ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

スタンダード

ブリッジレポート:(6890)フェローテックホールディングス vol.58

(6890:JASDAQ) フェローテックホールディングス 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.58】2019年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「19/3期は最高益更新が見込まれる同社だが、米中貿易摩擦の影響等による半導体投資の減速で来期の業績に不安を感じる投資家は少なくない・・・」続きは本文をご覧ください。
2019年1月9日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテックホールディングス
社長
山村 章
所在地
東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 90,597 8,437 7,157 2,678
2017年3月 73,847 5,678 5,675 3,256
2016年3月 69,463 4,024 3,822 2,162
2015年3月 59,078 1,671 2,030 -2,132
2014年3月 44,745 798 1,262 1,391
2013年3月 38,424 -3,608 -3,465 -6,532
2012年3月 60,088 4,124 3,287 1,715
2011年3月 57,880 6,931 6,290 4,483
2010年3月 31,541 703 524 156
2009年3月 36,653 2,790 2,097 743
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
株式情報(12/3現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,115円 37,003,134株 41,258百万円 5.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
24.00円 2.2% 143.23円 7.8倍 1,392.82円 0.8倍
※株価は12/3終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フェローテックホールディングスの2019年3月期上期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
消耗品を含めた半導体やFPD製造装置等の部品、冷熱素子「サーモモジュール」を核とする電子デバイス、太陽電池関連製品等の製造・販売、及び関連する各種技術サービスを手掛けている。傘下に子会社等42社を擁する(連結子会社35社、持分法適用非連結子会社1社、持分法適用関連会社5社、持分法非適用非連結子会社1社)。 1980年、NASAのスペースプログラムから生まれた磁性流体を応用した真空技術製品や冷熱素子として用途が広がっているサーモモジュール等、独自技術を核にした企業として誕生。創業から30年余りにわたって培われてきた多様な技術は、エレクトロニクス、自動車、次世代エネルギー等、様々な産業分野で応用されている。また、トランスナショナルカンパニーとして、日本、欧米、中国、アジアに展開し、マーケティング、開発、製造、販売、そしてマネジメントと、それぞれの国・地域の強みを活かした経営も同社の特徴。2017年4月、持株会社体制へ移行した。 【経営理念と行動規範】 経営理念 顧客に満足を 地球にやさしさを 社会に夢と活力を 行動規範 私たちは、グローバルな視点のもと、常に国際社会と調和を図り、地域社会その他私たちに関係する世界の人々の生活に貢献できる製品とサービスを提供する企業として、各国の法令を遵守することはもちろん、確固とした企業倫理と社会的良識を持って、誠実に行動します。 フェローテックグループは、新エネルギー産業およびエレクトロニクス産業を中心に高品質な製品やサービスを提案し、コスト競争力のある製品やサービスを提供することにより、お客様から信頼されて、満足を頂くことを掲げます。 フェローテックグループは、地球環境に配慮した活動を積極的に推進することを経営上の重要課題の一つとしており、最新の環境規制要求への適応を順次進めます。また、新エネルギー産業で活用できる素材・製品などを開発し、地球環境問題の解決に貢献することを掲げます。 