ブリッジレポート
(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

プライム

ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ 2021年6月期第1四半期決算

ブリッジレポートPDF

 

佐藤 邦光 社長

株式会社インテリジェント ウェイブ(4847)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表者

佐藤 邦光

所在地

東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー

決算月

6月

HP

https://www.iwi.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

689円

26,295,249株

18,117百万円

11.4%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

10.00円

1.5%

31.18円

22.1倍

265.55円

2.6倍

*株価は11/19終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。

 

非連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年6月(実)

8,469

702

766

547

20.78

7.00

2018年6月(実)

10,603

547

573

377

14.36

7.00

2019年6月(実)

10,443

921

953

683

25.99

9.00

2020年6月(実)

10,920

1,036

1,074

762

29.00

10.00

2021年6月(予)

11,000

1,150

1,190

820

31.18

10.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

(株)インテリジェント ウェイブの2021年6月期第1四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年6月期第1四半期決算概要
3.2021年6月期業績予想
4.中期事業計画(21/6期~23/6期)と進捗状況
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 2020年9月25日開催の取締役会において、井関代表取締役社長が代表取締役会長に就任され、佐藤取締役が代表取締役社長に就任された。新体制下での目標は売上高150億円、営業利益率15%。海外展開や先進的なサービスの提供者との協業によりクラウドサービスを強化して、収益構造をシステムの受託開発中心からサービス中心へ、フロー型からストック型へと転換していく。

     

  • 21/6期1Q(7-9月)は前年同期比4.9%の減収、同4.8%の営業減益。前年同期の売上・利益水準が高かったことや2Qへの期ずれ案件の発生で減収減益となったが、まずまずのスタート。クラウドサービスが同25.8%増と伸び、保守売上と合わせたストック収入が同12.5%増加した。受注も大手カード会社を中心に同27.2%増と伸び、1Q末の受注残高は前年同期末比14.2%増の60.7億円と過去5年間で最高となった。テレワーク環境が整備されていることもあり、新型コロナウイルス感染症拡大の影響はなかった。

     

  • 通期予想に変更はなく、前期比0.7%の増収、同11.0%の営業増益。期ずれ案件の売上計上もあり、2Qは増収増益が見込まれ、1Qの減収減益をカバーする。新型コロナウイルス感染症第3波の影響が懸念されるが、テレワーク環境が整備されているため、仮に外出自粛等があっても業務への影響を最小限に抑えることができる。ただ、顧客企業の業績に大きな影響が出ると、発注が抑制される可能性はある。1株当たり10円の期末配当を予定している(予想配当性向32.1%)。

     

1.会社概要

クレジットカード決済等のオンラインシステムに利用される金融フロントシステムで国内シェアNo.1のソフトウエア開発会社。金融フロントシステムは、店舗の端末や銀行の店外CD/ATM・海外ATM等をクレジットカード会社や銀行等のネットワークに接続して取引データの受渡しを行う。“リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術”、“システムを止めないためのノンストップ技術”、及び“高度なセキュリティ技術”を技術基盤とし、カード不正利用検知システムや証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する。地銀やノンバンク等向けに金融フロントシステムやカード不正利用検知システムのクラウドサービスも伸びている。営業面では、筆頭株主として議決権の50.61%を保有する大日本印刷(株)及びそのグループ企業との連携が強みとなっている。

 

【経営理念 : 次代の情報化社会の安全性と利便性を創出する】

ネットワークゲートウェイ専門会社として、社員一人ひとりが、進取の気性を持った技術者集団としてあり続ける事で、次世代の新たなキラーシステムを創出し、次の30年を見据えた成長の軌跡を描いていく。そのためには、性別や国境にとらわれない多様な価値観が生み出すエネルギーが必要不可欠というのが同社の考え。また、常に新しい事に挑戦し、働きがいのある企業風土を作りあげる事で、社会における同社の企業価値も高めていく。
カード決済に不可欠な機能を提供するシステムの開発や運用を担う同社は、どのような事業環境になっても業務の継続が求められる。同社に受け継がれている「止まらないシステム」を追求する思想は、IT基盤の構築やセキュリティ機能の向上を支える技術と深く結びついており、今後、あらゆる業界に幅広く浸透していく、というのが同社の考え。
企業は、社会に貢献する事がなければ存在価値がない。同社は、これまでに培ってきた技術力を進化させ、安全でストレスなく情報を取得できる仕組みを築きあげる事で、ユーザーを通じて社会全体から信頼される会社を目指している。

