前年同期比12.6%の増収、同31.7の営業増益
売上高は前年同期比12.6%増の1,032億07百万円。国内・外で売上が増加したバルブ事業が同14.6%増の827億46百万円、銅価上昇による販売価格の上昇で伸銅品事業が同5.2%増の180億27百万円、その他が同5.8%増の24億33百万円。海外売上高比率が29.7%と2ポイント上昇した(前年同期27.7%)。
利益面では、銅市況変動の影響で伸銅品事業の利益が同57.3%減少したものの、売上の増加と収益性の改善でバルブ事業の利益が同29.1%増と伸び、営業利益が95億45百万円と同31.7%増加した。為替差益69百万円の計上(前年同期は1億62百万円の為替差損)等で営業外損益が改善したものの、韓国子会社Cephas Pipelines Corp.(以下、Cephas社)にかかる減損損失等で特別損失25億79百万円を計上したため四半期純利益は40億09百万円と同14.6%減少した。
Cephas社(12月決算)にかかる減損損失24億85百万円を計上
2018年4月、需要が拡大している工業用バラフライバルブのラインナップ拡充を目的に、韓国の工業用バラフライバルブメーカーCephas社を37億52百万円(374億15百万韓国ウォン)で買収した。しかし、2018年後半以降の韓国経済の急速な悪化でCephas社の売上の7割以上を占めていた韓国EPC(エンジニアリング会社)の需要が急減し、Cephas社の18/12期(4-12月の9カ月決算)は大幅な減収となった。加えて、一部案件で生産の遅延が発生し、原価率が急激に悪化する中、納期対応で輸送費等の費用も増加したため、営業赤字を余儀なくされた。19/12期は営業損益が黒字転換する見込みだが、のれん(約2億50百万円)償却費を吸収できず、のれん償却後の損益は引き続き赤字が見込まれる。2期連続での赤字見込みとなったため、19/3期連結決算において、のれんの未償却残高23億97百万円及び無形固定資産88百万円の合計24億85百万円を減損損失として計上する事とした。
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バルブ事業
国内売上高は前年同期比11.0%増の526億81百万円。主力の建築設備向けが首都圏再開発案件をけん引役に同9%増加する中、半導体製造装置向けが同21%増と伸長。工業用バルブも、化学、食品、薬品等、幅広い業種での生産能力増強等の設備投資で同17%増加した。一方、水市場向けは東京都向けが回復せず、同2%の減収。半導体製造装置向けも、受注は減少に転じている。
海外売上高は同21.4%(為替の影響による2億07百万円の減収要因を吸収して52億93百万円)増の300億64百万円。アセアン・韓国他は、半導体製造装置向けが同6%減少したものの、Cephas社の連結効果で同4%増。中国がデータセンター向けを中心にした汎用バルブの堅調な推移と半導体製造装置向けの好調(同36%増)で同28%増加し、中東はイランの大型プロジェクトBid Bolandの追加受注分の納入もあり、同277%増と伸びた。米州・欧州は共に同12%増と二桁成長。在庫調整が進み、代理店からの受注が回復傾向にあり、特に欧州はまとまった注文が入り始めた。
営業利益は118億34百万円と前年同期と比べて26億66百万円(29.1%)増加した。内訳は、価格改定効果や数量増による売上増(35.6億円)、原価低減(11.0億円)、為替(2.0億円)が増益要因とり、銅をはじめとする原材料市況(△3.1億円)やCephas社の子会社に伴う費用増(人件費増、M&A関連費等)や研究開発費等による費用増(△18.9億円)といった減益要因を吸収した。
伸銅品事業
売価に影響を与える原材料相場が、第1四半期は上昇したが、第2四半期以降、下落に転じた。売上面では相場の変動が総じてプラスに働き、売上高は180億27百万円と前年同期比5.2%増加したが、利益面では、7月以降の下落の影響を強く受け、営業利益が2億38百万円と同57.4%減少した。
その他
ホテル事業において、繁忙期である第2四半期に国内の団体宿泊客の取込みが進み売上高が24億33百万円と前年同期比5.8%増加し、増収効果とコスト削減で営業利益が1億47百万円と同310.9%増加した。
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第3四半期末の総資産は前期末と比べて26億75百万円減の1,308億70百万円。借方では、Cephas社買収により、たな卸資産(キッツメタルワークスの工場新設に伴う在庫積み増しも要因)、有形固定資産が増加した他、基幹システム投資により無形固定資産が増加。一方、M&A、設備投資、自己株式の取得、法人税等納付等で現預金が、株価の下落で投資その他(投資有価証券)が減少した。貸方では、未払法人税・未払消費税や純資産が減少した。自己資本比率57.1%(前期末57.1%)。
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営業利益の増加や売上債権の回収が進んだ事等による資金効率の改善で前年同期は25億13百万円だった営業CFが53億50百万円に増加した。一方、投資CFは、設備投資(有形固定資産の取得51億82百万円)、IT投資(無形固定の取得20億32百万円)、M&A(子会社株式の取得29億85百万円)等で67億85百万円のマイナスとなった。
設備投資の状況
基幹システムの稼働開始を延期
同社は、2015年からグローバル基幹システムの構築・導入プロジェクト「KITZ Innovation Global System」(総投資額約70億円)を進めており、2019年1月の基幹システム稼働を予定していた。しかし、稼働開始後のリスクを再検討した結果、19/3期決算を確実に行うべく、稼働開始を5月に延期する事にした。システム開発はほぼ完了しており、5月のスムーズな運用開始に万全を期する考え。
キッツメタルワークスの工場建設は計画通りの進捗
伸銅品事業を手掛けるキッツメタルワークスの老朽化設備の更新投資(総投資額約53億円)は、ほぼ計画通りに進捗している。新工場建屋が1月末に完成しており、鋳造設備が3月末に完成予定。6月までに製棒設備(押出し機)の据付・試運転を完了し、7月より新設備による量産を開始する。新工場への生産移行に伴い、一時的に生産が減少するため、現在、在庫の積み増しを行っている。
キッツマイクロフィルターの新工場建設 -「ポリフィックス」の成長と新市場の開拓-
2018年12月、キッツ茅野工場敷地内(長野県茅野市)でキッツマイクロフィルター(KMF)の新工場建設が始まった。KMFは家庭用浄水器から工業用フィルターまでの幅広い分野で、中空糸膜を使用した各種濾過用機器を製造・販売している。主力製品である工業用フィルター「ポリフィックス」は、近年、売上を伸ばしており、特に半導体向けは、更なる需要の拡大が期待できる。また、医療・ヘルスケア関連分野向けフィルターを今後の成長分野と定め、商品開発及び市場開拓を進めている。
旺盛な需要に対応するため、「ポリフィックス」の増産対応を進めているが、現有設備能力は限界に近い。また、医療分野向けの生産環境として、クリーンルームの新設も必要なため新工場建設を決めた。生産ラインの専用化・整流化を行うと共に、生産能力を大幅に引き上げる(1.5倍に拡大する)。生産品目は、浄水器、工業用フィルター、半導体用フィルター。総投資額は約13億円。2018年に12月に着工し、2019年9月の稼働を目指している。