ブリッジレポート
(3189) 株式会社ANAP

スタンダード

ブリッジレポート:(3189)ANAP 2020年8月期決算

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家髙 利康 社長

株式会社ANAP(3189)

 

 

企業情報

市場

東証JASDAQ

業種

小売業(商業)

代表取締役社長

家髙 利康

所在地

東京都港区南青山4-20-19

決算月

8月末日

HP

https://www.anap.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

512円

4,815,800株

2,465百万円

-24.5%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

4.00円

0.8%

18.13円

28.2倍

304.07円

1.7倍

*株価は10/22終値。20年8月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年8月(実)

6,845

202

201

187

44.87

5.00

2018年8月(実)

6,627

349

340

255

58.53

6.00

2019年8月(実)

6,261

88

91

62

14.39

6.00

2020年8月(実)

5,659

-329

-284

-371

-85.47

3.00

2021年8月(予)

6,701

93

92

81

18.13

4.00

*予想は会社側予想。18年8月期より連結決算。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

株式会社ANAPの2020年8月期決算概要、今後の取り組み等をお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年8月期決算概要
3.2021年8月期業績予想
4.課題と今後の取り組み
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2020年8月期の売上高は前期比9.6%減の56億59百万円。新型コロナウイルスや天候の影響で店舗販売事業は2桁の減収。インターネット販売事業も減収。粗利減により営業利益は3億29百万円の損失。自社サイト及び全社資産のソフトウェアに加え不採算店舗における減損損失81百万円を計上。当期純損失は3億71百万円となった。

     

  • 21年8月期の売上高は前期比18.4%増の67億1百万円、営業利益は前期の損失から93百万円の黒字へ転換の予想。新型コロナウイルスの影響を見込み経営環境が厳しい中でも店舗、インターネット共に通常運転体制へ回帰する。また、海外FC事業、子会社による幹細胞バンキング事業等の新規事業の収益化も見込んでいる。主として人件費、物流費など全社的なコストダウンも並行して遂行する。不要不急の外出自粛が叫ばれる中でも、ファッションの楽しさを追求していくことは自社の使命であるとの思いを全社員が共有しており、ブランドのコンセプトメイキングにも一層注力する。

     

  • 予想に織り込んでいない要素としては、アップサイドにおいて「コロナ収束による反動増」「国内の追加の新規出店」「海外でのEC展開」「子会社によるシステム開発案件」などを、ダウンサイドにおいて「コロナ禍長期化による店舗の集客力ダウン」を挙げている。配当は1円増配の4円/株の予想。予想配当性向は22..1%。厳しい事業環境でも安定的な配当を実施する。

     

  • 同社では、構造的な不況に加え今後のコロナ禍の状況によってはアパレル事業のビジネスモデルを継続することは、中長期的には大きなリスクとなり、ビジネスモデルの変革が不可欠であると考えている。そこで、既存事業を立て直し、確実に収益を獲得しながら、早期に新規事業による収益の確立を目指していく。既存事業においてはEC及び店舗における顧客接点の強化、新規事業においては海外FC展開および子会社による再生医療ビジネスに注力する。

     

  • 今期(2021年8月期)は、「先行投資期間と位置づけ、利益は確保しながら将来の成長のための種撒きを行う」期間と位置付けてきた3年間の最後の年であり、新型コロナウイルスという想定外の影響があったものの、2022年8月期以降の「世の中の変化に柔軟に対応できるような体制を目指し、グループの成長を加速させる」ステージに向かうための重要な1年と同社では認識している。

     

  • そのための種撒きとしては、海外事業展開および再生医療ビジネスへの参入に向けたアライアンス締結という形を実現することができた訳だが、今期の売上高67億円、営業利益93百万円の黒字転換という予想は「海外FC事業、子会社による幹細胞バンキング事業等の新規事業の収益化」を前提としている。新型コロナウイルスの影響が依然不透明な中、2事業を想定通り収益化することができるか、収益回復への道筋を示すことができるのか、が注目される。

     

1.会社概要

10代~20代の若年層女性を主要顧客層とし、「ANAP」ブランドを中心としたカジュアルファッションを提供。常にお客様目線を大切にし、おしゃれを楽しみたい女性のニーズに応えるため、欲しいものが手頃な価格でいつでも手に入る、ファッションを「オンタイム」で楽しめる「現在(いま)」を提案することを企業理念として掲げている。「ブランド認知度の高さ」、「オンラインショッピングサイトの販売力」も大きな強み。「SS(春夏)ブランドからの脱却」、「フルシーズン型ブランドへの進化」を目指している。
また子会社 株式会社ANAPラボのAI技術を用いた再生医療関連の事業化にも取り組んでいる、

