ブリッジレポート
(3937) 株式会社Ubicomホールディングス

プライム

ブリッジレポート:(3937)Ubicomホールディングス 2021年3月期第2四半期決算

ブリッジレポートPDF

 

 

青木 正之 社長

株式会社Ubicomホールディングス(3937)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役CEO

青木 正之

所在地

東京都文京区小石川2-23-11 常光ビル9階

決算月

3月末日

HP

https://www.ubicom-hd.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,040円

11,743,600株

35,700百万円

27.3%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

-

51.76円

58.7倍

190.24円

16.0倍

*株価は11/20終値。発行済株式数、DPS、EPSは21年3月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

2,992

237

289

112

10.60

0.00

2018年3月(実)

3,208

322

355

212

19.08

0.00

2019年3月(実)

3,555

564

591

368

32.57

5.00

2020年3月(実)

4,038

707

715

533

46.17

5.00

2021年3月(予)

4,437

807

840

605

51.76

未定

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

 

株式会社Ubicomホールディングスの2021年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。

 

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期第2四半期決算概要
3.2021年3月期業績予想
4.今後の成長戦略
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 21年3月期の売上高は前年同期比8.8%増の20億93百万円。引き続きグローバル事業における主要顧客を中心とした受注およびソリューション案件が増加。メディカル事業においても新商品発売が寄与した。営業利益は同22.0%増の3億93百万円。グローバル事業はコロナインパクトを吸収し3.6%減益も、メディカル事業における高収益サブスクリプションモデルの確立が寄与した。粗利率は1.9%低下したが販管費が同7.3%減少したことから営業利益率は2.0%上昇した。経常利益は同12.0%増の3億77百万円。新型コロナウイルス感染症の影響(フィリピンにおける社員送迎やリモートでの開発体制への移行に伴う支出など約25百万円)および為替のインパクト(約20百万円)を加味すると2割の増益。売上・利益ともに上半期の過去最高を更新した。

     

  • 21年3月期通期予想に変更は無い。売上高は前期比9.9%増の44億37百万円、営業利益は同14.0%増の8億7百万円、経常利益は同17.4%増の8億40百万円を見込む。利益率も向上し、両事業とも好調に推移。第3四半期以降より「戦略的人材育成投資」を実施するがこれを吸収したうえで2桁の増益を目指す。営業利益・経常利益ともに7期連続で過去最高益を更新する見込み。今配当は現時点では未定としているが、今期も業績の成長と戦略的投資とのバランスをみて適切な株主還元を実施する考えだ。

     

  • コロナ禍の影響もあり全体での増収率は1桁に留まったが、メディカル事業の著しい収益性向上が奏功し2桁増益となった。Mighty EXは新規顧客への導入および既存顧客における切替えが進んでいるようで、メディカル事業の営業利益率は半期ベースではあるがほぼ50%まで上昇した。2020年4月にリリースしたMighty シリーズを上回る高収益サービス「SonaM(そなえむ)」の導入状況は現時点では開示していないが、通期業績への寄与に期待したい。

     

  • 中期的には「新たなプラットフォームビジネスの立ち上げ推進」を掲げてきた同社の第一弾となる「保険ナレッジプラットフォーム」が、同社が見込む巨大市場をどのようなスピードで開拓していくのか注目したい。

     

1.会社概要

人材不足、医療逼迫等の社会課題の解決に資するITソリューションを創造する、唯一無二のビジネスイノベーションカンパニー。金融/公共、医療、自動車、製造/ロボティクス領域を戦略市場と位置付け、広範なITソリューション・サービスを提供。
フィリピンの開発拠点を中心に約1,000名のエンジニアを有し、ソフトウェア開発からAI等の先進ソリューション開発を通じて、国内のIT人材不足の解決やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するグローバル事業と、医療機関向け経営支援ITソリューションのリーディングカンパニーとして、レセプト点検、医療安全支援、クラウドサービス等の医療最適化ソリューションを手掛けるメディカル事業の二本柱で展開。スクラップ&ビルドによる事業の再構築を経て、高収益ビジネスモデルを確立。さらには、リーディングカンパニーや成長企業との戦略的提携やM&Aを通じて事業成長の加速を図るWin-Winインベストメントモデルの推進と、プラットフォームビジネス等の既存事業とは異なる軸足の新規事業の早期確立を目指す。

 

【1-1沿革】

元より起業意欲が旺盛であった青木 正之氏は、2005年3月に株式会社ワールドの新規事業子会社である株式会社WCLの代表取締役社長就任後、国内外で様々な新規事業のシーズを探していると、訪問したフィリピンで多くの若く優秀なエンジニアが活気に満ちて仕事をしていることを知る。折から日本企業において社内業務のIT化が進行する中、フィリピンでシステム開発を行うことで幅広いシステムソリューションを低コストかつグローバルに提供すれば需要を確実に取り込みことができると考え事業化を決意。2005年12月に株式会社AWS(現:株式会社Ubicomホールディングス)を設立した。
ICT化の進展というフォローの風に加え、優秀なトップエンジニアを多数擁するフィリピン開発拠点の競争優位性を武器に顧客開拓が順調に進み業容は拡大。2012年に医療レセプトシステム最大手の(株)エーアイエスを子会社化。2016年6月、東証マザーズに上場。2017年7月に(株)Ubicomホールディングスに社名変更後、同年12月には東証1部に市場変更した。

 

【1-2 経営理念・ビジョン】

「人」×「技術」で革新的なITソリューションを創造する唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーとして以下3つの経営理念を掲げている。

 

1.Unique beyond comparison

時代の先を見据え、社会課題の解決に資するITソリューションを創造する、唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーであり続けます。

2.Go Global

Ubicomグループのビジネススキームを、米国およびアジア各国を中心にグローバルに展開していきます。

3.Win-Win

お客様、協業先、そして全てのステークホルダーの皆様との相互発展を通じて、Ubicomグループの「仲間」を増やしてまいります。

 

「技術」「人材」「知財」「先見性」「パートナーシップ」の5つのコアアセットを基にビジネスイノベーションを創出し、少子高齢化、医療逼迫、IT人材の枯渇、DXといった課題を解決することを自社の社会的な責務・存在意義であると考えている。

