「ファンの“好き”を加速する」をテーマに、クライアント企業の商品や製品・サービスのファンである「アンバサダー」を対象にクチコミ(利用体験の発信・購入の推奨)の活性化や購買促進、商品開発を支援する様々なサービスを提供。
得意とする分析テクノロジーと運営ノウハウを核に外部パートナーとのアライアンスも進め、アンバサダー事業の拡大と並行し、カタパルト事業、海外事業への投資により成長のスピートアップと規模拡大を追求する。
【1-1 沿革】
2007年2月設立。インターネットの発達に伴う新しいコミュニケーションの在り方を追求する中で、ブロガーをネットワークした広告配信を開始する。2008年6月にはブログの特長や影響力を分析する分析ツール「ブログチャート」の提供を開始。Twitter、FaceBookなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及・浸透に合わせ2010年6月、SNSを活用したキャンペーン構築システム「ソーシャルタイアップ」を、2012年4月にはソーシャルメディアを横断して影響力を測定する「ユーザーチャート」を相次いでリリースする。
2013年7月に、現在の中心事業である「アンバサダープログラム」をリリース。2016年1月にはアンバサダーの統合管理・分析ツールである基幹システム「アンバサダープラットフォーム」の提供を開始した。
SNSでの活動を実際の売上に結び付けたい企業のニーズを取り込み採用実績および収益はともに拡大。
2018年3月、東証マザーズに上場した。
【1-2 企業理念】
ひとりの気持ち、ひとの気持ちを大切にしたマーケティングを考えます。
沿革にあるように、同社は設立以来、インターネットの発達に伴うマーケティングにおける新しいコミュニケーションの在り方を追求してきた。
20世紀的なコミュニケーションがマスを対象に「伝達する」ことを重視していたのに対し、現在のソーシャルメディア時代のコミュニケーションは、人と人とのつながりによって情報が共有されたり、共感の輪が広がったりする、いわば「会話」が重要な意味を持つと考えた同社は、ひとりひとりのユーザーのリアルな声を、新しいマーケティングの中心に位置づけ、企業と生活者と社会の間に立ち、時代に即した人間中心の新しいコミュニケーションと、新しいマーケティングを考えていくことを目指している。
【1-3 同社を取り巻く環境】
◎広告市場の変化
株式会社電通による「2017年 日本の広告費」によれば、下のグラフが示す通り、過去12年間で新聞・雑誌・ラジオ・TVのいわゆるマスコミ四媒体はCAGR(年平均成長率)で2.4%の減少だったのに対し、2005年には3,777億円であったインターネット広告費はCAGR12%で拡大を続け、2017年には1.5兆円へと急成長している。
商品・サービス内容が成熟し機能的な差別化が難しくなるのに加え、消費者やユーザーの嗜好が多様化する中で、マスを対象に企業が情報を一方的に伝達しても消費者の購買・利用意欲を喚起することは難しい一方、様々なテクノロジーをベースに、双方向性に優れ、絞り込んだ消費者・ユーザーにリーチできるインターネット広告が費用対効果の面からも企業のニーズを取り込んでいることが見て取れる。
また、詳細な金額は明らかではないが、プロモーション(販促)ページ制作費やソーシャルメディアのための広告制作費・制作関連(システム運用)費の増加も同調査においては指摘されている。広告主の「売上増」に繋がるマーケティングやプロモーションに対するニーズは今後もより一層強まることが予想される。
◎SNS普及に伴う「クチコミ」の影響力増大
同社資料によれば、「信頼されている情報元は何か?」との質問に対し、第1位は「知人のおススメ(クチコミ)」で92%、第2位が「消費者のオンラインレビュー」70%となっており、新聞記事などの編集コンテンツ(58%)、ブランドWebサイト(58%)、許可したEmail(50%)を上回っている。
インターネットを用いた広告やマーケティングが伸長する中で、信頼性という観点からスマートフォンやSNSの普及による「クチコミ」の影響力は増大しており、クチコミ発信に対する企業の関心は日に日に高まっている。
【1-4 事業内容】
同社は、クライアント企業やその製品・ブランドのファンであるアンバサダーのクチコミ(利用体験の発信・購入の推奨)による情報発信力や運営ノウハウを活用して、分析、プロモーション、販売促進活動、商品開発を支援する「アンバサダー事業」を展開している。
また、更に顧客層を拡大させるために前期より新規事業としてテスト販売プラットフォーム「カタパルト」を立ち上げた。
セグメントはアンバサダー事業の単一セグメント。
(1)アンバサダー事業
プロモーション、販売促進活動、商品開発等を支援する「アンバサダープログラム」は、クライアント企業の取り組みや製品・サービスの価値を正しく伝えることが難しい時代において、「アンバサダー」を通じて周囲の友人や知人に魅力を伝えることで、クライアント企業のより効果的なマーケティング活動推進に貢献するもの。
(アンバサダーとは?)