 

【1-1 沿革】

1992年、中島 篤三氏が「株式会社エイ・エヌアートプランニング」を設立し、小売業をベースとしたマーケット・イン型企業として店舗を展開。個性的でリーズナブルな普段使いの衣料品を展開する「ANAP」は、ファッションに敏感な10代~20代の女性から高い支持を得る。
一方、当初より同社専務取締役であった現代表取締役社長の家髙 利康氏が運営する「株式会社ヤタカ・インコーポレーテッド」は、製造・卸によるプロダクト・アウト型企業として自社ブランドを展開していたが、フランチャイズとして「ANAP」ブランドの販売にも参画し、フランチャイズ11店舗を出店。両社は緊密な協力関係を構築していった。
両氏ともにファッション業界を取り巻く時代の変化を感じる中、お互いの強みを融合させることにより強力なシナジー効果を追求することができ、それが今まで以上に顧客目線を重視した経営に繋がると判断し、2006年8月、両社は合併。翌2007年、社名を現在の「株式会社ANAP」に変更した。

 

「ANAP」をメインブランドとしながら、コンセプトの異なる多種多彩なサブブランドを展開して、幅広い顧客ニーズをとらえると共に、原宿、渋谷など首都圏を起点としつつ、イオンモールなど大型ショッピングモールへの出店も進めて全国へ店舗を展開。
2002年1月には独自の自社ブランド販売サイト「ANAPオンラインショップ」を開設するなど、業界の中でもインターネット販売にいち早く着手し、2013年9月には、(株)スタートトゥデイ(現㈱ZOZO)(東証1部、3092)が運営するアパレル専門ネット通販「ZOZOTOWN」への出店も開始。2013年11月、東京証券取引所JASDAQ市場に上場した。2017年9月には子会社(株)ATLAB(現(株)ANAPラボ)を設立し、AIの利用を中核としたEC総合コンサルティング事業を開始したほか、アパレル事業の厳しい事業環境を踏まえ、再生医療ビジネスへの参入など、ビジネスモデルの変革にも取り組んでいる。

 

【1-2 企業理念など】

「仕事は楽しく」「現場主義」を基本理念に掲げ、ファッションが大好きな社員が、商品を着こなし、自分たちの思いのままのファッションを表現できる、また、風通しのよい環境を作りながら、顧客にも「楽しいショッピング」をしてもらえるSHOP作りを事業の基本としている。

 

【1-3 市場環境】

同社の主要顧客層は、以前は10代~20代の女性であったが、最近はエイジレスの傾向も強くなっている。同社の調べによれば、アパレル業界においては市場全体の約6割強を占める婦人服市場に属している。また、婦人服の販売チャネルでは、百貨店が下降傾向にあるのに対し、専門店、ネット販売等が上昇傾向にあり、今後もインターネットを通じた販売の比率(EC化率)も上昇が予想されている。
こうしたことから、同社は業界では高い水準の売上構成比をもつインターネット販売を軸に様々な取り組みを進めている。

 

【1-4 事業内容】

メインブランド「ANAP」を中心に、リーズナブルにおしゃれを楽しみたいという、多様なニーズをとらえるため、幅広い年齢層から支持されている全国ブランド、定番もの、流行もの、個性的アイテムまでコンセプトの異なるサブブランドを数多く展開している。豊富なアイテム数とリーズナブルな価格設定が特長となっている。
近年は新しい年齢層のANAP KIDSやANAP GiRLに注力しながら、小物類についてもブランドとして扱っている。2020年8月末現在、ANAPを始めとした12の主要ブランドを展開。これを店舗、インターネット、卸売の3形態で販売している。
セグメントは、「インターネット販売事業」「店舗販売事業」「卸売販売事業」「その他」の4つ。
子会社株式会社ANAPラボでは、AI技術の利用を中核としたEC総合コンサルティング事業や再生医療ビジネスも手掛けている。

 

(1)インターネット販売事業
「2020年8月期 売上高 3,257百万円(売上構成比 57.6%)、セグメント利益 7百万円」
業界に先駆けて2002年1月より「ANAPオンラインショップ」としてANAPブランドのショッピングサイトの運営を開始した。2020年8月末の会員数は約115万人。
常時豊富な自社商品を品揃えしつつ、ANAPカラーを全面に押し出したPOPなデザインのサイトで、ターゲットとする年代層向けに、ファッション雑誌を見ているかのような感覚や、ウィンドウショッピングを楽しんでいるかのような感覚になれることを意識して、掲載商品をコーディネートし、顧客が自ら着用した姿をイメージしやすくするといったサイト作りに力を入れている。

