ブリッジレポート
(6166) 株式会社中村超硬

グロース

ブリッジレポート:(6166)中村超硬 2020年3月期決算

ブリッジレポートPDF

 

井上 誠 社長

株式会社中村超硬(6166)

 

 

企業情報

市場

東証マザーズ

業種

機械(製造業)

代表取締役社長

井上 誠

所在地

大阪府堺市西区鶴田町27-27

決算月

3月末日

HP

http://www.nakamura-gp.co.jp

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

933円

10,020,900株

9,349百万円

-

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(倍)

0.00円

-

69.85円

13.4倍

50.63円

18.4倍

*株価は6/9終値。各数値は20年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

4,992

-1,653

-1,803

-2,075

-445.77

0.00

2018年3月(実)

12,140

1,570

1,365

1,381

288.94

0.00

2019年3月(実)

4,809

-4,193

-4,263

-9,721

-1,911.28

0.00

2020年3月(実)

2,797

-578

-716

-600

-73.16

0.00

2021年3月(予)

3,350

300

200

700

69.85

0.00

*単位:百万円、円。今期予想は会社側公表。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

株式会社中村超硬の2020年3月期決算概要等をお伝えします。

 

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2. 2020年3月期決算概要
3. 2021年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 20年3月期の売上高は前期比20億円減少の27億円。太陽光発電向けダイヤモンドワイヤ生産事業からの撤退により、大幅な減収。ただ、構造改革を進めた結果、粗利は黒字に転換。営業利益、経常利益、当期純利益はそれぞれ損失となったが、巨額の減損損失や評価損を計上した前期からは損失幅は大きく縮小した。

     

  • 「事業構造改革の実施」「和泉工場の譲渡」「ダイヤモンドワイヤ生産設備等の譲渡」「新株予約権の発行による資金調達」により、純資産額は2019年3月末の‐13.29億円から、2020年3月末+5.23億円へ改善し、債務超過を解消した。

     

  • 21年3月期は増収・黒字転換へ。売上高は前期比5億円増の33億円、営業利益は同8億円改善の3億円の予想。電子材料スライス周辺事業は減収も、特殊精密機器事業は堅調、化学繊維用紡糸ノズル事業はマスク需要の高まりから不織布製造装置、関連ノズル等の受注がすでに前期売上実績を上回っており、大幅増収。

     

  • 最優先課題であった債務超過解消はクリアし、今後は、収益の向上と資本政策による自己資本比率等安全性指標の改善が課題となる。新型コロナウイルスという新たな要素も加わり、先行きは不透明だが、今期よりダイヤモンドワイヤ生産技術の優位性をベースとした着実な回復基調を辿ることができるかを注目したい。

     

1.会社概要

太陽電池に用いられるシリコンウエハの製造工程の一つであるスライス加工で使用されるダイヤモンドワイヤ製造装置の販売、極細線ダイヤモンドワイヤの開発を行う電子材料スライス周辺事業の他、特殊精密部品や工具の開発・製造・販売を行う特殊精密機器事業、不織布用ノズルや同装置等の設計・製造・販売を行う化学繊維用紡糸ノズル事業を展開。
新規事業としてナノゼオライトの早期事業化に注力している。
細いピアノ線にダイヤモンドの粒を強く固定した糸状の工具であるダイヤモンドワイヤは、シリコンウエハ(※1)の低コスト化をもたらすものとして急速に普及している。

 

ウエハ(※1)
電子材料の塊(インゴット)から目的に応じて薄くスライスされた板状の機能部品。シリコン、サファイア、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)など、用途に応じて様々な材質がある。ICチップや太陽電池に多く用いられるのがシリコンウエハ。

 

