ブリッジレポート
(8061) 西華産業株式会社

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ブリッジレポート:(8061)西華産業 vol.2

(8061:東証1部) 西華産業 企業HP
櫻井 昭彦 社長
櫻井 昭彦 社長

【ブリッジレポート vol.2】2019年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「進捗率は売上で55%と比較的高いものの、利益は4割程度となっている。利益に関しては下期偏重の計画のようであり、当期純利益の今期予想・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年12月19日掲載
企業基本情報
企業名
西華産業株式会社
社長
櫻井 昭彦
所在地
東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル
決算期
3月末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 165,585 2,598 2,877 1,655
2017年3月 150,742 3,046 3,390 2,140
2016年3月 127,101 2,174 2,426 1,750
株式情報(11/30現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,647円 12,820,650株 21,115百万円 5.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
55.00円 3.3% 173.90円 9.5倍 2,245.33円 0.7倍
※株価 11/30終値。発行済株式数は18年9月末。 ROE 、BPSは前期実績。
 
西華産業株式会社の2019年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
「社業の発展を通じ社会に貢献する。これを我社の信条とする。」を企業理念に、機械総合商社として、電力、化学・エネルギー、産業機械、素材・計測分野の機械設備や機器等の販売およびサービスの提供を行っている。 現場密着の営業力、各事業における専門性の高さ、国内外70拠点に上る広範なネットワークの3つが特長及び強み。 【1-1 沿革】 太平洋戦争終戦後の1947年7月、連合国最高司令官ダグラス・マッカーサーの覚書により旧三菱商事株式会社が解体を命ぜられると同時に、同年10月、初代社長中林恒治氏ら同社門司支店機械部門関係者が中核となり福岡県門司市(現・福岡県北九州市門司区)に西華産業株式会社を設立。 「商道の精華:商いの本質を極める。自分も儲けるが、相手にも便宜を与える。」、「西の花形:西日本の花形企業を目指す。」、「華:将来、対中国貿易が盛んになるときに役立つかもしれない。」の3つが社名の由来である。 東京、大阪を含む国内各地に支店を開設した後、1954年10月には当時日本人が数名しか在住していなかったドイツ(旧西ドイツ)・デュッセルドルフに海外事務所を開設するなど、積極的な事業展開を行い、1961年10月には東証1部に上場した。 その後も、西日本を中心とした営業基盤の強化と、米国、欧州、アジア各地への拠点展開により機械総合商社として発展してきた。 設立70周年にあたる2017年、2027年に向けた長期経営ビジョン「10年後の西華産業グループ像」および2017年4月開始の3カ年計画「中期経営計画CS2020」を策定、推進中である。 【1-2 企業理念】 以下のような企業理念及び行動規範を掲げている。 【1-3 事業内容】 (1)事業セグメント 機械総合商社として、電力、化学・エネルギー、産業機械、素材・計測分野の機械設備や機器、附帯製品の販売およびサービスの提供を行っている。 報告セグメントは、「電力事業」、「化学・エネルギー事業」、「産業機械事業」、「素材・計測事業」、「グローバル事業」の5セグメント。 ① 電力事業 関西電力、九州電力、中国電力、四国電力、電源開発の電力会社および、和歌山共同火力を含めた共同電力会社など、西日本以西の電力会社を顧客とし、ボイラー、ガスタービンなどの事業用発電設備、排水や排ガスを処理する環境保全設備、原子力発電所向けにセキュリティ設備や消火設備などの防犯・防災設備などを販売している。 仕入先は、三菱重工業と日立製作所の合弁会社である三菱日立パワーシステムズ(MHPS)などであり、西華産業は、MHPSの火力発電設備の販売代理権を有している。 ② 化学・エネルギー事業 化学会社、石油会社、製紙会社、鉄鋼会社、鉄道会社向けにボイラー、タービンなどの自家用発電設備、排水や排ガスを処理する環境保全設備などを電力事業と同じくMHPSなどから仕入れて販売している。 また、化学製品等のプロセス用製造設備を国内メーカーから仕入れて販売している。 ③ 産業機械事業 幅広い産業分野の顧客に対して、国内メーカー製の繊維設備、食品加工設備、醸造設備、各種プラント設備、液晶関連設備、環境関連設備、無停電電源装置(UPS)などを販売するほか、メンテナンスも提供している。 また、直近では中国におけるEV(電気自動車)向けリチウムイオン電池用関連設備の販売が大きく増加している。 ④ 素材・計測事業 国内電機メーカーを主要顧客として、電子機器用プリント基板製造関連装置などを販売しているほか、官公庁や研究機関向けに、レーザー計測機器や細孔径測定装置など先端技術を駆使した計測機器を納入している。また、産業機械向けの環境保全用計測装置や、水処理関係装置など幅広く扱っている。 海外メーカーからの仕入れが中心。 ⑤ グローバル事業 (欧州) 車載関係の顧客に産業用ロボットを販売しているほか、工事などで使用される水中ポンプの販売及び、レンタルも行っている。 いずれも仕入先は日本メーカーが中心。 (北米) 日系自動車関係の顧客に日本メーカー製のエレクトロニクス基板実装関連機器を販売している。 (アジア) 繊維、化学、その他一般産業向けに日本メーカー製の機械設備を販売しているほか、繊維メーカーに対し繊維原材料を海外で調達し販売している。 (2)地域別売上高 国内売上が8割以上を占めるが、中期経営計画CS2020において全体戦略の一つとして、グローバル戦略の加速を掲げており、海外売上高比率の拡大を目指している。 2018年3月期地域別売上構成 【1-4 特長と強み】 (1)現場に近い営業力、 70年の歴史の中で培われてきた現場に近い営業力が同社最大の強み。 きめ細かい対応で、人脈を形成し、信頼関係を構築することが安定的な受注獲得に繋がっている。 (2)各事業における専門性の高さ 商社中抜き論なども言われるが、同社は豊富な情報収集力と、顧客の先を行く提案力など、高度な専門性を有する必要不可欠なビジネスパートナーと評価されている。 (3)国内外70拠点に上る広範なネットワーク 10年前には30拠点程度であったが、グローバル化を見据え、ヨーロッパおよび東南アジアを中心に急速に拠点を拡大させてきた。 情報のスピード、網羅性はさらに高まっており、有効に活用することで存在価値を更に高めていきたいと考えている。 (4)社員教育・営業力強化施策 社員の育成・強化はOJTが中心で、先輩社員や上司が必要な基本動作を重点的に教育しており、また、各種階層別研修や海外研修制度にも力を入れている。 加えて、最近はメーカーや顧客のOBにコンサルティングおよび営業現場の支援を依頼している。 各種アドバイスは同社の専門性を更に高め、更なる営業力強化に繋がっている。 【1-5 ROE分析】 伊藤レポート等で一般的に日本企業に要求される8%水準を安定的に維持するには至っていない。 レバレッジは比較的高水準であるため、利益率の向上を期待したい。 【1-6 ESGへの取り組み】 <E:環境> 環境方針として「地球環境の保全と向上に努め、持続可能な社会の実現に貢献する」という基本理念を掲げている。その一環として、2005年にISO14001を取得しており、環境配慮型商品の拡販に努めている。 同社が取り扱う環境配慮型商品は、ボイラーおよび焼却炉用排ガス処理設備や、化学・半導体工場向け有機溶剤回収装置など多岐に亘り、下記のように2018年3月期の受注実績は約760億円。 引き続き、単なる社会貢献という観点のみでなく事業活動を通じて地球環境の保全に寄与する考えだ。 <S:社会責任> 「社会責任」として、以下のような働き方改革に取り組んでいる。 「女性の活躍推進」 女性総合職採用の強化 女性社員のキャリア形成支援 女性管理職の登用 「従業員の健康促進」 プレミアムフライデー制度の導入(取得率21%) 有給休暇の取得推進 健康診断におけるがん検診(腫瘍マーカーオプション)費用の会社負担 インフルエンザ予防接種費用の会社負担 「人材育成」 各種階層別研修 海外研修派遣制度 <G:ガバナンス> コーポレートガバナンス・コード全項目に対する取り組みをホームページで開示している。 「取締役会の実効性評価」を行うと共に、任意の仕組みとして社外取締役および社外監査役で構成される「指名審査委員会」を取締役会のもとに設置した。 また、招集通知の一部英訳や、ファクトブック作成による英語での情報提供にも取り組んだ。 持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために引き続きコーポレート・ガバナンスの充実を図ると共に、健全で透明性の高い経営体制を追求する。 【1-7 株主還元】 株主に対する利益還元を経営の最重要課題の一つとしており、安定的な配当を基本方針としている。 営業・財務両面の効率的な業務運営により、経営基盤の強化を図るとともに、新しい事業の開発等の資金需要に対応しながら、連結配当性向35%を目途としている。 2019年3月期は、中間25円、期末30円の合計55円/株を予定しており、予想配当性向は31.6%。 配当方針および通期の業績等を総合的に勘案して積極的に株主還元に取り組む。
 
