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(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

プライム

ブリッジレポート:(4847) インテリジェント ウェイブ 2019年6月期決算

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井関 司 社長

株式会社インテリジェント ウェイブ(4847)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役社長

井関 司

所在地

東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー

決算月

6月

HP

https://www.iwi.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

892円

26,308,093株

23,466百万円

11.3%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

9.00円

1.0%

27.37円

32.6倍

242.23円

3.7倍

*株価は8/19終値。

 

非連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2016年6月(実)

7,205

731

750

513

19.48

6.00

2017年6月(実)

8,469

702

766

547

20.78

7.00

2018年6月(実)

10,603

547

573

377

14.36

7.00

2019年6月(実)

10,443

921

953

683

25.99

9.00

2020年6月(予)

10,600

1,000

1,040

720

27.37

9.00

* 予想は会社予想。単位は百万円、円。

 

 

株式会社インテリジェント ウェイブの2019年6月期決算の概要と2020年6月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2019年6月期決算概要
3.中期事業計画(20/6期~22/6期)
4.2020年6月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 19/6期は前期比1.5%の減収ながら売上高は104億円と100億円超を維持。営業利益は同68.3%増の9.2億円と、中期経営計画において20/6期の目標としていた9.3億円に迫った。配当は2円増配の9円を予定(配当性向34.6%)。3月27日付けで東証1部に指定された。

     

  • 20/6期予想は前期比1.5%の増収、同8.5%の営業増益。大型案件終了の影響やハードウェア販売の減少で売上高は前期比1.5%の増加にとどまるが、大型案件終了の影響を除くと同8%程度の増収。クラウドサービスの損益改善で営業利益は10億円の大台に乗る見込み。配当は1株当たり9円の期末配当を予定している。

     

  • 20/6期も売上の面では踊り場が続くが、21/6期以降は、クラウドサービスの安定成長に加え、次世代NET+1及び次世代不正検知の寄与や、サイバーセキュリティでのソリューションマップに基づくトータルソリューションの軌道化で増収ピッチが加速する。今期スタートした中期事業計画を着実に遂行する事で成長軌道への回帰が鮮明になり、次期中期事業計画では02/6期の営業最高益18.5億円を目指す展開になると考える。

     

1.会社概要

クレジットカード決済等のオンラインシステムに利用される金融フロントシステムで国内シェアNo.1のソフトウェア開発会社。金融フロントシステムは、店舗の端末や銀行の店外CD/ATM・海外ATM等をクレジットカード会社や銀行等のネットワークに接続して取引データの受渡しを行う。“リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術”、“システムを止めないためのノンストップ技術”、及び“高度なセキュリティ技術”を技術基盤とし、カード不正利用検知システムや証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する。地銀やノンバンク等向けに金融フロントシステムやカード不正利用検知システムのクラウドサービスも伸びている。営業面では、筆頭株主として議決権の50.61%を保有する大日本印刷(株)及びそのグループ企業との連携が強みとなっている。

 

【経営理念 :次代の情報化社会の安全性と利便性を創出する】
ネットワークゲートウェイ専門会社として、社員一人ひとりが、進取の気性を持った技術者集団としてあり続ける事で、次世代の新たなキラーシステムを創出し、次の30年を見据えた成長の軌跡を描いていく。そのためには、性別や国境にとらわれない多様な価値観が生み出すエネルギーが必要不可欠というのが同社の考え。また、常に新しい事に挑戦し、働きがいのある企業風土を作りあげる事で、社会における同社の企業価値も高めていく。
クレジットカードのオンライン決済が広く普及していなかった時代、同社は業界に先駆けて、大量の通信データを正確かつリアルタイムで処理するネットワークゲートウェイシステムを確立した。その後も、各種の認証機能や不正検知機能等、様々なアプリケーションを提供し続けた事で、ユーザーに信頼される決済インフラシステムのデファクトスタンダードとして、圧倒的な国内シェアを獲得してきた。キャッシュレス社会の推進を背景に、同社の事業機会は拡大を続けている。同社に受け継がれている「止まらないシステム」を追求する思想は、IT基盤の構築やセキュリティ機能の向上を支える技術と深く結びついており、今後、あらゆる業界に幅広く浸透していく、というのが同社の考え。
企業は、社会に貢献する事がなければ存在価値がない。同社は、これまでに培ってきた技術力を進化させ、安全でストレスなく情報を取得できる仕組みを築きあげる事で、ユーザーを通じて社会全体から信頼される会社を目指している。