【1-1 沿革】

1954年10月大阪府堺市においてミシン用の小ネジを作る会社として創業した「中村鉄工所」が前身。
1970年12月に超硬合金を用いた切削工具、耐摩工具である超硬工具を主に取り扱う「株式会社中村超硬」を設立した。1988年には超硬工具からダイヤモンドへ主材料を転換し、1993年にはダイヤモンドノズル(※1)の開発・製造・販売を開始。IT産業の製造革新の下支えとなり業容は大きく拡大した。ITバブル崩壊後の2004年にはエネルギー産業をターゲットとして現在の主力製品であるダイヤモンドワイヤの研究開発をスタートさせ、2010年には販売を開始。ダイヤモンドワイヤの製造販売だけでなく、スライス事業も手掛けてリーマンショックの苦境を乗り越え、2015年6月、東証マザーズ市場に上場した。
中国市場において最先端技術を武器にダイヤモンドワイヤの極細線化を進め市場をリードしてきたが、ダイヤモンドワイヤ市場における急速な価格下落の影響を受け業績が悪化。2019年11月、ダイヤモンドワイヤ生産事業から撤退した。
今後は、ダイヤモンドワイヤ製造技術の高さを活かして、ダイヤモンドワイヤ製造装置販売および半導体向け極細線ダイヤモンドワイヤ開発に注力する。
ダイヤモンドノズル(※1)
先端に焼結ダイヤモンドを使用したノズル。電子部品をプリント基板に装着したりする際に用いられる。ダイヤモンドを使用する事がノズルの長寿命化や電子部品の保持能力、画像認識への有効性の向上、実装率向上につながっている。

 

【1-2経営理念】

全員営業、全員製造、全員参加の経営をもってものづくりのエキスパート集団となり夢ある未来をともに育てる。

① お客様、協力会社との共栄のために

② 従業員とその家族の幸せのために

③ 社会と地球環境への貢献のために

 

【1-3 市場環境】

(1)需要拡大が続く太陽光発電
地球温暖化の原因と言われている温室効果ガス削減のために再生可能エネルギーの利用が世界的に進められているが、その中でも太陽光発電は中心的な発電方法と位置付けられている。

 

 

(同社資料より)

 

そうした状況を背景に太陽光発電の需要は旺盛で導入量は急増してきたが、2018年は中国政府による太陽光市場引き締め策等により、マイナス成長となった。ただ、2019年以降は新興国の電化が加速し、導入コストの低下によりアジア、アフリカ、中東、中南米などでの成長が予想され、太陽光市場のドライバーは先進国から新興国・途上国へシフトすると見られる。

 

(2)多結晶シリコンウエハ市場の拡大とダイヤモンドワイヤ
太陽光発電の普及に伴い、太陽光発電パネルに用いられるシリコンウエハの需要も増大している。
シリコンウエハは単結晶シリコンウエハと多結晶シリコンウエハに大別されるが、それぞれ以下のようなメリット、デメリットがある。

 

シリコンウエハの種類

メリット

デメリット

単結晶シリコンウエハ

*多結晶シリコンウエハに比べエネルギーの変換効率が一般的に20%前後と高い。

 

*加工性が良い。

*純度の高いシリコン結晶の原材料費が高いことなどから、多結晶シリコンウエハに比べて価格が高い。

 

*また円柱状から製造される単結晶シリコンウエハは円の端を切り取り八角形に形を整えるため、四隅に隙間が生まれ無駄な面積が必要になる。

多結晶シリコンウエハ

*材料となる端材のシリコンを集めやすいため大量生産しやすく価格が安い。

 

*円柱状から製造される単結晶シリコンウエハは無駄な面積が必要となるのに比べ、製造方法の違いにより多結晶シリコン型は真四角の形にすることができるため、隙間を少なくして面積を大きくすることができ、無駄が少ない。

*単結晶シリコン比べて変換効率が15%前後と劣る。

 

*加工性が悪く、割れやすい。

 

これまでは価格が安く、歩留まりの良い多結晶シリコンウエハが中心であったが、エネルギー変換効率が高く加工性に優れた単結晶シリコンウエハのパネル設置までを含めたトータルコストパフォーマンスの高さにより、単結晶シリコンウエハが主流となりつつある。シリコンウエハのスライス加工に用いられるダイヤモンドワイヤの需要も急速に拡大している。