 

 

 

 

(同社提供)

 

同サイトはシステムに詳しい家髙社長自らが深く関わり自社開発したシステムによって構築されたサイトである点が大きな特徴となっている。
受注管理、売上管理、在庫管理、購入分析などを自社で一元的に管理している他、自社開発であるため、新たな機能の追加や従来機能の改善が容易であるというメリットがある。例えば、オンラインショップ担当スタッフが発案した顧客に楽しんでもらうためのアイディアや、顧客からのリクエスト等を即座にサイト上に反映して表現することができる。同社の商品戦略を機動的に実現する重要な仕組みとなっている。

 

同サイトにアクセスしてみると、例えば、「期間限定の均一セール」、「会員限定の送料無料キャンペーン」といったイベントが行われていることが分かるが、その内容は随時、極論すればアクセスの度に異なっており、その動的コンテンツのためにユーザーにとって魅力的なWebsiteとなっている。
こうした仕組みも自社開発したシステムによる自動プログラミングで実行されているため、極めて効率的にキャンペーンを展開することが出来るようになっている。
また、消費者のユーザビリティーを常に考慮し、使用デバイスとしてもPC、携帯を経ていち早くスマートフォン、タブレットへの対応も進めてきた。スマートフォンではデータ量の大きい画像への対応が必須だが、クラウドの利用などでこの課題をクリアしている。

 

また2017年から「ANAP」ブランドと親和性の高い様々なブランドの誘致を開始し、現在はプラットフォーマーとしての役割も持つようになっている。「GUESS」や「Devirock」など2020年8月末時点で11の他社ブランドの販売を行っている。

 

さらに自社サイトのみでなく様々なサイトに多くのアイテムを出品する必要があるとの考えから、 (株)ZOZOが運営するアパレル専門ネット通販「ZOZOTOWN」、ネット通販大手「Amazon」、CROOZ SHOPLIST株式会社が運営するファストファッションサイト「SHOPLIST.com by CROOZ」など他社サイトでの商品販売にも力を入れている。2020年8月末現在で15のサイトで展開している。
また長年にわたり蓄積してきた豊富なデータを活かし、AI(人工知能)を利用した革新的なウェブサイトの開発・運営による更なる事業成長を目指している。

 

(2)店舗販売事業
「2020年8月期 売上高 2,157百万円(売上構成比 38.1%)、セグメント損失 16百万円」

 

「ANAP」とそのサブブランド等からなるANAPブランドの主要な販売チャネルとして原宿等に位置する路面の旗艦店舗、各地のファッションビルおよび郊外に位置する大型ショッピングモールへの出店など、全国に29店舗を展開している。(2020年8月末現在)

 

店舗販売の不振から再生プロジェクトにおいて不採算店の整理を推進してきたが、「顧客にANAPブランドの魅力を実感してもらうためのチャネル」、「市場動向、流行、顧客ニーズを掴むためのアンテナ」、「インターネット販売への導線」としての重要性、位置づけに変わりはないため、条件を精査した上での新規出店を進めている。

 

「ANAPジョイナス横浜店」

 

「ANAP 原宿竹下通り店」

 

「ANAP GiRL原宿竹下通り店」

 

 

(同社提供)

 

(同社資料より)

 

(3)卸売販売事業
「2020年8月期 売上高 207百万円(売上構成比 3.7%)、セグメント損失 18百万円」

 

全国のセレクトショップ向けに卸売販売を行っている。「ANAP」の各ブランドは他社バイヤーに対しセレクト商品を納品し、「Factor =」、「AULI」のブランドについては展示会受注によって商品を納品している。

 

2.2020年8月期決算概要

(1)連結業績概要

 

19/8期

構成比

20/8期

構成比

対前期比

売上高

6,261

100.0%

5,659

100.0%

-9.6%

売上総利益

3,717

59.4%

3,260

57.6%

-12.3%

販管費

3,628

58.0%

3,590

63.4%

-1.1%

営業利益

88

1.4%

-329

-

-

経常利益

91

1.5%

-284

-

-

当期純利益

62

1.0%

-371

-

-

*単位:百万円。

 

減収・損失幅拡大
売上高は前期比9.6%減の56億59百万円。新型コロナウイルスや天候の影響で店舗販売事業は2桁の減収。インターネット販売事業も減収ながら、一時全店休業を余儀なくされた店舗販売事業をカバーした。
コスト削減につとめたが新規出店費用や広告宣伝費用が増加し、営業利益は3億29百万円の損失。
自社サイト及び全社資産のソフトウェアに加え不採算店舗における減損損失81百万円を計上。当期純損失は3億71百万円となった。

