営業減益ながら、期初予想を上回る着地
売上高は前年同期比33.6%増の488億07百万円。スマートフォン出荷台数の減少に象徴される通信分野の伸び悩みや労働需給のひっ迫による人材確保の遅れで主要3事業の売上が期初予想を下回ったものの、海外HR事業を中心に注力3事業(介護ビジネス支援、海外HR、スタートアップ人材支援)が順調に伸びた。東北地方を中心に建設技術者派遣・紹介を展開しているC4(株)の子会社化(全株式取得)もあり、期初予想を上回る着地。
営業利益は同15.9%減の10億92百万円。主要3事業において、顧客への請求単価の引き上げに先行してスタッフへの支給単価を引き上げたため、売上総利益率が低下。中期経営計画の目標である営業利益40億円の達成を見据えた先行投資(IT投資やIFRS適用化に向けた準備費用、更には戦略的採用費等2億円)が負担になった。ただ、減益は当初から想定しており、注力3事業をけん引役に期初予想を大きく上回る着地。同社が重視する経営指標であるEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)は15億66百万円と前年同期(15億57百万円)との比較で0.6%増加した。
セールスアウトソーシング事業
売上高108億09百万円(前年同期比3.7%増)、セグメント利益6億38百万円(同29.7%減)。通信分野向けの売上が減少したものの、アパレル業界向け人材派遣やセールスプロモーションスタッフの人材派遣・業務請負、(株)クリエイティブバンクが提供するセールスプロモーションサービス等、非通信分野の売上が増加した。利益面では、支払単価の引き上げと通信分野のインセンティブ収入の減少等で売上総利益率が低下する中、非通信分野の拡大に向けた営業拠点展開(9支店開設)に伴う人件費の増加等が負担になった。
コールセンターアウトソーシング事業
売上高77億62百万円(前年同期比7.5%減)、セグメント利益2億84百万円(同33.2%減)。18/3期まではその他にセグメントしていたオフィス派遣・紹介を当期より統合した。顧客開拓を強化した金融分野が増加したものの、コールセンター分野・オフィス分野の減少をカバーできず、稼働スタッフ数が減少。売上が減少する中、法定福利費の増加で売上総利益率も低下した。
ファクトリーアウトソーシング事業
売上高98億13百万円(前年同期比28.1%増)、セグメント利益4億24百万円(同1.1%増)。積極的な拠点展開により、惣菜、コンビニエンスストア向けスイーツ、弁当等の食品分野が拡大する中、2017年9月に連結子会社化した(株)リトルシーズサービスの期初から寄与(8億円の増収要因)に加え、化粧品分野など食品分野以外の領域も拡大した。スタッフへの支給単価上昇で売上総利益率が低下する中、営業展開地域の拡大により人件費が増加したが、売上の増加で吸収。外国人採用も進んだ。
営業展開地域の拡大に向けては、4支店(第1四半期:3、第2四半期:1)を開設した。また、外国人技能実習生の受入拡大に向けベトナムの大学2校と提携し、日本企業や現地の日系企業で就業するために必要なスキルを持った人材を育成する教育プログラムの開発も進めた。
介護ビジネス支援事業
売上高43億53百万円(前年同期比29.9%増)、セグメント利益28百万円(前年同期は40百万円の損失)。第1四半期3支店、第2四半期3支店と積極的な拠点展開(上期末47支店)に加え、就業フォローや顧客企業に対する多様な働き方の提案を強化した結果、未経験や業務経験の浅いスタッフ、或いはフルタイム以外の勤務を希望するスタッフの活用が進み稼働スタッフ数が増加した。支店開設費用等の先行投資やスタッフ募集費用が増加したものの、売上の増加と既存取引先との契約条件の見直しによる売上総利益率の改善で吸収して28百万円の営業利益を確保した。
尚、社内外のスタッフの研修施設として設立した「WILLケアアカデミー」を首都圏3校体制に拡大し、スタッフの育成体制の整備も進めた。
海外HR事業
売上高121億円(前年同期比132.2%増)、セグメント利益4億65百万円(同138.0%増)。シンガポール及びオーストラリアの連結子会社の業容が順調に拡大した事に加え、2018年1月に連結子会社化した、オーストラリアで事務職・コールセンター関連職の人材サービスを提供するDFP Recruitment Holdings Pty Ltdの貢献が売上・利益の両面で大きかった。
