ブリッジレポート:(3110)日東紡 vol.1
(3110:東証1部) 日東紡 |
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企業名 |
日東紡績株式会社 |
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取締役 代表執行役社長 |
辻 裕一 |
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所在地 |
東京都千代田区麹町2-4-1 麹町大通りビル |
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決算期 |
3月末日 |
業種 |
ガラス・土石製品(製造業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2018年3月 | 84,526 | 10,837 | 11,071 | 10,253 |
2017年3月 | 83,324 | 11,148 | 11,396 | 7,479 |
2016年3月 | 86,199 | 10,893 | 10,974 | 5,598 |
2015年3月 | 90,223 | 8,885 | 8,658 | 4,588 |
株式情報(11/29現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
祖業である繊維事業の技術を活用して日本で初めてグラスファイバーの工業化に成功。糸の製造からガラスクロス加工、複合材料の開発まで一貫して行うことで、電子材料、産業資材など幅広い分野に製品を提供している。
なかでも、独自技術で製造するミクロン単位のガラス糸で織る超極薄ガラスクロスは、小型・軽量・高機能化が進むパソコンやスマートフォンなどの電子機器の精密基材として使用され、高い競争力を有している。
また、ライフサイエンス事業における「体外診断用医薬品」は、日本国内では10を超える品目でトップシェアを獲得している。
【1-1 沿革】
1898年、福島県郡山に設立された「郡山絹糸紡績株式会社」が前身であり、120年の歴史を持つ。
1923年、1918年設立の福島紡織株式会社(旧 福島精練製糸株式会社)が片倉製糸岩代紡績所(旧 郡山絹糸紡績株式会社)を買収する形で日東紡績株式会社が創立される。
1938年には日本で初めてグラスファイバーの工業化(量産化)に成功。世界では米国のオーエンスコーニングファイバーグラス社が同時期に工業化を行っている。
1949年には日本で初めてグラスウールの製造を開始した。
1969年に繊維事業で培った技術を活かし、プリント配線基板用ガラスクロスの製造を開始したほか、1982年に血液凝固因子検査薬を製造開始、1983年に世界で初めて機能性ポリマー「PAA®」の工業化に成功するなど、新規分野へのチャレンジを続け、事業分野を拡大させてきた。
2023年4月の創立100周年に向け「長期ビジョン101」と中期経営計画「Go for Next 100」を策定、推進中である。
【1-2 経営理念】
『日東紡グループは「健康・快適な生活文化を創造する」企業集団として社会的存在価値を高め、豊かな社会の実現に貢献し続けます。』という経営理念を掲げている。
また、以下のような日東紡宣言において、全てのステークホルダーとの協働の下、社会の「ベストパートナー」となることを目指している。
【1-3 事業内容】
(1)事業内容
衣料品を中心とした繊維製品の製造販売を行う「繊維事業」、ガラス繊維を用いた各種製品を製造販売する「グラスファイバー事業」、免疫系体外診断薬やスペシャリティケミカル製品の製造販売を行う「ライフサイエンス事業」の3つに大別される。
報告セグメントは、「グラスファイバー事業」を用途別に「原繊材事業」、「機能材事業」、「設備材事業」の3つに分類。「繊維事業」、「ライフサイエンス事業」と合わせた5セグメントで構成される。この他に、報告セグメントに含まれない不動産事業、サービス事業などからなる「その他」がある。
①繊維事業