四半期ベースでは、第1四半期から第3四半期は暖冬の影響、コロナ禍で営業損失が続いたが、第4四半期は店舗営業再開やコストダウン施策で黒字に浮上した。

 

(2)セグメント別動向

 

19/8期

構成比

20/8期

構成比

対前期比

売上高

 

 

 

 

 

インターネット販売事業

3,505

56.0%

3,257

57.6%

-7.0%

店舗販売事業

2,471

39.5%

2,157

38.1%

-12.7%

卸売販売事業

230

3.7%

207

3.7%

-9.6%

その他

54

0.9%

36

0.6%

-33.0%

合計

6,261

100.0%

5,659

100.0%

-9.6%

営業利益

 

 

 

 

 

インターネット販売事業

218

6.2%

7

0.2%

-96.8%

店舗販売事業

196

8.0%

-16

-

-

卸売販売事業

-14

-

-18

-

-

その他

19

36.4%

0

1.4%

-97.4%

調整額

-331

-

-301

-

-

合計

88

1.4%

-329

-

-

*単位:百万円。営業利益の構成比は売上高営業利益率。その他はライセンス事業を含む。

 

◎インターネット販売事業
全店休業の中で、EC販売比率50%以上という特徴が功を奏した。店舗の売上減少を完全にカバーすることはできなかったが、緊急事態宣言下であった第3四半期(3-5月)の売上高は前年同期比76.7%と、ダメージを軽減することができた。
自社サイトにおいては、4月以降外出自粛の影響もあり、前期から注力している流入強化を目的とした広告配信等プロモーション施策が効果を見せ始めている。ただ、新規客向けの広告効果、企画の一新もあり、新規客は順調に増えるも(前期比+8%)、購買率の高い既存客の減少(同-5%)が減収に繋がった。
他社ECは出店サイト数に大きな変動はなく、伸長もなかったもののコロナ禍で安定した売上は確保した。
売上高構成比は年度通じてほぼ横這い。

 

 

◎店舗販売事業
退店3店舗、出店4店舗の結果、期末店舗数は29店舗となった。新規出店は約5年ぶり。旗艦店であるANAP原宿竹下通り店を3月にリニューアルした。

 

3月から店舗の休業が相次ぎ、4月の緊急事態宣言の発出を受け、全28店舗の休業を決定、また新規出店1店舗のオープンを延期した。
5~6月に入り営業が再開された店舗は、自粛疲れの反動の勢いも追い風に、好調に推移し、新規出店した店舗も順調な滑り出しをみせたが、同社が最も得意とする7月に入ってから、感染者数が再拡大に転じ、店舗においては来店客数が減少。さらに気温が上がらず梅雨明けが大幅に遅れるなど悪天候の影響も受け、再び厳しい経営環境に見舞われた。
ただ、平時は既存店、新店とも堅調に推移した。特に新店は開店直後から予想を大きく上回る売上となり、足元でも好調に推移している。
店舗での営業ができない中でもブランドの魅力を発信するため店舗スタッフによるリモート接客「ANAP HOSPITALITY」を展開したほか、ライブコマース「ANAP insta LIVE」を実施し販売を促進。営業再開後も継続して行っている。

 

◎卸売販売事業
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で既存の取引先の状況も悪化しており、減収。損失はやや拡大。

 

◎その他
ライセンス事業において、ANAPスナック、ANAPヘアアイロン、ANAP UVシリーズなどタイアップ製品をリリース。大手コンビニ・スーパーやディスカウントストア、ドラッグストアなどで商品展開を進めてブランド認知拡大を図った。

 

(3)子会社 株式会社ANAPラボ概況

◎単体業績

 

19/8期

20/8期

対前期比

売上高

50,180

48,468

-1,711

営業利益

-1,491

-1,831

-339

経常利益

-1,550

-1,893

-342

当期純利益

-2,547

122

+2,670

*単位:千円。

 

コロナ禍でもシステム開発及びコンサルティング等で安定した売上を確保した。研究開発費等の計上もあったが、当期純利益では設立3期目にして初の黒字化を達成した。
AIを利用した画像切抜技術Labpick(ラボピック)サービスを開始したほか、ビジネスモデルの変革を目指し、後述のように再生医療事業に参入した。

 

(4)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

19年8月末

20年8月末

 

19年8月末

20年8月末

流動資産

2,250

2,012

流動負債

922

1,039

 現預金

897

858

 仕入債務

212

192

 売上債権

491

337

 短期借入金

450

600

 たな卸資産

793

715

固定負債

293

326

固定資産

637

715

 

 

 

