コンサルティング・グループManaging Director&Partnerであった坂倉亘氏が20年4月に設立したシード/アーリーステージで、特にSaaS領域に特化したベンチャーキャピタルファンドである。CEOの浅田氏は世界的なSaaS企業等における10年以上のスタートアップ投資及び投資先支援実績、COOの坂倉氏は世界的戦略コンサルティングファームにおける20年以上の大企業でのデジタル変革の支援実績と共に、日本のSaaS領域における投資、戦略に関して有数の実績及び知見を有している。同社は、浅田氏、坂倉氏を同社のDXソリューション事業の戦略アドバイザーに迎え、今回の投資を通じ、SaaS領域の中でも特にSales Tech分野において、新たな技術やサービスを有するスタートアップ企業と協業する方針である。それにより、新規サービスの創出や展開につなげると共に、同社の15万社を超える顧客である中堅・中小企業に対し、コロナ禍において著しく下がっている営業生産性の向上、世界先進国でも低いと言われている労働生産性の向上について積極的に貢献していきたいと考えている。

 

(6)投資実績(2019年4月以降の累積)

総額約28.5億円のM&A及び出資を実施
同社は、国内外のIT・デジタル領域やニッチ領域に強みを持つ人材関連を中心に投資を行う方針を掲げており、2019年4月~2020年9月までに累積で約28.5億円のM&Aと出資を実施した。
また、DX事業立ち上げ・投資強化の第1弾として、セールステックカンパニーの「オンリーストーリー社」へ出資(2020年6月)を行った。

M&A

11.7億円

◆NLV Training社(ベトナムの社会人向けオンライン教育事業)

◆ブロカント社(国内最大級のITフリーランス向け案件情報サイト

「FREELANCE START」を運営)など

出資

16.8億円

◆Hajimari 社:旧ITプロパートナーズ(ITフリーランス・起業家支援事業)◆オンリーストーリー社(経営者マッチングプラットフォーム運営等)

◆国内外のテクノロジー関連ファンドなど計18件の出資

*ブロカント社は自己株式による取得約5.9億円

 

4.2021年3月期業績予想

(1)2021年3月期連結業績

 

20/3期 

構成比

21/3期 予想

構成比

前期比

売上高

56,848

100.0%

41,543

100.0%

-26.9%

売上総利益

46,397

81.6%

32,919

79.2%

-29.0%

販管費

35,392

62.3%

26,789

64.5%

-24.3%

営業利益

11,005

19.4%

6,129

14.8%

-44.3%

経常利益

11,057

19.5%

6,261

15.1%

-43.4%

親会社株主に帰属する当期純利益

7,125

12.5%

3,741

9.0%

-47.5%

(単位:百万円)

 

21/3期連結累計期間の業績予想は、前期比26.9%減収、同44.3%営業減益
21/3期の会社計画は、売上高が前期比26.9%減の415億43百万円、営業利益が同44.3%減の61億29百万円の予想。
新型コロナウイルスに起因した顧客企業の採用需要減少や採用の見合わせにより、同社の事業も多大な影響を受けたものの、緊急事態宣言解除後は経済活動の再開とともに回復傾向となっている。同社では、今後も感染の拡大が予想されることから、採用需要は緩やかな回復が2021年3月期末まで続く前提のもとに未定であった通期の連結業績予想を今回策定した。
売上高面では、掲載課金型モデルである国内求人サイトのエン転職が改善する一方、コロナ禍の影響が遅れて波及する成功報酬型サービスを中心に、第2四半期から第3四半期にかけて減少幅が大きくなることを想定している。
費用面は、上期において変動費である広告宣伝費やアウトソーシング費用等の削減を行ったものの、下期はコストのコントロールを行いつつ、需要の回復に合わせて広告宣伝費の投資を強化するため、上期と同程度の総費用を想定している。人件費の削減等により売上原価が前期比17.5%減少する他、人件費やプロモーション費用の減少などにより販管費も同24.3%減少する見込み。売上高総利益率は前期比2.4ポイント低下の79.2%、売上高対販管費比率は、2.2ポイント上昇の64.5%の計画。広告宣伝・販促費は56億40百万円と前期から54億98百万円(前期比49.4%減)減少する見込み。この結果、売上高営業利益率は14.8%と前期比で4.6%低下する予想である。
1株当たりの配当は、前期末から35.1円減配の39.7円の予定と同社の配当還元方針である配当性向50%を維持する。

 

21/3期会社計画における上期と下期の比較

 