ストレッチ素材の先駆けとなる二層構造糸「C・S・Y」(コア・スパン・ヤーン)や、高いシェアを誇るレディース向け接着芯地「ダンレーヌ」、2015年グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した「日東紡の新しいふきん」など、衣料に不可欠な糸から副資材、製品に至るまで、多様化する顧客のニーズに対して独自の技術を駆使した製品を提供している。
今後は、日東紡(中国)有限公司などの海外拠点と国内事業との一体運営を進め、開発力を強化して高付加価値化と顧客への訴求力向上を図る。
②グラスファイバー事業
日本で初めてグラスファイバーの工業化に成功し、現在では糸の製造から、ガラスクロス加工、複合材料の開発まで一貫して行い、幅広い分野に製品を提供している。
なかでもミクロン単位の超極薄ガラスクロスは小型・軽量・高機能化が進むスマートフォンなど電子機器の精密基材として使用されその品質は高い評価を受けている。
他にも住宅用断熱材などに使用するグラスウールの製造を日本で初めて開始し、断熱材のパイオニアとして高い独自技術を誇っている。特に、高性能グラスウールは高気密・高断熱住宅の断熱材として省エネ社会に貢献している。
<グラスファイバーとは?>
ガラスを1,300℃以上の高温で溶かして引き延ばし、繊維状にしたもの。
日本では、同社が1938年に初めて工業化に成功し、その後急速な発展を遂げた。
強度、耐熱性、不燃性、電気絶縁性や耐薬品性などの特徴を持ち、建築資材、FRP(繊維強化プラスチック)、プリント配線基板用電気絶縁クロスなど様々な場面で用いられ、その優れた特性により幅広い産業で利用されている。
(組成・特性)
前述のように、強度、耐熱性、不燃性、電気絶縁性など特徴とするが、特に電子材料などの用途では、高強度、高弾性、低誘電などの性能がこれまで以上のレベルを求められている。
(製造方法)
ガラス原料を1,300~1,600℃の高温で溶融したのち、白金ノズルと呼ばれる専用の機械に通し、巻き取ることで糸状に成形する。高温度下における温度制御など、非常に精密なコントロール技術が必要とされる。
ガラスの素地を機械から高速で引き出したグラスファイバーの細さは、直径4~24マイクロメートル。(※人間の毛髪の細さは50~100マイクロメートル程度。)
紡糸されたグラスファイバーはそれぞれ用途に応じた製品形態に加工される。
(主な製品形態)
◎ヤーン
ヤーン(紡糸)には、同時に紡糸された数百本のフィラメントで構成されたストランドに一方向性の撚りをかけたものである単糸と、単糸を数本撚り合わせた合撚糸などがある。
主に4.0μmから7.4μmのフィラメントからなるストランドに撚りをかけた単糸である「Eガラスヤーン」は、電気絶縁性、耐熱性、引張強度、寸法安定性に優れプリント配線基板用として一般的に使われているほか、産業資材用としても、独自の表面処理技術により樹脂との相溶性が高く、作業性が良好な複合材料基材として評価が高い。
◎ガラスクロス
グラスファイバーのヤーンを織物にした(クロス状にした)ガラスクロスは、プリント配線基板のほか、制振材、テント膜、道路補強材など幅広い用途で用いられている。
中でもプリント配線基板や電子部品に用いられるガラスクロスは同社が世界に誇る主力製品である。
【プリント配線基板用ガラスクロス】
プリント配線基板とは、樹脂などの基盤本体表面に銅などの金属で細かい配線が形作られており、この配線上に抵抗やコンデンサ、ICチップなどの部品をハンダで固定して取り付けたもので、PC、スマートフォン、サーバ、医療機器、産業ロボット、自動車、航空機に至るまで、全ての電子機器の性能を左右する重要な部品。
基板本体の絶縁体には、ガラスのほかポリエステルを始めとした樹脂など様々な材料が用いられているが、高絶縁性、高強度性、耐熱性、寸法安定性などの特徴を持つグラスファイバー(ガラスクロス)は、プリント配線基板材料に最も適した材料であるとされている。
デジタル技術の目覚しい発展に伴い、パソコン、スマートフォンに代表される電子機器の軽薄短小化、高機能化が進み、ガラスクロスに対する性能向上ニーズは益々高まっている。
そうしたニーズに対応し、同社は、ガラス組成開発とその繊維化技術および織物加工など独自技術を基に、一貫メーカーの強みを活かして「低誘電特性ガラスクロス(NEガラス)」、「低CTE特性ガラスクロス(Tガラス)」、「極薄ガラスクロス」などの高機能ガラスクロス製品を開発し、高いシェアを有している。
