ブリッジレポート
(9275) 株式会社ナルミヤ・インターナショナル

スタンダード

ブリッジレポート:(9275)ナルミヤ・インターナショナル 2020年2月期決算

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石井 稔晃 社長

株式会社ナルミヤ・インターナショナル(9275)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

小売業(商業)

代表取締役

執行役員社長

石井 稔晃

所在地

東京都港区芝公園2-4-1

決算月

2月

HP

https://www.narumiya-net.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

575円

10,122,830株

5,814百万円

23.0%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

-

未定

-

428.24円

1.3倍

*株価は4/30終値。各数値は20年2月期決算短信より。今期業績予想は未定。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年2月(実)

23,474

1,157

892

708

74.99

-

2018年2月(実)

26,954

1,404

1,280

760

80.43

-

2019年2月(実)

29,700

1,625

1,505

926

94.94

31.00

2020年2月(実)

32,962

1,664

1,622

999

99.29

34.00

2021年2月(予)

-

-

-

-

-

-

*単位:百万円、円。21年2月期の業績予想は未定。17年2月期及び18年2月期は連結、19年2月期は非連結、当期純利益及びEPSは抱合せ株式消滅差益875百万円を調整後。20年2月期及び21年2月期は連結。配当は上場後の配当のみ記載。

 

株式会社ナルミヤ・インターナショナルの2020年2月決算概要などをお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.業績概要
3.石井社長に聞く
4.今後の注目点
<参考1:今後の成長戦略>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • ベビー・トドラーおよびジュニア向け(※)子供服を企画・製造し、百貨店、ショッピングセンター(SC)およびEコマースで販売。販売チャネルごと、幅広いブランドをラインアップしている点に加え、トップクラスのブランド力、マーチャンダイジング能力、優良な顧客資産などが特長・強み。SCチャネル及びEコマースの拡大、中国市場の開拓、コト・サービスへの展開などで更なる成長を目指している。(※ベビー・トドラー:0歳~7歳向け、ジュニア:8歳~15歳向け)

     

  • 2020年2月期は増収増益。売上高は前期比11.0%増の329億62百万円。引き続きSCルート、Eコマースともに2桁増収で好調。既存店売上高は同1.9%増収。全店売上高は同7.8%増だった。営業利益は同2.5%増の16億64百万円。歩合家賃、他社通販サイト出店料など販管費も同12.7%増加したが増収及び粗利率改善で吸収した。ハートフィールののれん償却額は45百万円。(19年2月期は非連結、20年2月期は連結決算のため前期比は参考値)

     

  • 新型コロナウィルス感染拡大により3月、4月と店舗売上高は大幅に減少。EC販売は堅調である。外出自粛や、商業施設の臨時休業及び営業時間短縮などにより、売上高に影響する状況が続いており、2021年2月期の連結業績予想は合理的な業績予想の算定が困難であるため公表していない。今後適正かつ合理的な算定が可能となった時点で速やかに開示することとしている。

     

  • 石井社長に前期決算のポイント、新型コロナウィルスの影響および対応、成長戦略の進捗などを伺った。

     

  • 新型コロナウィルスの影響がどの程度なのか現時点では不明であるため、投資家としてはまずは第一四半期の結果を待つしかない状況である。ただ、石井社長も述べているように、少子化日本での残存者利益獲得を基本戦略として、的確なマーケティングで他社が撤退したフィールドに参入したり、M&Aによって新たなブランドを獲得したりすることで成長を追求する同社にとっては、足元は厳しいにせよ決してマイナスばかりではない。

     

  • 石井社長は「アフター・コロナ」について、個人の消費行動に変容が起きる中で懸念もある一方、新たなビジネスチャンスも生まれるのではないか、マーケティングの結果としての消費者のニーズをどれだけ吸い上げることができるかが今後の大きな分岐点になるのではないかと考えている。そうした中で、ECチャネルの強化・拡充は、短期的にも中長期的にも今後の成長スピード加速に向け大きなカギを握ることとなろう。

     

1.会社概要

ベビー・トドラーおよびジュニア向け子供服を企画・製造し、百貨店、SCの直営店で販売。Eコマースも急拡大中。2019年現在のブランド数は約20。販売チャネルごと、幅広いブランドをラインアップしている点に加え、トップクラスのブランド力、2チャネルの両立が可能なマーチャンダイジング能力、優良な顧客資産などが特長・強み。
SCチャネル及びEコマースの拡大に加え、中国市場の開拓、コト・サービスへの展開などで更なる成長を目指している。

 

【1-1 沿革】

1904年、広島で創業した呉服問屋・成宮織物が前身。1952年に成宮織物株式会社設立。1979年、本社を東京・青山に開設し、株式会社ナルミヤに改称。全国に事業拡大するとともに、分社独立及び事業譲渡を経て、1995年8月、株式会社ナルミヤ・インターナショナルに商号変更した。「mezzo piano」(メゾピアノ)や「ANGEL BLUE」(エンジェルブルー)等、カラフルなファッションアイテムとオリジナルキャラクターを特徴とした商品を中心に、百貨店における直営店舗販売と専門店への卸売りを軸
に、業容を拡大。全国各地の百貨店やファッションビルに積極的に出店し、2005年3月、ジャスダック証券取引所に株式を上場した。
しかし、百貨店依存体質からの脱却の遅れや、ブランドコンセプト転換の遅れなどにより、株式上場を果たした事業年度より、業績は減収減益が続く。新たな株主の主導の下、新チャネルの開拓、新会社の設立、M&A、中国への進出に加え、不採算ブランドからの撤退、本社移転や人件費をはじめとした固定費の削減に努めたが業績は回復せず、スピーディーな構造改革推進のため2010年3月、上場を廃止した。