 

1-1 事業内容

同社は、これまで、クレジットカード会社を主な顧客として、カード決済に不可欠なシステムの開発や関連するサービスを提供する金融システムソリューション事業と一般の事業会社を主な顧客として、情報セキュリティ対策、サイバーセキュリティ対策の製品を販売するプロダクトソリューション事業の二つの報告セグメントによって経営管理を行ってきた。
ただ、両事業の営業活動及び製品開発の推進体制を強化し、同社事業全体の成長を促進する方針の下、両事業で個別に管理していた顧客の情報を共有し営業活動を強化すると共に、セキュリティ対策技術の開発体制を強化し、新製品、新サービスの開発を促進するべく、経営管理体制を変更すると共に、21/6期より金融業界を中心とした全業種の企業を顧客とする単一セグメントに変更する。

 

旧報告セグメント
金融システムソリューション事業
クレジットカード会社、証券、銀行等金融業界の企業を主な顧客とし、主にクレジットカードの決済処理を完遂するために必要なネットワーク接続やカードの使用認証等の機能をもつFEP(Front End Processing)システムの開発業務を行っている。FEP システムの新規開発に際しては、システムの中核を構成する自社開発のパッケージソフト「NET+1」の販売による売上と、技術者がそのパッケージをカスタマイズして顧客の機能要件に合わせる開発業務による売上(ソフトウエア開発業務)、更には開発したソフトウエアを搭載するサーバの販売による売上(ハードウエア)、ソフトウエアとハードウエアで構成されたシステムの保守業務による売上(保守)が、それぞれが計上される。「NET+1」は、店舗の端末や銀行の店外CD/ATM・海外ATM等をクレジットカード会社や銀行等のネットワークに接続して取引データの受渡しを行うためのソフトであり(ネットワーク接続機能、決済の前提となるカード認証機能、加盟店の業務を管理する機能等を有する)、専用ハードと共に提供される。この分野で圧倒的なNo.1ブランドであり、大手クレジットカード会社のネットワークへの接続で7割のシェアを有する。また、偽造カード・盗難カード利用などクレジットカードや銀行口座の不正利用の検知を目的とした不正検知システムとして、自社開発のパッケージソフト「ACE Plus」の開発・販売も手掛けており、こちらも豊富な実績を有する(シェア6~7割)。

 

上記のサービスを通して培った技術とノウハウを活かして、アクワイアリング業務(同:IOASIS)、不正検知(サービス名:IFINDS)、スイッチング(同:IGATES)、ポイントシステム(同:IPRETS。21/6期第2四半期より)のクラウドサービスを提供しており、順調に事業規模が拡大している。この他、大日本印刷株式会社(以下、DNP)及びそのグループ企業の顧客資産とネットワークやセキュリティ分野での強みを活かしてサービス(開発)領域の拡大にも取り組んでいる。

 

プロダクトソリューション事業
当事業は、カードや証券等の業界に捉われず、全ての業界・企業を顧客対象とし、顧客の業務に使用されるPC 端末(エンドポイント)のセキュリティ対策製品を主な事業領域としている。具体的には、「NET+1」「ACE Plus」等で培ったネットワーク技術やセキュリティ技術をベースとした情報漏洩対策システム「CWAT(シーワット)」(パソコン等の端末から、コピー、印刷、ネットワーク経由等による情報の内部からの持ち出しを監視)を中心に、内部情報漏洩対策、脆弱性対策、及び外部攻撃対策について、監視・検出・診断・認証と防止・阻止の切り口からソリューションを提供している。
また、当事業は売上や利益の数字に表れないメリットも大きい。優れたセキュリティ関連製品を扱う事で得られる最新の情報や蓄積される技術・ノウハウ、海外の有力ベンダーとの提携により広がるワールドワイドのネットワーク、更には全ての業界・企業を顧客対象とする事による顧客層の広がりとビジネスチャンスの拡大等、目に見えない部分での貢献も大きい事業である。

 