「低誘電特性ガラスクロス(NEガラス)」
コンピュータ、モバイル、通信インフラ等の高速・高周波化が進み、プリント配線基板には、伝送損失を改善する低誘電材料が求められている。
同社では、これを実現するために、従来の「Eガラス」に比べて、アルカリ土類成分(CaO、MgO)の成分比率を低く抑える一方で、ホウ酸(B2O3)の成分比率を高めることで、「Eガラス」と同等の特性をもちながら優れた低誘電率ならびに低誘電正接を実現した「NEガラス」を独自開発した。
主としてデータセンターや基地局サーバー用電子基板に用いられている。
「低CTE特性ガラスクロス(Tガラス)」
「Tガラス」は、標準品の「Eガラス」に比べて、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)の成分比率を高めることで、ガラス繊維の持つ機械的・熱的性能を格段に高度化している。
その特長である低熱膨張特性及び高引張り弾性を利用して、優れた寸法安定性と剛性アップを実現し、高性能電子材料として主にスマートフォンなどに搭載される半導体パッケージ向け電子基板に用いられている。
また、炭素繊維やアラミド繊維などと同様に先端複合材料の補強材としても優れているため、航空、宇宙、スポーツ分野に単独または炭素繊維とのハイブリッド資材としても使用されている。
「極薄ガラスクロス」
プリント配線基板の高密度実装、軽薄短小化に対応するための材料として、より薄いガラスクロスの需要が高まっている。同社の極薄ガラスクロスは薄さに加え、レーザー、ドリル穴加工ともに微小径穴加工性に優れており、更に積層板としての寸法安定性、表面平滑性などにも優れている。
グラスファイバー事業内のセグメント別製品形態や用途は以下の通り。
③ライフサイエンス事業
メディカル事業部門と環境・ヘルス事業部門から構成されている。
メディカル事業部門は、血液検査や尿検査で使用される体外診断薬および機能性ポリマーを軸とするスペシャリティケミカルス製品の製造・販売を行っている。
健康診断や人間ドックで使用されている血液や尿などから健康状態を調べる「体外診断用医薬品」は、原料である抗血清から最終製品である診断薬までをグループ内で一貫製造することで、高品質と安定供給を両立している。
その品質の高さが評価され、世界中の医療現場で用いられており、日本国内では10を超える品目でトップシェアを獲得している。
スペシャリティケミカルス事業では、独自性の高い機能性ポリマー(ポリアリルアミン・ポリアミンシリーズ)の開発・販売を手掛けている。化成品・医薬品メーカーや研究機関等と一体となった研究開発、顧客ニーズを捉えた製品提案が特長であり、ニッチ市場に強く、日本国内に留まらずグローバル市場へも積極展開を進めている。
環境・ヘルス事業は、長年培ってきた技術を生かし、飲料事業を展開している。
飲料事業は、プライベートブランドを中心に、ペットボトルの成形から飲料の製造とボトリングまで行っている。
(2)研究開発
同社グループでは、創業以来、研究開発・技術開発を積極的に進め、数々の同社グループならではの製品を世の中に送り出してきた。
今後も研究開発が同社の競争力及び企業価値向上の源泉となる。
近年、顧客のニーズが益々高度化・多様化する一方、グローバルな競争は一段と激しくなっている中で、特色と強みを生かして、付加価値が高く独自性の強い商品・サービスをタイムリーに提供し、将来を見据えた研究開発・技術開発を進めるために2017年、総合研究所を設立した。
従来通り各事業部門において専門性の観点から研究開発・技術開発を深掘りしつつ、スピードを重視し、事業間シナジーの追求も見据え、総合研究所による全社横断的マネジメントにも取り組んでいく。
また、各分野において、研究スピードの向上と視野拡大のため、オープンイノベーションの観点から産官学共同研究なども積極的に進めている。
【1-4 特長と強み】
◎時代のニーズを的確にとらえて製品を供給
日本で初めてグラスファイバーの工業化に成功したほか、グラスウールの製造を日本で初めて開始したように、ガラス繊維の世界で常に日本及び世界をリードしてきた同社は、九十余年に亘る歴史の中で、常に世の中の変化やニーズを的確にとらえてグラスファイバーを中心に様々な製品を開発・供給してきた。