スタートアップ人材支援事業
売上高5億36百万円(前年同期比59.1%増)、セグメント利益134百万円(同17.1%増)。AI・IoT領域の人材紹介をけん引役に売上・利益が増加。紹介数は前年同期の147人から203人に増加した(同37.8%増)。利益率(34.1%→25.1%)低下は、業容拡大に向けた人員増強(人件費等の増加)によるもの。成長産業領域に特化した情報プラットフォーム「STARTUP DB」を公開した。
その他国内事業(新領域事業)
売上高34億31百万円(前年同期比194.6%増)、セグメント利益20百万円(前年同期は79百万円の損失)。ALT(外国語指導助手)派遣、保育士の派遣・紹介サービスなど既存事業の売上が増加する中、2018年6月に連結子会社化した建設技術者派遣・紹介事業を営むC4(株)やITエンジニア/クリエイター向け賃貸住宅(TECH RESIDENCE)1物件の販売が増収に寄与した。
上期末の総資産は前期末との比較で26億12百万円増の301億09百万円。東北地方を中心に建設技術者派遣・紹介を展開しているC4(株)の全株式取得(6月)や、オーストラリアで人材派遣サービスを展開し、政府機関向け等に強みを持つQuay Appointments Pty Ltdの株式51%取得(9月)により、無形固定資産(のれん:22億34百万円→45億89百万円)を中心に固定資産が増加した。
一方、積極的なM&Aにより現預金が減少した他、連結子会社株式の追加取得に伴う持分変動等により、純資産(資本剰余金△19億58百万円、非支配株主持分△4億51百万円)が減少した。このため、自己資本比率が21.6%(前期末30.0%)に低下したが、ネットDEレシオ((有利子負債残高-現預金)÷自己資本)0.5倍(同△0.3倍)、EBITDA調整後有利子負債倍率(短期借入金除く有利子負債残高÷予想EBITDA)2.2倍(同 実績ベースのEBITDAベース1.1倍)、と財務への影響は総じて軽微だ。
関係会社株式の追加取得に伴う持分変動と資本剰余金等の減少について
同社は人材サービス領域でのM&Aを積極的に行っている。国内でのM&Aは、約20年にわたる人材サービスの実績から適切なPMI(Post-Merger Integration:M&A後の統合プロセス)が可能なため、原則完全子会社化スキームで対応しているが、商習慣の把握等が難しい海外ではアーンアウトスキームにより慎重に対応している。アーンアウトスキームでは、初回取得は50%を超える程度にとどめ、その後1~3年、経営計画の進捗状況を確認した上で追加取得する。その際に持分変動が発生するため、今回の様に資本剰余金等が影響を受ける事がある。ただ、今回についても財務への影響は軽微で、今後もM&Aについては、自己資金と借り入れで対応していく考え。
C4株式会社
事業内容 |
:建設技術者派遣・紹介事業 |
18/3期業績 |
:売上高34億94百万円、営業利益3億06百万円、 当期純利益2億01百万円 |
取得価額 |
:34億09百万円 |
のれん(暫定) |
:24億16百万円(7年償却) |
C4(株)は東日本大震災後の復興支援を目的に2011年に設立され、技術者全員が経験豊富な正社員。現在、東北地方の施工管理技術者派遣で2割程度のシェアを有し、国内全体では約100社の競合企業が存在し10位程度。国内名目建設投資は二桁成長が続いているが、その一方で建設業の就業者数は減少が続いており、人材サービスの拡大余地は大きい。同社は、建設技術者派遣・紹介の市場規模を2,300億円、マーケット成長率を年率9%とみている。ウィルグループの拠点を活用して、東北・首都圏から大阪・名古屋・福岡へ事業エリアを広げていく考え。
Quay Appointments Pty Ltd
18/6期業績 |
:売上高47億83百万円、税引前当期純利益2億23百万円、 当期純利益1億56百万円 |
取得価額 |
:5億03百万円 |
のれん(暫定) |
:2億49百万円 |
※1オーストラリアドル80円50銭円で換算。