 

(同社WEBSITEより)

 

【1-3 事業内容】

1-3-1 概要
20年以上の実績を誇る組込みソフトウェア開発、アプリケーション開発、テスト、品質保証のサービスに加え、国際化や少子高齢化など社会構造の変化や、医療生命科学・ロボット・人工頭脳の分野における技術革新を新規ビジネス創出のチャンスと捉え、戦略市場と位置付ける「医療」「金融/公共」「自動車」「製造/ロボティクス」分野において、「AI:人工知能」、「Analytics:分析」、「Automation/RPA:ソフトウェアテストあるいは製造ラインの検査工程の自動化」領域を中心とした同社独自のコアソリューションを開発し、多くの顧客企業に提供している。

 

1-3-2 同社を取り巻く事業環境
人材不足解決支援や医療最適化支援等の社会課題の解決に資するITソリューションの提供による成長を追求する同社を取り巻く事業環境は以下の通り。グローバル事業、メディカル事業(事業内容詳細は後述)ともにフォローの風が吹いている。

 

(同社資料より)

 

(1)国を挙げたデジタル化推進、深刻化するIT人材不足
政府がデジタル化に向けた旗振りを本格化するなか、経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年3月発表)によれば、付加価値の創出や革新的な効率化を通じて生産性向上等に寄与できるIT人材の確保が重要となっている一方で、少子高齢化が進む中、人材確保が難しくなっており、IT 需要の伸びを「低位」「中位」「高位」とケース分けした際、「高位」の場合、2025年に58.4万人、2030年に78.7万人の国内IT人材が不足すると試算している。

 

(2)膨張を続ける国民医療費とレセプト審査の厳格化、医療経営の逼迫、医療従事者の働き方改革
2018年度の概算医療費(労災・全額自費等の費用を含まない。医療機関などを受診し傷病の治療に要した費用全体の推計値である国民医療費の約98%に相当)は42.6兆円と過去最高を記録した。
高齢化の進展に伴い医療費は増大傾向にあることから各健康保険の財政状況は悪化が続いており、保険料負担軽減に向け、国はレセプト審査の厳格化等による医療費適正化政策を進めている。

 

(レセプトとは?)
現在の保険診療制度の下では、医療機関が受け取る診療報酬のうち、患者が支払う医療費は最大3割で、7割以上は健康保険組合、共済組合、市区町村などが負担する。
患者が受けた診療について、医療機関がこれら公的機関に保険負担分の支払いを請求するための医療診療の明細書をレセプトと呼び、レセプトを発行するレセプト業務は医療機関の収益の大部分を支える大切な業務である。
提出されたレセプトは、審査支払機関で厳重な確認作業が行われ、レセプトの記載内容に誤りがあると、審査支払機関からレセプトを差し戻されたり(返戻)、診療報酬点数を減点されたりすることがある。返戻された場合には、レセプトを精査・修正して、再提出しなければならず、適切なレセプトを提出することは効率的な医療機関経営を行うにあたり極めて重要な作業である。2009年には、医療機関は原則としてオンラインによるレセプトの請求が義務付けられるようになった。

 

コロナ禍を受けて医療提供体制の逼迫や病院経営の悪化が重大な社会問題として表面化するなか、、審査支払機関におけるレセプト審査の厳格化や医療従事者の働き方改革の動きも重なり、レセプトチェックの等の業務効率化による収益改善、医療の安全と質の確保、働き方改革への対応は医療機関経営における重要課題となっている。

 

(3)急成長が見込まれる医療クラウド市場
2010年2月に一部改正された、厚生労働省通知「「診療録等の保存を行う場所について」により、民間企業が保有するデータセンターへの医療情報の外部保存が認められ、民間企業にとって医療クラウドサービスを提供しやすい環境が整った。
アプリケーションプラットフォーム、サーバがネットワーク内に存在するクラウドサービスは、医療分野においては、電子カルテ、医療用画像管理システム、地域医療連携システム、在宅療養支援サービス、遠隔画像診断サービス、治験向けサービス、調剤薬局向けサービスなど、様々なサービスにおいて活用されると言われている。

 

特に、今日の医療機関におけるデータ量の急速な増大、およびネットワーク活用の広まりの中にあって、クラウドサービスには「他施設との連携が容易」、「自前で保守管理をする手間がない」、「価格が安い」、などのメリットがあることに加え、2011年3月の東日本大震災の際に被災地の多くの紙カルテが失われた事態を受け、災害対策という面からも医療クラウドへの期待が高まっている。更に今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴う医療現場逼迫は、オンライン診療や電子カルテの必要性を強く認識させることとなった。
個人情報保護の観点から安全性の問題を指摘する声もあるものの、規制と緩和のバランスの中で、社会的課題解決に向けたソリューションとして今後大きく発展していくものと思われる。

 

1-3-3 注力する事業領域
新しい時代を切り拓く「3A」分野を戦略的な技術領域と位置付け、これらをベースとした事業拡大に注力している。

分野

現状及び今後

AI

音声AI、チャットボット(自動会話プログラム)に係る開発を終え、横串的展開を推進。今後は自動車のSDL(カーオーディオとスマートフォンを連携させるスマートデバイスリンク)に音声AIを用いた車載向けAI機器のソリューション開発に注力する。加えて自動走行車搭載デバイスへの応用も見据えており、本格普及期には、大きな利益を持続的にもたらすストックビジネス化を目指している。

Analytics

日本におけるNo.1レセプト点検ソフトのMightyシリーズや分析ツールの開発フェーズを終え、データの質・量の向上を図り、医療関連のビッグデータ分析を行うエンジンをつくり、今後は新たなマネタイズモデル実現に向けたフェーズへ移行。

その他、工場や船舶会社などに向けた予知保全のソリューションを提供。

Automation/RPA

ソフトウェア自動化のエンジンを確立しており、ロボティックス(ロボット工学)・RPA(ロボットによる業務自動化)を推進。

大手ロボティクス、FAメーカーにリーチしたマーケットの拡大を目指している。

 

