ブリッジレポート
(3778) さくらインターネット株式会社

プライム

ブリッジレポート:(3778)さくらインターネット 2020年3月期第2四半期決算

ブリッジレポートPDF

 

田中 邦裕 社長

さくらインターネット株式会社(3778)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表者

田中 邦裕

所在地

大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪 タワーA 35階

決算月

3月

HP

https://www.sakura.ad.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

640円

36,480,056株

23,347百万円

1.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

2.50円

0.4%

5.48円

116.8倍

199.06円

3.2倍

*株価は10/31終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

12,086

976

822

553

15.95

2.50

2017年3月(実)

13,961

1,018

804

548

15.74

2.50

2018年3月(実)

17,033

745

574

349

9.29

2.50

2019年3月(実)

19,501

567

395

91

2.44

2.50

2020年3月(予)

22,900

720

480

200

5.48

2.50

*予想は会社予想。単位は百万円、円。

 

さくらインターネット株式会社の2020年3月期第2四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年3月期第2四半期決算概要
3.2020年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 20/3期上期は前年同期比14.6%の増収、同43.7%の営業増益。国立研究機関向け高火力コンピューティングの寄与等で専用サーバサービスが同36.3%増、政府衛星データ案件の売上の増加でその他が同30.8%増、と近年の取り組みがそろって成果をあげる中、VPS・クラウドサービスの拡大が続いた(同9.4%増)。利益面では、不具合の発生による想定外のIoTモジュールの簿価引き下げの影響を吸収して想定通りの利益を確保した。

     

  • 通期予想に変更はなく、前期比17.4%の増収、同26.9%の営業増益。従来型の専用サーバサービス及び不具合の影響でIoT関連売上が当初想定を下回る見込みだが、好調なクラウドサービスや高火力サービス(専用サーバサービス)でカバーして当初予想に沿った着地が見込まれる。IoT関連については、4Q(1-3月)から不具合を改修した新モデルの拡販を予定しているが、売上予想には織り込まなかった。

     

  • 通期予想に対する進捗率は、売上高45.1%(通期実績ベースの前年同期46.2%)、営業利益56.6%(同50.0%)、経常利益67.9%(同52.7%)、純利益88.6%(同118.3%)。利益面で進捗しているが、下期は、サービスリニューアルや既存データセンターのリノベーション等、競争力確保に向けた投資や費用の増加が見込まれる、として業績予想を保守的に据え置いた。

     

1.会社概要

東京(西新宿、東新宿、代官山:フロア単位の賃借)、大阪(堂島:フロア単位の賃借)、北海道(石狩:土地建物保有)の3エリアでデータセンターを運営し、サーバの設置スペースと電源やネットワーク回線等を提供するハウジングサービスとサーバ環境(コンピュータリソース)をインターネット上で提供するホスティングサービスを手掛けている。インフラを自社で保有する事で高収益を追求し、このインフラをハウジングサービスの提供にも活用する事で稼働率を上げ固定費リスクを軽減している。

 

【企業理念】

同社は、下記のミッション、ビジョン、バリューを企業理念として定め、これを実現することによって、全てのステークホルダーから価値ある企業として支持される事を目指している。
コーポレート・ミッション  使命
私たちは、人々とビジネスの可能性を広げるデータセンターサービスの提供を通じ、インターネットによってひらかれる創造性と驚きに満ちた未来の実現に貢献します。
コーポレート・ビジョン  目指す姿

サービス

高品質で低価格なITプラットフォームと革新的で面白いインターネットサービスの提供

インフラストラクチャー

スケールメリットと柔軟性を兼ね備えたコスト競争力の高いITインフラの実現

テクノロジー

価値あるサービスの実現とインターネットの発展に寄与する先進的な技術の探究

コーポレート・バリュー  重視する価値観
・質の高いサービスを生みだす絶えざるイノベーション
・コストパフォーマンスを支える卓越したオペレーション
・すべての活動のベースとなる良質なコミュニケーション

 

1-1 事業内容

事業は、ハウジングサービス、ホスティングサービス(専用サーバ、レンタルサーバ、VPS・クラウド)、及びドメイン取得サービス、SSL取得サービス(独自ドメインによるサーバ証明書の取得代行)、子会社事業等のその他サービスに分かれ、19/3期の売上構成比は、13.6%、64.5%(うち、専用サーバ20.5%、レンタルサーバ16.8%、VPS・クラウド27.2%)、21.9%。

