ブリッジレポート
(6090) ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社

グロース

ブリッジレポート:(6090)ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ vol.12

(6090:東証マザーズ)ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ 企業HP
菅野 隆二 社長
菅野 隆二 社長

【ブリッジレポート vol.12】2019年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「着実にトップラインを拡大させてきたメタボローム解析事業が減収減益となってしまったが、メタボローム解析市場における同社の優位性に変・・・」続きは本文をご覧ください。
2019年1月16日掲載
企業基本情報
企業名
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
社長
菅野 隆二
所在地
山形県鶴岡市覚岸寺字水上246-2
決算期
3月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 938 -140 -149 -156
2017年3月 914 -43 -40 -61
2016年3月 780 -70 -71 -71
2015年3月 686 -100 -17 -34
2014年3月 610 -12 5 1
2013年3月 496 -104 -93 -95
株式情報(1/7現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,053円 5,850,800株 6,160百万円 -8.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
-円 - -50.59円 - 293.78円 3.6倍
※株価は1/7終値。発行済株式数、ROE、BPSは前期末実績。
 
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社の2019年3月期第2四半期決算概要、菅野社長へのインタビュー等をご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
研究機関や製薬企業等のメタボローム解析試験受託及びバイオマーカー開発を中心事業として展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業。バイオマーカーを探索する基盤技術であるメタボローム解析技術で世界的に高い評価を受けている。メタボローム解析事業により着実に利益を生み出すと同時に、将来性豊かなバイオマーカー事業への投資および研究開発を進めるというビジネスモデルにより、安定した収益基盤の下で成長を目指している。 2001年慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授は、CE-MS法と呼ばれる生体内の低分子代謝物質(メタボローム)の測定方法を開発した。このメタボローム測定法は、それ以前の測定方法が多くの測定条件を用いるため、代謝物質全体を網羅的かつ効率的に測定することが困難だったのに対し、一斉に、かつ、網羅的に測定できる点で画期的な技術であった。 以前よりメタボローム解析技術は、生物学基礎研究から医薬品開発、疾病バイオマーカー開発等に用いられており、その社会的ニーズの拡大が見込まれていたため、このCE-MS法確立を契機に、事業化を目指して、曽我教授や同大学の冨田勝教授、慶應義塾大学等が中心となり、2003年7月に同社を設立。慶應義塾大学のアントレプレナー支援資金制度により出資を受けた慶應義塾大学発ベンチャー企業の第1号となった。 2008年には、ライフ・サイエンス分野で用いられる化学分析機器や電気・電子計測機器の開発・製造・販売・サポートを行う世界的企業Agilent Technologiesの日本法人で、以前より同社及び慶應義塾大学と取引のあった、アジレント・テクノロジー株式会社の代表取締役副社長の菅野 隆二(かんの りゅうじ)氏が社長に就任。 菅野社長は就任後、同社のコア技術に関する研究開発を進めつつ、より具体的な事業化の道やビジネスモデルの整備・構築に着手すると同時に、認知度向上と研究開発資金の調達による成長スピードの加速を目指して株式上場の準備を開始。2013年12月、創立10年目に東証マザーズに上場した。 【企業理念】 同社は自社の存在意義を以下の様に定めている。 「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術をコアとした研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」 また、以下の5つの「共有の価値観」を掲げている。 【同社を見るポイント】 同社の事業内容は、重要なキーワードである「メタボローム解析」と「バイオマーカー」の説明と共に、以下に記しているが、多数の専門的な用語も出てくるため、そこから読み始めると同社に対する理解が進みにくい場合があると思われる。 そこで、まず同社を見る際の3つのポイントについて簡単に触れておく。 ①社会的存在意義の大きさ バイオマーカーとは、特定の病気に関する現在の状態を測定する際に指標として使われる生体内の物質で、糖尿病の「血糖」、肝機能障害の「γ―GTP」、痛風の「尿酸」などが代表的。 