旧報告セグメントの売上高・利益

 

19/6期

構成比・利益率

20/6期

構成比・利益率

前期比

金融システムソリューション

9,336

89.4%

9,857

90.3%

+5.6%

プロダクトソリューション

1,106

10.6%

1,063

9.7%

-3.9%

連結売上高

10,443

100.0%

10,920

100.0%

+4.6%

金融システムソリューション

890

9.5%

1,123

11.4%

+26.2%

プロダクトソリューション

31

2.8%

-87

-

-

連結営業利益

921

8.8%

1,036

9.5%

+12.5%

* 単位:百万円

 

単一の報告セグメントに変更

旧報告セグメント

 

新報告セグメント

金融システムソリューション事業

主な顧客:クレジットカード、証券、銀行等金融業界の企業

事業内容:クレジットカード決済やATM等のオンライン取引等に不可欠なシステムソリューション業務のうち、開発業務、保守業務、製品販売 業務、クラウドサービス業務。

 

主な顧客:金融業界を中心とした全業種の企業

事業内容:決済を中心に、様々なデータの受渡しに必要なシステム(ITインフラ)の開発とサービス提供。システム開発、保守、クラウドサービス、製品販売の各業務。データの利活用に係る情報セキュリティ対策、サイバーセキュリティ対策の製品の開発、販売業務。

プロダクトソリューション事業

主な顧客:金融業界を中心に幅広い業種の企業

事業内容:情報セキュリティ対策、サイバーセキュリティ対策のシステムソリューション業務製品の販売。

 

 

新報告セグメントによるカテゴリー別売上高

 

20/6期 実績

21/6期 予想

備考

システム開発

5,791

5,362

システムの受託開発業務に係る売上

保守

1,246

1,284

同社が開発したシステムの保守業務に係る売上

同社製品

244

397

同社製品の販売業務に係る売上

クラウドサービス

828

940

同社製システムの期間貸し業務に係る売上

ハードウエア

1,526

1,494

サーバ等ハードウエアの販売業務に係る売上

他社製品

220

423

他社製品の販売業務に係る売上

セキュリティ対策製品

1,063

1,100

同社製、他社製のセキュリティ対策製品の販売業務に係る売上

売上高

10,920

11,000

 

* 単位:百万円

 

2.2021年6月期第1四半期決算概要

【佐藤取締役が代表取締役社長に就任】

2020年9月25日開催の取締役会において、井関代表取締役社長が代表取締役会長に就任され、佐藤取締役が代表取締役社長に就任された。

 

佐藤社長のプロフィール
佐藤社長は、愛知県出身、1959年12月23日生。関西大学工学部を卒業し、1983年4月 大日本印刷株式会社(以下、DNP)に入社。IPS 事業部IC カードビジネス開発本部長、情報ソリューション事業部デジタルセキュリティ本部長、情報イノベーション事業部C&I センター長を歴任され、2019年9月に株式会社インテリジェント ウェイブ(以下、IWI)取締役に就任された。

 

幅広い領域での新規事業開発に関与
DNPでは、2000 年代にIC カード事業を担当し、規格策定のための協議会活動や製品開発に携わった他、IC カード技術を使ったモバイル決済サービス等、決済領域における新規事業の立上げにも関与された。セキュリティ、IoT、デジタルマーケティング等、幅広い領域での新規事業の開発や、海外企業との協業による日本での事業開発の経験も豊富で、こうした経験をIWIの更なる成長に活かしていきたいと言う。

 

IWIの成長を加速
中期的な目標として、売上高150億円、営業利益率15%を掲げており、ビジネスモデルをシステムの受託開発中心からサービス中心へ、フロー型からストック型へと転換していく。けん引役として期待されるのがクラウドサービスであり、グローバル展開やエコシステムによる先進的なサービスの提供(先進的なサービスの提供者とクラウドの中でサービスを統合して提供)も視野に入れている。
また、キャッシュレス社会の成長を取り込むことで既存ビジネスを成長させると共に、IWIが持つ高速のネットワーク技術を活用して新規事業を育成していく。新規事業では、5Gや自動運転にも使われているFPGA技術を使ったソリューションを展開し非金融の新たな市場を開拓していく。また、DNPとの協業による高速ネットワークとAIを組み合わせた事業や、ゼロトラストセキュリティを軸にしたセキュリティ事業の拡大にも取り組んでいく。この他、DNPが進める DX にIWIの技術を活用したIT基盤を提供し、新しいシナジーを生み出していく。

