ブリッジレポート:(4634)東洋インキSCホールディングス vol.9
(4634:東証1部) 東洋インキSCホールディングス |
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企業名 |
東洋インキSCホールディングス株式会社 |
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社長 |
北川 克己 |
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所在地 |
東京都中央区京橋2丁目2-1 |
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決算期 |
12月末日 |
業種 |
化学(製造業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2018年12月 | 290,208 | 15,337 | 15,508 | 11,899 |
2017年12月 | 240,344 | 16,823 | 17,528 | 10,424 |
2017年3月 | 268,484 | 19,222 | 19,257 | 12,687 |
2016年3月 | 283,208 | 18,470 | 18,697 | 12,190 |
2015年3月 | 286,684 | 18,210 | 19,411 | 13,304 |
2014年3月 | 279,557 | 19,728 | 20,553 | 12,260 |
2013年3月 | 248,689 | 17,547 | 18,468 | 8,714 |
株式情報(3/13現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
国内印刷インキ首位。インキ製造の原材料である顔料や樹脂加工技術を活かし、液晶用カラーフィルター材料、電磁波シールドフィルムなど多角的に製品を展開。国内外66社の連結子会社、9社の持分法適用関連会社でグループを構成。世界22か国の拠点を基盤に様々な国や地域で事業を展開(2017年12月末)。
社員一人一人が革新的に発想し、科学的に実行、加えてそれぞれの活動を連鎖させることで生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していくことをコンセプトとした長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、2027年に向け持続的成長を可能にする企業体質への変革を目指している。
【沿革】
1896年(明治29年)、創業者 小林鎌太郎が東京日本橋で個人経営の「小林インキ店」を開業したのが始まり。1907年(明治40年)に東洋インキ製造株式会社に改組。明治期に入り、読売新聞(1874年創刊)、朝日新聞(1879年創刊)を始めとした多数の新聞や雑誌が創刊されたほか、富国強兵の下、教育水準向上のための教科書の制作を始めとした政府関係の印刷物も増加し印刷用インキの需要は急拡大していった。
当初は輸入品が中心であったが、良質な国産インキへの転換が国策として推し進められる中、高い技術力を持った同社は、民間印刷会社に加え、大蔵省印刷局を始めとした政府機関への納入も拡大し、輸出も増加した。また、原材料の顔料・樹脂から印刷用インキまでの一貫製造にもいち早く取り組んだこと、創業時から、印刷会社最大手の1社となった凸版印刷株式会社との関係が深かったことなども成長の背景として挙げられる。関東大震災、太平洋戦争といった困難な時期を切り抜け、戦後高度経済成長期に再び急成長を遂げ、1961年(昭和36年)東証2部上場を経て、1967年(昭和42年)、東証1部に上場した。
印刷インキにとどまらず、顔料、樹脂など原材料の生産・加工で培った多様な技術を活かし、液晶フィルム部材など他分野に事業領域を拡大している。グループ力の拡大とさらなる成長のため2011年(平成23年)持株会社制度に移行し、社名を東洋インキSCホールディングス株式会社とした。
【経営理念など】
企業グループとしてのブランドの原点を示すとともに、グループの社員各人が常に心に留め、企業人として相応しく行動するための規範として、経営哲学・経営理念・行動指針の三部からなる「東洋インキグループ経営理念」を、1993年4月に制定した。2014年4月には、行動指針に新たに「株主の満足度向上」を追加。すべてのステークホルダーの満足度向上を目指してゆく。
この理念体系は理念カード(クレド)として全社員が常に携帯し、毎週部単位で行われる5分間ミーティングで読み合わせ、ディスカッションを行うなどして繰り返し確認し、より深い理解、実践を図っている。