 有形固定資産

162

232

負債合計

1,215

1,365

 無形固定資産

93

36

純資産

1,672

1,362

 投資その他の資産

382

446

 利益剰余金

830

432

資産合計

2,888

2,728

負債純資産合計

2,888

2,728

 

 

 

自己資本比率(%)

57.7

50.0

*単位:百万円。

 

売上債権、たな卸資産の減少などで資産合計は前期末比1億59百万円減少し27億28百万円となった。借入金の増加等で負債合計は同1億49百万円増の13億65百万円。
利益剰余金の減少などで純資産は同3億9百万円減少の13億62百万円。
この結果、自己資本比率は前期末より7.7%低下し50.0%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

19/8期

20/8期

増減

営業CF

-222

-44

+177

投資CF

-200

-119

+80

フリーCF

-422

-164

+258

財務CF

-47

125

+173

現金同等物残高

897

858

-38

*単位:百万円

 

税金等調整前当期純損失は拡大したが、たな卸資産の減少等で営業CFおよびフリーCFのマイナス幅は縮小。
前年同期にあった自己株式の取得による支出が減少し財務CFはプラスに転じた。
キャッシュポジションはほぼ変わらず。

 

(5)トピックス

◎子会社ANAPラボが再生医療分野で業務提携契約を締結
2020年6月、子会社である株式会社ANAPラボが、再生医療コンサルティング事業などを手掛ける株式会社ASメディカルサポート(本社 福岡県)と、自己脂肪由来幹細胞のバンキング事業及び自己脂肪由来幹細胞治療のための研究・開発に関する業務提携契約を締結した。

 

(株式会社ASメディカルサポート概要)
2017年設立。再生医療コンサル事業を中心に事業展開しており、提携先医療機関において、日本で初めて、幹細胞バンキングを利用した自己脂肪由来幹細胞を用いた脳血管障害をはじめ複数の対象疾患の治療について厚生労働省に再生医療等提供計画書を提出し、受理され治療を開始している。自己脂肪由来幹細胞のバンキング事業及び自己脂肪由来幹細胞治療のための研究・開発の分野においては、着実な成果をあげている。
2019年12月期 売上高301百万円、営業利益29百万円、総資産268百万円、純資産37百万円。

 

(業務提携の内容)
これまでANAPラボは、AI技術を駆使しファッション領域を中心としたシステム開発事業等を行ってきたが、昨今の新型コロナウイルスの爆発的流行による混乱の中、時代の変化に対応すべく、このAI技術を再生医療の分野でも展開する可能性について検討していた。
そうした中、ANAPラボが持つAI技術を用い、ASメディカルサポートとともに自己脂肪由来幹細胞のバンキング事業の最適化をすすめ、自己脂肪由来幹細胞を用いた新型コロナウイルス(COVID-19)によるARDS(急性呼吸窮迫症候群)の治療のための共同研究・開発を行うことは社会的課題解決にとって大きな意味があると考え、今回のアライアンスに至った。
また急性期疾患には幹細胞治療が有効と言われていることから、脳梗塞・脊髄損傷についても今後研究・開発を行っていく。

 

*業務提携の主な内容
①自己脂肪由来幹細胞のバンキングに関わる共同事業
②自己脂肪由来幹細胞を用いた新型コロナウイルス(COVID-19)によるARDS(急性呼吸窮迫症候群)の治療のための共同研究・開発

 

◎子会社ANAPラボが大型受注
2020年7月、子会社 株式会社ANAPラボが、株式会社ASメディカルサポートとの提携業務に基づき、人工知能(AI)の各種技術を応用したシステム開発の大型案件を受注したと発表した。

 

ANAPラボはAIを活用したシステムの開発を行っており、その技術力は高い評価を受けている。
今回受注したシステム開発は、株式会社AS メディカルサポートとの提携業務における主目的である幹細胞バンキング事業のうち、ANAPラボが担当するAIによるバンキング施設運営に関するシステム受注である。

 

(受注内容)
ASメディカルサポートが運営する「福岡再生医療センター」(福岡県西区豊浜)及び千葉県木更津市に計画する「東日本再生医療センター(仮)」における幹細胞バンキング施設内のシステム開発全般。
受注金額は総額2億円で、2020年8月期から2021年8月期にかけて売上に計上する予定である。

 

◎株式会社ASメディカルサポートと資本提携
2020年8月、株式会社ANAPラボと株式会社ASメディカルサポートの業務提携にとどまらず、更に両者の協業により成果を上げ、両者の共創体制をより一層確固たるものとすべく同社と資本提携を実施することとした。

 