同社は現在大きな社会問題となっている「大うつ病性障害」のバイオマーカーを発見し、その数値を簡便に測定する診断薬を開発している。 うつ病の患者数が年々増加傾向にあるのに対し、現在の病状を客観的に測定する方法が普及していないため、正しい治療を行えば治癒するはずの患者が治らないなど、薬漬けになるなど大きな問題が指摘されている。 同社のバイオマーカーを活用した診断薬が普及すれば、うつ病によるこれらの課題を解決し、社会的損失を減少させることが出来る。 この社会的な存在意義の大きさは同社を見る際に欠かすことはできない。 ②高い技術力 複雑な人間の体の挙動を調べ、バイオマーカーを発見するための技術が「メタボローム解析技術」であり、同社はこの技術で世界的に高く評価されている。 現在話題になっているうつ病バイオマーカーは、あくまでも一例にすぎず、17年10月には急性脳症バイオマーカー国内特許を取得した。メタボローム解析技術により今後も、様々な新しいバイオマーカーを発見・開発することが期待される。 ③安定したビジネスモデル 現時点での主力事業は売上の大部分を占める「メタボローム解析事業」。研究機関や製薬会社等の研究開発を支援する事業であり、前2018年3月期で売上936百万円、営業利益445百万円と、着実に利益を上げている。 一方、中長期的に大きな成長が期待される「バイオマーカー事業」はまだ規模も小さく、損失の状況だが、メタボローム解析事業で生み出した利益を、バイオマーカー事業の成長のための投資に回すという、バランスのとれたビジネスモデルが既に構築されている点は、収益化に苦労している企業が多いバイオベンチャーの中でも大いに注目される。 【うつ病について】 同社の今後の成長ドライバーである「バイオマーカー事業」において、現在の代表的な対象疾病がうつ病である。うつ病および大うつ病性障害について、概要や日本における現状などをまとめてみた。 ◎うつ病とは 気分障害の一種で、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態。脳がうまく働いてくれないので、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間だと感じてしまう。そのため普段なら乗り越えられるストレスも、よりつらく感じられるという、悪循環が起きる。 中でも、「大うつ病性障害」は、ストレス源が除去された後もその状態が持続する状態を指し、その点で適応障害や一部の不安障害とは区別され、単純なストレス応答ではなく、脳機能の障害によると考えられている。 (ちなみに、大うつ病性障害とは、英語の「major depressive disorder」の和訳で、majorは「主たるもの」という意味合いであり、重篤なうつという意味ではない。) ◎世界および日本におけるうつ病患者数 2012年、世界保健機関(WHO)は、世界で少なくとも3億5千万人が精神疾患であるうつ病の患者とみられるとの統計を発表した。毎年100万人近くの自殺者のうち、うつ病患者の占める割合は半数を超えるとみられている。 一方我が国では、厚生労働省が3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると、1996年には43万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は、2011年には95万人と15年間で2.2倍に増加した。 「患者調査」は、医療機関にかかっている患者数の統計データだが、うつ病患者の医療機関への受診率は低いことがわかっており、実際にはこれより多くの患者がいることが推測されると、と同省は記している。 うつ病になる事は本人や家族にとっても不幸なことであるが、その属する会社等組織における生産性の低下や、自殺による社会的影響などを考慮すると、解決すべき大きな社会問題である。 日本では、うつ病や自殺による経済損失額が、年間約3兆円に上ると推計されている。さらに、こうした損失がなければ、国内総生産(GDP)を約2兆円引き上げられと試算されている(2010年厚生労働省推計)。 全世界での経済損失額は、2002年で約62兆円に上ると試算されており(Screening for Depression in Adults: A Summary of the Evidence. Ann Intern Med. 2002.)、現在では100兆円を超えていると推計されている。 ◎うつ病の治療 うつ病と診断されれば、一般的には「抗うつ薬」による治療が行われる。 抗うつ薬には、SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)といったものから三環系抗うつ薬などいくつかのグループがあり、他に、症状に合わせて抗不安薬や睡眠導入剤なども使われる。 薬物治療では、主治医による処方された薬の効果と副作用についての説明の下、処方された量と回数を必ず守ることが重要と言われている。しかしうつ病患者には、症状がそれほど重くないと感じる、副作用が心配、などの理由から自分で量や回数を勝手に減らすケースが多く見られ、主治医は十分な効果が得られないと判断して薬の量を増す、もしくは別の薬に変えるなどの対応を取ることとなってしまい、信頼関係が構築できず治癒が遅れる、過剰な薬の投与という結果に結び付いてしまう事も多い。 