 

上場廃止後、業績回復を目指すために招聘されたのが(株)アダストリア(東証1部、2685)の元社長 石井 稔晃(としあき)氏である。
2010年6月に代表取締役執行役員社長に就任した石井氏は、2011年3月にショッピングセンター向けトドラーサイズのブランド「petit main」(プティマイン)の店頭販売を開始させるほか、ECシステムの刷新を行うなど、これまでの百貨店中心の出店から、ショッピングセンターへの出店およびeコマースの強化へと経営資源を集中させ、事業ポートフォリオの転換を図る。
加えて、仕入れ体制の見直し、効果的な経費削減なども進め企業体質の変革に成功し、業績は順調に回復。

 

2018年9月、東京証券取引所市場第2部に上場し、2019年9月には市場第1部に指定された。
なお、上場廃止後、株主の交代に伴う株式譲渡・吸収合併・商号変更などを経て、2018年3月に現在の株式会社ナルミヤ・インターナショナルが誕生しており、上場廃止前の株式会社ナルミヤ・インターナショナルとは形式上は同一会社ではない。

 

【1-2 経営理念】

以下のようなビジョン、ミッション、バリューを掲げている。

 

ビジョン

世代を超えて愛される企業へ

ミッション

創造的な事業活動を通して「一瞬を」「ライフスタイルを」「未来を」創る

バリュー

一人ひとりがプロフェッショナルとして、今、行動する

 

【1-3 市場環境】

経済産業省の商業動態統計:百貨店・スーパー商品別販売額によれば、百貨店における衣料品販売額は1990年代前半をピークに減少が続いており、2018年の販売額は衣料品合計、婦人・子供服・洋品ともにピーク比45%の水準。
デフレ経済の進行、消費者マインドの変化など百貨店を取り巻く環境は厳しく、今後も大きく良化することは期待しにくいであろう。

 

 

ただ、同じく商業動態統計の業種別商業販売額(小売業)を見ると、2018年の「織物・衣服・身の回り品」販売額はピークであった1991年の約7割まで減少しているものの、下げ止まり横這いとなっている。
単純な比較はできないものの、百貨店以外の販売チャネルは堅調な推移を示していると推測することができる。

 

 

一方、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、2018年の「衣類、服装雑貨等」のBtoC-EC市場規模は1兆7,728億円で前年比7.7%の増加。2013年からのCAGRは8.8%と成長を続けている。
またEC化率(電話、FAX、Eメール、対面等も含めた全ての商取引市場規模に対するEC市場規模の割合)も着実に上昇しており、アパレル市場におけるECのウェイト・重要性は今後ますます高まることとなろう。

 

 

【1-4 事業内容】

ベビー・子供服をSPA(製造小売)形態で展開している。

 

(1)取扱ブランド
各販売チャネルごとに、以下のようなベビー・トドラー、ジュニア向けブランドをラインアップ。
2020年2月現在のブランド数は、ベビー・トドラー14、ジュニア7の合計21。

 

①ベビー・トドラー(0歳~7歳)向け主要ブランド
◎百貨店

 

 

女の子が誰よりも可愛くなれる、ロマンティック&スウィートなテイストのブランド。カジュアルウェアからフォーマルドレスまで幅広く展開。

 

 

スウェーデン語で「洋服ダンス」を意味する「クレードスコープ」。衣服を通して心を育てる「服育」がテーマのブランド。

 

 

自然や生命の不思議に目を見はる、その感性へのオマージュとして生まれたブランド。ナチュラルカラーをベースに、季節の花や果実など、身近な自然界をモチーフにしたデザイン。 愛らしく、でも甘すぎず、細部にこだわったディテールが特徴です。しなやかな風合いと心地よい肌触りのために、厳しいアメリカ認定のオーガニックコットンを使用しています。

 

 

◎SCブランド

 

 

トレンドファッションに子どもらしさをプラスした、デイリープライスで楽しめるガールズ&ボーイズブランド。ママをはじめ、活動的な女性に向けたレディースライン「リアン」とリンクコーディネートを楽しめます。

 

 

着心地よくリラックスしたデイリーウェアを提供するユニセックスブランド

 

 

「つながり」が語源である「LIEN」(リアン)はさりげなくトレンドをプラスしたシンプルでクリアなアイテムをあそび心のあるスタイリングで提案。ママをはじめとした活動的な女性のライフスタイルシーンに溶け込み、大人と子どもはもとより大切な人とのつながりを彩ります。

 

 

◎ライセンスブランド

 

 

「ドリーミー」・「クラシック エレガンス」・「スウィート グランジ」がキーワードの、ANNA SUIの子ども服ブランド。

 

 