最終製品を製造しているわけではないので目に触れることはないが、世の中に欠くことのできない素材を供給し、我々の暮らしを陰で支えている。
◎独自技術による高い競争力
世界に多くのガラス繊維メーカーがある中で、電子材料用ガラスクロスにおいて優れた低誘電率ならびに低誘電正接(NEガラス)、高い寸法安定性と剛性アップ(Tガラス)を実現し、十分なボリュームを安定的に供給可能な体制を構築しているのはほぼ同社のみである。
また、メディカル事業部門の体外診断用医薬品において10を超える品目で国内トップシェアを獲得している事も、同社の独自技術による高い競争力を示している。
20年度8%以上、23年度10%以上という目標を掲げている。
18/3期のROEは大きく上昇したが、これは当期純利益に固定資産売却益42億円の計上を行ったため。
高付加価値製品の販売拡大、原価低減の推進がカギとなろう。
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業績動向 |
微減収減益。利益は予想を上回る。
売上高は前年同期比3.9%減の415億円。原繊材、機能材、設備材が減収。
営業利益は同29.6%減の43億円。高付加価値品のうちスペシャルガラスは増収だったものの、極細ヤーン・極薄クロスが減収でマイナス寄与となった。成長のための基盤強化投資を予定通り実行したほか、新規投資にかかる減価償却費が増加した。
経常利益は同24.2%減の49億円。前年同期の為替差損がなくなり為替差益3億円を計上。
当期純利益は同39.0%減の45億円。投資有価証券売却益8億円を特別利益に、減損損失2億円を特別損失に計上した。
予想に対して売上は未達だったものの、利益は、上方修正を行った修正予想をほぼ達成した。
①繊維事業
増収・損失縮小。
主力の芯地販売が日本及び中国でレディース向け中心に好調だった。
②原繊材事業
減収減益。
スマートフォンの生産調整の影響を受け、強化プラスチック用途の複合材や電子材料向けガラスヤーンの販売が高付加価値品を中心として減少した。また、第1四半期に実施した大型の設備改修により収益が悪化した。
③機能材事業
減収減益。
電子材料用途の需要は堅調。高付加価値品の生産性改善に努めたが、日東紡澳門(マカオ)玻纎紡織有限公司の台風被害による影響を受けた。
④設備材事業
減収減益。
設備・建設資材向けのガラスクロスの販売は安定的に推移した。住宅向け断熱材は、市況低迷に加えて第1四半期に実施した大型の設備改修や物流費・資材費・燃料費などのコストアップの影響により収益が悪化した。
⑤ライフサイエンス事業
増収減益。
*メディカル
免疫系体外診断薬を中心に国内、海外向けの販売に注力するとともに、原価低減に努めたが、一方で研究・販売体制強化に伴う費用が増加した。
*スペシャリティケミカルス
高付加価値品を国内外に安定的に供給した。
*飲料
多品種小ロット需要への幅広い対応を継続した一方で、原料や物流費が上昇した。
業績予想を修正。増収減益も下期回復。
上期の業績及び取り巻く環境や見通しを踏まえ下期および通期業績予想を修正した。
スマートフォン分野での生産調整を受け、一部高付加価値品の販売が伸び悩むが、スペシャルガラスの需要環境は引き続き堅調であり、需要動向に対応した生産・販売を推進するほか、更なる生産能力増強を推進する。
人材、設備投資、R&D中長期成長を見据えた基盤強化を引き続き実行する。
売上高は前期比1.7%増の860億円の予想。繊維事業、機能材事業が牽引。
営業利益は同7.7%減の100億円を計画。原価低減を進め、上期は減益要因だった高付加価値品拡販はプラスに転じるが、引き続き中長期的成長を目的とした基盤強化を実行するほか、新規投資にかかる減価償却費を見込む。また、円高、オイル価格および物流費等の物価上昇の影響も見込んでいる。
配当は前期と同じく40円/株の予定。予想配当性向は18.7%。
四半期業績は18年3月期第4四半期をボトムに回復に向かっている。今下期は下方修正となったが前年同期および今期を上回る。
①繊維事業
日本・中国での最適生産による稼働率の向上と中国市場での拡大を図る。機能性新商品の開発促進や、グラスファイバー事業部門とのコラボレーションによる産業資材分野への進出にも取り組む。