1-3-4 セグメント
セグメントは、ITソリューション・サービスを金融/公共、医療、自動車、製造/ロボティクス等の幅広い市場に向けて提供するグローバル事業と、レセプト点検ソフトをはじめとする医療機関向け経営改善ソリューション等を手掛けるメディカル事業の2つ。

 

 

(同社WEBSITEより)

 

(1)グローバル事業
◎概要
フィリピンの100%子会社であるAdvanced World Systems, Inc.およびAdvanced World Solutions, Inc.を主要開発拠点に、金融/公共、医療、自動車、製造/ロボティクスを重点対象業種として、組込みソフトウェア開発、業務アプリケーション開発、保守、テスティング等を行っている。
さらには同社が戦略的技術領域と定義する「3A」(「AI:人工知能」、「Analytics:分析」、「Automation/RPA:自動化」)技術を活用し独自のコアソリューションを展開しているが、その高度なソリューション開発力の源泉が、約1,000名のトップクラスのエンジニアを擁するフィリピン開発拠点であり、強力な競争優位性を生み出している。(詳細は【1-4 特徴と強み】を参照)

 

◎顧客
顧客企業は金融、公共、医療、自動車、製造、サービス業等と多岐にわたる。
前述のように日本ではIT人材不足が深刻化していることに加え、開発・運用にかかるコスト削減ニーズが根強いが、約1,000名の日本語、英語に堪能なIT人材を擁する同社はこうしたニーズを着実に取り込んでいる。
加えて多数の国内大手顧客との長年に亘る豊富な開発実績は同社に対する信頼・評価を一段と高めている。

 

(2)メディカル事業
◎概要
100%子会社である株式会社エーアイエスが、医療従事者の働き方改革、医療機関の収益改善、医療の安全と質の向上に資する、医療機関向けソリューションパッケージの開発・販売、クラウドサービス、データ分析ソリューション、開発支援、コンサルティングを手掛けている。
医療現場の業務効率を改善し経営品質を高める「Mightyシリーズ」製品は、その豊富かつ有用な機能が高く評価され、「働き方改革」という追い風もあり、ここ数年で毎年1,300以上の新規ユーザーを獲得しており、2020年3月末時点では、病院(20床以上)の約38.8%(3,212施設)、クリニック(19床以下)の約13.3%(13,602施設)、合計約16,800施設が導入するトップシェア製品である。

 

◎主力製品・サービス
①レセプト点検ソフト「Mighty Checker®」
レセプト点検の効率化と精度向上が求められる中、1999年にレセプト点検ソフト「Mighty Checker®」を他社に先駆けてリリースした同社は、その有用性が高く評価されレセプト点検ソフトのリーディング企業としてのポジションを確立。2019年3月期にはレセプト点検にAIを導入した次世代レセプトチェックシステム「Mighty Checker® EX」をリリースし、その地位を揺ぎ無いものとしている。
主として以下のような機能により医療機関のレセプト業務を強力にバックアップしている。

製品名

特長

Mighty Checker® EX

・2018年秋にリリースしたMighty Checkerシリーズの最上位製品

・従来製品「Mighty Checker PRO」において好評の機能やユーザビリティを更に進化させ、レセプト点検にAIを導入した次世代レセプトチェックシステム

Mighty Checker® PRO Analyze

・医科レセプト点検ソフトウェアの上級システム

・点検結果を分析し、効率的な点検業務を提案

・査定・返戻対策に加え、レセプト点検結果を活用した、より効率的な点検結果の活用が可能

・査定返戻データ取り込みによりスムーズなデータベース修正を実現し、査定返戻の抑止を強化

Mighty Checker® PRO Advance

・医科レセプト点検ソフトウェアの普及型システム

・病名・医薬品・医療行為の適応症を点検

・査定・返戻対策の点検(突合点検・縦覧点検・算定日チェック等)

・算定支援機能による点検(指導料等で算定できる可能性がある項目をチェック)

Mighty Checker® Cloud

・クラウド型レセプト点検サービスで、クラウド型電子カルテとの連携が可能

・院内システムのクラウド化対応の他、運用と導入のしやすさから業務効率化、リモートワーク、端末を選ばないBYOD対応、BCP対策にも

・今後、クラウド型電子カルテへの組込みを強化

 

②オーダリングチェックソフト「Mighty QUBE® PRO」
Mighty Checker®のデータベースを活用し、疾患と診療行為・投薬の適応性、用法用量等を処方オーダー時に点検し、不適応のものや、病名が漏れているケースへエラーを出すシステム。医療指示の誤入力・誤操作を防ぐことで、医療事故(ヒヤリ・ハット)や査定(減額)を防止し、医師が最も重要な診療行為に集中できるよう支援する。医療安全・質の向上と業務効率化の両立を追求することで、病院の財務・経営面の改善をサポートするとともに、病院と患者の両方に利益をもたらす点が高く評価され、多くの医療機関での導入が進んでいる。

 

◎導入事例
医事課職員6名 の病院における導入事例を挙げると、導入後1カ月で診療分レセプト月間作業時間が半減したことに加え、算定支援機能により売上高が増収となった。
今後、職員が操作に慣れるに従い作業時間が更に短縮し、過去データの蓄積とAI 検知により点検精度は更に向上していくことが見込まれるという。

 

③「備えの医療クラウドSonaM(そなえむ)」
医療機関のBCP対策と医療データ保全を、国内屈指の高度なセキュリティ基盤で支えるクラウドサービス。

 

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、オンライン診療の必要性がクローズアップされるなど診療方法の多様化が進むとともに、医療デジタル化・クラウド化におけるセキュリティの必要性が高まっている。
また、災害時における役割が一段と大きい医療機関においては、院内の医療データの安心安全な保管先と保管方法の確保が急務となっている。

 

こうした環境下で逼迫した医療提供体制を支援することを目的に開発された「SonaM(そなえむ)」は、レセプトデータ、カルテ、検査画像などの医療データをセキュアクラウドにより保全するもの。
医療データをクラウドで扱うためには、厚労省、経産省、総務省の3省が提唱する3つの医療情報セキュリティガイドラインの総称である「3省3ガイドライン」に準拠することが必要だが、NTT東日本の高度なクラウドセキュリティ基盤を採用することによって万全の態勢を整えている。
また事業規模の異なる医療機関毎の多様なニーズに対応できるよう、複数の段階的な利用プランを用意している。