1993年にニューヨークで誕生したケイト・スペード ニューヨークは、ハンドバッグ・アパレル・ジュエリー・シューズ・チルドレンズウェア・ギフトなどを展開するライフスタイルブランドです。楽観的で女性らしいアプローチで毎日のパーソナルスタイルを称賛し、若々しいスピリットと自信に溢れた女性たちを応援しています。

(同社ウェブサイトより)

 

②ジュニア(8歳~15歳)向け主要ブランド
◎百貨店

 

 

華やかでロマンティックな女の子のためのブランド。上品なスタイルから、トレンド感のあるカジュアルスタイルまで展開。

 

 

フレンチテイストのカジュアルブランド。モノトーンやパステルのカラーリングにトレンドをプラスした、上品なデイリー&スクールウェアを提案。

 

 

アメリカンカジュアルをベースに、トレンドMIXしたスタイルを、明るく元気にカッコ良く着こなす男の子のブランド。

 

◎SCブランド

 

 

アメカジ・ロック・ガーリッシュなど、トレンドをテイストMIXして着こなす元気な女の子のためのブランド。

(同社ウェブサイトより)

 

(2)販売チャネル
沿革で触れたように、従来は百貨店チャネル販売を中心としていたが、ショッピングセンターとの強いパイプと実績を有する石井社長のリードによりSCチャネル開拓を積極的に進めている。19年2月期には初めてSCチャネル売上が百貨店チャネル売上を上回った。また、Eコマースチャネル強化も積極的に推進している。

 

 

 

 

①百貨店
主に都市部の大手百貨店に展開している。1985年にベビー・トドラーを主要顧客とするブランド「MINI-K」(ミニケー)により子供服業界へ進出し、1988年には現在も主力ブランドの一つである「mezzo piano」(メゾピアノ)がデビュー。1991年には、ジュニアブランド第1号の「ANGEL BLUE」(エンジェルブルー)を発表した。「ジュニア服」という新市場を開拓し、その後も次々と新ブランドを発表してきた。ただ、百貨店市場が今後大きく成長する可能性は低いため、現状を維持しつつ収益性の向上を図る考えだ。

 

②ショッピングセンター
2005年、ショッピングセンター1号店を出店。イオンモールやららぽーと等、都市近郊及び郊外のショッピングセンターに直営店舗を展開している。
2009年には百貨店系アパレルブランドよりも低価格帯で商品を展開するジュニアブランド「Lovetoxic」(ラブトキシック)を発表。2011年には、「Lovetoxic」同様、ショッピングセンター向け低・中価格帯ブランド「petit main」(プティマイン)をデビューさせた。ユニセックスブランドである「petit main」は0歳から7歳の男女を主要顧客層としている。

 

 

③アウトレットモール
2006年、アウトレット1号店として「りんくうプレミアム・アウトレット」へ出店した。三井アウトレットパークやプレミアム・アウトレットを中心とする郊外のアウトレットに直営店舗を展開している。

 

④Eコマース
2008年、Eコマース事業に本格的に注力し始め、直営のオンラインショップである「NARUMIYA ONLINE」をオープンした。
自社サイトに加え、ZOZOTOWN、楽天、Amazon等の他社通販サイトにも出店し、顧客の利便性および自社ブランドの認知度向上を図っている。
2020年2月期のEC化率は19%。
自社ECサイト比率は2020年2月期46%。2022年2月期60%を目指している。
ECサイト会員数は2020年2月末約49万人。リアル店舗とのID統合により大幅に増加した。

 

2018年8月より中国アリババグループが運営する世界最大のBtoC-ECサイト「天猫(Tmall)」へ、中国企業へのライセンスアウトによる出店を開始した。
同社の主力ブランド「petit main」は2018年11月11日(独身の日)に約3,000万円を売り上げ、初参加ながら子供服カテゴリーで全体の367位に入り、翌2019年は187位に上昇した。ちなみに日本における「petit main」の平均日販は約100万円である。

 

また、2019年3月に男児向けカジュアルウエアを中心に企画販売を行う株式会社ハートフィールの全株式を取得し子会社し
た。ハートフィール社はEコマース比率が90%以上と、Eコマースに特化した事業を展開している。
女児ブランド中心のナルミヤ・インターナショナルにとってはブランドポートフォリオ拡充およびEC強化に繋がるものである。

 

 

⑤その他
地方百貨店やアパレル専門店への卸売販売及び自社ブランド商標のライセンス販売を行っている。

 

(3)新事業への取り組み:ハウススタジオ事業
子供服の製造・販売を手掛けてきた同社だが、今後は提供すべき価値をモノ(洋服)からコト(サービス)へ拡大することで、キッズライフスタイル企業へ進化することを目指している。
その第一歩として、写真館「LOVST」と業務提携し、2018年9月にマリン アンド ウォーク横浜にフォトスタジオ「LOVST BY NARUMIYA」をオープンした。このサービスは、同社の子供服300着から衣装を選び、日常の風景やライフイベントを思い出として写真撮影するというもの。フォトスタジオでレンタルした同社の洋服を写真撮影後の購入に繋げるなど、既存事業とのシナジーも見込んでいる。客数・客単価ともに順調に拡大している。

 

(同社資料より)

 

 