 

【1-4 事業内容】

1.セグメント
同社の事業は電子材料スライス周辺事業、特殊精密機器事業、化学繊維用紡糸ノズル事業の3事業セグメントで構成されている。

 

(同社資料より)

 

(1)電子材料スライス周辺事業
太陽電池の製造工程におけるシリコンインゴットのスライス加工で使用するダイヤモンドワイヤの生産・販売からは撤退し、生産技術の優位性を活かしてダイヤモンドワイヤ製造装置の販売及び極細線ダイヤモンドワイヤの開発を行っている。

 

①ダイヤモンドワイヤとは?
ダイヤモンドワイヤは、太陽電池パネルのメイン部品となる太陽電池セルに使われるシリコンウエハの製造工程のうち、スライス加工工程において使用される。
ウエハ一枚分の大きさに合わせて直方体に切られたシリコンインゴットを薄くスライスする際に用いる工具が「ダイヤモンドワイヤ」。細いピアノ線にダイヤモンドの粒を強く固定した髪の毛より細い糸状の切断工具である。
スライス加工機で、短い間隔で並べられたダイヤモンドワイヤが高速回転するガイドローラーによって走行し、インゴットをスライスしていく。2~3時間で2000~3000枚のシリコンウエハが製造される。その後、シリコンウエハは洗浄・品質検査を行い、処理を施されセルとなり、太陽電池モジュールに組み込まれる。

 

(同社資料より)

 

②シリコンウエハのスライス方法
シリコンウエハのスライス方法には、主として「遊離砥粒方式」とダイヤモンドワイヤを用いた「固定砥粒方式」の2種類がある。

 

方式

遊離砥粒方式

固定砥粒方式

仕組み

砥粒のついていないワイヤ(ピアノ線)にSiC(炭化ケイ素)砥粒を含む加工液(油)を供給しながらスライスする。

ダイヤモンド砥粒がワイヤ(ピアノ線)に強固に固定されており、ワイヤの走行によりダイヤモンド砥粒が直接的にシリコンを削る。

特長など

加工液に含まれるSiC砥粒がワイヤの走行とともに回転しながらシリコンを削りスライス加工する。このため、砥粒がワイヤ自体も削ることになり、ワイヤも消耗する。

 

▷ 切れ味が鋭く、遊離砥粒方式と比べて加工速度が向上する。

▷ ワイヤの使用量が少なくなり、産業廃棄物が減少し環境に優しい。

▷ 加工液は水を使用するため、コストと環境負荷の低減にもつながる。

▷ ダイヤモンド砥粒がワイヤ自体を削ることがないため、従来の遊離砥粒方式よりワイヤそのものを細くすることができ、カーフロス(※)を低減し切り出せるウエハの枚数を増やすことが可能。

 

カーフロス(※)
切断溝幅(切り代)のこと。カーフロスは材料のロスとなるため、太陽電池パネルの製造コスト低減のためできるだけ小さくする必要がある。

 

以上のように、「加工速度の向上」、「低いランニングコスト」、「カーフロスの低減」、「ワイヤ使用量の削減による環境負荷軽減」といった点から、ダイヤモンドワイヤを用いた「固定砥粒方式」への転換が進み、需要も増大している。

 

(同社HPより)

 

1つのインゴットから製造できるシリコンウエハの枚数を増大させることは、生産性の向上、原価低減の観点からウエハメーカーにとっては重要なポイントであるため、細線化に対するウエハメーカーの需要は高い。

 

(2)特殊精密機器事業
ダイヤモンドや超硬合金、セラミックスなど耐摩耗性の高い硬脆材料を用いた特殊精密部品、工具の開発・製造・販売を行っている。
主要製品は、自動車部品やベアリング製造用工作機械に用いられるダイヤモンド部品、液晶テレビやスマートフォン、タブレット等の電子機器の製造に必要な電子部品実装用の産業機械に用いられるダイヤモンドノズルなど。
特殊精密部品・工具の他、実装機用ノズル等を洗浄する装置などの開発・製造・販売も行っている。