フェローテックグループは、コア技術を活用したものづくりを通して社会に貢献し、顧客、株主、社員、取引先、地球社会などステークホルダーの方々が成長する楽しみを持てる企業であり続けます。また、企業活動に当たり法令遵守、社会秩序、国際ルールなど社会的良識をもって行動することを掲げます。 【事業セグメント】 事業は、半導体・FPD・LED等の製造装置に使われる真空シール、石英製品、セラミックス製品等の半導体等装置関連事業、サーモモジュールが中心の電子デバイス事業、及びシリコン結晶やPVウェーハ、結晶製造装置に使われる坩堝等の太陽電池事業に分かれ、18/3期の売上構成比は、それぞれ48.7%(17/3期43.7%)、14.0%(同17.1%)、23.1%(同25.4%)、及びソーブレード、装置部品洗浄、工作機械等の報告セグメントに含まれないその他14.1%(同13.8%)。 半導体等装置関連事業 半導体、FPD、LED、太陽電池等の製造装置部品である真空シール、デバイスの製造工程に使われる消耗品である石英製品、セラミックス製品、CVD-SiC製品、この他、シリコンウェーハ加工や製造装置洗浄等も手掛け、エンジニアリング・サービスをトータルに提供している。 主力製品で世界シェアNo.1の真空シールは、製造装置内部へのガスやチリ等の侵入を防ぎつつ回転運動を装置内部に伝える機能部品で、上記の製造装置に不可欠。真空シールの内部には創業からのコア技術である磁性流体(磁石に反応する液体)シールが使われている。ただ、いずれの分野も設備投資の波が大きいため、比較的需要が安定した搬送用機器や精密ロボット等、一般産業分野での営業を強化しており、真空シールを組み込んだ真空チャンバーやゲートバルブ等(共に真空関連の装置で使われる)の受託製造にも力を入れている。一方、石英製品、セラミックス製品、及びCVD-SiC製品は共に半導体の製造工程に欠かせない消耗品。石英製品は半導体製造の際の高温作業に耐え、半導体を活性ガスとの化学変化から守る高純度のシリカガラス製品。材料や加工技術を核とするセラミックス製品は国内外の半導体製造装置メーカーを主な顧客とし、半導体検査治具用マシナブルセラミックスと半導体製造装置等の部品として使われるファインセラミックスが二本柱。CVD-SiC(※)製品は「CVD法(Chemical Vapor Deposition法:化学気相蒸着法)」(シリコンと炭素を含むガスから作る)で製造されたSiC製品の事。現在、半導体製造装置の構造部品として供給しているが、航空・宇宙(タービン、ミラー)、自動車(パワー半導体)、エネルギー(原子力関連)、IT(半導体製造装置用部品)等への展開に向け研究開発を進めている。シリコンウェーハ加工は6インチ(口径)を基盤に8インチへの展開を進めており、製造装置洗浄は中国で過半を超えるトップシェアを有する。 電子デバイス事業 事業の核となっているのは対象物を瞬時に高い精度で温めたり、冷やしたりできる冷熱素子「サーモモジュール」である。サーモモジュールは自動車用温調シートを中心に、半導体製造装置でのウェーハ温調、遺伝子検査装置、光通信、家電製品等、利用範囲は広い。高性能材料を使用した新製品の開発や自動化ラインの導入によるコスト削減と品質向上により、新規の需要開拓や更なる用途拡大に取り組んでいる。この他、釣り具のリール(リール内部の防水用途)や4Kテレビのスピーカー向け等で新たな用途開発が進んでいる磁性流体の収益も含まれている。 太陽電池事業 2005年に太陽電池関連事業に参入し、シリコン結晶製造装置、石英坩堝等の消耗品、及び太陽電池用シリコン製品等の製造販売を手掛けてきた。現在は市場ニーズを踏まえて、太陽電池用シリコン製品(シリコンインゴットとウェーハ)の受託生産や、インゴットの製造時に使用される単結晶シリコン用坩堝や多結晶シリコン用角層坩堝(共に石英の加工技術がベースになっている)の製造・販売が中心。太陽電池で培った技術の転用が可能で、付加価値の高い半導体分野へのシフトを進めている。
 
 
2019年3月期上期決算