 

1-1 事業セグメント

事業は、クレジットカードや証券等の金融業界やシステム開発会社を主な顧客として、ソフトウェア開発、自社製・他社製パッケージ及びハードウェアの販売、更には保守等を手掛ける金融システムソリューション事業と、業種・業界にとらわれず幅広く自社製・他社製パッケージを中心にしたソリューションを提供しているプロダクトソリューション事業に分かれる。18/6期の売上構成比は、それぞれ88%、12%。

 

金融システムソリューション事業
カード系(金融系)と証券系(非カード系)のビジネスに分かれる。金融系は、クレジットカード会社や銀行、大手システム開発会社等を主な顧客とし、自社開発のパッケージソフト「NET+1」や「ACEPlus」を用いたシステム開発を行っている。「NET+1」を用いたシステムは、店舗の端末や銀行の店外CD/ATM・海外ATM等をクレジットカード会社や銀行等のネットワークに接続して取引データの受渡しを行うためのもの(ネットワーク接続機能、決済の前提となるカード認証機能、加盟店の業務を管理する機能等を有する)。専用ハードと共に提供される。この分野で圧倒的なNo.1ブランドであり、大手クレジットカード会社のネットワークへの接続で7割のシェアを有する。

 

「ACE Plus」は、偽造カード・盗難カード利用などクレジットカードや銀行口座の不正利用の検知を目的とした不正検知システムであり、こちらも豊富な実績を有する(シェア6~7割)。この他、「NET+1」のオンライン接続機能を切り出したアプライアンス製品として「OnCore」を提供している。「OnCore Switch」は低コストかつ短時間で導入できる強みから、カード決済の清算業務(クリアリング)用途やスマートフォン決済時のATM接続・ネットワーク接続用途での導入が増えている。

 

一方、証券会社を顧客とする証券系では、金融系で培った“リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術”、“ノンストップ技術”、及び“セキュリティ技術”を活かして、高速情報基盤システム(証券取引所等から提供される市況データや気配値等を素早く社内の各端末に配信するシステム)等の開発を行っている。

 

上記の他、アクワイアリング業務、「ACEPlus」、「OnCore Switch」のクラウドサービスも提供しており、ユーザー企業の獲得が順調。大日本印刷(株)及びそのグループ企業の顧客資産とネットワークやセキュリティ分野での強みを活かしてサービス(開発)領域の拡大にも取り組んでいる。

 

プロダクトソリューション事業
当事業は、カードや証券等の業界に捉われず、全ての業界・企業を顧客対象とし、顧客の業務に使用されるPC 端末(エンドポイント)のセキュリティ対策製品を主な事業領域としている。具体的には、「NET+1」「ACE Plus」等で培ったネットワーク技術やセキュリティ技術をベースとした情報漏洩対策システム「CWAT(シーワット)」(パソコン等の端末から、コピー、印刷、ネットワーク経由等による情報の内部からの持ち出しを監視)を中心に、内部情報漏洩対策、脆弱性対策、及び外部攻撃対策について、監視・検出・診断・認証と防止・阻止の切り口からソリューションを提供している。

 

当事業は売上や利益の数字に表れないメリットも大きい。優れたセキュリティ関連製品を扱う事で得られる最新の情報や蓄積される技術・ノウハウ、海外の有力ベンダーとの提携により広がるワールドワイドのネットワーク、更には全ての業界・企業を顧客対象とする事による顧客層の広がりとビジネスチャンスの拡大等、目に見えない部分での貢献も大きい事業である。

 

2.2019年6月期決算概要

2-1 非連結業績

 