 

2-1 第1四半期(7-9月)非連結業績

 

20/6期 1Q(7-9月)

構成比

21/6期 1Q(7-9月)

構成比

前年同期比

売上高

2,417

100.0%

2,298

100.0%

-4.9%

売上総利益

621

25.7%

589

25.6%

-5.2%

販管費

480

19.9%

454

19.8%

-5.3%

営業利益

141

5.8%

134

5.8%

-4.8%

経常利益

140

5.8%

128

5.6%

-8.8%

当期純利益

91

3.8%

83

3.6%

-8.3%

* 単位:百万円

 

前年同期比4.9%の減収、同4.8%の営業減益
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、社員等の健康状態の把握を行い、テレワークと時差勤務を実施すると共に、内外の出張を制限する等の対策を講じた結果、新型コロナウイルス感染症の影響を受けることはなかった。

 

売上高は前年同期比4.9%減の22.9億円。一部のシステム開発案件(約1億円)の売上計上時期が第2四半期へ期ずれしたため、システム開発の売上が期初計画及び前期実績を下回った。ハードウエアは前年同期のボリュームが大きかった反動で減少したが期初計画に沿ったもの。その他のカテゴリーの売上は概ね計画通りに推移し、増加した。

 

売上高、上位 3 社は DNP が4.2億円と1.8億円減少したものの、開発会社向けが、通信事業者のクレジットサービス向けFEPや不正検知システム等で2.9億円と2.4億円増加した他、カード会社向けも、FEP更改に係るシステム開発やハードウエアで1.9億円と1.3億円増加した。

 

営業利益は同4.8%減の1.3億円。売上の減少とクラウドサービスでのシステム障害による一時的な費用の発生で売上総利益が同5.2%減少。人件費、採用教育費、広告宣伝費を中心に販管費が減少したものの吸収できなかった。ただ、同社の第1四半期は、例年、利益の谷間となっている。今期の利益水準は過去5年間(平均1.0億円)で前期に次いで2番目に高い。

 

売上高の内訳

 

20/6期 1Q(7-9月)

構成比

21/6期 1Q(7-9月)

構成比

増減

システム開発

1,251

51.8%

1,113

48.4%

-138

ハードウエア

353

14.6%

208

9.1%

-145

クラウドサービス

178

7.4%

224

9.7%

46

セキュリティ対策製品

173

7.2%

181

7.9%

8

その他

462

19.1%

572

24.9%

110

合計

2,417

100.0%

2,298

100.0%

-119

* 単位:百万円

 

2-2 受注動向

受注高は、クレジットサービス向けFEPや不正検知システム等、大手のカード会社を中心に30.5億円と前年同期比27.2%増加した。第1四半期末の受注残高は前年同期末比14.2%増の60.7億円、期ずれした案件もあり、システム開発を中心に増加した。受注残高の内訳は、クラウドサービス事業19.3億円(前年同期末20.1億円)、システム開発20.6億円(同17.6億円)、その他20.8億円(同15.3億円)。

 

 

2-3 財政状態

 

20年6月

20年9月

 

20年6月

20年9月

現預金

3,641

3,874

仕入債務

627

286

売上債権

1,720

874

未払法人税等

61

78

たな卸資産

413

530

賞与・役員賞与引当金

337

403

流動資産

6,381

5,898

前受金

1,381

1,328

有形固定資産

537

513

退職関連引当金

520

525

無形固定資産

1,465

1,404

負債

3,568

3,177

投資その他

2,167

2,180

純資産

6,983

6,819

固定資産

4,170

4,098

負債・純資産合計

10,552

9,996

* 単位:百万円

 

第1四半期末の総資産は前期末との比較で5.5億円減の99.9億円。5.0億円のフリーCFを確保したこと等で現預金が増加する一方、売上の減少で売上債権が減少した。負債・純資産では、仕入債務が減少した他、配当金の支払い等で純資産が減少した。自己資本比率68.2%(前期末66.2%)。