また、海外も含めたグループ企業一体化のためにグローバル社内報を発行しているが、そのトップページには必ず「東洋インキグループ経営理念」を掲載。上記クレドも、「日・英」版に加え、「中・英」版もあり、経営理念の全世界的な共有・浸透に注力している。
【市場環境】
◎概要
(市場動向)
日本の印刷産業の生産金額はデジタル化の進展、活字離れ等の要因を背景に、新聞、雑誌など出版印刷を中心に減少傾向にある。
一方で、ポスター、カタログ、チラシ、POPなど商業印刷は底堅く、食品・医薬品などの包装紙、プラスチック容器に使われる包装印刷は2004年から2017年までのCAGR(年平均成長率)は+2.2%と堅調に拡大している。
一方、海外、特に新興国では、紙を対象物とした印刷(オフセット印刷)、食品パッケージなど主にフィルムを対象物とした印刷(グラビア印刷・フレキソ印刷)、共に今後の成長が予想されており、同社もその需要取り込みに注力している。
印刷機のイノベーションが進む中、クオリティーの向上に伴いローカルインキでは対応しきれない部分も多く、優れた日本製インキ需要は今後も高まることが予想されるという事だ。
(印刷会社と印刷インキ会社)
経済産業省「平成29年工業統計表・産業編」によれば、2016年の印刷・同関連業の事業所数は全国で10,589だが、うち96.2%にあたる10,187事業所は従業員数100人未満の中小企業である。
同社の顧客である印刷会社は印刷インキを購入して印刷を行うが、単純に印刷インキと紙をセットして機械を動かせば印刷できるというものではない。印刷会社が直面する「初めての紙を使用する際のインキの選択」、「特別な色を出す」、「今まで以上の高級感を出す」といったニーズや、印刷効率の向上や環境対策といった課題に対し、印刷インキ会社は顧客ニーズに合致した新製品の紹介や、様々なアドバイスを印刷会社に提供している。
国内約26,000社のうち、殆どの印刷会社は、こうしたソリューション無しにはスムーズに業務を進める事は難しく、印刷産業において印刷インキ会社は極めて重要な役割を担っている。
このため顧客である印刷会社は同社との直接取引を求めており、その結果、同社国内売上の8割近くが顧客への直接販売となっている。こうした顧客との強固な関係性は同社の大きな特徴となっている。
◎同業他社
インキ事業を展開する主な上場企業は同社を含め6社。
(4631)DICは世界規模でトップ企業であるのに対し、同社は国内インキ首位で、各品目別でもほとんどが1位か2位となっている。グローバルベースでは3位にランキングされている(2位は欧州企業)。(4633)サカタインクスは同社の第2位株主で、主に物流面での相互補完を図り2000年に資本業務提携契約を締結している。
【事業内容】
◎「印刷インキ」について
同社の主要製品のひとつである印刷インキについて、「原材料」、「種類と用途」などを以下にまとめてみた。
この3つの原材料を混ぜ合わせて各種インキを製造する際に高度な分散技術が必要となる。
また、同社は創業以来これら原材料の製造を手掛ける過程で、様々な用途開発を進めて事業領域を拡大してきた。
◎事業セグメント
「色材・機能材関連事業」、「ポリマー・塗加工関連事業」、「印刷・情報関連事業」、「パッケージ関連事業」の4セグメントで構成されている。
このうち、「印刷・情報関連事業」は主に紙への印刷に使用する平版用インキ(オフセットインキ等)、「パッケージ関連事業」は食品包装などフィルムへの印刷に使用するグラビアインキやフレキソインキなど、「色材・機能材関連事業」は印刷インキの原料でもある顔料をコア素材とし展開した製品、「ポリマー・塗加工関連事業」はこれもインキの主原料である樹脂とその設計技術から展開した事業である。
印刷インキの主たる原材料である有機顔料を母体として、色材技術、有機化学合成技術、高度な分散技術との融合によって様々な分野で使用される材料を提供している。中でもインキや塗料の製造で蓄積された技術の結集によるナノレベルの分散加工技術から、さらに機能を高めた液晶カラーフィルター材料を生み出した。
さらに分散加工技術は、有機顔料だけではなくCNT(カーボンナノチューブ)などの無機素材にも展開され、二次電池材料など新たなエネルギー分野への事業拡大にも繋がっている。
中核素材の機能性樹脂にさまざまな機能を付与した製品を開発している。長年にわたって培われた独自技術を用いて新たな機能を創造し、エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケア関連などの分野において、新たな需要の開拓、市場の創造を目指している。
グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの、パッケージ向け印刷用インキおよび機器を取り扱っている。
食品包装などの分野では消費者の安心・安全のためにインキの水性化など環境に配慮した製品開発にも注力している。
創業以来の中心セグメント。紙への印刷に使用する印刷インキが中心製品。
印刷インキの提供だけに留まらず、機械・機器の販売、印刷工程の効率化サポート、カラーマネジメントやカラーユニバーサルデザインに関する支援やツールの提供なども行っている。
◎海外展開
大きな成長を期待し難い国内市場では高付加価値製品による収益性向上を進める一方、今後成長が期待できる海外市場の開拓に製造、販売両面で積極的に取組んでいる。
海外生産体制は前中期経営計画中にほぼ完成し、原料調達、生産共に現地で行っている。
2018年12月末現在、約50の海外連結対象子会社、50ヶ所の生産拠点を有し、幅広い国や地域で事業を展開している。
一般的に日本企業が目標とすべきと言われている8%へ達するために一段の収益性および効率性の改善が望まれる。
【特徴と強み】
①高い技術力
前述の様に、同社は印刷インキの原材料である顔料や樹脂も自社で生産を続けてきた。こうした技術力が高品質な印刷インキ生産のベースとなっているのはもちろんのこと、液晶用カラーフィルター材料や接着剤・粘着剤など、事業領域や製品の拡大に繋がっている。
②優れた課題解決能力
同社が印刷インキ国内首位の地位を築いている大きな背景の一つが印刷会社に対する高い課題解決能力だ。
印刷インキの製造・供給のみでなく、版作り、画像など「印刷」に関連する要素全般に関して古くから研究を続けており、これが顧客に対する技術提案力やサービス力、ひいては顧客満足度の向上に繋がっている。
③環境に対する取り組み
同社では、CO2の削減とともに、Non-VOCインキや水性インキ、UVインキなどの環境調和型インキにもいち早く取り組んできた。新興国においても環境規制は一段と強化されており、ニーズは拡大している。また化学物質管理への取り組みや他社に先駆けたスイス条例対応製品のラインナップ化など安全・安心への取り組みも進んでいる。
④経営戦略の独自性
M&Aについては、同社がもつ技術力を新しい市場に展開するうえで、シナジー効果が期待できる場合には選択肢のひとつとして考えている。ただ、単にボリュームアップを目的としたM&Aは志向していない。また、輸送マイレージの削減、現地品の利用など、効率性向上と社会的貢献の両面から海外市場における「地産地消」のポリシーを印刷インキ業界ではいち早く打ちたてて実践してきた。
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2018年12月期決算概要 |
増収減益
売上高は前年同期間比3.6%増の2,902億円。色材・機能材、ポリマー・塗加工、パッケージが堅調。アジア中心に海外販売が拡大し、出荷数量が増加した。ただ、年後半にかけ中国市場およびスマートフォン市場減速の影響を受けた。
営業利益は同25.3%減の153億円。販売数量増(+17億円)、価格改定(+12億円)のプラス要因はあったが、ナフサ価格上昇に伴う溶剤など原材料価格高騰(-55億円)、販売価格下落(‐14億円)が影響した。
☆色材・機能材関連事業
増収減益。中国において表示材料の新規採用が進んだが、重点製品であるメディア材料は計画未達だった。
(化成品)
減収減益。顔料は印刷分野の低調と原料高騰の影響から低調に推移。インクジェット用途および塗料用途の新規の高分散顔料は一部実績化した。中国の電池メーカー向けで2019年実績化に目途が立った。
(表示材料)
増収増益。中国パネルメーカーで新規実績化もあり好調に推移した。センサー用材料は技術開発体制が整った。
(着色剤)
増収減益。原料高騰の影響を受け減益となった。医療関連は特定波長カット材料の開発に注力し、得意先での評価が始まった。リキッド着色剤は大手得意先での評価が良好で採用に目途が立った。機能性着色剤はCNT(カーボンナノチューブ)関連で供給が始まった。
☆ポリマー・塗加工関連事業
増収減益。エレクトロニクス向けを中心に販売が大きく伸長した。重点製品であるエレクトロニクス・オプト製品は計画を大きく上回った。
(塗工材料)
増収増益。スマートフォン向け導電接着シート、ディスプレイ用途は国内・海外市場向けともに伸長した。国内マーキングフィルムが大型物件向けで実績を出した。
(接着剤)
増収減益。エレクトロニクス向けの粘着剤およびリチウムイオン電池用のラミネート接着剤が好調に伸長したが、原材料価格高騰の影響を受けた
(塗料樹脂)