18/6期

構成比

19/6期

構成比

前期比

期初予想

予想比

売上高

10,603

100.0%

10,443

100.0%

-1.5%

10,700

-2.4%

売上総利益

2,222

21.0%

2,806

26.9%

+26.3%

 -

-

販管費

1,675

15.8%

1,885

18.1%

+12.5%

 -

-

営業利益

547

5.2%

921

8.8%

+68.3%

880

+4.7%

経常利益

573

5.4%

953

9.1%

+66.2%

900

+6.0%

親会社株主帰属利益

377

3.6%

683

6.5%

+81.2%

620

+10.3%

*単位:百万円
前期比1.5%の減収、同68.3%の営業増益
売上高は前期比1.5%減の104億43百万円。金融システムソリューション事業はカードブランド統合案件減少(19億35百万円→6億74百万円)の影響を、その他の顧客向けの売上とクラウドサービスの拡大でカバーして前期比微増の93億36百万円と期初予想を上回る着地。一方、プロダクトソリューション事業はハード売上が前期の売上を押し上げた反動(3億65百万円→82百万円)で11億06百万円と同13.0%減少し、期初予想に届かなかった。

 

営業利益は同68.3%増の9億21百万円。前期の営業利益が大型開発案件の一部不採算化で落ち込んだ反動もあるが、開発が順調に進んだ事や自社製パッケージ「NET+1」の販売が伸びた事等で営業利益率が8.8%と3.6ポイント改善した。

 

受注高は前期比11.5%増の113億42百万円。大型案件がなくなる中で高水の受注が続いた事で期末受注残高は53億35百万円と前期末(44億34百万円)及び前々期末(48億65百万円)を大きく上回った。

 

セグメント別売上高・利益

 

18/6期

構成比・

利益率

19/6期

構成比・

利益率

前期比

期初予想

予想比

金融システムソリューション

9,332

88.0%

9,336

89.4%

+0.04%

9,300

+0.4%

プロダクトソリューション

1,271

12.0%

1,106

10.6%

-13.0%

1,400

-21.0%

連結売上高

10,603

100.0%

10,443

100.0%

-1.5%

10,700

-2.4%

金融システムソリューション

598

6.4%

890

9.5%

+48.8%

840

+6.0%

プロダクトソリューション

-51

-

31

2.8%

-

40

-22.5%

連結営業利益

547

5.2%

921

8.8%

+68.4%

880

+4.7%

*単位:百万円

 

2-2 セグメント別動向

金融システムソリューション事業

 

18/6期

構成比

19/6期

構成比

増減

自社製パッケージ・クラウド

628

7%

1,149

12%

+521

ソフトウェア開発(大型開発案件)

6,439(1,935)

69%

5,668(674)

61%

-771

ハードウェア等

2,265

24%

2,519

27%

+254

売上高

9,332

100%

9,336

100%

+4

営業利益

598

6%

890

10%

+292

*単位:百万円

 

大型開発案件の減少(プロジェクト終了)でソフトウェア開発が減少したものの、自社パッケージ(2億42百万円→5億12百万円)、クラウド(3億86百万円→6億37百万円)、及びハードウェア等の増加で吸収した。ソフトウェア開発については、カード会社のカードブランド統合案件(大型開発案件)が大きく減少(19億35百万円→6億74百万円)した他、DNP案件(スマートフォン決済、決済PF、セキュリティ製品)も減少(21億16百万円→19億52百万円)したが、他のカード会社のネットワーク接続案件が増加(4億06百万円→6億84百万円)する等、大型開発案件の影響を除くと前期比増収である。
利益面では、採用が順調だった事等で販管費が増加したものの、収益性が高い自社パッケージが伸びた事とソフトウェア開発において各案件の開発が順調に推移した事、更にはクラウドの収益性も改善し、営業利益率が3.1ポイント改善した。

 

プロダクトソリューション事業

 

