ブリッジレポート
(8061) 西華産業株式会社

プライム

ブリッジレポート:(8061)西華産業 2020年3月期第2四半期決算

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櫻井 昭彦 社長

西華産業株式会社(8061)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

卸売業

代表取締役社長

櫻井 昭彦

所在地

東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル

決算月

3月末日

HP

http://www.seika.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,409円

12,820,650株

18,064百万円

5.6%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

45.00円

3.2%

130.30円

10.8倍

2,246.34円

0.6倍

*株価は 12/2終値。発行済株式数、DPS、EPSは20年3月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

127,101

2,174

2,426

1,750

128.28

45.00

2017年3月(実)

150,742

3,046

3,390

2,140

161.29

55.00

2018年3月(実)

165,585

2,598

2,877

1,655

128.38

55.00

2019年3月(実)

157,145

2,118

2,418

1,587

125.50

45.00

2020年3月(予)

135,000

2,400

2,700

1,650

130.30

45.00

*単位:百万円、円。2017年10月1日付で5:1の株式併合を実施。EPS、DPSは遡及して調整。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
以下同様。

 

西華産業株式会社の2020年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年3月期第2四半期決算概要
3.2020年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:長期経営ビジョン及び中期経営計画>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2020年3月期第2四半期の売上高は前年同期比35.9%減の626億円。前年同期に新設発電設備の受渡しのあった化学・エネルギー事業が反動で大幅な減収。営業利益は前年同期と変わらずの8.6億円。効率的な営業活動に加え、順調な子会社の業績が寄与した。計画に対しては、売上は未達だったが子会社の寄与により利益は上回った。

     

  • 通期業績予想に変更は無い。2020年3月期の売上高は前期比14.1%減の1,350億円の予想。電力事業、化学・エネルギー事業の減収をカバーできない。営業利益は同13.3%増の24億円の予想。子会社の貢献もあり、2桁の増益。配当は前期と同じく45円/株の予定。予想配当性向は34.5%。

     

  • 今期は長期経営ビジョンの第1ステップとなる「中期経営計画 CS2020」の最終年度となるが、現在のところ目標である当期純利益は未達の見通し。2020年4月より開始する次期中期経営計画の検討を進めるに際し、それぞれの事業を取り巻くビジネス環境を再分析し、課題の抽出を行い、より実効性の高い計画を立案する。
  • また、長期経営ビジョンの第2ステップとなる次期中期経営計画に繋げるためにも、今下期どれだけ目標に近づけることができるか期待したい。

     

  • 一方、環境配慮型商材の展開も注目だ。需要が拡大すると同時に競争が激しくなることも当然予想されるが、どのように競争力を強化してボリューム拡大に繋げていくのか注目される。

     

1.会社概要

「社業の発展を通じ社会に貢献する。これを我社の信条とする。」を企業理念に、機械総合商社として、電力、化学・エネルギー、産業機械、素材・計測分野の機械設備や機器等の販売およびサービスの提供を行っている。
現場密着の営業力、各事業における専門性の高さ、国内外76拠点に上る広範なネットワークの3つが特長及び強み。

 

【1-1 沿革】

太平洋戦争終戦後の1947年7月、連合国最高司令官ダグラス・マッカーサーの覚書により旧三菱商事株式会社が解体を命ぜられると同時に、同年10月、初代社長中林恒治氏ら同社門司支店機械部門関係者が中核となり福岡県門司市(現・福岡県北九州市門司区)に西華産業株式会社を設立。
「商道の精華:商いの本質を極める。自分も儲けるが、相手にも便宜を与える。」、「西の花形:西日本の花形企業を目指す。」、「華:将来、対中国貿易が盛んになるときに役立つかもしれない。」の3つが社名の由来である。
東京、大阪を含む国内各地に支店を開設した後、1954年10月には当時日本人が数名しか在住していなかったドイツ(旧西ドイツ)・デュッセルドルフに海外事務所を開設するなど、積極的な事業展開を行い、1961年10月には東証1部に上場した。
その後も、西日本を中心とした営業基盤の強化と、米国、欧州、アジア各地への拠点展開により機械総合商社として発展してきた。
設立70周年にあたる2017年には、2027年に向けた長期経営ビジョン「10年後の西華産業グループ像」および3カ年計画「中期経営計画CS2020」を策定、推進中である。

 

