ブリッジレポート
(1716) 第一カッター興業株式会社

プライム

ブリッジレポート:(1716)第一カッター興業 2020年6月期第2四半期決算

ブリッジレポートPDF

 

 高橋 正光 社長

第一カッター興業株式会社(1716)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

建設業

代表者

高橋 正光

所在地

神奈川県茅ケ崎市萩園833番地

決算月

6月

HP

http://www.daiichi-cutter.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,688円

5,691,631株

9,607百万円

12.5%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

22.00円

1.3%

189.75円

8.9倍

1,981.09円

0.9倍

*株価は02/28終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2016年6月(実)

12,857

1,733

1,780

1,115

196.01

12.00

2017年6月(実)

12,840

1,412

1,473

990

174.01

15.00

2018年6月(実)

16,283

2,187

2,263

1,487

261.37

25.00

2019年6月(実)

14,871

1,760

1,843

1,251

219.80

20.00

2020年6月(予)

15,700

1,730

1,856

1,080

189.75

22.00

* 予想は会社予想。単位は百万円、円。

 

 

第一カッター興業株式会社の2020年6月期第2四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年6月期第2四半期決算概要
3.2020年6月期業績予想
4.今後の計画 - 中期経営計画(19/6期~21/6期) -
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 20/6期上期は前年同期比19.6%の増収、同32.1%の営業増益。輸送インフラ関連がけん引する中、建築関連のウォータージェット工法に強い(株)アシレの子会社化効果もあり、主力の切断・穿孔工事が同24.1%増加。水道工事や空港工事等の収益性の高い案件の寄与や変動費・販管費のコントロールで営業利益率が14.2%と1.3ポイント向上した。

     

  • 通期予想に変更はなく、前期比5.6%の増収、同1.7%の営業減益。オリンピック開催期間中及びその前後は首都圏での工事の減少が予想されるため、下期の見通しは慎重。高速道路のリニューアル工事の受注強化で来期に備える考え。引き続き採用・育成にも力を入れる。来21/6期は一過性の要因がなくなり、20/6期予想比で10.8%の増収、10.4%の営業増益を計画している。

     

  • 通期予想に対する進捗率は、売上高56.7%(通期実績ベースの前年同期50.0%)、営業利益73.2%(同54.4%)。上振れペースで進捗しているが、オリンピックの影響による不透明感から保守的に通期予想を据え置いた。ただ、中期的な見通しは明るい。高度経済成長と共に整備が進められてきた各種インフラが改修・補修期を迎えており、改修・補修工事と相性の良い切断・穿孔工事で業界最大手である同社のビジネスチャンスは拡大している。生産性の向上と働きやすい職場環境の整備を進めつつ、業容を拡大させていく考え。

     

     

1.会社概要

ダイヤモンド工法とウォータージェット工法による専門技術を強みとする社会インフラの維持補修工事を展開しており、ビルメンテナンスやIT機器のリユース・リサイクルも手掛ける。ダイヤモンド工法は、工業用ダイヤモンドを使って道路や構造物の切断削孔を行う。従来のコンクリート破砕工法では、常に騒音や振動、粉塵等の公害を意識する必要があったが、ダイヤモンド工法は、安全に、スピーディーに、正確に、環境に影響を与える事なく工事を行う事ができる。一方、ウォータージェット工法は、超高圧で水を噴射してコンクリートの結合を破壊する。鉄筋を痛める事なく、ピンポイントでコンクリート構造物の修繕補修が可能。
グループは、ワイヤーソーやコアボーリング工事を手掛ける(株)ウォールカッティング工業、海洋土木(水中での切断穿孔工事)に強い(株)光明工事、沖縄県に拠点を置く(株)新伸興業、建築関連のウォータージェット工法に強い(株)アシレ、及びリユース・リサイクル事業を手掛ける(株)ムーバブルトレードネットワークスの連結子会社5社と、持分法適用関連会社のダイヤモンド機工(株)等。

 