18/6期

構成比

19/6期

構成比

増減

自社製品 CWAT

360

28%

488

44%

+128

他社製品

911

72%

617

56%

-294

うちパッケージ

545

43%

534

48%

-11

うちハードウェア等

365

29%

82

7%

-283

売上高

1,271

100%

1,106

100%

-165

営業利益

-51

-

31

3%

+82

*単位:百万円
PCの更新に伴う大手インフラ企業からの大型案件の受注でCWATの売上が増加したものの、ハードウェアが減少した影響をカバーできなかった。また、競争の激化で他社製パッケージもわずかに減少した。ただ、他社製パッケージについてはサイバーセキュリティの脅威の変遷と新たなトレンドに対応したラインナップの整備が進み、20/6期の増収に向けた体制が整った。

 

 

 

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

18年6月

19年6月

 

18年6月

19年6月

 現預金

2,839

3,254

 仕入債務

543

332

 売上債権

1,092

1,455

 未払法人税等

83

359

 たな卸資産

547

640

 賞与・役員賞与引当金

256

318

流動資産

5,034

6,054

 前受金

1,053

1,428

 有形固定資産

519

540

 退職関連引当金

443

475

 無形固定資産

1,514

1,341

負債

3,121

3,659

 投資その他

1,768

2,095

純資産

5,715

6,372

固定資産

3,802

3,977

負債・純資産合計

8,837

10,032

*単位:百万円

 

期末総資産は前期末との比較で11億95 百万円増の100億32 百万円。安定したキャッシュ・フローと好決算を反映して、現預金や純資産が増加。余資の運用で投資その他も増加した。自己資本比率63.5%(前期末64.7%)。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

18/6期

19/6期

前期比

営業キャッシュ・フロー(A)

1,213

1,237

+24

+2.0%

投資キャッシュ・フロー(B)

-603

-601

+1

-

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

609

635

+25

+4.2%

財務キャッシュ・フロー

-348

-219

+129

-

現金及び現金同等物期末残高

2,839

3,254

+415

+14.6%

*単位:百万円

 

参考:ROEの推移

 

15/6期

16/6期

17/6期

18/6期

19/6期

ROE

8.71%

10.52%

10.26%

6.64%

11.32%

 売上高当期純利益率

6.48%

7.12%

6.46%

3.56%

6.55%

 総資産回転率

1.03回

1.08回

1.10回

1.22回

1.11回

 レバレッジ

1.31倍

1.37倍

1.45倍

1.53倍

1.56倍

*ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ。算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残。

 

3.中期事業計画(20/6期~22/6期)

【進化3Way】

単に目標数値を追うのではなく、人材育成・育成システムの確立及び風土改革と一体となった売上高・利益の目標達成を目指している。

 

Road to 10B

売上高100億円超の継続と営業利益10億円達成

次世代育成・確立

育て上手な会社になる

風土改革

進取の気性と働きやすさ

 

3-1 数値計画

 

19/6期 実績

20/6期 予想

21/6期 計画

22/6期 計画

平均成長率

売上高

10,443

10,600

11,200

12,000

4.7%

金融システムソリューション

9,336

9,400

9,900

10,600

4.3%

プロダクトソリューション

1,106

1,200

1,300

1,400

8.2%

営業利益(営業利益率)

921(8.8%)

1,000(9.4%)

1,080(9.6%)

1,200(10.0%)

9.2%

*単位:百万円

 

22/6期に売上高120億円、営業利益12億円(営業利益率10.0%)を目指している。3年間の平均成長率は、売上高が4.7%、営業利益が9.2%。
金融ソリューション事業は、クラウド、新規の開発案件及びハードウェアの更改によるFEP(Front End Processing)システム更改、スマートフォン決済、不正検知システム、DR(Disaster Recovery:災害復旧)対策等の既存領域の拡大に加え、次世代NET+1や次世代不正検知と言った新製品の寄与が見込まれる。プロダクトソリューション事業は、ソリューションマップに基づいたサイバーセキュリティソリューションを展開していく。

 

3-2 セグメント別計画

金融ソリューション事業
クラウドサービス
クラウドサービスが22/6期にかけて順調に拡大する見込み。20/6期は第2四半期にアクワイアリング業務(IOASIS)で新たに1社のサービスが始まる予定。不正検知(IFINDS)やスイッチング(IGATES)も引き合いは多く、21/6期、22/6期とユーザー企業の増加が見込まれる。

 

 