【1-2 企業理念】

以下のような企業理念及び行動規範を掲げている。

企業理念

「社業の発展を通じ社会に貢献する。これを我社の信条とする。」

 

社会がどのように変化しようとも、あらゆるステークホルダーに報いる経営を行い、豊かな社会の実現に貢献する「価値のある企業」であり続けたいと考えております。

行動規範

「社員の行動指針」を示しています。

1. 信用は、なにものにも代え難い財産である。

2. 常に存在意義を高く評価されるようにすることが、商社活動の基本である。

3. 迅速、適確な情報活動と効果的な対応は、すべてを制する。

4. 直観的思考に偏することなく、客観的考察と必然性、合理性の追及を行い諸事判断処置すべきものとする。

5. 開拓精神に燃え、あらゆる困難、障害、激動に挑戦し、これを克服することを誇りとすべきである。

 

【1-3 事業内容】

(1)事業セグメント
機械総合商社として、電力、化学・エネルギー、産業機械、素材・計測分野の機械設備や機器、附帯製品の販売およびサービスの提供を行っている。
報告セグメントは、「電力事業」、「化学・エネルギー事業」、「産業機械事業」、「素材・計測事業」、「グローバル事業」の5セグメント。

 

 

①電力事業
関西電力、九州電力、中国電力、四国電力、電源開発の電力会社および、和歌山共同火力を含めた共同電力会社など、西日本地域の電力会社を顧客とし、ボイラー、ガスタービンなどの事業用発電設備、排水や排ガスを処理する環境保全設備、原子力発電所向けにセキュリティ設備や消火設備などの防犯・防災設備などを販売している。
仕入先は、三菱重工業と日立製作所の合弁会社である三菱日立パワーシステムズ(MHPS)などであり、西華産業は、MHPSの火力発電設備の販売代理権を有している。

 

 

②化学・エネルギー事業
化学会社、石油会社、製紙会社、鉄鋼会社、鉄道会社向けにボイラー、タービンなどの自家用発電設備、排水や排ガスを処理する環境保全設備などを電力事業と同じくMHPSなどから仕入れて販売している。
また、化学製品等のプロセス用製造設備を国内外メーカーから仕入れて販売している。

 

 

③産業機械事業
幅広い産業分野の顧客に対して、国内または海外メーカー製の繊維設備、食品加工設備、醸造設備、各種プラント設備、液晶関連設備、環境関連設備、無停電電源装置(UPS)などを販売するほか、メンテナンスも提供している。
また、直近では中国におけるEV(電気自動車)向けリチウムイオン電池用関連設備やモーター製造設備などの販売も行っている。

 

 

④素材・計測事業
国内電機メーカーを主要顧客として、電子機器用プリント基板などを販売しているほか、官公庁や研究機関向けに、レーザー計測機器や細孔径測定装置など先端技術を駆使した計測機器を納入している。また、産業機械向けの環境保全用計測装置や、水処理関係装置など幅広く扱っている。
海外メーカーからの仕入れが中心。

 

 

⑤グローバル事業
(欧州)
車載関係の顧客に産業用ロボットを販売しているほか、工事などで使用される水中ポンプの販売及びレンタルも行っている。
いずれも仕入先は日本メーカーが中心。
(北米)
日系自動車関係の顧客に日本メーカー製のエレクトロニクス基板実装関連機器を販売している。
(アジア)
繊維、化学、その他一般産業向けに日本メーカー製の機械設備を販売しているほか、繊維メーカーに対し繊維原材料を海外で調達し販売している。

 

 

(2)地域別売上高
国内売上が8割以上を占めるが、中期経営計画CS2020において全体戦略の一つとして、グローバル戦略の加速を掲げており、海外売上高比率の拡大を目指している。

 

2019年3月期地域別売上構成

 

 

(同社HPより)

 

【1-4 特長と強み】

(1)現場に近い営業力
70年の歴史の中で培われてきた現場に近い営業力が同社最大の強み。
きめ細かい対応で、人脈を形成し、信頼関係を構築することが安定的な受注獲得に繋がっている。

 

(2)各事業における専門性の高さ
商社中抜き論なども言われるが、同社は豊富な情報収集力と、顧客の先を行く提案力など、高度な専門性を有する必要不可欠なビジネスパートナーと評価されている。

 

(3)国内外76拠点に上る広範なネットワーク
20年前には数十拠点程度であったが、M&Aを通じて国内拠点の拡充に加え、グローバル化を見据えヨーロッパおよび東南アジアを中心に急速に拠点を拡大させてきた。情報のスピード、網羅性はさらに高まっており、有効に活用することで存在価値を更に高めていきたいと考えている。