【経営理念 : 特化した技術と高いサービスを持って社会に貢献し、最良のグループとなる事をめざす】

「特化した技術と高いサービスを持って社会に貢献し、最良のグループとなる事をめざす」を経営理念に掲げ、「切る」「はつる」「洗う」「剥がす」「削る」をキーワードに、特化した技術を様々な現場へ提供している。

 

営業方針 : 組織力、展開力を生かし、攻めの営業展開を
工事方針 : 当社の品質である工事力を高めよう
安全方針 : 働く人の健康と安全を促進する

 

1-1 事業内容

事業は、切断・穿孔工事事業、ビルメンテナス事業、及びリユース・サイクル事業に分かれる。切断・穿孔工事業は、同社、(株)ウォールカッティング工業、(株)光明工事、(株)新伸興業、(株)アシレ、ダイヤモンド機工(株)が手掛け、ビルメンテナス事業は同社が、リユース・リサイクル事業は(株)ムーバブルトレードネットワークスが、それぞれ手掛ける。
19/6期の売上構成比は、85.1%、2.3%、12.6%。

 

(同社資料より)

 

 

切断・穿孔工事事業
切断・穿孔工事とは、道路等の各種舗装、及びコンクリート構造物の解体、撤去等に必要な切断工事、穿孔工事の事。同社グループの切断・穿孔工事事業は、工業用ダイヤモンドを使用したダイヤモンド工法(第一カッター興業株式会社の登録商標)、及び水圧を利用したウォータージェット工法を中心に事業を展開している。切断・穿孔工事で発生する排水は回収され、大型中間処理施設で中和され切断水として再利用される。また、切断されたコンクリート等の廃棄物は脱水処理後、コンクリート等の原料へと再生される。

 

グループで全国をカバーしており、同社が東日本全域に、(株)アシレが神奈川・大阪に、(株)ウォールカッティングエ業が主に東海地方に、(株)光明工事が大阪・中四国地方に、(株)新伸興業が沖縄県に、ダイヤモンド機工(株)が九州地方に、それぞれ営業基盤を有している。

 

同社グループは専門工事業者として、インフラの建設工事や維持補修工事の一翼を担っており、主な得意先は総合建設業者、道路建設業者、及び設備業者等。得意先が工事を受注し、コンクリート等の切断穿孔工事を同社グループに発注する。得意先は公共事業関連工事を中心に事業展開しているため、同社グループが施工する工事も大半が公共事業関連工事である((株)アシレは民間分野の客層が大半)。一方、公共事業関連工事以外の工事としては、化学工場・石油プラント・発電所等のメンテナンスやウォータージェット工法による洗浄等が挙げられる。工事を種類別に分類すると、土木工事、建築関連工事、都市土木工事、道路・空港工事、生産設備メンテナンスに分類される。

 

 

主要取引先
大成建設、大林組、鹿島建設、ショーボンド建設、鉄建建設、東鉄工業、JFEエンジニアリング、IHIインフラシステム、野村不動産パートナーズ、大成ロテック、鹿島道路、山九、三菱地所コミュニティ、三井不動産レジデンシャルサービス、NIPPO、日本道路、清水建設、三井住友建設他(順不同)。

 

土木工事

橋梁工事、港湾工事、ダム関連工事といった、大型構造物の補修・撤去工事を行っており、水中など特殊な環境下での切断・穿孔作業の場合にも、専属のオペレーターによる施工を行っている。

建築関連工事

建物解体工事、免震工事、耐震工事、改修工事、新築工事といった、解体・リニューアル工事に伴う各種作業を行っている。また、周辺施設への環境負荷軽減にマッチした施工方法で、従来工法では困難な施にも対応している。

都市土木工事

鉄道工事、廃棄物処理施設工事、上下水道施設工事といった、都市基盤施設における土木関連工事を行っている他、計画立案から施工までトータルで対応する環境関連工事も手掛けている。

道路・空港工事

道路の補修等に伴う各種切断や表面処理、劣化コンクリート除去、空港での滑走路グルーピングや灯火設置のためのコアドリリング等作業を行っている。グルービングマシンやコア特装車といった特定条件での切断・穿孔作業が可能な事が同社の強みである。