18/6期 実績

19/6期 実績

20/6期 予想

21/6期 計画

22/6期 計画

クラウドサービス売上高

386

637

800

1,100

1,400

*単位:百万円

 

新製品
次世代NET+1、次世代不正検知の開発を進めている。次世代NET+1はスマホ決済やQRコード決済で使われるオープン系のシステムやブロックチェーンを使ったシステム等、カード会社や銀行以外の決済事業者の多様なネットワークへの接続を可能にする。年内の完成を予定しており、既存顧客のシステム更改及び新規参入企業の需要を取り込む他、将来的には金融以外の領域にもサービスを広げていく。
一方、次世代不正検知はインターネットショッピング等、非対面でのカードの不正利用の増加に対応したもので(従来の不正検知は店舗での利用を想定。カード会社でトップシェアを誇る)、AIを利用する事で処理速度と検知精度を飛躍的に向上させた。具体的には、6カ月かけて収集した不正取引データを教師データとして深層学習させている。年内の製品化を念頭に、5月に1社、6月に1社、それぞれ実証実験をスタートさせた。実証実験が順調であれば、今期中に複数社との契約が実現する。
尚、次世代不正検知のエンジンである「FES(Fast Event Streamer)」がSMBC日興証券の「AI株価見守りサービス」に採用され、2019年7月26日に同サービスの提供が始まった。

 

プロダクトソリューション事業
サイバー攻撃による被害の増加を背景にサイバーセキュリティ対策の投資拡大が見込まれる。同社はサイバーセキュリティ先進国であり、優れた機能と実績を持つイスラエル企業の製品を国内に紹介し、販売する取組みを強化していく。19/6期は競争激化でTrapsの新規ライセンス販売が伸びず、他社製パッケージの売上が減少したが、その一方でイスラエル製品のラインナップ拡充が進んだ。多様化しつつある企業のサイバーセキュリティ対策の需要に応えるべく、サイバー攻撃に対する複数の製品を組み合わせたトータルソリューションを展開していく。

 

(同社資料より)

 

放送業界向け新製品(IPフローモニタリングソリューション)
4K・8Kの大容量映像データを高速かつ正確に送信するハードウェアであり、放送の品質維持・向上に必要な放送信号の監視システムである。放送システムのIP化に対応するべく、放送事業者と4K・8Kに対応した高速データ送信機器を共同開発し、共同特許も出願した。技術的には、高速情報基盤システム(証券取引所等から提供される市況データや気配値等を素早く社内の各端末に配信するシステム)の技術が活かされており、国内に競合する製品はない。前期第3四半期にテスト導入が完了し、マーケティング活動が続いている。IP化が進む海外の放送事業者向けのマーケティングにも取り組んでいる。

 

(同社資料より)

 

 

4.2020年6月期業績予想

4-1 非連結業績予想

 

19/6期 実績

構成比

20/6期 予想

構成比

前期比

売上高

10,443

100.0%

10,600

100.0%

+1.5%

営業利益

921

8.8%

1,000

9.4%

+8.5%

経常利益

953

9.1%

1,040

9.8%

+9.1%

親会社株主帰属利益

683

6.5%

720

6.8%

+5.3%

*単位:百万円

 

前期比1.5%の増収、同8.5%の営業増益予想
大型案件終了の影響やハードウェア販売の減少で売上高は前期比1.5%増の106億円にとどまるが、営業利益率の改善で営業利益は10億円と同8.5%増加する見込み。クラウドサービスの損益改善やハードウェアの減少による売上構成の良化が営業利益率改善の主因だが、プロダクトソリューション事業も新製品効果で営業利益率の改善が見込まれる。

 

セグメント売上高・利益

 

19/6期 実績

構成比

20/6期 予想

構成比

前期比

金融システムソリューション

9,336

89.4%

9,400

88.7%

+0.7%

プロダクトソリューション

1,106

10.6%

1,200

11.3%

+8.5%

売上高合計

10,443

100.0%

10,600

100.0%

+1.5%

金融システムソリューション

890

9.5%

960

10.2%

+7.9%

プロダクトソリューション

31

2.8%

40

3.3%

+29.0%

営業利益合計

921

8.8%

1,000

9.4%

+8.6%

*単位:百万円

 

