ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

プライム

ブリッジレポート:(6498)キッツ 2020年12月期第1四半期決算

ブリッジレポートPDF

 

堀田 康之 社長

株式会社キッツ(6498)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

機械(製造業)

代表者

堀田 康之

所在地

千葉県千葉市美浜区中瀬1-10-1

決算月

12月

HP

https://www.kitz.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

610円

90,879,935株

55,436百万円

6.5%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

7.00円

1.1%

18.71円

32.6倍

810.68円

0.8倍

*株価は08/28終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期末実績、BPSは20年12月期第1四半期実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

114,101

8,929

8,799

5,400

51.43

13.00

2018年3月(実)

124,566

10,117

9,733

6,518

65.50

17.00

2019年3月(実)

136,637

11,713

11,883

5,625

58.50

20.00

2020年3月(実)

127,090

6,950

7,241

4,937

53.06

20.00

2020年12月(予) *

81,500

3,200

2,800

1,700

18.71

7.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。2020年12月期は決算期変更のため9ヶ月決算。

 

 

(株)キッツの2020年12月期第1四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年12月期第1四半期決算概要
3.2020年12月期業績予想
4.今後の注目点
参考:ESGを軸にした取り組みとSDGsのゴール>
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 20/12期1Q(4-6月)は前年同期比6.9%の減収ながら、30.8%の営業増益。バルブ事業は半導体製造装置向けの好調等でコロナ禍や原油価格下落等の影響をほぼ吸収したが、伸銅品事業が大幅減収となった他、コロナ禍でその他事業が大きく落ち込んだ。ただ、収益性の高い半導体製造装置向けの寄与に加え、前年同期は基幹システム更新に伴うオペレーションの乱れでバルブ事業の利益水準が低かったこともあり、大幅な営業増益となった。

     

  • 決算期変更のため9ヶ月決算となる20/12期予想は、前期3Q(累計)との比較で13.4%の減収、同36.1%の営業減益。伸銅品事業は2Qの底打ちを見込むが、バルブ事業は期末にかけて減収となる見込み。利益面では、コスト削減を徹底するものの、減収によりバルブ事業の利益率が悪化する他、伸銅品事業やその他では営業損失が見込まれる。配当は、2Q末4円、期末3円の年7円を予定(予想配当性向37.4%)。8月に終了した自己株式の取得を反映した総還元性向は140.3%となる見込み。

     

  • 2Q以降、事業環境は更に厳しさを増していく。国内では、設備投資の落ち込みで工業用バルブの苦戦が続き、海外では、コロナ禍とOil&Gasの苦戦で欧米が厳しく、アセアンも、足元、ロックダウンに近い状態が続いており、視界不良。ただ、厳しい情環境下でも光明はある。半導体製造装置向けは、9-11月は踊り場となるが、来期は一段の拡大が見込まれる。国内建築設備向けも、大型物件は動いており、代理店の在庫調整が完了すれば最終需要が同社の出荷に反映されるようになる。期末にかけての国内外での好材料の増加に期待したい。

     

1.会社概要

バルブを中心とした流体制御機器の総合メーカー。バルブ事業では、国内トップ、世界でもトップ10に入る。バルブは、青銅、黄銅、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄(強度や延性を改良した鋳鉄)、ステンレス鋼等、用途に応じて様々な素材が使われる。同社は素材からの一貫生産(鋳造から加工、組立、検査、梱包、出荷)を基本とする。国内外の子会社36社とグループを形成し、子会社を通して、バルブや水栓金具、ガス機器などの材料となる伸銅品の生産・販売(伸銅品でも国内上位のポジションにある)やホテル事業等も手掛けている。

【企業理念 キッツは、創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指します-】

「企業価値」とは「中長期的な株主価値」であり、「中長期的な株主価値」の向上には、顧客の信頼を得る事によって利益ある成長を持続していく必要がある、と言うのが同社の考え。そして、企業価値を向上させる事により、株主をはじめとして、顧客、社員、ビジネスパートナー、社会に対して様々な形で寄与し、豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えている。
同社は、これらの思いを「キッツ宣言」に込め、更なる飛躍を目指している。

 

キッツ宣言

KITZ’ Statement of Corporate Mission

キッツは、

創造的かつ質の高い商品・サービスで

企業価値の持続的な向上を目指し、

ゆたかな社会づくりに貢献します。

To contribute to the global prosperity,

KITZ is dedicated to continually enriching its corporate value

by offering originality and quality

in all products and services.