生産設備メンテナンス

生産設備メンテナンスでは、工場メンテナンスに伴う各種設備洗浄、改造工事に伴う無火気切断、床の塗り替え、及び下地処理等を行っている。同社では産業洗浄技能士を常駐させる事で、作業の品質と安全を確保している。

 

 

ビルメンテナス事業
同社単独の事業である。集合住宅やオフィスビル等において、排水管清掃、貯水槽清掃、給水設備点検、床清掃、ファイバースコープ調査、機械式ピット清掃等を行っている。

 

 

リユース・リサイクル事業
(株)ムーバブルトレードネットワークス、持分法非適用非連結子会社1社、持分法非適用関連会社2社の事業である。リユース事業では、主に一般企業からタブレット、パソコン、サーバー、液晶ディスプレイ等の中古IT関連機器・OA機器を仕人れ、データ消去及び補修・改修を行った後、主に法人に対してこれらの機器を販売している。また、主に法人向けにIT関連機器のデータ消去を行うサービスや、OA機器のオフィス設置サービスも行っている。リユースが難しい中古品については解体した後、中間処理を行い再資源化を行うマテリアルメーカー・素材業者に販売している。一般的な素材から「金・銀・コバルト等の希少金属」まで再資源化を行う業者への販売を行う。

 

 

1-2 テクノロジー(独自の工法) - ダイヤモンド工法、ウォータージェット工法について -

ダイヤモンド工法
工業用ダイヤモンドを使って道路や構造物の切断・削孔を行う。フラットソーイング、コアドリリング、ウォールソーイング、ワイヤーソーイング、グルービングの5つの基本工法をもとに、独自のアイデアで多種多様なダイヤモンド工法を行っている。

 

ダイヤモンド工法に用いられる工具には、「ダイヤモンドブレード」、「ダイヤモンドビット」、「ダイヤモンドワイヤー」があり、それぞれダイヤモンド砥粒を使用している。「ダイヤモンドブレード」は、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドで焼き固めた(焼結した)チップを基盤の周りに付けたもの。「ダイヤモンドブレード」を高速で回転させる事で対象物を切断する(建材の種類や切断の深さ等に応じてサイズを使い分ける)。「ダイヤモンドビット」は筒状のチューブの先端にダイヤモンドチップの付いた刃先を付けたもの。高速で回転させ対象物を穿孔する(穴の大きさや穿孔の深さによって様々なビットを使い分ける)。「ダイヤモンドワイヤー」はダイヤモンド砥粒をメタルボンドで焼結したビーズをワイヤーに一定間隔で装着したもの。対象物に制約がなく、複雑な形状物であっても切断できる。

 

 

ウォータージェット工法
水を高圧水発生装置によって加圧・圧縮し、ノズルから噴射される高速水噴流で、はつり(コンクリート製品を、削る、切る、壊す、穴を開ける等の作業)・洗浄等を行う。対象物に与えるひずみが少なく、マイクロクラックがほとんど発生しない、低振動等の特徴を有し、環境に配慮した優れた工法として注目されている。
同社は、土木・建築や産業メンテナンス、また環境関連など幅広い分野で活用している。土木・建築では、コンクリート除去処理、成型(コンクリート壁の開口、コンクリート構造物の部分除去)、表面処理、塗膜除去処理、洗浄処理等で使われ、産業用メンテナンスでは、タンクリアクター等のプラント機器の清掃作業(スケール除去等)で使われる。また、金属切断(アブレイシブ切断)もできるため、火気厳禁の場所での改修工事にも対応する。

 

振動が少ない

ブレーカー、削岩機等の打撃破砕とは異なり、ノズルから噴射された超高圧水のエネルギーによってコンクリートのセメントモルタル結合を破砕するメカニズムが特徴。

構造物への影響が最小限

対象物に与える変形、ひずみ、残留応力が少なく、マイクロクラックもほとんど発生しないため、構造物への影響を最小限に抑えた作業が可能。

ピンポイントで除去

適切な圧力と流量の設定により、鉄筋を傷めずコンクリートの劣化部分だけをピンポイントで除去できる。

塗膜や付着物だけを除去

圧力の調整によって、対象物の塗膜や付着物だけを除去できる。

遠隔操作

対象物とノズルが接触しないため機械の遠隔操作が容易。曲線・曲面における自由な作業が可能となり、均一な品質が得られる。

 