 

Mightyシリーズに次ぐ新たな高収益サブスクリプションモデルであり、Mightyシリーズとのクロスセルや、直接取引の拡大によるユーザー単価向上を目指している。

 

④保険ナレッジプラットフォーム
保険業界における保険金支払審査業務に必要な情報や知識を一つのシステムに統合した、業界初(Ubicom調べ)の判定効率化支援プラットフォーム。

 

(概要・特長)
これまで保険会社では、顧客からの保険金請求に対する審査業務において、診療行為、医薬品、傷病名、先進医療、法改正など、判定に必要な散在した情報を網羅するために多大な労力が必要であったが、保険ナレッジプラットフォームを活用することで煩雑な審査業務を大幅に効率化することができる。

 

保険加入者が退院した後、保険会社や病院との書類手続きを経て給付金を受給するまでに現在は2-4週間、保険会社も支払審査から支払いまで約2-3週間かかっている。

 

「保険ナレッジプラットフォーム」はまずフェーズ1では、保険会社の上記必要期間を最短で1日程度に短縮する。
次のフェーズ2では、保険加入者の手続きが数分で完了することになる。

 

(マネタイズ構想)
Mightyシリーズを超える高単価・高収益サブスクリプションモデルを目指している。
収益は、基本初期費用、基本接続使用料、オプション初期費用、オプション接続使用量から構成されるが、同社では多様なニーズに対応して20以上のオプションを開発し、この積み上げにより高収益を実現する考えだ。

 

(同プラットフォームの強み)
1.知財
20年以上に亘って6,800医療機関ユーザーへの提供実績に裏打ちされた独自の医療データベースを活用し、保険審査向け診療や医薬品コードや先進医療情報などを独自に搭載している。
また、AI開発の知見も寄与している。

 

2.ビジネスモデル
高単価、月額制でかつクラウドベースの次世代型サービスモデルである。
また開発次年度から維持コストのみで横展開が可能であり、潜在的な将来価値は巨額である。
加えて、ITを活用することで、保険請求手続きの負荷軽減、保険金受給までの日数短縮を実現するとともに、保険会社の事務負荷の大幅軽減を目指す「生命保険エコシステム構想」への参画により市場浸透の加速が期待できる。

 

3.市場性
同社では業界初のブルーオーシャン市場への参入であると考えている。
1社あたり年間数百~数千万円の利用料で潜在的には100社以上の顧客・市場を有している。

 

(今後の展開)
メディカル事業における新たなサブスクリプション型メニューの一つとして、保険業界全体への保険ナレッジプラットフォームの横展開を図るとともに、保険業界向けソリューションの更なる進化に向けて、AI(人工知能)等の先進技術を搭載した支払審査検索システムの開発と実装を目指す。更には、昨今の感染症対策を背景とした「対面サービス」から「非対面サービス」への転換ニーズを追い風に、保険業を含む金融サービス全体のDX化およびAI化に伴う開発需要の取り込みに注力する。

 

 

(同社資料より)

 

【1-4 特徴と強み】

1-4-1 フィリピンの開発拠点を中心に、約1,000名のエンジニアを育成・活用
沿革でも触れたように、青木社長が現地視察を重ねた中で開発拠点として最適と判断したフィリピンは、同社競争優位性の源泉であると同時に今後の成長戦略を牽引する極めて重要な役割を担っている。
前身を含め25年以上に亘る開発実績を有するフィリピン開発拠点の主な特徴は以下のとおりである。

 

①グローバル開発の最適地「フィリピン」
フィリピンは若年層中心に長期的な人口増加が続く人口ボーナス期に入っていることなどから平均して年6%近い経済成長を続けており、特に若年層は活力にあふれ、上昇志向が強まっている。
加えて英語が公用語であるためグローバルで活躍できる素地が整っていること、ITリテラシーが高いこと、ASEANの中心に位置しアクセスも良好であることなどから、グローバルベースでのIT開発拠点として最適である。

 

②超一流の人材を採用
フィリピンの開発拠点を中心に、約1,000名という多くのエンジニアが在籍しているが、「量:人数」のみでなく「質:優秀さ」においても他に例を見ないレベルの高さを誇っている。
長年の実績に裏打ちされ、フィリピン開発拠点に対するエンジニア志望者の評価は高く、入社希望者は例年数千名に上るが、採用されるのはわずか約4%と極めて狭き門となっており、まさに超一流の人材を獲得することができている。

 

③独自の教育・研修プログラムによる戦力化
超一流の人材を採用しても、それだけではトップクラスのエンジニア集団を構築することはできない。
戦力となる真のトップエンジニアに育て上げるための研修・教育制度こそが、他社が容易にキャッチアップすることのできない強力な差別化要因の一つである。

 

同社グループは今から16年前の2003年4月、フィリピンに自社研修センター「ACTION」を設立し運営を開始した。
「ACTION」における研修プログラムは同社が自社開発したもので、IT基礎概念、先進技術、対人ソフトスキル、日本語の4カテゴリーで構成され、PhilNITS(フィリピン国家情報技術者試験)と日本語検定4級の合格を目標に5カ月間の研修を実施する。
研修終了後、研修生はボードメンバーに対して成果を発表し面接評価を経て初めてプロジェクトへの参加がアサインされる。優秀な学生であっても実際に仕事を任されるまでの道のりはけっして楽なものではないが、こうしたハードルを乗り越えたプログラム卒業者は高度な技術力と日本語環境における業務遂行能力を有することから日本のIT市場において圧倒的な優位性を発揮しており、同社成長の強力なエンジンとなっている。
また、同社ではチャレンジングで最先端を行くプロジェクトが常に多数稼動しているため、やる気に溢れた優秀な人材に活躍の場を与えており、この点も同社グループが就職先としてフィリピンにおいて大きな人気を得ている要因の一つでもある。

 