 

(4)社員教育・営業力強化施策
社員の育成・強化はOJTが中心で、先輩社員や上司がビジネスに必要な基本動作を重点的に教育しており、また、各種階層別研修や海外研修制度にも力を入れている。
加えて、最近はメーカーや顧客のOBにコンサルティングおよび営業現場の支援を依頼している。
各種アドバイスは同社の専門性を更に高め、更なる営業力強化に繋がっている。

 

【1-5 ROE分析】

 

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

ROE(%)

8.5

6.6

7.9

5.9

5.6

 売上高当期純利益率(%)

1.66

1.38

1.42

1.00

1.01

 総資産回転率(回)

1.76

1.52

1.45

1.53

1.71

 レバレッジ(倍)

2.90

3.13

3.82

3.83

3.42

 

一般的に日本企業に要求される8%水準を安定的に維持するには至っていない。
レバレッジは比較的高水準であるため、利益率の向上を期待したい。

 

【1-6 ESGへの取り組み】

<E:環境>
環境方針として「地球環境の保護に努め、持続可能な社会の実現に貢献する」という基本理念を掲げている。その一環として、2005年にISO14001を取得しており、環境配慮型商品の拡販に努めている。
同社が取り扱う環境配慮型商品は、ボイラーおよび焼却炉用排ガス処理設備や、化学・半導体工場向け有機溶剤回収装置など多岐に亘り、下記のように2019年3月期の受注実績は約1,030億円。
引き続き、単なる社会貢献という観点のみでなく事業活動を通じて地球環境の保全に寄与する考えだ。

 

(同社資料より)

 

<S:社会責任>
「社会責任」として、以下のような働き方改革に取り組んでいる。

 

「女性の活躍推進」
● 女性総合職採用の強化
● 女性社員のキャリア形成支援
● 女性管理職の登用

 

「従業員の健康促進」
● プレミアムフライデー制度(カジュアルデー同時実施)の導入
● 有給休暇の取得推進
● 健康診断におけるがん検診(腫瘍マーカーオプション)費用の会社負担
● インフルエンザ予防接種費用の会社負担

 

「人材育成」
● 各種階層別研修
● 海外研修派遣制度

 

<G:ガバナンス>
コーポレートガバナンス・コード全項目に対する取り組みをホームページで開示している。
「取締役会の実効性評価」を行うと共に、コーポレート・ガバナンス改訂に対応し、任意の仕組みとして社外取締役および社外監査役で構成される「指名審査委員会」「報酬審査委員会」を取締役会のもとに設置した。
また、招集通知の一部英訳や、決算説明会資料やファクトブック作成による英語での情報提供にも取り組んだ。
持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために引き続きコーポレート・ガバナンスの充実を図ると共に、健全で透明性の高い経営体制を追求する。

 

【1-7 株主還元】

株主に対する利益還元を経営の最重要課題の一つとしており、安定的な配当を基本方針としている。
営業・財務両面の効率的な業務運営により、経営基盤の強化を図るとともに、新しい事業の開発等の資金需要に対応しながら、連結配当性向35%を目途としている。
2020年3月期は、中間20円、期末25円の合計45円/株を予定しており、予想配当性向は34.5%。
配当方針および通期の業績等を総合的に勘案して積極的に株主還元に取り組む。

 


 

2.2020年3月期第2四半期決算概要

(1)連結業績概要

 

19/3期2Q

構成比

20/3期2Q

構成比

前年同期比

計画比

売上高

97,676

100.0%

62,651

100.0%

-35.9%

-6.5%

売上総利益

6,829

7.0%

6,866

11.0%

+0.5%

-

販管費

5,969

6.1%

6,006

9.6%

+0.6%

-

営業利益

860

0.9%

860

1.4%

0.0%

+32.4%

経常利益

992

1.0%

986

1.6%

-0.6%

+31.5%

四半期純利益

837

0.9%

471

0.8%

-43.7%

+34.6%

*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。

 

減収、利益は横這い
売上高は前年同期比35.9%減の626億円。前年同期に新設発電設備の受渡しのあった化学・エネルギー事業が反動で大幅な減収。
営業利益は前年同期とほぼ変わらずの8.6億円。効率的な営業活動に加え、順調な子会社の業績が寄与した。
計画に対しては、売上は未達だったが子会社の寄与により利益は上回った。