4-2 セグメント別見通し

金融システムソリューション事業

 

19/6期 実績

構成比

20/6期 予想

構成比

増減

自社製パッケージ・クラウド

1,149

12%

1,040

11%

-109

ソフトウェア開発

5,668

61%

5,960

63%

+292

ハードウェア等

2,519

27%

2,400

26%

-119

売上高

9,336

100%

9,400

100%

+64

営業利益

890

10%

960

10%

+70

*単位:百万円

 

自社製パッケージが5億12百万円から2億40百万円に減少するものの、クラウドサービスが6億37百万円から8億円に増加する。ソフトウェア開発については、大型案件の剥落(6億74百万円)をその他の開発案件の増加で吸収する。ハードウェア等では、保守(11億24百万円→12億20百万円)及び他社製パッケージ(2億54百万円→3億10百万円)が増加するものの、ハードウェア(11億40百万円→8億70百万円)が減少する。

 

クラウドサービスの計画

 

17/6期

18/6期

19/6期

20/6期

 

通期

通期

通期

1Q 予

2Q 予

3Q 予

4Q 予

通期

売上高

179

386

637

180

205

205

210

800

売上総利益

-166

-296

-105

-15

-4

-4

-2

-25

 

導入社数

IGATES

2

2

2

2

2

2

 

IFINDS

3

3

3

3

3

3

 

IOASIS

4

4

5

5

5

5

*単位:百万円

 

プロダクトソリューション事業

 

19/6期 実績

構成比

20/6期 予想

構成比

増減

自社製品 CWAT

488

44%

430

36%

-58

他社製品

617

56%

770

64%

+152

うちパッケージ

534

48%

730

61%

+196

うちハードウェア等

82

7%

40

3%

-42

売上高

1,107

100%

1,200

100%

+93

営業利益

31

3%

40

3%

+9

*単位:百万円

 

昨今、未知の脅威に対する備えだけでなく、「侵入は起こり得る」事を前提とした検知・対応に加え、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴う新しいデジタルワークスタイルに対応したソリューションに対するニーズが増えている。同社は、インシデント解析のCybear Networks社「Cybear」、統合セキュリティ監視のCyber Observer社「Cyber Observer」、攻撃を無力化するMorphisec社「Morphisec」、ファイル無害化のReSeC Technologies社「RESEC」等、充実したラインナップを強みにトータルセキュリティソリューションを展開していく。
去る7月18日に開催した第7回セキュリティユーザカンファレンスでは、最先端のサイバーセキュリティ対策の紹介が好評だった。

 

4-3 働きやすい環境の整備

更なる生産性向上に向け、社員1人ひとりが働きやすい環境の整備にも取り組んでいく。既に、法制度対応の一環として、残業時間の上限規制、年次有給休暇年5日の取得義務化と言った施策を行っている他、同社独自の施策として、テレワーク、裁量労働制、勤務間インターバル制度を導入している。
また、この6月に本社内のリフレッシュスペースを増床し社員に朝食の無料支給を開始した他、7月には営業部門でフリーアドレスを導入した。

 

5.今後の注目点

20/6期は売上の面では踊り場となるが、クラウドサービスの損益改善や売上構成の良化等で営業利益が10億円の大台に乗る(06/6期以来)。21/6期以降は、クラウドサービスの安定成長と次世代NET+1及び次世代不正検知の寄与に加え、サイバーセキュリティでのトータルソリューションの軌道化も期待できるため、増収ピッチが加速し収益性の改善も進む見込み。今期スタートした中期事業計画を着実に遂行する事で成長軌道への回帰が鮮明になり、次期中期事業計画では営業最高益(02/6期:18.5億円)の更新を目指す展開になるだろう。

 