減収減益。缶用塗料は米国市場での環境対応製品が好調に推移した。国内はコーヒー缶の需要の低迷などにより低調に推移。高付加価値樹脂は前半堅調だったが、後半は伸び悩んだ。
☆パッケージ関連事業
増収減益。包装需要の拡大と拡販により数量が増加した。重点製品である海外リキッドインキは計画未達。
(軟包装材)
増収減益。国内グラビアインキ需要は堅調に推移した。バイオマスインキなど環境調和型製品の拡販を進めたが、原料価格高騰の影響を受けた。海外は東南アジア、中国のミドルグレードインキが引続き伸長した。
(建材)
増収減益。建装材用各種トップコートの拡販が進んだ。
(段ボール)
減収減益。新規拡販、コストダウンが進んだが、カラー印刷減による数量減の影響を大きく受けた。
☆印刷・情報関連事業
減収減益。需要減少が続くなか、UVインキなど機能材インキの出荷量が増加した。重点製品の機能材インキは計画未達だった。
(オフセットインキ)
減収減益。国内は生産拠点集約、外部アライアンスを推進した。物流についてもアライアンス検討を継続している。新製品拡販もあったが、原材料高騰で利益が圧迫された。
海外は市況停滞、中国環境規制強化の中、インド、ブラジル製品の拡販と利益向上へ向けたSCM最適化を進めたが、原材料高騰で利益が圧迫された。
(機能材インキ)
増収減益。機能材インキ群は印刷機メーカーとの連携により、拡販を進めた。UVは国内、中南米、中国での紙器向け、インクジェットは商業印刷での拡販、パッケージ向け開発を推進した。原材料高騰が大きく影響した。
現預金増などで流動資産は前期末に比べ94億円増加。株価下落による投資有価証券の減少などで固定資産は同146億円減少し、資産合計は同51億円減少の3,745億円となった。買入債務の増加等で負債合計は同21億円増加の1,507億円。利益剰余金は増加したが円高により為替換算調整勘定がマイナスに転じたことなどから純資産は同72億円減少の2,238億円となった。
この結果、自己資本比率は前期末の59.0%から1.1ポイントし低下し、57.9%となった。
17/12期は9カ月決算であるため単純な増減比較はできないが、フリーCFはプラスを継続し、キャッシュポジションは上昇した。
(4)トピックス
◎環境製品群の強化
持続的な成長を実現する2027年に向けた10年の長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」において、2027年の目指す姿として「すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する」を掲げている同社は、化学メーカーとしての社会貢献活動として「環境製品群の強化」に取り組んでいる。
低環境負荷にとどまらない、環境と長期的に調和できる技術・製品・サービスの開発を通じて持続可能な社会の実現に貢献していくという考えの下、下記のような具体的な取り組みを進めている。
また、SDGs(持続可能な開発目標)に関しては、特に事業活動と関わりの深い12の目標について、CSR の重要課題と関連づけて取り組んでいく。
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2019年12月期業績見通し |
増収増益
売上高は前期比3.4%増の3,000億円の予想。今期も色材・機能材、ポリマー・塗加工、パッケージは増収。
営業利益は同14.1%増の175億円の予想。引続き原材料価格高騰の影響(16億円)はあるが、販売数量増(37億円)、価格改定の浸透(14億円)、コストダウン(10億円)などでカバーし増益へ。全セグメント増益を見込んでいる。
配当は5円増配の90.00円/株を予定。予想配当性向は43.8%。
為替は1USD=110円(前期平均110.4円)、1EURO=130円(同130.0円)、1RMB=17.円(同16.5円)の前提。
原材料価格は、ナフサ45,000円/kL(前期平均51,075円/kL)、ロジン1,800ドル/t(同1,838ドル/t)と見込む。
(3)新規事業創出へ向けた投資
下の表のように、2018年の投資額は、年後半において外部環境の変化が大きかったこともあり、設備投資においてトルコ、メキシコ拠点の拡張を延期したほか、戦略投資においても各種アライアンスやM&Aを中止または延期したため、期初計画を大きく下回る結果となった。
今期は、国内においてはラミネート接着剤やヘルスケア関連、欧州地区では機能材インキ関連、中南米ではメキシコ新工場建設、中国においては江門工場の移設等を計画している。
戦略投資については前期未実施分を含め、2020年までに130億円を目安に検討していく考えだ。
新事業創出に繋がる人材、技術や事業投資を積極的に進めていく。