 

1-1事業セグメントの概要

事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及びホテル・レストランの経営(ホテル事業)等のその他に分かれ、20/3期の売上構成比は、それぞれ81.1%、16.6%、2.3%。

 

バルブ事業
バルブは、配管内の流体(水・空気・ガスなど)を「流す」、「止める」、「流量を調整する」等の機能を持つ機器で、ビル・住宅設備用、給水設備用、上下水道用、消防設備用、機械・産業機器製造施設、化学・医薬・化成品製造施設、半導体製造施設、石油精製・コンビナート施設など様々な分野で使用されている。同社は、鋳物からの一貫生産を特徴とし(日本で最初に「国際品質保証規格ISO9001」の認証を取得した)、住宅・ビル設備等の建築設備分野に使用され、耐食性に富む青銅製や経済性に優れた黄銅製の汎用バルブ、或いは付加価値の高いボールバルブ等の工業用ステンレス鋼製バルブと言った主力商品で高い国内シェアを有する。
販売面では、国内は主要都市に展開する販売拠点ときめ細かい代理店網によって全国をカバーしており、海外は、インド、U.A.Eに駐在員事務所を置く他、中国、香港、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、アメリカ、ブラジル、ドイツ、スペインに販売拠点を設置し、グローバルな販売ネットワークを構築している。生産面では、国内工場の他、海外では中国、台湾、韓国、タイ、インド、ドイツ、スペイン、ブラジルに生産拠点を展開し、グローバルコスト及び最適地生産の実現に向けた生産ネットワークを構築している。

 

建築設備

ホテルや病院、オフィスビル等の建築設備において、空調、衛生、防災設備等に使われるバルブ等。

水道・給水設備

上下水道における配管ラインの機器・装置、水処理・汚泥処理施設に使われるバルブ及び戸建、集合住宅用の給水装置用商品等。

ガス・エネルギー施設

LNG(液化天然ガス)生産施設やパイプライン等で使われるバルブ等。

産業機械・生産設備

産業機械・生産設備のあらゆる場所で使われるバルブを扱っている。

石油精製、コンビナート施設

石油精製、石油化学、化学プラントのプロセスライン等で使われるバルブ等。

半導体製造設備

半導体製造設備向けのバルブ、継手(グループ会社のキッツエスシーティーで製造・販売)。

 

伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は(株)キッツメタルワークス及び北東技研工業(株)の事業分野であり、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」(黄銅棒はバルブ部材の他、水栓金具、ガス機器、家電等の部材としても使用されている)及びその加工品を製造・販売している。

 

その他
子会社(株)ホテル紅やが手掛けるリゾートホテルの運営(長野県諏訪市)が事業の中心。同ホテルは、諏訪湖畔の好立地を特徴とし、夕日に輝く展望風呂や大小の宴会場に加え、国際会議も開かれる大コンベンションホールを有する。

 

 

セグメント別売上高

 

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

バルブ事業

93,579

91,766

98,162

109,969

103,114

伸銅品事業

20,557

19,333

23,535

23,643

21,061

その他

3,141

3,002

2,867

3,025

2,914

連結売上高

117,278

114,101

124,566

136,637

127,090

* 単位:百万円

 

2.2020年12月期第1四半期決算概要

(同社資料より)

 

決算期変更に伴い、20/12期は9ヶ月の変則決算となる。海外グループ会社の大部分は12月決算であったため、前20/3期の第1四半期は国内グループ会社の4-6月期決算と海外グループ会社の1-3月期決算が反映されていたが、今20/12期の第1四半期は国内グループ会社の4-6月決算と海外グループ会社の4-6月決算が反映され、海外グループ会社の1-3月決算については、利益剰余金の増減として調整した。
尚、海外グループ会社のうちインド子会社は現地法制度に従い3月決算を継続するものの、仮決算により同月連結する。

 

 

2-1 第1四半期連結業績

 

20/3期 1Q(4-6月)