②原繊材事業、機能材事業
スペシャルガラスの需要は引き続き堅調で、データセンター向けサーバーや基地局向けの需要に応えていくとともに、5G向け高速大容量通信対応の製品を供給する。
TOBにより株式取得をした台湾のBaotek Industrial Materials Ltd.との協業を加速し、高付加価値品の生産性向上・生産能力増により拡販を推進する。
③設備材事業
物流費、資材費等の物価上昇が収益圧迫要因となるが、生産性改善により収益力の底上げを目指す。
産業用途向けのガラスクロス販売において、海外や新規顧客の開拓に注力する。
④ライフサイエンス事業
*メディカル
研究開発・販売体制を強化するほか、生産能力増強を見据えた生産性の向上を図る。
材料から完成品までの一貫体制をさらに強化し、開発・供給力を増強する。
引続きグローバル展開も加速させる。
*スペシャリティケミカルス
営業体制を強化し、国内外での販売を拡大する。
*飲料
生産体制の整備と強化を推進し、安定した収益基盤を確保する。
新商品の開発と提案に取り組む。
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中期経営計画「Go for Next 100」の進捗 |
(1)「長期ビジョン101」と中期経営計画「Go for Next 100」
同社では、国内の少子化・超高齢化・総需要減少の中で、生き残りを図ると同時に海外に目を向け持続的な成長を目指すために「長期ビジョン101」を策定し、創立101年目にあたる2023年度の目指すべき姿を、「顧客と技術を基軸とした、特色ある事業・商品群を持ち、創業の地・福島から、そして日本から世界へイノベーション(革新)を発信し続ける企業」としている。
これを踏まえ、「長期ビジョン101」の実現に向けた第1ステージとして2020年度を最終年とする中期経営計画「Go for Next 100」を策定し現在推進中である。
現在の収益性を持続できる基盤を確立した上で、将来の成長のチャンスをとらえるとともに、自社グループの優位性を見極めてこれを徹底的に追求する。
(2)各事業における取組
「長期ビジョン101」では2023年度の各事業における目指すべき企業像を以下のように設定している。
①グラスファイバー事業
テーマとしては、「電子材料分野の更なる強化」と「産業資材分野の強化」を挙げている。
前者においては、5Gをはじめとした高速大容量通信社会の実現により半導体の微細化、高性能化が更に進み、高付加価値ガラスクロスの需要増加が引き続き見込まれるなか、「Eガラス」における極細化・細番手化の推進、高付加価値製品「Tガラス」、「NEガラス」などスペシャルガラスの更なる用途開発と生産能力増強、M&Aによる生産能力補完を進める。
後者においては、スペシャルガラスの産業資材分野への投入、海外市場への積極的な進出、カスタマーソリューション部の新設を挙げている。
カスタマーソリューション部の新設により、現在は半導体パッケージ向け電子基板に用いられる「Tガラス」、データセンターや基地局サーバー向け電子基板用途の「NEガラス」の新たな用途拡大を推進する。
「Tガラス」は、飛行機や自動車向けの高強度ガラスを利用した複合材料ニーズに、「NEガラス」は低誘導・低伝送損失ニーズに対応した産業資材向けビジネスを強化する。
投資については、「Eガラス」の極細化、高付加価値製品「Tガラス・NEガラス」の生産能力増及び用途拡大に向けて重点的な投資を行う。
グラスファイバー事業の各事業における主要施策は以下の通り。
ガラスクロスの製造販売を手掛ける台湾のBaotek社を約40億円で持分法適用会社とし、今後子会社化する予定である。
ガラスクロス製造能力を増強するほか、電子材料メーカー集積地である台湾においてヤーンからクロスまでの高付加価値製品の一貫供給体制の構築、Baotek社の有する産業資材分野を含めた幅広いサプライチェーンの活用などが子会社化の目的である。
また、地理的補完による製品の安定供給とBCP対応についてもメリットが大きいと判断した。
②ライフサイエンス事業
体外診断薬事業については、日米における一貫生産体制を最大限活用し、Self medicationに資する多様化・精緻化に対応した高付加価値試薬を供給する。