 

 

3.2021年6月期業績予想

3-1 上期非連結業績

 

20/6期 上期 実績

構成比

21/6期 上期 予想

構成比

前年同期比

売上高

4,967

100.0%

5,000

100.0%

+0.7%

営業利益

368

7.4%

380

7.6%

+3.0%

経常利益

360

7.2%

400

8.0%

+11.1%

当期純利益

237

4.8%

280

5.6%

+18.1%

* 単位:百万円

 

第1四半期の減収減益をカバーして、前年同期比0.7%の増収、同3.0%の営業増益を目指す
第2四半期(10-12月)は、期ずれ分の売上計上もあり、売上高が前年同期比5.9%増加する見込み。売上の増加等で営業利益が同7.9%増加する。60億円を超える豊富な受注残を抱えており、売上については上振れ余地がありそうだ。

 

3-2 通期非連結業績

 

20/6期 実績

構成比

21/6期 予想

構成比

前期比

売上高

10,920

100.0%

11,000

100.0%

+0.7%

営業利益

1,036

9.5%

1,150

10.5%

+11.0%

経常利益

1,074

9.8%

1,190

10.8%

+10.7%

当期純利益

762

7.0%

820

7.5%

+7.6%

* 単位:百万円

 

通期予想に変更はなく、前期比0.7%の増収、同11.0%の営業増益
新型コロナウイルス感染症第3波の影響が懸念されるが、同社では開発も含めてテレワーク環境が整備されているため、仮に外出自粛等があっても業務への影響を最小限に抑えることができる。ただ、顧客企業の業績に大きな影響が出ると、発注が抑制される可能性があると言う。

 

カテゴリー別売上高

 

20/6期 実績

構成比

21/6期 予想

構成比

前期比

フロー/ストック

システム開発

5,791

53%

5,362

49%

-7%

フロー

保守

1,246

11%

1,284

12%

+3%

ストック

同社製品

244

2%

397

4%

+63%

フロー

クラウドサービス

828

8%

940

9%

+14%

ストック

ハードウエア

1,526

14%

1,494

14%

-2%

フロー

他社製品

220

2%

423

4%

+92%

フロー

セキュリティ対策製品

1,063

10%

1,100

10%

+3%

フロー

売上高

10,920

100%

11,000

100%

+1%

-

* 単位:百万円

 

 

売上高の推移

 

17/6期

18/6期

19/6期

20/6期

21/6期 予

ストック

1,098

1,427

1,761

2,075

2,224

フロー

7,370

9,157

8,658

8,826

8,776

ストック比率

13.0%

13.5%

16.9%

19.0%

20.2%

* 単位:百万円

 

 

(同社資料より)

 

4.中期事業計画(21/6期~23/6期)と進捗状況

【数値計画と取組み】

 

20/6期 実績

21/6期 予想

22/6期 計画

23/6期 計画

CAGR

クラウドサービス

828

940

1,300

1,600

24.6%

その他開発案件

9,029

8,960

9,500

10,600

5.5%

セキュリティ対策製品

1,063

1,100

1,200

1,300

6.9%

売上高

10,920

11,000

12,000

13,500

7.3%

営業利益

1,036

1,150

1,250

1,500

13.1%

営業利益率

9.5%

10.5%

10.4%

11.1%

-

* 単位:百万円。

 

足元、セキュリティ対策製品の伸びが鈍化しているものの、クラウドサービスが想定を上回るペースで進捗している。開発については、顧客ごとにバラツキはあるものの、クレジットカード会社中心に開発のカスタマイズや新規の開発等で堅調に推移している。

 

クラウドサービスの進捗状況

(同社資料より)

 

新たなサービスとして、ポイントシステムをサブスクリプションで提供するIPRETSの提供を開始した。地方銀行がデビットカードの付帯サービスとしてポイントサービスを導入するケースが増えており、コストを抑えるためにシステムの共同利用ニーズは強いと言う。第2四半期からの売上高寄与が予定されている。

 

IOASIS(アクワイアリングシステム:加盟店契約システム)、IFINDS(不正検知)、IGATES(ネットワーク接続:スイッチング)といった既存サービスは順調に契約者数を伸ばしている。既に 5 社と契約しているIOASISは、この実績が評価され引き合いが増えている。現在の契約先は地方銀行が中心だが、提携カードから自社発行カードに切り替える企業等に引き合いが広がっており、この 1~2 年で契約先が10社近くになる可能性があると言う。