【1-5 特長と強み】

(1)マルチチャネル・マルチブランド戦略
百貨店、SC、ECとバランスの良い販売チャネル展開に加えて、それぞれのチャネルにあった数多くのブランドをラインアップしている点は他社には見られない同社の大きな特長・強みである。
ベビーからジュニア(0歳から15歳)までの幅広い年齢層や価格帯をカバーしており、ロングセラーのブランドだけでなく、その時々の市場の動きを捉えたブランドを、タイミングよく最適なチャネルに配置していくことが可能である
今後も、ハートフィール社のケースの様にM&Aも活用しながら、差別化された複数のブランドを構築し、各チャネルにおける空白領域を埋めていく考えだ。

 

(同社資料より)

 

(2)2チャネルの両立が可能なマーチャンダイジング能力
百貨店とSCでは顧客層及びニーズが異なるため、それぞれ適切なブランドを展開する必要があり、加えてサプライチェーンが下記のように全く異なるため百貨店からSCへ、逆にSCから百貨店へとチャネルを広げるのはいずれも容易ではない。

 

(チャネルごとのサプライチェーンの特長)

販売チャネル

サプライチェーンの特長

リードタイム

百貨店

高価格帯の商品を提供するため、価格以上のクオリティの商品を小ロットで生産可能とするサプライチェーン

長い

SC

中価格帯の商品を提供するため、ファッション性とコストパフォーマンスを両立させるサプライチェーン

短い

 

これに対し、同社は百貨店、SC両チャネルにおけるサプライチェーンマネジメントの仕組みを既に構築済み。
2チャネルを両立できるマーチャンダイジング能力を有していることから、収益源を分散することができており、この点も特筆すべき強みである。

 

特に今後のNo.1成長ドライバーと位置付けているSCチェーンにおける、同社の競争優位性に注目したい。
同社は、強力な企画力と国内外のトレンドおよびブランド情報に関する収集ネットワークを活かし、子供服のトレンドを逐次把握しており、この情報を元に、多様な商社との強固な製品調達ネットワークにより、シーズン中でも売れ筋商品を追加投入することができる
この短期間での商品投入が可能な柔軟な企画・製造・販売システムによって同社は機会損失を減少させ、売上最大化を追求することが可能である。

 

(3)トップクラスのブランド力
同社ブランドはラインアップの幅広さのみでなく、クオリティの高さも大きな特長である。
大手業界紙「繊研新聞」が実施した「2019年度 繊研キッズファッション賞」においては、SC部門において「petit main」が大賞、ジュニア部門で「Lovetoxic」が受賞した。また、百貨店ジュニア部門でも 「mezzo piano junior」、同トドラー部門でも「Xgirl」が受賞するなど、トップクラスの評価を受けている。

 

(4)優良な顧客資産
長い年月をかけて子供服のトップブランドを築き上げてきた同社顧客層の顧客ロイヤルティ(※)は極めて高い。
この顧客資産は安定した販売基盤であると同時に、新たなブランド開発や事業展開に繋がるニーズを吸い上げることもできるなど、同社の企業価値を構成する重要な見えない資産となっている。
※顧客ロイヤルティ:顧客があるブランドや商品、またはサービスに対して感じる「信頼」や「愛着」のこと

 

2.業績概要

【2-1 2020年2月期決算概要】

(1)損益概要

 

19/2期

対売上比

20/2期

対売上比

対前期比

対予想比

売上高

29,700

100.0%

32,962

100.0%

+11.0%

-0.1%

売上総利益

15,937

53.7%

17,793

54.0%

+11.6%

-0.6%

販管費

14,312

48.2%

16,128

48.9%

+12.7%

-0.4%

営業利益

1,625

5.5%

1,664

5.1%

+2.5%

-2.8%

経常利益

1,505

5.1%

1,622

4.9%

+7.8%

-1.5%

当期純利益

926

3.1%

999

3.0%

+7.8%

-0.8%

*単位:百万円。19年2月期は抱合せ株式消滅差益875百万円調整後の単体実績。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

 

増収増益
売上高は前期比11.0%増の329億62百万円。引き続きSCルート、Eコマースともに2桁増収で好調。既存店売上高は同1.9%増収。全店売上高は同7.8%増だった。
営業利益は同2.5%増の16億64百万円。歩合家賃、他社通販サイト出店料など販管費も同12.7%増加したが増収及び粗利率改善で吸収した。ハートフィールののれん償却額は45百万円。

 

(2)販売チャネル別動向

売上高

19/2期

構成比

20/2期

構成比

前期比

百貨店

9,796

33.0%

9,060

27.5%

-7.5%

SC

11,770

39.6%

13,634

41.4%

+15.8%

Eコマース

4,286

14.4%

6,095

18.5%

+42.2%

売上総利益

 

 

 

 

 

百貨店

5,157

52.6%

4,658

51.4%

-9.7%

SC

6,977

59.3%

8,235

60.5%

+18.0%

Eコマース

2,239

52.2%

3,255

53.4%

+45.4%

*単位:百万円。ナルミヤ単体。売上総利益の構成比は売上高利益率。

 

①百貨店
減収減益。
売上は下げ止まらず依然苦戦中で、特にジュニアブランドが不振である。
売上高は期初予想97億円を下回る。
新規出店20、退店30で期末店舗数は575店舗。

 