(資本提携の内容)
両者は、相互に相手方の株式を市場外の取引等により取得するが、取得金額は軽微であり、出資比率についても相互に関連会社とはならない範囲の比率。
*新たに取得するASメディカルサポートの株式又は持ち分の取得価額:普通株式66株、約60百万円
*ASメディカルサポートに新たに取得される株式の数及び発行済株式数に対する割合:普通株式102,300株、2.1%

 

◎子会社ANAPラボが新規事業を開始
2020年9月、株式会社ANAPラボが新規事業(猫の腎障害治療及び製薬化に向けたAI技術の導入)を開始すると発表した。

 

(新規事業開始の趣旨)
これまでANAPラボは、AI技術を駆使しファッション領域を中心としたシステム開発事業等を行ってきたが、株式会社ASメディカルサポートと自己脂肪由来幹細胞のバンキングに関わる共同事業に関わる業務提携契約を結ぶなど再生医療分野でのAI技術の活用をすすめている。
今回、アライアンス先であるASメディカルサポートが学校法人日本医科大学と開始した「動物再生医療の分野において製薬化を目指した共同研究」において、猫の腎障害治療及び製薬化向けAI技術の導入により参画し、新規事業として取り組みを開始する。

 

(新規事業の内容)
①猫の腎障害早期診断マーカーの検索及び本研究へのAI技術の導入
猫の腎障害を初期段階で判定する方法に対し、AI技術を用いてシステム確立を行うことを目的としている。
SDMA, クレアチン、炎症マーカー(SAA)、および腎障害部の画像(腹腔鏡により得る)を組み合わせて解析し、これに動物の臨床症状、また治療方針として猫脂肪由来幹細胞上清液を用いて腎障害の治療を行うことによる治療経過の確認・検証及びフード・薬使用の有無等のパラメーターを加えると莫大なデータになるが、これらパラメーターの相関関係の解析に対してAI技術を導入する。
その結果、腎障害の初期診断基準の作成が可能になる。

 

②AI技術による猫脂肪由来幹細胞上清液中の有効成分の解析
初期段階では傷害の周囲にかなり正常細胞が残っており猫脂肪由来幹細胞上清液を投与することにより正常細胞の分裂を促進し傷害部を修復することが考えられる。
その実証のため培養上清中の成長因子(FGF, VEGFなど)、サイトカイン(アディポネクチンなど)の量とその治療効果の解析、これらマーカーの変動(改善)と上清液中の有効成分の相関関係の解析をAIで行う。
これにより投与時期、投与量、投与法などを確定することが可能となる。

 

(今後の方針)
一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」によると2017年度の国内猫飼育数は953万匹(前年比2.3%増)で、そのうち猫全体の平均寿命は15.03歳となっている。
また猫腎不全による死亡率は12.1%(英:ロイヤル獣医大学による)であるため死亡数は7.7万匹と推定されており、国内の腎不全市場は年間約200億円(年間平均診療費約27万円:アニコム損保調べ)と想定される。
このAI技術の導入は腎障害以外の他の疾患にも応用が可能。
2022年には製薬化を実現し、獣医領域における幹細胞療法の新しいシステムを構築し、将来的にはヒトへの応用を目指す。

 

 

◎株式会社アセアンビューティホールディングスと業務提携契約を締結
2020年8月、効率的な海外事業展開を目指し、株式会社アセアンビューティホールディングス(東京都)と業務提携を行った。

 

(株式会社アセアンビューティホールディングス概要)
2019年9月設立。美容サロンの開業支援及び経営支援サービス・化粧品の開発、製造、販売、メンテナンス及び輸出入・美容機器の開発、製造、販売、メンテナンス及び輸出入などを手掛ける。
既にエステサロン「ベルルミエール」をフィリピンで13店舗を展開するなど、ASEAN地域のビジネスで先行しており、今後は同地域においてアパレル関連を含む小売業の店舗展開を予定している。

 

(業務提携の理由・背景)
ANAPは「ANAP」ブランドを中心に、カジュアルファッションの販売を行っているが、課題として国内マーケットの伸び悩みを認識しており、海外事業展開についても模索してきた。近年小売業の海外展開、中でもASEAN地域での成長は目覚ましいものがある。

 

ANAPでは、海外進出にあたり、下記の理由から、ASEAN諸国の中でも高い成長性をもつフィリピンに進出することが最も効率的に展開できると判断した。
*フィリピンでは既に日系の小売業が出店を成功させており、多くの日本法人が黒字化を達成するなどASEANで最も成功しやすい国と言われている。
*集客数が1日10万人超とも言われる世界最大級のショッピングモールが多数あり、同社の日本における店舗展開もショッピングモールが中心であることから自社の営業戦略が最も展開しやすい国である。
*同社が展開するブランドは春夏期に強いという特徴があり、現地の年間を通じた高温多湿な気候もマッチしている。
*フィリピンはインターネットとSNSの利用時間が大きいと言われており、ANAPの強みであるECを展開し、将来的にはECとショッピングモールでの店舗展開を両立する環境の構築を目指す。