 
2019年3月期第2四半期決算概要
増収減益 売上高は前年同期比48.3%増の976億円。化学・エネルギー事業で大口案件があったほか、グローバル事業で欧米子会社が好調だった。 営業利益は同24.9%減の8.6億円。電力事業、産業機械事業が減益、素材・計測事業は営業損失となった。 四半期純利益は同8.6%増の8.3億円。投資有価証券売却益および関係会社株式売却益を特別利益に計上した。 期初予想に対しては売上高、営業利益、経常利益は下回った。 ①電力事業 増収、減益。 電力会社向け発電設備用大型部品等の売上が増加した。 ②化学・エネルギー事業 増収、増益。 石油会社向けコークス発電設備の大口受渡があった。 ③産業機械事業 減収、減益。 連結子会社の日本ダイヤバルブの業績は順調に推移したが、リチウムイオン電池用関連設備の受渡は下期に集中するため減収となった。 ④素材・計測事業 減収、損失縮小。 プリント基板素材の売上が大幅に減少した。また、連結子会社西華デジタルイメージの業績が低迷した。 なお、エヌ・エス・テックを連結の範囲から除外したが、第2四半期(累計)までの同社業績は含めている。 ⑤グローバル事業 増収、増益。 欧米子会社の業績が順調に推移した。 海外売上高は、前年同期比20.4%減の89.8億円で、海外売上高比率は9.2%となった。 売上債権および前渡金の減少、投資有価証券の増加などで資産合計は前期末に比べ144億16百万円減少の838億78百万円となった。前受金の減少などにより負債合計は同149億77百万円減少の543億29百万円。 利益剰余金の増加で純資産は同5億60百万円増加し295億49百万円。 自己資本比率は前期末の28.9%から5.6ポイント上昇し、34.5%となった。 営業CFはほぼ変わらず、定期預金の預入などで投資CFおよびフリーCFのマイナス幅は拡大。 自己株式取得による支出の減少などで財務CFのマイナス幅は縮小。 キャッシュ・ポジションは上昇した。 (4)トピックス ①ベトナム子会社を設立 インフラ、環境、製造業への設備投資が活発で、外資誘致を通じた工業化が進展しつつあり、今後も日系企業の進出増加が見込まれるベトナムに子会社を設立することとした。 各種機械、電子・通信機器、計器、工具、関連資材等の販売、据付工事・エンジニアリング、アフターサービスと同商品の輸出入、販売代理業務を手掛ける。 営業開始は2019年1月を予定している。 ②自然災害への対応 自然災害の多発に対し、ESGを重視する同社は以下のような支援を実施した。 *7月豪雨 日本赤十字社を通じて500万円を寄付したほか、社員による被災地でのボランティア活動への支援を行った。 *北海道胆振東部地震(2018年9月) 北海道電力苫東厚真発電所の迅速な復旧に努めた。 ③リチウムイオン電池関連設備について 同社は2015年から、世界的に需要拡大が見込まれるリチウムイオン電池の構成部品であるセパレーター、および正・負極材等の製造装置を中心に営業を展開してきた。 取扱アイテムは、従来のセパレーター、正・負極材等の製造装置に加え、電池パック製造装置、EV組み立て装置、各種原材料等に拡大している。 中国のEV業界は、既に過剰な生産設備になっているとの報告もあるが、同社への商談数は堅調で、また、顧客も北京、上海、蘇州、深セン地区に加え、合肥、重慶、成都など地方都市にも拡大している。 更に人材投入を進め、引き続き積極的に中国EV業界への深耕を進め、収益拡大を図る考えだ。 リチウムイオン電池用関連設備の受注、売上高は順調に拡大し、今期は下期中心に売上高172億円を見込んでいる。
 