 

ハウジングサービス
同社が運営するデータセンター内に、顧客所有の通信機器類を自由に設置できるスペースと、インターネット接続に必要な回線や電源などを貸与するサービス。ラック単位で設置スペースを貸し出す「ラック貸し(回線、電源等も提供)」が中心だったが、自社で土地建物を保有する石狩データセンターの稼働に伴い「スペース貸し」(大規模ハウジング)を開始した。

 

ホスティングサービス
専用サーバサービス、レンタルサーバサービスの物理ホスティングと、VPSサービス、クラウドサービスの仮想ホスティングに分かれる。

 

専用サーバサービス
同社が所有する物理サーバを専用で利用できるサービス(「さくらの専用サーバ」)。物理サーバをクラウドのように利用できるが、仮想化技術を用いた通常のクラウドに比べて性能やセキュリティが各段に優れる。専門知識を要するサーバのメンテナンス等の負担があるものの、独自にサーバの設定が可能である事や、ソフトウェアのインストールに制約が無い事等、レンタルサーバサービスと比べると自由度が高い。台数制限がなく、複数台構成も可能で、申し込みから最速10分で利用できる。専用サーバは、クラウド・VPS等の仮想サーバの普及により売上が減少していたが、パフォーマンスの安定性や高性能なDB・ストレージの活用といった機能面でのメリットやクラウドに比べ規模拡大に伴い料金が増加しにくいコスト面での優位性から、特に高速処理が要求されるAI分野での利用等で見直されつつあり、クラウド(仮想サーバ)と専用サーバ(物理サーバ)を併用する顧客も増えている。

 

レンタルサーバサービス
同社が所有する物理サーバと豊富な機能をメンテナンス不要で利用できるサービス。1台の物理サーバを専用で利用できるサービス(「さくらのマネージドサーバ」)と1台の物理サーバを複数の顧客が共同で利用するサービス(「さくらのレンタルサーバ」)を提供。サーバの設定やソフトウェアのインストールに一定の制約があるものの、専門知識を要するサーバのメンテナンス等は同社が代行するため、利用者は作業負担を大幅に軽減する事ができる。

 

VPS・クラウドサービス
仮想化技術により、物理サーバ上に複数の仮想サーバを構築し、そのひとつひとつが専用サーバのように利用できるサービス。基本的に仮想サーバ1台毎の単体契約となるサービス(「さくらのVPS」)と、契約の中で複数台サーバの申し込みとそのネットワーク設定を可能とし、日割や時間割での課金が可能なサービス(「さくらのクラウド」)を提供。物理サーバ(専用サーバサービスやレンタルサーバサービス)よりも自由度が高く、かつコストパフォーマンスに優れる。

 

 

2.2020年3月期第2四半期決算概要

2-1 上期連結業績

 

19/3期

上期

構成比

20/3期

上期

構成比

前年同期比

1Q時修正

予想

予想比

売上高

9,014

100.0%

10,329

100.0%

+14.6%

10,680

-3.3%

売上総利益

2,545

28.2%

2,803

27.1%

+10.2%

 -

-

販管費

2,261

25.1%

2,396

23.2%

+6.0%

 -

-

営業利益

283

3.1%

407

3.9%

+43.7%

400

+1.8%

経常利益

208

2.3%

326

3.2%

+56.3%

310

+5.2%

親会社株主帰属利益

108

1.2%

177

1.7%

+63.5%

160

+10.6%

*単位:百万円

 

前年同期比14.6%の増収、同43.7%の営業増益
売上高は前年同期比14.6%増の103億29百万円。ハウジングの漸減傾向が続いたものの、国立研究機関向け高火力コンピューティングの売上等で専用サーバサービスが同36.3%増、政府衛星データ案件の売上の増加でその他が同30.8%増、と伸長。新機能の追加等による新規顧客の獲得と既存顧客の利用増で、VPS・クラウドサービスも同9.4%増加した。

 

営業利益は同43.7%増の4億07百万円。サーバ・ネットワーク機器の増加等に伴う減価償却費・リース料の増加(3億77百万円増)やIoTモジュールの簿価引き下げ(注)の影響等で売上原価が75億25百万円と同16.3%増加したものの、販管費が同6.0%増と小幅な伸びにとどまった(社内システム開発エンジニアや子会社営業人員の増加等による人件費の増加1億13百万円が販管費増加の主な要因)。固定資産売却損・除却損を特別損失に計上したものの、税負担率の低下で最終利益は1億77百万円と同63.5%増加した。