 

当面は店舗開発スピードを優先して、フランチャイザーとして進出し、現地でのブランディング強化を行う。そのために、現地事業展開ですでに実績を有するアセアンビューティホールディングスと業務提携契約を締結することとした。

 

(業務提携の内容)
①フィリピン国内での「ANAP」ブランドのフランチャイズ展開・商品提供
②フィリピン国内でのPRイベントにおける共同事業
③フィリピン国内での自社商品の生産体制構築
④ASEAN向けECプラットフォームの共同開発

 

3.2021年8月期業績予想

(1)業績概要

 

20/8期

21/8期(予)

対前期比

売上高

5,659

6,701

+1,042

営業利益

-329

93

+422

経常利益

-284

92

+376

当期純利益

-371

81

+452

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

 

21/8期上

前年同期比

21/8期下

前年同期比

売上高

3,230

+280

3,471

+762

営業利益

-51

+136

144

+286

経常利益

-52

+140

144

+236

当期純利益

-58

+248

139

+204

*単位:百万円。いずれも会社側予想。

 

増収、黒字転換
売上高は前期比18.4%増の67億1百万円、営業利益は前期の損失から93百万円の黒字へ転換の予想。
新型コロナウイルスの影響を見込み経営環境が厳しい中でも店舗、インターネット共に通常運転体制へ回帰する。また、海外FC事業、子会社による幹細胞バンキング事業等の新規事業の収益化も見込んでいる。主として人件費、物流費など全社的なコストダウンを並行して遂行する。
不要不急の外出自粛が叫ばれる中でも、ファッションの楽しさを追求していくことは自社の使命であるとの思いを全社員が共有しており、ブランドのコンセプトメイキングにも一層注力する。

 

予想に織り込んでいない要素としては、アップサイドにおいて「コロナ収束による反動増」「国内の追加の新規出店」「海外でのEC展開」「子会社によるシステム開発案件」などを、ダウンサイドにおいて「コロナ禍長期化による店舗の集客力ダウン」を挙げている。

 

配当は1円増配の4円/株の予想。予想配当性向は22.1%。厳しい事業環境でも安定的な配当を実施する。

 

4.課題と今後の取り組み

(1)認識する課題

アパレルビジネスは、構造的な不況からの脱却ができないまま、新型コロナウイルス感染拡大の打撃を受け未曽有の危機に直面している。
外部要因に起因する課題としては、「コロナ渦による消費行動の変化」「冷夏暖冬など天候への対応力」「ファッションEC競争の激化」、内部要因に起因する課題には「顧客戦略力(顧客囲い込み)の不足」「売上減による本部コストの負担増加」を認識している。

 

さらに今後のコロナ禍の状況によってはアパレル事業のビジネスモデルを継続することは、中長期的には大きなリスクとなりうると考えおり、ビジネスモデルの変革が不可欠である。

 

(2)今後の取り組み

既存事業を立て直し、確実に収益を獲得しながら、早期に新規事業による収益の確立を目指す。それぞれ以下のような取り組みを進めていく。

 

①既存事業
*EC顧客接点の強化
顧客との双方向のコミュニケーション強化を実現し、OMO(※)を推進する。
前述のように、コロナ禍を契機として新たな顧客接点としてライブコマースを強化している。著名インフルエンサーのゲスト出演等を検討中である。
また、ANAP公式VTuber(※)を近日デビューさせる予定である。

 

※OMO:「Online Merges with Offline」。オンラインとオフラインを併合するマーケティング手法。
※VTuber:「Virtual YouTuber」。YouTube上で動画を投稿したりライブ配信をしたりするキャラクター。

 

*新規出店
実店舗の販売力、ブランド浸透力はアフターコロナという時代を考えた場合も、無視することはできないと判断している。加えて、コロナ禍によりアパレル各社の実店舗の収益は悪化しているため、好条件の案件が増加している。
また、都市部への出店によるブランド浸透はEC流入増にもつながるため、年間5~10店舗の出店を目指していく。売上減で負担の増加した本部コストを吸収できるよう、事業構造の修復に取り組む。

 

②新規事業
*海外展開
株式会社アセアンビューティホールディングスとのアライアンスをベースに、ASEAN地域での展開を目指す。
まずはショッピングモール大国と言われ、年間を通じた高温多湿な気候、若年層の多いフィリピンで海外FCや海外ライセンスの展開を開始する。
FC店舗数は3年で30店舗、10年間の売上は年率20%成長と、投資リスクを抑制しつつハイスピードで大きな収益を見込んでいる。