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中期経営計画「SIC-Ⅰ」における2019年 |
中期経営計画SIC-Iは東洋インキグループの持続的成長の礎を創り上げる期間であり、 2年目にあたる2019年は既存事業の変革と新事業領域の拡大を推進する年と位置付けている。
◎新事業領域の拡大
顔料、樹脂などの素材を用いた合成・分散・成膜などグループが保有する独自技術を活かし、新領域で新事業を創出する。
(製品例)
次世代ディスプレイ材料、イメージセンサー用材料、高速通信対応電磁波シールド、貼付型医薬品、デジタル印刷対応IJインキ、軟包装用フレキソインキ・EBインキ等
事業セグメント全般を通して、IoTやモビリティ、エネルギー・環境関連などの成長市場に事業領域を拡大するとともに、データサイエンス活用による生産や管理体制の見直しも含め、グループ全体でサイエンス・カンパニーとしての飛躍を目指す。
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<参考1:中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度‐2020年度)> |
持続的な成長を実現する2027年に向けた10年の長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、3年ごと3段階の中期経営計画に落とし込み、課題と役割を明確にし、目指す未来に向けて着実に行動していこうと考えている同社は、第1段階である「中期経営計画SIC-Ⅰ(2018-2020年度)」を今期スタートさせた。
<基本方針>
テーマは「挑戦を繰り返す。」
更なる100年レンジでの持続的成長の礎を創り上げる期間と位置付け、変革のための施策を立て続けに打つ。
① 成長に向けた既存事業の変革と新事業への挑戦
② 持続可能性向上に向けたモノづくり革新の推進
③ 経営基盤の刷新
<数値目標>
◎投資計画
重点ドメイン拡大や新規事業創出のために振り向ける投資枠として、戦略的投資枠を従来の設備投資枠とは別に設定し、計画達成に向けた積極的な投資を行う。
戦略的投資枠とは、後述する重点ドメイン拡大や新規事業創出のための変革に向けた投資枠で、計画達成に向けた、人材・技術投資など各種取組みをこの枠内で実行していく。
<主要施策>
①成長に向けた既存事業の変革と新事業への挑戦
【1-1既存事業の変革】
■グローバル展開
海外市場での成長力を高めるため、これまでに進出した拠点の複合化・製品の拡充を進め、多彩なビジネスを展開していく。
インクジェットインキ・インキ用顔料分散体では、環境対応製品の生産を中国(珠海)で着手するほか、日米仏で品目を拡充する。
ラミネート接着剤では、食品パッケージ市場に対して、リキッドインキビジネスを展開するグローバル拠点と連携して拡販を図る。
2017年度比で530億円の増収を目指す。
■新製品の拡大
顔料・樹脂を核に新規素材の開発を進め、コア技術である合成・分散・成膜技術と組み合わせることで新しい価値を創造し、新市場・新規エリアでの拡大をはかる。
中でも、ポリマー・塗加工関連事業においてエレクトロニクス関連材料やメディカルヘルスケアに注力する。
2017年度比で160億円の増収を目指す。
【1-2新事業への挑戦】
SIC-Iで注力する6つの重点ドメインを設定した。持続的成長に向け、単なる製品の提供にとどまらないソリューション提案を中心とした新しいビジネスモデルの開発に挑戦し、「SIC-Ⅱ」、「SIC-Ⅲ」に繋げていく。
以下、4つのビジネスに注力する。
[センサー関連ビジネス]
ドメインは、モビリティ、メディカルヘルスケア、IoT。
成長著しいIoT市場において、急速に増加する「センサー」に着目。ケミカルを軸とした「モノづくり」に加え、新しいテクノロジーを取り入れて「情報・システム」までを提供するセンサー関連ビジネスの開発に挑戦する。
(主要製品・サービス)
イメージセンサー材料、センサーデバイスなど。「SIC-Ⅱ」、「SIC-Ⅲ」ではセンシングデータに基づくデータビジネスの展開も視野に入れている。
[生活余熱関連ビジネス]
ドメインは、モビリティ、IoT、エネルギー。
生活周辺で未利用となっている「生活余熱」に着目し、これを高効率で無駄なく再生・利用する技術開発を進め、エネルギーの循環利用ソリューションを提供するビジネスに取り組む。
(主要製品・サービス)
耐熱接着シート、超耐熱絶縁・熱伝導シート、高耐熱マネジメント部材群など。
[ヘルスケア関連ビジネス]
ドメインは、メディカルヘルスケア。