 

(2)セグメント別概要

◎売上・利益

 

19/3期2Q

構成比

20/3期2Q

構成比

前年同期比

売上高

 

 

 

 

 

電力事業

30,109

30.8%

21,203

33.8%

-29.6%

化学・エネルギー事業

40,799

41.8%

14,951

23.9%

-63.4%

産業機械事業

20,891

21.4%

20,456

32.7%

-2.1%

素材・計測事業

552

0.6%

559

0.9%

+1.3%

グローバル事業

5,324

5.5%

5,480

8.7%

+2.9%

売上高計

97,676

100.0%

62,651

100.0%

-35.9%

セグメント利益

 

 

 

 

 

電力事業

823

2.7%

833

3.9%

+1.1%

化学・エネルギー事業

473

1.2%

267

1.8%

-43.5%

産業機械事業

530

2.5%

524

2.6%

-1.1%

素材・計測事業

-230

-

-85

-

-

グローバル事業

106

2.0%

172

3.1%

+61.0%

セグメント利益計

1,703

1.7%

1,712

2.7%

+0.5%

*単位:百万円。外部顧客への売上高。利益の構成比は売上高利益率。

 

①電力事業
減収・増益。
発電所向け大型部品等の受渡が下半期に繰り延べされ減収となったが、原子力発電所向けなど中・小口案件の積み上げにより増益を確保した。

 

②化学・エネルギー事業
減収・減益。
一般産業向け設備の売上は前年同期並みで推移したが、前年同期にあった新設発電設備の受渡しが今上期は無かった。

 

③産業機械事業
減収・減益。
リチウムイオン電池用関連設備が減収だったが、連結子会社の日本ダイヤバルブ株式会社の業績が好調に推移したため小幅の減収減益となった。

 

④素材・計測事業
増収・損失幅縮小。
ガスモニター等の計測機器の売上が順調に推移した。

 

⑤グローバル事業
増収・増益。
欧州子会社のツルミヨーロッパ・グループの業績が順調に推移した。

 

◎受注・受注残高

 

19/3期2Q

20/3期2Q

前年同期比

受注高

 

 

 

電力事業

19,871

28,945

+45.7%

化学・エネルギー事業

32,598

17,538

-46.2%

産業機械事業

22,393

21,890

-2.2%

素材・計測事業

383

672

+75.6%

グローバル事業

5,481

6,048

+10.3%

合計

80,728

75,095

-7.0%

受注残高

 

 

 

電力事業

27,149

37,794

+39.2%

化学・エネルギー事業

58,135

65,068

+11.9%

産業機械事業

60,759

65,749

+8.2%

素材・計測事業

1,217

551

-54.7%

グローバル事業

2,614

3,390

+29.7%

合計

149,877

172,554

+15.1%

*単位:百万円。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

19年3月末

19年9月末

 

19年3月末

19年9月末

流動資産

68,878

67,980

流動負債

51,500

50,779

 現預金

12,957

14,383

 仕入債務

31,474

28,367

 売上債権

37,605

35,056

 短期有利子負債

6,897

7,001

 たな卸資産

5,634

5,109

固定負債

5,175

4,863

固定資産

16,863

16,347

 長期有利子負債

2,147

2,040

 有形固定資産

4,606

4,576

負債合計

56,675

55,643

 無形固定資産

749

643

純資産

29,066

28,685

 投資その他の資産

11,508

11,128

 利益剰余金

17,508

17,722

資産合計

85,742

84,328

負債純資産計

85,742

84,328

*単位:百万円。有利子負債にはリース債務を含まない。

 

売上債権およびたな卸資産の減少などで資産合計は前期末に比べ14億14百万円減少の843億28百万円となった。仕入債務の減少などにより負債合計は同10億32百万円減少の556億43百万円。
純資産は同3億81百万円減少の286億85百万円。
自己資本比率は前期末と変わらず33.2%。

 

◎キャッシュ・フロー

 

19/3期2Q

20/3期2Q

増減

営業CF

20

2,052

+2,032

投資CF

-431

-218

+213

フリーCF

-411

1,834

+2,245

財務CF

-269

-585

-316

現金及び現金同等物

13,281

12,666

-615

*単位:百万円
売上債権の増加、たな卸資産の減少などで営業CFのプラス幅は拡大し、フリーCFはプラスに転じた。
ャッシュ・ポジションは低下した。

 