「アンバサダー」とは英語で「大使」のこと。
そこから転じて、特定の製品やサービス等の魅力を伝える役割を果たす人のことを指し、有名芸能人やスポーツ選手が著名ブランドのアンバサダーとして活動する事例などを見受けるが、同社では好きな企業、製品やサービスについて自発的にクチコミや推奨するファンを「アンバサダー」と定義した。
同社の「アンバサダー」は、一般の消費者・ユーザーの中から選ばれ、特定のブランドや商品・製品について、自発的に満足を伝えたり推奨を行ったりする(金銭報酬は発生しない)。アンバサダーのクチコミが届く対象はアンバサダーの身近な友人や知人である。
(なぜアンバサダーが重要なのか?)
【1-3 同社を取り巻く環境】で触れたように、製品やサービスが高機能化・成熟化する一方、消費者の嗜好も多様化する中で、これまでのTVCM・新聞・雑誌などいわゆる「マス広告」だけでは、自社の製品やサービスの価値を十分に伝えることは困難となっている。
一方、インターネット普及以前から製品やサービスの評判を伝える「クチコミ」は存在し、友人や知人から伝えられる商品に関する満足や推奨は購買選択に影響を与える重要な情報であったが、個人が情報を発信するSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の普及により、個人が「クチコミ」を発信する機会とともにその影響力が増大している。
成熟した市場におけるプロモーションや商品・サービス開発にはファンの存在が不可欠で、価値伝達における身近なアンバサダーによる「クチコミ」の重要性は益々高まっている。
①アンバサダープログラム®
アンバサダーの発見・登録・分析・連絡に使用する基幹システム「アンバサダープラットフォーム」を基盤に、プログラム運用支援やクチコミを促進するための施策の企画・運営支援など、様々なサービスを提供している。
企業が保有する会員をベースにアンバサダーを募集するため会員数の多寡により1プログラム当たりのアンバサダー数は1,000人から十数万人と幅はあるが平均は約2,000人。
後述するように、協業先の企業が保有する会員資産やデータを使用して、趣味やテーマのアンバサダー組織を運営しており、会員組織が小さい企業でもアンバサダープログラムを利用できるような体制を整えている。
また、TwitterやFacebookからファンを見つけてアンバサダープログラムの存在を知ってもらうための告知も行っている。
アンバサダーの貢献度は、いわゆるインフルエンサーとは異なり、広く広める影響力だけではない。範囲は決して広くなくても定期的に知人・友人に発信してもらうことも重要であり、同社ではそうしたデータも緻密に収集・分析している。
<アンバサダープログラム事例:第2回、第3回「カロリーメイトアンバサダーオフ会」>
2018年8月29日に第2回、9月5日に第3回のカロリーメイトアンバサダーオフ会を開催し、合計で11名のアンバサダーにご参加いただきました!
参加された人の中には、大阪からのお仕事終わりにオフ会に参加いただいた方もいらっしゃいました。
まずは自己紹介を兼ねて、アンバサダーのみなさんがお好きなカロリーメイトの味や、どのようなシーンで活用されているかを教えていただきました。
お仕事の合間や、残業中に食べるという方や、海外旅行や出張の際にバックに入れて持ち歩くという方、中にはスキー場でリフトの移動中に食べるという方も!
自己紹介タイムのあとは、簡単に大塚製薬の取り組みや、カロリーメイトの開発背景などをご紹介。
みなさん、とても熱心にメモやスライドの写真を撮っているのが印象的でした。
その後、アンバサダープログラムの活動についての感想や今後のご要望等を聞かせていただきました。
SNSの活用方法や、フォトコンテストについてのご要望等とても参考になりました。
さらに、みなさんが考える「カロリーメイトゼリーのおすすめポイント」を、発表してもらいました。
すっきりと飲めて、バランスよく栄養補給ができるのがポイントという点が多くあげられました。
最後にオフ会に参加いただいたみなさんと記念撮影を行いました!!
(同社WEBSITEより抜粋)(基幹テクノロジー「アンバサダープラットフォーム」とは?)