②SC
増収増益。
既存店売上高も前年同期比2.6%増と成長トリガーとして引き続き好調だった。
プティマイン、ラブトキシックともに上期は好調だったが、下期は暖冬、新型コロナウィルスの影響を受けた。
売上高は期初予想131億円を上回った。
新規出店24、退店2で期末店舗数は184店舗。順調な進捗である。

 

③Eコマース
増収増益。
ハートフィール社子会社化も寄与した。
ほぼ予想通りの売上。

 

2019年4月のSCとの顧客ID統合により自社サイト会員数は49万人と前期末から28万人増加した。
百貨ブランド、SCブランド共に前期比でそれぞれ9%増、30%増と増収。
自社サイト売上比率は前期の43%から46%へ上昇した。

 

2018年8月に進出した中国Tmallにおけるパートナー企業の売上高は前期(下期のみ)200百万円から通期368百万円に拡大。コロナウィルスの影響の中、下期も堅調だった。
Tmallには子供服ブランドが全部で3,000ブランド販売されているが、中国EC「独身の日」(毎年11月11日実施)イベントでの売上ランキングは2018年の367位から2019年には187位にランクアップ。売上高は168%増で、中国市場でも一定の評価を得ている。同社が強みとする女児服の構成比向上に向けた取り組みを進めている。

 

④ハウススタジオ事業
フォトジェニックなハウススタジオとして人気が上昇中。客単価、客数がそれぞれ前期比139%増、177%増と順調だった。
顧客対応オペレーションの改革により効率性が向上した。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー
①主要BS

 

19年2月末

20年2月末

 

19年2月末

20年2月末

流動資産

8,233

8,580

流動負債

5,263

5,656

 現預金

1,847

2,488

 仕入債務

2,698

2,488

 売上債権

2,309

2,607

 短期借入金

450

595

 たな卸資産

3,694

3,394

固定負債

5,362

5,319

固定資産

5,948

6,730

 長期借入金

4,325

4,404

 有形固定資産

1,100

1,129

負債合計

10,626

10,975

 無形固定資産

3,321

3,618

純資産

3,556

4,335

  のれん

3,129

3,363

 利益剰余金

1,515

2,207

 投資その他の資産

1,527

1,981

負債純資産合計

14,182

15,310

資産合計

14,182

15,310

借入金残高

4,775

4,999

 

 

 

自己資本比率

25.1%

28.3%

*単位:百万円。19年2月末は非連結、20年2月末は連結。文中増減は参考数値。

 

現預金、のれん、投資その他の資産が増加し総資産は前期末比11億27百万円増加の153億10百万円。ハートフィール買収に伴う長短借入金の増加などで負債は同3億49百万円増加の109億75百万円。利益剰余金の増加などで純資産は同7億78百万円増加の43億35百万円。自己資本比率は前期末より3.2ポイント上昇の28.3%。

 

②キャッシュ・フロー

 

19/2期

20/2期

前期比

営業CF

1,551

2,319

+768

投資CF

-459

-822

-363

フリーCF

1,092

1,497

+405

財務CF

-1,230

-856

+374

現金及び現金同等物

1,847

2,488

+641

*単位:百万円。19年2月期は単体実績。文中増減は参考数値。

 

営業CF、フリーCFのプラス幅は拡大。キャッシュポジションは上昇した。

 

【2‐2 2021年2月期業績予想】

(1)新型コロナウィルスの影響
2月後半から影響が出始め、3月、4月と店舗売上高は大幅に減少。EC販売は堅調である。
外出自粛や、商業施設の臨時休業及び営業時間短縮などにより、売上高に影響する状況が続いており、2021年2月期の連結業績予想は合理的な業績予想の算定が困難であるため公表していない。今後適正かつ合理的な算定が可能となった時点で速やかに開示することとしている。

 

(2)主な対策

 

主な影響

現状と今後の対策・取組み

中国生産

主な生産拠点である中国からの納品遅延

*3月中旬から中国からの納品状況が改善・回復

 

*生産の中国依存脱却に向け、他国での生産拠点開拓を加速

リアル店舗

客足と売上高の減少

*百貨店の構造改革

・人員縮小とSCなどへの積極的な配置転換

・非正規雇用の縮小(3.5億円程度の削減)

 

*テナント賃料の減額交渉中

 

*今期の出店計画は計画通りに実施予定

(SC:20店舗、フォトスタジオの多店舗化)

EC

昨対126%と順調(3月)

UI(顧客視認性)や新サービス(顧客利便性)に対しての投資は緩めず、積極投資を継続(約7000万円)

中国事業

Tmall売上高の一時的な減少も3月回復中

*EC専業のため、影響は限定的

*中国の感染状況改善で、3月以降は回復傾向に

全社経営

売上高減少による収益性への影響

*売上高連動以外の販管費の削減

・広告宣伝費など、1億円程度の削減を予定

 

*景気回復後に向けた投資

・Eコマースおよび店舗IT化への積極投資

・物流拠点の移転によるコストダウンの計画

(同社資料より。2020年4月16日時点)

 

3.石井社長に聞く

石井社長に前期決算のポイント、今後の取り組みなどを伺った。

 

(1)2020年2月期決算のポイント

百貨店チャネルは引続き厳しい状況が続いている。百貨店離れの流れが留まることはなく影響は避けられない。
今後は人件費の圧縮、ジュニアブランドの縮小を進める一方、新外資系ブランドの投入、大型百貨店への店舗展開(3年で30店舗)など攻めの戦略も進める。