(4)トピックス

①環境配慮型商材への取り組み
ESGがメインストリームとなる中、同社は以下のような環境配慮型商材の取り扱いを積極化させており、持続可能な社会の実現への貢献を目指している。

 

◎中国向け電気自動車関連事業
従来から取組んでいるリチウムイオンバッテリー関連設備に加え、駆動用モーターやインバーター用製造設備の拡販に注力している。

 

(背景)
中国政府は2025年に電気自動車など新エネルギー車を700万台以上出荷する計画を公表し、普及を推進中。
新エネルギー車のコア部品であるリチウムイオンバッテリー用セパレーター、モーターや駆動システム等に対して、外資系企業の進出を奨励するなど、積極的に取り組んでいる。

 

(事業環境と同社の取り組み)
リチウムイオンバッテリー用セパレーター市場においては、過当競争の結果、セパレーター製造メーカーの統廃合が進み、新規設備投資には慎重な姿勢が見られる。
但し、電気自動車には、航続距離の延長など、常に性能向上への要求が伴い、リチウムイオンバッテリー用セパレーターフィルムにも、より高性能な商品への需要が高まっている。2020年前半には製品ごとの市場も整理され、高性能セパレーターフィルム向け設備投資が増加すると予想している。

 

同社では、リチウムイオンバッテリー関連設備は、電気自動車事業の中核商材でもあることから引き続ききめ細かな営業を行い受注に繋げていく考えだ。

 

一方、電気自動車用モーターは、セパレーターフィルム市場と異なり、供給不足が顕著となっており設備導入計画が具体化しつつある。
自動車の駆動方式がエンジン駆動からモーター駆動に変更になったことに関連して、搭載されるモーターは、車1台あたり約100個程度になり、モーター自体も小型かつ高精度化が求められている。
同社は豊富な実績と高い技術を持つ日本メーカーを起用し、モーターコイル巻線装置や、ステーター製造装置などの商談を展開している。
今期の受注は、電池関連製造設備商談で約30億円、駆動用モーター製造設備商談で約10億円を見込んでいる。

 

◎船舶用排ガス浄化装置
船舶の航行や事故による海洋汚染を防止することを目的とした国際条約であるマルポール条約により、船舶の排ガス中のSOx(硫黄酸化物)の濃度規制が強化された。
その対策の一つとして注目を浴びているのが排ガス浄化装置である「スクラバー」である。

 

同社では、メーカーと協力し、スクラバー用に開発したダンパーや、高性能バルブ等を造船メーカーに販売している。
今期の受注高は約10億円と見込んでいるが、今後さらに拡大していくと考えている。

 

◎レーザー式ガス濃度計
レーザー式ガス濃度計は火力発電設備やごみ焼却設備の排ガス中に含まれる酸素や一酸化炭素濃度を測定する濃度計で、レーザーによるリアルタイム測定とメンテナンスフリーが特徴。
燃焼効率を改善することができ温室効果ガスや燃料の削減に寄与しているほか、化学工場の生産設備から排出される窒素酸化物や、硫黄酸化物などの有害物質を含む排ガス測定にも利用されている。

 

前期の受注高約2億円に対し、今期は約4億円を見込んでおり、こちらも今後の拡大を期待している。

 

②自己株式取得状況
2019年5月の取締役会決議に基づき実施している自己株式取得の状況は以下のとおりである。

 

決議内容

現在の状況(11月30日)

取得期間

2019年5月13日~2020年3月19日

2019年5月13日~2019年11月30日

取得株式数

40万株(上限)

28.84万株

取得金額

7億円(上限)

3.79億円

 

3.2020年3月期業績予想

(1)連結業績予想

 

19/3月期

構成比

20/3月期(予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

157,145

100.0%

135,000

100.0%

-14.1%

46.4%

営業利益

2,118

1.3%

2,400

1.8%

+13.3%

35.8%

経常利益

2,418

1.5%

2,700

2.0%

+11.6%

36.5%

当期純利益

1,587

1.0%

1,650

1.2%

+3.9%

28.5%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。

 

業績予想に変更無し。減収増益を予想
売上高は前期比14.1%減の1,350億円の予想。電力事業、化学・エネルギー事業の減収をカバーできない。
営業利益は同13.3%増の24億円の予想。子会社の貢献もあり、2桁の増益。
配当は前期と同じく45円/株の予定。予想配当性向は34.5%。