 

注.IoTモジュールの簿価引き下げ
IoTモジュールで不具合が発生したため、販売を停止しメーカー負担による修理を行った。第4四半期には販売を再開するが、販売再開までの影響を考慮して簿価切下げを行った(1億30百万円の原価増要因)。
不具合とは、モデム内のフラッシュメモリの不具合であり、製造から一定期間経過後に一部が異常をきたし、通信モジュールが動作しなくなる現象が確認された。全在庫品を確認したところ、不具合が確認されたモデムはごくわずかだったが、現在正常に動作している通信モジュールも、今後異常が発生する可能性が想定されるため、今回の対応となった。

 

サービス別売上高

 

19/3期 上期

構成比

20/3期 上期

構成比

前年同期比

ハウジング

1,341

14.9%

1,190

11.5%

-11.3%

専用サーバ

1,926

21.4%

2,625

25.4%

+36.3%

レンタルサーバ

1,626

18.0%

1,680

16.3%

+3.4%

VPS・クラウド

2,597

28.8%

2,841

27.5%

+9.4%

その他

1,522

16.9%

1,991

19.3%

+30.8%

合計

9,014

100.0%

10,329

100.0%

+14.6%

*単位:百万円

 

販管費の内訳

 

19/3期 上期

売上比

20/3期 上期

売上比

前年同期比

貸倒引当金繰入額

0

0.0%

3

0.0%

 -

給料及び手当

628

7.0%

694

6.7%

+10.5%

賞与引当金繰入額

91

1.0%

109

1.1%

+19.8%

その他

1,541

17.1%

1,588

15.4%

+3.0%

販管費合計

2,261

25.1%

2,396

23.2%

+6.0%

*単位:百万円

 

2-2 第2四半期(7-9月)連結業績

 

19/3-1Q

2Q

3Q

4Q

20/3-1Q

2Q

売上高

4,399

4,614

4,928

5,558

5,122

5,206

売上総利益

1,212

1,332

1,354

1,446

1,518

1,285

営業利益

112

171

154

129

312

95

経常利益

63

144

97

89

273

52

四半期純利益

39

69

37

-53

159

17

EBITDA

726

808

771

810

1069

853

売上総利益率

27.6%

28.9%

27.5%

26.0%

29.6%

24.7%

営業利益率

2.6%

3.7%

3.1%

2.3%

6.1%

1.8%

*単位:百万円

 

前四半期比1.7%の増収、同69.5%の営業減益
前四半期に大口案件の初期費用相当の売上を計上した反動で専用サーバサービスが減少したものの、VPS・クラウドの売上増と政府衛星データ案件の寄与や子会社の販売商品売上等で連結売上高が52億06百万円と前期四半期比1.7%増加した。利益面では、IoTモジュールの簿価切下げの影響(1億32百万円の売上原価増)、減価償却費・リース料の増加(32百万円増)、人件費の増加(16百万円増)、更には季節要因(夏季の空調費用増)等による電力費の増加(18百万円増)等で、営業利益が95百万円と同69.5%減少した。

 

サービス別売上高

 

19/3-1Q

2Q

3Q

4Q

20/3-1Q

2Q

ハウジング

673

668

650

651

587

602

専用サーバ

956

969

967

1,104

1,388

1,236

レンタルサーバ

804

821

820

830

840

840

VPS・クラウド

1,284

1,312

1,345

1,362

1,397

1,443

その他

680

841

1,143

1,609

908

1,082

*単位:百万円

 

政府衛星データ案件や子会社での機器販売の増加でその他の売上が前四半期比19.2%増と伸びる中、同3.3%増とVPS・クラウドサービスの成長が続いた他、機器販売のスポット売上の発生でハウジングサービスが同2.7%増加した。専用サーバサービスは、前四半期に国立研究機関向け高火力コンピューティング初期費用相当売上を計上した反動で同10.9%の減収となったが、同案件のランニング売上(四半期で約2億50百万円)の計上で前年同期比では27.6%の増収。

 

営業費用の内訳

 