 

一方SCチャネルは計画以上の出店を行い、既存店及び全店ベースで順調だった。ただ、新型コロナウィルスの影響により現時点(4月29日)で店舗数の約97%の店舗が閉店となっているため、大変厳しい状況だ。当社ではSCチャネルを成長ドライバーの一つと位置付けているが、今回の件で、常に年間20店舗の出店という数字の達成を目指すだけではなく、ハウススタジオ事業や新ブランドのボーイズマーケットの開拓など出店の中身もより吟味していこうと考えている。

 

eコマースについてはハートフィール社の買収もあり大幅増収となった。顧客サービスの一層の充実を目指し、今期も更に様々なトライアルを進めていく。
eコマース上で23のブランドを持つ当社の強みを更に発揮するにはきめ細かい顧客サービスが不可欠だ。
当社の事をご存知のお客様だけでなく、初めて当社サイトに来ていただいたお客様にも、多くのブランドの中で希望するブランド・商品のページにわかりやすく辿り着くことができるようなウェブサイトを構築することがカギとなるが技術的には可能であり、今回の危機の中でもスピードを持ってそうした施策を進めてeコマースをパワーのある販売チャネルに押し上げていく。
ID統合効果により会員数も大きく拡大したので、こちらも更なる拡大を目指していく。

 

ハウススタジオ事業は、これまではお客様一組を2名のスタッフで対応していたのを1名で可能なオペレーションを構築し、研修を積んできた結果、効率が大幅に改善した。
受け入れられるお客様の数が増えたほか、アルバムやカレンダーなどアウトプットの形式を工夫した結果、客単価も大きく上昇した。
こういう状況であるが、着実の店舗数を拡大させていこうと考えている。

 

(2)新型コロナウィルスへの対応

子供服を扱っている当社としては入園・入学シーズンという上半期で最も収益の上がるタイミングでの今回の事態は正直痛い。まだ緊急事態宣言がいつ取り下げられるかは不明なので、まずはECを通じてSCチャネルの在庫圧縮を進めている。
ただ、当社は今回の事態の前から少子化日本の中で上場企業としてのアドバンテージを活かして残存者利益を得てシェアを上げていくという戦略を進めていた。今回は傷を負うのは避けられないが、それは同業他社も同じなので、当社の強みを活かしてこの戦略を着実に進めていきたい。現時点で具体的にシェアが何%という風にはお答え出来ないが、ショッピングセンターなどの現場を見ていると手応えは十分感じている。
生産の中国依存からの脱却はベトナム、ミャンマーでの展開を進めているが、ボリュームとしてはまだまだ小さい。スピード感を持って進めていきたい。

 

(3)中長期戦略

①ブランド開発
長い年月をかけて子供服のトップブランドを築き上げてきた当社の顧客ロイヤルティは極めて高い。
そうしたお客様からは、『子供が大きくなってもそのブランドの「お姉ちゃん版」を作って欲しい』というお声をたくさんいただくことから、今年からSCブランドの「プティマイン」のサイズアップ企画である「リセマイン」を立ちあげた。
また、百貨店においては既存ブランドだけでお客様にニーズを満たすのは難しいため、今秋から新しいデザイナーを招聘し、厳しい市場ではあるが、チャレンジも行っていく考えだ。

 

②中国EC展開
中国ECにおいては「プティマイン」をメインブランドとして展開しているが、もともと女子メインのブランドであるにもかかわらず中国では男子向けが売れて女子向けが想定通りには売上が上がらない。
これは、日本のプティマインのファッショントレンドと中国ローカルニーズに相違があるためで、ローカルニーズに対応できる商品開発が必要だということだ。
そこで、ボーイズマーケットをうまく攻略すべく人選をしてきた結果、中国事情にも詳しい人材を獲得することができた。
残念ながらこうした状況なので電話やメールが中心の活動となっているが準備は着実に進んでいる。

 

4.今後の注目点

新型コロナウィルスの影響がどの程度なのか現時点では不明であるため、投資家としてはまずは第一四半期の結果を待つしかない状況である。
ただ、石井社長も述べているように、少子化日本での残存者利益獲得を基本戦略として、的確なマーケティングで他社が撤退したフィールドに参入したり、M&Aによって新たなブランドを獲得したりすることで成長を追求する同社にとっては、足元は厳しいにせよ決してマイナスばかりではない。

 

石井社長は「アフター・コロナ」について、個人の消費行動に変容が起きる中で懸念もある一方、新たなビジネスチャンスも生まれるのではないか、マーケティングの結果としての消費者のニーズをどれだけ吸い上げることができるかが今後の大きな分岐点になるのではないかと考えている。
そうした中で、ECチャネルの強化・拡充は、短期的にも中長期的にも今後の成長スピード加速に向け大きなカギを握ることとなろう。

 

<参考1:今後の成長戦略>

(1)各チャネルの取り組み

百貨店中心の販売形態から、石井社長就任後、SC、Eコマースを強化してきた同社は各チャネルにおいて以下のような取り組みを進めていく。

 

 