 

(2)セグメント別動向

◎売上・利益

 

19/3期

20/3期(予)

前期比

進捗率

売上高

 

 

 

 

電力事業

476.3

385.0

-19.1%

55.1%

化学・エネルギー事業

536.8

345.0

-35.6%

43.3%

産業機械事業

426.6

470.0

+10.3%

43.5%

素材・計測事業

15.1

20.0

+32.5%

28.0%

グローバル事業

116.4

130.0

+12.0%

42.2%

売上高計

1,571.4

1,350.0

-14.1%

46.4%

セグメント利益

 

 

 

 

電力事業

14.0

16.6

+18.0%

50.2%

化学・エネルギー事業

7.6

8.2

+8.3%

32.6%

産業機械事業

13.6

14.0

+3.1%

37.4%

素材・計測事業

-1.7

0.7

-

-

グローバル事業

4.0

2.6

-33.3%

66.2%

セグメント利益計

37.6

42.1

+12.6%

40.7%

*単位: 億円。売上高は外部顧客への売上高。

 

◎受注・受注残高

 

19/3期

20/3期(予)

前年同期比

受注高

 

 

 

電力事業

402

650

+61.7%

化学・エネルギー事業

498

460

-7.6%

産業機械事業

477

590

+23.7%

素材・計測事業

5.7

20

+250.8%

グローバル事業

120

130

+8.3%

合計

1,504

1,850

+23.0%

受注残高

 

 

 

電力事業

300

565

+88.3%

化学・エネルギー事業

624

740

+18.6%

産業機械事業

643

760

+18.2%

素材・計測事業

4

5

+16.2%

グローバル事業

28

30

+6.4%

合計

1,601

2,100

+31.2%

*単位:億円

 

①電力事業
減収、増益予想。
電力事業は今期も堅調に推移。火力発電所向け大型部品の更新、原子力発電所向け再稼働対策工事および水力発電所向け更新工事が計画されている。
前期あった大口案件の受渡が無いが、中小口案件を積み上げる。

 

②化学・エネルギー事業
減収、増益予想。
上期の鉄鋼会社向け新設発電設備に続き、下期も製紙会社向けバイオマス発電設備の受注を見込んでいる。

 

③産業機械事業
増収、増益予想。
リチウムイオン電池用関連設備の売上を約90億円見込んでいるほか、子会社の日本ダイヤバルブの業績が引き続き好調に推移する。
食品会社向けバイオマス発電設備の受注を見込んでいる。

 

④素材・計測事業
増収、黒字転換予想。
事業ポートフォリオの最適化により赤字脱却を目指す。

 

⑤グローバル事業
増収、減益予想。
ツルミヨーロッパ・グループ、西華産業タイランド、天津ダイヤバルブの業績が順調に推移するが、業績低迷している一部子会社の影響を受け、セグメント利益は2.6億円に留まる見込み。

 

(3)「中期経営計画CS2020」 最終年度の取り組み

今期は長期経営ビジョンの第1ステップとなる「中期経営計画 CS2020」の最終年度となる。

 

当期純利益

18/3期

19/3期

20/3期(予)

目標

22

24

27

実績・予想

16.5

15.8

16.5

*単位:億円

 

現在のところ目標未達の見通し。業績不振の子会社では、事業戦略の見直しや、人材の追加投入を実施しているが、明確な業績回復は来期からとなる見込み。
2020年4月より開始する次期中期経営計画の検討を進めるに際し、それぞれの事業を取り巻くビジネス環境を再分析し、課題の抽出を行い、より実効性の高い計画を立案する。

 

4.今後の注目点

「中期経営計画 CS2020」の最終年度となる今期は、残念ながら目標未達となる見込み。
長期経営ビジョンの第2ステップとなる次期中期経営計画に繋げるためにも、今期後半でどれだけ目標に近づけることができるか期待したい。
一方、環境配慮型商材の展開も注目だ。需要が拡大すると同時に競争が激しくなることも当然予想されるが、どのように競争力を強化してボリューム拡大に繋げていくのか注目される。

 

<参考1:長期経営ビジョン及び中期経営計画>

(1)長期経営ビジョン及び中期経営計画の概要
同社は、2027年に向けた長期経営ビジョン「10年後の西華産業グループ像」および2017年4月開始の3カ年計画で「中期経営計画CS2020」を策定した。

 

(同社HPより)