国内においては医療費抑制に向けた未病(Self medication)対応や、POCT(Point of Care Testing)と呼ばれる小型で持ち運び可能な分析装置を用いて患者の側で検査を行い治療方針を決める流れが強まっている。
一方海外では、先進国において高付加価値医療(高感度の免疫系試薬や感染症、遺伝子検査等)の需要が増加している。
こうした状況を踏まえ、体外診断薬事業に関して以下のような施策を推進する。
新技術・新商品としては、医療費抑制策に対応して、個々の患者に対する医薬品の効果や副作用のリスク、適切な投薬量を予測するために、実際に投薬を開始する前に行う検査で使用されるコンパニオン診断薬や、今後一層ニーズの増大が予見されるがん検診用診断薬などを候補と考えている。
IgG4関連疾患試薬の承認取得は同社を含め世界で3社となる。
営業においては、現在、体外診断薬販売の約7割が国内向けであることをふまえ、グローバルな販売先の開拓に注力する。
③繊維事業
軽量・透湿・吸水速乾・消臭・帯電防止・エコといった視点から独自技術に磨きをかけ、更なる高付加価値品を開発・拡販する。
ファッション衣料からの脱却を図り、機能を重視してスポーツ・医療・日用品・産業材などに資材用途を拡大する。
④研究開発体制
全社的な研究開発力を一段と強化するため、福島県郡山市に新建屋を建設することとした。 総工費は27億円で2020年4月に竣工の予定である。
また、新たな研究開発拠点として川崎市ナノ医療イノベーションセンターにサテライトラボ「NI-Tech」を開設した。(2018年7月)
(3)数値目標
「Go for Next 100」における2020年度および「長期ビジョン101」における2023年度の数値目標は以下の通り。
23年度の事業ポートフォリオとしては、高付加価値化の更なる進展と海外売上比率の拡大、第2の柱としてのメディカル事業の確立を目指す。
EBITDAについては、グラスファイバー事業における国内での極細ヤーン・極薄クロスへの投資、海外におけるヤーン細番手化への投資、台湾Baotek社M&Aによるヤーンからクロスまでの一貫生産体制の強化、国内外におけるスペシャルガラス製造能力の更なる向上に加え、メディカル事業における日米一貫生産体制の更なる強化や海外展開の強化など成長投資の実行による収益力の向上を通じて、今年度下期年率約160億円、20年度200億円、23年度230~250億円への拡大を目指していく。
設備投資については、中期経営計画期間4年間で550億円の投資を計画しているが、初年度の18年10月時点で約6割にあたる約340億円の投資内容を意思決定済である。
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<参考:コーポレートガバナンスについて> |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年6月29日
<基本的な考え方>
当社グループは、株主・投資家をはじめとする当社グループのステークホルダーからの社会的信頼を重視した事業活動を行うべく、公正で透明性の高い経営組織の構築を目指している。
当社は、平成15年6月より執行役員制度を導入し、取締役会の活性化と意思決定の迅速化を図り、連結経営が最大の効果を発揮できる体制を構築している。平成20年6月からは、経営と業務執行の機能・役割を更に明確化して運営してきた。そして、平成26年6月26日の定時株主総会の承認を受けて委員会設置会社(現・指名委員会等設置会社)に移行した。これにより、監督と執行の分離を一段と明確にし、「監督機能強化・透明性の高い経営」と、「事業の迅速な執行・経営の機動性向上」を目指している。また、顧客、株主、取引先、従業員等のステークホルダーの期待に、より的確に応えうる体制を構築し、更なる企業価値向上を図っている。
<実施しない主な原則とその理由>
2018年6月の改訂前のコーポレートガバナンス・コードの各原則について、全て実施している。
2018年6月の改訂を踏まえた更新は、2018年12月末までに実施する予定である。
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