 

この他、IFINDSはECの活況等による非対面取引の不正の増加に伴いPoC の依頼が増えており、IGATESはネットワークシステムを提供している会社からの引き合いを受けている。

新製品・新サービス開発

フロントシステムの共同化と次世代不正検知システム「FARIS」の開発に取り組んでいる。

 

フロントシステムの共同化
従来、ノンストップのサーバー(ハードウエア)と「NET+1」(ソフトウエア)をセットにしてオンプレミスで顧客のデータセンターに納入していたが、同社のデータセンターに共同で使えるシステムを構築し、サービスを提供していこうというもの。また、同社が顧客毎にハードウエアを保有し、サービスを提供していく方法も検討している。Linux OSで動くオープン系システムをにらんで開発を進めていると言う。

 

次世代不正検知システム「FARIS」
同社は、対面型取引での不正検知システムとしてトップシェアを誇る「ACE Plus」を有するが、昨今、ECの活況等による非対面取引での不正の増加に伴い、非対面を念頭に置いた不正検知システムが求められていた。こうしたニーズに応えるべく開発したのが、次世代不正検知システム「FARIS」である。このシステムは、過去の膨大なデータをAIが分析して、警告を発する。
常に新しいデータを顧客企業から取り込み、分析して、不正の手口を新しいかたちで提供していくシステムであるため、検知精度維持の必要からサブスクリプションで提供していく。既に1社と契約を締結しており、1社とは契約直前。この他、2社でPoC が進められている。

 

コーポレート・ガバナンスの強化

コーポレート・ガバナンス強化の一環として、指名・報酬委員会を設置すると共に、取締役会の機能を強化した。

 

指名・報酬委員会の設置
取締役会の諮問機関として、過半数を社外役員が占める指名・報酬委員会を設置した。前期は執行役員制度の導入、取締役候補者及び執行役員の選任、常勤取締役の報酬制度の見直し等について取締役会が検討・議論したが、取締役の報酬については、指名報酬委員会で検討・議論するかたちにした。

 

取締役会の機能強化
経営の監視(取締役)と職務執行責任(執行役員)を明確化するため、取締役会の構成を見直し執行役員制度を導入した。執行役員は取締役兼任を含む6名、取締役会は独立社外取締役2名を含む6名(取締役会の3分の1が独立社外取締役)。

 

サステナビリティレポートを発行

同社のESG課題への取組み状況の紹介を目的に、サステナビリティレポートを発行した。

 

井関会長が同社の社長に就任した5年前は、時間外の労働が多かった。このため、テレワークの環境整備や様々な制度の改定、更には、『労働時間を削減するのではなく、自分の時間をつくる』、といった観点から設置された「時間創出会議」での議論を重ねた結果、徐々に新しい働き方が根付き、労働時間が削減されていった。また、『子供は夫婦で育てる』と言う考えの下、男性社員の育休を促進した結果、男性社員の育休が増え、育休の取得率が全国平均を上回るようになった。この他、ダイバーシティも促進し、この5年間で女性社員の比率や女性管理職の比率が上昇した他、外国籍人材の採用も進んだ(現在、24 人の外国籍社員が在籍しているが、このうち19人は過去5年間での採用)。

 

5.今後の注目点

佐藤社長は、2010 年にDNPがIWIを子会社にして以来、 IC カードビジネス開発本部長、デジタルセキュリティ本部長、C&I センターセンター長として、IWIを直接担当してきた。この間に関与した新規事業の立上げにおいてIWIの支援を受けており、IWIの高速ネットワーク処理技術の高さを実感していると言う。また、CWATに代表されるセキュリティ分野での独自技術やFPGAも大きなポテンシャルであり、特にFPGAは、IWIが数年前から手掛けている技術だが、最近になって、5Gや自動運転で改めて注目されていると言う。
ICTを活用した新規事業開発の経験を活かして、IWIのポテンシャルを顕在化させると共に、新規事業に必要な創造性を植え付けることで成長を加速させる考え。今後の展開に期待したい。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