尚、同社が不正検知で培ったリアルタイムデータ分析/CEPエンジン「FES(Fast Event Streamer)」がSMBC日興証券の「AI株価見守りサービス」のエンジンとして採用され、2019年7月26日に同サービスの提供が始まった。CEPとはComplex Event Processingの略で、刻々と発生する膨大なデータをリアルタイムで処理し、有用なデータのみを解析する技術(「複合イベント処理」とも呼ばれる)。言い換えると、データ活用におけるリアルタイム性を実現する技術であり、ビッグデータ活用の需要の高まりを背景に市場が拡大している。金融のアルゴリズム取引、クレジットカードの不正利用の検知、ネットワークへのサイバーテロの検出等、即時対応が望まれるケースでCEPの技術が必要になると言う。
同社は、クレジットカードの不正利用の検知でこの技術を磨いてきた。同社以外では、日本IBM、日本オラクル、日立製作所等が製品を提供しているようだ。

 

参考:コーポレート・ガバナンスについて

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

10名、うち社外2名

監査役

05名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日: 2018年12月10日)

 

基本的な考え方
当社は、「次代の情報化社会の安全性と利便性を創出する」ことを経営理念として掲げています。これまで培ってきた技術力を進化させ、安全でストレスなく情報を取得できる仕組みを築きあげることで、お客様を通じて社会全体から信頼される会社を目指します。また、当社は、常に新しいことに挑戦し、働きがいのある企業風土を作りあげることで、当社の企業価値を高めていきます。併せて社会的責任(CSR)を果たし、株主や顧客、社員、生活者等様々なステークホルダーから信頼されることが、企業価値の向上に不可欠であると認識しており、内部統制システムを含めたコーポレート・ガバナンスの充実を、重要な経営課題として取組んでいます。的確な経営の意思決定、それに基づく適正かつ迅速な業務執行、並びにそれらの監督、監査を可能とする体制を構築、運用するとともに、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるために研修、教育を徹底し、総合的にコーポレート・ガバナンスの充実が図れるように努めています。

 

<実施しない主な原則とその理由>
【補充原則4-10① 独立した諮問委員会の設置】
 当社の社外取締役は取締役会の過半数に達していませんが、取締役の指名及び報酬決議、その他取締役会決議事項については、毎回の取締役会において、独立社外取締役2名により公平、客観的な観点から質疑、助言が行われており、十分な検討と議論を経て決議されています。また、当社では監査役会設置会社として監査役5名、うち独立社外監査役を3名選任しており、全監査役が取締役会に出席して審議の状況を監視、監督しています。当社の組織規模及び取締役会の運営状況から鑑み、現在の取締役会の体制において十分にそのガバナンス機能が発揮されているため、独立した諮問委員会の設置までは不要と判断しています。

 

【原則4-11 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
 当社の取締役の人選は、国際性、ジェンダーの多様性の観点からは不十分であると認識していますが、現在の取締役会の人員体制は、当社の事業に精通し、経営に必要な専門性を有する適任者を選任した結果であり、妥当であると考えています。
なお、法律専門家を社外取締役、会計の専門家を社外監査役に選任し、専門的な見地からそれぞれ助言を受けています。また、全役員から意見を集約して取締役会の有効性評価を行い、当社の取締役会のガバナンス機能向上に努めています。

 

<開示している主な原則>
【補充原則4-11① 取締役会全体としてのバランス、多様性及び規模に関する考え方】
 当社は、取締役の選任については、取締役会において的確かつ迅速な意思決定を果たすために必要となる、また監査役の選任については監査役会での協議や取締役の監視監督に必要となる、それぞれの専門的知識や経験と、高度な能力を備えた人材であることを審議したうえで候補者として選出しています。実際に現在の取締役会及び監査役会の構成はバランスがよく、実効性は確保されていると評価していますが、適宜自己評価アンケートを行う等により、当社の取締役会の実効性について評価し、実効性向上の取組みを行っています。

 

【補充原則4-11③ 取締役会全体の実効性に係る分析、評価】
 当社は、取締役会全体の実効性評価のため、全ての取締役及び監査役に対してアンケート調査を行うこととしています。2018年6月期を対象として実施した調査の結果、取締役会の実効性としては概ね適切であると評価していますが、アンケートを通じて把握された取締役会の運営上の課題又は効率化に向けた提案に対しては、速やかに取組むことにより改善を図っています。

 

 

 

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