①SCチャネル
引き続き同社成長を牽引するNo.1のトリガーである。
成長を続けてきた国内のSC総数は現在約3,200で、ここ数年はほぼ横這いの推移となっている。同社ではこのうち約1,200のSCを出店ターゲットと想定しているが、2020年2月末のSC直営店舗数は184店。出店余地は依然として大きい。

 

そうした中、SCチャネルにおける販売力を更に強化するためにショッピングセンターブランド専門の「SC事業部」を組成し、経営資源の集中とブランド運営の更なる効率化を進めている。
SC間の優勝劣敗が明らかになりつつあることから、より精緻に出店先を選別し、成長が続く優良SCへの出店を推進する。また、収益力を向上させるために、事業規模の拡大によりボリュームディスカウントを実現するほか、各種原価低減施策により高い粗利を確保する。

 

また、ファッショントレンドをいち早く捉え、企画・製造・販売のビジネスサイクルを更に短縮化する。
「特長・強み」でも触れたように、企画力、情報収集力、製品調達力に優れた同社はシーズン中でも売れ筋商品の追加投入が可能であり、この優位性を活かしてSCチャネルにおける売上高を一段と拡大させていく。

 

②Eコマース
急成長するEコマースチャネルについては第2の成長トリガーと位置付け、以下のような取り組みによって更に成長させる。

取組み

具体的な施策

消費者が選びやすく購入しやすい自社ECサイトの構築

*購入者が増えるスマホ向けサイトの利便性向上

*アプリの開発

顧客データ活用の強化

*顧客IDの統合とCRM強化

*オムニチャネル化を進め、リアル店舗とネットの双方による強固な顧客接点の実現を目指す。

優良顧客の囲い込み

*購買履歴などから最適な商品を提案

*ポイント特典など顧客サービスの充実(ロイヤルティの向上)

 

③百貨店チャネル
百貨店チャネルの売上高を大きく成長することは難しいが、以下のような取り組みによって着実な伸長、顧客基盤の強化、収益性の改善を図る。
*多ブランド展開の強みを活かし残存者利益を享受
競合が撤退した売場スペースに自社の他ブランドを追加し、売場シェアを拡大させる。
また、適宜必要に応じて新規ブランドを投入できる体制を構築する。

 

*ロングセラーブランドの顧客維持
子供服に特化したアパレルとして歴史のある同社は場合によっては3世代にわたる関係性の濃密な顧客層を有している。
こうした顧客との付き合いの長いスタッフによる関係の維持・深化、顧客のライフステージに適した施策を実施することで顧客基盤の更なる強化を図り、LTV(※)の最大化を目指す。
※LTV: Life Time Value。一人の顧客が生涯で、商品またはサービス購入に使用した金額を指す。LTVが高いということは、その顧客が自社商品やサービスを何度もリピートして購入、使用してくれていることを意味する。

 

*不振ブランドの休止と新外資系ブランドの投入
ジュニアブランドにおける不振ブランドを休止し、新たな外資ブランドを投入することで、売場を活性化させる。

 

*人件費抑制による事業の効率化
異なるブランドの売場を近接させるなどして販売効率を引き上げる。

 

この他、通常、百貨店チャネルでは従来の商習慣などからシーズン中の商品追加投入は難しいが、SCチャネル同様に短期間での商品調達・投入ができるようなシステム構築を目指し、百貨店側への働きかけを進めていく。

 

 

(2)中国市場への進出

中国のアパレル市場は2020年までに約54兆円と世界最大の市場となると予測されている。また、子供服に関しても「一人っ子政策」の影響により出生数自体はほぼ横這いとなっているが、年間出生数は約1,700万人と、100万人に満たない日本と比較してそのボリュームは圧倒的である。
前述のように、同社は2018年8月、中国のビジネスパートナーへのライセンスアウトにより、Tmallへ出店した。
これを足掛かりとし、様々な形態によって本格的に巨大な中国市場を開拓していく。
また、他アジア近隣諸国へのリサーチも開始する。

 

(3)コト・サービスへの展開

これも前述のように、子供服の製造・販売を手掛けてきた同社は、今後は提供すべき価値をモノ(洋服)からコト(サービス)へ拡大することで、キッズライフスタイル企業へ進化することを目指している。
その第一歩として立ち上げた、ハウススタジオ事業は順調な立ち上がりを見せている。
今後も強みである、トップクラスのブランド力や優良な顧客資産を活かして新たなフィールドでの事業展開に取り組んでいく。

 

(4)M&Aやアライアンスの推進

ハートフィール社のケースに見られるように、子供服の中でもまだ手付かずのポジションをM&Aやアライアンスによってカバーしマルチブランド戦略を更に強化する。

 

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

6名、うち社外4名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2019年5月30日

 

<基本的な考え方>
当社は企業行動憲章の中で、世界の子供たちの夢を育み、子供たちに充実した豊かな暮らしを提供する企業として、子供たち、お客様、株主・投資家のみなさま、取引先のみなさま、地域社会のみなさまとの信頼関係を築き、私たちに対する期待に誠実にお応えし、社会的責任を果たすために、次の10の行動原則を掲げております。

 