このため、うつ病であることまたは治癒されたことを示す客観的な評価基準が不可欠であり、同社が発見・開発中のうつ病バイオマーカーおよび診断薬は治療を迅速かつ適切に行うために極めて重要なものである。 【メタボローム解析とバイオマーカー】 同社の事業内容の概要を理解するには、「メタボローム解析」「バイオマーカー」という2つのキーワードについて一定程度の理解をしておく必要がある。 <メタボローム解析とは?> 人間をはじめとする生物は、筋肉や臓器、骨といった多様な機能を持つ器官から成り立つが、こうした器官はアミノ酸や脂質、核酸などの「代謝物質(メタボライト)」を共通の構成因子としており、代謝物質は全ての生命活動において欠かせない役割を担っている。 代謝物質は食事により供給され、運動など日々の活動の中で消費される。その機能に応じて体内や細胞内を移動し、多くの化学反応によって新しい物質へと作り替えられていく。 このような化学反応のことを「代謝(メタボリズム)」と呼ぶ。体温を調節したり、呼吸をしたり、心臓を動かしたり、食べ物を消化・吸収したり、古い細胞を新しい細胞に生まれ変わらせたりするのも、全て代謝の働きによるもの。 この新しい物質への作り変え「物質変換」は代謝経路という一定の規則により成り立っている。 人間の体の仕組みを探るための手法として有名なものが、遺伝子の解析を行う「ゲノミクス」である。 現在、生物の遺伝子情報(DNAの塩基配列)は自動的な解読およびコンピュータによる解析が可能になり、ヒトゲノムに関しては、ほぼ全ての情報の解読が終了したが、遺伝子の役割と病気との関係は解明できていない部分がまだまだ沢山ある。 そこで、人間の身体と病気との関係を解明するには、ゲノム解析による遺伝子に伴う情報のみでなく、代謝物質までを調査する事が必要であると考えられるようになり、全ての代謝物質を対象として解析を行う「メタボロミクス(メタボローム解析)」の研究、利用が盛んになっている。 メタボローム解析は主として以下のような分野で活用されている。 <バイオマーカーとは?> 人間の身体には、様々な機能を精緻に制御して、内的又は外的な影響を最小限にして、身体の状態を一定に保つ仕組みである「恒常性」が備わっている。 例えば、体温や心拍数が一時的に変化しても元に戻るという事などが「恒常性」の一例である。 しかし、病気に罹ってこの恒常性に異常が生じると、代謝物質等にも影響が及び、健康の時とは異なる状況が生まれる。この代謝物質等をバイオマーカーと呼び、バイオマーカーを測定することにより、特定の疾患に対する現在の状況を客観的に評価することができる。 バイオマーカーとして広く知られているものとしては、膵臓の機能指標となる血糖や肝機能の指標となるγ-GTP、腫瘍マーカーとして前立腺がんのバイオマーカーPSAや膵臓がんのバイオマーカーCA19-9などがある。 バイオマーカーは、病気に罹った状況をモニターすることを目的に古くから研究されてきたが、より高感度で一度に多くの物質を分析できる新しい方法が生み出され、様々な新しいバイオマーカーの研究成果が相次いで発表されている。メタボローム解析技術により、探索が進んでいるバイオマーカーには、以下のようなものがある。 【事業内容とビジネスモデル】 同社の事業は「メタボローム解析事業」「バイオマーカー事業」の2つ。 基盤技術であるCE-MS法の優秀性を研究機関や製薬会社等に普及させながらメタボローム研究関連市場の拡大を図り、メタボローム解析事業を国内外へ展開し、収益基盤を確保している。 一方、従来は現在の主力事業である「メタボローム解析事業」で得られた利益を、将来の成長事業である「バイオマーカー事業」の研究開発に投資し、ここで得られた知的財産を、医薬品開発や疾病診断分野で実用化することによる、中長期的な成長を目指してきたが、2017年3月期以降は、将来のより大きな飛躍を図るために外部からの各種資金調達によってバイオマーカー事業への投資を加速させることとした。 それぞれの事業の収益構造や顧客は以下の通り。 ①メタボローム解析事業 「2018年3月期 売上高 936百万円、営業利益 445百万円」 製薬会社や食品会社等の民間企業、および大学や公的研究機関などを顧客とし、メタボローム解析試験を受託している。顧客は、解析する試料を同社へ送付。同社は試料から代謝物質の抽出、CE-MS法によるメタボローム解析等を行った後、試験結果を報告書として顧客に納品する。 メタボローム解析サービスで得られた代謝物質データは、製薬企業や大学、研究所では基礎生物学研究から薬剤効果及び毒性の評価等、食品企業では発酵プロセスの解析や機能性食品の機能評価等に用いられ、顧客の研究開発の進展に貢献している。近年では、医療、食品のみでなく健康志向市場関連企業の関心も急速に高まっている。創業以来2017年度までの総試験数は4,750件と他に類を見ない豊富な実績を誇っていることに加え、品質の面でも顧客から高い評価を得ている。 ◎海外市場への展開 メタボローム解析受託サービスをアジアで展開するため、2011年6月に、韓国Young In Frontier Co., Ltd.と韓国内におけるメタボローム解析サービス等の独占的販売権供与契約を締結した。また、選任の担当者を採用し、シンガポール、香港等、韓国以外のアジア地域の開拓にも注力している。アジア地域以外への取り組みとしては、北米市場への展開のため、2012年10月に、医学研究の集積地である米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に、販売子会社Human Metabolome Technologies America, Inc.