構成比

20/12期 1Q(4-6月)

構成比

前年同期比

売上高

30,879

100.0%

28,745

100.0%

-6.9%

売上総利益

7,766

25.1%

7,662

26.7%

-1.3%

販管費

6,558

21.2%

6,081

21.2%

-7.3%

営業利益

1,208

3.9%

1,580

5.5%

+30.8%

経常利益

1,210

3.9%

1,363

4.7%

+12.6%

親会社株主帰属利益

842

2.7%

839

2.9%

-0.4%

* 単位:百万円

 

前年同期比6.9%の減収ながら、30.8%の営業増益
売上高は前年同期比6.9%減の287.4億円。バルブ事業は国内建築設備市場や海外の苦戦を半導体製造装置向けや国内水関連の好調でほぼ吸収したが(同1.5%減)、原材料市況悪化と販売数量減で伸銅品事業が減収となった他、コロナ禍でその他事業が大きく落ち込んだ。海外売上比率30.9%(前年同期31.5%)。

 

利益面では、収益性の高い半導体製造装置向けの寄与に加え、前年同期は基幹システム更新に伴うオペレーションの乱れでバルブ事業の利益水準が低かったこともあり、営業利益は15.8億円と同30.8%増加した。ただ、為替差損や伸銅品事業におけるデリバティブ(ヘッジ)評価損の増加で経常利益は13.6億円と同12.6%の増加にとどまり、ホテル紅やが臨時休業に伴う特別損失を計上したこと等で最終利益は8.3億円と同0.4%減少した。

 

 

為替及び原材料相場

 

20/3期 1Q

20/12期 1Q

通期 計画

ドル:対円

110.30

107.38

107.00

ユーロ:対円

125.28

118.71

125.00

電気銅建値:円/トン

717,000

616,000

700,000

 

2-2 セグメント別動向

 

19/3期 1Q(4-6月)

構成比・利益率

20/12期 1Q(4-6月)

構成比・利益率

前年同期比

バルブ事業

24,682

79.9%

24,322

84.6%

-1.5%

伸銅品事業

5,493

17.8%

4,266

14.8%

-22.3%

その他

703

2.3%

156

0.5%

-77.7%

連結売上高

30,879

100.0%

28,745

100.0%

-6.9%

バルブ事業

2,064

8.4%

2,739

11.3%

+32.7%

伸銅品事業

106

1.9%

-162

-

-

その他

-9

-

-146

-

-

調整額

-953

-

-849

-

-

連結営業利益

1,208

3.9%

1,580

5.5%

+30.8%

* 単位:百万円

 

バルブ事業
国内売上高は前年同期比3.1%(4.6億円)増の155.7億円。主力の建築設備向けは、コロナ禍による需要の落ち込みで販売数量が減少したが、半導体製造装置向けが市況回復で大幅に増加した他、上下水道向け及び半導体製造装置等で使われるフィルターの好調で水関連も増加。メンテナンス需要等で工業用バルブも概ね堅調に推移した。
海外売上高は同8.6%(8.2億円)減の87.4億円。韓国向けの大幅な増加や中国も前年同期を上回った半導体製造装置向けが大幅に増加した。ただ、コロナ禍及び原油価格下落によるOil&Gas関連の投資の落ち込みで北米及び南米(ブラジル)が大きく落ち込み、コロナ禍で欧州も減収。アジアでは、中国が4月以降の急激な需要回復で増収となったものの、アセアンがロックダウンの影響等で減収となり、韓国も工業向け中心の子会社Cephasが苦戦した。

 

利益面では、半導体製造装置向けの好調、建築設備向けの需要減等による数量・構成差、原価低減、及び原材料市況に加え、前年同期のグローバル基幹システムの更新に伴うオペレーション混乱の反動等(2.0億円の増益効果)もあり、営業利益は27.3億円と同32.7%(6.7億円)増加した。

 

伸銅品事業
売上高は前年同期比22.3%(12.2億円)減の42.6億円。売価に影響を与える原材料相場の下落で販売価格が下落する中、コロナ禍による需要の減少で販売数量が大きく減少した。損益面では、販売数量減少の影響が大きかったことに加え、生産調整(一時帰休)を実施した影響もあり、1.6億円の営業損失となった(前年同期は1.0億円の営業利益)。尚、電気銅建値(円/トン)の期中平均価格は前年同期の717千円から616千円に低下した。