 

1-3 コアコンピタンス

同社のコアコンピタンスは「ヒト」。技術者、営業体制、協力会社ネットワークである。高い技術力と強力な営業力や施工力の源泉となっている。

 

技術者集団(ヒト)

ダイヤモンド業界のパイオニアであり、高い技術と圧倒的な規模を有する

営業体制(ヒト)

業界では稀な組織的営業体制を有する

協力会社ネットワーク(ヒト)

全国に展開する支店・営業所と良質な協力会社ネットワークを有する

全国展開

支店・営業所を全国に展開しており、地域にとらわれない営業が可能

 

 

全国展開

 

(同社資料より)

 

2.2020年6月期第2四半期決算概要

2-1 上期連結業績

 

19/6期

上期

構成比

20/6期

上期

構成比

前年同期比

期初予想

予想比

売上高

7,437

100.0%

8,895

100.0%

+19.6%

8,157

+9.1%

売上総利益

2,432

32.7%

2,979

33.5%

+22.5%

 -

-

販管費

1,474

19.8%

1,713

19.3%

+16.2%

 -

-

営業利益

958

12.9%

1,266

14.2%

+32.1%

1,024

+23.7%

経常利益

1,009

13.6%

1,358

15.3%

+34.5%

1,097

+23.8%

親会社株主帰属利益

668

9.0%

841

9.5%

+26.0%

704

+19.6%

* 単位:百万円。構成比・前年同期比は決算短信・有価証券報告書記載の千円単位の数値で算出。

 

前年同期比19.6%の増収、同32.1%の営業増益
売上高は前年同期比19.6%増の88億95百万円。輸送インフラ関連工事がけん引する中、建築関連工事でのウォータージェット工法に強い(株)アシレの子会社化効果もあり、主力の切断・穿孔工事事業の売上が同24.1%増加。首都圏を中心に高層マンション等の新規案件の開拓が進みビルメンテナンス事業の売上も同5.4%増加したが、ノートパソコンの仕入れ不調でリユース・リサイクル事業の売上が同7.1%減少した。

 

営業利益は同32.1%増の12億66百万円。水道関連工事や空港工事等の収益性の高い案件の寄与や変動費のコントロールで売上総利益が33.5%と0.8ポイント改善。今後の市場拡大を見据えた人員増強で販管費が同16.2%増加したものの、販管費率は19.3%と0.5ポイント低下した。

 

2-2 セグメント別動向

 

19/6期 上期

構成比・利益率

20/6期 上期

構成比・利益率

前年同期比

切断・穿孔工事

6,296

84.6%

7,813

87.8%

+24.1%

ビルメンテナンス

170

2.3%

179

2.0%

+5.3%

リユース・リサイクル

971

13.1%

902

10.1%

-7.1%

連結売上高

7,437

100.0%

8,895

100.0%

+19.6%

切断・穿孔工事

1,249

19.8%

1,516

19.4%

+21.4%

ビルメンテナンス

16

9.6%

17

9.8%

+6.3%

リユース・リサイクル

-11

-

67

7.4%

-

調整額

-295

-

-334

-

-

連結営業利益

958

12.9%

1,266

14.2%

+32.1%

* 単位:百万円。構成比・前年同期比は決算短信・有価証券報告書記載の千円単位の数値で算出。

 

切断・穿孔工事事業
完成工事高78億13百万円(前年同期比24.1%増)、セグメント利益15億16百万円(同21.4%増)。首都圏を中心に高速道路工事や鉄道関連工事等の輸送インフラ関連工事が前年同期比45%程度伸びた他、水道関連工事や子会社(株)アシレ等の生活インフラ関連工事が同16%程度、電力関連工事等の産業インフラも同30%程度増加した。

 