19/3-1Q

2Q

3Q

4Q

20/3-1Q

2Q

賃料

431

436

455

461

456

460

減価償却費・リース料

886

897

930

982

1,064

1,097

労務費

563

577

596

626

662

678

通信費

384

382

389

406

355

333

電力費

186

206

203

206

211

230

修繕費

202

203

201

210

217

216

販売商品原価

254

268

138

285

320

377

その他

276

309

660

932

315

527

*単位:百万円

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー

財政状態

 

19年3月

19年9月

 

19年3月

19年9月

現預金

5,505

4,301

短期有利子負債

2,716

2,708

売上債権

2,002

1,811

未払法人税等

220

259

たな卸資産

1,001

818

前受金

3,393

4,308

流動資産

9,452

7,914

長期有利子負債

6,089

5,263

有形固定資産

18,928

18,249

長期リース債務

5,867

5,595

固定資産

21,706

21,258

負債

23,814

21,722

資産合計

31,158

29,173

純資産

7,344

7,450

*単位:百万円

 

第2四半期末の総資産は前期末との比較で19億85百万円減の291億73百万円。大口案件用機材支払等で現預金と設備関係未払金(流動負債)が、減価償却で有形固定資産が、それぞれ減少。長期借入金や長期リース債務を中心に固定負債も減少した。自己資本比率25.2%(前期末23.3%)。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

19/3-1Q

2Q

3Q

4Q

20/3-1Q

2Q

営業CF(A)

316

558

257

1,099

1,374

1,290

投資CF(B)

-316

-571

-704

-983

-2,005

-494

フリーCF(A+B)

0

-13

-446

115

-631

795

財務CF

-543

-93

-132

2,007

-732

-635

現金等残高

4,068

3,962

3,382

5,505

4,141

4,301

*単位:百万円

 

第2四半期(7-9月)は、税引前利益49百万円(第1四半期2億60百万円)、減価償却費・リース料10億97百万円(同10億64百万円)等で12億90百万円の営業CFを確保した。投資CFでは、第1四半期に大口案件用機材の支払いがあったが第2四半期は支払いが一巡。財務CFは有利子負債の返済と配当金の支払い等による。

 

2-4 投資・人員

 

予算

実績

 

職種

増減

データセンター

15億円

1億円

同社

エンジニア

+16名

サーバ、ネットワーク機器

46億円

21億円

営業・販促・新規企画

+4名

その他(システム、事務所関連等

1億円

0億円

管理

-1名

合計

63億円

24億円

グループ会社

ゲルヒン社

+0名

 

 

 

ITM社

+0名

 

 

 

ビットスター社

+15名

 

 

 

IzumoBASE社

+4名

 

 

 

合計

+38名

 

上期の設備投資は24億円。データセンター投資は一服したが、成長のための機材投資が続いている。他方、人材投資では一定の採用を継続しており、従業員数が前期末の652名から690名に38名増加した。同社のエンジニアや中小規模法人向けMSPに強みを持つ子会社ビットスター社の増員が主な増加要因。

 

3.2020年3月期業績予想

3-1 通期連結業績

 

19/3期 実績

構成比

20/3期 予想

構成比

前期比

売上高

19,501

100.0%

22,900

100.0%

+17.4%

売上総利益

5,345

27.4%

5,965

26.1%

+11.6%

販管費

4,778

24.5%

5,245

22.9%

+9.8%

営業利益

567

2.9%

720

3.1%

+26.9%

経常利益

395

2.0%

480

2.1%

+21.3%

親会社株主帰属利益

91

0.5%

200

0.9%

+118.2%

*単位:百万円

 

通期予想に変更はなく、前期比17.4%の増収、同26.9%の営業増益予想
売上高は前期比17.4%増の229億円。従来型の専用サーバサービス及び不具合の影響でIoT関連売上が当初想定を下回る見込みだが、好調なクラウドサービスや高火力サービス(専用サーバサービス)でカバーして概ね当初予想の範囲での着地が見込まれる。IoT関連については、第4四半期から不具合を改修した新モデルの拡販を予定しているが、売上予想には織り込んでいない。

 

営業利益は同26.9%増の7億20百万円。下期にかけて、VPSサービス等のリニューアルや既存データセンターのリノベーション等、競争力確保に向けた継続的な投資や費用が見込まれるため保守的に業績予想を据え置いた。

 

配当は、1株当たり2.5円の期末配当を予定している(予想配当性向45.6%)。

 

サービス別売上高(期初予想)

 