アンバサダープログラムを効率的、効果的に運営するためのシステムが、同社が自社開発した基幹テクノロジー「アンバサダープラットフォーム」である。
ASPサービスである「アンバサダープラットフォーム」は、アンバサダーの発見・告知・登録・管理・抽出(条件の抽出やグループ化)、クチコミの分析(登録者一人ひとりのクチコミを断続的に収集)、アンバサダーの分析(一人ひとりの影響力をレベルで判定するほか、クチコミの広がりや友人の反応を把握)、貢献評価(アンバサダー全体の貢献を判定)を行い、このサイクルを回すことで、費用対効果の高いプロモーション活動を可能にしている。
企業が自社でTwitterやFaceBookを運営している場合、公開アカウントにおけるフォロワーや「いいね!」といっている友達が何名いて、そのフォロワーや友達には何名のフォロワー・友達がいるかは把握できるが、フォロワーが自身の様々なSNSアカウントで普段どんな発信をしているかは判明できない。
これに対し同社ではTwitter、FaceBook、ブログにおいて、そのフォロワーが「特定のキーワードについてどんな発言をしたか?」、「その発言に対しどのような反応があったか?」までをデータとして収集することができる。
つまり、企業自身では行うことのできない「ひとを軸とした複合的、多面的な情報収集・分析作業」ができるのが基幹テクノロジー「アンバサダープラットフォーム」の最大の特徴であり、情報収集・分析・検証を通じて企業にとってより適切なファン活性化のプログラムを提供できる点が、クライアント企業に評価されている最大のポイントである。
(クライアント企業におけるメリット)
*ファン・満足・需要・効果の可視化
「アンバサダープログラム」を通じてファンによる商品やサービスのクチコミを活性化することで、4つの可視化を行っている。
例えば、商品サンプリングを行う場合、通常のサンプリングは応募者に対して無作為に当選者を選出し、商品体験をしてもらうが効果測定を行うことはできず、どのような成果が見込めるか、事後どの程度成果があったかは不明である。これに対しアンバサダープログラムにおいては、クチコミや影響力を指標に候補者を選出することができるほか、商品体験後は貢献度の高いアンバサダーによるクチコミの発信・拡散が期待でき、クチコミ・波及の有無や友人・知人の反応を把握することで効果測定も可能であり、成果の見込みと検証が可能な費用対効果の高い施策となる。
*顧客生涯価値(LTV:ライフ・タイム・バリュー※)の向上
「アンバサダープログラム」への参加を通じて、商品選択への信頼・納得や企業への親近感を向上させることで、顧客(アンバサダーやファン)が他の競合商品へ流出するのを軽減することができる。
また、継続した購買により、顧客生涯価値を高めることも可能である。
※顧客生涯価値
顧客が特定の企業やブランドと取引を開始してから終了するまでの期間内にどれだけの利益をもたらすのかを算出したもの。既存顧客重視の観点から注目されており、一般的に熱心な顧客ほど企業にもたらす利益が大きいとされる。
*キャンペーンや商品開発におけるアイデアや改善点の抽出
従来企業単独で実施していた「商品開発」や「改善」への取り組みをアンバサダーと共に推進することで、より利用者視点での商品・サービス開発に繋げることができる。
アンバサダーには金銭報酬は支払われないが、アンバサダーは金銭的な見返りよりも、特別な機会を体験できる点に充足感を得ており、それゆえ情報の信頼性が高い点もアンバサダープログラムの特徴である。
(収益モデル)
同社は、クライアント企業のアンバサダープログラムの企画・導入・運営サービスを提供し、対価を受領している。
提供するサービスは毎月定額で発生する「ベース費用」と、プログラムごとで適切な時期に実施するイベントやキャンペーンなどの「施策費用」に分かれており、半年~1年単位での契約となっている。
「ベース費用」はアンバサダー管理や分析を行うシステムである「アンバサダープラットフォーム利用料」と、問合せ対応窓口などを運営する「プログラム事務局運営費用」で構成される。
(その他のサービス)
アンバサダープログラムをより効果的なモノとするために以下2つのサービスを提供している。
*レビューズ
同社が提供する情報発信者と、商品の魅力を伝えたい企業をマッチングするサービス。
商品訴求やイベントへの参加、コンテンツ制作といった企業の要望に対して、情報発信者それぞれの得意分野から適切な発信者を選定し、企業と情報発信者のやり取りを代行する。ブログ記事やSNS投稿の生成から効果測定を支援している。
*アライアンスサービス
クチコミ分析機能とファン活性化のノウハウを活用し、協業先の企業が保有する会員資産やデータと組み合わせることで付加価値の高いサービスを提供する。
(協業例)
*メディア企業との取り組み
例えばアウトドアやゴルフなど、趣味や属性に特化したファン組織を立ち上げ、企業のプロモーション活動とクチコミの効果測定サービスを提供する。
*マーケティング企業との取り組み
顧客管理システムやデータ分析ツールを提供する企業と協業し、システムやツール利用企業がツール内に保有するデータと同社の分析データを組み合わせることで他にはない付加価値を提供する。
(2)カタパルト事業
◎テスト販売プラットフォーム「CATAPULT(カタパルト)」概要
①背景・課題
昨今の製品開発環境を概観すると、製造コスト低減やモノとインターネットが繋がるIoT家電の登場など、ユニークな製品が生まれやすい土壌がある一方、新製品発売におけるプロモーション投資の最適化は大きな課題となっている。特に中小規模の企業においては新製品の認知拡大や理解促進、初期のファン獲得において、十分な投資が難しいのが現状である。
②「カタパルト」とは?