ビルメンテナンス事業
完成工事高1億79百万円(前年同期比5.3%増)、セグメント利益17百万円(同6.3%増)。採算性重視の受注体制の下、選別受注を徹底した他、平日稼働を確保する事で協力会社による施工も増えた。この結果、利益率の改善を伴って売上が増加した。

 

リユース・リサイクル事業
商品売上高9億02百万円(前年同期比7.1%減)、セグメント利益67百万円(前年同期は11百万円の損失)。ノートパソコンの仕入れ不調が響き売上が減少したものの、採算の良い小口案件の獲得が進んだ(件数増)他、大型オペレーションヤード(神奈川県海老名市)を開設し拠点を集約した効果もあり、利益率が改善した。

 

売上構成比

 

生活インフラ

輸送インフラ

産業インフラ

ビルメンテナンス

リユース・リサイクル

19/6期 上期

53.3%

21.3%

10.0%

2.3%

13.1%

20/6期 上期

51.1%

26.0%

10.8%

2.0%

10.1%

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

19年6月

19年12月

 

19年6月

19年12月

現預金

5,698

5,338

仕入債務

718

875

売上債権

2,480

3,338

未払法人税等

240

526

たな卸資産

574

503

退職関連引当金・負債

520

564

流動資産

8,913

9,289

有利子負債

1

53

有形固定資産

3,326

4,036

リース債務

26

80

無形固定資産

104

500

負債

2,348

3,185

投資その他

960

1,103

純資産

10,956

11,742

固定資産

4,391

5,639

負債・純資産合計

13,304

14,928

* 単位:百万円。

 

業容の拡大と(株)アシレの子会社化で第2四半期末の総資産は149億28百万円と前期末との比較で16億23百万円増加した。実質無借金経営で流動比率が385.0%(前期末493.3%)と高水準。財務の安定性にも優れ、固定比率207.5%(同226.2%)、自己資本比率75.5%(同79.3%)。

 

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

19/6期 上期

20/6期 上期

前年同期比

営業キャッシュ・フロー(A)

588

852

+263

+44.8%

投資キャッシュ・フロー(B)

-410

-1,145

-735

-

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

178

-293

-471

-

財務キャッシュ・フロー

-158

-152

+5

-

現金及び現金同等物期末残高

5,316

5,253

-63

-1.2%

* 単位:百万円。

 

税引前利益13億71百万円(前年同期10億20百万円)、減価償却費2億26百万円(同1億87百万円)、差し引き法人税等の支払い△2億09百万円(同△4億93百万円)等で8億52百万円の営業CFを確保した。投資CFは、有形固定資産の取得及び(株)アシレのM&A費用等で、財務CFは主に配当金の支払い。

 

3.2020年6月期業績予想

3-1 連結業績

 

19/6期 実績

構成比

20/6期 予想

構成比

前期比

売上高

14,871

100.0%

15,700

100.0%

+5.6%

営業利益

1,760

11.8%

1,730

11.0%

-1.7%

経常利益

1,843

12.4%

1,856

11.8%

+0.7%

親会社株主帰属利益

1,251

8.4%

1,080

6.9%

-13.7%

*単位:百万円

 

通期予想に変更はなく、前期比5.6%の増収、同1.7%の営業減益
上期の業績が期初予想を上回ったものの、オリンピック開催期間中及びその前後は首都圏での切断・穿孔工事の減少が予想されるため下期の業績を慎重にみている。

 

切断・穿孔工事事業では、NEXCO東日本・中日本・西日本等がリニューアルプロジェクトを進めている高速道路や、橋梁補修工事、電力関連工事等への営業を強化する。ビルメンテナンス事業では引き続き高層集合住宅を中心に採算性重視の営業を進め、リユース・リサイクル事業では新規の大口顧客の獲得に力を入れる。

 

配当は1株当たり2円増配の年22円を予定(予想配当性向11.6%)。当面は「人材」、「生産性」、「研究開発」、及び「事業領域拡大」に積極的に資本投下を行い、中期的に配当性向の水準を切り上げていく方針。

 

4.今後の計画 - 中期経営計画(19/6期~21/6期) -

業界のトップに立つ同社の強みは、「ヒト」の数と質。インフラの老朽化による維持・補修市場の拡大が見込まれる中、同社は「ヒト」を中心にした 4つの基本戦略の下で中期経営計画を進めている。