19/3期 実績

構成比

20/3期 予想

構成比

前期比

ハウジング

2,643

13.6%

2,392

10.4%

-9.5%

専用サーバ

3,998

20.5%

5,341

23.3%

+33.6%

レンタルサーバ

3,277

16.8%

3,512

15.3%

+7.2%

VPS・クラウド

5,305

27.2%

5,850

25.5%

+10.3%

その他

4,275

21.9%

5,805

25.3%

+35.8%

合計

19,501

100.0%

22,900

100.0%

+17.4%

*単位:百万円

 

 

3-2 20/3期の取り組み

クラウドサービス、AI・高火力分野、及びデータ流通分野での取り組みを進めている他、子会社ゲルヒン(株)が防災アプリの提供を開始した。

 

クラウドサービス
「マーケットプレイス」の取り組みを推進している。「マーケットプレイス」とは、パートナー契約を結ぶ社外ベンダーが開発した商用ソフトウェア等を「さくらのクラウド」で提供するもの。動作検証やサポート、ライセンスの自動課金システム等の機能も同社が提供し、商用ソフトウェア等の利用料を両社でシェアする。これまで、事業が拡大すると、同社の競合先のクラウドサービスに乗り換える顧客が多かったが、同社がサービスインフラを提供する事で顧客の事業リスクの一部を負担し、長期のパートナーシップを構築していく。

 

この一環として、7月にホスティングサービスを提供する(株)ハイパーボックス(東京都新宿区、代表取締役 深田太郎)との提携の下、トレンドマイクロ(株)の法人向け総合サーバーセキュリティの提供を開始した他、9月には、WEBサイト制作やコンテンツマーケティング支援を行う(株)クリエイターズネクスト(東京都品川区、代表取締役 窪田望)との提携の下、アクセス解析・ウェブ改善レポートの自動生成サービス「KOBIT」(コビット)の提供を開始した。
この他、「さくらのクラウド」が国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)開発の児童虐待対応支援システムに採用された。児童虐待対応支援システムとは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業として、産総研が開発したもので、児童相談所による虐待対応を人工知能(AI)で支援するシステム。このデータ通信環境として、「さくらのクラウド」が採用された。クラウドの性能、セキュリティ、保守運用の点で産総研の仕様を全て満たした事で今回の採用となったと言う。

 

AI・高火力分野
グループ内のサービスを連係させたソリューションで大口公共案件の獲得に取り組んでいる。行政機関に精通するキーマンが在籍する強みを活かしつつ、大規模・高速コンピューティングリソースに加え、システム設計・運用・保守までをワンストップで提供する。そして、大口公共案件の実績を基に製造業に展開していく考え。

 

現在、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)のディープラーニング翻訳の計算機資源として高火力サービスを提供している。NICTは、ディープラーニング(深層学習)を利用した翻訳システム(多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra」)を無料で提供している。言葉の壁の克服を目指して開発したスマートフォン用の多言語音声翻訳アプリであり、旅行会話用としての高い翻訳精度を備えている。このハードウェア基盤として、同社の高火力コンピューティングが採用されている(4月より本格的に提供開始)。

 

「VoiceTra」アプリ画面のスクリーンショット

 

(同社資料より)

 

同社のクラウド型スーパーコンピューターがスパコンランキングで世界54位にランキング
同社の高火力コンピューティング基盤を活用したクラウド型のスーパーコンピューター(以後、スパコン)システムが、スパコンの処理性能ランキングである「TOP500」(スパコンランキング)で、世界54位にランキングされた。このスパコンは、研究用途のシステムで、同社と子会社プラナスソリューションズ(株)及び協力会社と共に構築したもの。「TOP500」は、ドイツのフランクフルトで開催中のHPCに関する国際会議・展示会「ISC2019」で、2019年6月17日(日本時間)に発表された。

 

データ流通分野
データ流通分野では、衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」のユーザー登録数が1万件を突破した。

 

バージョン

Ver.1.2をリリース(9月にOSをアップデート)

本登録数

10,643件(9末時点)

 

 

「Tellus」について
「Tellus」は、政府衛星データ等を無料で提供し、分析・解析等に必要なコンピューティングを有料で提供するビジネス。政府事業期間(3年間)において、同社インターネットインフラ(「さくらのクラウド」、「高火力コンピューティング」)の無料利用枠を設定し、提供している。

 