カタパルトは、「買ってつながる、語ってひろがる」をテーマに、様々な企業が製品や体験サービスを販売し、ファンは購入や SNS によるクチコミ発信で応援することができるサービス。
上記のような環境下、これから世に出そうと考えている新製品や、まだ価値や魅力が伝わっていない製品を対象に、市場投入への発射台として「先行予約販売」と共にクチコミによる「プロモーション」、「ファン獲得」が可能なサービスを、初期費用不要・成果報酬型で提供する。
クライアント企業は少ない費用負担で「商品・サービスの販売」と「ファンの獲得」が可能である。
カタパルトとは空母の飛行機射出機や投石機を指す。まだ世に出ていない、価値が伝わっていない製品やサービスの「発射台」 として、企業とファンが共に盛り上げる場を提供したいと考えて命名した。
*サービス構成・特長
クライアント企業は「カタパルト」サイト上において個別プロジェクトの形で新商品やサービスを期間限定・先行予約の形で販売する。
サイトには体験記事を執筆する得意領域で活躍するブロガーやライターが「カタパルト 公認ガイド」として商品体験記事を寄稿し、利用者視点で製品の魅力や特徴を伝える。記事制作費は同社が負担する。
購入者・利用者は、製品の購入やサービスの利用のほか、クチコミ応援を行う。
初期費用不要、販売金額に対する一定の手数料を支払う成果報酬型なので、中小規模の企業も安心して利用できる。
クラウドファンディング「ENjiNE(エンジン)」を運営する Relic社と連携し、数十の国内クラウドファンディングサービスへのプロジェクト相互露出を行い、新製品やサービスを様々な媒体の優良な読者へ向けてアプローチする仕組みも備えている。
(ただし、カタパルトの対象製品は一定額が集まった場合に製品化を進めるクラウドファンディングではない。)
*アンバサダープログラムとの相違
新たなサービス領域の拡大を図るカタパルトとアンバサダープログラムとの主な相違は以下の通り。
カタパルトの運営に関しては、同社がこれまでに培ったクチコミ分析テクノロジーやファンクラブ運営ノウハウを活かし、カタパルトの購入者やその友人が参加できるファンクラブ機能を今後リリース予定である。
【1-5 特長と強み】
1人ひとりの情報発信力や企業や製品に対しての興味度合いを分析する「テクノロジー」と、「アンバサダーを活性化するためのノウハウ」が同社最大の差別化要因であり、テクノロジーとノウハウを活かした効果測定により、クライアント企業に今後のマーケティング活動に有用な情報を提供できる点が同社の強みである。
(テクノロジー)
熱量や貢献度の高いアンバサダーの「発見」、アンバサダーによるクチコミの「活性化」、クチコミの成果を把握する「効果測定」において、独自の企画・運営ノウハウと登録・管理・分析が可能な基幹テクノロジー「アンバサダープラットフォーム」により、クライアント企業に今後のマーケティング活動に有用な情報を提供することができる。
(アンバサダー活性化のノウハウ)
一連のサービスをネット上の参加企画である「オンライン施策(ネット)」だけでなく、イベントや商品開発プロジェクトなど「オフライン施策(リアル)」までワンストップで提供することができる点も他社にはない同社の大きな特長である。
例えば、ファンを招待する「イベント」や商品を試用してもらう「サンプリング」を実施する際に、応募者の中からクチコミの期待値が高いアンバサダーを分析したデータを元に選出することでプロモーションの「成果の見込み」をたてることが可能である。また、実施後には参加者によるSNSやブログによるクチコミの有無、クチコミの拡がりや友人の反応を把握することが可能なため、施策の成果を検証することができる。