 

 

基本戦略.1

人材採用・育成の強化・拡充

・人材採用・発掘のための様々な採用活動の実施

・人材定着のための研修制度の充実・資格取得教育

・ワーク・ライフ・バランスの充実

・外国人労働者の採用

基本戦略.2

営業展開の強化

・既存顧客の深耕

・潜在的顧客の開拓

・利益の追求を意識した活動

・海外進出

・事業エリアの拡大

基本戦略.3

協力会社ネットワークの強化

・協力会社への技術指導等による施工レベルの維持・向上

・効率的な事業運営のための協力会社の積極的活用

・資本提携又はM&Aも含めた事業エリアの拡大

基本戦略.4

研究開発

・多くの試験施工及び実証実験の実施による工法の確立

・新技術への投資(事業提携・資本提携等を含む)

 

成長投資
切断・穿孔工事事業を中心とした既存事業の継続的な成長と今後の海外事業や新規事業領域への展開の基軸となる「強固な人材基盤の構築」を図る考え。人材投資、生産性向上、事業領域拡大、及び研究開発に、中期経営計画の3年間で25.2億円の投資を実施する。

 

中期経営計画の初年度となる19/6期はコアコンピタンスである人(職人)へ7.2億円の投資を行った。20/6期から連結される(株)アシレのM&Aが加わったため、3年累計投資予想を当初の20億円から25.2億円に上積みした。

 

成長投資計画

 

内容

19/6期 実績

20/6期 目標

21/6期 目標

3年累計

人材投資

人材採用・研修

1.7億円

1.0億円

1.0億円

3.7億円

生産性向上

現場環境改善、働き方改革

4.0億円

3.0億円

3.0億円

10.0億円

事業領域拡大

新規営業所展開、M&A

1.2億円

7.0億円

2.0億円

10.2億円

研究開発

R&D、新技術への投資

0.3億円

0.5億円

0.5億円

1.3億円

合計

7.2億円

11.5億円

6.5億円

25.2億円

 

 

4-1 人材投資

引き続き採用強化と定着のための施策を実施していく。新卒採用・中途採用共に積極的に進めていく考えで、新卒採用については大学部活への直接関与等で大学毎に連携を強化する。中途採用については、各地域での需要に応じた採用から、勤務地を限定しない通年採用を本社が行う体制にシフトする。また、陰に隠れた存在から、見られる存在への転換を図るべく、視聴者が回答を選択することでストーリーが展開する「触れる動画」(インタラクティブ動画)の配信を開始した。

 

一方、定着に向け、ブランディング戦略を展開すると共に働き方改革に取り組んでいく。ブランディング戦略では、将来像の可視化に取り組むと共に、InstagramやFacebookを活用して現場の魅力を伝えていく。働き方改革では、「人材確保には他産業と比べて魅力的な職場である必要がある」という観点から、業界規制に先行した働き方改革を推進していく。

 

時間外労働時間の上限規制と同社の取り組み

 

(同社資料より)

 

4-2 営業展開

輸送インフラ及び産業インフラで計画されている大型案件や、高速道路リニューアルプロジェクトの橋梁工事で予定されている床版(しょうばん=床板)リニューアル案件の取り込みを図る。また、IT投資により、SFA(Sales Force Automation)の強化や顧客・案件管理の可視化に取り組む他、エリアをまたぐ顧客や案件への対応力を向上させるべく、社内の各部署及びグループ企業間の連携を強化する。

 

大型案件では、輸送インフラ工事で、国道2号淀川大橋床版取替工事(大阪府)、東北自動車道の栃木県内橋梁の耐震補強工事、鉄道の混雑率ワーストランキングで常に上位にランクされている東西線(東京都)の混雑緩和と遅延防止に向けた改良工事、羽田空港(東京都)拡張工事等を挙げることができ、産業インフラ工事では、三国川ダム管理用水力発電設備修繕工事(新潟県)や奈井江発電所煙突解体工事(北海道)等を挙げることができる。床版リニューアルでは、20/6期に既に受注済みの案件を含めて8物件・25橋受注を計画しており、21/6期は10物件・26橋の受注を計画している。