 

その他
売上高は前年同期比77.7%(5.4億円)減の1.5億円、営業損失1.4億円(前年同期は9百万円の営業損失)。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言及び長野県からの休業要請を受け、ホテル事業が、4月から5月にかけて臨時休業を余儀なくされ、サービスエリアも利用客が激減した。

 

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

20年3月

20年6月

 

20年3月

20年6月

現預金

18,696

19,435

仕入債務

7,289

6,288

売上債権(電子記録債権含)

27,561

26,271

未払法人税等

750

571

たな卸資産

23,975

23,801

賞与・役員賞与引当金

2,393

1,242

流動資産

73,351

72,166

役退慰労/株式・退職給付

1,264

1,170

有形固定資産

44,241

42,549

有利子負債

39,148

40,462

無形固定資産

7,639

7,023

負債

58,184

57,243

投資その他

9,831

10,043

純資産

76,879

74,539

固定資産

61,712

59,616

負債・純資産合計

135,063

131,782

* 単位:百万円

 

第1四半期末の総資産は、減収による売上債権の減少や有形固定資産の減少等で、1,317.8億円と前期末に比べ32.8億円減少した。一方、負債については、長期借入金が増加したものの、仕入債務、未払法人税、賞与引当金等が減少。配当金の支払いや自己株式の取得、及び現地通貨安に伴う海外連結子会社の資産の円換算金額の目減りにより純資産も減少した。自己資本比率55.9%(前期末56.0%)。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

20/3期 1Q(4-6月)

20/12期 1Q(4-6月)

前年同期比

営業キャッシュ・フロー(A)

1,573

2,284

+711

+45.2%

投資キャッシュ・フロー(B)

-2,557

-767

+1,789

-

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

-983

1,516

+2,500

-

財務キャッシュ・フロー

-1,368

-766

+602

-

現金及び現金同等物期末残高

10,512

18,887

+8,375

+79.7%

* 単位:百万円

 

税前利益12.9億円(前年同期12.8億円)、減価償却費16.2億円(同14.9億円)、及び法人税等の支払い△6.7億円(同△12.6億円)等で22.8億円の営業CFを確保した。投資CFは主に設備投資によるもので、財務CFは、長期借入金の調達、配当金の支払い、及び自己株式の取得等による。

 

2-4 トピックス

KITZグループ イノベーションセンターの建設
人財育成、技術開発、及び情報発信機能を備えた「KITZグループ イノベーションセンター」の建設工事が、2020年7月に茅野工場内(長野県)で始まった。創業30周年記念事業の一環として1981年に設立されたキッツ研修センターが、これまで社員教育及びバルブ業界関係者の人財育成に寄与してきたが、老朽化に加え、多様化する研修ニーズに充分に対応できなくなってきた。加えて、開発・設計部門の社員の発想力を更に向上させ、高い生産性を発揮できる環境の整備が必要になってきたことから、新たにイノベーションセンターを建設することとなった。イノベーションセンターは、社内外への幅広い研修ニーズに応えると共に、キッツグループ発展の基盤となる人財育成に加え、クリエイティブで革新的な技術開発及び社内外の情報発信機能の充実を図る場としても活用していく。総投資額約19億円。鉄骨造、地上3階建、建築面積1,500㎡、床面積3,600㎡。2021年12月の竣工、2022年3月の稼働開始を予定している。

 

長野県SDGs推進企業として登録
キッツグループが「長野県SDGs推進企業登録制度」に賛同したことで、キッツ伊那工場、同茅野工場、及びキッツメタルワークスがSDGs推進事業所として県に登録された。長野県は、SDGs達成に向け内閣府が推進する「SDGs未来都市」に選定され、この一環として、「長野県SDGs推進企業登録制度」を制定した。この制度は、SDGsにつながる具体的な取り組みを提示し、その内容を踏まえて活動する県内に事業所を持つ企業等を県が登録し、オリジナルの登録マークの提供やホームページ等による公表を通して応援する。

3.2020年12月期業績予想

(同社資料より)