④ソリューション開発力の更なる高度化・強化
既に他社を凌駕する高いソリューション開発力を有する同社だが、そのアドバンテージを更に強固なものとすべく2017年に設立したのが「先端技術開発センター」である。
同センターでは約数十名の先端技術者がAIやビッグデータ分析に特化しており、そのネイティブな英語力を活かし世界的なトップ研究者に繋がることで最先端技術にアクセスできる体制を構築している。
これにより短期間かつ低コストで顧客ニーズにマッチした高付加価値プロトタイプ(試作品)を作成し、日本の大手顧客に直接提供することが可能となったため、同社の提案力は飛躍的に向上している。

 

⑤外部から高評価を獲得
高いハードルを越えてプロジェクトに参画することができたトップエンジニア達の活躍は外部から高く評価され数々の受賞歴に結びついている。
*2020年、フィリピン子会社がフィリピン貿易産業省等よりソフトウェア開発サービス輸出優秀賞を受賞。
*2020年、エンジニア2名がアジア版情報処理技術者試験のトップ合格者の中でも特に優秀なアジアトップガン人材に選出。
*2017年、「国際ICTアワード」においてフィリピン子会社がフィリピン全土NO.1のベストソフトウエアカンパニーを受賞。
*自社研修プログラム「ACTION」がフィリピンeサービスアワードにおいて企業プログラム部門賞等を6年連続で受賞。

 

1-4-2 強固な顧客基盤
グローバル事業、メディカル事業ともに圧倒的な競争優位性を武器に強固な顧客基盤を構築している。
後述の成長戦略における、サブスクリプションモデルによるストック型ビジネスの拡大、Win-Winインベストメントモデルにおける成長企業と顧客企業のマッチングなどにおいてもこの強固な顧客資産は大きな役割を果たすものと思われる。

 

1-4-3 グループ内外を問わない仲間意識、オーナーシップが根付いた企業風土
青木社長は海外を含めた従業員およびその家族を「仲間」と位置付け、全員が笑顔を絶やさず常に明るく前向きに、現状に満足することなく1人1人がオーナーシップを持って時代を先取りすることによって飛躍する企業グループであることも同社グループの強みの一つであると考えている。

 

このフラットな関係性を重視する仲間意識は、グループ内だけではなく、グループ外に対しても向けられている。
同社の重要な成長戦略の一つである「Win-Winインベストメントモデル」はリーディングカンパニーや成長企業との協業・戦略的提携を推進し、既存事業の成長の加速と新規事業の創出を図るものだが、企業規模の違いや株主と出資先といった関係を超え、ともに成長を目指す「仲間」であるとの意識を根底に置いていることが、提携先企業に向けたモチベーションの一段の向上に繋がると期待できる。この点は一般的なVCやCVCとの大きな違いであろう。

 

【1-5 ROE分析】

 

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

ROE(%)

4.9

-

12.2

17.7

24.7

27.3

 売上高当期純利益率(%)

1.24

-0.16

3.76

6.63

10.37

13.21

 総資産回転率(回)

1.33

1.46

1.44

1.36

1.27

1.17

 レバレッジ(倍)

2.97

2.62

2.25

1.96

1.87

1.76

*総資産回転率及びレバレッジは期首・期末平均を使用。有価証券報告書・決算短信を元に(株)インベストメントブリッジが計算。

 

マージン改善に伴うROEの上昇が続いている。
21年3月期の売上高当期純利益率は前期を上回る13.6%の予想であり、ROEの更なる上昇が見込まれる。

 

【1-6 株主還元】

同社は株主への利益還元を経営の最重要課題の一つとして認識しつつも、これまでは将来の事業展開と経営体質の強化のための内部留保の拡充を優先してきたが、昨今の受注の拡大及び堅調な業績の進捗に加えストック型の高収益モデルの基盤を確立したことを踏まえ、19年3月期、初めて5.00円/株の配当を実施した。前20/3期も配当は5.00円/株で、配当性向は10.8%。
今後はサブスクリプション事業モデルへの転換による安定的なキャッシュ・フローの創出をベースに、業績の成長と戦略的投資のバランスをみたうえで、配当性向30%以上を目指して株主還元策の拡充にも注力する考えだ。

 

2.2021年3月期第2四半期決算概要

(1)業績概要

 

20/3期2Q

構成比

21/3期2Q

構成比

前年同期比

売上高

1,925

100.0%

2,093

100.0%

+8.8%

売上総利益

840

43.7%

874

41.8%

+4.0%

販管費

518

26.9%

480

22.9%

-7.3%

営業利益

322

16.8%

393

18.8%

+22.0%

経常利益

336

17.5%

377

18.0%

+12.0%

四半期純利益

236

12.3%

254

12.2%

+7.7%

*単位: 百万円。

 

増収増益。上半期の過去最高を更新。
売上高は前年同期比8.8%増の20億93百万円。引き続きグローバル事業における主要顧客を中心とした受注およびソリューション案件が増加。メディカル事業においても新商品発売が寄与した。
営業利益は同22.0%増の3億93百万円。グローバル事業はコロナインパクトを吸収し3.6%減益も、メディカル事業における高収益サブスクリプションモデルの確立が寄与した。粗利率は1.9%低下したが販管費が同7.3%減少したことから営業利益率は2.0%上昇した。
経常利益は同12.0%増の3億77百万円。新型コロナウイルス感染症の影響(フィリピンにおける社員送迎やリモートでの開発体制への移行に伴う支出など約25百万円)および為替のインパクト(約20百万円)を加味すると2割の増益。
売上・利益ともに上半期の過去最高を更新した。

(2)セグメント別動向

 

20/3期2Q

構成比

21/3期2Q

構成比

前年同期比

グローバル事業

1,287

66.9%

1,418

67.8%

+10.1%

メディカル事業

637

33.1%

675

32.2%

+6.0%

連結売上高

1,925

100.0%

2,093

100.0%

+8.8%

グローバル事業

248

19.3%

239

16.9%

-3.6%

メディカル事業

267

42.0%

337

49.9%

+25.9%

調整額

-193

-

-182

-

-

連結営業利益

322

16.8%

393

18.8%

+22.0%

*単位:百万円。売上髙は外部顧客への売上高。営業利益の構成比は売上高利益率

 