 

SFAの活用では、行動管理、顧客管理、案件管理、及び報告を電子化する。エリアをまたぐ顧客や案件への対応力を向上では、全国で進められている高速道路リニューアルプロジェクトの取り込みを念頭に、営業所、支店、事業部、更にはグループ会社を横断した床版取替プロジェクトチームを立ち上げた。

 

4-3 協力会社ネットワークの強化

教育と受注配車機能の強化等による生産性の向上で協力会社を支援しネットワークを強化していく。

 

教育体制
労働者の安全と衛生についての基準を定めた安全衛生管理法が、働き方改革推進のための関係法律の整備の一環で改正され、2019年4月に施行された。労働災害防止等の観点から建設業各社も改正衛生管理法への対応を迫られているが、中小の事業者を中心に理解不足や教育体制の整っていない事業者が多い。同社は協力会社ネットワーク強化の一環として、協力会社各社に改正衛生管理法に関連した各種教育を提供していく。また、これとは別に毎月の定期教育も実施していく。

 

2019年4月に国土交通省が主導する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の本運用が開始された。CCUSは建設現場で働く職人や現場監督の、資格、経験、現場歴等をデータベース化して、ICカードでの仕事履歴の管理を実現するもので、魅力ある業界を目指して、賃金とキャリアステップの問題を改善するために構築された。同社は啓蒙活動を通して協力会社各社への浸透を図っていく考え。

 

受注配車機能
同社グループでは、連日約300件の現場で、1,000人近い職人が稼働している。働き方改革や人手不足への対応と労働時間短縮・生産性向上を目的に、地域・工種・技術レベルを最適化して配車を行う配車システムの構築を進める。また、ペーパーレスに向けたシステムの構築も進めていく。

 

4-4 研究開発 - Hydro-JetRD工法、エコア・コアドリル、可視化 -

橋梁床版架け替え工事の工期短縮につながる新工法「Hydro-JetRD工法」(2019年6月に飛島建設株式会社及び阪神高速道路株式会社との共同開発)が、土木学会関西支部「技術賞」、一般財団法人国土技術研究センター「国土技術開発賞」、及び阪神高速道路(株)「社長賞」を受賞した。同社の保有技術である「XYはつり装置」と「WJ削孔装置」の技術改良・組合せによる鋼桁とRC床版の分離技術が使われており、現在、本線施工に向けた準備が進められている。

 

株式会社シブヤ(広島県廿日市、渋谷憲和社長)と「エコア・コアドリル」を共同開発した。「エコア・コアドリル」は、水際・水中工事において油漏れリスクを回避する水圧駆動モーター搭載の穿孔マシン(水圧駆動式穿孔工法)である。電動工具が使用できない水際・水中工事では、一般的に油圧機器とエアー工具による作業が行われ、油圧機器からの油漏れ対策が必須。「エコア・コアドリル」は水圧駆動モーター搭載のため(作動油を使用しない)、油漏れ対策や廃オイルの処理が不要で作業効率の改善・負担軽減につながる。河川や港湾等での水に絡む工事で付加価値を提供できる。

 

「可視化」については、下地処理工法の仕上レベルの可視化に着手した。職人の感性に頼っていた仕上レベルを数値化するもので、2020年内の実用化を目指している。

 

(同社資料より)

 

5.今後の注目点

通期予想に対する進捗率は、売上高56.7%(通期実績ベースの前年同期50.0%)、営業利益73.2%(同54.4%)、経常利益73.2%(同54.8%)、最終利益77.9%(同53.4%)。上振れペースで進捗しているが、オリンピックの影響による不透明感から、保守的に通期予想を据え置いた。

 