2021年3月期 上期

2021年3月期 下期

増減

増減率

売上高

20,650

20,893

243

+1.2%

総費用

17,732

17,680

-52

-0.3%

営業利益

2,917

3,212

295

+10.1%

(単位:百万円)

 

売上面では、採用需要は保守的に見て、緩やかな回復を想定している。国内求人サイトはエン転職を中心に下期に復調を予想も成功報酬型サービスは売上計上タイミング及び季節性により1Qに売上が偏重するため底は2~3Qの見込みである。海外は主力のベトナムの回復に時間を要し3Q-4Qは横ばいの計画で、HR-Techはリニューアルに伴い、営業戦略を見直し4Qに再拡大を目指す方針である。
費用面では、下期は上期比でほぼ横ばいを想定している。下期は求人サイトの広宣販促費が上期比で増加するものの、アウトソース関連費用は2Q以降、本格的な削減を予定しており下期は上期比で4億程度の減少となる見込みである。人件費は海外の人員減少と国内における採用抑制等により、下期は上期比で若干の減少を予定している。

 

管理会計ベースの21/3期のセグメント別売上高・営業利益(会社計画)

 

20/3期 

21/3期 

増減

増減率

国内求人サイト

売上高

321.2

206.1

-115.1

-35.8%

営業利益

117.3

73.2

-44.1

-37.6%

営業利益率

36.5%

35.5%

-

-1.0P

国内人材紹介

売上高

118.7

95.0

-23.7

-20.0%

営業利益

14.2

4.1

-10.1

-71.3%

営業利益率

12.0%

4.3%

-

-7.7P

海外事業

売上高

107.4

78.8

-28.6

-26.7%

営業利益

9.1

4.4

-4.7

-52.1%

営業利益率

8.5%

5.5%

-

-3.0P

HR-Tech

売上高

4.7

12.6

+7.9

+168.9%

営業利益

-19.4

-11.9

+7.5

-

営業利益率

-412.8%

-93.9%

-

+318.9P

その他事業・子会社

売上高

21.0

26.3

+5.3

+25.3%

営業利益

-2.0

-1.5

+0.5

-23.0%

営業利益率

-9.5%

-5.9%

-

+3.6P

全社調整

売上高

-4.8

-3.4

+1.4

-

営業利益

-9.2

-7.0

+2.2

-

連結

売上高

568.4

415.4

-153.0

-26.9%

営業利益

110.0

61.3

-48.7

-44.3%

営業利益率

19.4%

14.8%

-

-4.6P

(単位:億円

 

急激な採用需要の縮小により、特に国内求人サイトの売上高とセグメント利益が大幅に減少する計画となっている。また、成功報酬型サービスは、実際の営業活動や成約から2~4か月程度、売上計上が後ろにずれる傾向があり、海外事業も会計上、3ヶ月遅れて業績を取り込んでいることが影響する。
21/3期の費用計画

 

20/3期

21/3期

増減

増減率

原価

104.5

86.2

-18.2

-18%

販管人件費

141.9

130.6

-11.3

-8%

広宣販管費

111.3

56.4

-54.9

-49%

その他販管費

100.5

80.8

-19.7

-20%

総費用

458.4

354.1

-104.3

-23%

(単位:億円

 

売上原価の減少は主にIT派遣のインドFFI社の売上減少が、販管人件費の減少は国内及び海外の人員減少と各種インセンティブの減少が影響する。また、広告宣伝費の減少はオンライン広告を中心に売上の減少に応じてコントロールするものであり、その他の販管費の減少はエン・ジャパン単体を中心にアウトソース関連費用等を削減するものである。

 

(2)株主還元方針

同社は、新型コロナウイルスによる業績影響を精査した結果、今期の株主還元方針は変更せず、配当性向50%を維持することを決定した。同社は、2020年3月より、財務の健全性を担保した上で、株主価値向上に資する投資及び株主還元を行うとした株主還元方針を定めている。
具体的な施策は、以下の通りである。
◆配当性向50%
◆中計期間内において総額200億円をM&A・出資を中心とした成長投資に使用
◆M&A及び出資を優先とし、投資状況(可能性)を勘案した上で、必要に応じて自社株買い
今期は、前期と比べ1株当たり35.1円の減配を計画しているものの、今後業績が上振れとなれば配当予想が見直される可能性が高い。