(グローバル事業)
増収減益。
主要ピラー顧客からの売上とソリューションの受注が拡大した。一方で新型コロナウイルス感染拡大に伴って施した各種施策(フィリピンにおける社員送迎など)に係るコストや、リモートでの開発体制に移行に伴う支出の増加もあり減益となったが、新型コロナウイルス感染症の影響は最小限に留めることができた。

 

◎グローバル部門
ソフトウェアテストやその実行・管理の自動化、アプリケーション開発分野において、フィリピンおよび日本における既存のピラー顧客からの受注が伸長した。その中でも、PC/IT機器の分野では、グローバル大手PCメーカーの取引拡大に加えて他の大手PCメーカーへの横展開を推進した。また、AI領域におけるグローバルコンサルティング会社との取引拡大など、業界を代表する大手顧客を中心に、顧客のピラー化・サブピラー化に向けた積極的な取り組みを強化した。
新なソリューションとして IVA(インテリジェントビデオ解析)技術を活用したEdge IoT/AI分野の開発において新規顧客からの受注を獲得し始め、既存のコア技術と併せて、ソリューションの横串的展開の機会を拡大している。

 

◎エンタープライズ部門
金融・公共を中心とした新規および既存プロジェクトが堅調に拡大した。中途採用を含めた積極的な人材投資効果が奏功している。

 

(メディカル事業)
増収増益。
Mightyシリーズのパッケージ販売が好調に推移しており、高収益サブスクリプションモデルの確立により、収益性も向上している。
レセプト点検ソフト「MightyChecker®」およびオーダリングチェックソフト「Mighty QUBE®」の導入医療機関数は引き続き順調に拡大。戦略的商品である次世代レセプトチェックシステム「MightyChecker®EX」も、売上トップクラスの大手グループ内病院を含む多数の引き合いがあり、導入数は堅調に増加した。
大手医療グループ内における横展開に加え、新型コロナウイルス感染症対策としてWEBを活用した営業・サポートへの移行により、更なる直接販売の獲得および、顧客単価アップのためにソリューションの重ね売りを推進した。

 

2020年3月に発表した、医療クラウド新サービスSonaM(そなえむ)や、保険会社向け新ソリューションの開発、その他健保組合や学会向けのデータ分析ソリューションなど、医療のデジタル化に関する新事業を積極的に立ち上げた。
また、Mightyシリーズに次ぐ将来の「新たなサブスク型の収益源」の確保に向け、積極的な投資を実施している
2020年9月には、独自の医療データベースを活用した保険業界向け業務効率化ソリューション「保険ナレッジプラットフォーム」のSBI生命保険における採用が内定した。今後保険業界に向けて本格導入を開始する。

 

(3)財政状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

20/3末

20/9末

 

20/3末

20/9末

流動資産

3,128

3,409

流動負債

1,370

1,350

現預金

1,976

2,379

短期借入金

115

105

売上債権

667

652

前受金

702

734

固定資産

668

709

固定負債

208

271

有形固定資産

65

63

長期借入金

-

-

無形固定資産

132

132

負債

1,579

1,621

投資その他の資産

470

513

純資産

2,217

2,497

資産合計

3,797

4,119

負債・純資産合計

3,797

4,119

単位:百万円。

 

現預金、投資その他の資産の増加等で資産合計は前年末に比べ3億21百万円増加の41億19百万円となった。
前受金の増加等で負債合計は同42百万円増加の16億21百万円。
利益剰余金の増加で純資産は同2億79百万円増加の24億97百万円。
この結果、自己資本比率は前期末から2.2ポイント上昇し60.6%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

20/3期2Q

21/3期2Q

増減

営業CF

186

488

+301

投資CF

-19

-42

-23

フリーCF

167

445

+278

財務CF

-71

-58

+12

現金同等物残高

1,693

2,344

+650

*単位:百万円。

 

税金等調整前当期純利益の増加、売上債権の減少等で営業CF、フリーCFのプラス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。

 

(4)トピックス

◎エッジAIプラットフォームを提供するIdein社のパートナープログラムに参画
2020年9月、AIやIoT技術の急速な発展と普及に伴い注目されるエッジコンピューティングを採用したIoTシステム構築のメガプラットフォーマーを志すベンチャー企業のIdein株式会社(東京都)と、同社が提供する次世代AI/IoTプラットフォーム『Actcast』を活用したソリューション開発及びプロバイダービジネスの推進に向けて、同社のパートナープログラム『Actcast Partner Program』に参画することとした。

 

(エッジコンピューティングとは?)
スマートフォン、カメラ、自動車などIoTネットワークの末端(エッジ)でデータを分散処理する技術。
DX(デジタル変革)の潮流に乗って膨大なデータが蓄積される時代になり、データセンターへの負荷集中や情報セキュリティの問題など、既存のデータ集約型のクラウドコンピューティングの課題が浮き彫りになるにつれ、それらを解決する新しいデータ処理技術として、データ分散型のエッジコンピューティングへの注目が一段と高まっている。
エッジコンピューティングでは、データ生成元の端末機器やその近くでデータの処理を行うことで、データセンターやネットワークへの負荷を分散し低遅延・高速処理を実現する。また必要なデータのみを収集・分析することによるセキュリティやプライバシーへの配慮など、加速するIoT化や5G時代において必須の技術として益々の技術発展とマーケットの拡大が期待されている。

 

(Idein社概要)
新たなソフトウェア産業を支えるメガプラットフォーマーになることを理念に、ディープラーニング推論の劇的な高速化を実現した、世界にも類を見ない高い技術力を有するテックベンチャー。経済産業省がグローバルに活躍するスタートアップを支援するために立ち上げた「J-Startup」プログラムに選定されている他、数多くのアワードを受賞している。

 

(プログラム参加の目的)
UbicomはArm社(英国)の認定AIパートナーであるIdein社と協業し、2023年に国内のみで4兆円以上と見込まれるIoT市場に、グローバルを見据え本格的に参入することとした。
Idein社とのパートナーシップを通じて、エッジAIプラットフォーム『Actcast』を活用した先進ソリューション開発と次世代エンジニア育成を加速し、Ubicomグループが戦略市場と位置付ける金融/公共・医療・自動車・製造/ロボティクス領域に向けたソリューションプロバイダービジネスの展開を図る。