オリンピックの影響で今期の着地点は見通しにくいが、中期的な見通しは明るい。高度経済成長と共に整備が進められてきた各種インフラは老廃化等で耐久性・耐久力が低下しており、改修・補修工事(維持補修工事)を避けて通れない。時代は「ものづくり」から「リノベーション・リニューアル」の時代へ移行しており、国土交通省によると、2023年度の改修・補修市場の規模は最大で約5兆1,000億円。2038年には、維持管理・更新費が9兆円前後に達し、2010年度の投資総額(維持管理費+更新費+災害復旧費+新設費)を上回る見込みだ。切断・穿孔工事は改修・補修工事と相性が良く、切断・穿孔工事の業界最大手である同社が受ける恩恵は大きいい。同社は生産性の向上と働きやすい職場環境の整備を進めつつ、業容を拡大させていく考え。今後の展開に期待したい。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2019年10月07日)
基本的な考え方
当社は、お客様、株主、地域住民及び従業員等ステークホルダーと共存共栄できるコーポレート・ガバナンス体制を構築し、中長期的な企業価値の向上を図ることを重要な経営課題の一つとして認識しております。また、経営の透明性・健全性を確保するため社外監査役及び社外取締役を選任し、経営監視機能の強化を図っております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
【原則1-4.政策保有株式】
当社は、原則として株式の政策保有を行なわない方針でございます。しかし、取引の内容・規模等を総合的に勘案し、安定的な取引関係の維持・強化を図ることが当社の企業価値の向上に資すると判断された場合には、取引先の株式を保有する場合もございます。保有する株式については、取締役会において毎年当社の企業価値向上に資するか否かを検証してまいります。検証の結果、保有の意義が認められない、あるいは薄れたと判断された場合は、適宜売却に向け手続きを進めることと致します。保有する株式の議決権行使については、当該会社の企業価値を毀損させるようなこと等がないかを検討のうえで議決権を行使します。

 

【原則5-1.株主との建設的な対話に関する方針】
当社は経営企画室をIR担当部署としております。株主や投資家に対しては、半期に一度決算説明会を開催するとともに、逐次個別面談等を実施しております。また当社は、株主や投資家との建設的な対話を促進するためには、当該株主・投資家との信頼関係の構築・維持が重要であり、そのために適切な情報開示を行うことが必要不可欠と認識しております。その認識を実践するため、法令に基づく開示以外にも、株主をはじめとするステークホルダーにとって重要と判断される情報(非財務情報も含む)を積極的に開示する等、経営戦略や経営状況について、当社ホームページを通じ、積極的に情報開示を行っております。
なお、株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針の策定及び開示については、今後の検討事項と致します。

 

<開示している主な原則>
原則3-1.情報開示の充実】
(ⅰ)当社の企業理念等を当社ホームページ、決算説明資料にて開示しております。
(ⅱ)コーポレート・ガバナンスの基本方針を当社ホームページ及びコーポレート・ガバナンスに関する報告書にて開示しております。
(ⅲ)取締役及び監査役の報酬等については、株主総会において決議された報酬総額の範囲内で、各役員の貢献度や業績を考慮した上で、今後の経営戦略を勘案し取締役会にて決定しております。
なお、上記内容については有価証券報告書にて開示しております。
(ⅳ)取締役及び監査役候補の指名を行うに当たっての方針・手続きについては、社内規程等で定めておりませんが、それぞれ豊富な経験と高い見識を有し、取締役・監査役の職務と責任を全うできる人材で、かつ人格に優れた者を候補者として選定し、取締役会にて決定しております。
(ⅴ)取締役・監査役候補者の選任理由を株主総会招集通知にて開示しております。

 

 

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

Copyright(C) 2020 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.

 

ブリッジレポート(第一カッター興業:1716)のバックナンバー及びブリッジサロン(IRセミナー)の内容は、www.bridge-salon.jp/ でご覧になれます。

 

 

同社の適時開示情報の他、レポート発行時にメールでお知らせいたします。

>> ご登録はこちらから

 

ブリッジレポートが掲載されているブリッジサロンに会員登録頂くと、株式投資に役立つ様々な便利機能をご利用いただけます。

>> 詳細はこちらから

 

投資家向けIRセミナー「ブリッジサロン」にお越しいただくと、様々な企業トップに出逢うことができます。

>> 開催一覧はこちらから