 
2019年3月期業績予想
業績予想に変更無し。増収増益を予想 業績予想に変更は無い。売上高は前期比5.7%増の1,750億円の予想。化学・エネルギー事業が大きく回復。 営業利益は同19.3%増の31億円を計画。下期からの回復を見込む。 配当は前期と同じく55円/株の予定。予想配当性向は31.6%。 ①電力事業 減収、減益予想。 得意とする石炭火力発電が逆風の環境下にあるが、原子力発電の再稼働やテロ対策など防犯・防災設備工事に引き続き注力する。今まで手薄だった北海道地区にも、人材を投入する。減収ながらも安定的な推移を見込む。 ②化学・エネルギー事業 増収、増益予想。 上期ほどの大型案件はないものの、石油会社向け動力設備など堅調な推移を見込む。 船舶用及び陸用エンジンを手掛ける子会社敷島機器の業績が寄与する。 ③産業機械事業 減収、減益予想。 減収・減益ではあるが、リチウムイオン電池用関連設備は下期に案件が集中している。子会社日本ダイヤバルブの業績も順調。対上期比では増収増益予想。 ④素材・計測事業 減収、損失幅縮小予想。 プリント基盤素材が減収となるが子会社西華デジタルイメージの回復を見込んでいる。経営資源の選択と集中を図り、業績回復に向け構造改革を進める。対上期比では増収、黒字転換の予想。 ⑤グローバル事業 減収、黒字転換予想。 欧米子会社の業績は順調に推移する見込み。 (3)「中期経営計画CS2020」 2年目の取り組み 「中期経営計画CS2020」(詳細は「参考2」を参照)においては以下のような経営数値目標を掲げている。 初年度2018年3月期の実績は16.5億円にとどまったが、目標未達の主な要因は、子会社の特損など一過性のものと考えている。 中計2年目の2019年3月期は目標24億円に対し22億円の予想。各セグメントともきめの細い営業活動を展開し、24億円の達成を目指している。 また、最終年度に関しても各事業の様々な施策を確実に実行し、27億円の達成を目指す。 各セグメントで展開している施策は以下の通り。
 
 
今後の注目点
進捗率は売上で55%と比較的高いものの、利益は4割程度となっている。 利益に関しては下期偏重の計画のようであり、当期純利益の今期予想22億円の達成はもとより、中計における当初目標24億円にどこまで近づけることができるかを引き続き注目したい。 一方、リチウムイオン電池関連ビジネスは足元も順調に拡大しているようだ。ベトナム子会社設立によりさらに強化されるグローバルネットワークによる事業拡大にも期待したい。
 
 
 
<参考1:長期経営ビジョン及び中期経営計画>
(1)長期経営ビジョン及び中期経営計画の概要 同社は、2027年に向けた長期経営ビジョン「10年後の西華産業グループ像」および2017年4月開始の3カ年計画で「中期経営計画CS2020」を策定した。 ①長期経営ビジョン「10年後の西華産業グループ像」 *策定の目的 2017年は設立70周年を迎える節目の年であり、長期的な視点に立ってグループの進むべき方向性を明確にし、グループ社員一丸となり大きな変革を目指していく為に、それまでは3年おきに策定していた中期経営計画に加えて、長期経営ビジョンとして「10年後の西華産業グループ像」を策定した。 *概要 グループ像及びそれを実現するための長期方針を以下のように設定した。 ②中期経営計画CS2020 *概要 「10年後の西華産業グループ像」を見据え、2017年4月から2020年3月までを第1ステップと位置付けて、「中期経営計画CS2020」を実行する。 *基本方針「変革と進化」 前中期経営計画CS2017の基本方針「事業領域の多様化」は同社グループにとって重要な経営課題だが、これを進めていくためにはビジネスモデルの変革と従来ビジネスの進化が必要不可欠であるため、「中期経営計画CS2020」の基本方針を「変革と進化」とした。
 
 
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書 最終更新日:2018年12月14日 <基本的な考え方> 当社は「社業の発展を通じ社会に貢献する。」を企業理念に掲げ、あらゆるステークホルダーと良好な関係を築きながら、中長期的な企業価値の向上に取り組んでおります。こうした取り組みを実行していくため「経営の健全性と透明性」「迅速な意思決定と実行」が必要不可欠であると考え、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。 なお、当社は独立社外取締役および独立社外監査役による経営の監督体制の強化を図っております。