 

◎保険業界向けプラットフォームビジネスを開始
2020年9月、16,800医療機関ユーザーへの提供実績に裏打ちされた独自の医療データベースを活用した保険業界向け業務効率化ソリューション「保険ナレッジプラットフォーム」の提供を開始。
SBI生命保険株式会社での採用が内定している。

 

◎「保険ナレッジプラットフォーム」が生命保険エコシステム構想に参画
2020年11月、「保険ナレッジプラットフォーム」の横展開がスタートし、「生命保険エコシステム構想」に参画することとなった。

 

(生命保険エコシステム構想概要)
ITを活用することで、保険請求手続きの負荷軽減、保険金受給までの日数短縮を実現するとともに、保険会社の事務負荷の大幅軽減を目指すもの。
非定型AI-OCRの技術を持ち保険販売事業、ソリューション事業、システム事業を手掛ける株式会社アイリックコーポレーション(東証1部、7325)とソフトウェア販売や技術サポートを手がける株式会社アシストが中核となっている。
この構想の展開・拡大に向け「保険ナレッジプラットフォーム」における保険金支払業務自動化技術が高く評価され、構想強化企業第1号として参画することとなった。
また、複数の保険会社がこの構想に賛同し、全面協力の下、Ubicomは2021年冬のサービス提供開始に向け開発に着手した。

 

(今後の展開)
「保険ナレッジプラットフォーム」の好調な引き合いを背景に、ユーザー目線の機能の拡充と訴求力の強化に向けて、基本機能である保険金支払審査業務向け「判定情報検索エンジン」に加え、「AI 自動判定」機能のオプション実装を2020年冬以降に予定している。
Ubicomにとって新しい取り組みである保険業界向けサブスクリプション型プラットフォームの提供を、新たなコア事業の一つとして育成するために、保険会社とその顧客の相互メリットや協業先企業とのシナジーの創出、技術革新およびビジネスモデルの確立を図る。
また、21年3月期第3四半期より、「保険ナレッジプラットフォーム」を含む保険業界向け先進ソリューション開発及び DX 推進の一層の強化に向けて、同社グループが有する約 1,000 名のグローバル IT 人材の活用を拡大する。加えてAI 等の先端領域に特化した次世代技術者育成の為の人材開発投資を進め、将来を見据えた企業価値の更なる向上に取り組む。

 

(同社資料より)

 

 

3.2021年3月期業績予想

(1)業績予想

 

20/3期

構成比

21/3期(予)

構成比

前期比

売上高

4,038

100.0%

4,437

100.0%

+9.9%

営業利益

707

17.5%

807

18.2%

+14.0%

経常利益

715

17.7%

840

18.9%

+17.4%

当期純利益

533

13.2%

605

13.6%

+13.4%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。

 

業績予想に変更無し。増収増益。利益は過去最高を更新へ。
業績予想に変更は無い。売上高は前期比9.9%増の44億37百万円、営業利益は同14.0%増の8億7百万円、経常利益は同17.4%増の8億40百万円の予想。利益率も向上。
両事業とも好調に推移。第3四半期以降より「戦略的人材育成投資」を実施するがこれを吸収したうえで2桁の増益を目指す。
営業利益・経常利益ともに7期連続で過去最高益を更新する見込み。
配当は現時点では未定としているが、今期も利益水準に応じて適切な株主還元を実施する考えだ。

 

通期目標と利益のバランスととりつつ戦略的投資を実施する。約35百万円超の人材開発投資を実施予定である。

 

(2)第3四半期以降の取り組み

戦略市場における上期の状況及び下期以降の取り組みは以下の通り。

市場

上期概況

第3四半期以降

金融/公共

コロナ禍においても金融公共領域の業務改革とDX加速化ニーズが継続。既存案件を中心に順調に拡大した。

オフショア活用提案の強化、国策に合致した開発需要の取り込みの他、次世代金融公共サービス開発に必須の技術習得に注力する。

AI

大手コンサルファーム向けAIチャットボット等、既存案件の開発規模・開発範囲が拡大した。

独自のAIソリューション開発を視野に、更なる人材投資及びビジネスモデルの確立を推進する。

自動車

一部の案件において顧客側の意思決定の保留や見通しの不透明感があるが底堅く推移した。

全体ではやや低調な推移を想定し、今後拡大が見込まれるモデルベース手法を用いた開発(MBD)需要の取り込み及びスキル向上に注力する。

製造/ロボット

MFP(複合機)エリアがやや低調であるものの、コロナ禍需要によりPCエリアが好調だった。

デバイスサプライヤー、コンテンツオーナー及び商社も視野に入れPC/IT/IoT/ARVR*領域の新規案件獲得、先進技術開発、共創モデルをめざす

医療

訪問自粛の影響により新規獲得機会が減少したものの、値上げ×重ね売りのW効果で既存ユーザー単価が向上した。

WEBを活用し訪問自粛インパクトを上回る直販及びユーザー単価向上を推進、開発におけるフィリピン人材の活用を拡大する。

 

 

4.今後の成長戦略

◎成長ビジョン
上記のように通期計画達成を前提に「ニッチNo.1プラットフォーマー戦略」の推進に向け、今第3四半期より成長投資を実施する。
2022年3月期は経常利益ベースで今期計画である840百万円+約3億円以上の増益を目指す。

 

◎投資対象
国策・国益を考慮に入れた先端IT人材を育成するとともに、ソリューション及びプラットフォーム開発を推進する。
中心的な対象領域は以下の3領域

医療

遠隔・オンライン診療、クラウド化など医療の多様化ニーズに対応したパッケージやプラットフォームの開発

DX

AI、IoT、エッジコンピューティング、AR/VRなど、今後主流となるコア技術を搭載したソリューション及びプラットフォームの開発

金融

コンテナ化、マイクロサービス化などによるクラウドネイティブ技術でより迅速かつ柔軟な次世代アプリケーションの開発

 