同社は、経済産業省の「平成30年度政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業」に係る委託先としての契約を、2018年5月9日に同省と締結した。同事業は、政府衛星データを利用した新たなビジネスマーケットプレイスを創出し、「政府衛星データのオープン&フリー化及び利用環境整備に関する検討会 報告書」で示された5つの社会的便益の実現に寄与する事を目的としている。同社は、大規模なストレージと高い計算能力を有したプラットフォーム「Open&Free Platform」を構築・運営する事で政府衛星データのオープンで自由な利用環境を提供する。当初3年間は政府から業務委託料を受け取り、4年目から完全民営化される事が予定されている。

 

尚、5つの社会的便益とは、①人材育成を通じた未来への投資、②国民生活の安全・安心への貢献、③地方独自の課題解決に貢献することで地方創生への寄与、④データドリブン社会推進による日本の産業界の効率化、⑤新規ビジネス産業創出。

 

直近のトピックス
日本国内の衛星データのビジネス利用を促進する取り組み及び「Tellus」の利用者創出へ向けた衛星データ解析講座の提供を10月に開始した。前者では、衛星データビジネスの創出において数多くの海外実績を持つPwCコンサルティング合同会社と協力して、輸送・交通・行政・自治体・通信・エネルギー・保険・金融業界に向けた実践的な衛星データ活用セミナーを開催していく。後者では、AI開発・データサイエンティスト人材採用・育成サービスを提供する(株)SIGNATE(東京都千代田区、代表取締役社長 齊藤 秀)と一般財団法人リモート・センシング技術センターの協力の下、衛星データ活用技術者養成講座「Tellus Satellite Boot Camp」の開催、及びeラーニング「Tellus Trainer」の提供を開始した。衛星データの解析者を育成する事で、衛星データプラットフォーム「Tellus」の利用者創出につなげていく。

 

衛星データ活用技術者養成講座(Tellus Satellite BootCamp)の様子

 

(同社資料より)

 

子会社ゲルヒン(株)による防災アプリの提供
9月にゲルヒン(株)が防災アプリの提供を開始し、足元のダウンロード数が35万ダウンロードを超えた。防災アプリは、地震・津波・噴火・特別警報の速報や、洪水・土砂災害といった防災気象情報を、利用者の現在地や登録地点に基づき最適化して配信するスマートフォンアプリ。被害が予想される地域に居住する方や訪問者等の、的確な状況認識と迅速な判断・行動を補助する目的で開発された。提供する防災気象情報は、気象業務支援センター(気象庁本庁舎及び大阪管区気象台内)と接続した専用線からダイレクトに受け取る事で情報の信頼性が担保されており、ゲヒルン社が独自に開発した技術により国内最速レベルで配信される。

 

尚、ゲルヒン(株)は、主にセキュリティコンサルティングやウェブサイトの脆弱性診断サービス等を提供しており、2016年4月に、セキュリティ分野のサービスと人材強化を目的に子会社化された。優秀なセキュリティ・エンジニアの確保により、セキュリティサービスのラインナップ拡充が進んだ他、さくらインターネット(株)社内のセキュリティ体制の強化にも貢献している。

4.今後の注目点

上期はVPS・クラウドサービスの成長が続く中、国立研究機関向け高火力コンピューティング(AI・高火力分野)や政府衛星データ案件(データ流通分野)といった近年の取り組みの成果で売上が順調に伸びた。国立研究機関向け高火力コンピューティングはもちろん、政府衛星データ案件も、分析・解析等に必要なハイエンドのコンピューティングを提供するため利益率が高く、下期以降も安定した収益が期待できる。一方、売上が横ばいにとどまったレンタルサーバサービスについては、新サービスの投入や15周年記念キャンペーン等でテコ入れを図る考え。もっとも、サービスの改善等、前期後半から新規顧客の獲得以上に既存顧客のフォローアップに力を入れており、その成果が解約率の低下に現れていると言う。

 