前年同期比5.2%の増収、同12.7%の営業増益 売上高は前年同期比5.2%増の452億30百万円。中国政府による固定価格買取制度の価格見直しと発電設備導入量の抑制による市況悪化で太陽電池事業の売上が大きく落ち込んだ他、自動車温調シート向けサーモモジュールの苦戦で電子デバイス事業の売上も減少したが、石英、ファインセラミックス等のマテリアル製品をけん引役に半導体等装置関連事業の売上が同24.6%増と大きく伸びた。 利益面では、半導体等装置セグメントの収益性の改善を伴った売上の増加で太陽電池事業での棚卸資産評価損(低価法による)等の影響を吸収して売上総利益が同12.9%増加。売上の増加と子会社の増加(前年末に比較し8社増)に伴う販管費の増加を吸収して営業利益が50億69百万円と同12.7%増加した。 持分法投資利益(1億17百万円→2億94百万円)の増加や為替差益の計上(96百万円。前期は為替差損3億12百万円を計上)で営業外損益が改善する一方、特別利益(前期1億47百万円を計上)の計上がなかった事と老朽化設備の入替等に伴う固定資産処分損の増加や訴訟案件に対する遅延利息相当額計上等による特別損失(54百万円→2億82百万円)の増加で特別損益が悪化した。 真空シールは、有機EL向けが韓国・中国大手パネルメーカーの投資延期の影響で調整したものの、半導体製造装置真空プロセス向けが付随する金属加工製品と共に増加し同19.2%の増加。半導体のウエーハプロセスに使用されるマテリアル製品は、メモリー向け、IoT向け、及び車載向け等の投資に伴う新規案件の増加や半導体エンドユーザ―の消耗材需要の増加で石英製品が同41.7%増加した他、海外半導体検査治具材料(マシナブルセラミックス“ ホトベール”)や海外エッチング装置向けファインセラミックス等を中心にセラミックス製品も同29.7%増と伸びた。半導体製造装置の稼働率と相関性の高い部品洗浄(半導体製造装置、液晶パネル製造装置等の部品洗浄)は、半導体顧客を中心に中国内のFAB増設もあり、同50.4%増加した(前年同期はその他にセグメント)。一方、代替材の採用で一部製品の需要が鈍化したCVD-SiC製品が同21.4%、環境対応で一時期稼働を停止した影響でウェーハ加工が同3.2%、それぞれ減少した。 尚、部品洗浄では、安徽省銅陵市に5拠点目なる工場を建築中であり、年明けの竣工が予定されている。また、ウェーハ加工は、8インチのウェーハ加工の量産が7月に再開され月産8万枚レベルに達しており、現在、顧客の認定評価待ちの状態。6インチは上期中に月産40万枚体制を確立した。 サーモモジュールは、半導体製造装置ウェーハ冷却向け、民生向け、バイオメディカル向けが増加したものの、北米市場での自動車販売台数の減少による納入先の在庫調整で主力の自動車温調シート向けが減少。磁性流体も北米での自動車販売台数の減少を受けて、カーオーディオ・スピーカー向けが減少した。 尚、パワー半導体用基板の増産体制構築に向け建設を進めていた江蘇省東台市の新工場が7月に竣工した。 石英坩堝は、半導体向け単結晶坩堝の販売が増加したものの、太陽電池向け多結晶用角槽の製造販売を終了した事や上期後半以降の中国補助金政策の影響による太陽電池向け石英坩堝の減少で同31.7%減少した。太陽電池用シリコンも、中国補助金政策の影響による需要の冷え込みで価格が下落し同55.8%の減収。同製品は、主力OEM先向け製品で品質問題が発生し出荷を停止し、在庫を処分した事もあり、上期後半は赤字基調で推移した。太陽電池用セルも、中国補助金政策の影響で価格が下落した。 上期末の総資産は前期末との比較で220億42百万円増の1,405億円。借方では、長短借り入れ及び社債発行により現金・預金が増加した他、8インチウェーハ用設備、石英製品・セラミクス製品の増産対応設備等で建設仮勘定が増加。中国子会社の土地使用権の増加で無形固定資産も増加した。自己資本比率36.7%(前期末43.3%)。 上期の設備投資は111億14百万円(前年同期比136.4%増)。主なものは、上海子会社9億54百万円、杭州子会社56億07百万円、銀川子会社14億53百万円、東台他中国子会社15億42百万円、及び中国子会社での土地使用権の取得9億15百万円。減価償却費は26億51百万円(同38.4%増)を計上した。
 
 
2019年3月期業績予想
売上高・利益供に過去最高の更新が見込まれる 売上高は前期比1.5%増の920億円。太陽電池パネル市場での価格下落を踏まえて見通しを引き下げた太陽電池事業の売上が同57.0%減と大きく落ち込む他、電子デバイス事業の売上も同5.5%減少するが、下期の見通しを引き上げた半導体等装置関連事業の売上が石英製品・セラミックス製品を中心に同30.7%増と伸びる。 営業利益は同16.2%増の98億円。売上の見通しを引き下げたものの、売上構成の良化等で売上総利益率が期初の想定(28.5%)を1.4ポイント上回り、売上総利益は期初予想とほぼ同水準(1.5%下振れ)を維持できる見込み。諸経費の見直しにより下期の販管費を圧縮し、期初予想に沿った着地を目指している。 設備投資は400億円(前期比225.2%増)を計画しており、減価償却費は50億円(同19.4%増)を織り込んだ。