 

20/12期は9ヶ月決算となるため、会社側は、20/3期第3四半期累計実績(期ずれあり。開示ベース)との比較で20/12期の見通しを説明している。

 

 

3-1 通期(9ヶ月)連結業績

 

20/3期 3Q(累計)

構成比

20/12期 予想

構成比

前期比

売上高

94,083

100.0%

81,500

100.0%

-13.4%

営業利益

5,010

5.3%

3,200

3.9%

-36.1%

経常利益

4,842

5.1%

2,800

3.4%

-42.2%

親会社株主帰属利益

3,494

3.7%

1,700

2.1%

-51.3%

* 単位:百万円

 

前期3Q(累計)との比較で13.4%の減収、同36.1%の営業減益予想
売上高は前期比13.4%減の815億円。伸銅品事業は第2四半期の底打ちを見込むが、バルブ事業は期末にかけて減収となる見込み。利益面では、コスト削減を徹底するものの、減収によりバルブ事業の利益率が悪化する他、伸銅品事業やその他では営業損失が見込まれ、営業利益が32億円と同36.1%減少する見込み。

 

設備投資は絞り込むものの、原価低減や生産性向上に向けた投資を継続する考えで、45億円(前期12ヶ月間60億円)を計画。セグメント別では、バルブ事業37億円(同41億円)、伸銅品事業8億円(同18億円)。減価償却費は50億円(同67億円)を織り込んだ。

 

 

為替及び原材料相場

 

19/3期 実績

20/3期 実績

20/12期 計画

ドル:対円

110.37

109.22

107.00

ユーロ:対円

130.00

122.36

125.00

電気銅建値:円/トン

748,000

689,000

700,000

 

 

3-2 株主還元

現在進行中の第4期中期経営計画では、35%前後を配当性向の好ましい水準としており、この方針に基づき、20/12期は1株当たり、第2四半期末4円、期末3円の年7円を実施する予定。配当性向は37.4%となるが、2020年3月に決議した自己株式の取得を上限(20億円)まで取得した場合、総還元性向は140.3%となる見込み(8月24日に終了。3,049,800株を1,999,969,500円で取得した)。

 

3-3 セグメント別見通し

 

20/3期 3Q(累計)

構成比・利益率

20/12期

構成比・利益率

前期比

バルブ事業

75,792

80.6%

68,500

84.0%

-9.6%

伸銅品事業

15,912

16.9%

12,000

14.7%

-24.6%

その他

2,378

2.5%

1,000

1.2%

-58.0%

連結売上高

94,083

100.0%

81,500

100.0%

-13.4%

バルブ事業

7,666

10.1%

6,450

9.4%

-15.8%

伸銅品事業

30

0.2%

-360

-

-

その他

78

3.3%

-360

-

-

調整額

-2,764

-

-2,530

-

-

連結営業利益

5,010

5.3%

3,200

3.9%

-36.1%

* 単位:百万円

 

バルブ事業
国内売上高は前期比7%(33億円)減の450億円。代理店の在庫調整で建築設備向けが減少する他、メンテナンス需要が堅調ながら新規案件が減少する工業用バルブも第2四半期以降落ち込みが大きくなる。一方、半導体製造装置向けは9-11月が一時的な踊り場となるものの上期の好調で通期でも大幅な増収が見込まれ、水関連もフィルターの好調等で前期同並みを維持する。
海外売上高は前期比15%(40億円)減の235億円。半導体製造装置向けが韓国・中国の好調で増加するものの、コロナ禍と原油価格の低迷によるOil&Gas投資の落ち込みで北米・南米(ブラジル)、及び欧州の売上が減少。アセアンはロックダウンの影響が残り、韓国も子会社Cephasの苦戦が続く。データセンター向けが堅調な中国も小幅ながら減収が見込まれる。

 

営業利益は同15.8%(12.1億円)減の64.5億円。原価低減、販管費削減や前期のシステムトラブルの反動も含めて費用減少が見込まれるものの、国内市場は収益性の高い建築設備向け及び工業用の汎用バルブの販売数量の減少の影響が大きく、海外市場はアセアンにおける汎用バルブの販売数量の減少が響く。

 

 