(HMT-A)を設立し、がん研究向け解析サービスC-SCOPEを主力商品として販売活動を展開している。 また、海外展開を一層加速させるため、2017年5月には、HMT-Aを通じて、欧州(オランダ)に現地法人(孫会社)「Human Metabolome Technologies Europe B.V.」を設立した。 ◎がん研究向け解析サービス「C-SCOPE」 2012年8月、がん研究向け解析サービスである「C-SCOPE」を発表した。 C-SCOPEは、がん細胞内で変化している特定の代謝物質を、より高感度、より精密に測定するというニーズに対応したもの。独自に開発したがん細胞からの効率的な代謝物質抽出法および高感度分析法を技術基盤としている。 がんは1981年以降国内死因の第1位であり近年総死因の約3割を占めている。厚生労働省によると、がん研究費は年々増加の一途をたどり2012年には357億円が費やされ、有効な新規抗がん剤の開発は多くの製薬企業にとっても急務となっている。 がん細胞が正常細胞に比べて数倍から数十倍のブドウ糖を消費する「ワーバーグ効果」と呼ばれる現象は、80年以上も前に提唱されたが、当時は代謝物質の網羅的測定法が無かったことから研究が滞っていた。 メタボローム解析技術の劇的な進歩に伴い、近年がんの代謝を阻害する抗がん剤の開発が行われている。 同社のCE-MS法によるメタボローム解析は、がん生物学的な基礎研究から抗がん剤開発における臨床応用まで、それぞれの段階で活用できる有効な解析手法の一つと考えられている。 ②バイオマーカー事業 「2018年3月期 売上高 2百万円、営業損失 185百万円」 同社は、疾患の早期診断や治療効果をモニタリングする際に重要な役割を果たすバイオマーカーに関する事業を将来の成長事業と位置づけ、大学や製薬、診断薬企業との共同研究開発を通じて、メタボローム解析技術を用いた新たなバイオマーカー探索や臨床検査薬の研究開発を進めている。 自社の研究開発を通じて得られたバイオマーカーや、外部より導入したバイオマーカーを用いて疾病の新たな診断方法を開発するとともに、製品開発・臨床開発等の過程を経て、体外診断用医薬品や診断機器の製造販売を行う。また、開発過程において、共同研究先である製薬企業から研究開発協力金やマイルストン収入、上市後の製品売上ロイヤリティ等が同事業の売上となる。 ◎知的財産に関する方針 知的財産権・契約担当者が、同社及び共同研究機関の指定特許事務所の弁理士と密接に連携し、すべてのプロジェクトの特許出願、審査請求業務を遂行する他、共同研究における契約の交渉及び契約書類の作成も担当している。発見された疾病バイオマーカーの特許化については、最大限の権利を行使できるよう努めている。 疾病バイオマーカーにより権利範囲が異なるため、発見された疾病バイオマーカーの化学構造を始めとして、診断や創薬での利用法、検出法と測定機器などを広く網羅するように特許出願書類を作成している。 また、各国の臨床検査薬と検査機器企業、製薬企業に関する情報に基づいてライセンス契約先及び市場を想定し、特許協力条約に基づく国際出願を行うことを原則としている。 2017年6月現在、うつ病のバイオマーカーの測定法等に関する「基本特許」は日本・米国・中国で登録済み(欧州は出願済み)、エタノールアミンリン酸(PEA)の測定方法に関する特許は、日・米・中・欧4局すべてで登録済みとなっている。 ◎バイオマーカー事業の例:うつ病バイオマーカー 同社では、特にうつ病など客観的診断が難しい中枢神経系疾患(気分障害や精神障害等)や、肝炎、糖尿病などを含んだメタボリックシンドローム等社会問題化している疾患とその関連疾患に焦点を当てて研究開発を進めているが、現在の代表的なものが、「うつ病」のバイオマーカーである。 大うつ病性障害の診断は、米国精神医学会の診断基準や世界保健機構(WHO)の基準に基づいて診断されるが、どちらの手法も医師や患者の主観が反映されているケースが多く、他の病気と異なり客観的な指標に基づく診断法が普及していない。そこで、同社は、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターとの共同研究により、大うつ病性障害の血液バイオマーカーを発見した。 患者と健康者約30名ずつの血液を収集し、CE-MS法を用いたメタボローム解析により成分の比較を行った結果、血漿中のPEA濃度が、大うつ病性障害患者で固有に低下していることが分かった。 その後の解析により、PEAが精神疾患の中でも大うつ病性障害に特異的なバイオマーカーであることに加え、大うつ病性障害が治癒すると健康基準値まで戻ることも分かった。 *コンパニオン診断:医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行なわれる臨床検査のこと。薬剤に対する患者個人の反応性を治療前に検査することで、より効果的な投薬を行うことが出来る。 このように、同社はPEAとうつ病の関係を探索・研究してメカニズムを解析する一方、機器分析法測定方法を開発したことで、測定精度を向上させるとともに、治療効果や病状の研究を可能にした。 続いて、従来の酵素法では検出できなかった極めて低濃度の血中PEAを測定できる技術を開発した。 この技術に基づいて2016年に開発されたのが「酵素法によるPEA測定試薬キット」(β版)である。 