 

(3)化学繊維用紡糸ノズル事業
主に、化学繊維用紡糸ノズル及び周辺部品、不織布用ノズル・同装置等の設計・製造・販売を行っている。
同社は、1928年に創業して以来、化学繊維用(レイヨン製造用)ノズルを国産化し、化学繊維の紡糸ノズル専業メーカーとして事業展開してきた。紡糸ノズルは、不織布、炭素繊維などの製造において繊維の品質を決定づける基幹部品。その製造にあたっては微細加工(孔(あな)あけ加工、パンチング加工)及び工具・冶具の製造に関して繊細な技術が必要となるが、同社では、長年にわたり同事業に特化してきたことにより多くの技術的蓄積を有し、市場のニーズに対応している。

 

2.新規事業への取り組み
ダイヤモンドワイヤに次ぐ新たな収益の柱を打ち立てるべく、新規事業の早期事業化に取り組んでいる。

 

①マテリアルサイエンス事業
シリカ(二酸化ケイ素)とアルミナ(酸化アルミニウム)を主成分とし、無数の穴を持つ多孔質構造が特長で、1gでテニスコート1面分以上という大きな表面積を持つ物質であるゼオライトを用いた素材開発に取り組む事業。

 

ゼオライトは、その特長から、「吸着」、「イオン交換」、「触媒」といった機能を持っており、排気ガスを浄化する自動車用排ガス処理触媒などの化学分野、放射性セシウムの吸着材などの環境分野、マスクなどに用いられる抗菌剤などの生活分野など様々な場面で用いられている。一般的にはミクロンサイズの粒子が流通しているが、粒子径をナノサイズ化することにより、飛躍的にこれらの基本性能が向上し、新たな用途への展開が期待できる。
ただし、これまでのナノ粒子製造手法では製造コストが高く、具体的な市場評価が進んでいなかった。

 

そうした中、同社では、東京大学が保有する「粉砕・再結晶化」技術を活用して、ゼオライトのナノ粒子化のための革新的プロセスの開発に着手した結果、低コストで直径が通常のゼオライトの100万分の1となる「ナノサイズゼオライト」の製造に成功した。(この「粉砕・再結晶化プロセス」は特許出願中。)
今後は、積極的なPR活動、市場の早期創出、低コスト中量生産体制の確立などを通じて、産官学連携で事業化に向けた開発を加速する。

 

2.2020年3月期決算概要

(1)連結業績概要

 

19/3期

20/3期

前期比

売上高

4,809

2,797

-2,012

売上総利益

-2,215

583

+2,798

販管費

1,978

1,161

-817

営業利益

-4,193

-578

+3,615

経常利益

-4,263

-716

+3,547

当期純利益

-9,721

-600

+9,121

単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

 

減収も損失幅は縮小
売上高は前期比20億円減少の27億円。太陽光発電向けダイヤモンドワイヤ生産事業からの撤退により、大幅な減収。
ただ、構造改革を進めた結果、粗利は黒字に転換。営業利益、経常利益、当期純利益はそれぞれ損失となったが、巨額の減損損失や評価損を計上した前期からは損失幅は大きく縮小した。

 

(2)セグメント別動向

 

19/3期

20/3期

前期比

売上高

 

 

 

電子材料スライス周辺事業

2,193

697

-1,495

特殊精密機器事業

897

845

-52

化学繊維用紡糸ノズル事業

1,711

1,242

-469

その他

7

12

+5

合計

4,809

2,797

-2,012

営業利益

 

 

 

電子材料スライス周辺事業

-4,327

-624

+3,702

特殊精密機器事業

122

31

-90

化学繊維用紡糸ノズル事業

393

149

-243

その他

-403

-157

+245

調整

21

22

+1

合計

-4,193

-578

+3,615

*単位:百万円。売上は外部顧客への売上高。利益の構成比は売上高営業利益率。

 