伸銅品事業
銅相場は不安定な状態が続いているが、自動車向け中心に大きく減少した国内伸銅品需要の第2四半期底打ちを見込んでいる。生産性の高い新工場へのライン統合も進んでいるが、生産調整による生産量の減少と減価償却費の増加で営業損失が続く見込み。

 

 

その他
ホテル宿泊客・サービスエリア利用客共にコロナ禍による大幅な減少が続いている。8月に予定されていた花火大会が中止となり、年末の団体宴会等も集客が見込めず、経費削減を徹底するが、大幅な営業損失が見込まれる。

 

4.今後の注目点

第2四半期以降、事業環境は更に厳しさを増していく。国内では、設備投資の落ち込みで工業用バルブの苦戦が続き、海外では、コロナ禍とOil&Gasの苦戦で欧米が厳しく、アセアンも、足元、ロックダウンに近い状態が続いており、視界不良。ただ、厳しい情環境下でも光明はある。半導体製造装置向けは、9-11月は踊り場となるが、来期は一段の拡大が見込まれる。また、売上・利益の両面で影響が大きい国内建築設備向けは期末にかけて代理店在庫の調整が続く見込みだが、大型物件は動いており、代理店の在庫調整が完了すれば最終需要が同社の出荷に反映されるようになる。現状では、今後の業績はL字型の懸念が強いが、期末にかけての国内外での好材料の増加に期待したい。

 

<参考:ESGを軸にした取り組みとSDGsのゴール>

2019年度を初年度とする第4期中期経営計画では、「ESGのさらなる強化」を重点テーマの一つに掲げており、2020年3月には、同社の重要な取り組み項目と関連性の強いSDGsの目標を「見える化」した。これまでの取り組みを一層強化すると共に、サステナビリティ経営を更に加速させ、SDGsの達成に寄与していく考え。
また、同社は、「長野県SDGs推進企業登録制度」に賛同し、伊那工場と茅野工場がSDGs推進事業所として県に登録されている。

 

大項目

中項目

具体的な実施項目

SDGs

Environment

事業活動を通じて地球環境保全に貢献する

1.環境に配慮した商品・サービスの開発と提供

①鉛レス材・カドミレス材等の環境に優しい材料の開発

②除菌・浄化処理装置の開発

③RoHS指令・REACH規制対応商品の提供

④クリーンエネルギー分野への対応商品の開発

 

2.産業廃棄物の削減と再使用・再利用の推進

①地球温暖化ガス・CO2排出量の低減活動の推進

②環境負荷物質排出の抑制

3.グループ・グローバルでの環境汚染防止と予防

①有害物質を含有する化成品の特定と代替化の推進

②海外拠点別環境法規制の見える化と対策

Social

人財・安全・地域社会を大切にする

1.多様な人財(ダイバーシティ&インクルージョン)の活躍推進

①働きやすい人事制度の導入と定着

②同一労働同一賃金に向けての取り組み

③女性社員の活躍推進

④シニア人財の活躍推進

⑤グローバル人財の登用と育成

⑥ワーク・ライフ・バランスを支える制度の充実

 

2.安全・健康・人権を大切にする社風の醸成

①安全で健康に働くことができる職場環境の整備

②国、宗教、民族等に対する偏見・差別・人権侵害・不正を行わないとするポリシーの徹底

3.適正な事業活動

①公正な取引によるサプライチェーンマネジメントの推進

②品質と安全性確保による顧客満足の追求

4.社会貢献活動

①社会貢献活動の推進

Governance

公明正大な経営

1.健全なコーポレート・ガバナンス体制の確立

①指名委員会と報酬委員会の有効な運用16.平和と公正をすべての人に

②女性役員の登用

③ J-SOX法に加え会社法上の内部統制(内部監査)の強化

 

2.経営における透明性の向上と経営監視体制の強化

①三様監査会合(監査役会・会計監査人・内部監査室)に社外取締役を加えた四様監査・監督会合の実施による情報の共有化

②社外役員によるグループ会社の監査と監督

③内部監査室の強化

3.取締役会の実効性の強化

①取締役会の社外役員の充実

②取締役会の実効性評価の実施と課題への対応

(同社Webサイトより)

 