5.今後の注目点

新型コロナウイルス感染拡大の影響が企業の採用活動に与える影響が不透明ではあるものの、緊急事態宣言解除後の経済活動の再開を反映し、主力事業であるエン転職をはじめとする国内求人サイトの売上高が回復傾向にあることは明るい兆しである。同社の下期会社計画は、国内求人サイトの緩やかに回復を見込むものの、成功報酬型サービスと海外事業の売上計上のタイミング等の影響を考慮し売上高が下期に回復しない保守的な予想となっている。積極的な景気刺激策と生産活動の再開により、顧客企業の業績が回復傾向を強める中、上期対比で下期に売上高と利益があまり伸びない予想となっていることに違和感を覚える。顧客の業績回復による採用ニーズの高まりから今後広告掲載件数が徐々に回復するものと予想される。売上に占める比率が最も大きく、同社の業績動向に最も大きなインパクトを与えるエン転職の今後の売上高の動向が注目される。
また、9月に大規模なサービスのリニューアルを行ったengageは、有料求人の露出が大幅にアップし、無料対比23倍とPVが急拡大した他、有料利用社数と有料求人数も今第2四半期に大幅に増加した模様である。サービスのリニューアルが更なる有料利用社数と有料求人数の増加に結び付きどれ位の規模でengageの成長を加速させるのか注目される。
加えて、同社は今期より中小企業向けDX推進事業を立ち上げ、M&A・出資枠200億円の内、100億円をDX領域へ投資する予定にしている。コロナ禍では高い技術を持つものの経営が不振となる企業が増加するものと予想される。同社は財務体質が良好であることから、魅力的な会社をじっくり吟味し、安い価格でM&Aと出資を行うことが可能である。加えて、One Capital株式会社より浅田氏、坂倉氏を同社のDXソリューション事業の戦略アドバイザーに迎えた効果も期待される。DX領域における魅力的な企業への投資は、魅力的な新サービスの提供に結び付く可能性が高いことから、今後のDX領域における投資の動向が注目される。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

<組織形態および取締役・監査役の構成>

 

組織形態

監査役会設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日: 2020年6月26日

 

<基本的な考え方>
当社は、その事業を通じて、株主やクライアント等様々なステークホルダーをはじめ、広く社会に役立つ存在でありたいと考えております。そのために、当社グループ全体として経営環境の変化に対応できる組織体制を構築することを重要な施策と位置付けており、当社グループの健全な成長のため、コーポレート・ガバナンスの強化と充実を図り、公正な経営システム作りに取り組んでおります。また、役職員の倫理観・誠実さを高めることは、様々なステークホルダーの真の信頼を得るうえで、基本的な前提となると考えております。今後もコンプライアンスに関する教育の徹底等内部管理体制の更なる整備を進め、これを適正に機能させることによって、健全な経営を確保してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
補充原則4-8
当社は、独立社外取締役を1名選任しております。社外取締役井垣 太介は、東京証券取引所の有価証券上場規定第436条の2に規定する独立役員の要件をすべて満たしており、候補者と一般株主との間に利益相反を生じるおそれがないと判断しておりますが、候補者の所属する法律事務所の方針に従い、独立役員として指定、届け出は行っておりません。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく主な開示>
【原則1-4】
上場株式を保有しないことを原則としますが、業務提携その他経営上の合理的な目的に基づき上場株式を保有する場合には、その目的に応じた保有であることを定期的に確認し、中長期的な視点で保有目的にそぐわないと判断した企業の株式については、株価や市場動向等を考慮して売却いたします。政策保有株式に係る議決権行使については個別に中長期的な視点での企業価値向上、株主還元向上につながるかどうか等の視点に立って判断しますが、対象会社の企業価値を毀損するおそれがある議案については特に留意して判断します。

 

【原則1-7】
当社は、関連当事者取引の範囲の把握及び取引を適切に管理するためのフローを明確にするため、「関連当事者取引 管理ガイドライン」を制定しております。関連当事者の範囲については、総務部が作成及び年一回更新する「調査票」により把握しており、関連当事者取引が発生する場合には、その重要性によって事前に取締役会による決議もしくは「稟議・申請規程」に基づく決裁を必要としております。実施した関連当事者取引については、管理本部長がその重要性を「関連当事者開示にする会計基準適用指針」に基づき判断したうえで、その概要を有価証券報告書等において開示しております。

 

【原則2-6】
当社は、企業年金の制度がございません。従いまして、本件に関しまして当社の財政状況に対するリスクが生じることはありません。 将来、導入を検討する場合がございましたら運用に対する十分なスキルを有した人材の配置を検討いたします。

 

【原則3-1】
(ⅰ)当社は、「『人間成長』の実現」として、「成果を求められる日々の働く場で、仕事の能力を高め、精神面だけでなく、物質面(収入面)でも豊かになること、つまり心物両面で豊かになること」を経営理念としております。

 

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