<電子材料スライス周辺事業>
減収・損失幅縮小
ダイヤモンドワイヤの市場価格の更なる下落により、太陽光発電向けダイヤモンドワイヤ生産事業から撤退し、沖縄工場、和泉工場などを閉鎖し、人員も縮小した。巨額の減損損失や評価損を計上した前期からは損失幅は大きく縮小した。
<特殊精密機器事業>
減収・減益
米中貿易摩擦に加え、新型コロナウイルスの影響による厳しい市場環境を受け、工作機械向け耐摩工具が低調だった。
産業機械向け実装機用ノズルは「5G」関連需要の高まりから売上が増加した。

 

<化学繊維用紡糸ノズル事業>
減収・減益
前期に大型不織布製造装置案件があったのに加え、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスによる案件中断や出荷遅延などが影響した。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

19年3月末

20年3月末

 

19年3月末

20年3月末

流動資産

5,102

5,236

流動負債

5,030

3,050

 現預金

2,821

4,239

 仕入債務

204

135

 売上債権

1,058

380

 短期有利子負債

4,305

2,225

 たな卸資産

797

417

固定負債

4,209

2,904

固定遺産

2,808

1,241

 長期有利子負債

3,402

2,365

 有形固定資産

2,564

1,197

負債合計

9,240

5,955

 無形固定資産

6

2

純資産

-1,329

523

 投資その他の資産

237

42

負債純資産計

7,910

6,478

資産合計

7,910

6,478

有利子負債合計

7,707

4,590

*単位:百万円。有利子負債にはリース債務を含む。

 

有形固定資産の減少などで資産合計は前期末に比べ14億円減少の64億円となった。有利子負債の減少などで負債合計は同32億円減少の59億円。資本増強により債務超過は解消し、自己資本比率は7.8%。

 

(債務超過解消への取り組み)
以下の取り組みにより、純資産額は2019年3月末の‐13.29億円から、2020年3月末+5.23億円へ改善し、債務超過を解消した。

 

1.事業構造改革の実施
ダイヤモンドワイヤ生産事業を終了し、受託合成事業から撤退した。

 

2.和泉工場の譲渡
譲渡益 約3.6億円を計上した。

 

3.ダイヤモンドワイヤ生産設備等の譲渡
2020年3月期に譲渡益約8億円を計上した。

 

4.新株予約権の発行による資金調達
合計500万株、約29億円を調達した。うち、2020年3月期の調達額は約24.4億円。

 

 

◎キャッシュ・フロー

 

19/3期

20/3期

増減

営業CF

-2,206

228

+2,435

投資CF

-692

1,994

+2,687

フリーCF

-2,899

2,222

+5,122

財務CF

1,270

-699

-1,969

現金及び現金同等物

2,277

3,795

+1,518

単位:百万円

 

税金等調整前当期純損失幅の縮小、有形固定資産の売却による収入拡大などで営業CF、フリーCFはプラスに転じた。
キャッシュポジションは15億円上昇した。

 

(4)トピックス

◎新規事業「ナノゼオライト」の進捗状況
2016年より国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の委託を受け取り組んできた東京大学との産学共同実用化開発事業(A-STEP NexTEP-A)の開発課題である「ゼオライトナノ粒子の製造方法と粒径制御技術」が、JSTにおいて成功と認定されたことを受け、多数のサンプル提供要請があり、現在約50社でサンプル評価中である。
以下のような用途を中心に顧客企業と研究開発を進め、2022年3月期の事業化を目指す。

 

(ゼオライト、ナノゼオライトとは?)
ゼオライトは主な成分をシリカ、アルミナとし、スポンジのような多孔質構造を持つ機能性材料。
1グラムでテニスコート1面分以上を有する特性を活かし、吸着、イオン交換、触媒など、様々な工業用用途に利用されている。

 