同社にとって「うつ病バイオマーカー測定試薬キット」の開発に成功したことの意義は極めて大きい。 「安価で大量処理可能な検査方法の実現」と「全世界に試薬キットを供給できる技術的基盤の確立」によって、全世界3.5億人のうつ病患者にPEA検査を供給することが可能となり、同社の社会的存在意義は一段と大きくなった。 加えて、具体的な市場、製品仕様、販路構築、事業規模等を考える新たな事業開発フェーズに移行することができるようになった。 ◎疾病バイオマーカーの発掘 バイオマーカーの発見において以下の3つのコネクションや制度を活用し、バイオマーカー開発パイプラインの拡充に努めている。 <受託解析もしくは共同開発顧客とのコネクション> 大学や企業から、バイオマーカー探索関連試験を受託している。また、試験実施の前後で共同開発の提案を受けることもある。 現在、糖尿病性腎症バイオマーカーの共同開発を進めている。 <研究者や医師への直接提案> 同社の研究員が、疾病バイオマーカー開発の研究計画を直接研究者や医師に提案し、医師の承諾及び所属機関と共同研究契約を締結の上、試験を実施している。対象となる疾病は患者数、同社解析技術の特長、社会貢献度、バイオマーカーの必要性等から選択している。大うつ病性障害のほか、非アルコール性脂肪性肝炎、繊維筋痛症のバイオマーカー開発を行っている。 <メタボロミクス先導研究助成制度> 同社ではメタボローム解析の有用性を広く社会に利用してもらうとともに、若手研究者の育成のために、大学院学生へのメタボローム解析助成制度(HMTメタボロミクス先導研究助成制度)を2009年より実施している。世界各国の大学院生から募集した研究テーマから、優れた提案に対し、無償でメタボローム解析結果を提供して研究を支援している。この研究成果には、バイオマーカー発見につながる研究も含まれ、感染症関連脳症バイオマーカーのように、同社と共同研究に発展した例もある。 2017年3月、次世代バイオマーカー探索に関わる技術特許を取得したと発表した。 現在同社で開発を進めている肝疾患バイオマーカーであるγ-グルタミルジペプチドは生体内に微量に存在するため、従来のCE-MSメタボローム解析技術では検出困難だったが、今回の特許技術を用いることで、γ-グルタミルジペプチド類を網羅的に検出することが可能となった。 この特許技術により、物質によっては50倍以上の高感度検出を実現できることから、同社のCE-MSメタボローム解析技術を飛躍的に向上させることが可能となり、新たな革新的バイオマーカー発見の可能性を高めることも期待される。 加えて、同年10月には、国立大学法人名古屋大学と共同出願していた「脳症の検出方法」が、日本において特許登録された。脳症はウイルスや細菌の感染等により発症し、意識障害、痙攣、異常行動、幻覚等の症状を伴う疾患。特にインフルエンザ脳症やHHV-6脳症などの急性脳症では、主に小児に発症し症状が急速に進行し重篤化する場合が多いため、いち早く適切な治療を行う必要があり早期に診断が求められる。同社は名古屋大学と共同研究を進める中で急性脳症を診断可能な血液中のバイオマーカー候補を発見し、今回の特許登録に至った。
 
 
2019年3月期第2四半期決算概要
成長に向けた投資増で損失続く 売上高は前年同期比10.1%減の2億76百万円。メタボローム解析事業において前年同期に計上された大型案件が今期は計上されなかった。 営業損失は2億93百万円。メタボローム解析事業は減収と投資(人員増、設備投資)増により減益。バイオマーカー事業はうつ病バイオマーカー事業化への継続的な投資を行っている。 売上高は前年同期比10.1%減の2億76百万円。食品業界を中心とした産業界への展開は進んでいるものの、前年同期に計上があった大型案件が今上期は無かった。 営業利益は同91.1%減の5百万円。新解析プラン立ち上げのために設備及び組織体制強化を進めた。 受注高は同32.9%減。受注残も同22.1%減と低調だった。 売上債権の減少等で流動資産は前期末に比べ3億25百円減少。有形固定資産の増加で固定資産は同63百万円増加し、資産合計は同2億62百万円減少の16億58百万円となった。負債合計はほぼ変わらず。利益剰余金のマイナス幅拡大で、純資産は同2億66百万円減少し14億85百万円となった。 この結果、自己資本比率は前期末の89.2%から86.4%へ2.8ポイント低下した。 売上債権の減少等から営業CFのマイナス幅は縮小。有価証券の償還による収入などから投資CFはプラスに転じた。フリーCFのマイナスは縮小。キャッシュポジションは低下した。 (4)トピックス ①メタボローム解析事業において新サービスをリリース 同事業において3つの新サービスをリリースした *「Mediator-Scan」 18年4月リリース。いわゆる脂質メディエーターの代表的物質群を含む、計400種の脂溶性代謝物を網羅的に解析するサービス。“脂質メディエーター”は、非常に多様な生理機能に関わることから、免疫や炎症に関連する喘息、じんましん、リウマチ、炎症性腸疾患、アトピー、食物アレルギーの他、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病に加え、がんや認知症など、様々な疾患の病態解明やバイオマーカー探索の目的に最適なプランで、既存のHMTの他の受託分析サービスと組み合わせる事で、さらに解析網羅性を高めることが可能となる。 *「Q-OPTION」 18年7月リリース。