6名、うち社外2名

監査役

5名、うち社外3名

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2020年09月28日)
基本的な考え方
当社は、「次代の情報化社会の安全性と利便性を創出する」ことを経営理念に掲げており、それに則って、「高速、安全、高品質で利便性の高いIT基盤を提供する」事業を推進することによって企業価値を高め、社会に貢献することを経営方針に掲げています。当社が開発するシステムは、社会にとって必要不可欠なIT基盤(インフラストラクチャー)であり、システムの安定性を必須の条件として、高速かつ安全に取引を完遂するために、高い水準の品質が求められています。当社は、多くの開発実績と安定的な運用実績を有しており、この実績によって顧客から得られる信頼が、当社の事業を支え、発展させる基盤になるものと考えています。当社は、今後ともより多くの顧客に信頼されるIT基盤の提供を通じて、当社の事業基盤を拡大、発展させていくことで、当社のステークホルダーの期待に応えることを経営方針にしています。当社は、独立社外取締役、独立社外監査役を選任し、これら独立役員を主要な構成員とする指名・報酬委員会を取締役会の下に設置し、経営監督機能の強化を進めています。また、当社の経営と事業の状況を理解するうえで有益な情報を公正かつ速やかに開示し、市場との対話を促進することで、経営の透明性を確保することを基本方針にしています。併せて、社員のコンプライアンス意識を高めるための教育を徹底し、総合的にコーポレート・ガバナンスの充実に努めています。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
【原則4-11 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
当社の取締役会は、主に当社の親会社に主要な業務経歴をもつ者2名と、当社に主要な業務経歴をもつ者2名及び独立社外取締役2名によって構成されています。当社は、国外に重要な事業や取引先がないこともあり、外国籍をもつ取締役はいません。また、女性の取締役もいません。しかし、現在の取締役会の構成と各取締役は、当社の事業に精通し、経営に必要な専門性を有する適任者を選任した結果であり、当社は、規模と実効性の確保について問題ないものと考えています。また、性別や国籍等によって取締役候補者を選別することはしていませんので、今後の事業展開によっては、日本人男性以外の人物が当社の取締役を務めることがあると考えられます。

 

<開示している主な原則>
【原則3-1 情報開示の充実】
(1)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
当社は、「次代の情報化社会の安全性と利便性を創出する」ことを経営理念に掲げており、それに則って、「高速、安全、高品質で利便性の高いIT基盤を提供する」事業を推進することによって企業価値を高め、社会に貢献することを経営方針に掲げています。当社は、クレジットカード決済や証券取引等のオンライン、リアルタイムのネットワーク接続技術を強みとしてシステム開発を行い、顧客企業に提供しています。こうしたシステムは、社会にとって必要不可欠なIT基盤(インフラストラクチャー)であり、システムの安定性を必須の条件として、高速かつ安全に取引を完遂するために、高い水準の品質が求められています。当社は、多くの開発実績と安定的な運用実績を有しており、この実績によって顧客から得られる信頼が、当社の事業を支え、発展させる基盤になるものと考えています。当社は、今後ともより多くの顧客に信頼されるIT基盤の提供を通じて、当社の事業基盤を拡大、発展させていくことで、当社のステークホルダーの期待に応えることを経営方針にしています。

 

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
(方針)当社は、株主、投資家のみなさまをはじめ、すべてのステークホルダーに対して、当社の経営方針、事業戦略や財務情報に関する情報を、(1)正確であること(2)公平であること(3)タイムリーであること(4)わかり易いことを原則として、情報発信を行っています。また、開示資料、報告資料の英文翻訳を進めており、決算短信、四半期報告書、株主総会招集通知については、日本文による開示と同時に英語翻訳資料を開示しています。主要な適時開示資料についても、日本文資料に併せて英文資料を開示するほか、決算説明会資料も英訳し開示しています。機関投資家向け決算説明会を毎四半期実施しており、日本語と英語で作成された説明会の講演記録を開示しています。有価証券報告書については、翻訳作業に時間がかかるため、作業の完了後速やかに開示しています。投資家の関心が高いESG課題への当社の取組みについても、日本語と英語による報告書を作成して、当社ウェブサイト等で開示しています。

 

 

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