◎投資の内容
自社の人材プールからAI/IoT/DX領域の先端IT人材を育成する。
今第3四半期以降、育成投資を開始する。またメディカル事業におけるフィリピン人材の活用を拡大する。
来期以降は、上記の投資効果の早期実現を図り、先端IT人材100名体制を目指す。

 

◎メディカル事業
*取り組み
高収益モデルと営業スタイル変革が着実に前進している。
足元2桁の増収増益となっている同事業の好調要因は以下の3点。

 

1.高収益サブスクリプションモデルが着実に数字を積み上げている。
同事業における売上構成比を見ると、戦略的開発案件以外の収益率の低い受託開発が低下する一方、Mightyシリーズなどのサブスクリプションモデルの売上構成比は85%を超えた。

 

2.Mightyシリーズの値上げおよびクロスセルにより顧客単価は上昇している。

 

3.オンラインセミナーやカスタマーサポートの強化を通じて営業スタイルの変革を推進している。
コロナ禍もあり延べ3回オンラインで医療機関向け無料経営改善セミナーを開始したところ、約3,500軒の案内に対し参加は219軒。そのうちMighty Checkerシリーズの最上位製品である「Mighty Checker® EX」への切り替えに関心を持つ約3割の69軒に提案を行っている。

 

*成長ビジョン
「1.会社概要」で触れたように、同プラットフォームはMightyシリーズを超える高収益サブスクリプションモデルになると考えている。
今後も粗利率75%のMightyシリーズ、同85%のSonaMに加え、保険ナレッジプラットフォームを始めとする高収益の新サービスを積み上げていく。

 

(同社資料より)

 

◎グローバル事業
*成長ビジョン
引続き金融/公共・自動車・医療・製造/ロボットの戦略市場を対象に、フィリピン拠点を活かした事業モデルの強化を図る。
24時間体制の先端テクニカルサポートセンターを来期以降に開設する計画だ。

 

(同社資料より)

 

◎M&A、Win-Winインベストメントモデルの推進
引続き成長を加速するM&Aの早期実行を目指している。ほか、各種アライアンスも積極的に実行していく。
M&A実行後はPMIおよび事業の再構築を1年以内に実行し、利益率25%向上を目指す。

 

(同社資料より)

 

 

5.今後の注目点

コロナ禍の影響もありグローバル事業は減益であったが、同社の計画値を大幅に上回ったということだ。また、メディカル事業の収益性向上が著しく全体では2桁増益となり高収益モデルを確立している。
Mighty EXは新規顧客への導入および既存顧客における切替えが進んでいるようで、メディカル事業の営業利益率は半期ベースではあるがほぼ50%まで上昇した。今後は、2020年4月にリリースしたMighty シリーズを上回る高収益サービス「SonaM(そなえむ)」を含めたクロスセルおよび値上げの効果に期待したい。
また、グローバル事業においても、今期第3四半期からの戦略的人材育成投資による効果について、ソリューションビジネス拡大含め、そのスピードに着目していきたい。
中期的には「新たなプラットフォームビジネスの立ち上げ推進」を掲げてきた同社の第一弾となる「保険ナレッジプラットフォーム」が、同社が見込む巨大市場をどのように開拓していくのかにも注目したい。

 

(同社資料を基にインベストメントブリッジが作成)

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2020年7月1日

 

*基本的な考え方
当社は、「唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーであり続けること」「グローバル展開」「Win-Winモデルの推進による相互発展」を経営理念としております。この経営理念のもと、更なる企業価値の向上及びグローバルな競争力を維持していくためには、コーポレートガバナンスの充実と強化が重要課題であると認識しております。具体的には、「より効率的かつ健全に事業活動を行うことにより、企業の収益力を高め、株主の利益を最大化することを目標とする」との基本的認識とコンプライアンスの重要性をコーポレートガバナンスの基本的な考え方として、株主、従業員、取引先、地域社会等のあらゆるステークホルダーに対して社会的責任を果たし、持続的成長と発展を遂げていくことが重要であるとの認識にたち、コーポレートガバナンスの強化に努めております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則1-2④ 議決権の電子行使、招集通知の英訳】

現在の当社の株主構成から、電子的な議決権行使の採用、株主総会招集通知の英訳については実施しておりません。これまでの議決権行使比率から、日本語による議決権行使により、大きな支障なく議決権の行使がされているものと判断しております。今後については、海外投資家の議決権の行使状況や外国人株主比率の動向等に留意しながら、その必要性を検討してまいります。

【補充原則4-2① 経営陣の報酬とインセンティブ】

当社の取締役の任期が1年であるため、報酬は前年度の業績により毎年見直されますが、中長期的な業績と連動する報酬や自社株による報酬制度は設けておりません。経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うことの必要性は認識しており、今後適切な方法を継続的に検討してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

原則1-4【いわゆる政策保有株式】

当社は、当社グループの中長期的な企業価値向上に資すると判断される場合、株式を政策保有します。当該株式の保有は、業務提携・協業などによる取引関係の維持・強化等、保有目的の合理性が確保されているなどの条件を満たす範囲で行うことを方針としております。また、株式に係る議決権の行使については、議案が当社保有方針と適合するかを勘案したうえで議決権の行使を行うこととしております。

【補充原則4-11② 社外役員の兼任状況】

社外取締役及び社外監査役の他社での兼任状況は、株主総会招集通知、有価証券報告書及びコーボレート・ガバナンスに関する報告書等を通じ、毎年開示を行っております。

社外取締役2名が、当社以外の会社の社外取締役を兼任しておりますが、業務執行取締役全員は当社及び当社子会社以外の会社の役員は兼任しておらず、取締役の業務に専念できる体制となっております。

社外監査役2名のうち1名が、当社以外の会社の社外監査役を兼任しておりますが、監査役の業務に支障はありません。

原則5-1【株主との建設的な対話に関する方針】

株主からの対話の申込みに対して、積極的に対応しております。

当社のIR活動は、戦略企画本部を担当部署とするIR体制を整備しており、投資家からの電話取材やスモールミーティング等のIR取材を積極的に受け付けております。

更に、代表取締役自らが出席する決算説明会の開催及び決算説明の動画の配信を、年2回以上実施しております。

 

 

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