同社の基幹技術であるCE-MS法の解析対象約900物質のうち、検出頻度の高い403物質について1点検量による濃度定量値を報告するオプションサービスで、従前からの110物質の定量値を提供する「ターゲット濃度計算」の拡張版となる。 データベース構築やコホート研究など長期的なデータ収集に加え、化学量論的な数値解析に最適なオプションプラン。 *「ωScan」 18年10月リリース。同社の独自プラットフォームであるCE-FTMS(Orbitrap質量分析計:OrbitrapMS)は、高い分解能と安定した質量精度が特徴で、一般的には、薬物代謝、不純物分析、天然物、メタボロミクスやプロテオミクスなど幅広いアプリケーション分野に応用が可能で、従来のCETOFMS法に比べ感度は数倍から数十倍向上し、検出物質数は同社比で約2倍に増加する。 ユーザーは、生体中の濃度が極めて低い代謝物質もまとめて検出できるほか、検出物質数の増加により、従来の技術や他社サービスでは見つからなかった全く新しいバイオマーカーを検出できる可能性も高い。 国内のみならず、欧米市場の拡大、中国展開の加速に貢献すると見込んでいる。 ②中国市場の開拓開始 以前のレポートでも紹介したように、中国の研究機関から出版される論文数は既に日本の約4倍と、英国や韓国も凌駕し、首位の米国を急追している。また、分野別では化学、物理、地球環境分野において中国はアジア1位、ライフサイエンス分野で2位の研究大国となっている。 こうした市場性に着目した同社は以前より中国市場への進出を検討していたが、人的リソースも揃ってきたことから、今19年3月期より中国市場の本格的な開拓を始めることとした。 中国市場開拓の進捗は以下のとおりである。 市場開拓には欠かせないKOL(Key Opinion Leader)については既に複数人を獲得しており、中国人の専任営業スタッフを採用するなどスピーディーに準備を進めている。 また前処理体制整備のための人材確保、施設整備も今期中には終了する予定だ。 下の図にあるように、中国市場は今後数年で日本、欧州各国を上回る規模まで成長すると同社では見ており、米国および欧州子会社と共に同事業の海外展開を加速させていく。 ③決算期変更 決算期を現在の3月末から6月末に変更することとした。 主力のメタボローム解析事業は、事業の特性上、毎年1月から3月が繁忙期に当たるため、①売上高等の季節的変動に伴う業績への影響を緩和、②経営計画等の策定を効率的に行うこと等がその理由である。 決算期変更の経過期間となる2019年6月期は、2018年4月1日から2019年6月30日までの15ヶ月決算となる。
 
 
2019年3月期業績予想
業績予想に変更無し。メタボローム解析事業は引き続き堅調で増収。両事業の先行投資拡大で損失幅は拡大 業績予想に変更は無い。売上高は前期比17.2%増の11億円の予想。メタボローム解析事業は引き続き堅調に推移。両事業における積極的な投資により損失幅は拡大する。 (2)今期の取り組み 経営方針として、以下の4点を挙げている。 ①売上高の持続的成長と業績予算の達成 新製品による新分野・新地域開拓や新事業開発による中期的飛躍の基盤をつくる。 ②解析事業への設備投資 新商品開発に対応した設備投資を行うとともに中期での解析・生産能力を倍増させる。 ③うつ病バイオマーカーの確実な実用化 臨床研究の加速や、PEA試薬キットの薬事承認に向けた出口戦略を立案する。 ④安定株主の確保と対話による維持の継続 機関投資家、個人投資家向けIR活動へ引き続き注力する。 (外部環境) メタボロミクスが従来の大学や研究室などアカデミア向けの技術から、産業界の技術に進展している。 そうした中で、機能性食品などの新しい健康食品や、スポーツ、食品、睡眠、ストレス等をキーワードとする健康志向市場が人間の健康状態を把握するメタボロミクスの有用性に関心を向けており、新しいマーケットが創出されつつある。また、医薬品開発の現場においても、腸内細菌の研究、認知症やアルツハイマー病などの精神神経疾患に対する早期発見や診断および治療法開発、難治性疾患に対する医薬品を含めた医療技術の実用化などに関しても、メタボロミクスの利用が有効視され始めている。 (主要施策) こうしたフォローの風の中、今期は以下の様な施策を推進し、着実な拡大を見込んでいる。 (各施策における注目ポイント) 「(1)成長領域への新製品投入による売上拡大」に関しては前述のように3つの新プランをリリース。より広範な需要の取り込みを図る 「(2)海外展開への更なる注力」については、急成長が見込まれる中国市場の開拓に乗り出す。同社メタボローム解析技術に対するニーズは大きいと考えており、米国・欧州子会社と共に同事業の海外展開を加速させていく。 その際の重要な武器が「独自プラットフォーム CE-OrbitrapMS」と位置付けている。 「(3)新事業開発」については、食事の効果メカニズムや運動効果メカニズムの解明・検証、快適な睡眠状態の把握、ストレス度合いの把握と判定などを的確に行うためのヘルスケア業界向けニーズが高まると同社では見ており、2017年度までの累積総試験数4,750件という国内における圧倒的な実績をベースに、健康長寿社会の実現に向けて、「健康を発見するマーカー」、「こころの状態を発見するマーカー」、「病気の予防に貢献するマーカー」等の開発に取り組んでいく。
 
 
バイオマーカー事業の進捗状況