為替の前提(期中平均レート)は、米ドル105.00円(前期112.04円)、人民元16.00円(同16.63円)。 1株当たり12円の期末配当を予定しており、上期末配当と合わせて年12円となる。 太陽電池事業の見通しを大幅に引き下げたため、前年同期比1.8%の減収となり、期初予想を10.1%下回る見込みだが、消耗材比率が高い石英製品を中心に半導体装置関連事業の見通しを引き上げた。利益面では、上期の利益が上振れしたものの、通期の利益予想を保守的に据えおいたため、下期の利益見通しが下方修正された形となった(このため上振れ余地が残っている)。 下期は、真空シールは前年同期比・上期比共に増収基調が続くものの、期初予想との比較では、半導体製造装置向け、有機EL・液晶向け共に弱含みが予想される。 消耗材比率が高い石英製品は下期も堅調な推移が見込まれる中、中国半導体メーカーの増産や新FAB向け需要が加わる。微細化高温プロセス向けSiボートやSiパーツも増加する見込みで、下期の見通しを大幅に引き上げた。大手OEM需要増に対応して増産体制を整備するべく、中国常山工場と東台工場の建設工事が進行中である。また、次世代や次々世代用製品の開発強化の一環として、国内(山形県)に開発・製造拠点を開設する(次世代製品工場が2019年春頃稼働予定)。セラミックス製品は海外半導体検査治具材料(マシナブルセラミックス“ ホトベール”)や海外エッチング装置向けファインセラミックス等を中心に下期も前年同期比・上期比で増収基調が続く見込み。 CVD-SiC製品も比較的設備稼働率との相関性が高く、国内外の半導体製造装置向け部材や高純度耐熱部材を中心に下期の売上が前年同期比・上期比で大きく伸びる。半導体製造装置部材の需要増に対応して生産体制の整備を進めると共に、開発・試作体制及びグループ内連携を強化する。 ウェーハ加工は、堅調な市況を背景に6インチが下期も高稼働維持の見通し。7月に生産が再開した8インチは、20/3期前半には月産10万枚体制が整う。上海工場の同10万枚と合わせて、杭州工場で21/3期中に35万枚体制を構築し、合計45万枚体制を確立したい考え。 部品洗浄は下期に半導体顧客の稼働ラインが増加し、20/3期には安徽省銅陵の新拠点及び四川省内江の第二工場が本格稼働する予定。中国内の半導体・FPD顧客需要動向を見極め、必要に応じて更なる能力増強を検討する。 自動車温調シート向けサーモモジュールが下期も北米自動車販売減速の影響を受ける見込み。次世代自動車向け応用製品の開拓に取り組む。その他の産業向けは、 民生向けアッセンブリ(ショーケース用途等)や光通信用向け等で堅調な推移が見込まれる。パワー半導体用基板の世界的拡販活動を展開する。 石英坩堝の下期は、8インチ向け大型坩堝の販売が増加する等、半導体坩堝販売が主流となり、高付加価値化で売上総利益が増加する。半導体坩堝専用(クリーン化、自動化後工程)工場の年内稼働を予定している他、20/3期上期の量産を念頭に32インチ大型溶融炉の開発を進めている。太陽電池用シリコンは価格低迷が続く見込みで、OEMに特化し採算改善を図ると共に、低酸素化、スライス細線化等による高品質化にも取り組む。上期に発生した一部OEM製品の品質問題は解消され、出荷が再開されている。一方、不採算品種は撤退を視野に生産調整を継続し、一段の在庫処理を進める。太陽電池用セルも価格低迷が続く見込みで、OEMに特化すると共に、引き続きコストダウンと変換効率向上に取り組む。
 
 
中長期成長戦略と進捗状況
【中長期成長に向けた戦略】
(1) 半導体等装置関連事業への経営資源投入 マテリアル製品・ウェーハ製品・洗浄事業
(2) 太陽電池関連事業の構造改革 半導体業界向けに転換した今後の方針
(3) 自動車産業(EV車)へ応用製品投入 温調シート以外のアプリケーションへ注力
上記の方針に大きな変更はなく、旺盛な需要のある分野に対して設備投資を継続していく。 【進捗状況】 (1)半導体等装置関連事業への経営資源投入 マテリアル製品・ウェーハ製品・洗浄事業 SEMI(国際半導体製造装置材料協会)のデータを基にした同社資料によると、2019年の中国半導体製造装置市場は173億ドルと前年比47%の成長が見込まれ、世界最大規模となる見込み。同社では、米中貿易摩擦の懸念はあるも、国内生産の増加と自給率の上昇により、需要は堅調と見ており、半導体マテリアル製品の増産体制の整備、半導体ウェーハの増産及び大口径化の体制整備、更には洗浄ビジネスの拡大に取り組んでいる。 半導体マテリアルの増産体制の整備 中国において、下記8工場の新設による生産キャパ拡大に取り組んでいる。8工場は、2018年後半から2019年春にかけて竣工・稼働し、20/3期の業績にフルに寄与する予定。 