また、第4四半期(1-3月)にはIoTモジュールの拡販を再開する。これまで、IoTモジュールは試験的な利用にとどまっていたため販売個数が伸びなかったが、PoC(概念実証:概念や理論、アイディア等の実証を目的とした検証やデモンストレーション)を経て実用段階に入れば販売個数が飛躍的に伸びる。通信キャリア各社による5Gサービスの開始も追い風となるだろう。
この他、5G・IoT関連では、ソフトバンク(株)の子会社でインターネットエクスチェンジ(IX)事業を行うBBIX(株)とモバイルネットワークソリューションの提供を目的に合弁会社BBSakura Networks(株)を設立した(2019年8月)。BBIX(株)が持つネットワーク及び販売力とさくらインターネット(株)が持つ通信分野での仮想ハードウェアエミュレーション(ソフトウェア側で仮想のハードウェアデバイスを実装する事)技術を融合して、国内外の通信事業者に低コストだが高品質な通信ソリューションを提供していく。昨今のクラウドコンピューティングの普及、そして今後の5Gの実用化に向けて、ソフトウェアの重要性がますます高まっていく、というのがBBIX(株)とさくらインターネット(株)の考え。今後の展開に期待したい。

 

参考:コーポレート・ガバナンスについて

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

6名、うち社外3名

監査役

4名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2019年07月10日)
基本的な考え方
当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方は、当社が企業規模を拡大していくのに並行して、経営管理組織の整備を推進し、各部門の効率的・組織的な運営及び内部統制の充実を図ることであり、その基本姿勢を基に現在まで努力してまいりました。特に、インターネット業界は、目に見えない多数の利用者に対して通信施設を開放しており、世界中のインターネット利用者を市場として成立している事業でありますので、他業界以上の大きな社会的責任を背負っております。当社におけるコーポレート・ガバナンスの確立は、このような社会的責任を果たしていくことを可能にする経営基盤であると考えております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
原則3-1 【情報開示の充実】
(4)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
取締役候補者としては、当社の事業に強い関心を持ち、当社の企業理念を実現するために行動し、豊富な実務実績や専門的な知識を有しているもの、会社経営等で豊富な知識を有しているもの等、高い知見により当社の経営を適切に監督しうるものを指名いたします。監査役候補者としては、当社の事業に強い関心を持ち、監査役の役割・責任を高いレベルで体現し、中立的・客観的な視点から監査を行い、経営の健全性確保に貢献できるもので、監査を実施するための豊富な経験、高い知見を有しており、専門的な知識を有しているものや会社経営等で豊富な知識を有しているものを指名いたします。また、解任の方針及び手続については、対象者の経営計画に対する業績等を監視・評価し、取締役会にて十分な審議をはかることのできるよう、適切なプロセスを検討してまいります。

 

補充原則4-1-3 【取締役会の役割・責務(後継者計画)】
当社では、最高経営責任者等の後継者計画について検討中です。当社の企業理念や経営戦略を踏まえ、後継者の指名プロセス及び育成計画等について、引き続き取締役会において議論を重ねてまいります。

 

補充原則4-2-1 【経営陣の報酬】
取締役の報酬は、業務分掌や業績への貢献度等を総合的に勘案のうえ、代表取締役が提案し、取締役会で個別に決定しております。今後は、客観性・透明性ある報酬制度、中長期的な業績と連動する報酬及び自社株での報酬の導入についても、引き続き検討いたします。

 

補充原則4-3-2、4-3-3 【最高経営責任者の選解任】
最高経営責任者の選解任にあたっては、本報告書補充原則4-1-3【取締役会の役割・責務(後継者計画)】に記載する後継者計画と合わせ、検討を進めてまいります。

 

原則5-2 【経営戦略や経営計画の策定・公表】
当社の経営戦略や経営計画の策定においては、当社グループが目標として掲げている、前期対比売上高成長率10%以上・売上総利益率30%以上・売上高対経常利益率10%以上の継続的な達成を前提にしております。なお、資本コストを的確に把握した経営計画の開示については、決算説明会や個別ミーティング等により株主との対話を重ねながら、どのように伝えるべきかを慎重に検討していく予定です。

 

<開示している主な原則>
原則5-1 【株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、IR担当組織を設置し、株主や投資家に対しては、年2回以上の決算説明会を開催するとともに、ご要望により、取締役最高財務責任者等による個別面談等を行うことで、適切に対話の機会を設けております。また、対話にていただいたご意見については、適宜経営陣に共有する仕組みを構築しております。なお、対話にあたっては、対話のテーマに留意し、インサイダー情報を厳重に管理しております。

 

 

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

Copyright(C) 2019 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.

 

 

ブリッジレポート(さくらインターネット:3778)のバックナンバー及びブリッジサロン(IRセミナー)の内容は、www.bridge-salon.jp/ でご覧になれます。