「酵素法によるPEA測定試薬キット」の開発により、全世界3.5億人のうつ病患者に、PEA検査を提供できる技術的目途が立った同社は、事業化に向けた足場作りを着実に進めている。 (1)製品開発 開発中の酵素法PEA検査研究用試薬キットについては、産業用酵素の世界シェア第2位である東洋紡株式会社(3101、東証1部)との共同研究により、うつ病関連バイオマーカーの測定に使用される酵素の量産技術を確立し、改良・安定供給が可能な体制を構築した。 その後、試薬の製造・販売体制・顧客対応の構築及び大規模販売の準備などに取り組むとともに、前期は有償出荷を開始し、今期は研究機関への有償出荷と顧客の声の収集を進める。 また、大型生化学検査装置用試薬キットへの改良にも取り組んでいる。 一方、PEAの測定には「測定試薬キットと汎用自動生化学検査機器を用いた大規模病院や臨床検査センターにおける測定」と、「測定試薬カートリッジと小型で迅速な検査が可能なPOCT測定機器を用いた一般内科やメンタルクリニックにおける測定」の2つを想定していたが、後者においては、より多くの共同研究先が臨床的に測定を行うために不可欠なPOCT測定機器および測定試薬カートリッジの開発が必要であり、早期かつ確実な薬事承認取得を目指すには、POCT測定機器ではなく、高速液体クロマトグラフィー用PEA検査研究用試薬キットでの薬事申請を先行させ、酵素法試薬キットの大型機器対応、臨床研究実施への積極的な投資を行うことが適切と判断し、高速液体クロマトグラフィー用PEA検査研究用試薬キットの開発を完了した。 ※IC-FLD(イオンクロマトグラフィー)は、医療機器名である「高速液体クロマトグラフィー(HPLC)」に名称を変更した。 (2)臨床開発 体外診断用医薬品としての許認可取得に不可欠な臨床研究や学術研究の進捗は以下の通り。 (臨床開発) ケース・コントロール試験による血漿PEAの性能確認試験について、会社主導のフィージビリティ試験が完了した。 国内外コホートによる関連疾患、遺伝的背景、人種間差の検証については、国内大学病院、米国大学病院との共同研究実施を最終調整中 国内での臨床試験に向けた準備については、国内大学病院との連携開始に向け一部契約が完了した。 (学術研究) うつ病モデル動物による、血漿PEA低下メカニズムの解明については、国内大学との共同研究を実施し、モデル動物で血漿PEA低下を確認した。 モデル動物による、抗うつ薬投与の血漿PEA濃度への影響検証については、国内大学との共同研究を実施中。 生化学的手法を用いた、脳内でのPEA生成メカニズムの解明については、米国立研究所との共同研究を実施中である。 2018年1月には、大うつ病性障害バイオマーカーに関する論文が公益社団法人日本精神神経学会誌に掲載された。この論文によると、メタボローム解析により、大うつ病性障害患者と健常者の血液成分を比較したところ、PEAをバイオマーカーとした同障害性患者を特徴付けるメタボロームプロファイルが明らかになったという。 (要旨) 同社の基幹技術であるCE-MS法により、同患者と健常者のメタボローム解析を実施した結果、同患者の血漿 PEAが健常者に比べ有意に低値であった。 同患者と同障害ではない患者の血漿PEAを、イオンクロマトグラフィー-蛍光検出(IC-FLD)法で測定した結果、同患者のバイオマーカーとして、血漿PEAは高い判別性能を示した。 検証試験として、さらに同患者と同障害ではない患者のPEAを比較したところ、血漿中のPEA濃度が大うつ病性障害の有望なバイオマーカー候補であることが示された。 (3)薬事 前々期の体外診断用医薬品の製造販売業の認可取得に加え、前期には「医薬品卸売販売業」の許可を取得した。 今後の事業化に向けた薬事上の重要な基盤整備を進めることができたため、今期は独立行政法人医薬品医療機器総合機構への薬事申請事前相談を開始した。これを機に具体的な出口戦略の検討を始める。 (4)事業開発 前述のように、前期より測定試薬キット(研究用)の有償提供を開始した。 PEA酵素法の基本特許は欧州のみ未だ登録されていないが、間もなく登録されると見ている。 加えて、PEAのグローバル市場調査とパートナー探しを進めている。
 
 
菅野社長に聞く
菅野社長に、両事業の現状と今後の展望、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。 Q:「上期におけるメタボローム解析事業はどんな状況でしたか?」 A:「減収となってしまったことは大変残念だが、アカデミア中心とした予算執行のタイミングなどが要因であり、マーケットは堅調で、決してシェアを落としているわけではない。お客様の数や引き合いは増加傾向にあり、メタボローム解析の社会的な利用価値が明確になってきたトレンドに変化はない。」 前期にあった大型受注がなかったため減収となってしまったことは大変残念だが、アカデミア中心に予算執行のタイミングなどが要因であり、マーケットは堅調で、決してシェアを落としているわけではない。 お客様の数や引き合いは増加傾向にあり、「品質管理」や「価値の証明」といった点で関心の高い食品会社中心に民間企業の利用が増加、つまりメタボローム解析の社会的な利用価値が明確になってきたトレンドに変化はない。 今後は売上の変動を可能な限り減らすために顧客数の拡大、年間契約顧客の開拓、顧客の育成などに取り組んでいく。 そうした需要を確実に取り込むための有力なツールとして新しいサービスを相次いでリリースした。 「Mediator-Scan」は、これまで測定できなかった脂質を測定でき、既存のHMTの他の受託分析サービスと組み合わせる事で、解析網羅性を更に高めることができるものだ。 