貼付型医薬品事業プラットフォームをベースに、医薬事業基盤を着実に拡大し、周辺のヘルスケア関連材料の開発・拡販も強化していく。
(主要製品・サービス)
血糖値検査チップ用テープ、医療用粘着剤、生体適合ポリマー、次世貼付型医薬品など。
[天然素材関連ビジネス]
ドメインは、天然素材。
可食色素や笹関連製品の事業プラットフォームを活かした新たな機能性天然素材のビジネス化や、バイオマス製品の拡充を進め、低炭素社会への一層の貢献を目指す。
(主要製品・サービス)
可食色素製品、クマザサ関連製品、バイオマスインキ、機能性食品素材など。
②持続可能性向上に向けたモノづくり革新の推進
同社ではこれまで、積極的な海外拠点拡大によるモノづくりネットワーク構築、環境に配慮した安心・安全なモノづくりの構築、グローバルでの化学物質管理・貿易管理体制の整備に取り組んできた。
SIC-Iでは、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献するため、自らの持続的成長も見据えたモノづくり革新に取り組み、持続可能性への貢献と収益確保の両立を目指す。
(取り組み例)
パートナーとの共存共栄によるグローバル・サプライチェーンの構築
デジタル技術融合による生産プロセス革新
地球環境と共生するモノづくり(省エネ、CO2排出量削減等)の推進
③経営基盤の刷新
既存事業の変革、新規事業の創出、モノづくりの変革に向け、業務システムのグローバル統合推進や、変革に向けた人材採用、制度改革(確定拠出年金制度への完全移行、65歳定年制開始)などの経営基盤強化を進めるとともに、経営と一体となったCSR活動を推進し、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していく。
イノベーションを立て続けに創出するための基盤を強化する。
(取組み例)
グローバルでのERP統合推進、AI活用による業務効率化推進
変革に必要な人材の積極採用、イノベーションを促す人事制度への刷新
東洋インキグループの重要課題(マテリアリティ)の達成に向けた積極的なCSR活動の推進
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<参考2:コーポレートガバナンスについて> |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年12月26日
<基本的な考え方>
当社グループは、2011年4月1日をもって持株会社体制へ移行いたしました。持株会社体制のもと、グループ戦略機能を強化し、スピード経営を推進し、グループ全体最適と各事業最適をバランスさせることを通じてグループ全体としての価値向上を目指しております。
当社グループにおける経営の枠組みは、グループ企業経営における基本的な考え方を体系化した経営哲学及び経営理念ならびに行動指針からなる「東洋インキグループ理念体系」と、社会的責任への取組み姿勢を明確にしたCSR憲章及びCSR行動指針からなる「CSR価値体系」で構成されております。
当社グループは、「東洋インキグループ理念体系」と「CSR価値体系」を実践することにより、サイエンスに基づくモノづくりを通して、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献し、経営理念に掲げる「世界にひろがる生活文化創造企業」を目指してまいります。
そのためにはステークホルダーと同じ視点で自身の企業活動を評価し、経済、社会、人、環境においてバランスの取れた経営を遂行することこそが、企業としての有形、無形の価値を形成し、社会的責任を果たすための最重要課題として位置付けております。
この実現のために、
● 事業執行機能を各事業会社に委譲するとともに、コーポレート・ガバナンスを強化するため、グループ各社に適用される稟議規程及び関係会社管理規程の適切な運用
● 内部統制システムの整備
● 株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人など法律上の機能制度の強化による指導・モニタリング機能の向上
● 迅速かつ正確、広範な情報開示による経営の透明性の向上
● コンプライアンス体制の強化・充実
● 地球規模の環境保全の推進
などを進め、株主や取引先、地域社会、社員などの各ステークホルダーと良好な関係を構築し、コーポレート・ガバナンスを充実させております。
<実施しない主な原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております。
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