 

①長期経営ビジョン「10年後の西華産業グループ像」
*策定の目的
2017年は設立70周年を迎える節目の年であり、長期的な視点に立ってグループの進むべき方向性を明確にし、グループ社員一丸となり大きな変革を目指していく為に、それまでは3年おきに策定していた中期経営計画に加えて、長期経営ビジョンとして「10年後の西華産業グループ像」を策定した。

 

*概要
グループ像及びそれを実現するための長期方針を以下のように設定した。

10年後の西華産業グループ像

 

事業環境の変化に適応し、強固な経営基盤を有したグローバルな企業グループとなっている。また、グループ社員は開拓精神に燃え、各々の会社で働き甲斐を感じ、活力に溢れて一人一人が成長を実感している。

長期経営方針

 

1.ビジネスモデルの変革と進化を進め、さらにグループの収益力を向上させる。

2.時代の変化に対応し、新規事業を創り出せる人材並びに、国内外で活躍できる人材の発掘と育成を行うと共に、経営資源を最適投入する。

3.社員にとって働きがいがあり魅力溢れる職場環境を作り、生産性を向上させる。

 

②中期経営計画CS2020
*概要
「10年後の西華産業グループ像」を見据え、2017年4月から2020年3月までを長期経営ビジョンの第1ステップと位置付けて、「中期経営計画CS2020」を実行する。

 

 

*基本方針「変革と進化」
前中期経営計画CS2017の基本方針「事業領域の多様化」は同社グループにとって重要な経営課題だが、これを進めていくためにはビジネスモデルの変革と従来ビジネスの進化が必要不可欠であるため、「中期経営計画CS2020」の基本方針を「変革と進化」とした。

 

*全体戦略

①新たなビジネスモデルの構築

 

「事業領域の多様化」を引き続き推進していくため、人材・資本を成長分野へ積極的に投入する。

②従来ビジネスの進化

 

新たな発想と客観的な視野を持ち、従来ビジネスを盤石な事業に進化させる。

③グループ経営・グローバル戦略の加速

 

グループ間の連携強化と現地化を推進し、グローバル展開の加速を図ると共に、効率的なグループ経営を目指す。

④人材育成および職場環境の充実

 

変革と進化に対応し、国内外で活躍できる人材を育成すると共に、社員が生き生きと働ける魅力溢れる職場環境の充実を図る。

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

7名、うち社外2名

監査役

4名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2019年6月26日

 

<基本的な考え方>
当社は「社業の発展を通じ社会に貢献する。」を企業理念に掲げ、あらゆるステークホルダーと良好な関係を築きながら、中長期的な企業価値の向上に取り組んでおります。こうした取り組みを実行していくため「経営の健全性と透明性」「迅速な意思決定と実行」が必要不可欠であると考え、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。
なお、当社は独立社外取締役および独立社外監査役による経営の監督体制の強化を図っております。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則1-2-4】

議決権行使プラットフォーム利用、招集通知の英訳

当社は、議決権の電子行使に関し、その導入を検討して参ります。

また招集通知の英訳につきましては、2017年開催の定時株主総会より招集通知の一部を英訳し、当社ホームページに掲載しております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>

原則

開示内容

【原則1-4 政策保有株式】

「政策保有株式に関する方針」

当社は、取引先との取引内容や取引の規模・期間等を鑑みて、取引関係の維持・強化のために必要と判断する企業の株式を保有しております。

当社は、保有の意義が希薄と考えられる政策保有株式については、できる限り速やかに処分・縮減していくことを基本方針とし、毎年、取締役会で個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを精査し、検証の結果を有価証券報告書に開示しております。

なお、当社では、2019年3月期に一部保有株式を売却致しました。

 

「政策保有株式に係る議決権行使に関する方針」

当社が保有する株式の議決権の行使については、当該企業の経営方針を尊重した上で、当社の中長期的な企業価値向上に資するものであるかを議案毎に確認し、総合的に判断致します。

 

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、株主、機関投資家との積極的な対話を通じ、中長期的な企業価値の向上を図るため、年二回の決算説明会において社長自ら決算状況や中期経営計画の進捗状況を説明している他、株主総会においては、質疑応答時間を十分に設け、株主からの質問に対して丁寧な対応に努めております。

また当社は、個人株主からの対話(面談)の申込みに対しては総務・人事部が、機関投資家等の法人株主に対しては企画部が対応しております。

 

 

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

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