ナノゼオライトとは、ゼオライトをナノサイズ化したもので、約100万倍の粒子数、約100倍の外表面積を持ち、吸着速度やイオン交換速度が大幅に向上するほか、沈降速度が低下するなど機能性が上昇。
これに伴い用途も大きく拡大する。

 

(用途例)
①高機能透明フィルム
フィルムにナノゼオライトを添加すると、透明性を保ったまま内部の水分やガスを吸着し品質をキープすることができる。
高機能透明フィルムとして薬包材や電子基板の封止剤に用いられる。

 

②リチウムイオン電池
放電容量低下による寿命延長、内部抵抗の低減による発熱抑制などが期待でき、特許出願中である。

 

③その他
上記の他、パック・クンジング・マッサージジェルなど水分と混ざることで発熱する「温感製品」、配線腐食や割れを防止する「半導体用封止材」、硬化を阻害する水分・CO2ガス・副生成物を吸着し安定的に硬化させる「二液型接着剤」といった用途開発にも取り組んでいる。

 

3.2021年3月期業績予想

(1)連結業績予想

 

20/3期

21/3期(予)

前期比

売上高

2,797

3,350

+553

営業利益

-578

300

+878

経常利益

-716

200

+916

当期純利益

-600

700

+1,300

単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

 

増収・黒字転換へ
売上高は前期比5億円増の33億円、営業利益は同8億円改善の3億円の予想。

 

(2)各事業の取組み

 

20/3期

21/3期(予)

前期比

電子材料スライス周辺事業

697

650

-6.7%

特殊精密機器事業

845

900

+6.5%

化学繊維用紡糸ノズル事業

1,242

1,800

+44.9%

*単位:百万円

 

電子材料スライス周辺事業
前期、江蘇三超社へのダイヤモンドワイヤ生産設備などの譲渡が新型コロナウイルスによる渡航制限により計画通り進まなかったが、中国への渡航制限が解除され、江蘇三超社での作業実施後、2021年3月までに残契約が完了することを前提としている。
技術対価1.5億円、一定の生産条件達成時の対価5億円の合計約6.5億円を売上高に、設備売却対価約7.5億円を特別利益に計上する計画。

 

新たな取り組みとしては、中国企業に対する極細線ダイヤモンドワイヤ製造技術に関する優位性を活かした「新たなダイヤモンドワイヤ製造装置開発への取組み」、蓄積してきた太陽光発電向けダイヤモンドワイヤ製造技術を活かした「半導体向けダイヤモンドワイヤ開発への取り組み」を挙げている。

 

②特殊精密機器事業
工作機械向け耐摩工具関連は引続き厳しい事業環境だが、次世代通信規格「5G」関連分野において電子部品需要は好調に推移すると見ている。また、中国など海外の電子部品産業への販売強化にも注力する。

 

③化学繊維用紡糸ノズル事業
環境は好調だ。新型コロナウイルスによる世界的なマスク需要の高まりを受け、不織布製造装置に対し国内外から多数の引き合いがあり、2020年4月末時点で15億円を超える受注を獲得済である。

 

(3)継続企業の前提に関する注記について

前期で債務超過は解消したが、有利子負債残高は約46億円で、今期予想の前提である江蘇三超社へのダイヤモンドワイヤ生産設備譲渡も未完了であるため、継続企業の前提に関する注記が付されている。
同社では、同設備の譲渡を今期中に確実に完了させるとともに、各金融機関との連携を密にし、財務基盤の安定化に向けた諸施策の検討を進め、早期の解消を目指していく。

 

4.今後の注目点

最優先課題であった債務超過解消はクリアし、今後は、収益の向上と資本政策による自己資本比率等安全性指標の改善が課題となる。新型コロナウイルスという新たな要素も加わり、先行きは不透明だが、今期よりダイヤモンドワイヤ生産技術の優位性をベースとした着実な回復基調を辿ることができるかを注目したい。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

9名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2019年7月8日

 

<実施しない主な原則とその理由>
「当社は、マザーズ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。」と記載している。

 

 

 

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

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