(1)社会的に有用な製品・サービスを安全性や個人情報・顧客情報の保護に十分配慮し開発、提供し、常にお客様の満足と信頼を獲得するよう行動します。
(2)公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行います。また、政治、行政との健全かつ正常な関係を保ちます。
(3)株主はもとより、広く社会とのコミュニケーションを行い、企業情報を積極的かつ公正に開示します。
(4)従業員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現します。
(5)環境問題への取り組みは人類共通の課題であり、企業の存在と活動に必須の要件であることを認識し、自主的、積極的に行動します。
(6)「良き企業市民」として、積極的に社会貢献活動を行います。
(7)市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力および団体とは断固として対決します。
(8)国際的な事業活動においては、国際ルールや現地の法律の遵守はもとより、現地の文化や習慣を尊重し、その発展に貢献する経営を行います。
(9)経営トップは、本憲章の精神の実現が自らの役割であることを認識し、率先垂範の上、社内に徹底するとともに、取引先に周知します。また、社内外の声を常時把握し、実効性のある社内体制の整備を行うと共に、企業倫理の徹底を図ります。
(10)本憲章に反するような事態が発生したときには、経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、原因究明、再発防止に努める。また、社会への迅速かつ的確な情報の公開と説明責任を遂行し、権限と責任を明確にした上、自らを含めて厳正な処分を行う。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則1-2.(4)議決権の電子行使、招集通知の英訳】

当社は、招集通知の英訳を行っておりますが、議決権の電子行使ができる環境づくりを構築しておりません。今後において、議決権の電子行使を可能とする環境づくりを検討してまいります。

【原則1-4 政策保有株式】

(1)政策保有株式に関する方針

 

当社は、取引関係強化等の中長期的な視点も踏まえた上で、取引先の株式を保有しておりますが、当社の資産効率に極めて影響の少ない範囲での保有であります。そのため、当社では定期的に政策保有株式の保有の適否に関する検証を実施することまでは考えておりません。ただし、経営判断により随時保有の意義が失われたと認められる場合には、売却等による処分を検討します。

 

(2)政策保有株式に係る議決権行使について適切な対応を確保するための考え方について

 

政策保有株式の議決権行使に関する基本的な考え方は以下のとおりであります。

当社は、政策保有株式に係る議決権の行使については、投資先企業が適切なガバナンス体制を構築し中長期的な企業価値の増大につながる適切な意思決定を行っているかという観点を踏まえ、議案毎に賛否を総合的に判断します。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>

原則

開示内容

【原則3-1 情報開示の充実】

(1)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画

企業理念や中期経営計画については、当社ウェブサイト、決算説明資料等にて開示してまいります。

 

(2)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針

当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針については、本報告書「Ⅰ コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報 1.基本的な考え方」をご参照下さい。

 

(3)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続

当社は、コーポレート・ガバナンスの強化の一環として、取締役・執行役員の人事及び報酬制度に関する審議ならびに取締役会に対する答申を行うことにより経営の客観性と合理性を高め、企業価値の最大化を図ることを目的とする指名報酬委員会を設けております。なお、当委員会は、代表取締役社長及び全ての非業務執行取締役から構成され、委員長は、非業務執行取締役の中から委員の互選によって選定されます。

 

(4)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補者の指名を行うに当たっての方針と手続

取締役会は、取締役・監査役としてその役割・責務を適切に果たし、豊富な経験・高い見識・優れた人格を有する者を候補者に選定いたします。取締役・執行役員の選解任については、客観性や透明性を確保するため、取締役会または代表取締役社長が会社の業績等の評価を基に指名報酬委員会に諮問し、同委員会の答申を踏まえ取締役会が決定しております。なお、監査役候補者の指名については、監査役監査基準に基づきこれを行い、指名手続きは、監査役会規程に基づき監査役会の同意を得ております。

 

(5)取締役・監査役候補者の個々の選解任・指名理由

取締役・監査役候補者の個々の選任・指名理由については、株主総会招集通知に記載してまいります。解任が行われる場合には、方針と手続に則り適宜適切に開示いたします。

【原則5-1 株主等の建設的な対話に関する方針】

当社の株主等との建設的な対話を促進するための体制整備及び取組等に関する方針は、以下のとおりであります。

(1)企業価値向上に資するIR活動を推進するため、情報開示担当役員をIRの統括責任者として、経理部及び経営企画室が連携を図ってまいります。

 

(2)株主等との対話は、経営企画室が窓口となり、合理的な範囲で代表取締役社長または情報開示担当役員が対応してまいります。

 

(3)定期的に株主調査を行うことで株主構成の把握に努め、より効果的なIR活動の実施を目指してまいります。

 

(4)機関投資家・アナリストに対し、定期的に決算説明会を開催するほか、事業の進捗に応じて個別にミーティングや説明会を実施してまいります。また、個人投資家に対しては、迅速性・利便性を重視した情報提供に努めていく予定であります。

 

(5)開示資料作成にあたっては、決算短信・有価証券報告書・計算書類等の決算情報は経理部が中心となり、その他の開示資料は経営企画室が中心となり、経理部・経営企画室・人事総務部が連携を図り、適切な情報収集とともに開示情報の正確性を期してまいります。さらに、開示資料等は当社ウェブサイト上に英語版も併せて開示してまいります。

 

(6)株主・投資家等の対話の中で把握された意見・懸念については、適宜経営企画室から取締役会へ報告をしてまいります。

 

(7)株主との対話にあたっては、法令および関連規則等を遵守し、インサイダー情報を適切に管理しております。

 

 

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