「Q-OPTION」は、定量値を提供できるという当社のメタボローム解析の特徴を更に拡張したもので、他社にはないサービスだ。 当社の独自プラットフォームであるCE-OrbitrapMSを用いた「ωScan」は、その感度の高さから従来の方法では検出できなかった物質も検出が可能だ。この技術的な優位性により、サンプル数が少なくて済むというメリットが生じるとともに、これまでは見つけることが出来なかった全く新しいバイオマーカーの検出可能性が高まると考えている。 この技術を有しているのは世界でも当社のみであり、その圧倒的な性能の違いを武器に、海外市場開拓に取り組んでいく。 Q:「中国市場開拓に本格的に乗り出します。その進捗をお聞かせください。」 A:「中国市場が今後高成長を遂げるのはほぼ間違いない。中国市場の状況を調査分析したうえで、適切な価格やサービスレベル、解析のための自前の施設を設置するべきかなど検討すべき事項はたくさんあるが、今年7月に執行役員として招聘した鈴木悠司が先頭に立ち、営業・マーケティングのための仕組みづくりを進めている。」 中国市場が今後高成長を遂げるのはほぼ間違いない。今からしっかりと楔を打っておくことが極めて重要だ。 マーケット状況を調査分析したうえで、適切な価格やサービスレベル、解析のための施設をどこに設置するのが適当かなど検討すべき事項はたくさんあるが、まず営業・マーケティングのための仕組みづくりを進めている。 中国市場攻略においては、今年7月に執行役員として招聘した鈴木悠司(外務省、大手コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に転じた後、マクロミル株式会社で経営戦略やグローバル展開を担当)が力強くリードし大きな役割を果たしてくれている。 今期末(19年6月末)までには拠点設置の必要性検討等を行い、より本格的な市場開拓に乗り出したい。 Q:「バイオマーカー事業はいかがですか?」 A:「薬事承認及び保険収載を考慮する時期になったため、申し上げられない部分もあるが、着実に進捗している。臨床研究においては、会社主導のフィージビリティ試験が完了した。製品開発に関しては高速液体クロマトグラフィー用検査キットでの薬事申請を先行させることが適切と判断して開発を進めてきたが、開発は完了し手法は完成した。これからは薬事をどう進めるかというステージに入っていく。」 PEA検査キットの開発及び製造販売に関して、薬事承認及び保険収載を考慮する時期になったため、申し上げられない部分もあるが、着実に進捗している。 臨床研究においては、会社主導のフィージビリティ試験が完了した。 また、国内と並行して事業化スピードの観点から海外での開発・展開も視野に入れるために国内外コホートによる関連疾患、遺伝的背景、人種間差の検証について、国内大学病院、米国大学病院との共同研究実施を最終調整中だ。 製品開発に関しては、臨床検査センターや大規模病院の臨床検査室を対象として、高速液体クロマトグラフィー用検査キットでの薬事申請を先行させ、大型生化学検査装置用に酵素法試薬キットを改良することが適切と判断して開発を進めてきたが、前者の開発は完了し手法は完成した。 Q:「最後に株主・投資家へのメッセージをお願いします。」 A:「最近は様々な企業から提携のお誘いを頂くようになってきた。これも、健康志向市場が拡大する中でメタボロミクスの有用性に対する関心が急速に高まっているからだろう。こうした追い風を上手に捉え、当社の技術的優位性を最大限に発揮して一日も早い収益化に向け邁進していくので、株主・投資家の皆さんにはこれからも是非応援していただきたい。」 メタボローム解析事業は国内での需要取り込みを着実に進める一方、当社独自の技術によって全世界的なマーケットの開拓に乗り出していく。 また、執行役員の橋爪が子会社HMTバイオメディカルの社長として解析の受託にとどまらない、新たなバイオマーカーの探索など、新たな切り口での事業開発の仕掛けづくりを進めているので是非期待してほしい。 バイオマーカー事業においては薬事承認を目指す重要なフェーズに入ってきた。スピードも重要だが、確実性も重視しなければならず、やや時間がかかっているが、もう少し見守っていただきたい。 最近は様々な企業から提携のお誘いを頂くようになってきた。これも、健康志向市場が拡大する中でメタボロミクスの有用性に対する関心が急速に高まっているからだろう。 こうした追い風を上手に捉え、当社の技術的優位性を最大限に発揮して一日も早い収益化に向け邁進していくので、株主・投資家の皆さんにはこれからも是非応援していただきたい。
 
 
今後の注目点
着実にトップラインを拡大させてきたメタボローム解析事業が減収減益となってしまったが、メタボローム解析市場における同社の優位性に変化はないこと、メタボロミクスの有用性に対する関心は引続き高まっていることから、大きく心配することはないだろう。 一方バイオマーカー事業に関しては、薬事承認という重要なステージに入り、確実性をより重視したいという会社側の考えを踏まえ、引き続き、製品開発、臨床開発、薬事、事業開発それぞれに残った課題・目標クリアに向けた今後の進捗を期待したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書 更新日:2018年11月28日 <実施しない主な原則とその理由> 「当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。」と記載している。