 

*再生医療ビジネス
「トピックス」で紹介したように、2020年6月、子会社である株式会社ANAPラボが、再生医療コンサルティング事業などを手掛ける株式会社ASメディカルサポート(本社 福岡県)と、自己脂肪由来幹細胞のバンキング事業及び自己脂肪由来幹細胞治療のための研究・開発に関する業務提携契約を締結した。

 

◎幹細胞治療とは?
ヒトの体は37兆個以上、200種類以上の細胞で構成されていると言われている。
ヒトは、もともとは1つの受精卵から始まり、分裂、増殖を繰り返しながら、神経細胞、心筋細胞、肝細胞など、成体を構成する様々な細胞に分化(変化)していく。ヒトの体の中には、このように最終的に分化した細胞と分化途上の細胞が存在しており、前者を体細胞、後者を幹細胞と言う。
体細胞(通常の細胞)は、細胞分裂により自身のコピーを作り、体を維持しているが、血液の細胞は血液に、皮膚の細胞は皮膚にといったように自分と同じ細胞にしか成長できない。
これに対し、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞などに代表される幹細胞は、限定された範囲内ではあるが自身以外の各種の細胞に分化する。

 

様々な細胞や臓器へ成長し変化することの出来る幹細胞の特長を活かし、体細胞自身では修復や再生ができなかった臓器の修復や再生を目指すのが再生医療の一つ「幹細胞治療」である。
対象となる疾患は、糖尿病、肝疾患、腎疾患、変形性関節症、半月板損傷、脳梗塞、動脈硬化などが挙げられている。
具体的には、患者自身の幹細胞を取り出し培養により増殖を行い投与するため、拒絶反応や合併症、倫理的なリスクが小さいと言われている。
再生医療においては同じ幹細胞の一種である「iPS細胞」「ES細胞」が有名だが、これらが腫瘍化リスクや倫理面での課題が指摘される一方、「幹細胞治療」は安全性が高いこともあり、再生医療分野の中でも先進的な治療として拡大中である。

 

◎ANAPラボの役割
現在の治療に用いられている幹細胞の多くは、骨髄液から採取した骨髄由来幹細胞、脂肪組織から採取した脂肪由来幹細胞などである。
ANAPラボのアライアンス先である、ASメディカルサポートが手掛ける自己脂肪由来幹細胞は、含有量が多い、産生する各種因子の量が多い、免疫抑制機能が強い、採取にあたり患者への負担が少ないなどのメリットがある。

 

ASメディカルサポートは細胞培養加工施設(CPC:Cell Processing Center)において幹細胞の培養を行っているが、ANAPラボはそのAI技術を活用し、培養の最適化を図る。幹細胞治療の拡大に伴い、ASメディカルサポートでは福岡や千葉を始めとしてCPCを拡張中である。

 

ANAPラボ及びASメディカルサポートでは、幹細胞バンキング事業を確立させ、その後、幹細胞を利用した化粧品開発やエステサロンでの利用など、様々なビジネスへの展開を予定している。

 

5.今後の注目点

今期(2021年8月期)は、「先行投資期間と位置づけ、利益は確保しながら将来の成長のための種撒きを行う」期間と位置付けてきた3年間の最後の年であり、新型コロナウイルスという想定外の影響があったものの、2022年8月期以降の「世の中の変化に柔軟に対応できるような体制を目指し、グループの成長を加速させる」ステージに向かうための重要な1年と同社では認識している。
そのための種撒きとしては、海外事業展開および再生医療ビジネスへの参入に向けたアライアンス締結という形を実現することができた訳だが、今期の売上高67億円、営業利益93百万円の黒字転換という予想は「海外FC事業、子会社による幹細胞バンキング事業等の新規事業の収益化」を前提としている。
新型コロナウイルスの影響が依然不透明な中、2事業を想定通り収益化することができるか、収益回復への道筋を示すことができるのか、が注目される。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最新更新日:2019年12月6日

 

1.基本的な考え方
当社は、カジュアルファッションを扱うアパレル企業として継続的な成長、企業価値の拡大、経営の安定化を実現するため、コーポレート・ガバナンス体制をより強固にすることが重要な経営責務であると認識しております。また、株主の皆様をはじめ顧客、取引先、従業員、地域社会など、すべてのステークホルダーの利益を遵守しつつ、公正で透明性の高い経営、経営監視機能の強化、経営効率の向上、法令遵守の徹底に努めております。

 

【コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由】
当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則に則り、実施しております。

 

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