マテリアル製品と企業の設備投資の関連性 半導体マテリアル製品は設備投資に比例する製品と消耗材に分かれるが、同社は設備投資に比例する製品と消耗材を共にカバーしており、消耗材の増産体制整備に力を入れている。このため、設備投資の減少期であっても消耗材の下支えにより一定の収益を確保できる。今後、消耗材の増産体制の整備が進めば、設備投資関連需要が落ち込んでも、事業を伸ばせる体制が整う。 半導体ウェーハ戦略:中国への大規模投資 中国半導体市場の拡大を見据え、ウェーハ工場の建設を進める。8インチ、12インチ合わせて約670億円の大規模設備投資を計画している。具体的には、8インチウェーハでは、約510億円(うち240億円は19/3期に実施)を投じ、銀川市工場でのインゴット製造ラインと杭州市工場でのウェーハ加工ラインを整備する。12インチウェーハについても、銀川市工場でのインゴット製造ラインと杭州市工場でのウェーハ加工ラインの整備を進める考えで、投資額は約160億円を計画している(資金調達については決まり次第、開示する予定)。杭州市工場は建屋が2019年1月に完成し、2~3月頃の竣工を予定しており、銀川市工場は2019年 3月頃の竣工を予定している。また、8インチウェーハの量産が再開した上海工場では、評価が完遂し10月に8万枚体制となった。早期に同10万枚体制を確立したい考え。 投資後の生産能力イメージ
小口径(5-6インチ) 月産 40万枚(稼働中)
中口径(8インチ)  同 10万枚(稼働中)
中口径(第2期)  同 35万枚(工場建屋年明け、設備投入19年から)
大口径(12インチ) パイロットライン 同3万枚(20年以降の予定)
販売戦略 製造したウェーハは提携先であり、世界第三位の半導体ウェーハメーカーであるGlobal Wafers Corporation社より世界各国で販売していく。また、ウェーハ設備償却費の軽減も念頭に、同社の製品(真空シールや石英坩堝)を使い内製している単結晶シリコン引上装置の外販を開始する他、石英坩堝の販売等にも力を入れる。将来的にではあるが、12インチインゴット引上装置の販売も視野に入れている。 洗浄ビジネスの拡大 半導体やFPDメーカー顧客からの装置部品洗浄の能力増強要請を受けて工場建設を進めている。四川省内江第2工場が2018年末に稼働を開始する予定であり、2019年1月には安徽省に建設中の工場が竣工する予定。主要エリアに工場を展開しているものの、工場を分散し事業リスクの低減を図っている。 (2)太陽電池関連事業の構造改革 来期中に太陽電池事業から撤退し、半導体向けに注力 来期中に太陽電池事業から完全撤退する考え。当面は、自社販売から撤退するものの、OEM先との協議が必要なため、太陽電池用シリコン製品とセル製品のOEMは継続する。これに伴い、OEM用途以外の設備は、半導体Siパーツ構造材用に転用する。 (3)自動車産業(EV車)へ応用製品投入 同社のコア技術を使った製品は車載製品に幅広く対応できる。この強みを活かして、サーモモジュール、磁性流体、パワー半導体基板を中心に、車載部品メーカーへの提案営業を行っている。 温調シート以外のアプリケーション強化によるサーモモジュールの拡販 5G・通信機器分野の強化、バイオ・医療等への対応領域の拡大、及び半導体用クーリングプレートの開発等、温調シート以外のアプリケーションを強化し、サーモモジュールの拡販を図る。 パワー半導体基板によるEV車・産業用市場の取込み 同社資料によると、2016年に2兆4,239億円だったパワー半導体市場は、工作機械や自動車分野での需要も加わり、当面、30%超の成長が続く見込みで、2025年には3兆1,799億円に拡大するとみられている。同社はパワー半導体基板工場(江蘇省東台)を7月に竣工させ、生産能力を約3倍に引き上げた。パワー半導体基板でEV車市場や産業用市場を開拓していく考え。
 
 
今後の注目点
19/3期は最高益更新が見込まれる同社だが、米中貿易摩擦の影響等による半導体投資の減速で来期の業績に不安を感じる投資家は少なくない。しかし、同社は総じて楽観的だ。来20/3期は半導体製造装置の設備投資に連動する製品全体では20%程度の減収が見込まれるが、半導体製造に連動する消耗材が大きく伸びるため、今期並みの売上規模を確保できるとみている。既に説明した通り、石英製品、セラミックス製品、ウェーハ、シリコン結晶、部品洗浄と言った顧客の要望に応えて着工した新工場が相次いで竣工・稼働する。ウェーハについては、環境規制に伴う競合先の移転で6インチの需給がひっ迫しており、8インチも、価格上昇の可能性があるようだ。