※同社は自社Webサイトに「サステナビリティ」ページを設け、公開している。https://www.kitz.co.jp/sustainability/

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

8名、うち社外4名

監査役

5名、うち社外3名

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2020年07月01日)
基本的な考え方
当社は、創造的かつ質の高い商品・サービスの提供により持続的に企業価値の向上を図ることを企業理念に掲げ、社会的に責任ある企業として、株主の皆様をはじめ、すべてのステークホルダーに配慮した経営の実現に取り組んでいます。また、経営の効率性とコンプライアンスの強化を図るため、ステークホルダーからの要請や社会動向などを踏まえ、迅速かつ効率が良く、健全で透明性の高い経営が実現できるよう、様々な施策を講じて、コーポレート・ガバナンスの充実を図っています。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則をすべて実施しています。

 

<開示している主な原則>
4.情報開示の充実(原則3-1)
(3) 取締役及び監査役の報酬等の決定に関する方針を有価証券報告書等により開示しています。なお、取締役(社外取締役を除く)及び執行役員の報酬は、業績連動型株式報酬制度を導入しており、その支給総額、配分及び株式の付与方法等については内規により定めています。また、賞与については、内規に基づく一定の条件を満たし、適正な利益確保が行われた場合に支給することとしています。報酬額の決定については、過半数を社外取締役で構成する報酬委員会を取締役会の任意の諮問機関として設置し、報酬方針その他特に重要な事項についての検討を行っており、その結果を取締役会に答申しています。
(4) 取締役候補及び監査役候補の指名並びに取締役及び監査役の解任方針、執行役員の選解任については、過半数を社外取締役で構成する指名委員会を取締役会の任意の諮問機関として設置し、当社が定める「取締役会の構成及び監査役会の構成に関する方針並びに役員(取締役・監査役・CEO・執行役員)の選解任に関する方針」(以下「役員選解任方針」という)に基づき、ジェンダーや国際性の面を含め、人格、能力・識見・経験・専門性・実績、公正性及び年齢など多角的な観点から候補の検討を行い、その答申を踏まえ、取締役会において決定しています。
なお、役員選解任方針を当社ホームページにおいて開示しています。
(5) 取締役及び監査役の候補については、株主総会の招集通知にその略歴及び指名の理由を開示しています。また、取締役及び監査役の解任を行う場合においてもその理由を開示することとしています。

 

9.取締役会の実効性を高める取組内容(補充原則4-11③)
当社は、コーポレート・ガバナンスの実効性を高め、取締役会全体の機能向上を図ることを目的として、毎年、取締役会の実効性に関するアンケート調査を行っており、その結果に基づき、取締役会において分析・評価を行っています。当該アンケート調査は、取締役及び監査役全員に対し、事前に評価の主旨等について説明し、コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づき、特に重要な事項について記名式の質問票を配布し、回答を得る方法で行っています。また、取締役会は、得られた回答の集計結果に基づき、実効性についての分析・評価を行う他、課題について闊達な議論を行っています。2020年5月に実施した取締役会の実効性に関するアンケート調査は、経営戦略の策定及び実行、取締役会の構成、役員の指名・報酬、監査、社外取締役、取締役会の審議の活性化、株主その他ステークホルダーへの対応に関する項目について行いました。その結果、当社取締役会は実効性が概ね確保できているとの評価が得られました。しかし、最高経営責任者等の後継者計画及び取締役会の多様性等について、改善点の提示を含むいくつかの建設的な意見が寄せられたことから、今後、取締役会において、これらの課題について議論し、さらなる実効性確保に努めることとしています。

 

11.株主との建設的な対話に関する方針(原則5-1)
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のためには、経営の受託者としての説明責任を自覚し、株主・投資家等のステークホルダーに対し、適時・適切かつ公正な情報開示を行い、経営の公正性と透明性を維持することが重要であると認識しています。また、必要とされる情報を継続的に提供するとともに、外部者の視点による意見や要望を経営改善に活用するためのIR活動が重要であると考えています。そのため、当社は、経営戦略や経営計画に対する株主の理解が得られるよう、株主との建設的な対話を推進すべく、社長やIR担当執行役員を中心とするIR体制を整備し、次の施策を実施しています。

 

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