また、中国市場でのウェーハ価格は中国外の市場と比べて、若干高めの価格で流通しているとの事。 利益面では、足かせになっている太陽電池事業からの撤退が利益の押し上げ要因となる。当面、利益確保が可能なOEMを続けるものの、20/3期中に完全撤退する考え。関係者や関係機関との協議が必要であり、また、撤退に際して設備を売却する計画のため、完全撤退には、ある程度の時間を要するようだ。また、現状では、撤退に際して約24~32億円の会計処理(特別損失の計上)を想定しているようだが、不採算事業からの撤退で連結ベースの営業利益率は15%程度への改善が見込まれる模様。 また、現時点での設備投資額の見通しは、19/3期300億円程度(ウェーハ 200 億円、その他100 億円。計画は400 億円だが)、20/3期は400 億円(ウェーハ 300 億円、その他 100 億円)、21/3期は150 億円(ウェーハ 150 億円、その他は現状未定)。3年間の設備投資総額が少なくとも850億円に及ぶが、売上高1,000億円とすると、営業利益は150 億円(営業利益率15%)となり、その場合の税引き利益は100 億円前後。21/3期の減価償却費は80 億円程度が見込まれるため、広義のフリーCFは180億円。このため、5年程度で投資回収できる計算だ。
 
 
 
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書更新日:2018年11月15日 基本的な考え方 当社は、企業価値を高め、株主、顧客、取引先、地域社会などステークホルダーに信頼され支持される企業となるべく、経営の健全性を重視し、併せて、経営環境の急激な変化にも迅速かつ的確に対応できる経営体制を確立することが重要であると考えております。 当社グループの主な事業内容は、半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)の製造装置等に使用される真空シール、石英製品、セラミックス製品、CVD-S1C製品、太陽電池向けシリコン結晶製造装置、太陽電池向けシリコン製品、坩堝・角槽、温調機器等に使用されるサーモモジュールの他、シリコン製品、磁性流体およびその応用製品などの開発、製造、販売であります。 現在の取締役8名の内、社外取締役2名を選任しており、また、経営環境の変化に迅速に対応できるよう取締役の任期は1年としております。月一回の定例取締役会開催に加え、重要案件が生じたときは、機動的にその都度、臨時取締役会を開催しております。 業務執行につきましては、現在、執行役員10名[内、男性9名、女性1名/ 内、取締役5名(内、男性5名)]をそれぞれ担当職務・部門責任者として配置し、業務執行上の役割分担を明確にしております。 当社は、監査役会設置会社であります。監査役会は、現在、監査役3名(内、常勤監査役1名)全員が社外監査役で構成され、企業統治の強化を図っております。 当社は、後藤法律事務所とは法務顧問契約に基づき、業務上必要に応じて法務に関わる助言を受けております。 また、会計監査人である新日本有限責任監査法人とは、監査契約に基づき会計監査を受けており、東京証券取引所JASDAQスタンダードに上場する企業として、開示規定に定める事象がおきた場合は、遅滞なく情報の開示に努めております。 <実施しない主な原則とその理由> 当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。 <開示している主な原則> 【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】 当社は、会社の持続的成長及び企業価値の向上を目指し、株主の皆さまとの建設的な対話を促進し、当社の経営方針や経営状況を分かりやすく説明し、株主の皆さまの理解が得られるよう努めてまいります。 株主との建設的な対話に関する方針 (1)株主の皆さまとの対話の統括 IR担当である経営企画担当取締役を株主の皆さまとの対話を統括する経営陣として指定しております。 (2)株主の皆さまとの対話を補助する社内各部門の連携体制 経営企画室及び経理部が連携して、株主の皆さまとの対話を補助しています。 (3)個別面談以外の対話の手段の充実に関する取組み 決算説明会、スモールミーティング、個人投資家説明会、株主総会後に開催する事業説明会、各種印刷物をはじめとする様々な情報伝達手段を活用しております。決算説明会及び事業説明会では、代表取締役が自ら説明を行っております。 (4)対話に際してのインサイダー情報の管理 内部情報管理規程に基づき情報管理を徹底しております。